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特開2023-144251センシングシステムおよびセンシング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144251
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】センシングシステムおよびセンシング方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/86 20200101AFI20231003BHJP
   G01S 17/34 20200101ALI20231003BHJP
   G08G 1/015 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G01S17/86
G01S17/34
G08G1/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051149
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弓子
(72)【発明者】
【氏名】橋谷 享
(72)【発明者】
【氏名】菊池 孝平
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 建治
【テーマコード(参考)】
5H181
5J084
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB13
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5J084AA02
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA13
5J084AB01
5J084AB07
5J084AB17
5J084AD05
5J084AD08
5J084AD13
5J084BA02
5J084BA03
5J084BA14
5J084BA20
5J084BB31
5J084CA08
5J084CA34
5J084CA42
5J084CA53
5J084CA65
5J084CA67
5J084CA70
5J084EA05
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】移動物体の速度等に関する情報を効率的に取得する。
【解決手段】センシングシステムは、移動する対象物の移動範囲をセンシングして第1センサデータを出力する第1センサと、前記移動範囲における複数の箇所を照射する複数のビーム出射部を有し、かつ1つ以上のLiDARユニットを含む第2センサと、処理装置と、を備える。前記処理装置は、前記第1センサデータに基づいて前記対象物における特定の対象部の位置を決定し、前記1つ以上のLiDARユニットに、前記対象部を照射する1つ以上の光ビームを出射させ、前記対象部についての第2センサデータを出力させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する対象物の移動範囲をセンシングして第1センサデータを出力する第1センサと、
前記移動範囲における複数の箇所を照射する複数のビーム出射部を有し、かつ1つ以上のLiDARユニットを含む第2センサと、
処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、
前記第1センサデータに基づいて前記対象物における特定の対象部の位置を決定し、
前記1つ以上のLiDARユニットに、前記対象部を照射する1つ以上の光ビームを出射させ、前記対象部についての第2センサデータを出力させる、
センシングシステム。
【請求項2】
前記対象物の位置と、前記位置に対応するLiDARユニットおよび/または前記光ビームの出射方向との対応を示すデータを記憶する記憶装置をさらに備え、
前記処理装置は、前記対象物の位置と、前記記憶装置に記憶された前記データとに基づいて、前記1つ以上のLiDARユニットに、前記対象部を照射する1つ以上の光ビームを出射させる、
請求項1に記載のセンシングシステム。
【請求項3】
前記第2センサは、複数のLiDARユニットを含み、
前記処理装置は、前記対象部の位置に基づいて、前記複数のLiDARユニットの中から、前記対象部を照射する光ビームを出射可能な少なくとも1つのLiDARユニットを決定し、決定した前記少なくとも1つのLiDARユニットに、前記光ビームを出射させる、
請求項1または2に記載のセンシングシステム。
【請求項4】
前記複数のLiDARユニットは、一方向に配列され、同一の方向に前記光ビームを出射する、請求項3に記載のセンシングシステム。
【請求項5】
前記複数のLiDARユニットは、路面に平行または垂直な方向に沿って配列され、前記路面に向けて前記光ビームを出射する、請求項4に記載のセンシングシステム。
【請求項6】
前記1つ以上のLiDARユニットのうちの少なくとも1つは、2つ以上のビーム出射部を備え、異なる複数の方向に光ビームを出射することが可能である、請求項1または2に記載のセンシングシステム。
【請求項7】
前記1つ以上のLiDARユニットは、前記複数の方向に光ビームを出射することが可能な単一のLiDARユニットであり、
前記処理装置は、
前記対象部の位置に基づいて、前記LiDARユニットが出射すべき前記光ビームの方向を決定し、
前記LiDARユニットに、前記方向に向けて前記光ビームを出射させる、
請求項6に記載のセンシングシステム。
【請求項8】
前記1つ以上のLiDARユニットは、各々が複数の方向に光ビームを出射することが可能な複数のLiDARユニットであり、
前記処理装置は、
前記対象部の位置に基づいて、前記複数のLiDARユニットの中から、前記対象部を照射する光ビームを出射可能な少なくとも1つのLiDARユニットと、前記少なくとも1つのLiDARユニットが出射すべき前記光ビームの方向とを決定し、
前記少なくとも1つのLiDARユニットに、前記方向に向けて前記光ビームを出射させる、
請求項6に記載のセンシングシステム。
【請求項9】
前記処理装置は、
前記1つ以上のLiDARユニットに、前記複数の方向に光ビームを出射させ、
前記複数の光ビームの照射によって取得された前記第2センサデータから、前記対象部の位置に基づいて決定される特定の光ビームに対応するデータを抽出し、
抽出した前記データに基づいて、前記対象部の速度に関するデータを生成して出力する、
請求項6に記載のセンシングシステム。
【請求項10】
前記第1センサは、カメラを含み、
前記第1センサデータは、前記カメラによって生成される画像データを含み、
前記処理装置は、前記画像データに基づいて、前記対象部の位置を決定する、
請求項1から9のいずれかに記載のセンシングシステム。
【請求項11】
前記第1センサは、赤外線カーテンをさらに含み、
前記第1センサデータは、前記赤外線カーテンによって生成される前記対象物の形状データをさらに含み、
前記処理装置は、前記対象部の位置と、前記形状データとに基づいて、前記1つ以上のLiDARユニットに、前記対象部を照射する前記1つ以上の光ビームを出射させる、
請求項10に記載のセンシングシステム。
【請求項12】
前記第1センサは、超音波センサを含み、
前記第1センサデータは、前記超音波センサから出力された超音波センサデータを含み、
前記処理装置は、前記超音波センサデータに基づいて、前記対象部の位置を決定する、
請求項1から9のいずれかに記載のセンシングシステム。
【請求項13】
前記処理装置は、前記第2センサデータに基づいて、前記対象部の速度に関するデータを生成して出力する、請求項1から12のいずれかに記載のセンシングシステム。
【請求項14】
前記対象部は、前記対象物に含まれる可動部である、
請求項1から13のいずれかに記載のセンシングシステム。
【請求項15】
前記対象物は、車両であり、
前記対象部は、前記車両に含まれる車輪である、
請求項14に記載のセンシングシステム。
【請求項16】
前記移動範囲における前記複数の箇所は、前記車両が走行する車線を横切る方向に並んでいる、請求項15に記載のセンシングシステム。
【請求項17】
前記処理装置は、前記第2センサデータに基づいて、前記車両に含まれる複数の車輪のうち、稼働している車輪の数を示すデータを生成して出力する、請求項15または16に記載のセンシングシステム。
【請求項18】
前記1つ以上のLiDARユニットは、複数のLiDARユニットであり、
前記処理装置は、
前記対象部の位置に基づいて、前記複数のLiDARユニットの中から、前記対象部を照射する光ビームを出射可能な第1LiDARユニットと、前記対象物における前記対象部以外の部分を照射する光ビームを出射可能な第2LiDARユニットとを決定し、
前記第1LiDARユニットおよび前記第2LiDARユニットに、前記光ビームを出射させて、前記対象部に関する速度情報と、前記対象物の前記対象部以外の部分に関する速度情報とを含む前記第2センサデータを取得させる、
請求項1から17のいずれかに記載のセンシングシステム。
【請求項19】
前記1つ以上のLiDARユニットは、FMCW-LIDARセンサである、請求項1から18のいずれかに記載のセンシングシステム。
【請求項20】
移動する対象物の移動範囲をセンシングして第1センサデータを出力する第1センサと、前記移動範囲における複数の箇所を照射する複数のビーム出射部を有し、かつ1つ以上のLiDARユニットを含む第2センサと、を備えたセンシングシステムにおいて実行されるセンシング方法であって、
前記第1センサデータに基づいて前記対象物における特定の対象部の位置を決定することと、
前記1つ以上のLiDARユニットに、前記対象部を照射する1つ以上の光ビームを出射させ、前記対象部についての第2センサデータを出力させることと、
を含むセンシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センシングシステムおよびセンシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダまたはレーザを用いて物体までの距離または物体の速度を計測するデバイスが提案されている。例えば、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式による速度計測装置が開発されている。FMCW方式による速度計測装置は、一定の周期で周波数が変調された電磁波を送出し、送信波と反射波との周波数の差に基づいて距離と速度を計測する。電磁波が可視光または赤外光などの光である場合、FMCW方式の速度計測装置は、FMCW-LiDAR(Light Detection and Ranging)またはレーザレーダと呼ばれる。FMCW-LiDARは、一定の周期で周波数が変調された光を出力光と参照光とに分割し、出力光が物体で反射されて生じた反射光と参照光との干渉光を生成し、その干渉光を検出する。干渉光の周波数に基づいて、物体までの距離および物体の速度を計算することができる。
【0003】
特許文献1および2は、FMCW方式によるセンシング装置を用いて測距および速度の計測を行うことを開示している。特許文献3は、複数の光ビームを出射するFMCW方式のレーザレーダにおいて、複数の遅延線を利用して複数の出力信号を1つの検出器上で多重化する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-135446号公報
【特許文献2】特開2011-027457号公報
【特許文献3】特開2015-111160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、移動物体の速度等の情報を効率的に取得するためのセンシング技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るセンシングシステムは、移動する対象物の移動範囲をセンシングして第1センサデータを出力する第1センサと、前記移動範囲における複数の箇所を照射する複数のビーム出射部を有し、かつ1つ以上のLiDARユニットを含む第2センサデータを出力する第2センサと、処理装置と、を備える。前記処理装置は、前記第1センサデータに基づいて前記対象物における特定の対象部の位置を決定し、前記1つ以上のLiDARユニットに、前記対象部を照射する1つ以上の光ビームを出射させ、前記対象部についての第2センサデータを出力させる。
【0007】
本開示の包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能な記録ディスク等の記録媒体によって実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意の組み合わせによって実現されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、揮発性の記録媒体を含んでいてもよいし、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)等の不揮発性の記録媒体を含んでいてもよい。装置は、1つ以上の装置で構成されてもよい。装置が2つ以上の装置で構成される場合、当該2つ以上の装置は、1つの機器内に配置されてもよく、分離した2つ以上の機器内に分かれて配置されてもよい。本明細書および特許請求の範囲では、「装置」とは、1つの装置を意味し得るだけでなく、複数の装置からなるシステムも意味し得る。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、移動物体における特定の対象部の速度等に関する情報を効率的に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態によるセンシングシステムの構成例を示す図である。
図2図2は、処理装置による処理を示すフローチャートである。
図3図3は、FMCW-LiDARを利用した計測装置の構成例を模式的に示すブロック図である。
図4A図4Aは、車両が静止している場合における参照光および反射光の周波数の時間変化の例を模式的に示す図である。
図4B図4Bは、車両が計測装置に近づいている場合における参照光および反射光の周波数の時間変化の例を模式的に示す図である。
図5A図5Aは、車両の例を模式的に示す側面図である。
図5B図5Bは、車両の例を模式的に示す上面図である。
図5C図5Cは、車両の例を模式的に示す正面図である。
図5D図5Dは、車両の車輪の1つを模式的に示す図である。
図6図6は、計測装置による計測動作の例を示すフローチャートである。
図7図7は、計測される速度および距離の時間変化の一例を模式的に示す図である。
図8A図8Aは、大型トラックがETCの料金所を通過する様子を示す図である。
図8B図8Bは、大型トラックがETCの料金所を通過する様子を示す他の図である。
図9A図9Aは、車両が車線のほぼ中央を走行する例を示す図である。
図9B図9Bは、車両が車線の左端付近を走行する場合の例を示す図である。
図9C図9Cは、車両が車線の右端付近を走行する場合の例を示す図である。
図10図10は、実施形態1における速度計測システムの構成例を示すブロック図である。
図11図11は、実施形態1におけるカメラおよび複数のLiDARユニットの配置の一例を模式的に示す図である。
図12図12は、カメラによって取得されたカメラ画像における領域と、各LiDARユニットのレーザビームの照射方向との関係を模式的に示す図である。
図13図13は、記憶装置が記憶するデータの一例を示す図である。
図14図14は、実施形態1における速度計測システムの動作を示すフローチャートである。
図15図15は、図14におけるステップS1400の動作の詳細を示すフローチャートである。
図16図16は、実施形態1の変形例1における速度計測システムにおけるカメラおよび複数のLiDARユニットの配置の例を模式的に示す図である。
図17図17は、カメラによって取得された画像の領域と、各LiDARユニットのレーザビームの照射方向との関係を模式的に示す図である。
図18図18は、カメラおよび複数のLiDARユニットの配置の他の例を示す図である。
図19図19は、実施形態1の変形例2におけるカメラおよびLiDARユニットの配置の例を模式的に示す図である。
図20図20は、実施形態1の変形例2における各LiDARユニットの構成の一例を示すブロック図である。
図21図21は、カメラによって取得された画像の領域と、各LiDARユニットからのレーザビームの複数の照射方向との関係を模式的に示す図である。
図22図22は、実施形態1の変形例2における記憶装置が記憶するデータの一例を示す図である。
図23図23は、実施形態1の変形例2における動作を示すフローチャートである。
図24図24は、実施形態1の変形例2におけるカメラによって取得された画像と、各LiDARユニットのレーザビームの照射方向との関係を模式的に示す図である。
図25図25は、実施形態1の変形例2における記憶装置が記憶するデータの一例を示す図である。
図26図26は、実施形態1の変形例3における速度計測システムの動作を示すフローチャートである。
図27図27は、図26におけるステップS1410の動作の詳細を示すフローチャートである。
図28図28は、実施形態1の変形例4における速度計測システムの構成例を示すブロック図である。
図29図29は、実施形態1の変形例4における赤外線カーテン、カメラ、およびLiDARユニットの配置の一例を模式的に示す図である。
図30図30は、赤外線カーテンによる遮蔽物の側面形状の計測の一例を模式的に示す図である。
図31図31は、カメラによって取得された画像と、赤外線カーテンによって取得されたデータと、複数のLiDARユニットのレーザビームの照射方向との関係を示す図である。
図32図32は、実施形態1の変形例4における速度計測システムの動作を示すフローチャートである。
図33図33は、実施形態1の変形例5における速度計測システムの構成例を示すブロック図である。
図34図34は、実施形態1の変形例5における速度計測システムにおける複数のLiDARユニットおよび超音波センサの配置の一例を模式的に示す図である。
図35図35は、超音波センサの出力と複数のLiDARユニット160からのレーザビームの照射方向との関係を示す図である。
図36図36は、実施形態1の変形例6における速度計測システムの構成の一例を示すブロック図である。
図37図37は、カメラによって取得された画像の領域と、LiDARユニットからのレーザビームの複数の照射方向との関係を模式的に示す図である。
図38図38は、実施形態1の変形例6における記憶装置に記憶されるデータの一例を示す図である。
図39図39は、実施形態2におけるLiDARユニットの選択方法を説明するための図である。
図40図40は、実施形態2における速度計測システムの動作を示すフローチャートである。
図41図41は、実施形態2の変形例1におけるLiDARユニットの選択方法を説明するための図である。
図42図42は、実施形態2の変形例1における速度計測システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、回路、ユニット、装置、部材もしくは部の全部または一部、またはブロック図における機能ブロックの全部または一部は、例えば、半導体装置、半導体集積回路(IC)、またはLSI(large scale integration)を含む1つまたは複数の電子回路によって実行され得る。LSIまたはICは、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、1つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIまたはICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、もしくはULSI(ultra large scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはLSI内部の接合関係の再構成またはLSI内部の回路区画のセットアップができるRLD(reconfigurable logic device)も同じ目的で使うことができる。
【0011】
さらに、回路、ユニット、装置、部材または部の全部または一部の機能または動作は、ソフトウェア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウェアは1つまたは複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウェアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウェアで特定された機能が処理装置および周辺装置によって実行される。システムまたは装置は、ソフトウェアが記録されている1つまたは複数の非一時的記録媒体、処理装置、および必要とされるハードウェアデバイス、例えばインタフェースを備えていてもよい。
【0012】
本開示において、「光」とは、可視光(波長が約400nm~約700nm)だけでなく、紫外線(波長が約10nm~約400nm)および赤外線(波長が約700nm~約1mm)を含む電磁波を意味する。
【0013】
以下、本開示の例示的な実施形態を説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0014】
<センシングシステムの概要>
図1は、本開示の例示的な実施形態によるセンシングシステム300の構成例を示す図である。センシングシステム300は、移動する対象物を検出し、当該対象物における特定の対象部をLiDARセンサでセンシングすることにより、当該対象部に関する情報を取得するシステムである。
【0015】
対象物は、例えば車両などの移動する物体、ベルトコンベアなどの搬送機によって搬送される物品、人、または動物であり得る。対象部は、例えば車両における車輪、または搬送される物品の回転部などの、移動する物体における可動部であり得る。対象部は、移動する人または動物における腕または脚などの、体幹とは異なる運動を行う部位であってもよい。
【0016】
対象部に関する情報は、例えば、対象部までの距離、対象部の速度、または対象部の有無に関する情報を含み得る。センシングシステム300は、例えばFMCW-LiDARセンサを利用して、対象物までの距離、対象物の速度、および対象物の有無のうちの少なくとも1種類に関する情報を生成することができる。
【0017】
図1に示すセンシングシステム300は、第1センサ310と、第2センサ320と、処理装置330とを備える。処理装置330は、第1センサ310および第2センサ320に接続されている。第1センサ310は、対象物の検出に用いられる。第2センサ320は、対象物における特定の対象部に関する情報を取得するために用いられる。
【0018】
第1センサ310は、移動する対象物の移動範囲をセンシングし、第1センサデータを生成して出力する。第1センサ310は、例えば、イメージセンサを含むカメラ(すなわち撮像装置)、赤外線カーテン、または超音波センサなどの、1種類以上のセンサを含み得る。
【0019】
第2センサ320は、対象物の移動範囲における複数の箇所を照射する複数のビーム出射部を有し、かつ1つ以上のLiDARユニット322を含む。第2センサ320は、1つ以上のLiDARユニット322による光ビーム(例えばレーザビーム)の照射によって取得される第2センサデータを出力する。図1の例では、第2センサ320は、複数のLiDARユニット322を含む。複数のLiDARユニット322の各々は、1つまたは複数のビーム出射部を備える。ビーム出射部は、LiDARユニット322のうち、光ビームが外部空間に向けて出射される部位または部品である。各LiDARユニット322は、1つのビーム出射部を備えていてもよいし、2つ以上のビーム出射部を備えていてもよい。図1に示す構成に限定されず、第2センサ320は、複数の光ビームを異なる方向に出射することが可能な単一のLiDARユニット322を備えていてもよい。その場合、単一のLiDARユニット322が複数のビーム出射部を備える。あるいは、第2センサ320は、各々が複数の光ビームを異なる方向に出射することが可能な複数のLiDARユニット322を備えていてもよい。その場合、複数のLiDARユニット322の各々が、複数のビーム出射部を備える。
【0020】
各LiDARユニット322は、例えばFMCW-LiDARセンサであり得る。その場合、各LiDARユニット322は、レーザ光源と、干渉光学系と、光検出器とを備え得る。レーザ光源は、処理装置330から入力された制御信号に応答して、周波数が周期的に変動するレーザ光を出射する。干渉光学系は、レーザ光源から出射されたレーザ光を出力光と参照光とに分離し、物体からの反射光と参照光との干渉光を生成する。光検出器は、干渉光を受け、干渉光の強度に応じた電気信号を出力する。
【0021】
処理装置330は、第1センサデータに基づいて第2センサ320を制御し、第2センサデータに基づいて対象部の速度等に関する情報を生成することができる。以下、図2を参照しながら、処理装置330による処理の例を説明する。
【0022】
図2は、処理装置330による処理の例を示すフローチャートである。処理装置330は、例えばメモリ等の記憶媒体に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、図2に示す処理を実行することができる。
【0023】
ステップS110において、処理装置330は、第1センサ310から出力された第1センサデータに基づいて、対象物における特定の対象部の位置を特定する。第1センサ310が例えばカメラを含む場合、処理装置330は、カメラによって撮影された画像から対象物を認識し、当該対象物における特定の対象部の位置、すなわち光ビームの照射位置を決定してもよい。第1センサ310が赤外線カーテンまたは超音波センサなどの他の種類のセンサを含む場合、処理装置330は、当該センサから出力された信号に基づいて対象部の位置および/または対象部の高さ等の寸法を特定してもよい。
【0024】
続くステップS120において、処理装置330は、特定した対象部の位置に基づいて、1つ以上のLiDARユニット322に、当該対象物を照射する1つ以上の光ビームを出射させる。例えば、第2センサ320が複数のLiDARユニット322を含む場合、処理装置330は、当該対象物の位置に向けて光ビームを出射できる一部のLiDARユニット322にのみ、光ビームを出射させてもよい。あるいは、第2センサ320が、複数の異なる方向に光ビームを出射可能な単一のLiDARユニット322を備えている場合、処理装置330は、当該LiDARユニット322に、上記複数の方向のうち、対象物を照射可能な一部の方向にのみ、光ビームを出射させてもよい。光ビームの照射位置と、対応するLiDARユニット322の識別番号および/または光ビームの出射方向の識別番号との関係を示すデータが、処理装置330の内部または外部の記憶装置に予め格納され得る。処理装置330は、記憶装置に格納された当該関係を示すデータに基づき、対象部の位置に対応する1つ以上のLiDARユニット322、および/または、1つ以上の光ビームの出射方向を決定することができる。
【0025】
続くステップS130において、処理装置330は、ステップS120における光ビームの出射によって取得された第2センサデータに基づいて、対象部に関する情報を生成する。第2センサデータは、例えば、各LiDARユニット322における光検出器によって検出された干渉光の強度の経時変化を示す情報を含み得る。処理装置330は、第2センサデータが示す干渉光の周波数に基づいて、例えば対象部までの距離、対象物の速度、および対象物の有無の少なくとも1つに関する情報を生成することができる。処理装置140は、生成した対象物に関する情報を、例えば記憶装置に記憶させたり、他の装置に送信したりしてもよい。なお、対象部に関する情報を生成する処理は、処理装置330の代わりに、第2センサ320における処理装置(例えばCPU等のプロセッサ)によって実行されてもよい。
【0026】
FMCW-LiDARによって計測される速度は、対象部の速度のうち、LiDARユニット322と対象部とを結ぶ直線の方向の成分である。このため、本明細書では、対象部の現実の速度だけでなく、LiDARユニット322と対象部とを結ぶ直線の方向における対象物の速度成分も、「対象部の速度」と呼ぶことがある。
【0027】
上記の動作により、移動する対象物における特定の対象部の位置に向けて光ビームを出射し、当該対象部に関する情報を取得することができる。これにより、全てのLiDARユニット322を駆動したり、全ての方向に光ビームを出射することなく、必要最小限の光ビームの出射で、移動する対象物に関する情報を効率的に取得することができる。本開示の技術は、例えば高速道路におけるETC(Electronic Toll Collection System:電子料金収受システム)を通過する車両に含まれる車輪の数を検出するシステムにおいて有効に利用され得る。
【0028】
<センシングシステムの適用例>
次に、上記のセンシングシステムが利用される具体的な例として、ETCへの適用例を説明する。
【0029】
ETCは、高速道路などの有料道路において、料金所で車両を停止させることなく通行料金を支払うためのシステムである。通行料金には、例えば車両の大きさおよび車軸数(あるいは稼働している車輪の数)に応じたいくつかの車種区分がある。利用者は、自身の車種区分に応じた情報を車載器に設定して料金を支払う。
【0030】
通行料金は車軸数によって異なり得る。現在のETCでは、踏板状の車軸検知センサを利用して、当該センサに接触する車輪の数から回転する車軸の数がカウントされている。近年、リフトアクスルと呼ばれる機能を搭載した大型トラックが増えている。3つ以上の車軸を備える大型トラックは、リフトアクスル機能により、一部の車軸を上昇させてその車軸に取り付けられた車輪を浮かせることができる。それにより、積載重量が小さい場合に他の車輪にかかる圧力を増加させて大型トラックがスリップすることを抑制できる。リフトアクスル機能を使用する大型トラックには、走行中に回転しない車軸が存在する。このため、ETCでは、車両における複数の車軸のうち、回転する車軸の数を正確にカウントすることが求められる。
【0031】
発明者らは、FMCW方式のLiDAR技術を利用して、非接触で移動体における回転する車軸、すなわち稼働している車輪を特定する方法を考案した。以下に当該方法の一例を説明する。
【0032】
図3は、FMCW-LiDARを利用した計測装置の構成例を模式的に示すブロック図である。図3には、計測対象の移動体である車両10が示されている。図3に示す車両10は、2つの車軸を有する車体12、およびそれらの車軸に取り付けられた4つの車輪14を含む。車輪14は、金属製のホイール、および当該ホイールに装着されたゴム製のタイヤを含む。
【0033】
図3に示す計測装置100は、図1に示すLiDARユニット322に対応する装置である。計測装置100は、光源20と、干渉光学系30と、光検出器40と、ビーム整形器50と、処理回路60と、メモリ62とを備える。図3に示す白抜きの矢印は、車両10の走行方向を表す。図3に示す太い線の矢印は、光の流れを表す。図3に示す細い線の矢印は、信号の流れを表す。計測装置100は、例えば車両10が走行するレーンの脇、またはレーンの情報のゲートに設置され得る。
【0034】
光源20は、周波数を変化させることが可能なレーザ光20Lを出射する。周波数は、例えば三角波またはのこぎり波のように一定の時間周期で変調され得る。この周期を変調周期と呼ぶ。周波数の変調周期は、例えば1μ秒以上10m秒以下であり得る。周波数の変調振幅は、例えば100MHz以上1THz以下であり得る。レーザ光の波長は、例えば700nm以上2000nm以下の近赤外光の波長域に含まれ得る。太陽光における近赤外光の光量は可視光の光量よりも少ないので、レーザ光20Lとして近赤外光を使用することにより、太陽光のノイズとしての影響を低減することができる。あるいは、レーザ光20Lの波長は、400nm以上700nm以下の可視光の波長域に含まれていてもよいし、紫外光の波長域に含まれていてもよい。
【0035】
干渉光学系30は、第1ファイバスプリッタ32と、第2ファイバスプリッタ34と、光サーキュレータ36とを含む。第1ファイバスプリッタ32は、光源20から出射されたレーザ光20Lを参照光20Lと出力光20Lとに分離する。第1ファイバスプリッタ32は、参照光20Lを第2ファイバスプリッタ34に入力し、出力光20Lを光サーキュレータ36に入力する。光サーキュレータ36は、出力光20Lをビーム整形器50に入力する。光サーキュレータ36は、車両10の側部を出力光20Lで照射して生じた反射光20Lを第2ファイバスプリッタ34に入力する。第2ファイバスプリッタ34は、参照光20Lおよび反射光20Lを重畳して干渉させた干渉光20Lを光検出器40に入力する。
【0036】
光検出器40は、干渉光20Lを検出する。光検出器40は、1つまたは複数の光検出素子を含む。光検出素子は、検出した光の強度に応じた電気信号を出力する。
【0037】
ビーム整形器50は、出力光20Lの照射スポットを整形し、その出力光20Lを車両10に向けて出射する。車両10の側部は、ビーム整形器50から出力された出力光20Lで照射される。車両10の側部は、車体12の側部、および車輪14の側部を含む。出力光20Lの方向が固定されている場合でも、車両10の走行により、車両10の側面は、出力光20Lによって横切るように走査される。ビーム整形器50は、車両10の側部で生じた反射光20Lを干渉光学系30に入力する。ビーム整形器50は、干渉光学系30と車両10との間の出力光20Lおよび反射光20Lの光路上に位置する。
【0038】
ビーム整形器50は、例えば、出力光20Lの広がりを低減するコリメートレンズ52を含み得る。コリメートレンズ52は、例えば、出力光20Lの照射スポット径を、車両10の車輪14の直径よりも小さくなるように調整し得る。そのような照射スポット径を有する出力光20Lは、車両10のうち、車体12と車輪14とを別々に照射することができる。コリメートレンズ52は、出力光20Lの照射スポット径を、タイヤの断面高さよりも小さく調整してもよい。当該断面高さは、タイヤの外径からタイヤの内径を引いた値の半分に等しい。そのような照射スポット径を有する出力光20Lは、車輪14のうち、タイヤだけを出力光20Lで照射することができる。車輪14のホイールの一部は、デザインの観点からくり抜かれている場合がある。そのような場合でも、車輪14のうち、タイヤだけを出力光20Lで照射できれば有効な反射光20Lが得られ、車輪14の回転速度を正確に計測することができる。さらに、コリメートレンズ52は、出力光20Lの照射スポット径を、隣り合う2つの車輪14の間の隙間の最短距離よりも小さくなるように調整してもよい。そのような照射スポット径を有する出力光20Lは、複数の車輪14の回転速度を個別に計測することができる。マイクロ波またはミリ波と異なり、例えば赤外光であれば、出力光20Lの照射スポット径を上記のように小さくすることができる。
【0039】
以上のように、ビーム整形器50により、出力光20Lによる照射において高い空間分解能を実現できる。ビーム整形器50から出射された出力光20Lは、間隔が狭い2台の車両10、または間隔が狭い2つの車輪14を照射するのに有効である。ビーム整形器50は、必要に応じて設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0040】
計測装置100において、出力光20Lの干渉光学系30から車両10までの光路と、反射光20Lの車両10から干渉光学系30までの光路とは互いに重なる。このような同軸光学系を採用することにより、計測装置100の構成を単純化でき、安定した計測を実現できる。なお、上記2つの光路を互いに重ならないように設計してもよい。
【0041】
処理回路60は、光源20および光検出器40の動作を制御する。処理回路60は、FMCW-LiDAR技術を用いて、光検出器40から出力された信号を処理する。処理回路60は、信号処理により、非接触で、車両10における回転する車軸の数をカウントすることができる。
【0042】
処理回路60によって実行されるコンピュータプログラムは、ROMまたはRAM(Random Access Memory)などのメモリ62に格納されている。このように、計測装置100は、処理回路60およびメモリ62を含む処理装置を備えていてもよい。処理回路60およびメモリ62は、1つの回路基板に集積されていてもよいし、別々の回路基板に設けられていてもよい。処理回路60の機能が複数の回路に分散していてもよい。処理装置は、他の構成要素から離れた遠隔地に設置され、有線または無線の通信ネットワークを介して、光源20および光検出器40の動作を制御してもよい。
【0043】
次に、図4Aおよび図4Bを参照して、FMCW-LiDAR技術を簡単に説明する。FMCW-LiDAR技術により、耐振動性が高く、距離に関して広いダイナミックレンジおよび高い空間分解能を両立し、移動体の速度を計測することが可能な計測装置を実現できる。
【0044】
図4Aは、車両10が静止している場合の、参照光20Lおよび反射光20Lの周波数の時間変化を模式的に示す図である。実線は参照光を表し、破線は反射光を表す。図4Aに示す参照光20Lの周波数は、三角波の時間変化を繰り返す。すなわち、参照光20Lの周波数は、1周期の間に直線的に増加し、その後増加した分だけ直線的に減少する。反射光20Lの周波数は、参照光20Lの周波数と比較して、出力光20Lが計測装置100から出射され、車両10で反射されて反射光20Lとして戻ってくる時間の分だけ、時間軸に沿ってシフトする。その結果、参照光20Lと反射光20Lとが重畳されて干渉した干渉光20Lは、反射光20Lの周波数と参照光20Lの周波数との差分に相当する周波数を有する。図4Aに示す両矢印は、両者の周波数の差分を表す。光検出器40は、干渉光20Lの強度を示す信号を出力する。当該信号はビート信号と呼ばれる。ビート信号の周波数、すなわちビート周波数は、上記の周波数の差分に等しい。処理回路60は、ビート周波数から、計測装置100から車両10までの距離に関するデータを生成することができる。
【0045】
図4Bは、車両10が計測装置100に近づいている場合における、参照光20Lおよび反射光20Lの周波数の時間変化を模式的に示す図である。車両10が近づく場合、ドップラーシフトにより、反射光20Lの周波数は、車両10が静止している場合と比較して、周波数軸に沿って増加方向にシフトする。反射光20Lの周波数がシフトする量は、車両10の照射された部分における速度ベクトルを反射光20Lの方向に射影した成分に依存する。ビート周波数は、参照光20Lおよび反射光20Lの周波数が直線的に増加するアップチャープ期間と直線的に減少するダウンチャープ期間とで異なる。図4Bに示す例において、両者の周波数が直線的に減少するダウンチャープ期間におけるビート周波数は、両者の周波数が直線的に増加するアップチャープ期間におけるビート周波数よりも高い。処理回路60は、このビート周波数の差に基づいて、車両10の速度に関するデータを生成することができる。
【0046】
次に、図5Aから図5Dを参照して、走行中の車両10が出力光20Lでどのように照射されるかを説明する。以下の説明において、計測対象の車両10は大型トラックである。車両10は、5つの車軸を有する車体12、およびそれらの車軸に取り付けられた10個の車輪14を含む。図5Aから図5Cは、それぞれ、車両10の例を模式的に示す側面図、上面図、および正面図である。図5Dは、図5Aに示す車両10の車輪14の1つを拡大した図である。図5Dに示す車輪14うち、内側の円はホイール14aを表し、外側のリングはタイヤ14bを表す。
【0047】
図5Aから図5Dには、説明をわかりやすくするために、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸が示されている。車両10の進行方向の反対の方向を+X方向とし、路面に垂直でかつ路面から離れる方向を+Y方向とし、進行方向に向かって左の方向を+Z方向とする。なお、この座標系は説明の便宜のために導入されており、この座標系によって車両10および計測装置100の位置および姿勢が限定されるものではない。
【0048】
図5Aおよび図5Bに示す白抜きの矢印は、車両10の走行方向を表す。図5Aに示す太線の矢印は、走行する車両10が出力光20Lによって走査される位置および方向を表す。図5Bおよび図5Cに示す2本の太い線の矢印のうち、計測装置100から車両10に向かう矢印は出力光20Lを表し、車両10から計測装置100に向かう矢印は反射光20Lを表す。図5Bに示す角度φは、XZ平面に射影された出力光20Lと、車両10の走行方向に垂直なYZ平面とがなす角度を表す。図5Cに示す角度θは、YZ平面に射影された出力光20Lと、路面に平行なXZ平面とがなす角度を表す。図5Dに示す白抜きの矢印は、位置Pにおける車輪14の回転速度の方向を表す。
【0049】
角度φおよびθは、正の値だけでなく負の値も有し得る。出力光20Lが斜め前方から車両10の側部に向けて出射される場合、角度φは正である。反対に、出力光20Lが斜め後方から車両10の側部に向けて出射される場合、角度φは負である。また、出力光20Lが斜め上方から車両10の側部に向けて出射される場合、角度θは正である。反対に、出力光20Lが斜め下方から車両10の側部に向けて出射される場合、角度θは負である。
【0050】
車両10の走行速度の絶対値をV(m/h)とすると、車両10の走行速度ベクトルは(-V、0、0)と表される。図5Dに示す例において、車輪14の最大半径をR(m)、車輪14の中心から位置Pまでの直線距離をr(m)、当該直線がX軸から回転した角度をAとする。車輪14の中心を原点とするXY座標における位置PのX成分およびY成分は、それぞれx=r×cosAおよびy=r×sinAである。車輪14の最外周部の回転速度の絶対値が走行速度の絶対値Vに等しいことから、位置Pにおける車輪14の回転速度の絶対値はV×r/Rである。位置Pの回転速度ベクトルは、(-V×r/R×sinA,V×r/R×cosA,0)=(-(y/R)V,(x/R)V,0)で表される。
【0051】
車体12または回転しない車輪14における速度ベクトルVは、走行速度ベクトルに等しく、以下の式(1)によって表される。
【数1】
【0052】
回転する車輪14における速度ベクトルVは、走行速度ベクトルおよび回転速度ベクトルの合成速度ベクトルであり、以下の式(2)によって表される。
【数2】
【0053】
一方、反射光20Lの方向に平行な単位ベクトルNは、以下の式(3)によって表される。
【数3】
【0054】
式(3)における右辺のX成分は、図5Bに示す例において単位ベクトルNをX軸に射影することによって導出できる。式(3)における右辺のY成分は、図5Cに示す例において単位ベクトルNをY軸に射影することによって導出できる。式(3)における右辺のZ成分は、単位ベクトルNの大きさが1になること、および正の成分であることから導出できる。
【0055】
計測装置100によって計測される速度は、車両10の照射された部分における速度ベクトルを反射光20Lの方向に射影した成分である。すなわち、計測速度は、車両10の当該部分における速度ベクトルと単位ベクトルNとの内積によって得られる。
【0056】
出力光20Lを車体12または回転しない車輪14に向けて出射する場合、計測速度vは、速度ベクトルVと単位ベクトルNとの内積によって得られ、以下の式(4)によって表される。
【数4】
【0057】
角度φは既知であるので、角度φ≠0°である場合、計測速度vをsinφで除算することにより、車両10の走行速度Vを算出することができる。
【0058】
一方、出力光20Lを回転する車輪14に向けて出射する場合、計測速度vは、速度ベクトルVと単位ベクトルNとの内積によって得られ、以下の式(5)によって表される。
【数5】
【0059】
計測速度vは、計測速度vと比較して、回転速度に起因する右辺の第1項を有する。第1項は、位置PのX成分およびY成分に依存する。
【0060】
出力光20Lの出射角度がθ=0°およびφ=0°である場合、計測速度vおよびvはゼロになる。速度ベクトルVまたはVと単位ベクトルNとが直交するからである。出力光20Lの出射角度θおよびφのうち、少なくとも一方がゼロでなければ、計測速度vと計測速度vとは互いに異なり得る。出力光20Lの出射角度θおよびφが共にゼロでなければ、計測速度vと計測速度vとの差の絶対値は、出射角度θおよびφの一方のみがゼロでない場合と比較してさらに大きくなり得る。なお、出力光20Lの出射角度θおよびφのうち、少なくとも一方がゼロでない場合でも、計測速度vと計測速度vとは、位置PのX成分およびY成分によっては一致することがある。角度φ≠0°は、出力光20LがYZ平面に交差する状態に相当する。角度θ≠0°は、出力光20LがXZ平面に交差する状態に相当する。
【0061】
θ=0°の場合、出力光20Lが車輪14の中心を通過する高さ(すなわちy=0)を走査すると、式(4)および式(5)に示すように、計測速度vは計測速度vと同じになる。このため、車体12または回転しない車輪14における計測速度と、回転する車輪14における計測速度とを区別することができなくなる。θ=0°の場合、出力光20Lがy=0の高さからある程度離れた高さを走査すれば、これらの計測速度を明確に区別することができる。計測速度vは、計測速度vとはV(y/R)sinφの分だけ異なるからである。
【0062】
これに対して、θ≠0°の場合、出力光20Lがy=0の高さを走査しても、計測速度vは、計測速度vとはV(x/R)sinθの分だけ異なる。θ≠0°の場合、V(x/R)sinθの成分により、出力光20Lがy=0付近の高さを走査しても、車体12または回転しない車輪14における計測速度と、回転する車輪14における計測速度とを明確に区別することができる。以上のことから、θ≠0°の場合、出力光20Lが走査する高さの自由度を増すことができる。
【0063】
本実施形態において、角度φの絶対値は、例えば0°以上85°以下であり得る。より望ましい角度φの絶対値は、5°以上30°以下であり得る。本実施形態において、角度θの絶対値は、例えば0°以上85°以下であり得る。ただし、角度θおよび角度φが共に0°である場合は除く。角度θの絶対値が大きい場合、出力光20Lが車両10を走査する高さは、ETCのレーンにおける車両10の走行位置に応じて大きく変化する。角度θの絶対値が小さい場合、出力光20Lが車両10を走査する高さを容易に調整することができる。そのような角度θの絶対値は、例えば0°以上15°以下であり得る。
【0064】
次に、図6を参照して、処理回路60が実行する計測動作の例を説明する。図6は、処理回路60が実行する計測動作の例を示すフローチャートである。処理回路60は、以下のステップS101からS104の動作を実行する。
【0065】
<ステップS101>
処理回路60は、レーザ光20Lの周波数を変化させている状態で、レーザ光20Lを光源20に出射させる。周波数は一定の時間周期で変化させてもよい。周波数変化の時間周期は変動してもよい。
【0066】
<ステップS102>
処理回路60は、干渉光20Lを光検出器40に検出させる。光検出器40は、干渉光20Lの強度に対応する信号を出力する。
【0067】
<ステップS103>
処理回路60は、光検出器40から出力された信号に基づいて、計測装置100から車両10までの距離に関するデータと、車両10の車体12および車輪14の計測速度に関するデータとを生成する。車体12または回転しない車輪14の計測速度に関するデータは、車両10の走行速度に関するデータを含む。回転する車輪14の計測速度に関するデータは、車輪14の回転速度に関するデータを含む。
【0068】
<ステップS104>
処理回路60は、ステップS103において生成したデータに基づいて、車両10の側部における回転する車輪14の数をカウントし、カウントした数を示すデータを出力する。車両10の側部における回転する車輪14の数は、車両10における回転する車軸の数に等しい。すなわち、車両10の側部における回転する車輪14の数をカウントすることは、車両10における回転する車軸の数をカウントことと同じである。出力されたデータは例えば表示装置に入力され、当該表示装置は、車両10の側部における回転する車輪14の数を表示する。
【0069】
以上のように、本実施形態による計測装置100を用いることにより、非接触で、車両10における回転する車軸の数をカウントすることができる。
【0070】
次に、図7を参照して、計測速度および計測距離についての時間変化の例を説明する。図7は、計測速度および計測距離の時間変化の一例を模式的に示す図である。図7に示す一点鎖線は、車両10の前端部および後端部を表す。図7に示す破線は、車輪14のうち、出力光20Lによって走査される部分の両端を表す。図7に示す車両10において、5つの車軸のうち、前方から4番目の車軸はリフトアクスル機能によって上昇している。このため、4番目の車軸に取り付けられた車輪14は浮いており、走行中に回転しない。
【0071】
図7に示す例において、出力光20Lの出射角度はθ=30°およびφ=0°であり、出力光20Lは車輪14の中心付近を通過する。車両10の走行速度はV=30km/hである。出力光20Lは、路面に対して斜めに交差し、かつ、車両10の走行方向に対して垂直に交差する。
【0072】
図7に示す計測速度は、車体12および前方から4番目の回転しない車輪14においてゼロであり、4番目以外の車輪14において負から正に直線的に増加する。この計測速度についての時間変化は、式(4)および式(5)によって説明することができる。式(4)によれば、車両10のうち、車体12および回転しない車輪14における計測速度はゼロである。式(5)によれば、回転する車輪14における計測速度はV(x/R)sinθである。図5に示す例において、x/Rは時間の経過に伴って-1から1に直線的に増加する。車輪14のうち、前方部の回転速度は負の値として計測され、後方部の回転速度は正の値として計測される。車輪14の回転速度は最小速度-15km/hから最大速度15km/hに変化する。回転する車輪14における計測速度と、車体12または回転しない車輪14における計測速度との差異は明確である。したがって、これらの計測速度の差に基づいて、回転する車輪の数を正確にカウントすることができる。
【0073】
図7に示す計測距離は、車両10が出力光20Lで照射される場合、計測装置100から車両10までの距離を表す。車両10が出力光20Lで照射されない場合、計測距離は、計測装置100から遠方に位置する物体までの距離を表す。実際には車体12と車輪14とで計測距離は異なるが、図7では、簡単のために、車体12と車輪14の計測距離を一定としている。
【0074】
図7に示すように、車両10が出力光20Lで照射される場合とされない場合とで、計測距離には明確な差異がある。したがって、図7に示す計測距離に基づいて、車両10の数をカウントすることができる。複数の車両10が狭い車間で走行する場合、計測速度だけでは、回転する車輪14が一台の車両10に対応するのか、2台の車両10に対応するのかを区別できない可能性がある。このような場合でも、計測速度および計測距離の両方を考慮することで、一台の車両10における回転する車軸の数を正確にカウントすることができる。図6に示す計測動作のステップS104において、処理回路60は、計測装置100から車両10までの距離に関するデータと、回転する車輪14の回転速度に関するデータとに基づいて、一台の車両10における回転する車軸の数をカウントすることができる。
【0075】
上記の例ではφ=0°であるが、φ≠0°であってもよい。すなわち、出力光20Lは、路面に対して斜めに交差するだけでなく、車両10の走行方向に対して斜めに交差してもよい。そのような構成によれば、上記の式(4)、(5)からわかるように、計測速度vとvとの差がより大きくなるため、回転する車軸の数をカウントし易くなる。
【0076】
上記のように、車輪の側面にレーザ光を照射する構成により、車輪の速度を計測することができる。車輪の側面に限らず、車輪の路面に接する面(以下、接地面と呼ぶ)にレーザ光を照射して速度を計測することも可能である。しかし、車輪の接地面は、側面に比べて面積が小さい上、車両の前方または後方からレーザ光を照射可能な車輪を除けば、車両と路面との間の僅かな隙間からレーザ光を照射することを要する。例えば車軸が3つ以上あるトラックにおいて、一番前でも一番後ろでもない車軸の車輪の接地面に正確にレーザを照射することは難しい。車輪の側面にレーザ光を照射する構成によれば、正確にレーザ光を照射することが容易になるため、速度計測の精度を向上させることができる。
【0077】
さらに、上記のように、車輪の側面に対して垂直ではなく、斜めにレーザ光を照射することにより、車体の計測速度と、回転する車輪の計測速度との差に基づいて、回転する車輪を検出またはカウントすることができる。特に、路面に平行なXZ平面に対して斜めに照射するだけでなく、移動体の走行方向に垂直なYZ平面に対しても斜めに照射することにより、車輪の検出またはカウントを容易にすることができる。
【0078】
次に、図8Aおよび図8Bを参照しながら、ETCにおける計測装置100の設置の例を説明する。図8Aおよび図8Bは、車両10(この例では大型トラック)がETCの料金所を通過する様子を示している。
【0079】
図8Aに示す例では、車線と車線との間にアイランドと呼ばれる島状の領域がある。計測装置100は、アイランド上に設置されている。この例における計測装置100は、車両10の前方の、車輪の半径を超える高さの位置から、車輪の側面に向けてレーザ光を出射する。計測装置100は、車両10の後方から車輪の側面に向けてレーザ光を出射してもよい。この例において、図5Bに示す角度φは、例えば-80°以上+80°以下であり得る。また、図5Cに示す角度θは、例えば-80°以上+80°以下であり得る。
【0080】
図8Bに示す例では、アイランドがなく、車線をまたぐようにゲートが設けられている。計測装置100は、車線上で、車両10の高さを超える位置にあるゲートに設置されている。計測装置100は、ゲートにおける支柱近くに設置され得る。あるいは、計測装置100は、隣接する車線をまたぐ他のゲートに設けられていてもよい。計測装置100は、車両10の斜め上方から、車線中の車両10の車輪の側面に向けてレーザビームを出射する。計測装置100は、車両10の前方かつ上方から車輪の側面に向けてレーザビームを出射してもよいし、車両10の後方かつ上方から車輪の側面に向けてレーザビームを出射してもよい。この例において、図5Bに示す角度φは、例えば0°以上80°以下であり得る。また、図5Cに示す角度θは、例えば30°以上90°以下であり得る。なお、計測装置100を車両10の高さを超える位置に設置する構成は、図8Bに示すようなゲートを利用する構成に限られない。例えば、街灯などのポールから車線の上方に張り出した部分に計測装置100を設けてもよい。
【0081】
図9A図9B、および図9Cは、車線上で車両10がとり得る位置の例を示す図である。図9Aは、車両10が車線のほぼ中央を走行する場合の例を示している。図9Bは、車両10が車線の左端付近を走行する場合の例を示している。図9Cは、車両10が車線の右端付近を走行する場合の例を示している。車線の幅は、車両10の幅に対して余裕をもって設計されるため、車輪の側面は車線内の異なる位置を通過し得る。図中の矢印は、速度計測に用いられるレーザビームの出射方向の例を示している。図9A図9B、および図9Cに示すレーザビームは、いずれも同じ角度で車輪の側面に照射されているが、光源の位置はそれぞれ異なる。ETCにおいては、車両が車線中のどこを走行しても車輪の側面にレーザビームを照射することができるように光源を配置することが要求される。
【0082】
そこで、以下に説明する本開示の実施形態では、車両が車線中のどこを走行しても車輪の側面にレーザビームを照射することが可能なセンシングシステムを提案する。以下の実施形態においては、主に車両を対象物、車両における車輪を計測の対象部とし、センシングシステムが、車輪の速度を計測する速度計測システムであるものとして説明する。
【0083】
<実施形態1>
実施形態1では、レーザビームの出射方向が一定の複数台のLiDARユニットを備える速度計測システムの例を示す。速度計測システムは、通過する車両における車輪の通過位置にレーザビームを照射するLiDARユニットを選択して速度を計測する。LiDARユニットは、計測対象の車輪の側面が通過し得る位置の全てを網羅するように配置される。車輪の側面が通過する位置は、速度計測の対象地点とその周辺の車線全体を撮影し得る1台以上のカメラによって取得された画像に基づいて推定される。
【0084】
図10は、実施形態1における速度計測システムの構成例を示すブロック図である。図10に示す速度計測システム300Aは、カメラ110と、計測装置120と、記憶装置130と、処理装置140と、出力装置150とを備える。カメラ110は、図1に示す第1センサ310に相当する。計測装置120は、図1に示す第2センサ320に相当する。
【0085】
図10には1台のカメラ110が示されているが、2台以上のカメラ110が設けられていてもよい。カメラ110は、速度計測の対象地点とその周辺の車線全体を撮影する。カメラ110は、イメージセンサを含み、撮影によって画像データを生成する。以下の説明において、カメラ110が生成する画像データを、単に「画像」と呼ぶことがある。
【0086】
計測装置120は、複数のLiDARユニット160を含む。LiDARユニット160の個数をnとすると、nは2以上の整数である。図10の例ではn≧4であるが、n≦3であってもよい。各LiDARユニット160は、FMCW-LiDARセンサであり、周波数変調されたレーザビームを出射して速度計測に必要なデータを取得する。各LiDARユニット160は、一定の方向にレーザビームを出射し、レーザビームが照射された対象物の速度に関するデータを取得する。各LiDARユニット160は、例えば図3に示す計測装置100と同様の構成を有していてもよい。なお、図3に示す処理回路60およびメモリ62に相当する構成要素が、LiDARユニット160の外部に設けられていてもよい。処理装置140が処理回路60と同様の機能を有していてもよい。
【0087】
記憶装置130は、例えば半導体記憶装置、磁気記憶装置、または光学記憶装置などの、任意の記憶媒体を備える装置である。記憶装置130は、カメラ110で取得される画像中の特定の領域と複数のLiDARユニット160のそれぞれとを対応付けるデータを記憶する。
【0088】
処理装置140は、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のメモリとを備える装置である。処理装置140は、カメラ110で取得された画像に基づいて、通過する車両の側面を含む画像領域を検出する。処理装置140はまた、記憶装置130に記憶された画像中の領域とLiDARユニット160との対応関係に従って、複数のLiDARユニット160の中から、速度計測に用いるべき1つのLiDARユニット160を選択する。
【0089】
出力装置150は、例えばディスプレイを含む装置であり得る。出力装置150は、計測装置120によって取得された対象物の速度情報を出力する。出力は、例えば、一定時間ごとの速度の値であり得る。
【0090】
図11は、実施形態1における速度計測システム300Aのカメラ110および複数のLiDARユニット160の配置の一例を模式的に示す図である。図11の例では、カメラ110と複数のLiDARユニット160とが、それぞれ異なるゲート上に設置されている。
【0091】
カメラ110は、通過する車両10をおおむね真上から撮影する。撮影される領域は、LiDARユニット160が速度を計測する位置(すなわち車輪が通過する予定の位置)のすぐ手前(すなわち車両10の進行方向に向かって後ろ側)である。カメラ110は、LiDARユニット160が車輪の速度計測を行う直前に、通過する車両10を撮影する。カメラ110は、一定時間ごと、例えば30msごとに1枚の周期で撮影するように構成され得る。あるいは、カメラ110は、別途設けられた他のセンサによって検出された車両10の通過タイミングで撮影するように構成されていてもよい。
【0092】
図11の例では、複数のLiDARユニット160は、カメラ110が設置されたゲートよりも車両10の進行方向において奥にあるゲートに設置されている。各LiDARユニット160は、通過する車両10の車輪の左側面に向けて左斜め上からレーザビームを照射することができる。この例における複数のLiDARユニット160は、路面とほぼ平行に設置されたゲートに等間隔に配置されている。全てのLiDARユニット160のレーザビームの照射角度は同一である。
【0093】
図12は、カメラ110によって取得されたカメラ画像における領域と、各LiDARユニット160のレーザビームの照射方向と、各LiDARユニット160のレーザビームが車輪の側面を照射することで速度を計測できる範囲との関係を模式的に示す図である。図12の上の図は、カメラ110によって取得される画像の一例を示している。カメラ110は、速度計測が行われる位置に進入する直前の車両10をおおむね真上から撮影することにより、図12の上の図に示すような画像を取得する。図12の例では、進行方向に向かって車線の左よりを車両が走行している状態が撮影されている。図12の下の図は、車両10の正面側から見た各LiDARユニット160の光源の位置と、各LiDARユニット160のレーザビームの照射方向と、車両10および車輪の側面の位置との関係を模式的に示す図である。ここで、図12に示す互いに直交するx軸、y軸、およびz軸を有するxyz座標系を導入する。x軸は、車線を横切る方向に延びる軸であり、車両10の進行方向に向かって左方向を+x方向とする。y軸は、路面に垂直な方向に延びる軸であり、鉛直上方向を+y方向とする。z軸は、車線に平行に延びる軸であり、車両10の進行方向を+z方向とする。
【0094】
図12には、車線の範囲をLiDARユニット160の個数nで等分したn個の領域が示されている。x=xおよびx=xn+1の範囲が車線の範囲である。図12の下の図において、星印は、LiDARユニット160のレーザ光源の位置を示している。星印から延びる直線は、レーザビームの照射方向を示している。灰色の領域は、車両10の位置を示している。本実施形態では、レーザビームの照射方向は、全てのLiDARユニット160において同じであり、それらのレーザビームの照射方向は互いに平行である。
【0095】
図12の下の図を参照しながら、LiDARユニット160の配置をより詳細に説明する。各LiDARユニット160のレーザビームの照射方向は、yz平面およびxz平面に対して傾斜している。各LiDARユニット160は、車両10の進行方向に向かって左側(図12における右側)の上部から、車線内の路面に向かってレーザビームを出射する。車輪が車線内のどの場所を通ってもいずれかのLiDARユニット160で速度計測ができるように複数のLiDARユニット160が配置されている。具体的には、車輪の位置に関わらず、いずれかのLiDARユニット160からのレーザビームが、路面平面(すなわちxz平面)におおむね垂直な車輪の側面のいずれかの高さの部位を照射するように、n個のLiDARユニット160がx方向に等間隔に配置されている。LiDARユニット160の間隔は、想定される車輪の最小の高さに基づいて決定される。想定される車輪の最小の高さは、予め固定値wとして設定されている。レーザビームの照射方向をxy平面に射影した直線と路面平面とのなす角をθとすると、車線の幅方向における以下の幅rの範囲が、1つのLiDARユニット160によって計測が可能な範囲である。
【数6】
【0096】
上記の幅rよりも小さい値で車線の幅を分割し、領域の境界のx座標の値を、x,x,・・・,xn+1とする。n個のLiDARユニット160は、rよりも小さい間隔で路面に平行に車線幅の方向に並べて設置される。例えば、図11に示すように各LiDARユニット160が設置され得る。このような配置により、高さがw以上の車輪は、車両の進行方向が車線の方向と大きく異ならない限り、車線内のいずれの位置にあっても、いずれかのLiDARユニット160のレーザビームの照射範囲内に含まれ、速度計測が可能となる。
【0097】
固定値wは、例えば、軽車両のタイヤ径(約50cmなど)よりも小さい値に設定され得る。通過する車両が使用する最小のタイヤの上端までの高さを固定値wとして設定することにより、少なくとも1つのLiDARユニット160からのレーザビームを車輪の側面に入射させることができる。
【0098】
本実施形態における処理装置140は、カメラ110によって取得された画像に基づいて、車線の幅をLiDARユニット160の間隔で等分したxからxn+1の位置を決定する。これにより、カメラ110によって取得された画像上の位置とその位置にレーザビームを照射し得るLiDARユニット160とを対応付けることができる。
【0099】
図13は、記憶装置130が記憶するデータの一例を示している。記憶装置130は、カメラ110によって取得される画像におけるx軸上の範囲とLiDARユニット160とを対応づけるデータを記憶する。図13の例では、図12に例示されているx軸上のn個の区間と、各区間で速度計測が可能なLiDARユニット160の番号との対応を示すデータが記憶装置130に格納されている。
【0100】
図12に示す例では、カメラ110によって取得された画像において、xからxn+1の区間に車両10の左側面が位置している。この場合、処理装置140は、車輪の側面が車両10の側面の位置とおおむね同じ位置にあるものとして、xからxn+1の区間に車輪の側面が位置すると判断する。処理装置140は、記憶装置130に格納されたデータを参照して、xからxn+1の範囲の車輪の速度計測が可能なn番目のLiDARユニット160を選択する。処理装置140は、選択したLiDARユニット160に、レーザビームを出射させる。
【0101】
図14は、実施形態1における速度計測システム300Aの動作の概要を示すフローチャートである。以下、図14に従って速度計測システム300Aの動作を説明する。
【0102】
まず、図示されていない入力手段によって開始信号が入力されると、速度計測システム300Aが動作を開始する。速度計測システム300Aは、以下のステップS1100からS1500の動作を実行する。
【0103】
(ステップS1100)
処理装置140は、入力手段による終了信号の入力の有無を判断する。ステップS1100において終了信号の入力がある場合、速度計測システム300Aは動作を終了する。ステップS1100において終了信号の入力がない場合、ステップS1200に進む。入力手段は、例えば速度計測システム300Aを遠隔で制御するコンピュータ、またはシステム管理者またはユーザが使用する入力デバイスであり得る。
【0104】
(ステップS1200)
カメラ110は車線の状態を撮影する。この例では、カメラ110は定期的に撮影を行うものとする。なお、車両の近接を検知するセンサが設けられている場合、当該センサによる検知信号に応答してカメラ110が撮影を行ってもよい。処理装置140がセンサからの検知信号に応答して、カメラ110に撮影を開始させてもよい。カメラ110は、例えば動画像の撮影を行う。
【0105】
(ステップS1300)
処理装置140は、カメラ110が撮影した画像を取得して、対象物、すなわち車両10が撮影されているか否かを判断する。画像に対象物が含まれない場合、ステップS1200に戻る。画像に対象物が含まれる場合、ステップS1400に進む。
【0106】
(ステップS1400)
処理装置140は、ステップS1200で取得した画像に基づいて、いずれかのLiDARユニット160からのレーザビームによって照射され得る対象物の側面の位置を特定する。この処理の詳細は後述する。処理装置140は、特定した対象物の側面の位置と、記憶装置130に格納されたデータとに基づいて、速度計測に使用する1つのLiDARユニット160を選択する。
【0107】
(ステップS1500)
処理装置140は、ステップS1400で選択したLiDARユニット160に、通過する車両の車輪の速度の計測を指示する。指示を受けたLiDARユニット160は、レーザビームを出射し、車輪の速度を計測する。速度計測の方法は、図6および図7を参照して説明したとおりである。図6に示す例では、対象物の距離および速度に関するデータと、回転する車軸の数を示すデータとが生成されるが、これらのうちの一部のデータのみが生成されてもよい。また、LiDARユニット160における処理装置が上記のデータを生成する代わりに、処理装置140が上記のデータを生成してもよい。LiDARユニット160による計測は、例えば数秒または数十秒などの所定の時間にわたって継続され、所定時間経過後、停止され得る。
【0108】
ステップS1100からステップS1500を繰り返すことで、通過する車両の位置に合わせてLiDARを選択して、効率よく車両の車輪の速度を計測することができる。
【0109】
次に、図15を参照して、ステップS1400の動作の具体例を説明する。
【0110】
図15は、処理装置140によるステップS1400の動作の詳細を示すフローチャートである。この例では、ステップS1400は、以下のステップS1401からS1404の動作を含む。
【0111】
(ステップS1401)
処理装置140は、ステップS1200で取得した画像に対してエッジ抽出処理を行う。エッジ抽出は、公知の画像処理で実現できる。例えば、ソーベルフィルタまたはラプラシアンフィルタなどの空間フィルタを用いた画像処理によって画像からエッジを抽出することができる。
【0112】
(ステップS1402)
処理装置140は、ステップS1401で抽出されたエッジから、計測対象の面(以下、「計測面」と呼ぶことがある)を抽出する。まず、処理装置140は、抽出されたエッジから閉空間を形成するエッジを特定する。さらに、処理装置140は、形成された閉空間を形成するエッジのうち、x軸方向においてLiDARユニット160が設置されている側(図12の例では+x側)にあるエッジを抽出する。処理装置140は、抽出したエッジのうち、車両進行方向と平行なエッジの成分を抽出する。このようにして抽出されたエッジの成分が計測面として処理される。
【0113】
(ステップS1403)
処理装置140は、ステップS1402で抽出されたエッジの特定の部分(すなわち計測面)を、対象物すなわち車両の側面とし、当該側面のx軸上の位置を特定する。
【0114】
(ステップS1404)
処理装置140は、ステップS1403で特定されたx軸上の位置と、記憶装置130が記憶するデータとに基づいて、x軸上の位置に対応するLiDARユニット160を決定する。
【0115】
以上の処理により、処理装置140は、画像中の車両の側面に向けてレーザビームを出射することができるLiDARユニット160を選択することができる。
【0116】
以上のように、本実施形態における速度計測システム300Aは、速度計測が可能な複数のLiDARユニット160を備える。複数のLiDARユニット160は、計測対象物である車両が車線内のどこを走行したとしても、その車輪の側面にレーザビームを照射して速度を計測できるように配置されている。さらに、車輪の側面の通過位置を特定するためにカメラ110が設置されている。処理装置140は、カメラ110で撮影された画像における車両の側面位置とLiDARユニット160との対応関係を示すデータに基づいて、速度計測に用いるLiDARユニット160を選択する。計測に用いるLiDARユニット160を車両の側面位置に基づいて選択することにより、複数のLiDARユニット160を計測に用いることによる消費エネルギーの増大、およびデータ処理負荷の増大を抑制することができる。これにより、効率よく確実に車輪の速度を計測することができる。車輪の速度の計測により、稼働している車輪と稼働していない車輪とを判別することができる。このため、例えば高速道路などの有料道路の料金を正しく徴収することができる。
【0117】
本実施形態の速度計測システム300Aには、多様な変形例が考えられる。以下、いくつかの変形例を例示する。以下の説明において、本実施形態と同様の事項についての説明は適宜省略する。
【0118】
<実施形態1の変形例1>
前述の実施形態1では、複数のLiDARユニット160が、図11に示すように車線の上方のゲートに、路面に平行に配置されている。これに対し、実施形態1の変形例1では、図8Aに示すような車線の脇にあるアイランドに複数のLiDARユニット160が路面に垂直に配置される。
【0119】
図16は、実施形態1の変形例1における速度計測システムの、カメラ110および複数のLiDARユニット160の配置の例を模式的に示す図である。この例では、カメラ110および複数のLiDARユニット160は、アイランド80上の異なる位置に設置されている。
【0120】
本変形例では、カメラ110は、通過する車両10を前方から撮影する。カメラ110は、LiDARユニット160が速度を計測する位置から予め定められた距離以上離れた位置に設置される。図16は、カメラ110が車両10の前方正面の画像を撮影できる位置に設置されている例を示している。カメラ110は、車両10を後方から撮影できる位置に配置されていてもよい。
【0121】
図16の例では、複数のLiDARユニット160が、車両10の進行方向に関してカメラ110から離れた位置に設置されている。各LiDARユニット160は、通過する車両10の車輪の左側面に左斜め上からレーザビームを照射する。図16の例では、LiDARユニット160は、路面とほぼ垂直に設置された支柱に等間隔に配置されている。全てのLiDARユニット160のレーザビームの照射角度は同一である。
【0122】
図17は、カメラ110によって取得された画像の領域と、各LiDARユニット160のレーザビームの照射方向と、各LiDARユニット160のレーザビームが車輪の側面に当たって速度を測定できる範囲との関係を模式的に示す図である。図17の上の図は、カメラ110によって取得されたカメラ画像の一例を示している。カメラ画像は、速度計測が行われる位置に進入する直前の車両を前方から撮影することによって生成される。カメラ110は、1つの車線の全体が画像内に収まるように配置される。図17の下の図は、各LiDARユニット160と、速度が計測される車線上の地点との関係を示している。図17において、xからxn+1の範囲が車線の範囲に当たる。図17において上の図と下の図とでxからxの位置がずれているのは、カメラ110がアイランド上に配置されており、カメラ110のレンズの光軸が車両10の進行方向に対して車線の左寄りに傾いているからである。この配置により、カメラ画像においては、車線の左側(図17における右側)が大きく写り、車線の右側(図17における左側)が小さく写る。カメラ110の角度に起因する画像上の位置のずれは計算可能であり、かつカメラ110の設置後は固定される。したがって、カメラ110によって取得された画像上の位置とLiDARユニット160との対応についてのデータは、本変形例でも図13に示すデータと同様の形式で記録され得る。
【0123】
図17においても図12と同様、星印はLiDARユニット160のレーザビーム源の位置を示している。星印から直線は、レーザビームの照射方向を示す。本変形例でも、レーザビームの照射方向は、全てのLiDARユニット160において同一であり、それらのレーザビームの照射方向は互いに平行である。
【0124】
図17の下の図を参照しながら、本変形例におけるLiDARユニット160の配置をより詳細に説明する。この例でも、図12に示すxyz座標系と同様の座標系を用いて説明する。
【0125】
各LiDARユニット160は、車両10の進行方向の左手側(図17における右側)のアイランド上に建てられた支柱から車線内の路面に向かってレーザビームを出射する。車輪が車線内のどの位置を通ってもいずれかのLiDARユニット160で速度計測ができるように複数のLiDARユニット160が配置されている。具体的には、車輪の位置に関わらず、いずれかのLiDARユニット160からのレーザビームが、路面平面におおむね垂直な車輪の側面のいずれかの高さの部位を照射するように、n個のLiDARユニット160がy方向に等間隔に配置されている。実施形態1と同様、上記の式(6)で計算されるrよりも小さい値で車線の幅が分割される。領域の境界のx座標の値を、x1,x2,・・・,xn+1とする。n個のLiDARユニット160は、予め設定された想定される車輪の最小径w以下の間隔で路面に垂直な方向に並べて設置される。このような配置により、高さがw以上の車輪は、車両の進行方向が車線の方向と大きく異ならない限り、車線内のいずれの位置にあっても、いずれかのLiDARユニット160のレーザビームの照射範囲内に含まれ、速度計測が可能となる。
【0126】
本変形例における処理装置140は、カメラ110によって取得された画像から認識した車線の幅をrよりも小さい値で分割し、境界のx座標値xからxn+1を決定する。このとき、処理装置140は、車両10の進行方向(すなわち+z方向)に対するカメラ110のレンズの光軸の角度に基づいて、画像上のxからxn+1の位置を決定する。xからxn+1の位置の決定は、実測に基づいて行われてもよい。画角上のxからxn+1の位置を決定することにより、画像上の位置とその位置にレーザビームを照射し得るLiDARユニット160とを対応付けることができる。
【0127】
記憶装置130が記憶するデータの内容は、xからxn+1の位置が等間隔でない点以外は図13の例と同様である。
【0128】
図17に示す例では、カメラ110によって取得された画像において、xからxn+1の区間に車両10の左側面が位置している。この場合、処理装置140は、車輪の側面が車両10の側面の位置とおおむね同じ位置にあるものとして、xからxn+1の区間に車輪の側面が位置すると判断する。処理装置140は、記憶装置130に格納されたデータを参照して、xからxn+1の範囲の車輪の速度計測が可能なn番目のLiDARユニット160を選択する。処理装置140は、選択したLiDARユニット160に、レーザビームを出射させる。
【0129】
本変形例における速度計測システム300Aの動作は、図14に示す動作と同様である。
【0130】
なお、本変形例では、複数のLiDARユニット160は、路面に垂直な方向に配列されているが、実施形態1と同様に、複数のLiDARユニット160が路面に平行な方向に配列されていてもよい。例えば、図18に示すような配置を採用してもよい。図18の例では、複数のLiDARユニット160が路面に平行なゲートに配列され、カメラ110は車両10から見てLiDARユニット160よりも奥に配置されている。カメラ110は、車両10の後方から撮影するように配置されていてもよい。図18に示す構成においても、速度計測システム300Aの動作は前述の動作と同様である。
【0131】
<実施形態1の変形例2>
前述の実施形態1および変形例1では、複数のLiDARユニット160の各々が、1方向に固定されたレーザビームを出射する。これに対し、実施形態1の変形例2では、複数のLiDARユニット160の各々が、複数のビーム出射部を備え、異なる複数の方向にレーザビームを出射し、出射されたレーザビームごとに速度計測を行うことができる。各LiDARユニット160から出射される複数のレーザビームの方向は固定されており、各レーザビームによって車輪の速度計測が可能な範囲も固定されている。
【0132】
図19は、実施形態1の変形例2におけるカメラ110およびLiDARユニット160の配置の一例を模式的に示す図である。この例では、図11に示す例と同様、カメラ110および複数のLiDARユニット160が、車両10の上部の異なるゲート上に設置されている。カメラ110は、複数のLiDARユニット160が設置されたゲートよりも車両10から見て手前のゲートに設置されている。カメラ110は、図11の例と同様、通過する車両10をおおむね真上から撮影する。撮影される領域は、LiDARユニット160が速度を計測する領域のすぐ手前(すなわち、車両進行方向における後ろ側)である。複数のLiDARユニット160は、カメラ110が設置されたゲートよりも車両10の進行方向に向かって奥にあるゲートに設置されている。各LiDARユニット160は、通過する車両10の車輪の左側面に左斜め上からレーザビームを照射する。
【0133】
図19に示すように、複数のLiDARユニット160の各々は、異なる複数の照射方向にレーザビームを出射することができる。各LiDARユニット160のレーザビームの複数の照射方向は固定されている。各LiDARユニット160は、レーザビームの出射方向ごとに、対象物の速度を計測することができる。図19には、2つのLiDARユニット160が例示されている。LiDARユニット160の個数は、3以上であってもよい。本変形例の以下の説明では、LiDARユニット160の個数をm(mは2以上の整数)とする。
【0134】
図20は、各LiDARユニット160の構成の一例を示すブロック図である。図20に示すLiDARユニット160は、図3に示す例とは異なり、3つのコリメートレンズ52と、第3ファイバスプリッタ70とを備えている。第3ファイバスプリッタ70は、光サーキュレータ36からの光を3つの光に分岐させる。第3ファイバスプリッタ70と3つのコリメートレンズ52とが3本の光ファイバーで接続されている。3本の光ファイバーの長さは、互いに異なっている。3つのコリメートレンズ52は、互いに異なる角度で配置されている。このような構成により、1つのLiDARユニット160から異なる3つの方向にレーザ光を出射することができる。この例では、コリメートレンズ52が光出射部に相当する。さらに、出射方向ごとにレーザ光の光路長が異なることから、光検出器40によって検出される干渉光のビート信号の周波数帯域が、レーザ光の照射方向によって異なる。このため、処理回路60は、ビート信号の周波数に基づいて、照射方向ごとに距離または速度を計測することができる。なお、図20の例では、LiDARユニット160による光ビームの照射方向の数は3であるが、2または4以上であってもよい。照射方向の数に応じて、コリメートレンズ52および光ファイバーの本数は増減し得る。
【0135】
各LiDARユニット160は、例えば特許文献3(特開2015-111160号公報)に開示されたレーザレーダと同様の構成を有していてもよい。各LiDARユニット160は、レーザビームの照射方向ごとに異なるビート周波数を有する干渉光を検出してFMCW方式による速度計測を行う。各LiDARユニット160は、レーザビームの照射方向ごとに対象物の速度を計測することができる。レーザビームが車輪に照射された場合、車輪の速度が計測される。
【0136】
図21は、カメラ110によって取得された画像の領域と、各LiDARユニット160からのレーザビームの複数の照射方向と、各照射方向のレーザビームが車輪の側面に当たって速度を測定できる範囲との関係を模式的に示す図である。図21の上の図は、カメラ110によって取得されたカメラ画像の一例を示している。本変形例において取得されるカメラ画像は、図12に示す例と同様であり、速度計測が行われる位置に進入する直前の車両10を上方から撮影することによって取得される。図21の下の図は、車両10の正面側から見た各LiDARユニット160の光源の位置と、各LiDARユニット160のレーザビームの照射方向と、車両10および車輪の側面の位置との関係を模式的に示す図である。本変形例では、図12の例とは異なり、複数のLiDARユニット160からのレーザビームの出射方向は平行ではなく、路面平面に対して異なる角度を有する。このため、車線幅が等間隔に分割されるのではなく、図21に示すように異なる間隔で分割される。
【0137】
ここで、m個のLiDARユニット160からのレーザビームの照射方向の総和をn、j番目(1≦j≦n)のLiDARユニット160が出射可能なレーザビームの照射方向の数をk、j番目のLiDARユニット160からのレーザビームのi番目(1≦i≦k)の照射方向と路面平面とのなす角をθjiとする。本変形例におけるx軸方向における車線の領域分割は、以下の式(7)に従う。
【数7】
【0138】
図20に示すように、rjiごとに分割された領域の境界のx座標値を、x,x,・・・,xn+1とする。j番目のLiDARユニット160とj+1番目のLiDARユニット160との設置間隔は、ゲートの高さをhとして、以下の式(8)に従う。
【数8】
【0139】
式(8)に基づいて、複数のLiDARユニット160の設置間隔が決定される。各LiDARユニット160から出射される各光ビームの照射方向と路面平面との角度に基づいて、車輪の通過位置によらず速度を計測できるように、複数のLiDARユニット160が設置される。各LiDARユニット160からの各レーザビームの照射角度が固定されていることから、x軸上の境界位置x,x,・・・,xn+1も固定される。
【0140】
図22は、実施形態1の変形例2における記憶装置130に記憶されるデータの一例を示す図である。本変形例における記憶装置130は、カメラ110によって取得された画像上のx軸上の範囲と、LiDARユニット160の番号と、照射方向に対応する信号帯域番号とを対応付けるデータを記憶する。本変形例における各LiDARユニット160は、レーザビームの照射方向ごとに干渉光のビート信号の周波数帯域が異なるように構成されている。図20に示すように、各LiDARユニット160は、光源20から出射された周波数変調されたレーザ光に、照射方向ごとに異なる遅延を生じさせる複数の光ファイバーを備え得る。そのような構成により、ビート信号の周波数帯域を照射方向によって異なるようにすることができる。図22に示す信号帯域番号は、特定のLiDARユニット160における特定の照射方向のレーザビームによる計測結果の出力番号を表している。処理装置140は、カメラ110が取得した画像から車輪の側面の位置を決定すると、記憶装置130に記憶された図22に示すデータを参照して、車輪の側面の位置に対応するLiDARユニット160を選択する。さらに、処理装置140は、当該データに基づき、LiDARユニット160によって取得された複数の計測結果のうち、車輪の側面位置に対応する計測結果を抽出することができる。
【0141】
図23は、実施形態1の変形例2における動作を示すフローチャートである。図23におけるステップS1100からステップS1400は、図14に示す対応するステップの動作と同様である。本変形例では、ステップS1400の後、以下のステップS1510およびS1600が実行される。
【0142】
(ステップS1510)
処理装置140は、ステップS1400で選択した1つのLiDARユニット160に、通過する車両の車輪の速度の計測を指示する。指示を受けたLiDARユニット160は、複数の方向にレーザビームを同時に出射し、複数の周波数帯域のそれぞれについて、速度の計測結果を生成する。
【0143】
(ステップS1600)
処理装置140は、記憶装置130に記憶されたデータを参照して、ステップS1510で計測された複数の周波数帯域の計測結果のうち、ステップS1400で決定された画像上の位置に対応する信号を選択する。ステップS1600の後、ステップS1100に戻る。
【0144】
ステップS1100からステップS1600を繰り返すことで、速度計測システム300Aは通過車両の車輪の速度を計測することができる。
【0145】
本変形例では、各LiDARユニット160は、複数のレーザビームを異なる方向に同時に照射し、レーザビームごとに計測を同時に行う。これにより、効率よく車輪の速度を計測することができる。
【0146】
<実施形態1の変形例3>
前述の実施形態1、ならびに変形例1および2では、カメラ110で取得された画像から、車線を横切る方向(すなわちx軸方向)における車輪の側面位置が決定され、車輪の高さについては想定される最小の車輪径を示す固定値wの範囲内で速度計測が行われる。これに対し、本変形例3では、カメラ110で取得された画像から車輪の側面位置に加えて車輪の高さが決定され、車輪の側面位置および車輪の高さに基づいて、車輪の側面にレーザビームを照射するLiDARユニット160が選択される。
【0147】
LiDARユニット160が配置時に想定された車輪の高さの下限値よりも通過する車両の車輪が大きい場合、画像から特定された車輪の側面位置での速度計測を2つ以上のLiDARユニット160で実行可能な場合がある。そのような場合、本変形例では、処理装置140は、車輪の側面の速度計測が可能な全てのLiDARユニット160を選択し、計測を指示する。処理装置140は、得られた複数の速度計測結果から、より精度の高い速度の値を生成し、出力する。
【0148】
本変形例では、カメラ110は、図18に示すように、複数のLiDARユニット160の設置場所から離れた位置で車線の広い範囲を撮影する。複数のLiDARユニット160は、走行する車両10から見てカメラ110の手前に配置されている。
【0149】
図24は、本変形例におけるカメラ110によって取得された画像と、各LiDARユニット160から出射される複数のレーザビームとの関係を模式的に示す図である。図24の上の図は、カメラ110によって取得された画像の一例を示している。図24の下の図は、速度計測が行われる位置で車線を横断する平面における各LiDARユニット160の光源の位置とレーザビームの照射方向との関係を示す模式図である。変形例1と同様、カメラ110のレンズの光軸は車両10の進行方向に対して角度を持つため、カメラ110による画像には歪みが生じる。図24に示す例では、車線の左側(すなわち図24における右側)から車線が撮影されるため、画像の右側がより大きく写り、画像の左側がより小さく写る。図24の下の図に示す各LiDARユニット160のレーザビームの照射方向と、LiDARユニット160の設置間隔は、実施形態1と同様の方法で決定される。すなわち、想定される最小の車輪が通過した場合でもいずれかのLiDARユニット160で速度計測ができるように、LiDARユニット160の設置間隔が設定されている。
【0150】
図24の例におけるカメラ画像から認識される車輪の高さwは、想定される最小の車輪径wと同程度である。この場合、処理装置140は、複数のLiDARユニット160の中から、車輪の側面にレーザビームを照射することが可能な1つのLiDARユニット160を選択する。一方、トレーラのように、高さwの大きい車輪を有する車両が撮影された場合、図24の下の図に示すように、2つのLiDARユニット160からのレーザビームで車輪の側面を照射することが可能である。この場合、処理装置140は、当該2つのLiDARユニット160を選択して速度計測を実行させることができる。
【0151】
図25は、本変形例における記憶装置130が記憶するデータの一例を示す図である。本変形例では、記憶装置130は、各LiDARユニット160のレーザビームの照射方向を、カメラ110の向きに起因する歪みが補正されたカメラ画像上の一次式として記憶する。図25の例では、一次式の傾きと切片との組が、LiDARユニット160の1つを特定する番号とともに記憶されている。ここで、カメラ画像上の一次式は、例えばカメラ画像における任意の点(例えば中心または左下端など)を原点とするxy座標系(図24の上の図参照)で表現され得る。j番目(1≦j≦n)のLiDARユニット160から出射されるレーザビームの方向を表す一次式は、y=ax+bで表される。
【0152】
図26は、実施形態1の変形例3における速度計測システムの動作を示すフローチャートである。ステップS1100からステップS1300までの動作は、実施形態1における動作(図14参照)と同様である。本変形例では、ステップS1300において画像に対象物(この例では車輪の側面)が含まれると判定されると、以下のステップS1410、S1520、S1610の動作が実行される。
【0153】
(ステップS1410)
処理装置140は、ステップS1200でカメラ110によって取得された画像から、車輪を認識し、車輪の側面位置と車輪の高さ(すなわち車輪の径)とを特定する。処理装置140は、特定した車輪の側面位置と車輪の高さとに基づいて、速度計測が可能な1つ以上のLiDARユニット160を選択する。
【0154】
(ステップS1520)
処理装置140は、ステップS1410において選択した1つ以上のLiDARユニット160に、車輪の速度の計測を指示する。指示を受けた1つ以上のLiDARユニット160は、光ビームを出射し、速度計測を実行する。
【0155】
(ステップS1610)
処理装置140は、ステップS1520で計測された速度の情報に基づいて、通過する車両の車輪の速度の情報を生成して出力する。ステップS1410で2以上のLiDARユニット160が選択された場合、2以上の速度の計測値が取得される。それらの速度の計測値が大きく異ならない場合は、処理装置140は、2以上の速度の計測値を計測時刻ごとに平均化した値を速度の計測値として出力してもよい。LiDARユニット160ごとに速度の計測値が大きく異なる場合には、処理装置140は、それぞれのLiDARユニット160による計測値の信号雑音比(S/N)または信号強度等に基づいて、計測値の信頼度を求め、信頼度の最も高い計測値を速度の値として出力してもよい。
【0156】
ここで、図27を参照しながら、ステップS1410の動作の詳細を説明する。図27は、図26におけるステップS1410の動作の詳細を示すフローチャートである。ステップS1410は、図27に示すステップS1411からS1415の動作を含む。以下、各ステップの動作を説明する。
【0157】
(ステップS1411)
処理装置140は、ステップS1200でカメラ110によって取得された画像について画像認識処理を行い、画像中の車輪を検出し、車輪の画像領域を抽出する。車輪の認識は、パターン認識、または統計学習もしくはニューラルネットワーク等の機械学習による認識の手法によって行われ得る。
【0158】
(ステップS1412)
処理装置140は、ステップS1411で抽出された車輪の領域のy軸方向の大きさを、車輪の高さとして特定する。
【0159】
(ステップS1413)
処理装置140は、カメラ110が車両の進行方向の正面からでなく、角度をもって車線を撮影していることに起因する画像のx軸方向における歪みを補正する。x軸方向における歪みを補正するための補正値あるいは補正式は、カメラ110の位置が固定されているため、一意に定まる。歪みの補正値あるいは補正式は、記憶装置130に記録されていてもよいし、処理装置140内のメモリに記録されていてもよい。なお、カメラ110の設置角度に起因する画像の歪みの補正は、ステップS1413のタイミングに限らず、ステップS1414までのいずれかのタイミングで行われ得る。
【0160】
(ステップS1414)
処理装置140は、ステップS1411で抽出された車輪の領域のうち、速度計測が行われる側(図24の例では図の右側)の鉛直面を示すx軸上の位置(すなわち座標)を決定する。処理装置140は、当該位置を、記憶装置130に記憶されたレーザビームの照射方向を示す各式に当てはめて、車輪側面位置と各LiDARユニット160のレーザビームとが交差する位置を決定する。
【0161】
(ステップS1415)
処理装置140は、ステップS1414で決定した交差位置の値が、ステップS1412で決定した車輪高さの値よりも小さくなる1つ以上のLiDARユニット160を選択する。
【0162】
上記の動作により、カメラ画像から車輪の側面の位置および車輪の高さ(すなわち車輪径)を特定し、当該車輪の側面にレーザビームを照射可能な1つ以上のLiDARユニット160を選択することができる。
【0163】
本変形例によれば、車輪の側面のx軸上の通過位置のみでなく、車輪の径を特定することにより、通過する車両の車輪の大きさに合わせて速度計測可能な1つ以上のLiDARユニット160を特定することができる。これにより、LiDARユニット160の設置時に設定された最小車輪径よりも大きい径を持つ車輪については、速度計測可能な複数のLiDARユニット160を選択することが可能になる。複数のLiDARユニット160の計測結果を利用することにより、さらに精度の高い速度計測が可能になる。
【0164】
なお、本変形例では、複数のLiDARユニット160は、図18に示すようにゲート上に設置されるが、他の態様で設置されていてもよい。例えば、図16に示す例のように、複数のLiDARユニット160がアイランド上に設置されてもよい。
【0165】
また、本変形例では、車輪の側面の速度計測が可能な1以上のLiDARユニット160により速度計測を行うものとしたが、そのような方法に限定されない。例えば、特定された車輪の側面の速度計測が可能な複数のLiDARユニット160のうち、より高い精度で速度計測が可能な1つを選択し、選択した1つのLiDARユニット160により速度計測を行うものとしてもよい。選択の方法の一例は、ステップS1414で求められた一次式と車輪側面位置との交点が、ステップS1412で特定された車輪のy軸方向の範囲の中央に最も近いLiDARユニット160を選ぶ方法である。他の一例として、車輪のy軸方向の範囲のうち下方1/4から3/4までの範囲で一次式と車輪側面位置が交差する、あるいは上記範囲に最も近い位置で交差するLiDARユニット160を選ぶ方法がある。
【0166】
<実施形態1の変形例4>
実施形態1およびその変形例1から3では、カメラ110で取得された画像に基づいて車輪の通過位置が特定されるが、カメラ110以外のセンサを利用して車輪の通過位置を特定してもよい。実施形態1の変形例4では、赤外線カーテンを使用して、車輪の通過位置に加えて車輪の径が特定される。
【0167】
図28は、実施形態1の変形例4における速度計測システムの構成例を示すブロック図である。図28は、赤外線カーテン170が追加された点を除けば、図10に示す実施形態1の構成と同様である。
【0168】
赤外線カーテン170は、赤外線の発光部と受光部との複数の対を備える。複数対の発光部および受光部は、直線状に配置されている。発光部と受光部との間にある物体の形状を、発光部から受光部への赤外光の遮蔽の状態に基づいて計測することができる。
【0169】
図29は、赤外線カーテン170、カメラ110、およびLiDARユニット160の配置の一例を模式的に示す図である。図29の例において、赤外線カーテン170は、車両10の進行方向に向かって左側に設置された柱と、進行方向に向かって右側に設置された柱とを含む。複数の発光部は左側の柱に設置されている。複数の受光部は右側の柱に設置されている。各発光部と対応する1つの受光部とは、1対1の対をなしており、互いに対向するように配置されている。発光部から受光部に、路面平面に平行に車線をまたいで赤外線が出射される。図29では、わかりやすくするため、赤外線をまばらに示しているが、受光部と発光部との複数の対は、狭い間隔で車線を横断する面を形成するように配置され得る。車線を通過する車両10は、発光部から出射された赤外線を遮蔽する。赤外線が遮蔽された位置に対応する受光部は赤外線を受光しない。発光があるにもかかわらず、受光部による受光がない位置については、車線上に遮蔽物があることを示す。車両10が車線を通過すると、時間ごとの赤外線の遮蔽の推移が記録される。これにより、通過した遮蔽物の側面形状を計測することができる。
【0170】
図30は、赤外線カーテン170による遮蔽物の側面形状の計測の一例を模式的に示す図である。横軸は時間であり、縦軸は受光部の位置を示している。図中の丸は個々の受光部の受光の有無を表している。白抜きの丸は、発光部が発光部からの赤外線を受光している状態を示している。黒塗りの丸は、受光部が発光部からの赤外線を受光していない状態を示している。すなわち、黒塗りの丸は、赤外線が発光部と受光部との間で物体によって遮蔽されていることを表す。
【0171】
発光部および受光部は、図29に示すように路面平面に垂直な方向に並んでいる。このため、図30において、受光部の配列は、縦に並んだ1列の丸として表現されている。赤外線カーテン170は、各受光部による受光の有無を単位時間ごとに記録する。図30は、発光部と受光部との間を通過した物体による遮蔽の状態の時間経過を示している。一定の速度で通過する対象物が遮蔽した状態を時間経過に従って計測することにより、発光部からの赤外線が遮蔽された受光部の位置の時間変化を対象物の形状として計測することができる。赤外線カーテン170のデータは、例えば、各受光部を画素とし、縦軸を受光部の配列、横軸を時刻とする2値画像のデータとして生成されてもよい。
【0172】
図31は、カメラ110によって取得された画像と、赤外線カーテン170によって取得されたデータと、複数のLiDARユニット160のレーザビームの照射方向との関係を説明するための図である。図31の左上の図は、カメラ110によって取得された画像から得られる車輪の側面位置を示している。図31の右上の図は、赤外線カーテン170によって取得されたデータから得られる、通過する車両10の側面形状と、車輪の径とを示している。図31の下の図は、車両10が走行する車線を正面から見た場合の複数のLiDARユニット160のレーザビームの照射方向を模式的に示している。
【0173】
処理装置140は、図31の左上の図に示すようなカメラ画像に基づいて、通過する車両10の側面位置を特定する。処理装置140は、車両10の側面位置と車輪の側面位置とがおおむね一致するものとして処理する。
【0174】
処理装置140は、さらに、図31の右上の図に示すような、赤外線カーテン170によって取得された通過する車両10の側面形状を示すデータから、路面平面に垂直な方向における車輪の高さwを決定する。例えば、処理装置140は、側面形状の輪郭から、車輪のなす円を推定して、その円の直径を車輪の直径として推定することができる。あるいは、車両10の側面形状の輪郭のうち、車輪として確認できる部分の輪郭の高さを車輪の高さwとして推定してもよい。処理装置140は、カメラ110によって取得された画像から決定した車輪側面の通過位置と、赤外線カーテン170によって取得された通過車両の側面形状のデータから決定した車輪の高さとに基づいて、当該車輪の速度を計測可能な1つ以上のLiDARユニット160を決定する。図31の下の図の例では、車輪の側面位置における車輪高さwの範囲の線分と交差するレーザビームを出射するn-1番目およびn番目の2つのLiDARユニット160が選択される。
【0175】
図32は、変形例4における速度計測システムの動作を示すフローチャートである。ステップS1100、S1300、S1520、S1610の動作は、図26に示す変形例3の動作と同様である。以下、変形例3の動作と異なる点を説明する。
【0176】
(ステップS1210)
ステップS1210において、カメラ110は車線を撮影する。また、赤外線カーテン170は、通過車両の側面形状を計測し、記録する。カメラ110は、例えば、赤外線カーテン170における発光部から受光部へ照射される赤外線の遮蔽が開始したタイミングで撮影を行うように制御され得る。そのような制御は、例えば処理装置140によって行われ得る。赤外線カーテン170は、例えば、複数の受光部のうちの1つ以上が遮蔽された時点から予め定められた一定時間をさかのぼった時点から、受光部の全てが遮蔽されない状態になった後一定の時間が経過した時点までの遮蔽の記録を出力するように構成され得る。赤外線カーテン170は、遮蔽のデータを時刻ごとに配列することにより、図30に示すような、対象物の通過の開始から終了までの側面の推移を示すデータを生成することができる。
【0177】
(ステップS1420)
処理装置140は、カメラ110によって取得された画像中に対象物である車両が含まれると判断すると、ステップS1420に進む。ステップS1420において、処理装置140は、ステップS1210で取得した画像に基づいて、LiDARユニット160が設置されている側の車輪の側面の位置を特定する。車輪の側面の位置を特定する方法は、図15に示す実施形態1における方法と同様である。
【0178】
(ステップS1430)
処理装置140は、ステップS1210で取得された対象物の側面形状のデータから、車輪の高さを決定する。赤外線カーテン170の各受光部の路面平面からの距離(すなわち高さ)は予め定められている。図30に示すように対象物によって遮光された受光部の高さ方向の位置に基づいて、対象物の側面の輪郭の高さを推定することができる。図31の右上の図のように、受光部の配列方向の軸をy軸、時間軸をx軸とする画像として、対象物の側面の輪郭のデータが取得され得る。処理装置140は、対象物の輪郭を示す画像から、例えばエッジを検出し、検出されたエッジから部分円を抽出し、部分円の上端の受光部の高さ、または部分円から欠けた部分を補完した円の直径を車輪の高さとして決定することができる。なお、車輪の高さの推定方法は、上記の方法に限られず、任意の方法で車輪の高さを推定してもよい。
【0179】
(ステップS1440)
処理装置140は、ステップS1420で決定された車輪側面の位置(図31の下の図における横軸上の位置)と、ステップS1430で決定された車輪の高さ(図31の下の図における縦軸上の範囲)とに基づいて、複数のLiDARユニット160の中から、当該車輪の速度を計測可能な1つ以上のLiDARユニット160を選択する。選択の方法は、実施形態1の変形例3における方法(図27におけるステップS1414からS1415の動作)と同様である。
【0180】
本変形例によれば、赤外線カーテンを用いて車輪の高さを計測することにより、車輪の速度を計測可能なLiDARユニット160を精度よく選択することができる。これにより、計測の精度を向上させることができる。
【0181】
なお、本変形例では、対象物を検出するためのセンサとして、カメラ110とともに赤外線カーテン170が用いられるが、他のセンサが用いられてもよい。車線上の速度計測が行われる領域において、車両および車輪の側面が通過する位置を検出することができる任意のセンサを用いることができる。例えば、路面上に2次元的に配置された複数の感圧センサを用いて対象物の位置を特定してもよい。
【0182】
<実施形態1の変形例5>
実施形態1およびその変形例1から4では、カメラ110によって取得された画像に基づいて車輪の通過位置が特定される。これに対し、実施形態1の変形例5では、超音波センサを使用して、車輪の通過位置が特定される。
【0183】
図33は、実施形態1の変形例5における速度計測システムの構成例を示すブロック図である。図33に示す構成は、カメラ110が超音波センサ180に置き換わった点を除けば、図10に示す実施形態1の構成と同様である。
【0184】
図34は、実施形態1の変形例5における速度計測システムにおける複数のLiDARユニット160および超音波センサ180の配置の一例を模式的に示す図である。図34に示す構成は、カメラ110が超音波センサ180に置き換わった点を除き、図11に示す構成と同様である。
【0185】
図34に示す例では、超音波センサ180は、図11に示す例におけるカメラ110と同様、通過する車両10をおおむね真上からセンシングする。センシングされる位置は、LiDARユニット160によって速度が計測される位置のすぐ手前(すなわち車両進行方向における後ろ側)である。超音波センサ180は、LiDARユニット160によって車輪の速度計測が行われる直前の通過車両10の位置をセンシングする。
【0186】
超音波センサ180は、例えば40kHzの超音波のパルスを出力して反射波を受信するまでの時間に基づいて距離を計測するセンサである。超音波センサ180は、車線を横切る方向に沿って超音波を出力する方向を変化させることが可能な機構を備えていてもよい。あるいは、超音波センサ180は、車線を横切る方向に沿って超音波の発生源を移動させる機構を備えていてもよい。超音波の方向または発生源の位置を車線を横切る方向に沿って変化させることにより、取得される信号の変化に基づいて通過車両10の位置を特定し易くなる。超音波センサ180の出力方向または位置の変化は、例えば100Hzなどの所定の周波数で行われ得る。超音波センサ180は、通過車両10がない場合は路面までの距離を計測する。通過車両10がある場合には、ゲートにおける超音波センサ180の位置から通過車両10までの距離を計測する。
【0187】
図35は、超音波センサ180の出力と複数のLiDARユニット160からのレーザビームの照射方向との関係を説明するための図である。図35の上の図は、超音波センサ180によって検出される車両10の例を示している。図35の上の図において、路面までの距離が検出された部分が車線を横切る方向に延びる破線として示され、それよりも短い距離が検出された部分が車線を横切る方向に延びる実線として示されている。当該実線の範囲が通過する車両10の幅を示す。
【0188】
処理装置140は、超音波センサ180の出力に基づいて特定される通過車両10の範囲の両端のうち、LiDARユニット160が設置されている側(図の右側)の端点の位置を、車両10の側面位置として特定する。処理装置140は、特定された車両10の側面位置を、車輪の側面位置として処理する。処理装置140は、実施形態1と同様、図13に示すようなデータを記憶装置130から読み出し、当該データを参照して、車輪の側面位置にレーザビームを照射可能なLiDARユニット160を選択する。処理装置140は、選択したLiDARユニット160に光ビームを出射させて速度を計測させる。
【0189】
本変形例によれば、超音波センサ180を用いて通過車両10の位置を特定することにより、カメラの撮影による位置の特定が困難な夜間などの状況であっても、車両10の位置を特定することができる。これにより、カメラ撮影が困難な状況または環境であっても車両10の車輪の速度を効率よく計測することができる。
【0190】
なお、超音波センサ180は、車両10の上部のゲートとは異なる位置に配置されてもよい。例えば、車線の脇にある柱に超音波センサ180が、車線を横切る方向に向けて設置されていてもよい。その場合、超音波センサ180は、通過する車両10の側面までの距離を計測する。処理装置140は、超音波センサ180によって計測された車両10の側面までの距離に基づいて、x軸方向における車輪の位置を決定することができる。
【0191】
<実施形態1の変形例6>
前述の実施形態1およびその変形例1から5では、複数のLiDARユニット160が使用される。これに対し、本変形例では、複数の方向に光ビームを出射することが可能な単一のLiDARユニット160が使用される。本変形例では、実施形態1の変形例2における複数のLiDARユニット160が1つのLiDARユニット160に置換されている。変形例2では、各々が複数の方向にレーザビームを出射可能な複数のLiDARユニット160が、車両が通過し得る全ての範囲の車輪の速度を計測できるように配置されている。これに対し、本変形例では、1つのLiDARユニット160が、車両が通過し得る全ての範囲の車輪の速度を計測できるように配置される。
【0192】
図36は、実施形態1の変形例6における速度計測システムの構成の一例を示すブロック図である。複数のLiDARユニット160を含む計測装置120が単独のLiDARユニット160に置き換わった点を除き、本変形例の構成は図10に示す実施形態1の構成と同様である。本変形例におけるLiDARユニット160は、複数の方向に同時にレーザビームを照射し、同時に複数の方向の対象物の速度を計測できるように構成されている。
【0193】
図37は、カメラ110によって取得された画像の領域と、LiDARユニット160からのレーザビームの複数の照射方向との関係を模式的に示す図である。図21の上の図は、カメラ110によって取得されたカメラ画像の一例を示している。図21の下の図は、車両10の正面側から見た各LiDARユニット160の光源の位置と、各LiDARユニット160のレーザビームの照射方向と、車両10および車輪の側面の位置との関係を模式的に示す図である。本変形例では、単一のLiDARユニット160が照射し得る複数のレーザビームによって、通過車両10の車輪が車線のどの位置を通過しても速度計測が可能である。
【0194】
図38は、実施形態1の変形例6における記憶装置130に記憶されるデータの一例を示す図である。図38に示すデータは、カメラ110によって取得された画像におけるx軸上の位置の範囲と、LiDARユニット160によって検出される干渉光の信号帯域番号とを対応付けるデータである。図38において、kは、LiDARユニット160が出射可能なレーザビームの方向の数を表す。干渉光の信号帯域番号は、レーザビームの出射方向に対応している。LiDARユニット160が単一であるため、図22に示すデータとは異なり、位置の範囲とLiDARユニット160の番号とを対応付ける情報は含まれていない。
【0195】
処理装置140は、変形例2と同様の方法で、カメラ110が取得した画像から車輪の側面位置を決定する。続いて、処理装置140は、図38に例示されるデータを参照して、車輪の側面の位置から、LiDARユニット160によって取得された複数の計測データのうち、車輪の側面の位置に対応する計測データを抽出する。処理装置140は、抽出した計測データに基づき、車輪の速度または稼働している車軸の数を示す出力データを生成することができる。本変形例における処理装置140の動作は、制御対象のLiDARユニット160が単一になった点を除けば、変形例2における動作と同様である。このため、詳細な説明を省略する。
【0196】
本変形例では、1つのLiDARユニット160で複数の方向にレーザビームを照射して、通過車両の位置にかかわらず車輪の速度を計測することができる。このような構成により、多数のLiDARユニット160を設置したり制御したりする必要がないため、車輪の速度情報をより単純な構成で取得することができる。
【0197】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2を説明する。
【0198】
実施形態1およびその各変形例では、ETCにおいて車両の稼働している車軸の数を特定するために、車輪の速度が計測される。実施形態2では、車輪の速度に加えて、車両の速度すなわち車体の速度も計測される。本実施形態では、車輪の速度を計測し得るLiDARユニット160と、車体の速度を計測し得るLiDARユニット160とをそれぞれ選択するために、車体の通過領域と車輪の通過領域とがそれぞれ特定される。稼働している車輪は路面に接しており、車両の最下部に位置する。車輪の計測が行われる領域と車体の計測が行われる領域とを分離するために、LiDARユニット160以外の位置センサが用いられる。位置センサの出力に基づいて車輪の高さが決定され、車輪の高さまでの領域で、車輪あるいは車両の側面にレーザを照射し得るLiDARユニット160が車輪の速度計測を行うLiDARユニット160として選択される。さらに、車輪の高さを超えた領域で、車両の側面にレーザを照射し得るLiDARユニット160が車体の速度計測を行うLiDARユニット160として選択される。
【0199】
実施形態2の速度計測システムの構成は、図28に示す実施形態1の変形例4の構成と同様である。カメラ110、複数のLiDARユニット160、および赤外線カーテン170の配置は、図29に示す配置と同様である。すなわち、本実施形態では、車線を通過する車両の上部から、車線全体を撮影する位置にカメラ110が設置される。赤外線カーテン170は、車線を挟んで通過車両の側面形状を計測するように設置される。複数のLiDARユニット160は、通過車両の側面に向けてレーザビームを照射して、車輪を含む車両の速度を計測するように設置される。
【0200】
図39は、実施形態2におけるLiDARユニット160の選択方法を説明するための図である。図39の左上の図は、カメラ110によって取得された画像から得られる車輪の側面位置を示している。図39の右上の図は、赤外線カーテン170によって取得されたデータから得られる、通過する車両10の側面形状、車輪の径、および車両10の高さを示している。図39の下の図は、車両10が走行する車線を正面から見た場合の複数のLiDARユニット160のレーザビームの照射方向を模式的に示している。
【0201】
処理装置140は、図39の左上の図に示すようなカメラ画像に基づいて、通過する車両10の側面位置を特定する。処理装置140は、車両10の側面位置と車輪の側面位置とがおおむね一致するものとして処理する。
【0202】
処理装置140は、さらに、図39の右上の図に示すような、赤外線カーテン170によって取得された通過する車両10の側面形状を示すデータから、路面平面に垂直な方向における車輪の高さwを決定する。例えば、車両10の側面形状の輪郭から、車輪のなす円を推定して、その円の直径を車輪の直径として推定することができる。また、処理装置140は、車両10の側面形状の輪郭に基づき、車両の高さhを決定する。
【0203】
処理装置140は、カメラ画像から決定した車輪の側面の通過位置と、車両10の側面形状のデータから決定した車輪の高さwおよび車両10の高さhとに基づいて、車両10の速度を計測可能な1つ以上のLiDARユニット160と、車体の速度を計測可能な1つ以上のLiDARユニット160とを決定する。図39の下の図の例では、車輪の側面位置における車輪高さwの範囲の線分と交差するレーザビームを出射するn-1番目およびn番目の2つのLiDARユニット160が、車輪の速度を計測可能なLiDARユニット160として選択される。また、車輪の側面の通過位置において車輪の高さwを超えて高さhに至るまでの範囲の線分と交差するレーザビームを出射する1つ以上のLiDARユニット160(例えば、n-3番目のLiDARユニット160)が、車体の速度を計測可能なLiDARユニット160として選択される。
【0204】
図40は、実施形態2における速度計測システムの動作を示すフローチャートである。図40に示すステップS1100からS1420までの動作は、図32に示す実施形態1の変形例4における動作と同様である。本変形例では、図32に示すステップS1430、S1440、S1520、およびS1610の代わりに、ステップS1450、S1460、S1530、およびS1620の動作が実行される。以下、これらのステップの動作を説明する。
【0205】
(ステップS1450)
処理装置140は、ステップS1210で取得された対象物の側面形状のデータから、車輪の高さを決定する。例えば図39の右上に示すような画像が取得された場合、処理装置140は、例えば、当該画像からエッジを検出し、検出されたエッジから部分円を抽出し、部分円から欠けた部分を補完した円の直径を車輪の高さwとして決定することができる。また、処理装置140は、図39の右上の図に示すような側面形状のデータから、遮蔽された位置で最も高い位置を車両の高さhとして決定する。
【0206】
(ステップS1460)
処理装置140は、ステップS1420で決定された車輪の側面のx方向の位置で、路面平面からステップS1450で決定された車輪の高さwまでの範囲にレーザビームを照射可能な1つ以上のLiDARユニット160を決定する。さらに、処理装置140は、車輪の側面のx方向の位置で、車輪の高さwを超えて車両の高さhまでの範囲にレーザビームを照射可能な1つ以上のLiDARユニット160を決定する。図39の例では、車輪の高さwまでの範囲にレーザビームを照射可能なn-1番目およびn番目のLiDARユニット160が選択され、車輪の高さwから車両の高さhまでの範囲にレーザビームを照射可能な2番目からn-3番目までのLiDARユニット160が選択され得る。
【0207】
(ステップS1530)
処理装置140は、ステップS1460で選択した複数のLiDARユニット160に、速度の計測を指示する。指示を受けたLiDARユニット160の各々は、通過する車両10の車輪の側面または車体の側面の速度を計測する。なお、各LiDARユニット160が計測する速度は、車輪の実際の速度ではなく、レーザビームの出射方向に沿った速度成分である。
【0208】
(ステップS1620)
処理装置140は、ステップS1530で各LiDARユニット160によって取得された速度の計測値に基づいて、車輪および車体の速度の情報を含む出力データを生成し、出力装置150に出力する。複数のLiDARユニット160が車輪または車体の速度を計測した場合、処理装置140は、車輪および車体のそれぞれについて、複数の速度の計測値を平均化するなどの処理を行った上で出力データを生成する。車輪および車体の速度を決定する処理は、前述の実施形態1の変形例3および4におけるステップS1610の処理と同様である。複数の速度の計測値がLiDARユニット160ごとに大きく異なる場合には、各計測値の信号雑音比(S/N)または信号強度等に基づいて、計測値の信頼度を計算し、信頼度の最も高い計測値を、車輪または車体の速度の計測値として出力してもよい。
【0209】
以上のように、本実施形態では、処理装置140は、複数のLiDARユニット160の中から、車体の速度を計測する1つ以上のLiDARユニット160と、車輪の速度を計測する1つ以上のLiDARユニット160とを選択する。これにより、車体の速度と車輪の速度との違いを検知することができる。すなわち、全体が移動する対象物の中で、全体とは異なる動作を行う部分を正確に検知することができる。これにより、例えば、リフトアクスルにより稼働していない車輪と稼働している車輪とを正確に区別することができる。
【0210】
なお、本実施形態では、図29の例と同様、複数のLiDARユニット160がアイランド上の柱に設置され、カメラ110が車線上部のゲートに設置されているが、このような配置とは異なる配置を採用してもよい。例えば、複数のLiDARユニット160は、車線上のゲートに設置されていてもよいし、ゲートの柱に設置されていてもよい。カメラ110は、例えば図16に示す例のように、車両を比較的遠くから撮影するように配置されていてもよい。カメラ110は、車線の幅全体が視野内に含まれる画像を撮影可能な任意の位置および姿勢で配置され得る。
【0211】
<実施形態2の変形例1>
実施形態2では、推定された車輪の高さに基づいて車輪の速度を計測するLiDARユニット160が選択され、車輪の高さの上端から車両の高さまでの範囲に基づいて車両の速度を計測するLiDARユニット160が選択される。これに対し、本変形例では、車両の高さを推定することなく、車輪の高さの上端から、最小車輪径として予め設定された固定値の範囲に基づいて車両の速度を計測するLiDARユニット160が選択される。すなわち、車両の速度を計測するためのレーザビームの照射範囲として、予め設定された最小車輪径の大きさが適用される。
【0212】
図41は、実施形態2の変形例1におけるLiDARユニット160の選択方法を説明するための図である。図41の左上の図および右上の図は、図39に示す対応する図と同様である。図41の下の図は、車両10が通過する車線を正面から見た場合における、複数のLiDARユニット160のレーザの照射方向を模式的に示す図である。図41には、赤外線カーテン170からのデータに基づいて特定される車輪の高さwと、車両の高さとして設定される高さh’が示されている。高さh’は、車両の実際の高さではなく、車輪の高さwに最小車輪径として予め設定された固定値wを加算した値である。本変形例では、この高さh’が、車両の高さとして、実施形態2と同様の処理が行われる。言い換えれば、車輪の高さwのわずかに上の点が、車両の速度が計測される点として扱われる。
【0213】
カメラ画像から車両および車輪の側面位置を求める方法、および赤外線カーテンのデータから車輪高さwを求める方法は、実施形態2における方法と同様である。本変形例では、処理装置140は、車輪高さwを求めた後、車輪高さw1に、予め設定された最小車輪径の大きさを表す固定値w以上の値を加算することにより、車両(あるいは車体)の速度計測範囲を設定する。これにより、車体の速度を計測可能な1つ以上のLiDARユニット160を選択することができる。車輪の速度計測が可能なLiDARユニット160の選択方法は実施形態2における方法と同様である。
【0214】
図42は、実施形態2の変形例1における速度計測システムの動作を示すフローチャートである。ステップS1100からS1420の動作は図40に示す動作と同様である。ステップS1430およびS1520の動作は、図32に示す実施形態1の変形例4における動作と同様である。本変形例では、ステップS1430の後、ステップS1432、S1441、S1520、およびS1611の動作が実行される。
【0215】
(ステップS1432)
処理装置140は、ステップS1420で決定された車輪側面のx軸上の位置における車体の計測範囲を、ステップS1430で決定された車輪の高さに基づいて決定する。具体的には、処理装置140は、車輪の高さを超えて、当該車輪の高さに最小車輪径以上の値を加算した高さまでの範囲を車体の計測範囲として決定する。図41の例では、車輪の高さwから、車輪の高さwに最小車輪径wを加算した高さまでの範囲が車両10の車体の速度計測の範囲として決定される。
【0216】
最小車輪径wは、実施形態1およびその各変形例と同様、速度計測が行われる対象の車両の車輪として想定される最小の車輪の直径を表す。複数のLiDARユニット160は、想定される最小の車輪の側面が車線のどの位置にあっても、いずれかのLiDARユニット160からのレーザビームが照射されるように配置される。すなわち、車線内の車両10あるいは車輪の任意の側面位置について、最小車輪径を超える高さの範囲には少なくとも1つのLiDARユニット160からのレーザビームが照射される。図41の例では、車輪の直上の位置で車両10の速度を計測可能な1つのLiDARユニット160が選択される。なお、車輪高さwから、最小車輪径wの整数倍(例えば2倍)の高さの範囲が設定されてもよい。その場合、車両10の速度を計測し得るLiDARユニット160の数は2以上となる。このように、車輪高さwを超えて、最小車輪径wよりも大きい範囲で車体の速度の計測範囲を設定してもよい。それにより、複数のLiDARユニット160を車体の速度を計測するLiDARユニット160として選択することができる。
【0217】
(ステップS1441)
処理装置140は、ステップS1420で決定された車輪側面位置と、ステップS1430で決定された車輪の高さとに基づいて、当該車輪の速度を計測可能な1つ以上のLiDARユニット160を選択する。選択の方法は、例えば、図27に示す実施形態1の変形例3におけるステップS1414およびS1415の動作と同様である。図41の下の図の例では、n-1番目のLiDARユニット160と、n番目のLiDARユニット160とが、車輪の速度を計測するLiDARユニット160として選択される。さらに、処理装置140は、ステップS1420で決定された車輪側面の位置と、ステップS1432で決定された車体の計測範囲とに基づいて、車両の速度を計測可能な1つ以上のLiDARユニット160を決定する。図41の例では、処理装置140は、車両と車輪の側面のx方向の位置における車輪の高さwから最小車輪径wまでの範囲を照射し得るレーザビームを出射するn-2番目のLiDARユニット160を選択する。
【0218】
(ステップS1611)
処理装置140は、ステップS1530で各LiDARユニット160によって取得された速度の計測値に基づいて、車輪および車体の速度の情報を含む出力データを生成し、出力装置150に出力する。複数のLiDARユニット160が車輪または車体の速度を計測した場合、処理装置140は、車輪および車体のそれぞれについて、複数の速度の計測値を平均化するなどの処理を行った上で出力データを生成する。車輪および車体の速度を決定する処理は、前述の実施形態1の変形例3および4におけるステップS1610の処理と同様である。複数の速度の計測値がLiDARユニット160ごとに大きく異なる場合には、各計測値の信号雑音比(S/N)または信号強度等に基づいて、計測値の信頼度を計算し、信頼度の最も高い計測値を、車輪または車体の速度の計測値として出力してもよい。
【0219】
以上のように、本変形例においては、車輪の直上の領域を照射可能なレーザビームを出射する1つ以上のLiDARユニット160を選択的に使用して、車体の速度が計測される。これにより、車体の大きい車両の速度を計測する場合であっても、選択されるLiDARユニット160の個数を限定することができる。また、車両の形状が前後方向に異なる高さを有する場合であっても、車輪の直上の範囲においては、速度計測が可能な領域の前後方向の長さが車両の前後長と一致する場合が多い。そのような場合、車輪の直上の範囲を計測対象にすることにより、車両の速度を安定して計測することができる。
【0220】
以上の各実施形態およびその各変形例における速度計測システムによれば、車線を通過する車両および/またはその車輪の速度情報を取得することができる。当該速度情報に基づいて、通過する車両の車軸のうちの稼働している車軸の数を特定することができる。これにより、例えば有料道路での課金を正しく行うことができる。
【0221】
本開示の技術は、車両および/または車輪の速度情報を取得する用途に限らず、他の用途にも適用することができる。例えば、製造ライン上で通過する対象物(例えば工業製品または部品等)における可動部の判別または可動部の動作異常の検知が可能である。本開示のシステムを利用することにより、形状の検査のみでなく、動作の検査をライン上で自動で行うことができるようになる。また、人または動物の速度を計測する用途にも本開示のシステムを適用することができる。例えば、人または動物の頭部または体幹の速度と、四肢の速度とを別々に計測するといった応用が可能である。
【0222】
以上のように、本開示は、以下に記載のセンシングシステムおよびセンシング方法を含む。
【0223】
本開示の第1の態様によるセンシングシステムは、移動する対象物の移動範囲をセンシングして第1センサデータを出力する第1センサと、前記移動範囲における複数の箇所を照射する複数のビーム出射部を有し、かつ1つ以上のLiDARユニットを含む第2センサと、処理装置と、を備える。前記処理装置は、前記第1センサデータに基づいて前記対象物における特定の対象部の位置を決定し、前記1つ以上のLiDARユニットに、前記対象部を照射する1つ以上の光ビームを出射させ、前記対象部についての第2センサデータを出力させる。
【0224】
前記センシングシステムは、前記対象物の位置と、前記位置に対応するLiDARユニットおよび/または前記光ビームの出射方向との対応を示すデータを記憶する記憶装置をさらに備えていてもよい。
【0225】
前記処理装置は、前記対象物の位置と、前記記憶装置に記憶された前記データとに基づいて、前記1つ以上のLiDARユニットに、前記対象部を照射する1つ以上の光ビームを出射させてもよい。
【0226】
前記第2センサは、複数のLiDARユニットを含んでいてもよい。前記処理装置は、前記対象部の位置に基づいて、前記複数のLiDARユニットの中から、前記対象部を照射する光ビームを出射可能な少なくとも1つのLiDARユニットを決定し、決定した前記少なくとも1つのLiDARユニットに、前記光ビームを出射させてもよい。
【0227】
前記複数のLiDARユニットは、一方向に配列され、同一の方向に前記光ビームを出射してもよい。
【0228】
前記複数のLiDARユニットは、路面に平行または垂直な方向に沿って配列され、前記路面に向けて前記光ビームを出射してもよい。
【0229】
前記1つ以上のLiDARユニットのうちの少なくとも1つは、2つ以上のビーム出射部を備え、異なる複数の方向に光ビームを出射することが可能であってもよい。
【0230】
前記1つ以上のLiDARユニットは、前記複数の方向に光ビームを出射することが可能な単一のLiDARユニットであってもよい。前記処理装置は、前記対象部の位置に基づいて、前記LiDARユニットが出射すべき前記光ビームの方向を決定し、前記LiDARユニットに、前記方向に向けて前記光ビームを出射させてもよい。
【0231】
前記1つ以上のLiDARユニットは、各々が複数の方向に光ビームを出射することが可能な複数のLiDARユニットであってもよい。前記処理装置は、前記対象部の位置に基づいて、前記複数のLiDARユニットの中から、前記対象部を照射する光ビームを出射可能な少なくとも1つのLiDARユニットと、前記少なくとも1つのLiDARユニットが出射すべき前記光ビームの方向とを決定し、前記少なくとも1つのLiDARユニットに、前記方向に向けて前記光ビームを出射させてもよい。
【0232】
前記処理装置は、前記1つ以上のLiDARユニットに、前記複数の方向に光ビームを出射させ、前記複数の光ビームの照射によって取得された前記第2センサデータから、前記対象部の位置に基づいて決定される特定の光ビームに対応するデータを抽出し、抽出した前記データに基づいて、前記対象部の速度に関するデータを生成して出力してもよい。
【0233】
前記第1センサは、カメラを含んでいてもよい。前記第1センサデータは、前記カメラによって生成される画像データを含んでいてもよい。前記処理装置は、前記画像データに基づいて、前記対象部の位置を決定してもよい。
【0234】
前記第1センサは、赤外線カーテンをさらに含んでいてもよい。前記第1センサデータは、前記赤外線カーテンによって生成される前記対象物の形状データをさらに含んでいてもよい。前記処理装置は、前記対象部の位置と、前記形状データとに基づいて、前記1つ以上のLiDARユニットに、前記対象部を照射する前記1つ以上の光ビームを出射させてもよい。
【0235】
前記第1センサは、超音波センサを含んでいてもよい。前記第1センサデータは、前記超音波センサから出力された超音波センサデータを含んでいてもよい。前記処理装置は、前記超音波センサデータに基づいて、前記対象部の位置を決定してもよい。
【0236】
前記処理装置は、前記第2センサデータに基づいて、前記対象部の速度に関するデータを生成して出力してもよい。
【0237】
前記対象部は、前記対象物に含まれる可動部であってもよい。
【0238】
前記対象物は、車両であってもよい。前記対象部は、前記車両に含まれる車輪であってもよい。
【0239】
前記移動範囲における前記複数の箇所は、前記車両が走行する車線を横切る方向に並んでいてもよい。
【0240】
前記処理装置は、前記第2センサデータに基づいて、前記車両に含まれる複数の車輪のうち、稼働している車輪の数を示すデータを生成して出力してもよい。
【0241】
前記1つ以上のLiDARユニットは、複数のLiDARユニットであってもよい。前記処理装置は、前記対象部の位置に基づいて、前記複数のLiDARユニットの中から、前記対象部を照射する光ビームを出射可能な第1LiDARユニットと、前記対象物における前記対象部以外の部分を照射する光ビームを出射可能な第2LiDARユニットとを決定し、前記第1LiDARユニットおよび前記第2LiDARユニットに、前記光ビームを出射させて、前記対象部に関する速度情報と、前記対象物の前記対象部以外の部分に関する速度情報とを含む前記第2センサデータを取得させてもよい。
【0242】
前記1つ以上のLiDARユニットは、FMCW-LIDARセンサであってもよい。
【0243】
本開示の他の態様に係るセンシング方法は、移動する対象物の移動範囲をセンシングして第1センサデータを出力する第1センサと、前記移動範囲における複数の箇所を照射する複数のビーム出射部を有し、かつ1つ以上のLiDARユニットを含む第2センサと、を備えたセンシングシステムにおいて実行される。前記センシング方法は、前記第1センサデータに基づいて前記対象物における特定の対象部の位置を決定することと、前記1つ以上のLiDARユニットに、前記対象部を照射する1つ以上の光ビームを出射させ、前記対象部についての第2センサデータを出力させることと、を含む。
【産業上の利用可能性】
【0244】
本開示の技術は、一定の通過範囲を通過する物体の速度を計測する装置またはシステムに広く利用可能である。例えば、本開示の技術は、FMCW-LiDARを利用した装置またはシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0245】
10 車両
12 車体
14 車輪
20 光源
30 干渉光学系
40 光検出器
50 ビーム整形器
60 処理回路
62 メモリ
80 アイランド
100 計測装置
110 カメラ
120 計測装置
130 記憶装置
140 処理装置
150 出力装置
160 LiDARユニット
170 赤外線カーテン
180 超音波センサ
220 記憶装置
300 センシングシステム
300A、300B 速度計測システム
310 第1センサ
320 第2センサ
322 LiDARユニット
330 処理装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42