(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144252
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】塗布工具
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B05C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051150
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】511213410
【氏名又は名称】MMCリョウテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓也
【テーマコード(参考)】
4F041
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA12
4F041CA03
(57)【要約】
【課題】塗布幅を調整する機構を備えつつも、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる塗布工具を提供する。
【解決手段】第1方向に延び、第2方向において互いに対向する一対のヘッド部材11,12と、マニホールド20と、第3方向において一対のヘッド部材11,12の先端部間に開口するスロット21と、マニホールド20内に配置される栓部41と、スロット21内に配置されるシム部42と、栓部41およびシム部42を第1方向に移動させる塗布幅調整機構50と、を備え、一対のヘッド部材11,12のうち一方のヘッド部材11は、第2方向にヘッド部材11を貫通してマニホールド20に開口し、第1方向に延びる長孔14を有し、塗布幅調整機構50は、長孔14に挿通され、栓部41に接続された支柱51と、支柱51と固定されたブラケット52と、を有し、ブラケット52は、第1方向に移動可能とされる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延び、前記第1方向と直交する第2方向において互いに対向する一対のヘッド部材と、
一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、
一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、前記マニホールドと連通し、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において、一対の前記ヘッド部材の先端部間に開口するスロットと、
前記マニホールド内に配置され、前記第1方向に移動可能な栓部と、
前記スロット内に配置され、前記栓部とともに前記第1方向に移動可能なシム部と、
前記栓部および前記シム部を前記第1方向に移動させる塗布幅調整機構と、を備え、
一対の前記ヘッド部材のうち一方の前記ヘッド部材は、前記第2方向に前記ヘッド部材を貫通して前記マニホールドに開口し、前記第1方向に延びる長孔を有し、
前記塗布幅調整機構は、
前記長孔に挿通され、前記栓部に接続された支柱と、
前記支柱と固定されたブラケットと、を有し、
前記ブラケットは、前記第1方向に移動可能とされる、
塗布工具。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記ブラケットを前記第1方向に貫通する雌ネジ孔を有し、
前記塗布幅調整機構は、
前記第1方向に延び、前記雌ネジ孔に螺合する雄ネジ軸と、
前記雄ネジ軸を前記雄ネジ軸の中心軸回りに回転させる駆動部と、をさらに有する、
請求項1に記載の塗布工具。
【請求項3】
前記駆動部は、電動モータである、
請求項2に記載の塗布工具。
【請求項4】
前記駆動部は、前記雄ネジ軸に連結される作業用工具である、
請求項2に記載の塗布工具。
【請求項5】
一方の前記ヘッド部材は、前記ヘッド部材の側面から前記第2方向に窪み、前記第1方向に延びる収容溝を有し、
前記長孔は、前記収容溝の底面に開口し、
前記ブラケットは、前記収容溝に収容される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項6】
前記塗布幅調整機構は、前記ブラケットと前記支柱との間に設けられ、前記長孔の一部を前記第2方向から覆うシール部材をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の塗布工具。
【請求項7】
前記第2方向から見て、前記シール部材と重なるカバー部材と、
前記カバー部材を前記ヘッド部材に固定する固定部材と、
前記カバー部材に設けられ、前記シール部材を前記第1方向に移動可能としつつ前記第2方向から押さえる押圧部材と、をさらに備える、
請求項6に記載の塗布工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布工具として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1の塗布工具は、長手方向に延びる一対のヘッド部材と、一対のヘッド部材の内面同士の間に位置して長手方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、一対のヘッド部材の内面同士の間に位置して長手方向に延び、マニホールドと連通し、一対のヘッド部材の先端部間に開口するスロット(スリット)と、マニホールドおよびスロットの内部に配置され、長手方向に移動可能なインナーディッケルと、インナーディッケルを長手方向に移動させる、ボールねじや滑りねじ(台形ねじ)を用いた直動機構と、を有する。
特許文献1のようなインナーディッケル式の塗布工具では、直動機構によりインナーディッケルを長手方向に移動させることで、塗布工具を分解することなく、塗布液の塗布幅を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の塗布工具では、インナーディッケルを長手方向に移動させるための直動機構が、ヘッド部材から長手方向に大きく出っ張る。このため、塗布工具の長手方向の外形寸法が大きくなり、設置スペースなどに制限が生じやすく、塗布装置に搭載することが困難となる場合がある。また、塗布幅の調整範囲を大きく確保しようとすると、その分塗布工具の長手方向の外形寸法も大きくなり、上記問題がより顕著となる。
【0005】
本発明は、塗布幅を調整する機構を備えつつも、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる塗布工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗布工具の一つの態様は、第1方向に延び、前記第1方向と直交する第2方向において互いに対向する一対のヘッド部材と、一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、前記マニホールドと連通し、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において、一対の前記ヘッド部材の先端部間に開口するスロットと、前記マニホールド内に配置され、前記第1方向に移動可能な栓部と、前記スロット内に配置され、前記栓部とともに前記第1方向に移動可能なシム部と、前記栓部および前記シム部を前記第1方向に移動させる塗布幅調整機構と、を備え、一対の前記ヘッド部材のうち一方の前記ヘッド部材は、前記第2方向に前記ヘッド部材を貫通して前記マニホールドに開口し、前記第1方向に延びる長孔を有し、前記塗布幅調整機構は、前記長孔に挿通され、前記栓部に接続された支柱と、前記支柱と固定されたブラケットと、を有し、前記ブラケットは、前記第1方向に移動可能とされる。
【0007】
本発明の塗布工具では、ブラケットを長孔に沿って第1方向(以下、長手方向と呼ぶ場合がある)に移動させることで、ブラケットに支柱を介して接続される栓部およびシム部を、長手方向に移動させることができる。これにより、塗布工具を分解することなく、塗布液の塗布幅を調整することができる。
【0008】
本発明によれば、塗布幅を調整するにあたり、従来のようにヘッド部材から塗布幅調整用の部材(直動機構)等を長手方向に出っ張らせる必要性が生じない。このため、塗布工具の外形寸法を小さく抑えつつ、塗布幅を適宜変更することが可能となる。その結果、塗布工具を塗布装置に搭載する際の寸法上の制約等が抑えられ、塗布工具の設置容易性、すなわち汎用性を高めることができる。
【0009】
また、例えば、オペレーターが塗布幅の調整を手動で行う場合においては、工具の長手方向の両端部の塗布幅をそれぞれ調整するにあたり、従来では、オペレーターが塗布工具の長手方向の一方側と他方側とに移動しなければならなかった(つまり移動距離が長かった)が、本発明では、調整のための移動距離が小さく抑えられる。このため、塗布幅調整の操作性が高められる。
【0010】
以上より本発明によれば、塗布幅を調整する機構を備えつつも、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。またこれにより、塗布工具の汎用性や操作性を向上できる。
【0011】
前記塗布工具において、前記ブラケットは、前記ブラケットを前記第1方向に貫通する雌ネジ孔を有し、前記塗布幅調整機構は、前記第1方向に延び、前記雌ネジ孔に螺合する雄ネジ軸と、前記雄ネジ軸を前記雄ネジ軸の中心軸回りに回転させる駆動部と、をさらに有することが好ましい。
【0012】
この場合、駆動部によって雄ネジ軸を中心軸回りに回転させることで、雄ネジ軸に螺合するブラケットが第1方向に移動する。これにより、栓部およびシム部の位置を、雄ネジ軸の回転量によって精度よく調節することができる。塗布幅の微調整などが高精度に行え、かつ、調整が容易である。したがって、塗布幅をさらに自在かつ精緻にコントロールできる。
【0013】
前記塗布工具において、前記駆動部は、電動モータであることとしてもよい。
【0014】
上記構成のように、駆動部として電動モータを用いることで、より効率的にかつ安定して雄ネジ軸を回転させることができる。これにより、塗布幅の調整をより迅速かつ容易に行える。
【0015】
前記塗布工具において、前記駆動部は、前記雄ネジ軸に連結される作業用工具であることとしてもよい。
【0016】
上記構成のように、駆動部として作業用工具を用いることで、塗布工具の構成が簡素化される。上述した本発明の作用効果が得られつつ、塗布工具の製造コストやメンテナンスコスト等を削減することができる。
【0017】
前記塗布工具において、一方の前記ヘッド部材は、前記ヘッド部材の側面から前記第2方向に窪み、前記第1方向に延びる収容溝を有し、前記長孔は、前記収容溝の底面に開口し、前記ブラケットは、前記収容溝に収容されることが好ましい。
【0018】
この場合、ブラケットがヘッド部材の収容溝に収容されていることから、ブラケットがヘッド部材から第2方向に突出することが抑えられる。このため、塗布工具の第2方向における寸法を小さく抑えることができる。その結果、塗布工具を塗布装置に搭載する際の寸法上の制約等がより抑えられ、塗布工具の設置の自由度が増す。
【0019】
前記塗布工具において、前記塗布幅調整機構は、前記ブラケットと前記支柱との間に設けられ、前記長孔の一部を前記第2方向から覆うシール部材をさらに備えることが好ましい。
【0020】
この場合、長孔の一部がシール部材によって覆われていることから、長孔を通した塗布液の漏出を抑制できる。
【0021】
前記塗布工具は、前記第2方向から見て、前記シール部材と重なるカバー部材と、前記カバー部材を前記ヘッド部材に固定する固定部材と、前記カバー部材に設けられ、前記シール部材を前記第1方向に移動可能としつつ前記第2方向から押さえる押圧部材と、をさらに備えることが好ましい。
【0022】
この場合、押圧部材によってシール部材が第2方向から押さえられた状態で、シール部材は第1方向に移動可能である。このため、ブラケットを第1方向に移動させた際に、ブラケットの位置に関わらず、シール部材のシール性能を良好に維持することができる。したがって、長孔からの塗布液の漏出をより安定して抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の前記態様の塗布工具によれば、塗布幅を調整する機構を備えつつも、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態の塗布工具の一部(左側部分)を示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係る塗布工具1について、
図1から
図3を参照して説明する。なお本実施形態では、塗布工具1を単に工具などと呼ぶ場合がある。本実施形態の塗布工具1は、工具の構成部材を分解することなく、図示しない被塗布物への塗布液の塗布幅Wを調整可能な、いわゆるインナーディッケル式のスロットダイである。
【0026】
図1および
図2に示すように、塗布工具1は、一対のヘッド部材10と、マニホールド20と、スロット21と、サイドプレート30と、インナーディッケル40と、塗布幅調整機構50と、押圧機構60と、を備える。
また、一対のヘッド部材10は、一方のヘッド部材11と、他方のヘッド部材12と、を含む。本実施形態では、一方のヘッド部材11を第1ヘッド部材11と呼び、他方のヘッド部材12を第2ヘッド部材12と呼ぶ場合がある。
【0027】
一対のヘッド部材10は、それぞれ、略長方形板状または略直方体状であり、所定方向に延びる。一対のヘッド部材10は、互いの内面(第1内側面11aおよび第2内側面12a)同士を対向させた状態で、隣接して配置される。
【0028】
〔方向の定義〕
本実施形態では、一対のヘッド部材10が延在する方向を、第1方向と呼ぶ。つまり一対のヘッド部材10は、第1方向に延びる。このため第1方向は、長手方向(ヘッド長手方向)と言い換えてもよい。本実施形態において第1方向は、水平方向である。各図に示すXYZ直交座標系において、第1方向は、X軸方向に相当する。また第1方向は、左右方向と言い換えてもよい。この場合、第1方向のうち一方側(-X側)を左側と呼び、他方側(+X側)を右側と呼ぶ。なお
図1においては、塗布工具1の左側部分のみを図示しており、右側部分の図示については省略している。
【0029】
また、第1方向のうち、ヘッド両端部からヘッド中央部へ向かう方向を、第1方向の内側(つまり中央側)と呼び、ヘッド中央部からヘッド両端部へ向かう方向を、第1方向の外側と呼ぶ場合がある。
【0030】
第1方向(X軸方向)と直交する方向のうち、一対のヘッド部材10が互いに対向する方向を、第2方向と呼ぶ。本実施形態において第2方向は、水平方向である。一対のヘッド部材10は、第2方向において互いに隣接配置される。第2方向は、ヘッド部材10の板厚方向に相当する。各図において第2方向は、Y軸方向に相当する。
【0031】
第2方向(Y軸方向)は、前後方向と言い換えてもよい。この場合、第2方向のうち、一方のヘッド部材11から他方のヘッド部材12へ向かう方向(+Y側)を奥側または後方と呼び、他方のヘッド部材12から一方のヘッド部材11へ向かう方向(-Y側)を手前側または前方と呼ぶ。また、第2方向は、厚さ方向と言い換えてもよい。
【0032】
第1方向(X軸方向)および第2方向(Y軸方向)と直交する方向を、第3方向と呼ぶ。本実施形態において第3方向は、鉛直方向である。第3方向は、上下方向と言い換えてもよい。各図において第3方向は、Z軸方向に相当する。
【0033】
第3方向(Z軸方向)のうち、一対のヘッド部材10の間からスロット21が不図示の被塗布物に向けて開口する方向(+Z側)を、先端側または上側と呼び、これとは反対の方向(-Z側)を、後端側または下側と呼ぶ。
【0034】
なお本実施形態において、上側、下側、前方、後方、左側および右側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0035】
〔ヘッド部材〕
ヘッド部材10は、金属製であり、具体的には、例えばステンレス製である。一対のヘッド部材10は、ボルト等の締結部材(図示省略)により、互いに固定される。
図2および
図3に示すように、一対のヘッド部材10のうち、手前側(-Y側)に位置する第1ヘッド部材11は、収容溝13を有する。収容溝13は、後述する塗布幅調整機構50のブラケット52等を収容するための空間である。
【0036】
収容溝13は、第1ヘッド部材11の手前側を向く側面(第1外側面)から奥側(+Y側)に向けて凹んでいる。すなわち、収容溝13は、第1ヘッド部材11の側面から第2方向に窪む。収容溝13は、第1方向(X軸方向)に延びる。収容溝13は、第1方向から見た断面形状が略矩形状である。収容溝13の第1方向の寸法は、ヘッド部材10の第1方向の寸法と同じである。すなわち、収容溝13は、第1ヘッド部材11を第1方向に貫通して設けられる。
【0037】
図1に示すように、収容溝13の第1方向(X軸方向)の端部を含む部分には、長孔14が形成されている。すなわち、一対のヘッド部材10のうち一方のヘッド部材11は、長孔14を有する。長孔14は、第1方向に延びるスリット状である。長孔14の第1方向の外側の端部(一端部)は、第1ヘッド部材11の第1方向の外側を向く端面17に開口する。長孔14の第1方向の内側の端部(他端部)は、第1ヘッド部材11のうち第1方向におけるヘッド中央部と、端面17との間の部分に配置される。
長孔14は、第1ヘッド部材11の第1方向の両端部に一対設けられる。なお、
図1では、一対の長孔14のうち一方(左側)の長孔14のみを図示している。
【0038】
図2に示すように、長孔14は、収容溝13の手前側を向く底面15と、第1ヘッド部材11の奥側を向く第1内側面11aとに開口する。長孔14は、第1ヘッド部材11を第2方向に貫通して、マニホールド20に開口する。長孔14には、後述する塗布幅調整機構50の支柱51が挿入される。
【0039】
また、収容溝13の手前側(-Y側)の開口部には、一対の段差部16が形成されている。一対の段差部16は、収容溝13の第3方向(Z軸方向)の両端部に配置される。段差部16は、第1方向と垂直な断面形状が略矩形状をなす。
図3に示すように、段差部16には、後述する押圧機構60のカバー部材61が収容され、取り付けられる。
【0040】
〔マニホールド〕
図2に示すように、マニホールド20は、一対のヘッド部材10の内面(第1内側面11a、第2内側面12a)同士の間に位置して第1方向(X軸方向)に延び、内部に塗布液が貯留される。マニホールド20は、塗布工具1の内部に塗布液を一時的に保持する室(空間)である。本実施形態ではマニホールド20が、一対のヘッド部材10のうち、第2ヘッド部材12に配置される。マニホールド20は、第2ヘッド部材12の手前側を向く第2内側面12aから奥側に窪み、第1方向に延びる溝状である。マニホールド20は、第1方向と垂直な断面の形状が、半円形状である。
【0041】
本実施形態では、マニホールド20が第2ヘッド部材12を第1方向(X軸方向)に貫通して設けられる。マニホールド20は、第2ヘッド部材12の左側(-X側)を向く左端面(端面)17および右側(+X側)を向く図示しない右端面(端面)に開口する。すなわち本実施形態では、マニホールド20の第1方向の長さが、第2ヘッド部材12の第1方向の長さと同じである。
【0042】
マニホールド20には、図示しない塗布液供給路から塗布液が流入し、この塗布液は、マニホールド20内に一時的に保持されて、スロット21へ流出する。つまり、マニホールド20の内部には、塗布液が流通する。
【0043】
〔スロット〕
スロット21は、一対のヘッド部材10の内面(第1内側面11a、第2内側面12a)同士の間に位置して第1方向に延び、マニホールド20と連通する。スロット21は、マニホールド20の先端側(+Z側)に配置される。スロット21は、マニホールド20と隣接して配置される。
【0044】
スロット21は、第1ヘッド部材11の先端部である第1先端部11bと、第2ヘッド部材12の先端部である第2先端部12bとの間から、第3方向(Z軸方向)の先端側へ向けて、外部に開口する。すなわち、スロット21は、第3方向において、一対のヘッド部材10の先端部(第1先端部11b、第2先端部12b)間に開口する。スロット21の先端部に位置するスロット開口部18は、第2方向において、第1ヘッド部材11の第1先端部11bと第2ヘッド部材12の第2先端部12bとの間に配置される。スロット21の後端側(-Z側)の端部は、マニホールド20と接続される。
【0045】
本実施形態では、スロット21の第1方向の長さが、各ヘッド部材10の第1方向の長さと等しい。スロット21は、ヘッド部材10の第1方向を向く両端面17に開口する。スロット21には、マニホールド20から塗布液が流入し、この塗布液はスロット開口部18から先端側の被塗布物(図示省略)へ向けて流出する。つまり、スロット21の内部には、塗布液が流通する。
【0046】
〔サイドプレート〕
サイドプレート30は、金属製であり、具体的には、例えばステンレス製である。サイドプレート30は、ヘッド部材10の第1方向の両端部に一対設けられる。なお、
図1では、一対のサイドプレート30のうち一方(左側)のサイドプレート30のみを図示している。
【0047】
各サイドプレート30は、図示しないボルト等により、一対のヘッド部材10と固定される。サイドプレート30は、板状であり、一対の板面が第1方向を向く。
【0048】
一対のサイドプレート30は、マニホールド20の第1方向の両端部を、第1方向の両外側から塞ぐ。また、一対のサイドプレート30は、スロット21の第1方向の両端部を、第1方向の両外側から塞ぐ。また、一対のサイドプレート30は、収容溝13の第1方向の両端部を、第1方向の両外側から塞ぐ。また、サイドプレート30は、長孔14の第1方向の外側の端部(一端部)を、第1方向の外側から塞ぐ。
【0049】
〔インナーディッケル〕
インナーディッケル40は、例えば、樹脂製または金属製である。
図2に示すように、インナーディッケル40は、栓部41と、シム部42と、を有する。つまり、塗布工具1は、栓部41と、シム部42と、を備える。本実施形態では、インナーディッケル40、つまり栓部41およびシム部42の組が、塗布工具1の第1方向の一方側部分(左側部分)と他方側部分(右側部分)とに、一対設けられる。なお、
図1では、一対のインナーディッケル40のうち一方(左側)のインナーディッケル40のみを図示している。
【0050】
図2に示すように、栓部41は、マニホールド20内に配置される。栓部41は、マニホールド20の内部を第1方向に移動可能である。本実施形態の栓部41は、第1方向に延びる半円柱状をなす。栓部41は、栓部41の外周面の一部を構成する凸曲面状の湾曲面41aと、栓部41の外周面の他の一部を構成する矩形平面41bと、を有する。
【0051】
湾曲面41aは、マニホールド20の内周面(マニホールド内周面20a)に対して摺動可能に接触する。矩形平面41bは、第1ヘッド部材11の第1内側面11aに対して摺動可能に接触する。
【0052】
栓部41は、マニホールド20の内部空間22を第1方向から密封(シール)している。つまり、栓部41は、マニホールド20の内部空間22を第1方向において液密に仕切っている。
図1に示すように、栓部41は、マニホールド20の内部空間22を、第1方向において、塗布液が貯留される部分(塗布液貯留部22a)と、塗布液が貯留されない部分(塗布液非貯留部22b)とに区画する。このため、栓部41が第1方向に移動することで、マニホールド20の塗布液貯留部22aの第1方向の長さが変化する。
【0053】
シム部42は、板状であり、具体的には、四角形板状である。
図2に示すように、シム部42の一対の板面(第1板面42a、第2板面42b)は、第2方向(Y軸方向)を向く。シム部42は、スロット21内に配置される。シム部42の第1板面42aおよび第2板面42bは、スロット21の第2方向を向く一対の壁面と摺動可能に接触する。具体的に、第1板面42aは、第1ヘッド部材11の第1内側面11aと摺動可能に接触する。第2板面42bは、第2ヘッド部材12の第2内側面12aと摺動可能に接触する。
【0054】
シム部42は、栓部41の先端側(+Z側)に配置される。シム部42は、栓部41と接続される。シム部42と栓部41とは、例えば、別々の部材をボルト等の締結部材によって一体に組み立てて構成されていてもよいし、あるいは、単一の部材により一体に形成されていてもよい。シム部42は、スロット21の内部を第1方向に移動可能である。すなわち、シム部42は、栓部41とともに第1方向に移動可能である。
【0055】
シム部42は、スロット21の内部空間を第1方向から密封(シール)している。つまり、シム部42は、スロット21の内部空間を第1方向において液密に仕切っている。
図1に示すように、シム部42は、スロット21の内部空間を、第1方向において、塗布液が流通する部分(塗布液流通部21a)と、塗布液が流通しない部分(塗布液非流通部21b)とに区画する。このため、シム部42が第1方向に移動することで、スロット21の塗布液流通部21aの第1方向の長さが変化する。
【0056】
このように、インナーディッケル40が、ヘッド部材10に対して第1方向(X軸方向)に移動することにより、スロット21の先端部(スロット開口部18)から、図示しない被塗布物に塗布される塗布液の第1方向の塗布長さ、つまり塗布幅Wが変化する。
【0057】
〔塗布幅調整機構〕
塗布幅調整機構50は、栓部41およびシム部42、つまりインナーディッケル40を、第1方向に移動させる。塗布幅調整機構50によってインナーディッケル40の第1方向の位置が調整されることで、塗布工具1は、図示しない被塗布物に対する塗布液の第1方向の塗布寸法つまり塗布幅Wを、調整可能である。
【0058】
本実施形態では、塗布幅調整機構50が、塗布工具1の第1方向の一方側部分(左側部分)と他方側部分(右側部分)とに、一対設けられる。このため、塗布工具1に塗布幅調整機構50が1つのみ設けられる場合と比べて、塗布幅Wの調整代が大きく確保されている。なお、
図1では、一対の塗布幅調整機構50のうち一方(左側)の塗布幅調整機構50のみを図示している。
【0059】
図1および
図2に示すように、塗布幅調整機構50は、支柱51と、支柱シールパッキン59と、ブラケット52と、雄ネジ軸53と、第1サポート部材54と、第2サポート部材55と、駆動部56と、シール部材57と、を有する。後述するように本実施形態では、塗布幅調整機構50の構成部材のうち、支柱51以外の部材がすべて、収容溝13に収容される。
【0060】
支柱51は、栓部41の矩形平面41bから第2方向に突出する柱状をなしている。支柱51は、長孔14に挿通され、栓部41に接続されている。支柱51の断面形状は、矩形などの多角形、円形および楕円形等から選択された任意の形状をなす。支柱51の第3方向(Z軸方向)における寸法は、長孔14の第3方向における寸法よりもわずかに小さい。支柱51は、長孔14に沿って第1方向に移動可能である。
【0061】
支柱シールパッキン59は、支柱51の第1方向の外側を向く端面に取り付けられる。支柱シールパッキン59は、長孔14の内側面と摺動可能に接触する。支柱シールパッキン59は、支柱51と長孔14との間を液密に密封すなわちシールする。
【0062】
支柱51の手前側(-Y側)の端部には、後述するシール部材57を介してブラケット52が固定されている。すなわち、ブラケット52は、支柱51と固定される。
図1に示すように、本実施形態ではブラケット52が、第2方向から見て矩形状をなしている。ブラケット52は、収容溝13に収容されている。
図2に示すように、第1方向から見て、ブラケット52は、収容溝13の開口部(段差部16)よりも奥側(+Y側)に配置されており、収容溝13から手前側(-Y側)には出っ張っていない。
ブラケット52は、ブラケット52を第1方向(X軸方向)に貫通する雌ネジ孔52aを有する。雌ネジ孔52aの内周面には、雌ネジが設けられている。
【0063】
雄ネジ軸53は、第1方向に延びる棒状または軸状をなしている。雄ネジ軸53の外周面には、雄ネジが設けられている。雄ネジ軸53の雄ネジと、雌ネジ孔52aの雌ネジとは、互いに螺合する。すなわち、雄ネジ軸53は、雌ネジ孔52aに螺合する。雄ネジ軸53は、例えば、ボールねじである。ただしこれに限らず、雄ネジ軸53は、例えば、台形ねじ等の滑りねじであってもよい。雄ネジ軸53は、収容溝13に収容される。雄ネジ軸53の第1方向の寸法は、長孔14の第1方向の寸法よりも大きい。
【0064】
図1に示すように、雄ネジ軸53の第1方向における両端部は、第1サポート部材54および第2サポート部材55によって支持されている。具体的に、雄ネジ軸53のうち第1方向の外側(
図1においては左側)の端部は、第1サポート部材54によって、雄ネジ軸53の中心軸C回りに回転可能に支持されている。第1サポート部材54は、収容溝13の第1方向の外側(左側)の端部に配置されている。第1サポート部材54は、収容溝13に収容されている。第1サポート部材54は、
図1に示すように第2方向(Y軸方向)から見て、長孔14の第1方向の外側(左側)の端部と重なる。第1サポート部材54は、収容溝13の底面15に、ネジ止め等により固定される。
【0065】
雄ネジ軸53のうち第1方向の内側(
図1においては右側)の端部は、第2サポート部材55によって、雄ネジ軸53の中心軸C回りに回転可能に支持されている。第2サポート部材55は、収容溝13のうち、長孔14よりも第1方向の内側(右側)の部分に配置されている。第2サポート部材55は、収容溝13に収容されている。第2サポート部材55は、収容溝13の底面15に、ネジ止め等により固定される。
【0066】
駆動部56は、例えばカップリング構造やラチェット構造等を介して、雄ネジ軸53の第1方向の端部と接続されている。本実施形態では駆動部56が、雄ネジ軸53の第1方向の内側(
図1においては右側)の端部に接続される。駆動部56は、例えば電動モータ58である。駆動部56は、収容溝13に収容される。
【0067】
駆動部56は、外部から供給される電力により回転することで、雄ネジ軸53に中心軸C回りの回転力を与える。すなわち、駆動部56は、雄ネジ軸53を雄ネジ軸53の中心軸C回りに回転させる。雄ネジ軸53が回転すると、雄ネジ軸53に螺合したブラケット52が、中心軸C回りの回転方向に応じて、第1方向の外側または内側(左側または右側)に移動する。すなわち、ブラケット52は、第1方向に移動可能とされる。
【0068】
ブラケット52が第1方向に移動すると、ブラケット52に支柱51を介して接続されたインナーディッケル40が、第1方向に移動する。すなわち、駆動部56の駆動により、塗布液の塗布幅Wが調整される。本実施形態ではインナーディッケル40が、
図1に示す移動範囲M内で第1方向に移動する。移動範囲Mは、例えば、収容溝13内に開口する長孔14の第1方向の長さに相当する。
【0069】
図1および
図2に示すように、シール部材57は、ブラケット52と支柱51との間に設けられ、長孔14の一部を第2方向から覆う。具体的に、シール部材57は、長孔14の底面15への開口部のうち第1方向における一部を、第2方向の手前側(-Y側)から覆っている。シール部材57は、支柱51とブラケット52とに固定されている。シール部材57は、収容溝13に収容される。シール部材57は、収容溝13の底面15に配置される。
【0070】
シール部材57の第1方向の寸法は、収容溝13内に開口する長孔14の第1方向の寸法、すなわち移動範囲Mの寸法よりも大きい。詳しくは、シール部材57が、ブラケット52とともに第1方向の外側の端部まで移動したとき、すなわち、シール部材57の左端部が
図1に示す移動範囲Mの左端部に達したときに、シール部材57の右端部は、長孔14の右端部よりも右側(第1方向の内側)に配置される。このため、長孔14のうち、インナーディッケル40よりも第1方向の内側(
図1においては右側)に位置する部分は、インナーディッケル40の第1方向への調整位置に関わらず、常に、シール部材57によって第2方向の手前側(-Y側)から覆われてシールされる。
【0071】
シール部材57は、パッキン57aと、液漏れ防止プレート57bと、を有する。
パッキン57aは、板状をなしており、一対の板面が第2方向を向く。パッキン57aは、例えば樹脂製である。パッキン57aは、収容溝13の底面15と液密に密着する。パッキン57aは、底面15に対して、第1方向に摺動可能である。本実施形態ではパッキン57aが、収容溝13の底面15上に、第3方向(Z軸方向)の略全長にわたって配置される。
【0072】
液漏れ防止プレート57bは、板状をなしており、一対の板面が第2方向を向く。液漏れ防止プレート57bは、例えば金属製である。液漏れ防止プレート57bは、パッキン57aの手前側(-Y側)に配置される。パッキン57aと液漏れ防止プレート57bとは、第2方向において積層される。液漏れ防止プレート57bの手前側を向く面には、ブラケット52がボルト57cによって固定されている。シール部材57は、ブラケット52とともに第1方向に移動可能である。
【0073】
〔押圧機構〕
図1および
図3に示すように、押圧機構60は、シール部材57を第2方向に向けて押圧する。具体的に、押圧機構60は、シール部材57を底面15および長孔14に向けて、奥側(+Y側)に押圧する。押圧機構60は、シール部材57を長孔14の開口部に押し付けることで、シール部材57によってこの開口部をシールさせる。
【0074】
本実施形態では、押圧機構60が、塗布工具1の第1方向の一方側部分(左側部分)と他方側部分(右側部分)とに、一対設けられる。なお、
図1では、一対の押圧機構60のうち一方(左側)の押圧機構60のみを図示している。
【0075】
図1および
図3に示すように、押圧機構60は、カバー部材61と、固定部材62と、押圧部材63と、を有する。すなわち、塗布工具1は、カバー部材61と、固定部材62と、押圧部材63と、をさらに備える。押圧機構60の各部材は、収容溝13に収容される。このため、第1ヘッド部材11が、カバー部材61と、固定部材62と、押圧部材63と、を有すると言い換えてもよい。
【0076】
カバー部材61は、第2方向と垂直な方向に広がる板状をなしている。カバー部材61は、収容溝13のうち、雄ネジ軸53よりも手前側(-Y側)に配置される。言い換えると、雄ネジ軸53は、その少なくとも一部が、カバー部材61により手前側から覆われる。
【0077】
本実施形態ではカバー部材61が、収容溝13の段差部16に取り付けられる。詳しくは、カバー部材61の第3方向(Z軸方向)の両端部が、一対の段差部16に配置される。カバー部材61の厚さ寸法(第2方向の寸法)は、段差部16の第2方向の寸法と同等かそれ以下である。このため、カバー部材61は、第1ヘッド部材11の手前側を向く第1外側面よりも手前側には突出していない。
【0078】
図1に示すように第2方向から見て、カバー部材61は、シール部材57と重なる。本実施形態では、一対の押圧機構60のうち一方(左側)の押圧機構60と、図示しない他方(右側)の押圧機構60とが、それぞれ、カバー部材61を複数有する。複数のカバー部材61は、第1方向(X軸方向)において、互いに並んで配置される。
【0079】
図1および
図3に示すように、固定部材62は、カバー部材61を第1ヘッド部材11に固定する。固定部材62は、例えばボルト等である。本実施形態では固定部材62が、カバー部材61を第1ヘッド部材11に着脱可能に固定している。固定部材62は、複数設けられる。
【0080】
また、第1ヘッド部材11は、固定部材62が螺合するボルト穴64を有する。ボルト穴64は、段差部16の手前側(-Y側)を向く底面に開口し、第2方向(Y軸方向)に延びる。ボルト穴64は、複数設けられる。複数のボルト穴64は、第1方向(X軸方向)に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では、複数のボルト穴64が、第1方向に等ピッチで配列する。ボルト穴64は、一対の段差部16にそれぞれ設けられる。
【0081】
第1方向に並ぶ複数のボルト穴64の中から所定のボルト穴64を選択し、カバー部材61の挿通孔に挿通した固定部材62を螺着することができる。これにより、カバー部材61の第1方向の固定位置を適宜変更できる。すなわち、本実施形態では、カバー部材61を第1ヘッド部材11に固定する位置が、第1方向において調整可能とされている。
【0082】
押圧部材63は、カバー部材61に設けられ、カバー部材61から第2方向の奥側(+Y側)に向かって突出している。
図3に示すように押圧部材63は、例えば、ボールローラー65である。ボールローラー65は、本体部65aと、ローラー部65bと、を有する。
【0083】
本体部65aは、カバー部材61にネジ止め等により固定されている。本体部65aは、第2方向(Y軸方向)に延びる。ローラー部65bは、本体部65aの先端部すなわち奥側(+Y側)の端部に設けられる。ローラー部65bは、球状をなしている。ローラー部65bは、本体部65aの先端部に回動自在に保持されている。ローラー部65bは、本体部65aの内部に設けられた図示しないバネ等の付勢部材によって、奥側へ向けて付勢されている。ローラー部65bは、シール部材57の液漏れ防止プレート57bに手前側から接触し、シール部材57を奥側へ押圧する。
【0084】
押圧部材63は、複数設けられる。複数の押圧部材63は、第3方向(Z軸方向)に互いに間隔をあけて配置される。また
図1に示すように、複数の押圧部材63は、第1方向(X軸方向)においても互いに間隔をあけて配置される。本実施形態の例では、1つのカバー部材61に、計4つの押圧部材63が設けられる。
【0085】
シール部材57が、ブラケット52とともに第1方向に移動すると、ローラー部65bが回転することで、シール部材57の第1方向への移動は許容されつつ、ローラー部65bがシール部材57を手前側から押さえた状態は維持される。すなわち、押圧部材63は、シール部材57を第1方向に移動可能としつつ第2方向から押さえる。
【0086】
上述のようにカバー部材61の第1方向の取り付け位置を調整することで、押圧機構60は、第1方向の位置を調整可能とされている。押圧機構60は、例えば、ブラケット52およびインナーディッケル40の第1方向の位置調整等に応じて、第1方向の位置を変更可能である。
【0087】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具1では、ブラケット52を長孔14に沿って第1方向(長手方向)に移動させることで、ブラケット52に支柱51を介して接続されるインナーディッケル40、すなわち栓部41およびシム部42を、長手方向に移動させることができる。これにより、塗布工具1を分解することなく、塗布液の塗布幅Wを調整することができる。
【0088】
本実施形態によれば、塗布幅Wを調整するにあたり、従来のようにヘッド部材から塗布幅調整用の部材(直動機構)等を長手方向に出っ張らせる必要性が生じない。このため、塗布工具1の外形寸法を小さく抑えつつ、塗布幅Wを適宜変更することが可能となる。その結果、塗布工具1を図示しない塗布装置に搭載する際の寸法上の制約等が抑えられ、塗布工具1の設置容易性、すなわち汎用性を高めることができる。
【0089】
以上より本実施形態の塗布工具1によれば、塗布幅Wを調整する塗布幅調整機構50を備えつつも、工具の長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。塗布工具1の汎用性を高めたり、操作性を向上できる。
【0090】
また本実施形態では、塗布幅調整機構50が、ブラケット52の雌ネジ孔52aに螺合する雄ネジ軸53と、雄ネジ軸53を中心軸C回りに回転させる駆動部56と、を有する。
この場合、駆動部56によって雄ネジ軸53を中心軸C回りに回転させることで、雄ネジ軸53に螺合するブラケット52が第1方向に移動する。これにより、栓部41およびシム部42の位置を、雄ネジ軸53の回転量によって精度よく調節することができる。塗布幅Wの微調整などが高精度に行え、かつ、調整が容易である。したがって、塗布幅Wをさらに自在かつ精緻にコントロールできる。
【0091】
また本実施形態では、駆動部56が、電動モータ58である。
上記構成のように、駆動部56として電動モータ58を用いることで、より効率的にかつ安定して雄ネジ軸53を回転させることができる。これにより、塗布幅Wの調整をより迅速かつ容易に行える。
【0092】
また本実施形態では、塗布幅調整機構50のブラケット52等が、第1ヘッド部材11の収容溝13に収容されていることから、ブラケット52等が第1ヘッド部材11から第2方向に突出することが抑えられる。このため、塗布工具1の第2方向における寸法を小さく抑えることができる。その結果、塗布工具1を図示しない塗布装置に搭載する際の寸法上の制約等がより抑えられ、塗布工具1の設置の自由度が増す。
【0093】
また本実施形態では、塗布幅調整機構50が、ブラケット52と支柱51との間に設けられ、長孔14の一部を第2方向から覆うシール部材57を有する。
この場合、長孔14の一部がシール部材57によって覆われていることから、長孔14を通した塗布液の漏出を抑制できる。
【0094】
また本実施形態では、塗布工具1が、カバー部材61と、固定部材62と、押圧部材63と、を有しており、つまり塗布工具1が押圧機構60を備える。
この場合、押圧部材63によってシール部材57が第2方向から押さえられた状態で、シール部材57は第1方向に移動可能である。このため、ブラケット52を第1方向に移動させた際に、ブラケット52の位置に関わらず、シール部材57のシール性能を良好に維持することができる。したがって、長孔14からの塗布液の漏出をより安定して抑制できる。
【0095】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0096】
前述の実施形態では、長孔14、インナーディッケル40、塗布幅調整機構50および押圧機構60の組が、塗布工具1の第1方向の一方側部分(左側部分)と他方側部分(右側部分)とに一対設けられる例を挙げて説明したが、これに限らない。前記組は、塗布工具1に1つのみ設けられていてもよい。
【0097】
前述の実施形態では、駆動部56として電動モータ58を用いる例について説明したが、これに限らない。駆動部56は、雄ネジ軸53に連結される図示しない作業用工具であってもよい。この作業用工具は、例えば、雄ネジ軸53の端部に着脱可能に係合される。
上記構成のように、駆動部56として作業用工具を用いることで、塗布工具1の構成が簡素化される。上述した本発明の作用効果が得られつつ、塗布工具1の製造コストやメンテナンスコスト等を削減することができる。
【0098】
またこの場合、オペレーターが、塗布幅Wの調整を手動で行うこととなる。工具の長手方向の両端部の塗布幅をそれぞれ調整するにあたり、従来では、オペレーターが塗布工具の長手方向の一方側と他方側とに移動しなければならなかった(つまり移動距離が長かった)が、本発明によれば、調整のための移動距離が小さく抑えられる。このため、塗布幅調整の操作性が高められる。
【0099】
また、塗布幅調整機構50が、駆動部56および雄ネジ軸53を備えない構成を採用することも可能である。この場合、例えば、オペレーターが手などによりブラケット52の図示しない操作ツマミ等を掴んで、第1方向に延びる図示しない目盛り表示等に合わせ、ブラケット52とともにインナーディッケル40を第1方向に移動させることとしてもよい。
上記構成によれば、塗布幅Wの調整を可能としつつ、塗布工具1の構成がさらに簡素化され、製造コストおよびメンテナンスコストのさらなる削減を図ることができる。
【0100】
前述の実施形態では、マニホールド20が、第2ヘッド部材12の第2内側面12aから奥側(+Y側)に窪み、第1方向に延びる溝状である例を挙げたが、これに限らない。
特に図示しないが、マニホールド20は、第1ヘッド部材11の第1内側面11aから手前側(-Y側)に窪み、第1方向に延びる溝状であってもよい。
あるいは、マニホールド20は、第1ヘッド部材11の第1内側面11aから手前側に窪み第1方向に延びる第1溝部と、第2ヘッド部材12の第2内側面12aから奥側に窪み第1方向に延びる第2溝部と、を有していてもよい。第1溝部と第2溝部とは、第2方向において対向し、互いに連通する。この場合、マニホールド20は、第1方向に延びる円柱状の室(空間)となり、第1方向と垂直な断面の形状が、円形状とされる。また、マニホールド20内に配置される栓部41は、第1方向に延びる円柱状とされる。
【0101】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の塗布工具によれば、塗布幅を調整する機構を備えつつも、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0103】
1…塗布工具
10…ヘッド部材
11…第1ヘッド部材(一方のヘッド部材)
11a…第1内側面(一方のヘッド部材の内面)
12…第2ヘッド部材(他方のヘッド部材)
12a…第2内側面(他方のヘッド部材の内面)
13…収容溝
14…長孔
15…底面
20…マニホールド
21…スロット
40…インナーディッケル
41…栓部
42…シム部
50…塗布幅調整機構
51…支柱
52…ブラケット
52a…雌ネジ孔
53…雄ネジ軸
56…駆動部
57…シール部材
58…電動モータ
60…押圧機構
61…カバー部材
62…固定部材
63…押圧部材
C…雄ネジ軸の中心軸
W…塗布幅