(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144211
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 6/60 20060101AFI20231003BHJP
D01D 1/02 20060101ALI20231003BHJP
D01D 5/06 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
D01F6/60 371Z
D01D1/02
D01D5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051079
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹山 直彦
(72)【発明者】
【氏名】小宮 直也
【テーマコード(参考)】
4L035
4L045
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB03
4L035BB66
4L035BB89
4L035BB91
4L045AA02
4L045BA01
4L045BA52
4L045BA57
(57)【要約】
【課題】鮮やかで濃く深みのある色に着色されながら防護衣料としての性能も有した原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供する。
【解決手段】アミド系溶媒中に、有機顔料を粒径D90%が2.0μm以下となるように、顔料濃度10~50質量%で分散させて顔料分散溶液とし、該顔料分散溶液に剪断が1(1/s)かかった時の粘度ηが7000mPa・s以下であり、かつ該顔料分散溶液に剪断が1000(1/s)かかった時の粘度ηが50mPa・s以下である有機顔料分散溶液を少なくとも1種類以上作成した後、該有機顔料分散溶液を、メタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液と連続的に混合撹拌して紡糸ドープを作成し、次いで該有機顔料が、繊維中に全繊維質量に対して合計2.0~10.0質量%含有されるよう紡糸する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
残存溶媒量が全繊維質量に対して0.1質量%以下である原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維であって、該繊維には少なくとも1種類の有機顔料が合計2.0~10.0質量%含有されており、かつ該繊維の明度Lが40以下、引張強度が3.5cN/dtex以上であることを特徴とする原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
【請求項2】
黒色無機顔料が全繊維質量全体に対して0.1~0.5質量%含有されている請求項1記載の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維。
【請求項3】
アミド系溶媒中に、有機顔料を、下記方法により測定した粒径D90%が2.0μm以下となるように、顔料濃度10~50質量%で分散させて顔料分散溶液とし、該顔料分散溶液に剪断が1(1/s)かかった時の粘度ηが7000mPa・s以下であり、かつ該顔料分散溶液に剪断が1000(1/s)かかった時の粘度ηが50mPa・s以下である有機顔料分散溶液を少なくとも1種類以上作成した後、該有機顔料分散溶液を、メタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液と連続的に混合撹拌して紡糸ドープを作成し、次いで該有機顔料が、繊維中に全繊維質量に対して合計2.0~10.0質量%含有されるよう紡糸することを特徴とする請求項1に記載の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法。
<粒径D90%の測定方法>
粒子の粒径をJIS Z 8825に従って測定し、頻度(%)を算出し累積頻度が90%である粒径D90%を得た。具体的には、マイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3000を使用し、レーザー波長:780nmm、測定時間:30sec、測定回数:2回、透過性:反射、溶媒:イオン交換水、溶媒屈折率:1.33でレーザー回折・散乱法にて測定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色された原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維に関するものであり、さらに詳しくは、鮮やかで濃く深みのある色に着色された原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとから製造される全芳香族ポリアミド繊維が、耐熱性および難燃性に優れていることは公知であり、かかる全芳香族ポリアミド繊維のうち、ポリメタフェニレンイソフタルアミドに代表されるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、耐熱性および難燃性繊維として特に有用であることが知られている。そして、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、これらの特徴を活かし、例えば、消防服、耐熱性作業服などの防護衣料分野で好適に使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
このような衣料分野での使用においては、着色した繊維を用いるのが一般的であり、特に屋外で使用されることが多い防護衣料においては、汚れなどが目立ちにくい、繊維の明度Lが40以下の濃い色のデザインが主流となっている。このような、濃い色に着色した繊維を得る方法としては、繊維化後、染料を用いて染色する後染色法、あるいは紡糸ドープに顔料を添加した後に繊維化する原着法が知られている。
【0004】
しかしながら、繊維化後、染料を用いて染色する後染色によって着色されたメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、光照射により変色や褪色を起こすという欠点を有しており、また洗濯による色素の脱落による変色や褪色を起こすという欠点も有している。
【0005】
そこで、長期間屋外で使用される消防服、耐熱性作業服などの防護衣料においては、紡糸原液に顔料を添加した後に繊維化する原着法での着色が行われている。しかしながら染料より粒子が大きい顔料は、繊維中に添加すると強度が低下することが一般的にしられている。特に濃色にするために添加量を多くする場合、繊維強度の低下をいかに抑えるかが課題となっている。
【0006】
高強度繊維で知られるパラ系アラミド繊維の着色においても同様の課題が生じており、例えば、パラ系アラミド繊維の着色において、黒色無機顔料を繊維中に顔料濃度2.0質量%添加すると満足のいく濃さの繊維が得られるが、強度が低下するという問題があった。
【0007】
そこで赤・黄・青の有機顔料を少なくとも1種類、繊維質量に対し1~6質量%、及び黒色無機顔料を1質量%以下となるバランスで添加することによって強度を維持しながら明度L値が30.2~33.5となる黒色に着色されたパラ系アラミド繊維の着色方法が提案されており、黒色無機顔料を有機顔料と併用することで強度を維持しながら明度L値を下げた黒色パラ系アラミド繊維が得られている(特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、この方法は、パラ系アラミド繊維を黒色に着色することを目的としており、鮮やかで濃い色に着色されたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得るには、十分な解決策に至っていなかった。
【0009】
一方、400℃の空気中に15秒暴露しても変色しない、耐熱性のある顔料を、平均粒径0.4μm以下となるように、繊維中に0.1質量%以上15質量%以下で含有させた全芳香族ポリアミド繊維が提案されており、顔料の添加量を増やすことで濃色にすることが可能であるが、この方法で採用されている乾式による紡糸方法においては、紡糸口金より紡出された繊維状のポリマー溶液は、形成される繊維状物の表面付近から溶媒が揮発・乾燥するので、繊維表面に緻密で、強固なスキン層を生じる。このため、顔料添加量を増やしても強度を維持できるが、紡糸後の繊維状物内に残存する溶媒を水洗等により洗浄を行っても、十分に溶媒を除去することが困難である。かくして、この方法で得られた繊維は繊維中に残存する溶媒により、高温の雰囲気下における使用時に、黄変が生じたり、残存する溶媒が揮発あるいは分解することにより有機ガスが発生したりするという問題があった。
【0010】
一方、この方法では、乾式による紡糸方法だけでなく、水溶性有機溶剤中に溶解されたポリマーに顔料を添加した紡糸ドープを、水性凝固浴あるいは高濃度の無機塩を含有する水性凝固浴に導入する湿式による紡糸方法も提案されている。この方法では、紡糸段階で溶媒の揮発は生じないものの、水性凝固浴あるいは高濃度の無機塩を含有する水性凝固浴に導入した際に、繊維状になったポリマー溶液の表面近傍から溶媒が水性凝固浴内へ脱離すると同時に、水が凝固した繊維状物の表面近傍から内部へ浸入することにより強固なスキン層が生じる。このため、乾式紡糸法による繊維と同様に、顔料添加量を増やしても強度を維持できるが、繊維中に残存する溶媒によって黄変や有機ガスの問題が生じることは避けられない(特許文献3参照)。
【0011】
さらに、環境意識の高まりから、繊維の製造工程において、スキンコアを有しない凝固形態となるよう凝固浴の成分あるいは条件を調節し、かつ、特定倍率で可塑延伸する原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法が提案されている(特許文献4参照)。しかしながらこの製造方法では、強度に寄与するスキン層が存在しないため、特に顔料を多く含有させると強度が低下するという問題があり、濃く深みのある色に着色されながら防護衣料として十分な強度を持ったものが得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006-016709号公報
【特許文献2】KR20160011865A
【特許文献3】特開平1-139814号公報
【特許文献4】特許第5852127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、かかる従来技術における課題を解消し、残存溶媒量が低く、鮮やかで濃く深みのある色に着色されながら防護衣料としての性能も有した原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定の粒径分布を有する有機顔料を、繊維中に所定量含有させ、さらに好ましくは、黒色無機顔料を少量含有させるとき、上記目的が達成できることを見出し本発明に到達した。
【0015】
すなわち本発明によれば、
1.残存溶媒量が全繊維質量に対して0.1質量%以下である原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維であって、該繊維には少なくとも1種類の有機顔料が合計2.0~10.0質量%含有されており、かつ該繊維の明度Lが40以下、引張強度が3.5cN/dtex以上であることを特徴とする原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維、
2.黒色無機顔料が全繊維質量全体に対して0.1~0.5質量%含有されている上記1記載の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維、
3.アミド系溶媒中に、有機顔料を、下記方法により測定した粒径D90%が2.0μm以下となるように、顔料濃度10~50質量%で分散させて顔料分散溶液とし、該顔料分散溶液に剪断が1(1/s)かかった時の粘度ηが7000mPa・s以下であり、かつ該顔料分散溶液に剪断が1000(1/s)かかった時の粘度ηが50mPa・s以下である有機顔料分散溶液を少なくとも1種類以上作成した後、該有機顔料分散溶液を、メタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液と連続的に混合撹拌して紡糸ドープを作成し、次いで該有機顔料が、繊維中に全繊維質量に対して合計2.0~10.0質量%含有されるよう紡糸することを特徴とする請求項1に記載の原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法、
<粒径D90%の測定方法>
粒子の粒径をJIS Z 8825に従って測定し、頻度(%)を算出し累積頻度が90%である粒径D90%を得た。具体的には、マイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3000を使用し、レーザー波長:780nmm、測定時間:30sec、測定回数:2回、透過性:反射、溶媒:イオン交換水、溶媒屈折率:1.33でレーザー回折・散乱法にて測定した、
が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、残存溶媒量が低く、鮮やかで濃く深みのある色に着色されながら防護衣料としての性能も有した原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維が得られるため、これを用いた防護衣料において汚れの目立ちにくい濃い色でありながら暗くくすんだ黒色でなく、鮮やかな色味を持ったデザインで仕上げることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明におけるメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミンとメタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとを原料として、例えば溶液重合や界面重合させることにより製造されるポリアミドであるが、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えばパラ型等の他の共重合成分を共重合したものであってもよい。
【0018】
上記メタ型芳香族ジアミンとしては、メタフェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン等及びこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば2,4-トルイレンジアミン、2,6-トルイレンジアミン、2,4-ジアミノクロルベンゼン、2,6-ジアミノクロルベンゼン等を使用することができる。なかでも、メタフェニレンジアミン又はメタフェニレンジアミンを70モル%以上含有する上記の混合ジアミンが好ましい。
【0019】
また、上記メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、及びこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3-クロルイソフタル酸クロライド、3-メトキシイソフタル酸クロライドを使用することができる。なかでも、イソフタル酸クロライド又はイソフタル酸クロライドを70モル%以上含有する上記の混合カルボン酸ハライドが好ましい。
【0020】
上記のジアミンとジカルボン酸ハライド以外で使用し得る共重合成分としては、芳香族ジアミンとして、パラフェニレンジアミン、2,5-ジアミノクロルベンゼン、2,5-ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジン等のベンゼン誘導体、1,5-ナフチレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられ、一方、芳香族ジカルボン酸ハライドとして、テレフタル酸クロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’-ビフェニルジカルボン酸クロライド、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライド等が挙げられる。
【0021】
これらの共重合成分の共重合比は、あまりに多くなりすぎるとメタ型全芳香族ポリアミドの特性が低下しやすいので、ポリアミドの全酸成分を基準として20モル%以下が好ましい。特に、好適なメタ型全芳香族ポリアミドは、全繰返し単位の80モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位からなるポリアミドであり、なかでもポリメタフェニレンイソフタルアミドが好ましい。
かようなメタ型全芳香族ポリアミドの重合度は、30℃において97質量%濃硫酸を溶媒として測定した固有粘度(IV)が1.3~3.0の範囲が適当である。
【0022】
次にここで得られたメタ型全芳香族ポリアミドを溶解する溶媒に溶解して紡糸ドープを調整するが、重合後メタ型全芳香族ポリアミドを単離せずそのまま紡糸ドープとすることも可能である。ここで用いる溶媒としてアミド系溶媒を一般的に用いることができ、主なアミド系溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと称する場合がある)、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと称する場合がある)、ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと称する場合がある)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取り扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
【0023】
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドで溶媒がNMPの場合には、通常は10~30質量%の範囲とすることが好ましい。
【0024】
本発明においては、市場が要求する鮮やかで濃い色に着色された原着繊維得るために、この紡糸ドープに、有機顔料をポリマー質量に対して2.0~10.0質量%となるよう添加する。添加濃度が高いほど明度L値が小さくなり濃く鮮やかな色相となるとなることから、2.3~9.5質量%の添加が好ましく、さらに6.0~9.0質量%の添加がより好ましい。
【0025】
該有機顔料の添加量が2.0質量%未満の場合、目標の明度より高く、十分な濃さを有さない。一方、有機顔料の添加量が10.0質量%を越える場合、繊維物性が著しく低下し、防護衣料に用いるには不十分な物性になる。
【0026】
また、この際、顔料トータルの添加量を抑えながら濃い色にするために黒色無機顔料をポリマー成分あたり0.1~0.5質量%となるよう添加することが好ましい。しかしながら、0.5質量%より多くの黒色無機顔料を添加すると明度L値は小さくなり、濃い色が得られるが、鮮やかでなく暗く黒くくすんだ色となってしまい。市場で要求される鮮やかで濃い色の繊維を提供することができなってしまうので好ましくない。
【0027】
本発明においては、繊維を濃い色に着色するため、繊維内部に顔料粒子を多く存在させることとなり、一般的に繊維強度が低下することが考えられる。そこで、あらかじめ添加に必要な有機顔料をポリマー溶液に使用しているアミド系溶媒に、粒径D90%が2.0μm以下となるように、顔料濃度10~50質量%で分散させて顔料分散溶液とし、該顔料分散溶液をメタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液と連続的に混合撹拌し紡糸ドープを作成しながら紡糸を行うことが必要となる。ここで、繊維強度を低下させないように顔料を添加するため、アミド系溶媒中にあらかじめ顔料濃度10~50質量%となるよう十分に分散させたものを添加することが必要となる。この際、水分が混入すると紡糸性が悪化するため、乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のアミド系溶媒を秤量し、0℃に冷却した後、その中へ高速撹拌しながら有機顔料を少しずつ添加し、粒径D90%が2.0μm以下となるように分散させる。ここで粒径D90%が2.0μmより大きくなるなど分散が不十分な場合、繊維強度の低下が著しく起こり防護衣料に用いるのに不十分な強度となってしまう。
【0028】
尚、粒径D90%とは、小さい粒径から頻度を積算し、累積頻度が全体の90%である粒径をいう。
ここで準備する顔料分散溶液は、目標色を得るために少なくとも1種類の必要な数の顔料の分散溶液を作成し、得られる原綿の目標の濃さと色味に合うように調整し、メタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液と連続的に混合撹拌させる。
【0029】
尚、濃色の繊維を得るためには、顔料分散溶液をメタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液に連続的に混合するために、配管を通して大量に顔料分散溶液を送液する必要が出てくるが、タンクからの距離が長い場合など配管中の圧力損失により送液できなくなる場合がある。このため、ここで用いられる顔料分散溶液に剪断が1(1/s)かかった時の粘度ηは7000mPa・s以下であり、かつ該顔料分散溶液に剪断が1000(1/s)かかった時の粘度ηは50mPa・s以下であることが必要である。
【0030】
顔料分散溶液にかかる剪断が1(1/s)の時の粘度ηが7000mPa・sを越える場合、高粘度のため配管内での圧力損失が大きくなり顔料分散溶液を送液することが困難となりやすい。一方、溶液にかかる剪断が1000(1/s)の時の粘度ηが50mPa・sを越える場合、同様に圧力損失が大きくなり顔料分散溶液を安定して送液できなくなるなどの問題が生じてくる。
【0031】
また、本発明において、鮮やかで濃い色に着色するために黒色無機顔料以外の、群青、ベンガラ、酸化チタン、酸化鉄等など有色の無機顔料を用いた場合、あらかじめ溶剤に分散しておいてもその添加量が多くなると繊維強度が低下してしまうため望ましくない。
ここで使用される有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、ペリノン系、ペリレン系、アンスラキノン系等の顔料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
次に、上記のとおり顔料分散体溶液と連続的に混合されて作成された紡糸ドープを凝固液中へ紡出し凝固させる。紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が500~30000個、紡糸孔径が0.05~0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。また、紡糸口金から紡出する際の紡糸ドープの温度は、10~90℃の範囲が適当である。
【0033】
本発明の繊維を得るために用いる凝固浴の例としては、無機塩を含まないアミド系溶媒の濃度45~60質量%の水溶液を、浴液の温度10~35℃の範囲で用いる。アミド系溶媒の濃度が45質量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、最終繊維に溶媒が残存することとなる。また、アミド系溶媒の濃度が60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このため、繊維成形加工時に単糸が切断するなどの不具合が多く発生する。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1~30秒の範囲が適当である。
【0034】
次に凝固浴にて凝固して得られた繊維が可塑状態にあるうちに、可塑延伸浴中にて繊維を延伸処理する。可塑延伸浴液としては特に限定されるものではなく、従来公知の浴液を採用することができる。
【0035】
本発明の繊維を得るためには、可塑延伸浴中の延伸倍率を、3.5~5.0倍の範囲とする必要があり、さらに好ましくは3.7~4.5倍の範囲とする。本発明の繊維の製造においては、可塑延伸浴中にて特定倍率の範囲で可塑延伸することにより、凝固糸中からの脱溶剤を促進することができる。
【0036】
可塑延伸浴中での延伸倍率が3.5倍未満である場合には、凝固糸中からの脱溶剤が不十分となる。また、破断強度が不十分となり、紡績工程等の加工工程における取り扱いが困難となる。一方で、延伸倍率が5.0倍を超える場合には、単糸切れが発生するため、工程安定性が悪くなる。
可塑延伸浴の温度は、10~90℃の範囲が好ましい。好ましくは温度20~90℃の範囲にあると、工程安定性がよい。
【0037】
次に、繊維中に残留している溶剤を洗浄する。この工程においては、可塑延伸浴にて延伸された繊維を、十分に洗浄する。洗浄は、得られる繊維の品質面に影響を及ぼすことから、多段で行うことが好ましい。特に、洗浄工程における洗浄浴の温度および洗浄浴液中のアミド系溶媒の濃度は、繊維からのアミド系溶媒の抽出状態および洗浄浴からの水の繊維中への浸入状態に影響を与える。このため、これらを最適な状態とする目的においても、洗浄工程を多段とし、温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件を制御することが好ましい。
【0038】
洗浄の温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件については、最終的に得られる繊維の品質を満足できるものであれば、特に限定されるものではない。ただし、最初の洗浄浴を60℃以上の高温とすると、水の繊維中への浸入が一気に起こるため、繊維中に巨大なボイドが生成し、品質の劣化を招く。このため、最初の洗浄浴は、30℃以下の低温とすることが好ましい。
【0039】
繊維中に溶媒が残っている場合、該繊維の難燃性を低下させる上に、該繊維を用いた製品の加工、および当該繊維を用いて形成された製品の使用における環境安全性においても好ましくない。このため、本発明に用いられる繊維に含まれる残存溶媒量は0.1質量%以下であることが必要であり、0.08質量%以下であることが好ましい。
【0040】
次に、乾熱処理工程においては、洗浄工程を経た繊維を、乾燥・熱処理する。乾熱処理の方法としては特に限定されるものではないが、例えば、熱ローラー、熱板等を用いる方法を挙げることができる。乾熱処理を経ることにより、最終的に、本発明に用いられるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
【0041】
本発明の、鮮やかで濃く深みのある色に着色されたながら防護衣料としての性能も有したメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得るためには、乾燥のために100℃での乾熱処理を実施した後に、280~310℃の範囲で1回につき5秒以下で少なくとも2回以上繰り返し乾熱処理する必要があり、290~300℃の範囲で実施することがさらに好ましい。熱処理温度が280℃未満の場合には、繊維の結晶化が不十分となり、繊維の収縮性が高くなる。一方で、310℃を越える場合や1回につき5秒以上の処理を行った場合、黄色系蛍光顔料が熱エネルギーを過剰に吸収し、励起状態にとどまらず構造変化を起こしてしまい色相が変わってしまう問題が発生する。ここで280~310℃の範囲で行う乾熱処理は、得られる繊維の破断強度の向上に寄与する。
【0042】
乾熱処理が施されたメタ型全芳香族ポリアミド繊維には、必要に応じて、さらに捲縮加工を施してもよい。さらに、捲縮加工後は、適当な繊維長に切断し、次工程に提供してもよい。また、場合によっては、マルチフィラメントヤーンとして巻き取ってもよい。
【0043】
かくして得られた、本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維には少なくとも1種類の有機顔料が合計2.0~10.0質量%含有されており、かつ該繊維の明度Lが40以下、引張強度が3.5cN/dtex以上であることが肝要である。繊維の明度Lが40を越える場合は、鮮やかで濃く深みのある色に着色することは不可能であり、一方、引張強度が3.5cN/dtex未満の場合は、強度が低すぎて、防護衣料としての性能が発揮できない。
【実施例0044】
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例及び比較例に制限されるものではない。
なお、実施例中の「部」および「%」は特に断らない限りすべて質量基準に基づく値であり、量比は特に断らない限り質量比を示す。実施例および比較例における各物性値は下記の方法で測定した。
【0045】
<固有粘度(I.V.)>
ポリマーを97%濃硫酸に溶解し、オストワルド粘度計を用い30℃で測定した。
【0046】
<繊度>
JIS L1015に基づき、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛繊度にて表記した。
【0047】
<粒径D90%>
粒子の粒径をJIS Z 8825に従って測定し、頻度(%)を算出し累積頻度が90%である粒径D90%を得た。具体的には、マイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3000を使用し、レーザー波長:780nmm、測定時間:30sec、測定回数:2回、透過性:反射、溶媒:イオン交換水、溶媒屈折率:1.33でレーザー回折・散乱法にて測定した。
【0048】
<引張強度、引張伸度>
JIS L1015に基づき、インストロン社製 型番5565を用いて、以下の条件で測定した引張破断強度、引張破断伸度の値を繊維の引断強度、引張伸度とした。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
【0049】
<明度L値>
得られた原綿をカード機で十分に開繊し、1.3グラム取り出して直径30mmの測定用の円形セルに詰め、分光色彩計 SD7000(日本電色工業製)を用いて測定した。
(測定条件)
表色系 :ハンター
正反射光方式 :SCI
光源 :D65
【0050】
<色味判定>
得られた原綿を標準光源D65下で目視により確認し、色の濃さと鮮やかさの判定を行った。
【0051】
[実施例1]
乾燥窒素雰囲気下の反応容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)721.5質量部を秤量し、このDMAc中にメタフェニレンジアミン97.2質量部(50.18モル%)を溶解させ、0℃に冷却した。この冷却したDMAc溶液に、さらにイソフタル酸クロライド(以下IPCと略す)181.3質量部(49.82モル%)を徐々に攪拌しながら添加し、重合反応を行った。
【0052】
次に、平均粒径が10μm以下の水酸化カルシウム粉末を66.6質量部秤量し、重合反応が完了したポリマー溶液に対してゆっくり加え、中和反応を実施した。水酸化カルシウムの投入が完了した後、さらに40分間攪拌して、透明なポリマードープを得た。
得られたポリマードープからポリメタフェニレンイソフタルアミドを単離してIVを測定したところ、1.65であった。また、ポリマードープ中のポリマー濃度は、17質量%であった。
【0053】
乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を84質量%秤量し、0℃に冷却した。このDMAc中に高速撹拌しながら有機顔料Pigment Orange 61を16質量%となるように徐々に加えた後、さらに1時間高速撹拌し、DMAc中に顔料が均一に分散した顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.82μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=6890.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が47.3mPa・sであった。
【0054】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で38~40で鮮やかな色味であるため、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対して有機顔料量=6.00質量%となるようにドープ配管を介して逐次混合撹拌した後、連続して孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量%)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して1色目の紡糸を実施した。
【0055】
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
【0056】
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、顔料で着色された原着原綿を得た。
得られた原綿の繊度は、1.67dtex,破断強度3.54cN/dtex、破断伸度38.2%と防護衣料に用いるのに問題のない物性であった。
【0057】
また、原綿の残留溶媒量は0.03質量%であったので、分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用いて、明度L値を測定した結果、L値=39.5と目標の明度を達成していることを確認した。また、標準光源D65下で目視により色味を確認した結果、濃く鮮やかな色であることが確認された。
【0058】
[比較例1]
実施例1と同じ方法でポリマー溶液を作成した。IVは、1.65であり、ポリマードープ中のポリマー濃度は、17質量%であった。
【0059】
乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を85質量%秤量し、0℃に冷却した。このDMAc中に高速撹拌しながら有機顔料Pigment Orange 73を15質量%となるように徐々に加えた後、さらに1時間高速撹拌し、DMAc中に顔料が均一に分散した顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.93μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=7500.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が69.0mPa・sであった。
【0060】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で38~40で鮮やかな色味であるため、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対して有機顔料量=6.00質量%となるようにドープ配管を介して逐次混合撹拌が必要であるが、顔料分散溶液の剪断粘度が高く送液配管内における圧力損失が大きく顔料の混合を行うことができなかった。このためこの製造方法で目的の原綿を得ることができなかった。
【0061】
[比較例2]
実施例1と同じ方法でポリマー溶液を作成した。IVは、1.65であり、ポリマードープ中のポリマー濃度は、17質量%であった。
【0062】
乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を87質量%秤量し、0℃に冷却した。このDMAc中に高速撹拌しながら有機顔料Pigment Red 254を13質量%となるように徐々に加えた後、さらに1時間高速撹拌し、DMAc中に顔料が均一に分散した顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.84μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=5820.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が24.6mPa・sであった。
【0063】
乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を85.3質量%秤量し、0℃に冷却した。このDMAc中に高速撹拌しながら無機オレンジ顔料Pigment Orange 82を14.7質量%となるように徐々に加えた後、さらに1時間高速撹拌し、DMAc中に顔料が均一に分散した顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.63μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=21.2mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が24.3mPa・sであった。
【0064】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で38~40で鮮やかな色味であるため、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対してPigment Redを0.70質量%、Pigment Orange 82を6.00質量%となるように2つの顔料分散溶液をドープ配管を介して逐次混合撹拌した後、連続して孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量%)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して1色目の紡糸を実施した。
【0065】
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、顔料で着色された原着原綿を得た。
【0066】
得られた原綿の残留溶媒量は0.03質量%であったので、分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用いて、明度L値を測定した結果、L値=39.3と目標の明度を達成していることを確認した。また、標準光源D65下で目視により色味を確認した結果、濃く鮮やかな色であることが確認された。
しかし、該原綿の物性は、繊度は、1.67dtex,破断強度2.54cN/dtex、破断伸度15.3%と無機顔料の含有量が多いため防護衣料に十分な強度を得ることができなかった。
【0067】
[比較例3]
実施例1と同じ方法でポリマー溶液を作成した。IVは、1.65であり、ポリマードープ中のポリマー濃度は、17質量%であった。
【0068】
乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を84質量%秤量し、0℃に冷却した。このDMAc中に高速撹拌しながら有機顔料Pigment Orange 61を16質量%となるように徐々に加えた後、さらに1時間高速撹拌し、DMAc中に顔料が均一に分散した顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=2.81μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=6080.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が44.8mPa・sであった。
【0069】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で38~40で鮮やかな色味であるため、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対して有機顔料量=6.00質量%となるようにドープ配管を介して逐次混合撹拌した後、連続して孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量%)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して1色目の紡糸を実施した。
【0070】
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、顔料で着色された原着原綿を得た。
【0071】
得られた原綿の繊度は、1.67dtex,破断強度3.42cN/dtex、破断伸度36.6%と防護衣料に十分な強度を得ることができなかった。
また、原綿の残留溶媒量は0.03質量%であったので、分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用いて、明度L値を測定した結果、L値=40.1と目標の明度に未達であることが確認された。また、標準光源D65下で目視により色味を確認した結果、十分な濃さを有していないことが確認された。
【0072】
[実施例2]
実施例1と同じ方法でポリマー溶液を作成した。IVは、1.65であり、ポリマードープ中のポリマー濃度は、17質量%であった。
【0073】
乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を86質量%秤量し、0℃に冷却した。このDMAc中に高速撹拌しながら有機顔料Pigment Blue 15:1を14質量%となるように徐々に加えた後、さらに1時間高速撹拌し、DMAc中に顔料が均一に分散した顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.42μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=12.4mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が13.2mPa・sであった。
【0074】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で38~40で鮮やかな色味であるため、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対してPigment Blue 15:1を2.00質量%となるようにドープ配管を介して逐次混合撹拌した後、連続して孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量%)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して1色目の紡糸を実施した。
【0075】
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、顔料で着色された原着原綿を得た。
【0076】
得られた原綿の繊度は、1.67dtex,破断強度3.69cN/dtex、破断伸度36.3%であった。
得られた原綿の残留溶媒量は0.02質量%であったので、分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用いて、明度L値を測定した結果、L値=39.8と目標の明度を達成していることを確認した。また、標準光源D65下で目視により色味を確認した結果、濃く鮮やかな色であることが確認された。
【0077】
[比較例4]
実施例1と同じ方法でポリマー溶液を作成した。IVは、1.65であり、ポリマードープ中のポリマー濃度は、17質量%であった。
【0078】
また、実施例2と同じ方法でN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中にPigment Blue 15:1を14質量%となるように分散させた顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.42μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=12.4mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が13.2mPa・sであった。
【0079】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で38~40で鮮やかな色味であるが、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対してPigment Blue 15:1を1.90質量%となるようにドープ配管を介して逐次混合撹拌した後、連続して孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量%)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して1色目の紡糸を実施した。
【0080】
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、顔料で着色された原着原綿を得た。
【0081】
得られた原綿の繊度は、1.67dtex,破断強度3.67cN/dtex、破断伸度38.9%であった。
得られた原綿の残留溶媒量は0.02質量%であったので、分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用いて、明度L値を測定した結果、L値=40.7と目標の明度に未達であることが確認された。また、標準光源D65下で目視により色味を確認した結果、十分な濃さを有していないことが確認された。
【0082】
[実施例3]
実施例1と同じ方法でポリマー溶液を作成した。IVは、1.65であり、ポリマードープ中のポリマー濃度は、17質量%であった。
【0083】
また、実施例2と同じ方法でN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中にPigment Blue 15:1を14質量%となるように分散させた顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.42μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=12.4mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が13.2mPa・sであった。
【0084】
次に、比較例2と同じ方法でN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中にPigment Red 254を13質量%となるように分散させた顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.84μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=5820.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が24.6mPa・sであった。
【0085】
さらに、乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を83質量%秤量し、0℃に冷却した。このDMAc中に高速撹拌しながら有機顔料Pigment Yellow 138を17質量%となるように徐々に加えた後、さらに1時間高速撹拌し、DMAc中に顔料が均一に分散した顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.98μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=6230.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が38.4mPa・sであった。
【0086】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で30~32で鮮やかな色味であるため、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対してPigment Blue 15:1を0.56質量%、Pigment Red 254を1.98質量%、Pigment Yellow 138を7.46質量%となるように3つの顔料分散溶液をドープ配管を介して逐次混合撹拌した後、連続して孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量%)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して1色目の紡糸を実施した。
【0087】
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、顔料で着色された原着原綿を得た。
【0088】
得られた原綿の残留溶媒量は0.03質量%であったので、分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用いて、明度L値を測定した結果、L値=31.8と目標の明度を達成していることを確認した。また、標準光源D65下で目視により色味を確認した結果、濃く鮮やかな色であることが確認された。
また、該原綿の物性は、繊度は、2.21dtex,破断強度3.51cN/dtex、破断伸度37.2%と防護衣料に用いるのに十分な物性であった。
【0089】
[比較例5]
実施例1と同じ方法でポリマー溶液を作成した。IVは、1.65であり、ポリマードープ中のポリマー濃度は、17質量%であった。
【0090】
また、実施例2と同じ方法でN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中にPigment Blue 15:1を14質量%となるように分散させた顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.42μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=12.4mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が13.2mPa・sであった。
【0091】
次に、比較例2と同じ方法でN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中にPigment Red 254を13質量%となるように分散させた顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.84μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=5820.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が24.6mPa・sであった。
【0092】
さらに、比較例2と同じ方法でN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中にPigment Yellow 138を17質量%となるように分散させた顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.98μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=6230.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が38.4mPa・sであった。
【0093】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で30~32で鮮やかな色味であるため、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対してPigment Blue 15:1を0.62質量%、Pigment Red 254を2.18質量%、Pigment Yellow 138を8.20質量%となるように3つの顔料分散溶液をドープ配管を介して逐次混合撹拌した後、連続して孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量%)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して1色目の紡糸を実施した。
【0094】
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、顔料で着色された原着原綿を得た。
【0095】
得られた原綿の残留溶媒量は0.03質量%であったので、分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用いて、明度L値を測定した結果、L値=30.2と目標の明度を達成していることを確認した。また、標準光源D65下で目視により色味を確認した結果、非常に濃く鮮やかな色であることが確認された。
しかし、該原綿の物性は、繊度は、2.23dtex,破断強度2.21cN/dtex、破断伸度12.4%と防護衣料に用いるには不十分な物性となった。
【0096】
[比較例6]
実施例1と同じ方法で重合・中和を行い透明なポリマードープを得た。このドープを高速撹拌しながら水中に入れ凝固させたのち、濾過・水洗・乾燥しポリマーを単離した。
このポリマーを濃度17質量%となる比率で、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解し、ポリマー溶液を作成した。IVは、1.65であであった。
【0097】
また、比較例2と同じ方法で使用する溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用い、この溶媒中にPigment Blue 15:1を14質量%となるように分散させた顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.83μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=12.3mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が12.8mPa・sであった。
【0098】
次に、比較例2と同じ方法で使用する溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用い、この溶媒中にPigment Red 254を13質量%となるように分散させた顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.89μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=4200.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が22.0mPa・sであった。
【0099】
さらに、比較例2と同じ方法で使用する溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用い、この溶媒中にPigment Yellow 138を17質量%となるように分散させた顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.45μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=5200.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が25.0mPa・sであった。
【0100】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で30~32で鮮やかな色味であるため、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対してPigment Blue 15:1を0.62質量%、Pigment Red 254を2.18質量%、Pigment Yellow 138を8.20質量%となるように3つの顔料分散溶液をドープ配管を介して逐次混合撹拌した後、80℃に加温し連続して孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度80℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/CaCl2=60/40(質量%)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して1色目の紡糸を実施した。
【0101】
引き続き、温度80℃の水/NMP=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、2.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/NMP=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、顔料で着色された原着原綿を得た。
【0102】
得られた原綿を分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用いて、明度L値を測定した結果、L値=30.1と目標の明度を達成していることを確認した。また、標準光源D65下で目視により色味を確認した結果、非常に濃く鮮やかな色であることが確認された。
さらに、該原綿の物性は、繊度は、2.19dtex,破断強度5.73cN/dtex、破断伸度42.3%と凝固条件により繊維表面にスキン層が形成され顔料の含有量が高くても防護衣料に用いるのに十分な物性を得ることが出来た。
しかしながら、繊維表面に形成されたスキン層のため内部の残留溶剤の除去が困難となり、得られた原綿の残留溶媒量は1.98質量%と非常に高いものとなってしまった。
【0103】
[実施例4]
実施例1と同じ方法でポリマー溶液を作成した。IVは、1.65であり、ポリマードープ中のポリマー濃度は、17質量%であった。
【0104】
乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を88質量%秤量し、0℃に冷却した。このDMAc中に高速撹拌しながら有機顔料Pigment Blue 15:1を4.78質量%、Pigment Red 254を5.51質量%、Pigment Yellow 138を1.71質量%となるように3種類の顔料を徐々に加えた後、さらに1時間高速撹拌し、DMAc中に顔料が均一に分散した顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.78μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=4300.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が38.3mPa・sであった。
【0105】
乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を85.0質量%秤量し、0℃に冷却した。このDMAc中に高速撹拌しながら黒色無機顔料Pigment Black 7を15.0質量%となるように徐々に加えた後、さらに1時間高速撹拌し、DMAc中に顔料が均一に分散した顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=0.72μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=9.4mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が9.8mPa・sであった。
【0106】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で30~32で鮮やかな色味であるため、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対して有機顔料を合計2.46質量%、黒色無機顔料Pigment Black 7を0.50質量%となるように上記で準備した2つの顔料分散溶液をドープ配管を介して逐次混合撹拌した後、連続して孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量%)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して1色目の紡糸を実施した。
【0107】
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、顔料で着色された原着原綿を得た。
【0108】
得られた原綿の物性は、繊度は、1.42dtex,破断強度3.56cN/dtex、破断伸度36.2%と防護衣料に用いるのに十分な物性であった。
また、得られた原綿の残留溶媒量は0.01質量%であったので、分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用いて、明度L値を測定した結果、L値=30.4と目標の明度を達成していることを確認した。また、標準光源D65下で目視により色味を確認した結果、非常に濃く鮮やかな色であることが確認された。
【0109】
[実施例5]
実施例1と同じ方法でポリマー溶液を作成した。IVは、1.65であり、ポリマードープ中のポリマー濃度は、17質量%であった。
【0110】
乾燥窒素雰囲気下の高速撹拌が可能な容器に、水分率が100ppm以下のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を88質量%秤量し、0℃に冷却した。このDMAc中に高速撹拌しながら有機顔料Pigment Blue 15:1を4.24質量%、Pigment Red 254を6.88質量%、Pigment Yellow 138を0.88質量%となるように3種類の顔料を徐々に加えた後、さらに1時間高速撹拌し、DMAc中に顔料が均一に分散した顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=1.74μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=4500.0mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が40.2mPa・sであった。
【0111】
次に、比較例2と同じ方法でN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中にPigment Black 7を15質量%となるように分散させた顔料分散溶液を作成し、顔料タンクに保管した。ここで該顔料分散溶液の粒径を測定したところD90%=0.72μmであった。また該顔料分散溶液の剪断濃度を測定した結果、剪断が1(1/s)の時、剪断粘度η=9.4mPa・s、剪断が1000(1/s)の時剪断粘度が9.8mPa・sであった。
【0112】
得られる原綿の目標の濃さが明度L値で30~32で鮮やかな色味であるため、上記顔料分散溶液を、予めポリマーなどと混合することなく、上記ポリマードープにポリマー質量に対して有機顔料を合計1.50質量%、黒色無機顔料Pigment Black 7を1.0質量%となるように上記で準備した2つの顔料分散溶液をドープ配管を介して逐次混合撹拌した後、連続して孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度30℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/DMAc=45/55(質量%)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して1色目の紡糸を実施した。
【0113】
引き続き、温度40℃の水/DMAc=45/55の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
延伸後、20℃の水/DMAc=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
洗浄後の繊維について、表面温度300℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、次いで繊維を束ねてクリンパーを通し、捲縮を付与した後、カッターでカットして51mmの短繊維とすることにより、顔料で着色された原着原綿を得た。
【0114】
得られた原綿の物性は、繊度は、1.43dtex,破断強度3.52cN/dtex、破断伸度34.2%と防護衣料に用いるのに十分な物性であった。
また、得られた原綿の残留溶媒量は0.01質量%であったので、分光色彩計SD7000(日本電色工業製)を用いて、明度L値を測定した結果、L値=30.1と目標の明度を達成していることを確認した。しかし、標準光源D65下で目視により色味を確認した結果、非常に濃い色ではあるが鮮やかさがなく黒っぽくくすんだ色となり、目標の色味を達成することができなかった。
実施例1~5、比較例1~6により得られた原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性を表1に示す。
【0115】
本発明は、防護衣料等に用いられる原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維において鮮やかで濃く深みのある色に着色されながら防護衣料としての性能も有した原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維を提供するものである。