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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144168
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】楽器
(51)【国際特許分類】
   G10D 7/12 20200101AFI20231003BHJP
   G10D 9/04 20200101ALI20231003BHJP
【FI】
G10D7/12
G10D9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050993
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】522122721
【氏名又は名称】株式会社サンシールド
(74)【代理人】
【識別番号】100195383
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】横田 和博
(57)【要約】
【課題】従来にはない音階理論に対応した構成により、数オクターブ分の広音域及び手指に対応した人間工学的な操作性を有する吹奏楽器を提供する。
【解決手段】楽器1において、複数の音孔h2を設けた複数の回転板R1~R4、L1~L3を重ね、前記回転板の回転の組み合わせに応じ、特定の音孔h2を前記複数の回転板にわたり連通させることが可能な回転板群200と、前記連通した音孔h2を通過させた空気に基づいて発振を行う発振部(リード部300)と、を設け、複数の音孔h2は、回転させる回転板に応じて前記特定の音孔h2が異なるように配置され、前記発振部は、異なる音孔に対応する位置に、異なる音を発振可能な発振手段(リード)を設けた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の音孔を設けた複数の回転板を重ね、前記回転板の回転の組み合わせに応じ、特定の音孔を前記複数の回転板にわたり連通させることが可能な回転板群と、
前記連通した音孔を通過させた空気に基づいて発振を行う発振部と、を設け、
前記複数の音孔は、回転させる回転板に応じて前記特定の音孔が異なるように配置され、
前記発振部は、異なる音孔に対応する位置に、異なる音階を発振可能な発振手段を設けた
ことを特徴とする楽器。
【請求項2】
前記複数の音孔は、前記回転板の回転方向に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の楽器。
【請求項3】
前記複数の音孔は、前記回転板の放射方向に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の楽器。
【請求項4】
前記発振部は、1つの音階の発振、及び/又は、複数の音階の同時発振が可能であり、
前記回転板群には、全音に対応した回転板と、半音に対応した回転板と、のうち、少なくとも一方の回転板を含む
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の楽器。
【請求項5】
前記発振部は、複数のオクターブ音域の発振が可能であり、
前記回転板群には、第1オクターブ音域に対応した回転板と、第2オクターブ音域に対応した回転板と、を含む複数オクターブ音域に対応した複数の回転板が含まれる
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の楽器。
【請求項6】
前記複数の音孔は、1以上の回転板の回転の組み合わせに基づいて、特定の回転方向及び放射方向に配置されている音孔が連通するように配置されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の楽器。
【請求項7】
前記発振部は、空気の振動に基づいて発振が可能な複数のリードを前記発振手段として有するリード板を複数備え、
前記リード板は、異なる音階に対応して設けられ、
前記リードは、当該リードの幅や長さに応じて異なるオクターブ音域の発振が可能である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の楽器。
【請求項8】
前記リードは、当該リードの幅や長さに応じて異なる音階の発振が可能である
ことを特徴とする請求項7に記載の楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転式の切換バルブを有する楽器が知られている(特許文献1,2参照)。
特許文献1には、演奏者による操作レバーの操作に連動して固定側ディスクに対して回転する可動側ディスクを備え、この可動側ディスクを回転させることで主管の長さを延長して音を変える管楽器が開示されている。
特許文献2には、一次ロータ入口孔が一次主体入口孔と整合する第一位置と、ロータ孔の各々が主体孔と整合する第二位置の間を回動せしめられるロータを備え、ロータの回転に応じ、リードパイプとメインボアを直接つないだり、その間にスライドループを挿入することが可能な管楽器が開示されている。
また、従来から、複数のパイプを備え、キー操作に基づいて出音するパイプを切り換えるパイプ楽器が知られている(特許文献3,4参照)。
例えば、特許文献3には、鍵盤が音階それぞれに対応して設けられ、それぞれロッドを介して弁を開閉制御するように構成されることが開示されている。
この弁は、ファンを備えた送風機室に連通する圧力室に設けられ、弁を介して圧力室から取り出された空気流は、それぞれ対応する風路を介して、各音階それぞれに対応して長さが設定されるパイプに連通される。
また、特許文献4には、手で直接鍵盤を押圧操作して、係合アームにより開閉手段を押し上げ、弁部材を開いてリード笛を吹奏させることができるパイプオルガン玩具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-151522号公報
【特許文献2】特開昭53-96815号公報
【特許文献3】実公昭52-29946号公報
【特許文献4】特開平11-231859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の楽器において、上述の回転式バルブは、回転部材を回転させることにより、ある音階を他の音階に移行させることができるが、回転操作により多数の音階を任意に切り換えて選択的に出音させることはできなかった。
パイプ楽器についても、同様であり、回転操作により多数の音階を自由に切り換えて様々なメロディを演奏できるものはなかった。
特に、音孔を開閉することで音階を変化させる楽器として木管楽器や金管楽器があるが、音孔を指で閉じたときに僅かな隙間があると所望の音が発せられないなど、演奏が容易でないものが多い。
また、例えば4オクターブなど広いオクターブ音域に亘って音を発することが可能な楽器は無く、仮に、あったとしても操作が困難であることが想定される。
【0005】
本発明は、以上のような従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、音階理論に対応した構成により、数オクターブ分の広音域及び手指に対応した人間工学的な操作性を有する楽器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の楽器は、複数の音孔を設けた複数の回転板を重ね、前記回転板の回転の組み合わせに応じ、特定の音孔を前記複数の回転板にわたり連通させることが可能な回転板群と、前記連通した音孔を通過させた空気に基づいて発振を行う発振部と、を設け、前記複数の音孔は、回転させる回転板に応じて前記特定の音孔が異なるように配置され、前記発振部は、異なる音孔に対応する位置に、異なる音階を発振可能な発振手段を設けた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来にはない合理的な構成により、広いオクターブ音域にわたる演奏を、容易な操作で行うことが可能な楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の楽器の前方の斜視図である。
図2】楽器の前方の分解斜視図である。
図3】上部導風板の平面図である。(a)は音孔が1~12時の各方位において放射方向に沿って設けられていることを示す。(b)は音孔が第1~4周の各円周に沿って設けられていることを示す。
図4】回転板群の分解斜視図である。
図5】第1右回転板の分解斜視図である。
図6】第1右回転板の外観斜視図である。(a)は非回転時(OFF)の状態を示し、(b)は回転時(ON)の状態を示す。
図7】非回転時(OFF)の各回転板の平面図である。(1)は第1右回転板、(2)は第2右回転板、(3)は第3右回転板、(4)は第4右回転板、(5)は第1左回転板、(6)は第2左回転板、(7)は第3左回転板を示す。
図8】回転時(ON)の各回転板の平面図である。(1)は第1右回転板、(2)は第2右回転板、(3)は第3右回転板、(4)は第4右回転板、(5)は第1左回転板、(6)は第2左回転板、(7)は第3左回転板を示す。
図9】(a)は第2右回転板のみ回転させた場合に連通する音孔を示す図であり、(b)は第1右回転板及び第2右回転板を回転させた場合に連通する音孔を示す図であり、(c)は第1右回転板、第2右回転板及び第1左回転板を回転させた場合に連通する音孔を示す図である。
図10】回転板の回転/非回転(オン/オフ)を示す1/0のビット情報に対応する方位及び円周、及び、音階やオクターブ音域との関係を表したビットコード表である。
図11】リード部の分解斜視図である。
図12】(a)は上部半月板の平面図、(b)はリード板固定部の平面図、(c)は下部半月板の平面図である。
図13】各リード板の正面図である。(1)は12時方向Cのリード板、(2)は1時方向C#のリード板、(3)は2時方向Dのリード板、(4)は3時方向D#のリード板、(5)は4時方向Eのリード板、(6)は5時方向Fのリード板、(7)は6時方向F#のリード板、(8)は7時方向Gのリード板、(9)は8時方向G#のリード板、(10)は9時方向Aのリード板、(11)は10時方向A#のリード板、(12)は11時方向Bのリード板を示す。
図14】リード板の一部断面を含む斜視図である。
図15】リード板と上下半月板の要部断面図である。
図16】クリック操作機構を説明するための第2右回転板の分解斜視図である。
図17】クリック操作機構を説明するための第2右回転板の要部平面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の楽器1について図面を参照しながら説明する。
図1は、楽器1の前方斜視図である。図2は、楽器1の分解斜視図である。
これらの図に示すように、楽器1は、全体としてサクソフォンに似た形状を有しつつ、マウスピース101等を含む吹込部100、上部導風板150、複数の回転板(R1~R4、L1~L3)が積層された回転板群200、リード板固定部330や下部導風板350等を含むリード部300、共鳴部410やベル部420等を含む出音部400などの各構成部により構成される。
楽器1は、奏者が、マウスピースから空気を吹き込むことで空気が吹込部100、回転板群200を通過した後、リード部300に内蔵されているリード板320(リード321~324)を発振させ、共鳴部410の内部で、発振音が共鳴振動した後、ベル部420から外部に向けて出音されるようになっている。
各回転板には、奏者により回転/非回転させることが可能な各操作キー(R1k~R4k、L1k~L3k)が設けられている。
これにより、奏者は、両手の指で各操作キーを用いて回転板を回転操作しつつ、マウスピース101から空気を吹き込むことで、当該空気が、すべての回転板にわたって連通された音孔h2を通過し、当該音孔h2の位置に対応して設けられているリード板320(リード321~324)を振動させて対応する音階の音を発するようになっている。
以下、各構成部について説明する。
【0010】
(吹込部)
吹込部100は、楽器1の上部に設けられた部品であり、マウスピース101、吹込管102、接続部103、及び、固定棒104により構成される(図2)。
マウスピース101は、奏者が、自身の口唇をつけて息(空気)を吹き込むための部品である。マウスピース101は、吹込管102に対し着脱可能に取り付けられる。
吹込管102は、マウスピース101と接続部103との間に設けられる内部空洞の管部材である。吹込管102は、逆U字状に湾曲した曲管部分と鉛直方向に延びる直管部分とにより構成される。
接続部103は、吹込管102の直管部分と上部導風板150とを接続するための円錐台状の部品である。接続部103は、上方が吹込管102と接合できるよう中央部分が開口され、下方が上部導風板150と接合可能に開放されている。
固定棒104は、先端部分にネジ部が設けられた4本の棒部材である。
固定棒104は、接続部103、後述する上部導風板150、回転板群200(回転板R1~R4,L1~L3)、リード部300などに設けられた貫通孔や、共鳴部410に設けられたねじ切りタップ孔に締付け緊結され、当該緊結により各部品が固定される。
【0011】
(上部導風板)
上部導風板150は、吹込部100と回転板群200との間に設けられる円板状の部品である。
上部導風板150は、吹込部100に吹き込まれた空気(風)を回転板群200の内部に導くための音孔h1が設けられている。
なお、上部導風板150には、スクリュー151が中央部分に固定されている。
スクリュー151は、上方の吹込管から供給された空気を、スクリュー151によって上部導風板150上を空気が回転することにより各音孔h1に対しても空気を回転させながら音孔h1に誘導することができる。
この結果、上部導風板150に設けられた各音孔h1に対し、圧力にむらのない空気を効率よく分配することができる。
【0012】
図3は、上部導風板150を上方から見た平面図である。
図3(a)、(b)に示すように、上部導風板150には、特定の規則に従って48個の音孔h1が配置されている。
例えば、音孔h1は、図3(a)に示すように、1時、2時、・・・12時の各方位(クロックポジションともいう)において、放射方向(径方向)に沿って、それぞれ4個づつ設けられている。
すなわち、音孔h1は、上部導風板150の円板に対し、回転角度30度毎に4個づつ設けられている。なお、本例において、12時の方位は、R2kなどの右操作キーとL1kなどの左操作キーとの中間地点(すなわちベル部420の突出方向)とする。
また、音孔h1は、図3(b)に示すように、中心点を円心とする大きさの異なる4つの円周(同心円)に沿ってそれぞれ12個づつ設けられている。なお、本例においては、円心に遠い方から順に、第1周、第2周、第3周、第4周と称する。各円周の大きさは、第1周>第2周>第3周>第4周の関係性を有している。
換言すると、上部導風板150には、図3(a)に示す1時~12時の各放射方向の線(一点鎖線)と、図3(b)に示す第1~第4周の線(一点鎖線)とが交わる交点において音孔h1が設けられている。
このような上部導風板150に対し、上方から供給された空気は、すべての音孔h1を介して、その下方に位置する回転板群200に対し供給可能に構成されている。
ただし、後述するように、上部導風板150の下方に隙間無く設けられている回転板群200は、特定の音孔h2のみが連通するように構成されているため、当該特定の音孔h2に対応する音孔h1のみを空気が通過できるため、当該音孔h1を介してのみ空気が回転板群200に対して供給される。
【0013】
(回転板群)
回転板群200は、上部導風板150の下方に設けられる部品である(図1、2)。
図4は、回転板群200の分解斜視図である。
図4に示すように、回転板群200は、7枚の回転板を重ねた積層構造となっている。
具体的には、上方から、第1右回転板R1、第2右回転板R2、第1左回転板L1、第3右回転板R3、第2左回転板L2、第4右回転板R4、第3左回転板L3が重ねられている。
第1~第4右回転板R1~R4は右手指で回転/非回転の操作が可能であり、第1~第3左回転板L1~L3は左手指で回転/非回転の操作が可能である。
このように、右手用の回転板と左手用の回転板とを交互に重ねることで、両手で持ち易く、かつ、指による操作を容易にすることができる。
また、各回転板は、人間の指の太さ程度の厚みで形成している。
これにより、楽器1を両手で持ったときに、各回転板の両側には、両手の各指が自然な間隔で配置される。
さらに、回転板には、楽器1を両手で持ったときの各指先の付近に操作キーを設けている。
図7及び図8は、各回転板の平面図である。
図7は、非回転時(OFF)の各回転板の平面図である。(1)は第1右回転板、(2)は第2右回転板、(3)は第3右回転板、(4)は第4右回転板、(5)は第1左回転板、(6)は第2左回転板、(7)は第3左回転板を示す。
図8は、回転時(ON)の各回転板の平面図である。(1)は第1右回転板、(2)は第2右回転板、(3)は第3右回転板、(4)は第4右回転板、(5)は第1左回転板、(6)は第2左回転板、(7)は第3左回転板を示す。
図4並びに図7及び図8に示すように、第1右回転板R1には、約5時の方位に操作キーR1kを設け、第2~第4右回転板R2~R4には、約1時の方位に操作キーR2k~R4kを設け、第1~第3左回転板L1~L3には、約11時の方位に操作キーL1k~L3kを設けている。
このようにすることで、楽器1を両手で持ったときに、第1右回転板R1は右親指で操作し易く、第2右回転板R2は右人差指で操作し易く、第3右回転板R3は右中指で操作し易く、第4右回転板R4は右薬指で操作し易く、第1左回転板L1は左人差指で操作し易く、第2左回転板L2は左中指で操作し易く、第3左回転板L3は左薬指で操作し易くしている。
なお、楽器1は、図示しないストラップやベルトを取付け可能であり、当該ストラップ等を奏者の首や肩を通して支えつつ、両手で容易に演奏できるようにしている。
このように、楽器1は、手指等に対応した人間工学に基づいて奏者が演奏し易い態様で回転板及び操作キーが設けられている。
【0014】
回転板群200は、より具体的には、右親指を押し出すことで反時計回りに回転させることが可能な第1右回転板R1と、右人差指を引くことで時計回りに回転させることが可能な第2右回転板R2と、右中指を引くことで時計回りに回転させることが可能な第3右回転板R3と、右薬指を引くことで時計回りに回転させることが可能な第4右回転板R4と、左人差指を引くことで半時計回りに回転させることが可能な第1左回転板L1と、左中指を引くことで反時計回りに回転させることが可能な第2左回転板L2と、左薬指を引くことで反時計回りに回転させることが可能な第3左回転板L3と、を備えている。
各回転板は、最大15度回転できるように構成されている。
このため、回転板を「非回転状態」(初期状態)から15度回転させた状態を「回転状態」と称し、回転板を「非回転状態」から「回転状態」にする操作を「回転操作」又は「オン操作」とも称する。
他方、回転板を「回転状態」から「非回転状態」にする操作を「オフ操作」とも称する。
具体的には、第2~第4右回転板R2~R4は、「オン操作」により時計回りに15度回転させることで回転状態とすることができ、回転状態の第2~第4右回転板R2~R4を「オフ操作」により反時計回りに15度回転させることで非回転状態に戻すことができる。
また、第1右回転板R1及び第1~第3左回転板L1~L3は、オン操作により反時計回りに15度回転させることで回転状態とすることができ、「オフ操作」により時計回りに15度回転させることで非回転状態に戻すことができる。
なお、「オフ操作」は、オン操作した手指を操作キーから離すなど、手指を脱力することで自動的に実行することができる。この構造については後述する。
【0015】
図5は、回転板の一例である第1右回転板R1の分解斜視図である。
図5に示すように、第1右回転板R1は、回転板本体R1bと、回転板ケースR1cと、軸受け220と、圧縮バネ240と、を含めて構成される。
回転板本体R1bは、回転板の本体部品である。このため、「回転板本体」のことを「回転板」ともいう。
回転板本体R1bには、中心部分に軸受け220の外周を隙間無く接合可能な大きさの軸孔211が設けられている。
また、回転板本体R1bの板面には、複数の音孔h2が設けられている。
音孔h2の配置規則については後記「音孔の配置について」にて詳細に説明する。
また、回転板本体R1bの外周には、操作キーR1kと、圧縮バネ240の一端側を支持するバネ支持部212と、が設けられている。操作キーR1kとバネ支持部212とは、回転板本体R1bを介してほぼ対向する位置に延設されている。
【0016】
回転板ケースR1cは、回転板本体R1bと同等の形状・大きさの底板部233と、当該底板部233の外周に沿って設けられた周壁部232と、により構成される丸皿状の部品である。
底板部233には、中心部に、軸受け220の内周を隙間無く接合可能な外周の凸部231が設けられている。
また、底板部233には、複数の音孔h3が規則的に設けられている。この音孔h3は、上部導風板150の音孔h1と同じ位置・大きさで設けられている。
【0017】
回転板本体R1bは、回転板ケースR1cに収容されて使用されるところ、回転板ケースR1cの凸部231には軸受け220が隙間無く接合され、この軸受け220には回転板本体R1bの軸孔211が隙間無く接合される。
また、回転板ケースR1cは、固定棒104により固定されている。
このため、回転板本体R1bは、回転板ケースR1cに収容された状態において、中心部を軸心として水平方向に回転させることができる。
【0018】
回転板ケースR1cの周壁部232は、回転板本体R1bを収容した状態において、操作キーR1kの対応する位置に、内壁と外壁とを共に切り欠いた切欠部232aを設けている。
これにより、回転板本体R1bを、操作キーR1kの支持部が切欠部232aに収められた状態で回転板ケースR1cに収容することができる。
切欠部232aは、回転板本体R1bの回転角度15度に対応する長さ相当分が切り欠かれている。
これにより、回転板本体R1bは、回転板ケースR1cに収容された状態で、最大15度回転できるようになっている。
図6(a)は第1右回転板R1の非回転状態における外観斜視図であり、図6(b)は第1右回転板R1の回転状態における外観斜視図である。
図6(b)は、図6(a)に示す第1右回転板R1を15度反時計回りに回転させたときの状態を示している。
オン操作に伴い回転板本体R1bが反時計回りに回転すると、これに伴いバネ支持部212が回動し、この結果、圧縮バネ240の他端部側が周壁部232からの圧力を受けながら圧縮される。つまり、オン操作に応じ、圧縮バネ240は反発力を蓄積しつつ圧縮される。
このため、回転板本体R1bは、オン操作時に加えた手指の力を脱力する操作(オフ操作)により、圧縮バネ240の反発力が伸長方向に向けて解放され、この反発力によって回転板本体R1bが非回転状態に戻る。
つまり、図6(b)に示す回転状態の第1右回転板R1をオフ操作することで図6(a)に示す非回転状態に半自動的に復帰させることができる。
なお、第1右回転板R1を例示して説明したが、第2~第4右回転板R2~R4や第1~第3左回転板L1~L3もほぼ同様の構成である。
具体的には、第2~第4右回転板R2~R4は、第1右回転板R1と回転方向や操作キーの位置が異なるだけであり、第1~第3左回転板L1~L3は、第1右回転板R1と操作キーの位置が異なるだけである。
このため、第2~第4右回転板R2~R4及び第1~第3左回転板L1~L3の詳細な説明は省略する。
【0019】
各回転板には、回転板群200の内部に供給された空気が外部に漏れないよう空気漏れ防止構造を施している。
具体的には、図5図6等に示すように、切欠部232a付近の周壁部232は、レール232bを設け、このレール232bに操作キーR1kの支持部(弧状板213)を収めるようにしている。
弧状板213は、切欠部232aより長い幅を有している。
つまり、回転板本体R1bが、回転状態や非回転状態のいかなる状態でも、切欠部232aを全て覆うように形成されている。
これにより、第1右回転板R1に供給される空気が、切欠部232aから外部に漏れ出ないようにしている。
回転板群200は、このような空気漏れ防止構造を各回転板に施すことで、回転板群200(第1右回転板R1)に対して供給された空気が、外部に漏れ出すことなく、連通された音孔h2のみを効率よく通過できるようにしている。
【0020】
本発明の楽器1は、上記以外にも空気漏れ防止構造を施している。
例えば、上部導風板150と第1右回転板R1との接合部、第1右回転板R1と第2右回転板R2との接合部、第2右回転板R2と第1左回転板L1との接合部、第1左回転板L1と第3右回転板R3との接合部、第3右回転板R3と第2左回転板L2との接合部、第2左回転板L2と第4右回転板R4との接合部、第4右回転板R4と第3左回転板L3との接合部、第3左回転板L3とリード部300との接合部、リード部300の下部半月板340と下部導風板350との接合部、下部導風板350と共鳴部410との接合部には、板面の周囲から空気が漏れ出さないようにリング状のゴム製のパッキンを設けている。
【0021】
(音孔の配置について)
音孔h2の配置規則について説明する。
前述の通り、図7は、非回転状態の各回転板の平面図であり、図8は、回転状態の各回転板の平面図である。
つまり、図7は、通常時やオフ操作時の各回転板の状態を示し、図8は、オン操作時の各回転板の状態を示す。
【0022】
第1右回転板R1は、図7(1)に示すように、非回転状態において、2時、4時、5時、7時、9時、11時、12時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、1時、3時、6時、8時、10時の方位には音孔h2が配置されないように構成しており、図8(1)に示すように、回転状態において、1時、3時、6時、8時、10時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、2時、4時、5時、7時、9時、11時、12時の方位には音孔h2が配置されないように構成している。
第2右回転板R2は、図7(2)に示すように、非回転状態(オフ操作時)において、2時、3時、4時、7時、8時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、1時、5時、6時、9時、10時、11時、12時の方位には音孔h2が配置されないように構成しており、図8(2)に示すように、回転状態(オン操作時)において、1時、5時、6時、9時、10時、11時、12時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、2時、3時、4時、7時、8時の方位には音孔h2が配置されないように構成している。
第3右回転板R3は、図7(3)に示すように、非回転状態において、1時、4時、9時、10時、12時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、2時、3時、5時、6時、7時、8時、11時の方位には音孔h2が配置されないように構成しており、図8(3)に示すように、回転状態において、2時、3時、5時、6時、7時、8時、11時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、1時、4時、9時、10時、12時の方位には音孔h2が配置されないように構成している。
第4右回転板R4は、図7(4)に示すように、非回転状態において、1時、2時、3時、5時、6時、12時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、4時、7時、8時、9時、10時、11時の方位には音孔h2が配置されないように構成しており、図8(4)に示すように、回転状態において、4時、7時、8時、9時、10時、11時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、1時、2時、3時、5時、6時、12時の方位には音孔h2が配置されないように構成している。
【0023】
第1左回転板L1は、図7(5)に示すように、非回転状態において、1時~12時のすべての方位の第1~第3周の位置に音孔h2が配置され、第4周の位置には音孔h2が配置されないように構成しており、図8(5)に示すように、回転状態において、1時~12時のすべての方位の第4周の位置に音孔h2が配置され、第1~第3周の位置には音孔h2が配置されないように構成している。
第2左回転板L2は、図7(6)に示すように、非回転状態において、1時~12時のすべての方位の第1周、第2周、第4周の位置に音孔h2が配置され、第3周の位置には音孔h2が配置されないように構成しており、図8(6)に示すように、回転状態において、1時~12時のすべての方位の第3周の位置に音孔h2が配置され、第1周、第2周、第4周の位置には音孔h2が配置されないように構成している。
第3左回転板L3は、図7(7)に示すように、非回転状態において、1時~12時のすべての方位の第2~第4周の位置に音孔h2が配置され、第1周の位置には音孔h2が配置されないように構成しており、図8(7)に示すように、回転状態において、1時~12時のすべての方位の第1周の位置に音孔h2が配置され、第2~第4周の位置には音孔h2が配置されないように構成している。
このように、音孔h2は、回転板の回転方向と放射方向に沿って配置されている。
ここで、「回転方向」は、極座標で示すところの「回転軸を原点とした角度」に相当し、「放射方向」は、極座標で示すところの「原点からの距離」に相当する。音孔h1や後述する音孔h2~h7も同様の配置構成である。
【0024】
音孔h2をこのような極座標に基づいた配置構成にすることで、7つの回転板のうちいずれか1以上を回転させることで、1つの特定の音孔h2がすべての回転板にわたって重なるようにしている。
例えば、第2右回転板R2のみを回転させた場合、第2右回転板R2については、1時、5時、6時、9時、10時、11時、12時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置される。
第1右回転板R1、第3右回転板R3、第4右回転板R4は回転されないため、第1右回転板R1については、2時、4時、5時、7時、9時、11時、12時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、第3右回転板R3については、1時、4時、9時、10時、12時の方位に音孔h2が配置され、第4右回転板R4については、1時、2時、3時、5時、6時、12時の方位に音孔h2が配置される。
第1~第3左回転板L1~L3は回転されないため、第1左回転板L1については、1時~12時のすべての方位の第1~第3周の位置に音孔h2が配置され、第2左回転板L2については、1時~12時のすべての方位の第1周、第2周、第4周の位置に音孔h2が配置され、第3左回転板L3については、1時~12時のすべての方位の第2~第4周の位置に音孔h2が配置される。
この結果、回転板群200においては、図9(a)に示すように、12時の方位の第2周に位置する音孔h2だけが重なり連通する。
なお、図9において、白色の音孔h2は、すべての回転板の音孔h2が重なることで連通した状態を示しており、薄墨で塗りつぶした音孔h2は、いずれかの回転板の板面により塞がれた状態を示している。
つまり、第2右回転板R2をオン操作したときには、「12時・第2周」に配置されている上部導風板150の音孔h1及び全回転板の音孔h2が連通する。
【0025】
また、例えば、第1右回転板R1と第2右回転板R2とを回転させた場合、第1右回転板R1については、1時、3時、6時、8時、10時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、第2右回転板R2については、1時、5時、6時、9時、10時、11時、12時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置される。
第3右回転板R3、第4右回転板R4は回転されないため、第3右回転板R3については、1時、4時、9時、10時、12時の方位に音孔h2が配置され、第4右回転板R4については、1時、2時、3時、5時、6時、12時の方位に音孔h2が配置される。
第1~第3左回転板L1~L3は回転されないため、第1左回転板L1については、1時~12時のすべての方位の第1~第3周の位置に音孔h2が配置され、第2左回転板L2については、1時~12時のすべての方位の第1周、第2周、第4周の位置に音孔h2が配置され、第3左回転板L3については、1時~12時のすべての方位の第2~第4周の位置に音孔h2が配置される。
この結果、回転板群200においては、図9(b)に示すように、1時の方位の第2周に位置する音孔h2(白孔)だけが重なり連通する。
つまり、第1右回転板R1と第2右回転板R2とをオン操作したときには、「1時・第2周」に配置されている上部導風板150の音孔h1及び全回転板の音孔h2が連通する。
【0026】
また、例えば、第1右回転板R1と第2右回転板R2と第1左回転板L1を回転させた場合、第1右回転板R1については、1時、3時、6時、8時、10時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、第2右回転板R2については、1時、5時、6時、9時、10時、11時、12時の方位の第1~第4周の位置に音孔h2が配置され、第1左回転板L1については、1時~12時のすべての方位の第4周の位置に音孔h2が配置される。
第3右回転板R3、第4右回転板R4は回転されないため、第3右回転板R3については、1時、4時、9時、10時、12時の方位に音孔h2が配置され、第4右回転板R4については、1時、2時、3時、5時、6時、12時の方位に音孔h2が配置される。
第2左回転板L2、第3左回転板L3は回転されないため、第2左回転板L2については、1時~12時のすべての方位の第1周、第2周、第4周の位置に音孔h2が配置され、第3左回転板L3については、1時~12時のすべての方位の第2~第4周の位置に音孔h2が配置される。
この結果、回転板群200においては、図9(c)に示すように、1時の方位の第4周に位置する音孔h2(白孔)だけが重なり連通する。
つまり、第1右回転板R1、第2右回転板R2及び第1左回転板L1をオン操作したときには、「1時・第4周」に配置されている上部導風板150の音孔h1及び全回転板の音孔h2が連通する。
このように、音孔h2は、回転させる回転板に応じて特定の音孔h2のみが連通するように配置されている。
【0027】
図10は、このような音孔h2の配置規則を示すビットコード表である。
図10に示すビットコード表は、各回転板の状態(回転:1/非回転:0)と、連通する音孔h2の位置(方位と円周)との関係を表したマトリクス図であり、さらに、これらのデータと、12音階及びオクターブ音域との関係を表したマトリクス図でもある。
図10(a)は、第1~第4右回転板R1~R4の回転/非回転と、連通する音孔h2の方位との関係を示すビットコード表である。
つまり、図10(a)において、「方位」は、左欄の第1~第4右回転板R1~R4の回転(1)/非回転(0)に対応して連通する音孔h2の方位を示す(図3(a)参照)。
図10(a)に示すように、連通する音孔h2の方位は、第1~第4右回転板R1~R4の回転/非回転に基づいて定まる。
【0028】
より具体的には、図10(a)に示すビットコード表においては、第2右回転板R2を回転させた場合、「R2=1、R3=0、R4=0、R1=0」に対応する「12時」の方位において音孔h2が連通し、第2右回転板R2と第1右回転板R1を回転させた場合、「R2=1、R3=0、R4=0、R1=1」に対応する「1時」の方位において音孔h2が連通し、第3右回転板R3を回転させた場合、「R2=0、R3=1、R4=0、R1=0」に対応する「2時」の方位において音孔h2が連通し、第3右回転板R3及び第1右回転板R1を回転させた場合、「R2=0、R3=1、R4=0、R1=1」に対応する「3時」の方位において音孔h2が連通し、第4右回転板R4を回転させた場合、「R2=0、R3=0、R4=1、R1=0」に対応する「4時」の方位において音孔h2が連通し、第2右回転板R2と第3右回転板R3を回転させた場合、「R2=1、R3=1、R4=0、R1=0」に対応する「5時」の方位において音孔h2が連通し、第2右回転板R2と第3右回転板R3と第1右回転板R1とを回転させた場合、「R2=1、R3=1、R4=0、R1=1」に対応する「6時」の方位において音孔h2が連通し、第3右回転板R3と第4右回転板R4とを回転させた場合、「R2=0、R3=1、R4=1、R1=0」に対応する「7時」の方位において音孔h2が連通し、第3右回転板R3と第4右回転板R4と第1右回転板R1とを回転させた場合、「R2=0、R3=1、R4=1、R1=1」に対応する「8時」の方位において音孔h2が連通し、第2右回転板R2と第4右回転板R4とを回転させた場合、「R2=1、R3=0、R4=1、R1=0」に対応する「9時」の方位において音孔h2が連通し、第2右回転板R2と第4右回転板R4と第1右回転板R1とを回転させた場合、「R2=1、R3=0、R4=1、R1=1」に対応する「10時」の方位において音孔h2が連通し、第2右回転板R2と第3右回転板R3と第4右回転板R4とを回転させた場合、「R2=1、R3=1、R4=1、R1=0」に対応する「11時」の方位において音孔h2が連通することが示されている。
なお、第1~第4右回転板R1~R4のいずれも回転させなかった場合、「R2=0、R3=0、R4=0、R1=0」に対応する「無」に応じ、第1~第4右回転板R1~R4のすべての方位において音孔h2は連通されないことが示されている。
【0029】
図10(b)は、第1~第3左回転板L1~L3の回転/非回転と、連通する音孔h2の円周との関係を示すビットコード表である。
つまり、図10(b)に示す「円周」は、左欄の第1~第3左回転板L1~L3の回転:1/非回転:0に対応して連通する音孔h2の放射方向の位置(第1~第4周のいずれか)を示す。
図10(b)に示すように、連通する音孔h2の放射方向の位置は、第1~第3左回転板L1~L3の回転/非回転に基づいて定まる。
【0030】
より具体的には、図10(b)に示すビットコード表においては、第1~第3左回転板L1~L3のいずれも回転させなかった場合、「L1=0、L2=0、L3=0」に対応する「第2周」の音孔h2が連通し、第1左回転板L1を回転させた場合、「L1=1、L2=0、L3=0」に対応する「第4周」の音孔h2が連通し、第2左回転板L2を回転させた場合、「L1=0、L2=1、L3=0」に対応する「第3周」の音孔h2が連通し、第3左回転板L3を回転させた場合、「L1=0、L2=0、L3=1」に対応する「第1周」の音孔h2が連通することが示されている。
【0031】
このようなビットコード表によれば、7つの回転板のうち、例えば、第2右回転板R2だけを回転させた場合、図10(a)、(b)を参照すると、連通する音孔h2の位置は「12時・第2周」となる(図9(a)参照)。
また、第1右回転板R1及び第2右回転板R2を回転させた場合、図10(a)、(b)を参照すると、連通する音孔h2の位置は「1時・第2周」となる(図9(b)参照)。
また、第1右回転板R1、第2右回転板R2及び第1左回転板L1を回転させた場合、図10(a)、(b)を参照すると、連通する音孔h2の位置は「1時・第4周」となる(図9(c)参照)。
このように、音孔h2は、第1~第4右回転板R1~R4及び第1~第3左回転板L1~L3における回転/非回転に基づいて特定の音孔h2が特定の位置(方位及び円周)で連通するように配置されており、ビットコード表は、それらの関係をすべて網羅している。
【0032】
このように、本発明の楽器1は、複数の音孔(音孔h2)を設けた複数の回転板を重ね、前記回転板の回転に応じ、特定の音孔を前記複数の回転板にわたり連通させることが可能な回転板群200を設けている。
具体的には、複数の音孔は、回転板の回転方向や放射方向に沿って配置されており、一以上の回転板の回転/非回転に基づいて特定の音孔が連通し、当該特定の音孔以外の音孔が塞がるように配置されている。
これにより、回転板を回転させた状態でマウスピース101から内部に息(空気)を吹き込むと、当該空気が吹込部100を通過し、上部導風板150及び回転板群200において連通する特定の音孔(音孔h1、音孔h2、音孔h3)をさらに通過して、リード部300の対応する音孔(半月音孔h4)に供給される。
【0033】
(リード部)
リード部300は、回転板群200の下方に設けられる、本発明の発振部に相当する部品である(図1、2)。
図11は、リード部300の分解斜視図である。
図11に示すように、リード部300は、主に、上部半月板310と、12枚のリード板320と、リード板固定部330と、下部半月板340と、下部導風板350とにより構成される。
【0034】
図12(a)は、上部半月板310の平面図である。
図12(b)は、リード板固定部330の平面図である。
図12(c)は、下部半月板340の平面図である。
図12(a)及び図12(c)に示すように、上部半月板310及び下部半月板340は、上部導風板150、下部導風板350、回転板R1~R4,L1~L3と同様、円板状の部品である。
上部半月板310及び下部半月板340には、1時~12時の各方位の第1~第4周の位置に半円状の半月音孔h4,h6を設けている。
上部半月板310の半月音孔h4と、下部半月板340の半月音孔h6とは、対称的な形状で形成されている。
図12(a)と図12(c)とを見比べるとわかるように、例えば、上部半月板310の12時の半月音孔h4は右半円を穿って形成されているのに対し、下部半月板340の12時の半月音孔h6は左半円を穿って形成されている。
リード板固定部330は、円筒状の部材であり、上部に上部半月板310が接合され、下部に下部半月板340が接合される(図11)。
また、リード板固定部330は、図3図11図12(b)等に示すように、上部導風板150や下部導風板350の音孔h1、h7と同じ位置に、筒状音孔h5を設けている。
つまり、筒状音孔h5は、1時~12時の各放射方向の線と、第1~第4周の円周の線とが交わる箇所に設けられている。
各筒状音孔h5には、放射方向に向かう中心線に沿って、それぞれスリットが施されており、このスリットに1枚のリード板320を差し込んで固定するようになっている。
リード板320は、真鍮で形成された板状の部材である。
図11等に示すように、12枚のリード板320は、同じ厚みで形成されており、それぞれが、対応する1~12時の筒状音孔h5の内部に固定される。
【0035】
図13は、12枚のリード板320の正面図である。
図13(1)は、音階C(ド)を発振可能なリード(発振手段)を備えたリード板32Cであり、図13(2)は、音階C#(ド#)を発振可能なリードを備えたリード板32C#であり、図13(3)は、音階D(レ)を発振可能なリードを備えたリード板32Dであり、図13(4)は、音階D#(レ#)を発振可能なリードを備えたリード板32D#であり、図13(5)は、音階E(ミ)を発振可能なリードを備えたリード板32Eであり、図13(6)は、音階F(ファ)を発振可能なリードを備えたリード板32Fであり、図13(7)は、音階F#(ファ#)を発振可能なリードを備えたリード板32F#であり、図13(8)は、音階G(ソ)を発振可能なリードを備えたリード板32Gであり、図13(9)は、音階G#(ソ#)を発振可能なリードを備えたリード板32G#であり、図13(10)は、音階A(ラ)を発振可能なリードを備えたリード板32Aであり、図13(11)は、音階A#(ラ#)を発振可能なリードを備えたリード板32A#であり、図13(12)は、音階B(シ)を発振可能なリードを備えたリード板32Bである。
【0036】
各リード板320は、1~12時の方位にそれぞれ固定される。
リード板32Cは12時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32C#は1時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32Dは2時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32D#は3時の方位に位置する筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32Eは4時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32Fは5時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32F#は6時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32Gは7時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32G#は8時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32Aは9時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32A#は10時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられ、リード板32Bは11時の方位に位置する4つの筒状音孔h5に亘って設けられる(図12(b)参照)。
【0037】
図14は、リード板320の一部断面を示す斜視図である。
図12図14に示すように、リード板320には、4つのリード(以下、第1~第4リード321~324ともいう)が発振手段として備えられている。
第1~第4リード321~324は、短冊状に形成され、上部がリード板320に連なり、下部及び両側部はリード板320と僅かな隙間をあけた状態で、固定されている。
このため第1~第4リード321~324は、リード板320の一側方から他側方に向けて空気が流れると、その流れ(空気道)に沿って空気が隙間を通過する際、上部を支点として振り子状に振動する。
各リード板320及びリード321~324は、その重さに応じた振動の周波数が設定されており、発振することで、当該周波数の振動に対応する音階(12音階や複数のオクターブ音域)の音が発せられる。
リード板320及びリード321~324は、その長さと幅に基づき重さを変更しているため、それぞれが異なる周波数に応じて、発振させる音階を異ならせている。
【0038】
具体的には、第1~第4リード321~324は、厚みや長さを同一にしつつ、幅は、第1リード321>第2リード322>第3リード323>第4リード324の関係性を有している(図13参照)。
例えば、リード板32Cにおいて、第1~第4リード321~324はいずれも約14mmの長さで形成されるが、第1リード321の幅は約7.2mmで、第2リード322の幅は第1リード321の半幅の約3.6mmで、第3リード323の幅は第2リード322の半幅の約1.8mmで、第4リード324の幅は第3リード323の半幅の0.9mmで形成している。
このように、リードの厚みや長さを共通にしつつ、幅を半値(倍値)とすることで、理論上、リードが振動するときに周波数を半値(倍値)にすることができる。
例えば、リード板32Cにおいて、第1リード321は、第1周波数で振動させることで低音域(第1オクターブ)の音階Cの音(基音)を発振させることができ、第2リード322は、第1周波数の2倍の第2周波数で振動させることで第1オクターブよりも高音域(第2オクターブ)の音階Cの音(2倍音)を発振させることができ、第3リード323は、第2周波数の2倍の第3周波数で振動させることで第2オクターブよりも高音域(第3オクターブ)の音階Cの音(3倍音)を発振させることができ、第4リード324は、第3周波数の2倍の第4周波数で振動させることで第3オクターブよりも高音域(第4オクターブ)の音階Cの音(4倍音)を発振させることができる。
他のリード板32C#、32D、32D#、32E、32F、32F#、32G、32G#、32A、32A#、32Bも、リード板32Cと同様であり、第1リード321は、対応する音階の基音を発振することができ、第2リード322は、対応する音階の倍音を発振することができ、第3リード323は、対応する音階の3倍音を発振することができ、第4リード324は、対応する音階の4倍音を発振することができる。
【0039】
また、各リード板320は、リードの長さを異ならせている。
例えば、リード板32Cのリードは約14mmの長さで、リード板32C#のリードは約13.5mmの長さで、リード板32Dのリードは約13mmの長さで、リード板32D#のリードは約12.5mmの長さで、リード板32Eのリードは約12mmの長さで、リード板32Fのリードは約11.5mmの長さで、リード板32F#のリードは約11mmの長さで、リード板32Gのリードは約10.5mmの長さで、リード板32G#のリードは約10mmの長さで、リード板32Aのリードは約9.5mmの長さで、リード板32A#のリードは約9mmの長さで、リード板32Bのリードは約8.5mmの長さで形成している(図13参照)。
つまり、隣り合う音階ごとに均等間隔で長さを異ならせている。
【0040】
このようにすることで、リード板32Cの第1リード321により音階C(ド)の基音(第1オクターブの音)を発振させることができ、リード板32C#の第1リード321により音階C#(ド#)の基音を発振させることができ、リード板32Dの第1リード321により、音階D(レ)の基音を発振させることができ、リード板32D#の第1リード321により、音階D#(レ#)の基音を発振させることができ、リード板32Eの第1リード321により、音階E(ミ)の基音を発振させることができ、リード板32Fの第1リード321により、音階F(ファ)の基音を発振させることができ、リード板32F#の第1リード321により、音階F#(ファ#)の基音を発振させることができ、リード板32Gの第1リード321により、音階G(ソ)の基音を発振させることができ、リード板32G#の第1リード321により、音階G#(ソ#)の基音を発振させることができ、リード板32Aの第1リード321により、音階A(ラ)の基音を発振させることができ、リード板32A#の第1リード321により、音階A#(ラ#)の基音を発振させることができ、リード板32Bの第1リード321により、音階B(シ)の基音を発振させることができる。
【0041】
第2~第4リード322~324も第1リード321と同様である。
すなわち、リード板32Cの第2~第4リード322~324により、音階C(ド)の倍音(第2オクターブの音)、3倍音(第3オクターブの音)、4倍音(第4オクターブの音)を発振させることができ、リード板32C#の第2~第4リード322~324により、音階C#(ド#)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができ、リード板32Dの第2~第4リード322~324により、音階D(レ)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができ、リード板32D#の第2~第4リード322~324により、音階D#(レ#)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができ、リード板32Eの第2~第4リード322~324により、音階E(ミ)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができ、リード板32Fの第2~第4リード322~324により、音階F(ファ)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができ、リード板32F#の第2~第4リード322~324により、音階F#(ファ#)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができ、リード板32Gの第2~第4リード322~324により、音階G(ソ)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができ、リード板32G#の第2~第4リード322~324により、音階G#(ソ#)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができ、リード板32Aの第2~第4リード322~324により、音階A(ラ)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができ、リード板32A#の第2~第4リード322~324により、音階A#(ラ#)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができ、リード板32Bの第2~第4リード322~324により、音階B(シ)の倍音、3倍音、4倍音を発振させることができる。
【0042】
つまり、リード板は、異なる音階に対応して設けられ、リードは、当該リードの幅や長さに応じて異なる音階やオクターブ音域の発振を可能にしてある。
なお、本実施形態に係るリード板320は、厚みを共通にし、幅と長さを異ならせることで各リードの音階を変化させているが、これらに代え、又は、加えて、重みを音階の調整要素に適用することもできる。
事実、本実施形態のリードは、下端部を肉厚にして、かつ、凹部を設けており、重みを増したい場合には凹部に鉛などの金属を溶射して加え、他方、重みを減らしたい場合には、肉厚部を削るなどして重み調整することで、正確な調律をできるようにしている(図14参照)。
【0043】
このような構成のリード部300においては、上方から空気が供給されると、当該空気がリード部300の内部を通過して空気道を形成する。
例えば、第2右回転板R2が回転された状態、つまり、12時・第2周の音孔h2が連通した状態で、マウスピース101から空気が吹き込まれた場合について説明する。
この場合、空気は、吹込管102を通過し、次に、上部導風板150の12時・第2周に位置する音孔h1を通過し、更に、回転板群200の12時・第2周に位置する音孔(音孔h2及び音孔h3)を通過することで、リード部300に導かれる(導風される)ところ、ここでは、上部半月板310の12時・第2周の半月音孔h4に対して空気が供給される。
【0044】
図15は、図12(a)のA-A矢視断面図である。つまり、図15は、リード部300の12時・第2周に位置する音孔(h4,h5,h6,h7)の断面図である。
なお、図15において、上部半月板310、リード板固定部330、下部半月板340、下部導風板350等の各部品は隙間をあけて重ねられているように図示されているが、これは説明を分かり易くするための表現であり、実際は空気漏れ防止の観点から隙間無く重ねられている。
図15に示すように、上部半月板310の12時・第2周の半月音孔h4に対し上方から空気が供給されると、当該空気は、その半月音孔h4を通過して、12時・第2周の筒状音孔h5に供給される(矢印a)。
空気は、筒状音孔h5を下方に向けて進行するが、筒状音孔h5の下部に配置される下部半月板340の半月音孔h6は左側に設けられているため、左下方に向けて進行する(矢印b)。
この空気は、12時・第2周に設けられているリード板32Cの第2リード322を所定周波数で振動(発振)させることで、第2オクターブのC(ド)の音階の音が発せされる。
リード322の発振により発せられた音は、半月音孔h6及び下部導風板350の音孔h7を通過する(矢印c)。
これにより、音は出音部400に供給される。
なお、リード部300は、中央部分に円筒状の空洞390を備えており、後述する共鳴部410と共に音を共鳴させる機能も備えている。
【0045】
(出音部)
出音部400は、リード部300の下方に設けられる部品であり、共鳴部410とベル部420とにより構成される(図1、2)。
共鳴部410は、円筒状の部品であり、底部中央部分に円状の開口部411を設けている。
このような共鳴部410においては、リード部300から出力される音を共鳴させて増幅させることができる。
共鳴部410で増幅された音は開口部411を介してベル部420に出力される。
ベル部420は、共鳴部410の下部で、かつ、楽器1の最下部に設けられる。
ベル部420は、端部開口面が前方を向くように湾曲しており、かつ、ベル状またはラッパ状に拡張されている。
このようなベル部420を設けることで、共鳴部410により増幅された音を前方に向けて広範に出力させることができる。
これにより、楽器1の音や演奏を、多くの人に明瞭に聴かせることができる。
【0046】
このような構成の楽器1においては、回転板を回転させた状態でマウスピース101から息を吹き込むと、空気が、吹込部100を通過し、上部導風板150及び回転板群200において連通する特定の音孔(音孔h1及び音孔h2)をさらに通過して、その下方のリード部300に供給される。
リード部300では、上方から供給された空気が内部を通過することで、通過した音孔に設けられているリード板320を振動(発振)させる。
例えば、前述した例のように、第2右回転板R2を回転させた状態、つまり、12時・第2周の音孔h2が連通した状態で、マウスピース101から空気が吹き込まれると当該空気は、上部半月板310の12時・第2周の半月音孔h4に対して供給され、その後、リード板固定部330の12時・第2周の筒状音孔h5を空気が通過するところ、当該空気の通過によって、12時・第2周の位置に固定されているリード板32Cの第2リード322が振動(発振)される結果、第2オクターブのC(ド)の音が発せられ、出音部400を介して外部に出音される(図10図13等参照)。
また、第1右回転板R1及び第2右回転板R2を回転させた状態、つまり、1時・第2周の音孔h2が連通した状態で、マウスピース101から空気が吹き込まれると当該空気は、上部半月板310の1時・第2周の半月音孔h4に対して供給され、その後、リード板固定部330の1時・第2周の筒状音孔h5を空気が通過するところ、当該空気の通過によって、1時・第2周の位置に固定されているリード板32C#の第2リード322が振動(発振)される結果、第2オクターブのC#(ド#)の音が発せられ、出音部400を介して外部に出音される(図10図13等参照)。
また、第1右回転板R1、第2右回転板R2、及び第1左回転板L1を回転させた状態、つまり、1時・第4周の音孔h2が連通した状態で、マウスピース101から空気が吹き込まれると当該空気は、上部半月板310の1時・第4周の半月音孔h4に対して供給され、その後、リード板固定部330の1時・第4周の筒状音孔h5を空気が通過するところ、当該空気の通過によって、1時・第4周の位置に固定されているリード板32C#の第4リード324が振動(発振)される結果、第4オクターブのC#(ド#)の音が発せられ、出音部400を介して外部に出音される(図10図13等参照)。
各回転板の回転操作と、発振される音階及びオクターブ音域との関係は、すべてビットコード表(図10)に規定されており、音孔h2は、このビットコード表に従って配置されている。
要するに、C(ド)、D(レ)、E(ミ)、F(ファ)、G(ソ)、A(ラ)、B(シ)の7個の全音階については、第2~第4右回転板R2~R4の回転/非回転(1/0)の組み合わせに基づいて実現される。
また、C#(ド#)、D#(レ#)、F#(ファ#)、G#(ソ#)、A#(ラ#)の5個の半音階については、第2~第4右回転板R2~R4の回転/非回転の組み合わせに加え、第1右回転板R1の回転/非回転の組み合わせに基づいて実現される。
このため、楽器1では、1オクターブ音域に含まれる12音階については、奏者が第1~第4右回転板R1~R4の回転/非回転の操作を行うことによって所望の音を出音させることができる。
また、第1~第4オクターブの音階については、第1~第3左回転板L1~L3の回転/非回転の組み合わせに基づいて実現される。
このため、楽器1では、4オクターブ音域に含まれるすべての音階について、奏者が第1~第4右回転板R1~R4及び第1~第3左回転板L1~L3の回転/非回転の操作を行うことによって所望の音を出音させることができる。
なお、第1~第4右回転板R1~R4及び第1~第3左回転板L1~L3のうちのどの回転板も回転操作しなかった場合、リードを振動させる空気を供給するための連通する音孔h2を設けていないため、発振は行われない(図10参照)。
このように、本発明の楽器1においては、回転板の回転/非回転に対応する「1」/「0」の2進数を採用したビットコード体系に基づき、12音階を円周(回転方向)に沿って設定しつつ、12音階を複数の円周に分けて設定することで、広オクターブ音域に亘る音階の発振を簡易な構成で、容易な操作によって実現している。
【0047】
このように、本実施形態の楽器1は、7枚の回転板を用いて、最大2=128の回転/非回転の組み合わせに対応した音のバリエーションを実現している。
具体的には、第2~第4右回転板R2~R4の3枚の回転板において、2=8通りの回転板の回転/非回転の組み合わせに、全音であるド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ドの8音を対応付けたビットコード体系を規定し、その中から所望の音階を選択できるようにしている。
また、第1右回転板R1を加えた4枚の回転板にすることで、2=16通りの回転板の回転/非回転の組み合わせのうちの12通りに、全音及び半音であるド、ド#、レ、レ#、ミ、ファ、ファ#、ソ、ソ#、ラ、ラ#、シの12音を対応付けたビットコード体系を規定し、その中から所望の音階を選択できるようにしている。
さらに、第1~第3左回転板L1~L3の3枚の回転板を加えることで、最大2=8の回転/非回転の組み合わせが加わるところ、キー操作の便宜上、各左回転板の回転、及び、すべての左回転板の非回転という4通りの組み合わせを加えた。
これにより、12×4=48通りという、4オクターブ音域に亘る、全音及び半音の音階を対応付けたビットコード体系を規定し、その中から所望の音階を選択できるようにしている。
すなわち、極座標に対応した回転方向及び放射方向、並びに、回転板数という回転軸方向に着眼した従来にない音階理論に基づき、数オクターブ分の広音域に亘る発振(発音)を操作性を維持しつつ実現した。
【0048】
(クリック操作に基づくビブラート音の発振について)
楽器1は、第2~第4右回転板R2~R4にクリック操作が可能な機構を備えており、当該クリック操作に基づいて容易に音階を揺らすこと(ビブラート)ができる。
具体的には、各回転板は、15度回転させることができるが、第2~第4右回転板R2~R4は、クリック操作機構を備えることで、15度未満の回転操作を容易に行うことができる。
図16は、第2右回転板R2の分解斜視図である。
図17は、図16の要部平面拡大図である。
これらの図に示すように、第2右回転板R2には、回転板本体R2bの外周の一部(例えば11時~12時の区間)に波状に凹部と凸部が連続する凹凸部S3を設けている。
また、凹凸部S3に対応する回転板ケースR2cの周壁部232の箇所には、凹部232dを設け、当該凹部232dの壁に圧縮バネS1の一端を固定している。
圧縮バネS1の他端には、ボールS2(例えば鉄球など)を回転可能に装着しており、圧縮バネS1を圧縮させた状態でボールの球面を回転板本体R2bの外周面に対し所定の圧力で接するようにしている。
これにより、回転操作の際に、ボールが凹凸部を乗り越えるたびに手指に細かな振動(クリック感)を与えることができる。
このため、奏者は、クリック感に基づき、回転板を任意の回転角度まで段階的に意識して回転させることができる。
例えば、半回転と全回転を繰り返す操作により、リード板320に対する空気の流量を連続的に数段階に変化又は調整させることができ、これにより、リード321~324の振動に変化を与える結果、ビブラート音を発振させることができる。
このような第2右回転板R2のクリック操作に基づいて、C(ド)、C#(ド#)、F(ファ)、F#(ファ#)、A(ラ)、A#(ラ#)、B(シ)の音のビブラートを行うことができる(図10参照)。
第3右回転板R3や第4右回転板R4についても第2右回転板R2と同様である。
第3右回転板R3のクリック操作に基づいて、D(レ)、D#(レ#)、F(ファ)、F#(ファ#)、G(ソ)、G#(ソ#)、B(シ)の音のビブラートを行うことができる(図10参照)。
第4右回転板R4のクリック操作に基づいて、E(ミ)、G(ソ)、G#(ソ#)、A(ラ)、A#(ラ#)、B(シ)の音のビブラートを行うことができる(図10参照)。
【0049】
(変形例)
楽器1において、高さの違う複数の音を同時に発振させることにより和音を出音させることができる。
すなわち、前述の実施形態においては、回転板の回転操作に基づいて1つの音孔h2のみを連通させるようにして、対応する1つの音階を発振することについて説明したが、回転板の回転操作に基づいて複数の音孔h2を連通させるようにすれば、対応する複数の音階を同時発振させることもできる。
例えば、和音用の回転板を設け、当該回転板を操作したときに、12時と4時と7時の音孔h2が連通するように各音孔h2を配置すれば、C(ド)とE(ミ)とG(ソ)の3音階を同時に発振させることができる。
これにより、和音用の回転板を回転させた状態で楽器1に息を吹き込むことで、ドミソの和音を出音させることができる。
ドミソに限らず他の和音(例えばレファラ)も出音させることができ、3和音に限らず4以上の音からなる和音を出音させることもできる。
また、キー操作に応じて、1つの音孔又は複数音孔を連通させるようにもできる。
これにより、1つの音階の発振、及び、複数の音階の同時発振が可能になり、所望の単音や和音を発音(出音)させることができる。
なお、1つの音階の発振が可能な構成、及び、複数の音階の同時発振が可能な構成のうち、一方の構成を備えてもよく、両方の構成を備えてもよい。
つまり、単音のみ出音可能な楽器1を構成してもよく、和音のみ出音可能な楽器1を構成してもよく、単音と和音を出音可能な楽器1を構成してもよい。
【0050】
以上のように、本発明の楽器1において、複数の音孔(音孔h2)を設けた複数の回転板(R1~R4、L1~L3)を重ね、前記回転板の回転に応じ、特定の音孔(音孔h2)を前記複数の回転板にわたり連通させることが可能な回転板群200と、前記連通した音孔(音孔h2)を通過させた空気(気流)に基づいて発振を行う発振部(リード部300)と、を設け、前記複数の音孔(音孔h2)は、回転させる回転板に応じて特定の音孔(音孔h2)が異なるように配置され、発振部(リード部300)は、異なる音孔(音孔h2)に対応する位置に、異なる音階の音を発せられることが可能な発振手段(リード)を設けている。
このように、本発明の楽器1は、複数の音孔h2が配置された複数の回転板を重ねるだけの簡易な構成で実現することができる。
また、回転方向(極座標で示すところの角度に相当)及び放射方向(極座標で示すところの距離に相当)に沿って音孔h2を設け、また、当該回転板を複数枚重ねるだけで発振可能な音階を増やすことができるため、広オクターブ音域に亘る演奏を簡易な構成で実現することができる。
また、奏者は、所望の音階に対応する回転板を回転させるだけで済むため容易に操作することができる。
つまり、本発明の楽器1は、従来にはない簡易な構成で、広いオクターブ音域にわたる演奏を、容易な操作で実行することができる。
例えば、従来のサクソフォンでは、マウスピースに取り付けられているリードとキー操作によって2オクターブが限界のオクターブ音域であり、本発明のように4オクターブに亘る演奏を行うには4種のサクソフォンが必要になる。
これに対し、本発明の楽器1は、4オクターブにわたる演奏を、マウスピース101から息を吹き込むだけで容易に行うことができる。
また、マウスピース101もリードを備えていないため簡易・軽量・安価にできる。
本発明の楽器1において、発振部(リード部300)は、複数の音階の発振が可能であり、回転板群200には、全音に対応した回転板R2~R4と、半音に対応した回転板R1と、が含まれるようにしている。
このような楽器1によれば、全音からなるメロディを演奏したい場合は回転板(R2~R4)だけを操作すればよく、半音が必要な場合のみ半音用の回転板(R1)を操作すればよい(図10参照)ため、演奏上の利便にも優れている。
また、本発明の楽器1において、発振部(リード部300)は、複数のオクターブ音域の発振が可能であり、回転板群200には、第1オクターブ音域に対応した回転板(例えばL3)と、第2オクターブ音域といった複数オクターブに対応した回転板(例えばL4)とを含めている。
このような楽器1によれば、例えば、第1オクターブの音やメロディを演奏したい場合は第3左回転板L3を操作すればよく、第3オクターブの音やメロディを演奏したい場合には、第2左回転板L2を操作すればよい(図10参照)ため、演奏上の利便を高めつつ、演奏可能な曲やメロディのバリエーションを増やすことができる。
本発明の楽器1は、音孔h2は、1以上の回転板の回転に基づいて、特定の回転方向及び放射方向に配置されている音孔h2が連通するように配置されている。
つまり、極座標で示すところの角度(回転方向)と距離(放射方向)に従い音孔h2が配置された回転板を軸方向に複数枚積層することで立体極座標系を構成し、当該立体極座標系で表される立体空間において本発明の楽器1を構成している。
また、本発明の楽器1において、発振部(リード部300)は、空気の振動に基づいて発振が可能な複数のリード321~324を発振手段として有するリード板320を複数備え、リード板320は、異なる音階に対応して設けられ、リード321~324は、リードの幅に応じて異なるオクターブ音域の発振を可能にしてある。
このように、本発明の楽器1は、従来にはない音階理論に対応した構成を備えつつ、数オクターブ分の広音域及び手指に対応した人間工学的な操作性を有する吹奏楽器を提供するものである。
【0051】
以上、本発明の楽器1について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、マウスピース101を楽器1の下部に設け、出音部400を楽器1の上部に設けることもできる。
また、回転板の枚数、形状、大きさや、音孔の個数、形状、大きさ、位置なども上述の実施形態に限るものではない。
例えば、回転方向に沿って12個の音孔を設けたが、11個以下でも13個以上でもよく、24個でもよい。
また、放射方向に沿って4個の音孔を設けたが、3個以下でも5個以上でもよい。
また、7枚の回転板を重ねて構成したが、6枚以下でも8枚以上でもよい。
音階や半音階に係る回転板を左回転板にしてもよく、オクターブ音域に係る回転板を右回転板にしてもよい。
また、全音に対応した回転板(R2~R4)と、半音に対応した回転板(R1)とを含む構成について説明したが、少なくとも一方の回転板を備えた構成でもよい。例えば、全音に対応した回転板のみで本発明の楽器1を構成することもできる。
回転板の回転方向を変えることもできる。
回転板の回転方向を片方向だけでなく両方向にすることもできる。この場合、右回転/左回転/非回転の3ビットをベースにビットコードを構成すればよい。
上部導風板150やリード部300などの音孔の位置(すなわち、音孔h2の連通位置)を1~12時の位置に設けなくてもよい。
例えば、30度間隔で均等に配置する必要はなく、不均等でもよく、12箇所に限らず、11以下でも13以上でもよい。
また、回転板の回転角度(最大)は15度に限らず、15度未満でも15度超でもよい。
例えば、回転角度7.5度の第1回転と、回転角度15度の第2回転とを設けることで、第1回転/第2回転/無回転の3ビットをベースにしたビットコードを構成することができる。
リード部300においては、4つのリードが一体に構成されているが3つ以下でも5つ以上でもよく、それぞれ独立分離したものを採用してもよい。
上述の回転板の枚数、音孔の個数、配列構成は、任意に組み合わせても良い。
回転板の大きさや厚み、操作キーの位置を奏者(例えば子供)の指の大きさや太さにあうように調整してもよい。
リードの幅や長さは上記した数値に限らず、変更することができる。
また、発振手段は、リードに限らず音階毎に発振するものであればよい。
回転板を回転状態から非回転状態に復帰させるため、又は、クリック操作機構において圧縮バネ(240,S1)を用いたが、これに限らず、例えば、渦巻バネ、板バネなどの他の弾性部材を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、楽器として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1:楽器、100:吹込部、101:マウスピース、102:吹込管、103:接続部、104:固定棒、150:上部導風板、151:スクリュー、h1:音孔、200:回転板群、R1:第1右回転板、R2:第2右回転板、R3:第3右回転板、R4:第4右回転板、L1:第1左回転板、L2:第2左回転板、L3:第3左回転板、R1b~R4b、L1b~L3b:回転板本体、R1c~R4c、L1c~L3c:回転板ケース、R1k~R4k、L1k~L3k:操作キー、211:軸孔、212:バネ支持部、213:弧状板、h2:音孔、220:軸受け、231:凸部、232:周壁部、232a:切欠部、232b:レール、232d:凹部、233:底板部、h3:音孔、240:圧縮バネ、300:リード部、310:上部半月板、h4:半月音孔、320(32C、32C#、32D、32D#、32E、32F、32F#、32G、32G#、32A、32A#、32B):リード板、321~324:第1~第4リード、330:リード板固定部、h5:筒状音孔、340:下部半月板、h6:半月音孔、350:下部導風板、h7:音孔、390:空洞、400:出音部、410:共鳴部、411:開口部、420:ベル部、S1:圧縮バネ、S2:ボール、S3:凹凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17