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特開2023-144136微小粒子分取装置、細胞治療薬製造装置、微小粒子分取方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144136
(43)【公開日】2023-10-06
(54)【発明の名称】微小粒子分取装置、細胞治療薬製造装置、微小粒子分取方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
G01N15/14 K
G01N15/14 C
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134058
(22)【出願日】2023-08-21
(62)【分割の表示】P 2019161868の分割
【原出願日】2019-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2018168711
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰信
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大峰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達巳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 学治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
(57)【要約】
【課題】
複数種の微小粒子を所定の比率で含む混合物を用意するための技術を提供すること。
【解決手段】
本技術は、流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する判定部を備えており、前記判定部が、前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定を行い、そして、前記一次分取判定において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定を行う微小粒子分取装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する分取判定工程を含み、
前記分取判定工程において、2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき、前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子の分取を制御して、
前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子を所定の構成比率で含む混合物を得る、
微小粒子分取方法。
【請求項2】
前記混合物が1つの容器に回収される、請求項1に記載の微小粒子分取方法。
【請求項3】
前記混合物が1つの容器に回収されて、当該容器中の微小粒子の構成比率が、前記指定された粒子構成比率になるか又は前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内になる、請求項2に記載の微小粒子分取方法。
【請求項4】
前記指定された粒子構成比率に基づき取得粒子数を設定することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項5】
前記分取判定工程において、
前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属する微小粒子の分取数が、前記指定された粒子構成比率に基づき設定された取得粒子数に達していない場合に、当該微小粒子を分取すると判定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項6】
前記分取判定工程において、
前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属する微小粒子の分取数が、前記指定された粒子構成比率に基づき設定された取得粒子数に達している場合には、当該微小粒子を分取しないと判定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項7】
前記分取判定工程において、
前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属する微小粒子を分取した場合の粒子構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内である場合には、当該微小粒子を分取すると判定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項8】
前記分取判定工程において、
前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属する微小粒子を分取した場合の粒子構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内にない場合には、当該微小粒子を分取しないと判定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項9】
前記微小粒子の分取が、微小粒子分取用マイクロチップを用いて行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項10】
前記微小粒子の分取が、微小粒子を含む流体が通流される主流路と、前記主流路から分岐する分岐流路と、前記主流路と同軸上の粒子分取流路とを含む微小粒子分取用マイクロチップを用いて行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項11】
前記微小粒子が細胞である、請求項1~10のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項12】
前記微小粒子が細胞であり、
前記混合物が1つの容器に回収され、
当該容器に回収された混合物が薬剤として使用される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項13】
前記分取判定工程において、
前記光照射により生じた光の特徴及び前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき、前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子の分取が制御される、
請求項1~12のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項14】
前記分取判定工程において、前記光照射により生じた光が、蛍光及び/又は散乱光に関する指定された特徴を有するかによって、前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかが判定される、請求項1~13のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
【請求項15】
流路中を流れる細胞への光照射により生じた光に基づき、当該細胞を分取するかを判定する判定部と、
前記判定部により分取すると判定された細胞を分取する細胞分取部と
を備えており、
2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき、前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子の分取を制御して、
前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子を所定の構成比率で含む混合物を得るように構成されている、
細胞治療薬剤製造装置。
【請求項16】
流路中を流れる細胞への光照射により生じた光に基づき、当該細胞を分取するかを判定する判定部と、
前記判定部により分取すると判定された細胞を分取する細胞分取部と
を備えており、
2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき、前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子の分取を制御して、
前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子を所定の構成比率で含む混合物を得るように構成されている、
微小粒子分取装置。
【請求項17】
流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する分取判定工程を含み、
前記分取判定工程において、2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき、前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子の分取を制御して、
前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子を所定の構成比率で含む混合物を得る
微小粒子分取方法を細胞治療薬剤製造装置又は微小粒子分取装置に実行させるためのプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、微小粒子分取装置、細胞治療薬製造装置、微小粒子分取方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本技術は、2種以上の微小粒子を特定の構成比率で回収するための微小粒子分取装置、細胞治療薬製造装置、微小粒子分取方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
微小粒子を分取するために、これまでに種々の微小粒子分取装置が開発されてきている。例えばフローサイトメータにおいて用いられる粒子分取系において、フローセル又はマイクロチップに形成されたオリフィスから、細胞を含むサンプル液とシース液とから構成される層流が吐出される。吐出される際に所定の振動が当該層流に与えられて、液滴が形成される。当該形成された液滴の移動方向が、目的の粒子を含むか含まないかによって電気的に制御されて、目的の粒子が分取される。
【0003】
上記のように液滴を形成せずに、マイクロチップ内で目的の粒子を分取する技術も開発されている。例えば、下記特許文献1には、「微小粒子を含むサンプル液が通流するサンプル液導入流路と、該サンプル液導入流路にその両側から合流し、前記サンプル液の周囲にシース液を導入する少なくとも1対のシース液導入流路と、前記サンプル液導入流路及びシース液導入流路に連通し、これらの流路を通流する液体が合流して通流する合流流路と、該合流流路に連通し、回収対象の微小粒子を吸引して引き込む負圧吸引部と、 該負圧吸引部の両側に設けられ、前記合流流路に連通する少なくとも1対の廃棄用流路と、を有するマイクロチップ。」(請求項1)が記載されている。当該マイクロチップにおいて、目的の粒子は吸引によって負圧吸引部へと回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-127922号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】D Sommermeyer et al., Chimeric antigen receptor-modified T cells derived from defined CD8+ and CD4+ subsets confer superior antitumor reactivity in vivo, Leukemia, 2016 February; 30(2): 492-500
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微小粒子分取装置によって特性の異なる複数の細胞分画を得、そして、当該複数の細胞分画を混合して、複数種の細胞を所定の比率で含む細胞混合物を得ることが行われている。当該細胞混合物は、例えば免疫細胞治療などの治療のために利用されうる。例えば上記非特許文献1は、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞に関するものであり、CD4CAR-T細胞とCD8CAR-T細胞との組み合わせが、相乗的な抗腫瘍活性を示した旨が記載されている(結果欄)。
【0007】
複数種の細胞を所定の比率で含む細胞混合物を用意するためには、例えばフローサイトメータによって異なる特性を有する複数の細胞サブセット分画を入手し、各細胞サブセット分画の細胞濃度の測定及び/又は調整を行い、そして、細胞の含有比率が前記所定の比率となるように複数の細胞サブセット分画を混合することが考えられる。しかしながら、この場合には、フローサイトメータによる分取手順に加え、各細胞サブセット分画の細胞濃度を測定又は調整する手順と複数の細胞サブセット分画を混合する手順とを行う必要があり、多くの時間及び労力を要する。
フローサイトメータにはor論理により細胞分取を行う機能が搭載されていることが一般的であり、当該機能を使用して分取を行うことによって複数種類の細胞の混合物を得ることができる。しかしながら、当該機能を利用して取得された細胞混合物中の細胞構成比率は、細胞分取に付される試料中の細胞構成比率と同じである。そのため、当該機能は、所望の細胞構成比率を有する細胞混合物を得るためには適さない。
【0008】
上記特許文献1に記載のマイクロチップを利用して細胞分取操作を行う場合、通常は、或る特性を有する1種類の細胞のみが負圧吸引部内に回収される。そのため、当該マイクロチップを利用して複数種類の細胞を含む細胞混合物を用意するためには、複数回の細胞分取操作を行う必要があり、多くの時間及び労力が必要となる。また、1種類の細胞のみが回収される場合、他の細胞は廃棄用流路に流れるため、無駄が生じる。
上記特許文献1に記載のマイクロチップにおけるor論理により細胞分取は、フローサイトメータと同様に、所望の細胞構成比率を有する細胞混合物を得るためには適さない。
【0009】
本技術は、複数種の微小粒子を所定の比率で含む混合物を用意するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定の構成を有する微小粒子分取装置によって上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
すなわち、本技術は、流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する判定部を備えており、前記判定部が、前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定を行い、そして、前記一次分取判定において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定を行う微小粒子分取装置を提供する。
本技術の一つの実施態様に従い、前記微小粒子分取装置が、前記二次分取判定において分取すると判定された微小粒子を分取する分取部を備えており、前記分取部により分取された微小粒子が1つの容器に回収されうる。
本技術の一つの実施態様に従い、前記分取部により分取された微小粒子が1つの容器に回収されてよく、当該容器中の微小粒子の構成比率が、前記指定された粒子構成比率になるか又は前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内になりうる。
本技術の一つの実施態様に従い、前記微小粒子分取装置が、前記分取部により分取された微小粒子を1つの容器に回収するための1つの粒子回収流路を備えていてよい。
本技術の一つの実施態様に従い、前記一次分取判定において、前記判定部が、前記光照射により生じた光が、蛍光及び/又は散乱光に関する指定された特徴を有するかによって、前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを判定しうる。
本技術の一つの実施態様に従い、前記判定部が、前記指定された粒子構成比率に基づき取得粒子数を設定しうる。
本技術の一つの実施態様に従い、前記二次分取判定において、前記判定部が、前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子の分取数が、前記指定された粒子構成比率に基づき設定された取得粒子数に達していない場合には、当該微小粒子を分取すると判定しうる。
本技術の一つの実施態様に従い、前記二次分取判定において、前記判定部が、前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子の分取数が、前記指定された粒子構成比率に基づき設定された取得粒子数に達している場合には、当該微小粒子を分取しないと判定しうる。
本技術の他の実施態様に従い、前記二次分取判定において、前記判定部が、前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取した場合の粒子構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内である場合には、当該微小粒子を分取すると判定しうる。
本技術の他の実施態様に従い、前記二次分取判定において、前記判定部が、前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取した場合の粒子構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内にない場合には、当該微小粒子を分取しないと判定しうる。
本技術の一つの実施態様に従い、前記微小粒子分取装置が、微小粒子を含む流体が通流される主流路と、前記主流路から分岐する分岐流路と、前記主流路と同軸上の粒子分取流路とを含む微小粒子分取用マイクロチップを含んでよく、
前記判定部が、前記微小粒子分取用マイクロチップ中を流れる前記流体中の微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定しうる。
前記微小粒子は細胞でありうる。
前記微小粒子は細胞であり、前記二次分取判定において分取すると判定された細胞が1つの容器に回収され、当該容器に回収された細胞が薬剤として使用されうる。
【0012】
また、本技術は、流路中を流れる細胞への光照射により生じた光に基づき、当該細胞を分取するかを判定する判定部と、前記判定部により分取すると判定された細胞を分取する細胞分取部とを備えており、前記判定部が、前記細胞が、2以上の異なる細胞集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定を行い、そして、前記一次分取判定において前記細胞集団のいずれかに属すると判定された細胞を分取するかを、前記2以上の異なる細胞集団について指定された細胞構成比率に基づき判定する二次分取判定を行い、前記細胞分取部により分取された細胞が1つの容器に回収される、細胞治療薬製造装置も提供する。
【0013】
また、本技術は、流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する分取判定工程を含み、当該分取判定工程が、前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定工程と、前記一次分取判定工程において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定工程とを含む、微小粒子分取方法も提供する。
【0014】
また、本技術は、微小粒子分取装置又は細胞治療薬製造装置に、
流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、
前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定工程、及び
前記一次分取判定工程において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定工程
を含む、当該微小粒子を分取するかを判定する分取判定工程を実行させるためプログラムも提供する。
また、本技術は、
流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する分取判定工程を含み、
前記分取判定工程において、2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき、前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子の分取を制御して、
前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子を所定の構成比率で含む混合物を得る、
微小粒子分取方法も提供する。
前記方法において、前記混合物が1つの容器に回収されてよい。
前記方法において、前記混合物が1つの容器に回収されて、当該容器中の微小粒子の構成比率が、前記指定された粒子構成比率になるか又は前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内になりうる。
前記方法は、前記指定された粒子構成比率に基づき取得粒子数を設定することを含んでよい。
前記分取判定工程において、
前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属する微小粒子の分取数が、前記指定された粒子構成比率に基づき設定された取得粒子数に達していない場合に、当該微小粒子を分取すると判定してよい。
前記分取判定工程において、
前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属する微小粒子の分取数が、前記指定された粒子構成比率に基づき設定された取得粒子数に達している場合には、当該微小粒子を分取しないと判定してよい。
前記分取判定工程において、
前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属する微小粒子を分取した場合の粒子構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内である場合には、当該微小粒子を分取すると判定してよい。
前記分取判定工程において、
前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属する微小粒子を分取した場合の粒子構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内にない場合には、当該微小粒子を分取しないと判定してよい。
前記微小粒子の分取が、微小粒子分取用マイクロチップを用いて行われてよい。
前記微小粒子の分取が、微小粒子を含む流体が通流される主流路と、前記主流路から分岐する分岐流路と、前記主流路と同軸上の粒子分取流路とを含む微小粒子分取用マイクロチップを用いて行われてよい。
前記微小粒子が細胞であってよく、
前記微小粒子が細胞であってよい。
前記混合物が1つの容器に回収され、
当該容器に回収された混合物が薬剤として使用されてよい。
前記分取判定工程において、
前記光照射により生じた光の特徴及び前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき、前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子の分取が制御されてよい。
前記分取判定工程において、前記光照射により生じた光が、蛍光及び/又は散乱光に関する指定された特徴を有するかによって、前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかが判定されてよい。
また、本技術は、
流路中を流れる細胞への光照射により生じた光に基づき、当該細胞を分取するかを判定する判定部と、
前記判定部により分取すると判定された細胞を分取する細胞分取部と
を備えており、
2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき、前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子の分取を制御して、
前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子を所定の構成比率で含む混合物を得るように構成されている、
細胞治療薬剤製造装置も提供する。
また、本技術は、
流路中を流れる細胞への光照射により生じた光に基づき、当該細胞を分取するかを判定する判定部と、
前記判定部により分取すると判定された細胞を分取する細胞分取部と
を備えており、
2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき、前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子の分取を制御して、
前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子を所定の構成比率で含む混合物を得るように構成されている、
微小粒子分取装置も提供する。
また、本技術は、
流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する分取判定工程を含み、
前記分取判定工程において、2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき、前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子の分取を制御して、
前記2以上の異なる微小粒子集団に属する微小粒子を所定の構成比率で含む混合物を得る
微小粒子分取方法を細胞治療薬剤製造装置又は微小粒子分取装置に実行させるためのプログラムも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本技術の微小粒子分取装置の構成例を示す図である。
図2】制御部のブロック図の一例である。
図3】微小粒子分取用マイクロチップの分取部の構造の例を示す図である。
図4】全血溶血サンプルに対して微小粒子分取装置によりテスト測定を行って得られるヒストグラムの一例を示す図である。
図5】ユーザにより指定されるゲート論理及び粒子構成比率の例を示す図である。
図6】本技術に従う微小粒子分取処理のフロー図の一例である。
図7】本技術に従う微小粒子分取処理のフロー図の一例である。
図8】本技術に従う微小粒子分取処理のフロー図の一例である。
図9】本技術の微小粒子分取装置の構成例を示す図である。
図10】本技術の細胞治療薬製造装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。なお、本技術の説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施形態(微小粒子分取装置)
(1)第1の実施形態の説明
(1-1)一次分取判定
(1-2)二次分取判定
(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)
(3)第1の実施形態の第2の例(微小粒子の分取動作の例)
(4)第1の実施形態の第3の例(微小粒子の分取動作の例)
(5)第1の実施形態の第4の例(連結された微小粒子分取用マイクロチップを用いた粒子分取処理の例)
2.第2の実施形態(細胞治療薬製造装置)
3.第3の実施形態(微小粒子分取方法)
【0017】
1.第1の実施形態(微小粒子分取装置)
【0018】
(1)第1の実施形態の説明
【0019】
本技術の微小粒子分取装置は、流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する判定部を備えている。当該判定部が、前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定を行い、そして、前記一次分取判定において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定を行う。
前記一次分取判定及び二次分取判定における判定結果に従い微小粒子を分取することによって、複数種の微小粒子を所定の比率で含む混合物を容易に得ることができる。特には、前記二次分取判定を行うことによって、分取操作により得られる混合物中の複数種の微小粒子の構成比率を、指定されたとおりの比率とすることができる。
【0020】
本技術の微小粒子分取装置を図1~4を参照しながら以下で説明する。
【0021】
図1は、本技術の微小粒子分取装置の構成例を示す。図1に示されるとおり、本技術の微小粒子分取装置100は、光照射部101、検出部102、制御部103、及び微小粒子分取用マイクロチップ150を含む。図2に示されるとおり、制御部103は、信号処理部104、判定部105、及び分取制御部107を含む。
【0022】
光照射部101が、微小粒子分取用マイクロチップ150中の流路を流れる微小粒子に光を照射する。当該光照射により生じた光を、検出部102が検出する。検出部102により検出された光の特徴に応じて、制御部103が、微小粒子分取用マイクロチップ150中の流れを制御することによって、回収されるべき微小粒子のみが分取される。
【0023】
光照射部101は、微小粒子分取用マイクロチップ150中の流路内を流れる微小粒子に光(例えば励起光など)を照射する。光照射部101は、光を出射する光源と、検出領域を流れる微小粒子に対して励起光を集光する対物レンズとを含みうる。光源は、分析の目的に応じて当業者により適宜選択されてよく、例えばレーザダイオード、SHGレーザ、固体レーザ、ガスレーザ、若しくは高輝度LEDであってよく、又は、これらのうちの2つ以上の組み合わせであってもよい。光照射部は、光源及び対物レンズに加えて、必要に応じて他の光学素子を含んでいてもよい。
【0024】
検出部102は、光照射部101による光照射によって前記微小粒子から生じた散乱光及び/又は蛍光を検出する。検出部102は、微小粒子から生じた蛍光及び/又は散乱光を集光する集光レンズと検出器とを含みうる。当該検出器として、PMT、フォトダイオード、CCD、及びCMOSなどが用いられうるがこれらに限定されない。検出部102は、集光レンズ及び検出器に加えて、必要に応じて他の光学素子を含んでいてもよい。検出部102は、例えば分光部をさらに含みうる。分光部を構成する光学部品として、例えばグレーティング、プリズム、及び光フィルターを挙げることができる。分光部によって、例えば検出されるべき波長の光を、他の波長の光から分けて検出することができる。検出部102は、検出された光を光電変換によって、アナログ電気信号に変換しうる。検出部102は、さらに当該アナログ電気信号をAD変換によってデジタル電気信号に変換しうる。
【0025】
制御部103に含まれる信号処理部104は、検出部102により得られたデジタル電気信号の波形を処理して、判定部105による判定(特には一次分取判定)のために用いられる光の特徴に関する情報を生成しうる。当該光の特徴に関する情報として、信号処理部104は、デジタル電気信号の波形から、例えば当該波形の幅、当該波形の高さ、及び当該波形の面積のうちの1つ、2つ、又は3つを取得しうる。また、当該光の特徴に関する情報には、例えば、当該光が検出された時刻が含まれていてよい。
【0026】
制御部103に含まれる判定部105は、流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する。より具体的には、光照射部101による微小粒子への光照射によって生じた光が検出部102によって検出され、検出部102により得られたデジタル電気信号の波形が制御部103によって処理され、そして、当該処理によって生成された光の特徴に基づき、判定部105が、当該微小粒子を分取するかを判定する。
判定部105による判定の詳細については、以下「(1-1)一次分取判定」及び「(1-2)二次分取判定」において、より詳細に説明する。
【0027】
制御部103に含まれる分取制御部107は、微小粒子分取用マイクロチップ150による微小粒子分取を制御する。より特には、分取制御部107は、判定部105が行う二次分取判定によって分取すると判定された微小粒子を分取するように、微小粒子分取用マイクロチップ150内の分取部157における流体の流れを制御しうる。当該流れの制御のために、分取制御部107は、例えば分取部付近に設けられたアクチュエータ108の駆動を制御しうる。当該アクチュエータ108の駆動のタイミングは、例えば、前記光が検出された時刻に基づき設定されうる。
【0028】
制御部103は、光照射部101による光照射及び/又は検出部102による光の検出を制御してもよい。また、制御部103は、微小粒子分取用マイクロチップ150内に流体を供給するためのポンプの駆動を制御しうる。制御部103は、例えば、本技術に従う微小粒子分取方法を微小粒子分取装置に実行させるためのプログラムとOSとが格納されたハードディスク、CPU、及びメモリにより構成されてよい。例えば汎用のコンピュータにおいて制御部103の機能が実現されうる。前記プログラムは、例えばmicroSDメモリカード、SDメモリカード、又はフラッシュメモリなどの記録媒体に記録されていてもよい。当該記録媒体に記録された前記プログラムを、微小粒子分取装置100に備えられているドライブが読み出し、そして、制御部103が、当該読み出されたプログラムに従い、微小粒子分取装置100に本技術に従う微小粒子分取方法を実行させてもよい。
【0029】
微小粒子分取用マイクロチップ150には、サンプル液インレット151及びシース液インレット153が設けられている。これらインレットからサンプル液及びシース液が、それぞれサンプル液流路152及びシース液流路154に導入される。当該サンプル液に粒子が含まれている。
【0030】
当該サンプル液及び当該シース液は、合流部162で合流して、サンプル液の周囲がシース液で囲まれた層流を形成する。当該層流は、主流路155を、分取部157に向かって流れる。
【0031】
本技術の微小粒子分取装置100において、例えば以下のとおりに、微小粒子の分取判定が行われうる。
主流路155には、検出領域156が備えられている。検出領域156において、主流路155中を流れるサンプル液中の微小粒子に対して光が照射される。当該光照射は、光照射部101により行われる。当該光照射により生じた光が、検出部102により検出される。検出された光は、例えば検出部102によって光電変換されて、アナログ電気信号が生成されうる。当該アナログ電気信号は、信号処理部104によってデジタル電気信号に変換される。当該デジタル電気信号に基づき、判定部105が、前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定を行う。次に、判定部105が、前記一次分取判定において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定を行う。二次分取判定は、前記一次分取判定において、前記微小粒子が前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された場合に行われうる。
【0032】
検出領域156中の1つの位置に1つの光が照射されてよく、又は、検出領域156中の複数の位置のそれぞれに光が照射されてもよい。例えば、検出領域156中の2つの異なる位置のそれぞれに光が照射されるように微小粒子分取用マイクロチップ150は構成されうる(すなわち、検出領域156中に、光が照射される位置が2つある。)。この場合において、例えば、1つの位置での微小粒子への光照射によって生じた光(例えば蛍光及び/又は散乱光など)に基づき当該微小粒子が回収されるべきものであるかどうかが判定されうる。さらに、当該1つの位置での前記光照射によって生じた光の検出時刻ともう一つの位置での光照射によって生じた光の検出時刻との差に基づき、流路内における微小粒子の速度を算出することもできる。当該算出のために、予め、2つの照射位置の間の距離が決定されていてよく、前記2つの検出時刻の差と前記距離に基づき微小粒子の速度が決定されうる。さらに、当該速度に基づき、以下で述べる分取部157への到達時刻を正確に予測することができる。当該到達時刻が正確に予測されることで、粒子分取流路159へ入る流れの形成のタイミングを最適化することができる。また、或る微小粒子の分取部157への到達時刻と当該或る微小粒子の前又は後の微小粒子の分取部157への到達時刻との差が所定の閾値以下である場合は、当該或る微小粒子を分取しないと判定することもできる。当該或る微小粒子とその前又は後の微小粒子との間の距離が狭い場合に、当該或る微小粒子の吸引の際に当該前又は後の微小粒子が一緒に回収される可能性が高まる。当該一緒に回収される可能性が高い場合には当該或る微小粒子を分取しないと判定することによって、当該前又は後の微小粒子が回収されることを防ぐことができる。これにより、回収された微小粒子のうちの目的とする微小粒子の純度を高めることができる。検出領域156中の2つの異なる位置のそれぞれに光が照射されるマイクロチップ及び当該マイクロチップを含む装置の具体例は、例えば特開2014-202573号公報に記載されている。
【0033】
本技術の微小粒子分取装置100において、分取されるべきと判定された微小粒子は、例えば以下のとおりにして回収されうる。
微小粒子分取用マイクロチップ150は、微小粒子を含む流体が通流される主流路155と、主流路155から分岐する分岐流路と、主流路155と同軸上の粒子分取流路159とを含む。
微小粒子分取用マイクロチップ150中の分取部157において、主流路155を流れてきた前記層流は、2つの分岐流路158へと別れて流れる。図1に記載の分取部157は2つの分岐流路を有するが、分岐流路の数は2つに限られない。分取部157には、例えば1つ又は複数(例えば2つ、3つ、又は4つなど)の分岐流路が設けられうる。分岐流路は、図1におけるように1平面上でY字状に分岐するように構成されていてよく、又は、三次元的に分岐するように構成されていてもよい。
また、分取部157において、判定部105により分取すると判定された微小粒子が流れてきた場合にのみ、粒子分取流路159へ入る流れが形成されて、当該粒子が回収される。このようにして、分取部157において、判定部105により分取すると判定された微小粒子が分取される。すなわち、本技術の微小粒子分取装置100は、判定部105により分取すると判定された微小粒子を分取する分取部157を備えていてよい。
粒子分取流路159へ入る流れの形成は、例えば粒子分取流路159内に負圧を発生させることにより行われうる。当該負圧を発生させるために、例えば、粒子分取流路159の壁を変形させることができるように、アクチュエータがマイクロチップ150外部に取り付けられうる。当該壁の変形によって、粒子分取流路159の内空が変化されて、負圧が発生されうる。アクチュエータは例えば、ピエゾアクチュエータでありうる。判定部105により微小粒子が回収されるべきであると判定された場合において、分取制御部107が、当該アクチュエータを駆動して粒子分取流路159内に負圧を発生させうる。
【0034】
以上で述べたとおり、判定部105は、或る微小粒子の分取部157への到達時刻と当該或る微小粒子の前又は後の微小粒子の分取部157への到達時刻との差が所定の閾値以下である場合は、当該或る微小粒子を分取しないと判定しうる。
また、以上で述べたとおり、粒子分取流路159内に負圧を発生させることによって微小粒子を粒子分取流路159内へ導く場合において、例えば粒子分取流路159にとって許容可能な変形の限度によって、連続して負圧を発生できる回数は制限されうる。そのため、例えば、判定部105は、所定の回数連続してアクチュエータが駆動された場合には、その次に流れてきた微小粒子を分取しないと判定しうる。
このように分取しないと判定された粒子は、2つの分岐流路158のいずれかへ流れる。
【0035】
分取部157の拡大図を図3に示す。図3Aに示されるとおり、主流路155と粒子分取流路159とは、主流路155と同軸上にあるオリフィス部170を介して連通されている。回収されるべき粒子は、図3Bに示されるとおり、オリフィス部170を通って、粒子分取流路159へと流れる。回収されるべきでない粒子は、図3Cに示されるとおり、分岐流路158へと流れる。
回収されるべきでない粒子がオリフィス部170を通って粒子分取流路159へと入ることを防ぐために、オリフィス部170にはゲート流インレット171が備えられうる。当該ゲート流インレット171からシース液が導入され、当該導入されたシース液の一部によってオリフィス部170から主流路155に向かう流れが形成されることで、回収されるべきでない粒子が粒子分取流路159へ入ることが防がれる。なお、当該導入されたシース液の残りは、粒子分取流路159へと流れる。
分岐流路158へと流れた層流は、分岐流路末端160にて、マイクロチップの外部へと吐出されうる。また、粒子分取流路159へと回収された粒子は、粒子分取流路末端161にて、マイクロチップの外部へと吐出されうる。
このようにして、マイクロチップ150内で、微小粒子が粒子分取流路159内に分取される。
なお、本技術において、「マイクロ」とは、マイクロチップに含まれる流路の少なくとも一部が、μmオーダの寸法を有すること、特にはμmオーダの横断面寸法を有することを意味する。すなわち、本技術において、「マイクロチップ」とは、μmオーダの流路を含むチップ、特にはμmオーダの横断面寸法を有する流路を含むチップをいう。例えば、μmオーダの横断面寸法を有する流路から構成されている粒子分取部を含むチップが、本技術に従うマイクロチップと呼ばれうる。本技術において、主流路155の横断面は例えば矩形であり、主流路155の幅は、分取部157内において例えば100μm~500μmであり、特には100μm~300μmでありうる。分岐流路158の幅は、主流路155の幅よりも小さくてよい。オリフィス部170の横断面は例えば円形であり、オリフィス部170と主流路155との接続部におけるオリフィス部170の直径は例えば10μm~60μm、特には20μm~50μmでありうる。流路に関するこれらの寸法は、微小粒子のサイズに応じて適宜変更されてよい。
【0036】
粒子分取流路末端161には、1つの容器が接続されうる。分取部157で分取された微小粒子が、当該容器内に回収される。すなわち、本技術の微小粒子分取装置100は、判定部105により分取すると判定された微小粒子を分取する分取部157を備えており、分取部157による分取された微小粒子が1つの容器に回収されうる。そして、当該容器中の微小粒子の構成比率が、前記指定された粒子構成比率になるか又は前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内になりうる。
粒子分取流路末端161には、1つの粒子回収流路が接続されていてよい。当該粒子回収流路の一方の端は、粒子分取流路末端161に接続されていてよく、且つ、他方の端が、粒子分取流路159内に分取された微小粒子を回収するための1つの容器(図示せず)に接続されうる。このように、本技術の一つの実施態様に従い、微小粒子分取装置100は、分取部157により分取された微小粒子を1つの容器に回収するための1つの粒子回収流路を備えていてよい。分取された微小粒子は、当該粒子回収流路を通って当該容器内に回収される。
【0037】
本技術において、微小粒子は当業者により適宜選択されてよい。本技術において、微小粒子には、細胞、微生物、及びリポソームなどの生物学的微小粒子、並びに、ラテックス粒子、ゲル粒子、及び工業用粒子などの合成微小粒子などが包含されうる。生物学的微小粒子には、各種細胞を構成する染色体、リポソーム、ミトコンドリア、オルガネラ(細胞小器官)などが含まれうる。細胞には、動物細胞(血球系細胞など)および植物細胞が含まれうる。微生物には、大腸菌などの細菌類、タバコモザイクウイルスなどのウイルス類、イースト菌などの菌類などが含まれうる。さらに、生物学的微小粒子には、核酸、タンパク質、これらの複合体などの生物学的高分子高分子も包含されうる。また、合成微小粒子は、例えば有機若しくは無機高分子材料又は金属などからなる微小粒子でありうる。有機高分子材料には、ポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン、及びポリメチルメタクリレートなどが含まれうる。無機高分子材料には、ガラス、シリカ、及び磁性体材料などが含まれうる。金属には、金コロイド及びアルミなどが含まれうる。微小粒子の形状は、球形若しくは略球形であってよく、又は非球形であってもよい。微小粒子の大きさ及び質量は、マイクロチップの流路のサイズによって当業者により適宜選択されうる。他方で、マイクロチップの流路のサイズも、微小粒子の大きさ及び質量によって適宜選択されうる。本技術において、微小粒子には、必要に応じて化学的又は生物学的な標識、例えば蛍光色素など、が取り付けられうる。当該標識によって、当該微小粒子の検出がより容易になりうる。取り付けられるべき標識は、当業者により適宜選択されうる。
本技術の一つの実施態様に従い、前記微小粒子は細胞であり、且つ、前記容器に回収された細胞が薬剤として使用されうる。当該容器には、複数種類の細胞が指定された細胞構成比率で回収される。例えば細胞治療薬を製造するためには、複数種類の細胞が指定された構成比率で1つの容器に含まれていることが求められることがある。そのため、この実施態様は、例えば細胞治療薬を製造するために適している。
【0038】
微小粒子分取用マイクロチップ150中を流れる流体は、例えば液体、液状物、又は気体であり、好ましくは液体である。前記流体の種類は、例えば分取される微小粒子の種類などに応じて、当業者により適宜選択されてよい。例えば、前記流体として、市販入手可能なシース液及びサンプル液又は本技術分野で公知のシース液及びサンプル液が用いられてよい。
【0039】
微小粒子分取用マイクロチップ150は、当技術分野で既知の方法により製造されうる。例えば、微小粒子分取用マイクロチップ150は、例えば、所定の流路が形成された2枚の基板を貼り合わせることにより製造することができる。流路は、2枚の基板の両方に形成されていてもよく、又は、一方の基板にのみ形成されていてもよい。基板を貼り合わせる時の位置の調整をより容易にするために、流路は、一方の基板にのみ形成されていることが好ましい。
【0040】
微小粒子分取用マイクロチップ150を形成する材料として、当技術分野で既知の材料が用いられうる。例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレン、PDMS(polydimethylsiloxane)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレン、ポリスチレン、ガラス、及びシリコンが挙げられるがこれらに限定されない。特に、加工性に優れており且つ成形装置を使用して安価にマイクロチップを製造することができることから、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、及びポリプロピレンなどの高分子材料が特に好ましい。
【0041】
以下で、本技術の微小粒子分取装置を構成する判定部により行われる一次分取判定及び二次分取判定についてより詳細に説明する。
【0042】
(1-1)一次分取判定
【0043】
判定部105は、微小粒子が2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、光照射部101による光照射により生じた光の特徴に基づき判定する。当該判定が、本技術における一次分取判定である。微小粒子が、例えば2~20、特には2~10、より特には2~5の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかが、一次分取判定において判定されうる。
【0044】
前記2以上の異なる微小粒子集団のそれぞれは、特徴を共有する1以上の微小粒子(特には複数の微小粒子)から構成されうる。すなわち、各微小粒子集団を構成する1以上の微小粒子のそれぞれが、当該特徴(以下、「微小粒子の特徴」ともいう)を有する。
本技術における「異なる」は、微小粒子の特徴が前記2以上の微小粒子集団の間で異なることを意味しうる。すなわち、各微小粒子集団を構成する複数の微小粒子によって共有される特徴が2以上の微小粒子集団の間で異なることが、本技術における「異なる」の意味であってよい。
【0045】
例えば微小粒子が細胞である場合、前記2以上の異なる微小粒子集団(細胞集団)のそれぞれを構成する複数の細胞が、特徴を共有しうる。当該特徴は、例えば細胞の表面に関する特徴、細胞の内部に関する特徴、細胞の形状に関する特徴、若しくは細胞の大きさに関する特徴、又はこれら特徴の組み合わせであってよい。前記細胞の表面に関する特徴として、例えば細胞表面に存在する化合物(特には表面抗原)を挙げることができる。前記細胞の内部に関する特徴として、内部構造の複雑さ及び/又は細胞内部に存在する化合物を挙げることができる。
本技術の一つの実施態様に従い、微小粒子が細胞である場合、前記特徴は、細胞の大きさ、内部構造の複雑さ、細胞内部に存在する化合物、若しくは細胞表面に存在する化合物、又はこれらの組み合わせでありうる。細胞の大きさ、内部構造の複雑さ、細胞内部に存在する化合物、若しくは細胞表面に存在する化合物、又はこれらの組み合わせによって、例えば細胞、特には血液細胞、の種類が特定されうる。当業者は、細胞の種類を特定するために必要な細胞の特徴を適宜選択することができる。
【0046】
血液細胞の分類の一例を以下に説明する。血液細胞はCD分類によって分類される。例えばCD45は白血球に共通する抗原であり、例えばCD45及び側方散乱光(SSC)によって、血液細胞のうちから白血球が選択することができ、さらには白血球のうちのリンパ球だけを選択することもできる。また、CD3は汎T細胞抗原の一つであり、すなわちリンパ球がCD3+(陽性)であることは、当該リンパ球がT細胞であることを意味する。また、T細胞がCD4+であることは当該T細胞がヘルパーT細胞であることを意味し、T細胞がCD8+であることは当該T細胞が細胞傷害性T細胞であることを意味する。T細胞は、通常はCD4及びCD8のいずれかが陽性である。
以上のとおりであるので、CD45及びSSCによるゲーティング、CD3によるゲーティング、及びCD4又はCD8によるゲーティングによって、血液細胞のうちからヘルパーT細胞及び細胞傷害性T細胞を選択することができる。
【0047】
以上で述べたとおり、微小粒子が細胞である場合、前記2以上の異なる微小粒子集団(この場合、当該微小粒子集団は、細胞集団ともいう)は、細胞表面に存在する分子(例えば抗原)によって分類されうる。
また、前記2以上の細胞集団は、分化段階によって分類されてもよく、すなわち、異なる分化段階にある2以上の細胞集団であってよい。例えばT細胞に関して、ナイーブT細胞、ステムセル様メモリーT細胞(TSCM)、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)、レジデントメモリーT細胞(TRM)、及びエフェクターT細胞(TEFF)という分化段階があることが知られている。前記2以上の細胞集団は、例えば、このような複数の分化段階のうちの1つの分化段階にある細胞の集団と他の分化段階にある細胞の集団との組合せからなる2つの細胞集団であってよく、又は、これら2つの細胞集団とさらに他の分化段階にある細胞の1以上の集団との組合せからなる3以上の細胞集団であってもよい。
【0048】
さらには、前記2以上の細胞集団は、表面抗原と分化段階との組合せによって分類されてもよく、すなわち、異なる表面抗原を有し且つ/又は異なる分化段階にある2以上の細胞集団であってもよい。例えば、T細胞は、上記のとおり、CD4+又はCD8+という表面抗原によって分類される。さらに、T細胞は、上記のとおり、分化段階によって分類される。そこで、表面抗原と分化段階との組合せによって、T細胞が、前記2以上の細胞集団へ分類されうる。 例えば、T細胞は、以下の2つの細胞集団へ分類されうる:
CD8+であり且つセントラルメモリーT細胞の分化段階にある細胞、及び、
CD4+であり且つナイーブT細胞の分化段階にある細胞、
例えば、T細胞は、以下の4つの細胞集団へ分類されてもよい:
CD8+であり且つナイーブT細胞の分化段階にある細胞、
CD8+であり且つセントラルメモリーT細胞の分化段階にある細胞、
CD4+であり且つナイーブT細胞の分化段階にある細胞、及び
CD4+であり且つセントラルメモリーT細胞の分化段階にある細胞。
なお、指定される表面抗原及び分化段階は、これらに限られず、他の抗原及び他の分化段階であってもよい。
【0049】
微小粒子の特徴は、当該微小粒子に対する光照射により生じた光の特徴に反映されうる。そのため、本技術において、前記一次分取判定は前記光照射により生じた光の特徴に基づき行われる。すなわち、当該光の特徴によって、或る微小粒子が、前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属することを示す特徴(微小粒子の特徴)を有するかが判定される。前記光は、例えば散乱光及び/又は蛍光でありうる。当該散乱光は、例えば前方散乱光及び/または側方散乱光及び/または後方散乱光でありうる。前記光の特徴は、例えば光の波長及び/又は強度であってよく、特には散乱光又は蛍光の波長及び/又は強度でありうる。
【0050】
本技術において、微小粒子が2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを判定するために、前記光照射により生じた光の特徴が、光に関して指定された基準(以下、「一次分取基準」ともいう)を満たすかが判定されうる。一次分取基準は、前記2以上の異なる微小粒子集団のそれぞれについて設定されるため、一次分取判定において、2つ以上の一次分取基準が用いられてよい。一次分取基準の数は、一次分取判定において属否が判定される微小粒子集団の数に応じて選択されてよく、特には当該数と同じでありうる。すなわち、一次分取基準の数は、分取されるべき微小粒子(特には細胞)の種類の数に応じて選択されてよく、例えば分取されるべき微小粒子(特には細胞)の種類の数と同じ数でありうる。例えば、一次分取判定において、2~20の一次分取基準が用いられてよく、特には2~10の一次分取基準が用いられてよく、より特には2~5の一次分取基準が用いられてよい。例えば、本技術の微小粒子分取装置によって多種類の細胞を含む液体から2種類の細胞集団を分取する場合、当該2種類の細胞集団のそれぞれに対応する2つの一次分取基準が用いられる。
【0051】
前記一次分取基準は、本技術に従い微小粒子分取処理を行う前に、予め指定されうる。例えば、本技術の微小粒子分取装置を使用するユーザが、前記一次分取基準を予め指定しうる。前記一次分取基準は、例えば、本技術の微小粒子分取装置により微小粒子含有サンプルに対してテスト測定を行って得られるヒストグラム、密度プロット、又はスペクトルに対してユーザがゲート設定することによって、指定されうる。
当該テスト測定は、例えば、判定部105及び分取制御部107による分取判定を行わずに、微小粒子分取装置100(特には光照射部101、検出部102、並びに信号処理部104)によって当該サンプル中の各微小粒子の光に関する特徴を取得することを含みうる。取得された各微小粒子の光に関する特徴に基づき、微小粒子分取装置100はヒストグラム、密度プロット、又はスペクトルを生成しうる。
【0052】
本技術の一つの実施態様に従い、前記一次分取判定において、判定部105が、前記光照射により生じた光が、蛍光及び/又は散乱光に関して指定された特徴を有するかによって、前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを判定しうる。この実施態様において、前記2以上の異なる微小粒子集団のそれぞれに対応する一次分取基準が、一次分取判定に先立ち、例えばユーザにより指定されうる。前記光照射により生じた蛍光及び/又は散乱光の特徴が、指定された2以上の一次分取基準のいずれかを満たす場合に、前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定され、指定された2以上の一次分取基準のいずれも満たさない場合に、前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれにも属さないと判定されうる。
【0053】
前記一次分取基準は、光の波長及び/又は強度に関する基準であってよく、例えば、前記一次分取基準として、例えば以下を挙げることができる:
前記光が指定された波長範囲内の波長を有するか、
前記光が指定された強度範囲内の強度を有するか、又は
或る波長の光の強度と他の波長の光の強度との比が指定された範囲内にあるか。
前記一次分取基準は、これらの基準のうちの1つであってよく又は2つ以上であってもよい。
また前記一次分取基準は、前記光が検出された時刻に基づく微小粒子の判定基準を含んでも良い。例えば近接して検出される微小粒子の時刻間隔に閾値を設定する。より具体的には、前記判定基準は、或る微小粒子が検出された時刻前後の所定の時間内に、他の微小粒子が検出されたかどうかでありうる。前記設定された閾値が、前記所定の時間に対応する。当該判定基準を採用することで、例えば2つの近接する微小粒子が検出され且つ当該2つの微小粒子のうちの一方が分取されるべきでない場合において、分取されるべきでない微小粒子が回収されることを防ぐことができる。これにより、分取されるべき微小粒子の純度を高めることができる。
当該時刻に基づく微小粒子の判定基準は、例えば使用者が純度優先で分取を行うか又は収率優先で分取を行うかをあらかじめ設定することによって、前記一次分取基準として採用され又は採用されなくてよい。
純度優先で分取を行うと設定された場合、当該時刻に基づく微小粒子の判定基準が前記一次分取基準として採用されてよい。この場合において、波長範囲及び/または光強度の判定基準を満たす或る微小粒子が検出された時、さらに当該或る微小粒子が検出された時刻前後の時刻間隔の閾値内に他の微小粒子(例えば分取されるべきでないと判定された微小粒子など)が有るかどうかが判定される。他の微小粒子が有る場合には、当該或る微小粒子は分取を行わないと判定される。他の微小粒子が無い場合には、当該或る微小粒子は分取を行うと判定される。
収率優先で分取と行うと設定された場合、当該時刻に基づく微小粒子の判定基準が前記一次分取基準として採用されなくてよい。すなわち、波長範囲及び/または光強度の判定基準を満たす微小粒子が検出された時刻前後の微小粒子の判定に関わらず分取を行うと判定する。
時刻間隔の閾値は、前記微小粒子が検出された時刻の前と後で各々別の閾値を設定しても良い。
【0054】
以上で述べたとおり、判定部105は、或る微小粒子が検出された時刻前後の時刻間隔の閾値内に他の微小粒子が有るかどうかを判定し、他の微小粒子が有る場合には、当該或る微小粒子は分取を行わないと判定しうる。すなわち、判定部105は、或る微小粒子の近傍に他の微小粒子が有ることに応じて、当該或る微小粒子を分取しないと判定しうる。
また、上記で説明したとおり、判定部105は、所定の回数連続してアクチュエータが駆動されたことに応じて、その次に流れてきた微小粒子を分取しないと判定しうる。
判定部105は、或る微小粒子の近傍に他の微小粒子が有ることに応じて、当該或る微小粒子を分取しないと判定した回数、及び/又は、所定の回数連続してアクチュエータが駆動されたことに応じて、その次に流れてきた微小粒子を分取しないと判定した回数をカウントしうる。このようにしてカウントされた、分取しないと判定した回数は、例えば以下「(1-2)二次分取判定」において説明する微小粒子の分取数の取得のために用いられうる。
【0055】
前記一次分取判定は、例えば、上記特許文献1に記載のマイクロチップなどを用いたオンチップソーティングにおいて行われる光照射及び光検出による細胞分取判定であってよい。例えば上記特許文献1に記載のマイクロチップにおいて、流路を流れる細胞に対する光照射により生じた光が検出され、そして、当該検出された光の特徴に基づき、当該細胞を分取するかが判定される。このような分取判定が、前記一次分取判定として行われてよい。
【0056】
(1-2)二次分取判定
【0057】
判定部105は、前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する。当該判定が、本技術における二次分取判定である。
二次分取判定は、例えば、上記特許文献1に記載のマイクロチップなどを用いたオンチップソーティングにおける光の特徴に基づく分取判定の後に行われてよい。本技術がオンチップソーティングに適用される場合、光の特徴に基づく分取判定の後に、前記二次分取判定が行われ、その後、微小粒子の分取操作が行われる。
このように、本技術において、一次分取判定と微小粒子分取操作との間に、さらに前記二次分取判定を行うことで、複数種類の微小粒子を所定の構成比率で含む混合物を簡便に得ることができる。
二次分取判定処理は、種々の微小粒子分取装置において実装することができ、特には微小粒子への光照射により生じる分取判定及び当該判定結果に基づく微小粒子分取操作を行う微小粒子分取装置に組み込むことができる。例えば、上記特許文献1に記載のマイクロチップなどを用いたオンチップソーティングを行う微小粒子分取装置において、二次分取判定を行うことができる。
【0058】
前記粒子構成比率は、本技術に従い微小粒子分取処理を行う前に、予め指定される。例えば、本技術の微小粒子分取装置を使用するユーザが、当該粒子構成比率を予め指定しうる。例えば、当該粒子構成比率は、2以上の異なる微小粒子集団の構成比率であってよく、例えば2~20の異なる微小粒子集団の構成比率であってよく、特には2~10の異なる微小粒子集団の構成比率であってよく、より特には2~5の異なる微小粒子の構成比率であってよい。前記粒子構成比率が指定される微小粒子集団の数は、前記一次分取判定における微小粒子集団の数に対応しうる。
例えば、本技術に従い異なる2つの微小粒子集団A及びBを分取する場合において、例えばユーザが粒子構成比率(微小粒子集団Aに属する微小粒子の数:微小粒子集団Bに属する微小粒子の数)を例えば0超:100未満~100未満:0超、特には0.1:99.9~99.9:0.1、より特には1:99~99:1の数値範囲内で指定しうる。本技術に従う3つ以上の微小粒子集団を分取する場合においても、同様にユーザが粒子構成比率を指定しうる。
【0059】
例えば、2以上の微小粒子集団が、上記「(1-1)一次分取判定」において述べたように、細胞表面に存在する分子及び/又は分化段階によって分類される場合、それぞれの微小粒子集団について、ユーザによって粒子構成比率が指定されうる。例えば、CD8+であり且つナイーブT細胞の分化段階にある細胞、CD8+であり且つセントラルメモリーT細胞の分化段階にある細胞、CD4+であり且つナイーブT細胞の分化段階にある細胞、及び、CD4+であり且つセントラルメモリーT細胞の分化段階にある細胞の4つの細胞集団のそれぞれについて、同じ粒子構成比率(25:25:25:25)が指定されてよく、又は、異なる粒子構成比率(例えば20:40:30:10など)が指定されてもよい。
【0060】
判定部105は、二次分取判定を行う前に、当該指定された粒子構成比率に基づき、一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを判定するための基準(以下、「二次分取基準」ともいう)を設定しうる。二次分取基準は、一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子の分取によって当該粒子構成比率が達成されるように、設定されうる。前記二次分取基準は、例えば判定部105によって設定されてよく、又は、他の構成要素により設定されてもよい。
【0061】
本技術の一つの実施態様に従い、判定部105が、前記指定された粒子構成比率に基づき取得粒子数を設定してよい。本技術において、「取得粒子数」は、分取されるべき微小粒子数を意味する。この実施態様において、例えば、当該取得粒子数だけ分取されるべき微小粒子をすでに取得していないかが、二次分取基準として用いられうる。取得粒子数は、前記2以上の異なる微小粒子集団のそれぞれについて設定されうる。取得粒子数は、前記テスト測定の結果に基づき、判定部105によって指定されてよい。
例えばユーザが異なる2つの微小粒子集団A及びBの粒子構成比率を50:50(すなわち微小粒子集団Aに属する微小粒子の数:微小粒子集団Bに属する微小粒子の数=50:50)と指定したことに応じて、判定部105は、微小粒子集団A及びBに属する微小粒子の取得粒子数を、例えばそれぞれ100個及び100個又は200個及び200個などと設定しうる。
【0062】
判定部105は、当該設定された取得粒子数を超えない限りにおいて微小粒子を分取すると判定しうる。より具体的には、判定部105は、前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子の分取数が、前記指定された粒子構成比率に基づき設定された取得粒子数に達していない場合には、当該微小粒子を分取すると判定しうる。判定部105は、前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子の分取数が、前記指定された粒子構成比率に基づき設定された取得粒子数に達している場合には、当該微小粒子を分取しないと判定しうる。本技術において、「分取数」とは、既に分取された微小粒子の数を意味する。
例えば異なる2つの微小粒子集団A及びBの取得粒子数がそれぞれ100個及び100個と設定されており且つ微小粒子集団Aの分取数が100個であり且つ微小粒子集団Bの分取数が99個である場合を想定する。この場合において、前記一次分取判定において微小粒子が微小粒子集団Aに属すると判定された場合に、判定部105は、当該微小粒子が属する微小粒子集団Aの分取数は100個であり、すなわち取得粒子数に達しているので、当該微小粒子を分取しないと判定する。一方で、前記一次分取判定において微小粒子が微小粒子集団Bに属すると判定された場合に、判定部105は、当該微小粒子が属する微小粒子集団Bの分取数は99個であり、すなわち取得粒子数に達していないので、当該微小粒子を分取すると判定する。
判定部105がこのように二次分取判定を行うことによって、回収された微小粒子が前記粒子構成比率を有するものとなる。
【0063】
前記微小粒子の分取数は、粒子分取流路159内の所定の位置を通過した微小粒子の数をカウントすることにより取得されうる。すなわち、粒子分取流路159内の所定の位置を微小粒子が通過した回数が、前記微小粒子の分取数として用いられてよい。当該カウントのため、例えば粒子分取流路159内の当該所定の位置に向けて光照射が行われうる。微小粒子が当該所定の位置を通過したときに、当該光照射によって当該微小粒子から光が生じる。当該光を検出することで、微小粒子の通過を検知することができる。当該光が検出された回数が、前記通過した回数として用いられてよい。このように微小粒子の通過を検出するために例えば、当該所定の位置に向けて光を照射する光照射部と、当該光照射により生じた光を検出する検出部が、微小粒子分取装置100に備えられうる。当該光照射部及び当該検出部に、上記で光照射部101及び検出部102に関して説明した内容が当てはまる。前記カウントは、例えば制御部103により行われうる。
代替的には、前記微小粒子の分取数は、例えば、分取制御部107が分取動作を行った回数をカウントすることにより取得されうる。すなわち、分取制御部107が分取動作を行った回数が、前記微小粒子の分取数として用いられてよい。当該カウントは、制御部103により行われてよく、特には分取制御部107により行われうる。
代替的には、前記微小粒子の分取数は、例えば、判定部105が分取すると判定した回数をカウントすることによって取得されうる。すなわち、判定部105が分取すると判定した回数が、前記微小粒子の分取数として用いられてよい。当該カウントは、制御部103により行われてよく、特には判定部105により行われうる。
【0064】
代替的には、前記微小粒子の分取数は、或る微小粒子集団に属すると判定された回数から、当該或る微小粒子集団に属すると判定されたが分取しないと判定された回数を差し引くことによって取得されてもよい。このように分取数を取得することによって、分取数を正確にカウントすることができる。
或る微小粒子集団に属すると判定された回数は、上記「(1-1)一次分取判定」において述べたとおり、判定部105が、当該或る微小粒子集団に属すると判定した回数であってよい。
また、当該或る微小粒子集団に属すると判定されたが分取しないと判定された回数は、例えば、上記「(1-1)一次分取判定」で述べたとおり、判定部105が分取しないと判定した回数であってよい。すなわち、判定部105が、(或る微小粒子の近傍に他の微小粒子が有ることに応じて、当該或る微小粒子を分取しないと判定した回数)と(所定の回数連続してアクチュエータが駆動されたことに応じて、その次に流れてきた微小粒子を分取しないと判定した回数)との合計であってよく、又は、これら2つの回数のいずれかであってもよい。
【0065】
本技術の他の実施態様に従い、回収された微小粒子の構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む所定の数値範囲内にある限りにおいて、判定部105は、微小粒子を分取すると判定しうる。すなわち、回収された微小粒子の構成比率が前記指定された粒子構成比率を含む所定の数値範囲内にあるかが、二次分取基準として用いられうる。
より具体的には、判定部105は、前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取した場合の粒子構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内である場合には、当該微小粒子を分取すると判定しうる。判定部105は、前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取した場合の粒子構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内にない場合には、当該微小粒子を分取しないと判定しうる。
判定部105は、例えば指定された粒子構成比率±所定の閾値を、前記指定された数値範囲として採用しうる。より具体的には、例えばユーザが異なる2つの微小粒子集団A及びBの粒子構成比率を50:50と指定した場合において、各集団について指定された粒子構成比率(50)±所定の閾値(例えば0.05)、すなわち49.5~50.5を前記指定された数値範囲として採用しうる。当該閾値は、本技術に従う微小粒子分取装置のユーザにより設定されてよい。
判定部105がこのように二次分取判定を行うことによって、より多くの微小粒子を前記指定された数値範囲内の構成比率で回収することができる。
【0066】
本技術に従う微小粒子分取装置は、以上(1-1)及び(1-2)において説明したとおり、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを判定し、そして、前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、指定された粒子構成比率に基づき判定する。分取すると判定された微小粒子は、オリフィス部170を通って、粒子分取流路159へと流れる。粒子分取流路末端161には、例えば粒子回収流路を介して、1つの容器が接続されうる。すなわち、分取すると判定された微小粒子は、粒子分取流路末端161を出て、当該粒子回収流路を通って、当該1つの容器へと流れる。以上のとおり、本技術に従う微小粒子分取装置において、2以上の異なる微小粒子集団が、1つの粒子分取流路159を通って当該1つの容器へと流れる。
ここで、微小粒子集団を「クラス」と言い、オリフィス部170から当該容器へと流れる流れを「ストリーム」と言うと、本技術の微小粒子分取装置によって、異なる2以上のクラスが同じストリームにアサインされるとも捉えることができる。そして、クラス数がストリーム数よりも多いという関係が成立することによって、2以上のクラスを所定の比率で含む混合物が得られる。
例えば4種類のクラスが指定される場合を想定する。この場合、本技術の微小粒子分取装置によって、4種類のクラスが1つのストリームへアサインされ、これにより4種類のクラスを同時に分取することができる。また、本技術の微小粒子分取装置によって、4種類のクラスが2つに分けられ(例えばクラスA~Dが、クラスA及びB並びにクラスC及びDに分けられ)、2つに分けられたクラスが2つのストリームへそれぞれアサインされてもよい(例えばクラスA及びBが、ストリーム1へアサインされ、クラスC及びDがストリーム2へアサインされうる)。2つ以上のストリームへアサインする実施態様は、例えば、以下で述べるフローサイトメータにおいて採用されてよい。この場合、1つのストリームは、電荷が付与された液滴の進行方向を変更する部分から液滴が回収される容器までを含みうる。2つ以上のストリームへアサインする実施態様は、微小粒子分取用マイクロチップ150において採用されてもよく、この場合、例えば当該チップ内に2つ以上の粒子回収流路が設けられてよく、又は、分岐流路が粒子回収流路として用いられてもよい。
【0067】
本技術に従う微小粒子分取装置は、微小粒子を含む液滴を生成し、そして当該液滴の移動方向を制御することによって微小粒子を分取する微小粒子分取装置であってもよい。このような微小粒子分取装置の例として、フローサイトメータを挙げることができる。フローサイトメータは、フローセル方式又はジェットインエアー方式のいずれのものであってもよい。例えば、通常のフローサイトメータに本技術に従う判定部を導入することによって、当該フローサイトメータを本技術に従う微小粒子分取装置として使用することができる。一般的なフローサイトメータには、流路を流れる微小粒子に対して光照射を行う光照射部、当該光照射により生じた光を検出する検出部、及び当該光の特徴に関する情報を生成する信号処理部が備えられている。そのため、例えば、当該光の特徴に関する情報を利用して、本技術に従う判定部による微小粒子の分取判定処理が行われうる。当該判定部による判定結果に基づき微小粒子を含む液滴の移動方向を制御することによって、複数種類の微小粒子を特定の粒子構成比率で含む微小粒子混合物(例えば細胞混合物)が得られる。
【0068】
以下で、本技術に従う微小粒子分取装置による分取処理のより具体的な例を説明する。
【0069】
(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)
【0070】
本例では、本技術の微小粒子分取装置100によって全血溶血サンプルからT細胞のサブセットであるCD4T細胞及びCD8T細胞を1:1の細胞構成比率で分取するための分取処理を説明する。
なお、本例並びに以下の「(3)第1の実施形態の第2の例(微小粒子の分取動作の例)」及び「(4)第1の実施形態の第3の例(微小粒子の分取動作の例)」において、本技術のより良い理解のために、特定の2種類のT細胞を分取するという事例を採用しているが、これらの例における微小粒子分取装置100の動作によって、当該T細胞以外の細胞、及び、細胞以外の微小粒子が分取されてもよい。また、本例における微小粒子分取装置100の動作と同様の動作によって、3種類以上の微小粒子を所定の粒子構成比率で分取することも可能である。また、これらの例では1:1の粒子構成比率で分取するという事例を取り上げているが、本例における微小粒子分取装置100の動作によって、他の粒子構成比率で微小粒子を分取することも可能である。
【0071】
まず、ユーザが、全血を溶血したサンプルに対して微小粒子分取装置100によるテスト測定を行い、ヒストグラムを得る。当該テスト測定の結果、図4に示されるとおりのヒストグラムが得られた場合を想定する。この場合において、ユーザは、図4(a)のヒストグラムのうち、リンパ球に対応する領域を含むようにゲートAを設定する。次に、ユーザはゲートAを展開し、これにより図4(b)のヒストグラムが得られる。ユーザは、図4(b)のヒストグラムのうち、CD3(T細胞であることを示す)であるリンパ球に対応する領域を含むようにゲートBを設定する。次に、ユーザはゲートBを展開し、これにより図4(c)のヒストグラムが得られる。ユーザは、図4(c)のヒストグラムのうち、CD4のT細胞及びCD8のT細胞のそれぞれに対応する領域を含むようにゲートC及びゲートDをそれぞれ設定する。すなわち、ゲートA内にあり且つゲートB内にあり且つゲートC内にある細胞が、CD4のT細胞である。また、ゲートA内にあり且つゲートB内にあり且つゲートD内にある細胞が、CD8のT細胞である。
以上のとおり、テスト測定を行うことによって、目的の細胞(CD4T細胞及びCD8T細胞)を分取するために設定されるべきゲートが判明する。
【0072】
なお、ゲートB内にある細胞のうち、CD4のT細胞(ゲートC内の細胞)の割合及びCD8のT細胞(ゲートD内の細胞)の割合は、それぞれ46.66%及び20.3%である。そのため、「ゲートA且つゲートB且つゲートC」or「ゲートA且つゲートB且つゲートD」というor論理によって細胞を分取しても、分取された細胞混合物中のCD4のT細胞及びCD8のT細胞の細胞構成比率は1:1にならない。
【0073】
以上のテスト測定によって目的細胞を分取するために設定されるべきゲートが判明した後に、ユーザは、例えば図5に示されるとおり、一次分取基準としてのゲート論理及び二次分取基準を設定するための粒子構成比率を指定する。図5において、一次分取基準として、ゲートNo.1について「ゲートA且つゲートB且つゲートC」というゲート論理が設定され、且つ、ゲートNo.2について「ゲートA且つゲートB且つゲートD」というゲート論理が指定されている。さらに、図5において、ゲートNo.1について50%とう粒子構成比率が指定されており、且つ、ゲートNo.2について50%という粒子構成比率が指定されている。すなわち、これら2種の細胞の粒子構成比率が1:1であると指定されている。
【0074】
以上のとおりに一次分取基準としてのゲート論理が指定され且つ二次分取基準を設定するための粒子構成比率が指定された後に、本技術の微小粒子分取装置は、微小粒子分取処理を開始する。以下、本技術の微小粒子分取装置による微小粒子分取処理を、図1及び図6を参照して説明する。図1は、微小粒子分取装置100の構成を示す図であり、上記で説明したとおりである。図6は、本技術に従う微小粒子分取処理のフロー図である。図6のフロー図により示される微小粒子分取処理は、ゲートNo.1のゲート論理を満たす細胞が所定の数だけ分取された後に、ゲートNo.2のゲート論理を満たす細胞が所定の数だけ分取されるという処理である。以下で、当該微小粒子分取処理の詳細を説明する。
【0075】
図6のステップS101において、ユーザが上記のゲート論理及び粒子構成比率を例えばインタフェースを介して微小粒子分取装置100に入力する。
【0076】
ステップS101において前記入力を行うユーザは、上記で述べた一次分取基準としてのゲート論理を指定し且つ二次分取基準を設定するための粒子構成比率を指定したユーザと同じであってよく又は異なっていてもよい。これらユーザが異なる場合の例として、細胞治療薬の開発及び開発された細胞治療薬の生産を行う場合が挙げられる。細胞治療薬の開発は、例えば研究室において行われ、ゲート論理及び粒子構成比率の設定が例えば専門家又はエンジニアにより行われうる。そして、開発された細胞治療薬は、例えば工場において行われ、微小粒子分取装置の操作者(前記設定を行った者以外の者)によって製造されうる。
【0077】
前記ゲート論理及び粒子構成比率の設定に伴い、本技術に従う微小粒子分取方法を微小粒子分取装置に実行させるためのプログラムが用意されてもよい。当該プログラムが、例えば情報記憶媒体によって又は有線若しくは無線で、前記専門家又はエンジニアから前記操作者へと送信されうる。
【0078】
ステップS102において、判定部105は、分取の単位個数を設定する。分取の単位個数は、例えば、前記テスト測定においてカウントされた各ゲート論理を満たす細胞の数に基づき、判定部105により設定されうる。又は、前記テスト測定においてカウントされた各ゲート論理を満たす細胞の数に基づき、ユーザが分取の単位個数を設定してもよい。
例えば、図6に示されるとおり、分取の単位個数は100個と設定されうる。
【0079】
ステップS103において、判定部105は、ユーザにより指定された前記粒子構成比率に基づき、ゲートNo.1のゲート論理を満たす細胞の取得数及びゲートNo.2のゲート論理を満たす細胞の取得数を設定する。これらの細胞の取得数は、例えば、ステップS102において設定された分取の単位個数と前記粒子構成比率とに基づき設定されうる。例えば、分取の単位個数を、前記粒子構成比率に応じて、各ゲートに割り振る。
例えば、ステップS102において分取の単位個数が100個と設定された場合、当該単位個数(100個)と前記粒子構成比率(1:1)とに基づき、ゲートNo.1のゲート論理を満たす細胞の取得数として50個が設定され、且つ、ゲートNo.2のゲート論理を満たす細胞の取得数として50個が設定される。
【0080】
ステップS104において、微小粒子分取装置100は、分取処理を開始する。
【0081】
ステップS105において、微小粒子分取装置100は、ゲートNo.1のゲート論理を満たす細胞の分取を開始する。例えば、制御部103が、サンプル液及びシース液をそれぞれサンプル液流路152及びシース液流路154に導入するためのポンプ(図示せず)を駆動することによって、当該分取が開始される。当該駆動によって、サンプル液及びシース液がサンプル液流路152及びシース液流路154に導入され、そして、合流部162でこれらの液が合流して層流が形成される。当該層流は、主流路155を分取部157に向かって流れる。
【0082】
ステップS106において、主流路155中を流れる細胞への光照射により生じた光の検出が行われる。当該検出は検出領域156において行われる。光照射部101が当該光照射を行い、検出部102が、当該光照射により生じた光の検出を行う。
【0083】
ステップS107において、判定部105が、ステップS106において検出された光が、ゲートNo.1のゲート論理を満たすかを判定する。当該検出された光がゲートNo.1のゲート論理を満たす場合、制御部103が、処理をステップS108に進める。当該検出された光がゲートNo.1のゲート論理を満たさない場合、制御部103が、処理をステップS106に戻し、次に流れてきた細胞への光照射及び当該光照射により生じた光の検出を行う。ゲートNo.1のゲート論理を満たさない光を生じさせた細胞は、分岐流路158へ流れる。
【0084】
ステップS108において、判定部105が、ゲートNo.1のゲート論理を満たすとしてすでに粒子分取流路159内に分取された細胞の数を、ステップS103において設定された細胞取得数と比較する。
判定部105は、当該比較の結果、前記分取された細胞の数が前記細胞取得数に達していない場合は、ステップS107においてゲートNo.1のゲート論理を満たすと判定された細胞を分取すると判定する。当該細胞を分取すると判定されたことに応じて、制御部103は、処理をステップS109に進める。
判定部105は、当該比較の結果、前記分取された細胞の数が前記細胞取得数に達している場合には、ステップS107においてゲートNo.1のゲート論理を満たすと判定された細胞を分取しないと判定する。当該細胞を分取しないと判定されたことに応じて、制御部103は、処理をステップS110に進める。
【0085】
ステップS109において、制御部103は、ステップS107においてゲートNo.1のゲート論理を満たすと判定された細胞を分取するための処理を行う。例えば、制御部103のうちの分取制御部107が、当該細胞が検出領域156を通過して所定の時間が経過した後に、粒子分取流路159上に設けられたピエゾアクチュエータ(図示せず)を駆動して、粒子分取流路159の内空を変形させて粒子分取流路159内に負圧を発生させる。これにより、当該細胞が粒子分取流路159内に回収される。
【0086】
ステップS110において、制御部103は、現在のゲート番号に1を足した値を、最大ゲート番号と比較する。
前記値が、最大ゲート番号と同じ又は最大ゲート番号より小さい場合、制御部103は、処理をステップS105に戻し、微小粒子分取装置100は、現在のゲート番号に1を足したゲート番号のゲート論理を満たす細胞の分取を開始する。
前記値が、最大ゲート番号よりも大きい場合、制御部103は、処理をステップS111に進める。
【0087】
ステップS111において、制御部103は、分取処理終了条件が満たされているかを判定する。分取処理終了条件は、例えば、細胞取得数の合計が所定の数に達しているか、分取処理を行った時間が所定の値に達しているか、又はユーザから分取処理終了の指示が入力されたか(例えば分取処理終了ボタンがクリックされたか)などでありうる。
分取処理終了条件が、細胞取得数の合計が所定の数に達しているかである場合、予め当該所定の数が指定されていてよい。例えば、当該所定の数が500である場合、ステップS102において指定された分取の単位個数は100であるので、5回目のステップS111の処理において(ステップS105~ステップS110が5回繰り返された場合に)、制御部103は、細胞取得数の合計が所定の数に達していると判定する。
制御部103は、分取処理終了条件が満たされていると判定した場合に、処理をステップS112に進める。
制御部103は、分取処理終了条件が満たされていないと判定した場合は、処理をステップS105に戻し、細胞の分取を開始する。例えば、最小のゲート番号のゲート論理を満たす細胞の分取を開始する。
【0088】
分取処理終了条件は、上記で説明した条件以外であってもよい。分取処理終了条件は、例えば、検出領域156を泡が流れたことが検出されたかであってよい。例えば、サンプル液流路152又はシース液流路154には、サンプル液又はシース液を供給するための液体含有容器が、例えば流路(チューブなど)を介して、接続されている。当該液体含有容器には、サンプル液又はシース液に加えて、気体が含まれうる。当該液体含有容器が空に近づくと、当該気体が、泡として、サンプル液流路152又はシース液流路154を流れ、そして、主流路155へと流れうる。泡に対する光照射によって生じる光の検出時間の長さは、微小粒子に対する光照射によって生じる光の検出時間の長さと異なりうる(特にはより長い)。泡に対する光照射によって生じる光の特徴も、微小粒子に対する光照射によって生じる光の特徴と異なりうる。そのため、当該相違に基づき泡が流れたことを検出することができる。そこで、主流路155の検出領域156を当該泡が通過したことに応じて、分取処理が終了されうる。
具体的には、泡に対する光照射によって生じる光が、検出部102により検出され(アナログ電気信号へ光電変換され)、当該アナログ電気信号が信号処理部104によりデジタル電気信号へ変換されうる。そして、判定部105が、当該デジタル電気信号に基づき泡が流れたかを判定しうる。泡が検出領域156を流れたと判定されることに応じて、制御部103は、分取処理を終了しうる。
代替的には、分取処理終了条件は、上記で述べた粒子分取流路159内への前記所定の位置への光照射によって当該所定の位置を泡が通過したことが検出されたかであってもよい。この場合も、上記と同様に、当該光照射によって生じた光が、検出部及び信号処理部によってデジタル電気信号へと変換され、当該デジタル電気信号に基づき、判定部105が、泡が当該所定の位置を通過したかを判定しうる。泡が当該所定の位置を通過したと判定されることに応じて、制御部103は、分取処理を終了しうる。
【0089】
分取処理終了条件のさらに他の例は、サンプル液又はシース液をサンプル液流路152又はシース液流路154に供給するための前記液体含有容器の重量が所定の値以下になったか又は当該重量の減少量が所定の値以上となったかであってもよい。当該液体含有容器の重量の計測のために、重量センサが微小粒子分取装置100に接続されていてよい。当該重量センサにより計測される量の量データが、制御部103に逐次的に又は連続的に送信され、当該量データに応じて、制御部103が、分取処理を終了しうる。
代替的には、分取処理重量条件は、上記で述べた粒子分取流路末端161に接続された前記容器の重量が所定の値以上になったか又は当該重量の増加量が所定の値以上となったかであってもよい。当該容器の重量の計測のために、重量センサが微小粒子分取装置100に接続されていてよい。当該重量センサにより計測される量の量データが、制御部103に逐次的に又は連続的に送信され、当該量データに応じて、制御部103が、分取処理を終了しうる。
【0090】
ステップS112において、微小粒子分取装置100は、分取処理を終了する。
【0091】
以上のとおりの分取処理によって、CD4T細胞及びCD8T細胞が1:1の細胞構成比率で回収される。
【0092】
(3)第1の実施形態の第2の例(微小粒子の分取動作の例)
【0093】
本例は、本技術の微小粒子分取装置100によって全血溶血サンプルからT細胞のサブセットであるCD4T細胞及びCD8T細胞を1:1の細胞構成比率で分取するための分取処理の他の例である。
【0094】
まず、ユーザが、全血を溶血したサンプルに対して微小粒子分取装置100によるテスト測定を行い、これにより、上記「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」で述べたとおり、目的の細胞(CD4T細胞及びCD8T細胞)を分取するために設定されるべきゲートが判明する。すなわち、ゲートA内にあり且つゲートB内にあり且つゲートC内にある細胞が、CD4のT細胞である。また、ゲートA内にあり且つゲートB内にあり且つゲートD内にある細胞が、CD8のT細胞である。
【0095】
以上のテスト測定によって目的細胞を分取するために設定されるべきゲートが判明した後に、ユーザは、例えば図5に示されるとおり、一次分取基準としてのゲート論理及び二次分取基準を設定するための粒子構成比率を指定する。当該ゲート論理及び粒子構成比率は、上記「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」において述べたとおりである。
【0096】
以上のとおりに一次分取基準としてのゲート論理が指定され且つ二次分取基準を設定するための粒子構成比率が指定された後に、本技術の微小粒子分取装置は、微小粒子分取処理を開始する。以下、本技術の微小粒子分取装置による微小粒子分取処理を、図1及び図7を参照して説明する。図1は、微小粒子分取装置100の構成を示す図であり、上記で説明したとおりである。図7は、本技術に従う微小粒子分取処理のフロー図である。図7のフロー図により示される微小粒子分取処理は、ゲートNo.1のゲート論理を満たす細胞及びゲートNo.2のゲート論理を満たす細胞を、回収されたこれらの細胞の数が各細胞に対してあらかじめ設定された取得数に達するまで分取処理を継続するという処理である。以下で、当該微小粒子分取処理の詳細を説明する。
【0097】
図7のステップS201~S204は、図7のステップS101~104と同じである。そのため、図7のステップS201~S204についての説明は省略する。
【0098】
ステップS205において、微小粒子分取装置100は、ゲートNo.1のゲート論理又はゲートNo.2のゲート論理のいずれかを満たす細胞の分取を開始する。例えば、制御部103が、サンプル液及びシース液をそれぞれサンプル液流路152及びシース液流路154に導入するためのポンプ(図示せず)を駆動することによって、当該分取が開始される。当該駆動によって、サンプル液及びシース液がサンプル液流路152及びシース液流路154に導入され、そして、合流部162でこれらの液が合流して層流が形成される。当該層流は、主流路155を分取部157に向かって流れる。
【0099】
ステップS206において、主流路155中を流れる細胞への光照射により生じた光の検出が行われる。当該検出は検出領域156において行われる。光照射部101が当該光照射を行い、検出部102が、当該光照射により生じた光の検出を行う。
【0100】
ステップS207において、判定部105が、ステップS206において検出された光が、ゲートNo.1のゲート論理又はゲートNo.2のゲート論理のいずれかを満たすかを判定する。当該検出された光がこれらのゲート論理のいずれかを満たす場合、制御部103が、処理をステップS208に進める。当該検出された光がこれらのゲート論理のいずれも満たさない場合、制御部103が、処理をステップS206に戻し、次に流れてきた細胞への光照射及び当該光照射により生じた光の検出を行う。これらのゲート論理のいずれも満たさない光を生じさせた細胞は、分岐流路158へ流れる。
【0101】
ステップS208において、判定部105が、ゲートNo.1のゲート論理又はゲートNo.2のゲート論理のいずれかを満たす光を生じさせた細胞を分取すべきかを判定する。当該判定は、以下のとおりに行われる。
前記検出された光がゲートNo.1のゲート論理を満たす場合、ゲートNo.1のゲート論理を満たすとしてすでに粒子分取流路159内に分取された細胞の数を、ステップS203において設定された細胞取得数と比較する。判定部105は、当該比較の結果、前記分取された細胞の数が前記細胞取得数に達していない場合は、ステップS207においてゲートNo.1を満たすと判定された細胞を分取すると判定する。当該細胞を分取すると判定されたことに応じて、制御部103は、処理をステップS209に進める。判定部105は、当該比較の結果、前記分取された細胞の数が前記細胞取得数に達している場合には、ステップS207においてゲートNo.1を満たすと判定された細胞を分取しないと判定する。当該細胞を分取しないと判定されたことに応じて、制御部103は、処理をステップS210に進める。
前記検出された光がゲートNo.2のゲート論理を満たす場合、ゲートNo.2のゲート論理を満たすとしてすでに粒子分取流路159内に分取された細胞の数を、ステップS203において設定された細胞取得数と比較する。判定部105は、当該比較の結果、前記分取された細胞の数が前記細胞取得数に達していない場合は、ステップS207においてゲートNo.2を満たすと判定された細胞を分取すると判定する。当該細胞を分取すると判定されたことに応じて、制御部103は、処理をステップS209に進める。判定部105は、当該比較の結果、前記分取された細胞の数が前記細胞取得数に達している場合には、ステップS207においてゲートNo.2を満たすと判定された細胞を分取しないと判定する。当該細胞を分取しないと判定されたことに応じて、制御部103は、処理をステップS210に進める。
【0102】
ステップS209において、制御部103は、ステップS207においてゲートNo.1のゲート論理又はゲートNo.1のゲート論理のいずれかを満たすと判定された細胞を分取するための処理を行う。例えば、制御部103のうちの分取制御部107が、当該細胞が検出領域156を通過して所定の時間が経過した後に、粒子分取流路159上に設けられたピエゾアクチュエータ(図示せず)を駆動して、粒子分取流路159の内空を変形させて粒子分取流路159内に負圧を発生させる。これにより、当該細胞が粒子分取流路159内に回収される。
制御部103は、ステップS209の処理の後に、処理をステップS206に戻してよい。代替的には、制御部103は、ステップS209の処理が完了する前に、ステップS206の処理を行ってもよい。これにより、層流中に並ぶ細胞の間隔が狭い場合であっても、連続する細胞に対して分取処理を行うことができる。
【0103】
ステップS210において、制御部103は、全てのゲート番号について、すでに粒子分取流路159内に分取された細胞の数がステップS203において設定された細胞取得数に達しているかを判定する。全てのゲート番号について、すでに粒子分取流路159内に分取された細胞の数がステップS203において設定された細胞取得数に達している場合は、制御部103は、処理をステップS211に進める。ゲート番号の少なくとも一つについて、すでに粒子分取流路159内に分取された細胞の数がステップS203において設定された細胞取得数に達していない場合は、制御部は処理をステップS206に戻し、細胞の分取処理を継続する。
【0104】
ステップS211において、制御部103は、分取処理終了条件が満たされているかを判定する。分取処理終了条件は、例えば、細胞取得数の合計が所定の数に達しているか、分取処理を行った時間が所定の値に達しているか、又はユーザから分取処理終了の指示が入力されたか(例えば分取処理終了ボタンがクリックされたか)などでありうる。
制御部103は、分取処理終了条件が満たされていると判定した場合に、処理をステップS212に進める。
制御部103は、分取処理終了条件が満たされていないと判定した場合は、処理をステップS205に戻し、細胞の分取を開始する。
【0105】
ステップS212において、微小粒子分取装置100は、分取処理を終了する。
【0106】
以上のとおりの分取処理によって、CD4T細胞及びCD8T細胞が1:1の細胞構成比率で回収される。
【0107】
また、以上の分取処理を行うことによって、単位個数の分取が可能となる。以上の説明では、単位個数は100個と設定されているが、単位個数はこれに限られず、分取されるべき細胞の数に応じて設定されてよい。単位個数は、例えば10個~1000000個、特には50個~100000個、より特には100個~10000個でありうる。そして、単位個数の分取を繰り返すことによって、効率的に所定の粒子構成比率で異なる2以上の微小粒子集団を含む微小粒子混合物を用意することができる。
【0108】
本技術の一つの好ましい実施態様において、上記ステップS205~S212が繰り返される。すなわち、単位個数の分取が繰り返される。例えば、単位個数が10000個であり、4つのゲート論理(ゲートA、B、C、及びD)が設定され、且つ、粒子構成比率が、A:B:C:D=1:2:3:4である場合を想定する。この場合に、単位個数の分取処理を行うことによって、ゲート論理A、B、C、及びDを満たす細胞をそれぞれ1000個、2000個、3000個、及び4000個含む細胞混合物が得られる。そして、単位個数の分取処理を10回繰り返すことによって得られる細胞混合物は、細胞を100000個含み、且つ、当該100000個の細胞の粒子構成比率は、A:B:C:D=1:2:3:4となる。このようにして分取処理を行うことによって、所定の粒子構成比率の微小粒子混合物を効率的に取得することができる。
【0109】
なお、単位個数の分取処理を繰り返すことは、本例に限らず、上記「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」において、又は、下記「(4)第1の実施形態の第3の例(微小粒子の分取動作の例)」において行われてもよい。
【0110】
(4)第1の実施形態の第3の例(微小粒子の分取動作の例)
【0111】
本例は、本技術の微小粒子分取装置100によって、全血溶血サンプルからT細胞のサブセットであるCD4T細胞及びCD8T細胞を、これらの細胞の構成比率が、ユーザにより指定された1:1という比率を含む所定の数値範囲内となるように分取する例である。
【0112】
まず、ユーザが、全血を溶結したサンプルに対して微小粒子分取装置100によるテスト測定を行い、これにより、上記「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」で述べたとおり、目的の細胞(CD4T細胞及びCD8T細胞)を分取するために設定されるべきゲートが判明する。すなわち、ゲートA内にあり且つゲートB内にあり且つゲートC内にある細胞が、CD4のT細胞である。また、ゲートA内にあり且つゲートB内にあり且つゲートD内にある細胞が、CD8のT細胞である。
【0113】
以上のテスト測定によって目的細胞を分取するために設定されるべきゲートが判明した後に、ユーザは、例えば図5に示されるとおり、一次分取基準としてのゲート論理及び二次分取基準を設定するための粒子構成比率を指定する。当該ゲート論理及び粒子構成比率は、上記「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」において述べたとおりである。
【0114】
以上のとおりに一次分取基準としてのゲート論理が指定され且つ二次分取基準を設定するための粒子構成比率が指定された後に、本技術の微小粒子分取装置は、微小粒子分取処理を開始する。以下、本技術の微小粒子分取装置による微小粒子分取処理を、図1及び図8を参照して説明する。図1は、微小粒子分取装置100の構成を示す図であり、上記で説明したとおりである。図8は、本技術に従う微小粒子分取処理のフロー図である。図8のフロー図により示される微小粒子分取処理は、最初に例えば上記「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」又は「(3)第1の実施形態の第2の例(微小粒子の分取動作の例)」において述べた処理などの分取処理を行って所定の数の細胞を取得し、そして次に、各細胞の構成比率がユーザにより指定された比率を含む所定の数値範囲内となる限りにおいて、粒子を分取するという処理である。以下で、当該微小粒子分取処理の詳細を説明する。
【0115】
図8のステップS301において、ユーザが上記のゲート論理及び粒子構成比率を例えばインタフェースを介して微小粒子分取装置100に入力する。
【0116】
ステップS302において、微小粒子分取装置100は、分取処理を開始する。
【0117】
ステップS303において、微小粒子分取装置100は、ゲートNo.1のゲート論理を満たす細胞とゲートNo.2のゲート論理を満たす細胞とを、これらの細胞の構成比率がユーザにより指定された粒子構成比率となるように取得する。当該取得のために、例えば、上記「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」又は「(3)第1の実施形態の第2の例(微小粒子の分取動作の例)」において述べた分取処理が行われる。
例えば、図8に示されるとおり、分取の単位個数が100個と設定される。そして、当該100個のうち、ゲートNo.1のゲート論理を満たす細胞の取得数として50個が設定され、且つ、ゲートNo.2のゲート論理を満たす細胞の取得数として50個が設定される。これらの取得数を達成するために、例えばステップS104~S110の処理又はステップS204~S210の処理が行われうる。
上記分取処理によって、ゲートNo.1のゲート論理を満たす細胞とゲートNo.2のゲート論理を満たす細胞がそれぞれ50個ずつ回収される。
【0118】
ステップS304以降において、微小粒子分取装置100は、微小粒子分取処理を継続する。ステップS304以降において、各細胞の構成比率がユーザにより指定された比率を含む所定の数値範囲内となる限りにおいて粒子を分取するという処理が行われる。
【0119】
ステップS304において、主流路155中を流れる細胞への光照射により生じた光の検出が行われる。当該検出は検出領域156において行われる。光照射部101が当該光照射を行い、検出部102が、当該光照射により生じた光の検出を行う。
【0120】
ステップS305において、判定部105が、ステップS304において検出された光が、ゲートNo.1のゲート論理又はゲートNo.2のゲート論理のいずれかを満たすかを判定する。当該検出された光がこれらのゲート論理のいずれかを満たす場合、制御部103が、処理をステップS306に進める。当該検出された光がこれらのゲート論理のいずれも満たさない場合、制御部103が、処理をステップS304に戻し、次に流れてきた細胞への光照射及び当該光照射により生じた光の検出を行う。これらのゲート論理のいずれも満たさない光を生じさせた細胞は、分岐流路158へ流れる。
【0121】
ステップS306において、判定部105が、ステップS305においてゲートNo.1のゲート論理又はゲートNo.2のゲート論理のいずれか(すなわち一次分取基準のいずれか)を満たすと判定された光を生じさせる細胞を分取した場合の粒子構成比率が、ユーザにより指定された比率を含む所定の数値範囲内にあるかを判定する。
例えば、当該所定の数値範囲として、(ユーザにより指定された比率閾値)±(閾値)が採用されうる。本例において、各細胞の粒子構成比率はそれぞれ50%である。そのため、本例において、閾値として1%された場合、50±0.05%(すなわち49.5%~50.5%)が、当該所定の数値範囲である。
前記判定の結果、一次分取基準のいずれかを満たすと判定された光を生じさせる細胞を分取した場合の粒子構成比率が、上記所定の数値範囲内にある場合、制御部103は、処理をステップS307に進める。
前記判定の結果、一次分取基準のいずれかを満たすと判定された光を生じさせる細胞を分取した場合の粒子構成比率が、上記所定の数値範囲内にない場合、制御部103は、処理をステップS308に進める。
【0122】
ステップS307において、制御部103は、ステップS305においてゲートNo.1のゲート論理又はゲートNo.1のゲート論理のいずれかを満たす光を生じさせた細胞を分取するための処理を行う。例えば、制御部103のうちの分取制御部107が、当該細胞が検出領域156を通過して所定の時間が経過した後に、粒子分取流路159上に設けられたピエゾアクチュエータ(図示せず)を駆動して、粒子分取流路159の内空を変形させて粒子分取流路159内に負圧を発生させる。これにより、当該細胞が粒子分取流路159内に回収される。
制御部103は、ステップS307の処理の後に、処理をステップS304に戻してよい。又は、制御部103は、ステップS307の処理が完了する前に、ステップS304の処理を行ってもよい。これにより、層流中に並ぶ細胞の間隔が狭い場合であっても、連続する細胞に対して分取処理を行うことができる。
【0123】
ステップS308において、制御部103は、分取処理終了条件が満たされているかを判定する。分取処理終了条件は、例えば、細胞取得数の合計が所定の数に達しているか、分取処理を行った時間が所定の値に達しているか、又はユーザから分取処理終了の指示が入力されたか(例えば分取処理終了ボタンがクリックされたか)などでありうる。
制御部103は、分取処理終了条件が満たされていると判定した場合に、処理をステップS309に進める。
制御部103は、分取処理終了条件が満たされていないと判定した場合は、処理をステップS304に戻し、細胞の分取を継続する。
【0124】
ステップS309において、微小粒子分取装置100は、分取処理を終了する。
【0125】
以上のとおりの分取処理において、CD4T細胞及びCD8T細胞がそれぞれ50個ずつ回収された後に、さらに、細胞構成比率が前記所定の数値範囲内にある限りにおいて細胞分取処理が継続される。そのため、より多くの細胞を前記所定の数値範囲内の構成比率で分取することができる。
【0126】
(5)第1の実施形態の第4の例(連結された微小粒子分取用マイクロチップを用いた粒子分取処理の例)
【0127】
本技術を、微小粒子分取用マイクロチップが連結された微小粒子分取用流路ユニットによる微小粒子分取処理に適用することで、種々の目的を達成することができる。以下では、当該微小粒子分取用流路ユニットを含む微小粒子分取装置による分取処理を説明する。
【0128】
(5-1)微小粒子分取装置の構成例
【0129】
当該微小粒子分取用流路ユニットを含む本技術の微小粒子分取装置を、図9を参照しながら以下で説明する。
【0130】
図9は、本技術の微小粒子分取装置900の構成例を示す。図9に示されるとおり、本技術の微小粒子分取装置900は、光照射部101a、検出部102a、及び微小粒子分取用マイクロチップ150a、並びに、光照射部101b、検出部102b、及び微小粒子分取用マイクロチップ150bを含む。微小粒子分取装置900はさらに、制御部103を含む。制御部103は、図1に示されたものと同じであってよく、信号処理部104、判定部105、及び分取制御部107を含む。
【0131】
光照射部101aが、微小粒子分取用マイクロチップ150a中の流路を流れる微小粒子に光を照射する。当該光照射により生じた光を、検出部102aが検出する。検出部102aにより検出された光の特徴に応じて、制御部103が、微小粒子分取用マイクロチップ150a中の流れを制御することによって、回収されるべき微小粒子のみが分取される。
光照射部101b、検出部102b、及び微小粒子分取用マイクロチップ150bについても、光照射部101a、検出部102a、及び微小粒子分取用マイクロチップ150aと同様に、微小粒子分取処理を行う。
【0132】
光照射部101a及び101bは、上記「(1)第1の実施形態の説明」において述べた光照射部101と同じである。検出部102a及び102bは、上記「(1)第1の実施形態の説明」において述べた検出部102と同じである。微小粒子分取用マイクロチップ150a及び150bは、上記「(1)第1の実施形態の説明」において述べた微小粒子分取用マイクロチップ150と同じである。制御部103及びそれに含まれる構成要素も、上記「(1)第1の実施形態の説明」において述べたものと同じである。そのため、これらの構成要素については、上記「(1)第1の実施形態の説明」において述べた内容が当てはまるので、これらの構成要素についての説明は省略する。
なお、本例では光照射部101a及び101bは同じであるが、異なるものであってもよい。同様に、検出部102a及び102bは、同じものであってよく、又は、異なるものであってもよい。微小粒子分取用マイクロチップ150a及び150bも、同じものであってよく、又は、異なるものであってもよい。
【0133】
微小粒子分取用マイクロチップ150aの粒子分取流路末端161aと、微小粒子分取用マイクロチップ150bのサンプル液インレット151bとが、流路接続用部材1001により接続されている。そして、微小粒子分取用マイクロチップ150aの分取部157aと微小粒子分取用マイクロチップ150bの分取部157bとの間に、流体収容容器902が設けられている。流体収容容器902は、当該容器の前後の流量の違いに応じて当該容器内の流体収容量が変化するように構成されている。流体収容容器902の下流且つ微小粒子分取用マイクロチップ150bの分取部157bの上流に、ポンプ903が設けられている。
【0134】
流路接続用部材901は、例えばチューブなどであってよい。流路接続用部材901の材料は、本技術の属する技術分野において用いられるものから当業者により適宜選択されてよい。流路接続用部材901は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)チューブ、シリコーンチューブ、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)チューブ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブ、若しくは熱可塑性エラストマーチューブであってよく、又は、複数種のチューブが連結されていてもよい。
【0135】
流体収容容器902は、前記二つの分取部157a及び157bを接続する流路上に設けられている。より具体的には、当該容器902は、前記二つの分取部157a及び157bを接続する流路から流体が流入可能なように、前記二つの分取部157a及び157bを接続する流路上に設けられている。当該容器が設けられていることによって、上流の微小粒子分取用マイクロチップ150aの分取部157aから当該容器902へと流れる流体の流量と当該容器902から下流の微小粒子分取用マイクロチップ150bの分取部157aへと流れる流体の流量とを互いに独立に制御することができる。すなわち、当該容器902の上流にあり且つ微小粒子分取用マイクロチップ150aの分取部157aの下流にある流路内の流量と、当該容器902の下流にあり且つ微小粒子分取用マイクロチップ150bの分取部157bの上流にある流路内の流量とを、互いに独立に制御することができる。
例えば、流体収容容器902は、流体収容容器902の上流の流路内の流量変動による、流体収容容器902の下流の流路内の流量への影響を抑制し、又は、流体収容容器902の下流の流路内の流量変動による、流体収容容器902の上流の流路内の流量への影響を抑制しうる。当該流量変動は、例えばポンプの駆動に起因する脈流又は微小粒子分取処理に起因する脈流でありうる。
【0136】
流体収容容器902は、流体収容容器902の上流の流量及び下流の流量が一致しない場合において、これら二つの流量の違いに応じてその流体収容量を変化させる。当該流体収容量の変化によって、これらの二つの流量が一致しない条件下においても、2つの微小粒子分取用マイクロチップ150a及び150bのそれぞれにおける微小粒子分取を、互いに独立した流量条件下で行うことができる。
【0137】
流体収容容器902は、当該容器内に液体空気界面が形成されるように構成されていてよい。当該液体空気界面が形成されている流体収容容器は、上流の分取部157a及び下流の分取部157bのそれぞれにおける微小粒子分取動作に起因する流量変動が与える影響を抑制するために適している。例えば、前記液体空気界面が形成されている流体収容容器によって、脈流を分散し又は吸収することができる。流体収容容器902は、脈流を分散又は吸収するための構成要素として機能しうる。
流体収容容器902は、例えば流体収容量の変化(増加)に伴い膨らむように構成されていてよい。流体収容容器902は、流体収容容器902の構造によって膨らむように構成されていてよく、又は、流体収容容器902の材料の特性(特には弾性特性)によって膨らむように構成されていてもよい。
本技術の一つの実施態様に従い、流体収容容器902自体は、弾性特性を有さない材料から形成されていてよい。この実施態様において、流体収容容器902は、当該容器の構造によって膨らむことができるように構成されていてよい。この実施態様において、流体収容容器902は、例えば、流体を収容していない場合はシート状であり、流体を収容するにつれて(例えばビニール袋や輸液バッグなどのように)流体収容容器902の内部体積が増加するように構成されていてよい。
本技術の他の実施態様に従い、流体収容容器902は、弾性特性を有する材料(例えばゴム材料など)から形成されていてもよい。この実施態様において、前記流体収容容器自体が伸びることによって(例えば風船などのように膨らむことによって)、その内部により多くの流体が収容されうる。
流体収容容器902は、その内部に予め気体(例えば空気又は、窒素ガス及びアルゴンガスなどの不活性ガス)が封入されていてもよい。流体が前記流体収容容器内に収容されるにつれて、当該気体が圧縮されうる。
流体収容容器902は、その内部にフィルターが設けられていてもよい。当該フィルターは、例えば外気に由来するコンタミネーションを防ぐためのものでありうる。当該フィルターは、例えば前記流体収容容器内部の気体の圧力(例えば空気圧など)を外気と連通可能なものであってよい。当該フィルターは、液体を透過させない材料から形成されていてよい。
例えば、流体収容容器902の上流の流量が流体収容容器902の下流の流量よりも多い場合、これら二つの流量の差に対応する量の液体が、流体収容容器902内に流入し、当該流入に伴い流体収容容器902は膨らむ。これにより、微小粒子分取用マイクロチップ150bのサンプル液インレット151bへ導入されるサンプル液の流量は、流体収容容器902の上流の流量による影響を受けず、ポンプ903によって制御されたとおりの流量となる。
また、例えば、流体収容容器902の上流の流量が流体収容容器902の下流の流量よりも少ない場合、これら二つの流量の差に対応する量の液体が、流体収容容器902内から流出する。この場合、例えば予め流体収容容器902内に所定量の液体が含まれていてよい。当該液体が、上記二つの流量の差に応じて、流体収容容器902から下流へと流出する。これにより、流体収容容器902の上流の流量は、流体収容容器902の下流の流量による影響を受けない。
また、流体収容容器902は、その内部に流入した流体、特には液体が当該容器から漏洩しないように構成されていてよい。
流体収容容器902の材料は、このような流体収容量の変化及び流体の保持を可能とするものでありうる。当該材料は、当業者により適宜選択されてよい。前記容器902は、例えばプラスチックバッグでありうる。当該プラスチックバッグは、例えばポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリ塩化ビニル製、又はエチレン酢酸ビニル共重合体製のバッグでありうる。
【0138】
ポンプ903は、例えばペリスタルティックポンプ(チューブポンプ)、ローラーポンプ、シリンジポンプ、又は遠心ポンプでありうるが、これらに限定されない。前記ポンプは、流量のより精密な制御のために、好ましくはペリスタルティックポンプ又はローラーポンプでありうる。
流体収容容器902によって、ポンプ903の駆動に伴い生じる脈流を、吸収することができる。そのため、流体収容容器902の上流の微小粒子分取用マイクロチップ150a内の流量に対する当該脈流の影響を解消又は低減することができる。
【0139】
(5-2)分取処理の例
【0140】
本技術の一つの実施態様に従い、上流の微小粒子分取用マイクロチップ150aにおいて、一般的なフローサイトメータに搭載されているor論理によって微小粒子の分取を行い、次に、下流の微小粒子分取用マイクロチップ150bにおいて、本技術に従う微小粒子分取処理が行われる。
当該実施態様において、上流の微小粒子分取用マイクロチップ150aによる微小粒子分取によって、複数種類の目的微小粒子の純度を高める。ただし、or論理による分取であるので、複数の目的微小粒子の構成比率は、微小粒子分取前後で変更されない。
下流の微小粒子分取用マイクロチップ150bによる微小粒子分取では、本技術に従う微小粒子分取処理が行われるので、複数の目的微小粒子を、ユーザが指定した粒子構成比率で回収することができる。
【0141】
(5-3)分取処理の他の例
【0142】
本技術の他の実施態様に従い、上流の微小粒子分取用マイクロチップ150a及び下流の微小粒子分取用マイクロチップ150bの両方において、本技術に従う微小粒子分取処理が行われる。
当該実施態様において、上流の微小粒子分取用マイクロチップ150a及び下流の微小粒子分取用マイクロチップ150bの両方において本技術に従う微小粒子分取処理が行われるので、複数の目的微小粒子を、ユーザが指定した粒子構成比率で回収することができる。さらには、下流の微小粒子分取用マイクロチップ150bに供給される微小粒子の数が、上記「(5-2)分取処理の例」における場合よりも少なくなるので、目的微小粒子の純度がより高まる。
【0143】
2.第2の実施形態(細胞治療薬製造装置)
【0144】
本技術に従う細胞治療薬製造装置は、流路中を流れる細胞への光照射により生じた光に基づき、当該細胞を分取するかを判定する判定部と、前記判定部により分取すると判定された細胞を分取する細胞分取部とを備えている。
前記判定部が、前記細胞が、2以上の異なる細胞集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定を行い、そして、前記一次分取判定において前記細胞集団のいずれかに属すると判定された細胞を分取するかを、前記2以上の異なる細胞集団について指定された細胞構成比率に基づき判定する二次分取判定を行い、前記細胞分取部により分取された細胞が1つの容器に回収される。
前記判定部は、上記「1.第1の実施形態(微小粒子分取装置)」において説明されたとおりのものであり、その説明が本実施形態においてもあてはまる。本技術に従う細胞治療薬製造装置は、前記判定部を備えているので、複数種類の細胞集団を指定された構成比率で分取することができる。
【0145】
本技術に従う細胞治療薬製造装置はさらに、前記判定部により分取すると判定された細胞を分取する細胞分取部を備えており、前記細胞分取部により分取された細胞が1つの容器に回収される。
前記細胞分取部は、上記「1.第1の実施形態(微小粒子分取装置)」において説明された分取部と同じでありうる。例えば、前記細胞分取部は、前記判定部により分取されるべきと判定された細胞を分取する細胞分取流路と、分取されるべきと判定されなかった細胞を流す分岐流路とを含みうる。
前記細胞分取部により分取された細胞は1つの容器に回収される。そのため、回収された複数種類の細胞は、指定された構成比率で当該容器中に存在する。
【0146】
以上のとおり、当該容器には、複数種類の細胞集団が、指定された構成比率で回収される。そのため、本技術に従う細胞治療薬製造装置によって、或る疾病を処置するために適した構成比率で複数種類の細胞集団を含む細胞治療薬を簡便に製造することができる。本技術に従う細胞治療薬製造装置によって分取される細胞の種類及びその構成比率は、対象疾病に応じて当業者により適宜選択されてよい。
【0147】
本技術において、細胞治療とは、体外で加工又は改変された自己由来、同種由来、又は異種由来の細胞を対象(例えば哺乳類、特には霊長類、より特にはヒト)に投与することによって対象の疾病又は損傷を予防又は処置(治療及び緩和を包含する)することを意味する。本技術において細胞治療薬とは、細胞治療において用いられる医薬でありうる。細胞治療薬は、上記のとおり体外で加工又は改変された自己由来、同種由来、又は異種由来の細胞を含みうる。例えば、細胞治療薬に含まれる細胞として、例えば幹細胞(例えば間葉系幹細胞、脂肪幹細胞、ES細胞、及びiPS細胞など)、免疫系細胞(例えばリンパ球など)、及び軟骨細胞、並びに、これらの細胞のいずれかに由来する細胞を挙げることができる。
【0148】
本技術の細胞治療薬製造装置の構成例を図10に示す。図10に示されるとおり、本技術の細胞治療薬製造装置1000は、光照射部101、検出部102、制御部103、及び微小粒子分取用マイクロチップ150を含む。光照射部101、検出部102、制御部103、及び微小粒子分取用マイクロチップ150はいずれも、上記「1.第1の実施形態(微小粒子分取装置)」において説明したとおりであり、当該説明が、本構成例においてもあてはまる。制御部103に含まれる判定部によって、本技術に従う微小粒子分取処理を行うことができる。これにより、複数種類の細胞を指定された構成比率で分取することができる。
【0149】
微小粒子分取用マイクロチップ150内の粒子分取流路末端161がチューブ180の一方の端と接続されており、チューブ180の多端が容器181に接続されている。これにより、粒子分取流路159に分取された複数種類の細胞は、チューブ180を通って容器181内に回収される。当該複数種類の細胞は、上記のとおり指摘された構成比率で分取される。そのため、容器181内に回収される複数種類の細胞は、指定された構成比率で存在する。当該指定された構成比率を、或る疾病の処置に適したものとすることで、複数種類の細胞を当該指定された構成比率で含む容器181を、細胞治療薬製品としてそのまま患者に提供することができる。
【0150】
3.第3の実施形態(微小粒子分取方法)
【0151】
本技術に従う微小粒子分取方法は、流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する分取判定工程を含む。当該分取判定工程は、前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定工程と、前記一次分取判定工程において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定工程とを含む。
前記一次分取判定工程及び前記二次分取判定工程の詳細は、上記1.の「(1-1)一次分取判定」及び「(1-2)二次分取判定」において説明したとおりであるので、これらの説明は省略する。
本技術に従う微小粒子分取方法は、前記分取判定工程を含むことによって、複数種類の微小粒子を指定された構成比率で分取することができる。
【0152】
本技術に従う微小粒子分取方法のフロー図の一例は、上記1.の「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」において説明した図6に示されるとおりである。図6のうちステップS107が、前記一次分取判定工程に対応する。図6のうちのステップS108が、前記二次分取判定工程に対応する。ステップS107及びステップS108は、上記1.の「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」において説明したとおりであるので、これらの説明は省略する。
本技術に従う微小粒子分取方法は、ステップS107及びステップS108以外の図6に示されるステップを含みうる。これらのステップについても、上記1.の「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」において説明したとおりであるので、それらの説明は省略する。
【0153】
本技術に従う微小粒子分取方法のフロー図の他の例は、上記1.の「(3)第1の実施形態の第2の例(微小粒子の分取動作の例)」において説明した図7に示されるとおりである。図7のうちステップS207が、前記一次分取判定工程に対応する。図7のうちのステップS208が、前記二次分取判定工程に対応する。ステップS207及びステップS208は、上記1.の「(3)第1の実施形態の第2の例(微小粒子の分取動作の例)」において説明したとおりであるので、これらの説明は省略する。
本技術に従う微小粒子分取方法は、ステップS207及びステップS208以外の図7に示されるステップを含みうる。これらのステップについても、上記1.の「(3)第1の実施形態の第2の例(微小粒子の分取動作の例)」において説明したとおりであるので、それらの説明は省略する。
【0154】
本技術に従う微小粒子分取方法のフロー図のさらに他の例は、上記1.の「(4)第1の実施形態の第3の例(微小粒子の分取動作の例)」において説明した図8に示されるとおりである。図8のうちステップS305が、前記一次分取判定工程に対応する。図8のうちのステップS306が、前記二次分取判定工程に対応する。ステップS305及びステップS306は、上記1.の「(4)第1の実施形態の第3の例(微小粒子の分取動作の例)」において説明したとおりであるので、これらの説明は省略する。
また、図8のうちステップS303において、「(2)第1の実施形態の第1の例(微小粒子の分取動作の例)」又は「(3)第1の実施形態の第2の例(微小粒子の分取動作の例)」において述べた分取処理が行われる。これらの分取処理において行われるステップのうち、ステップS107及びステップS108並びにステップS207及びステップS208は、上記で述べたとおり、前記一次分取判定工程及び前記二次分取判定工程に対応する。
本技術に従う微小粒子分取方法は、ステップS305及びステップS306以外の図9に示されるステップを含みうる。これらのステップについても、上記1.の「(4)第1の実施形態の第3の例(微小粒子の分取動作の例)」において説明したとおりであるので、それらの説明は省略する。
【0155】
また、本技術は、本技術に従う微小粒子分取方法を微小粒子分取装置(特には本技術に従う微小粒子分取装置)若しくはその制御部又は細胞治療薬製造装置(特には本技術に従う細胞治療薬製造装置)若しくはその制御部に実行させるためのプログラムも提供する。
具体的には、当該プログラムは、流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する分取判定工程を、微小粒子分取装置(特には本技術に従う微小粒子分取装置)若しくはその制御部又は細胞治療薬製造装置(特には本技術に従う細胞治療薬製造装置)若しくはその制御部に実行させるものである。当該分取判定工程は、前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定工程と、前記一次分取判定工程において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定工程とを含む。これらの工程は、上記で説明したとおりであるので、それらの説明は省略する。
当該プログラムは、例えばSDカード、マイクロSDカード、USBメモリ、CD、又はDVDなどの情報記憶媒体に記憶されていてよい。又は、当該プログラムは、微小粒子分取装置(特には本技術に従う微小粒子分取装置)又は細胞治療薬製造装置(特には本技術に従う細胞治療薬製造装置)に備えられている記憶部に記憶されていてもよい。
【0156】
なお、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
〔1〕流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する判定部を備えており、
前記判定部が、
前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定を行い、そして、
前記一次分取判定において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定を行う、
微小粒子分取装置。
〔2〕前記微小粒子分取装置が、前記二次分取判定において分取すると判定された微小粒子を分取する分取部を備えており、
前記分取部により分取された微小粒子が1つの容器に回収される、
〔1〕に記載の微小粒子分取装置。
〔3〕前記分取部により分取された微小粒子が1つの容器に回収されて、当該容器中の微小粒子の構成比率が、前記指定された粒子構成比率になるか又は前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内になる、〔2〕に記載の微小粒子分取装置。
〔4〕前記微小粒子分取装置が、前記分取部により分取された微小粒子を1つの容器に回収するための1つの粒子回収流路を備えている、〔2〕に記載の微小粒子分取装置。
〔5〕前記一次分取判定において、前記判定部が、前記光照射により生じた光が、蛍光及び/又は散乱光に関して指定された特徴を有するかによって、前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを判定する、〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔6〕前記判定部が、前記指定された粒子構成比率に基づき取得粒子数を設定する、〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔7〕前記二次分取判定において、前記判定部が、
前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子の分取数が、前記指定された粒子構成比率に基づき設定された取得粒子数に達していない場合には、当該微小粒子を分取すると判定する、
〔1〕~〔6〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔8〕前記二次分取判定において、前記判定部が、
前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子の分取数が、前記指定された粒子構成比率に基づき設定された取得粒子数に達している場合には、当該微小粒子を分取しないと判定する、
〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔9〕前記二次分取判定において、前記判定部が、
前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取した場合の粒子構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内である場合には、当該微小粒子を分取すると判定する、
〔1〕~〔8〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔10〕前記二次分取判定において、前記判定部が、
前記一次分取判定において前記2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取した場合の粒子構成比率が、前記指定された粒子構成比率を含む指定された数値範囲内にない場合には、当該微小粒子を分取しないと判定する、
〔1〕~〔9〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔11〕前記微小粒子分取装置が、微小粒子を含む流体が通流される主流路と、前記主流路から分岐する分岐流路と、前記主流路と同軸上の粒子分取流路とを含む微小粒子分取用マイクロチップを含み、
前記判定部が、前記微小粒子分取用マイクロチップ中を流れる前記流体中の微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する、
〔1〕~〔10〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔12〕前記微小粒子が細胞である、〔1〕~〔11〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔13〕前記微小粒子が細胞であり、
前記二次分取判定において分取すると判定された細胞が1つの容器に回収され、
当該容器に回収された細胞が薬剤として使用される、〔2〕~〔4〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔14〕流路中を流れる細胞への光照射により生じた光に基づき、当該細胞を分取するかを判定する判定部と、
前記判定部により分取すると判定された細胞を分取する細胞分取部と
を備えており、
前記判定部が、
前記細胞が、2以上の異なる細胞集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定を行い、そして、
前記一次分取判定において前記細胞集団のいずれかに属すると判定された細胞を分取するかを、前記2以上の異なる細胞集団について指定された細胞構成比率に基づき判定する二次分取判定を行い、
前記細胞分取部により分取された細胞が1つの容器に回収される、
細胞治療薬製造装置。
〔15〕流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子を分取するかを判定する分取判定工程を含み、
当該分取判定工程が、
前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定工程と、
前記一次分取判定工程において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定工程とを含む、微小粒子分取方法。
〔16〕微小粒子分取装置又は細胞治療薬製造装置に、
流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、
前記微小粒子が、2以上の異なる微小粒子集団のいずれかに属するかを、前記光の特徴に基づき判定する一次分取判定工程、及び
前記一次分取判定工程において前記微小粒子集団のいずれかに属すると判定された微小粒子を分取するかを、前記2以上の異なる微小粒子集団について指定された粒子構成比率に基づき判定する二次分取判定工程
を含む、当該微小粒子を分取するかを判定する分取判定工程を実行させるためプログラム。
【符号の説明】
【0157】
100 微小粒子分取装置
101 光照射部
102 検出部
103 制御部
104 信号処理部
105 判定部
107 分取制御部
150 微小粒子分取用マイクロチップ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10