(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144276
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】変圧制御装置及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20231003BHJP
H02M 7/493 20070101ALI20231003BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M7/493
H02M3/155 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051184
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 高見
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD03
5H730EE57
5H730EE58
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD51
5H730FG05
5H730FG12
5H770AA07
5H770BA02
5H770CA01
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA41
(57)【要約】
【課題】回転電機の振動を抑制することが可能な変圧制御装置を提供する。
【解決手段】回転電機に接続された変圧回路の変圧目標値と回転電機の状態量とに基づいて電流指令値を生成する電圧制御部と、電流指令値に基づいて電圧指令値を生成する電流制御部とを少なくとも備え、電圧指令値に基づいて生成した操作量を駆動信号生成回路に出力して変圧回路をフィードバック制御する変圧制御装置であって、変圧回路のリアクトル電流が所定の電流しきい値より小さい電流小動作領域において、電圧制御部の比例電圧ゲインを通常ゲインよりも増大させる第1ゲイン調整部と、回転電機の回転数が特定回転数の場合において、電流制御部の比例電流ゲインを通常ゲインよりも増大させる第2ゲイン調整部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機に接続された変圧回路の変圧目標値と前記回転電機の状態量とに基づいて電流指令値を生成する電圧制御部と、前記電流指令値に基づいて電圧指令値を生成する電流制御部とを少なくとも備え、前記電圧指令値に基づいて生成した操作量を駆動信号生成回路に出力して前記変圧回路をフィードバック制御する変圧制御装置であって、
前記変圧回路のリアクトル電流が所定の電流しきい値より小さい電流小動作領域において、前記電圧制御部の比例電圧ゲインを通常ゲインよりも増大させる第1ゲイン調整部と、
前記回転電機の回転数が特定回転数の場合において、前記電流制御部の比例電流ゲインを通常ゲインよりも増大させる第2ゲイン調整部と
を備える変圧制御装置。
【請求項2】
前記駆動信号生成回路がデッドタイムが設けられた駆動信号を生成する場合、
前記第1ゲイン調整部は、前記電流小動作領域において前記電流制御部の積分電流ゲインを通常ゲインよりも増大させる請求項1に記載の変圧制御装置。
【請求項3】
前記変圧回路は、磁気結合型の多相コンバータである請求項1または2に記載の変圧制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の変圧制御装置と、
該変圧制御装置によって制御される前記変圧回路と、
前記変圧回路とモータとの間に設けられ、前記変圧回路から入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータをに出力する駆動用インバータと、
前記変圧回路と発電機との間に設けられ、前記発電機から入力される交流電力を直流電力に変換して前記変圧回路に出力する発電用インバータと
を備える電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧制御装置及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、インバータを介してモータを駆動する多相コンバータの制御装置(多相コンバータ制御装置)が開示されている。この多相コンバータ制御装置は、リアクトルが互いに磁気結合している複数のコンバータが並列に接続され、入力電圧を昇圧した昇圧電圧を生成する多相コンバータの駆動をPWM制御するものであって、昇圧電圧が目標電圧になるようにフィードバック制御するフィードバック制御部と、フィードバック制御部から出力される電圧指令値に基づいてPWM信号を生成するPWM制御部と、PWM信号に基づいて多相コンバータを駆動する駆動部とを備え、フィードバック制御部は、多相コンバータの昇圧比に基づいてフィードバック制御における制御ゲインを変更することにより、多相コンバータの制御性を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術は、昇圧比に基づいて比例ゲイン及び積分ゲインのいずれか一方あるいは両方を変更するものであり、多相コンバータの制御性を向上させることができるものの、多相コンバータによって駆動されるモータの振動抑制を考慮したものではない。したがって、背景技術は、モータや発電機等、多相コンバータに接続される回転電機の振動を抑制し得るものではない。
【0005】
多相コンバータのような変圧回路を制御する場合、変圧回路の出力電流に変動が生じるとモータの振動を誘発するが、背景技術は、このような変圧回路の出力電流に変動に起因する回転電機の振動を抑制し得るものではない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、回転電機の振動を抑制することが可能な変圧制御装置及び電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、変圧制御装置に係る第1の解決手段として、回転電機に接続された変圧回路の変圧目標値と前記回転電機の状態量とに基づいて電流指令値を生成する電圧制御部と、前記電流指令値に基づいて電圧指令値を生成する電流制御部とを少なくとも備え、前記電圧指令値に基づいて生成した操作量を駆動信号生成回路に出力して前記変圧回路をフィードバック制御する変圧制御装置であって、前記変圧回路のリアクトル電流が所定の電流しきい値より小さい電流小動作領域において、前記電圧制御部の比例電圧ゲインを通常ゲインよりも増大させる第1ゲイン調整部と、前記回転電機の回転数が特定回転数の場合において、前記電流制御部の比例電流ゲインを通常ゲインよりも増大させる第2ゲイン調整部とを備える、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、変圧制御装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記駆動信号生成回路がデッドタイムが設けられた駆動信号を生成する場合、
前記第1ゲイン調整部は、前記電流小動作領域において前記電流制御部の積分電流ゲインを通常ゲインよりも増大させる、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、変圧制御装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記変圧回路は、磁気結合型の多相コンバータである、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、電力変換装置に係る解決手段として、第1~第3のいずれかの解決手段に係る変圧制御装置と、該変圧制御装置によって制御される前記変圧回路と、前記変圧回路とモータとの間に設けられ、前記変圧回路から入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータをに出力する駆動用インバータと、前記変圧回路と発電機との間に設けられ、前記発電機から入力される交流電力を直流電力に変換して前記変圧回路に出力する発電用インバータとを備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転電機の振動を抑制することが可能な変圧制御装置及び電力変換装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態における電力変換装置Aの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態における変圧制御部Bの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態における第1ゲイン調整部14の機能を示す特性図である。
【
図4】本発明の一実施形態における第2ゲイン調整部15の機能を示す特性図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る電力変換装置Aの要部動作(変圧制御部Bの制御動作)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
最初に、
図1を参照して本実施形態における電力変換装置Aの機能構成について説明する。この電力変換装置Aは、図示するように、電池P、走行モータM及び三相発電機Jとの間に設けられ、電池Pの電池電力(直流電力)と走行モータM及び三相発電機Jの交流電力との変換を行う。
【0014】
電力変換装置Aは、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車両に搭載されるPCU(Power Control Unit)であり、電池Pの直流電力に基づく走行モータMの駆動、走行モータMの回生電力(交流電力)の電池Pへの充電、また三相発電機Jの発電電力(交流電力)の電池Pへの充電を行う。
【0015】
このような電力変換装置Aは、図示するように電力変換回路1、ゲートドライバ2及びECU3(Electronic Control Unit)を備えている。また、ゲートドライバ2は、図示するように変圧用ゲート信号生成部2a、駆動用ゲート信号生成部2b及び発電用ゲート信号生成部2cを備えている。さらに、電力変換回路1は、図示するように昇降圧コンバータD1、駆動用インバータD2及び発電用インバータD3を備えている。
【0016】
また、詳細は後述するが、ECU3は、変圧用ゲート信号生成部2aを介して昇降圧コンバータD1を制御する変圧制御部、駆動用ゲート信号生成部2bを介して駆動用インバータD2を制御する駆動制御部を機能構成要素として備える。また、ECU3は、発電用ゲート信号生成部2cを介して発電用インバータD3を制御する発電制御部を機能構成要素として備える。
【0017】
ここで、電力変換装置Aにおいて、変圧用ゲート信号生成部2a、昇降圧コンバータD1及びECU3の変圧制御部は、電池Pと走行モータM及び発電機Jとの間で直流電力と交流電力とを電力変換する変圧装置を構成している。また、変圧用ゲート信号生成部2a及びECU3の変圧制御部は、電力変換回路1の昇降圧コンバータD1を制御する変圧制御装置を構成している。
【0018】
電力変換装置Aは、外部接続用の端子として、一対の電池用端子E1、E2、3つのモータ用端子Fu、Fv、Fw、また3つの発電機用端子Hu、Hv、Hwを備えている。一対の電池用端子E1、E2のうち、第1の電池用端子E1は電池Pのプラス電極に接続され、第2の電池用端子E2は電池Pのマイナス電極に接続されている。
【0019】
3つのモータ用端子Fu、Fv、Fwのうち、第1のモータ用端子Fuは走行モータMのU相端子に接続され、第2のモータ用端子Fvは走行モータMのV相端子に接続され、また第3のモータ用端子Fwは走行モータMのW相端子に接続されている。
【0020】
3つの発電機用端子Hu、Hv、Hwのうち、第1の発電機用端子Huは発電機JのU相端子に接続され、第2の発電機用端子Hvは発電機JのV相端子に接続され、また第3の発電機用端子Hwは発電機JのW相端子に接続されている。
【0021】
電池Pは、上述したようにプラス電極が第1の電池用端子E1に接続され、マイナス電極が第2の電池用端子E2に接続されている。この電池Pは、リチウムイオン電池等の二次電池であり、電力変換装置Aの電力変換回路1に対する直流電力の供給(放電)と電力変換回路1を介した直流電力の充電とを行う。
【0022】
走行モータMは、電力変換装置Aに接続された回転電機である。この走行モータMは、相数が「3」の三相電動機であり、電力変換回路1の負荷である。この走行モータMは、上述したようにU相端子が第1のモータ用端子Fuに接続され、V相端子が第2のモータ用端子Fvに接続され、またW相端子が第3のモータ用端子Fwに接続されている。
【0023】
この走行モータMは、回転軸(駆動軸)が電動車両の車輪に連結されており、当該車輪に回転動力を作用させることにより車輪を回転駆動する。また、この走行モータMは、電動車両の制動時に回生電力(交流電力)を発生させる、この回生電力は、第1のモータ用端子Fu、第2のモータ用端子Fv及び第3のモータ用端子Fwを介して電力変換装置Aに入力され、直流電力に変換されて電池Pに充電される。
【0024】
発電機Jは、電力変換装置Aに接続された回転電機である。この発電機Jは、三相発電機であり、U相端子が第1の発電機用端子Huに接続され、V相端子が第2の発電機用端子Hvに接続され、W相端子が第3の発電機用端子Hwに接続されている。この発電機Jは、電動車両に搭載されたエンジン等の動力源の出力軸に接続されており、発電電力(交流電力)を電力変換回路1に出力する。
【0025】
上記昇降圧コンバータD1は、第1コンデンサ4、トランス5、4つの変圧用IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)6a~6d及び第2コンデンサ7を備えている。駆動用インバータD2は、6つの駆動用IGBT8a~8fを備えている。また、発電用インバータD3は、6つの発電用IGBT9a~9fを備えている。
【0026】
昇降圧コンバータD1は、磁気結合型の多相コンバータである。この磁気結合型の多相コンバータは、磁気結合インターリーブ型チョッパ回路とも呼ばれるものであり、動作位相が異なる2つのチョッパ回路が並列接続されたものである。この昇降圧コンバータD1は、上述したように磁気結合インターリーブ型チョッパ回路であり、昇圧処理と降圧処理とを択一的に行う。
【0027】
上記昇圧処理は、一対の電池用端子E1、E2から入力された電池電力(直流電力)を昇圧して駆動用インバータD2に出力する処理である。降圧処理は、駆動用インバータD2或いは発電用インバータD3から入力される直流電力を降圧して一対の電池用端子E1、E2から電池Pに出力する処理である。すなわち、昇降圧コンバータD1は、電池Pと駆動用インバータD2或いは発電用インバータD3との間で直流電力を双方向に入出力する電力変換回路である。
【0028】
駆動用インバータD2は、走行モータMの相数(3相)に対応して3つ設けられた3つのスイッチングレグを備える。3つのスイッチングレグは、U相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグである。この駆動用インバータD2は、力行動作と回生動作とを択一的に行う電力変換回路である。
【0029】
力行動作は、昇降圧コンバータD1から入力された直流電力を三相交流電力に変換し、3つのモータ用端子Fu、Fv、Fwから走行モータMに出力する動作である。回生動作は、3つのモータ用端子Fu、Fv、Fwに入力された回生電力(交流電力)を直流電力に変換して昇降圧コンバータD1に出力する動作である。このような駆動用インバータD2は、昇降圧コンバータD1と走行モータMとの間で直流電力と三相交流電力とを相互変換する電力回路である。
【0030】
発電用インバータD3は、3つの発電機用端子Hu、Hv、Hwに入力される発電電力(交流電力)を直流電力に変換して昇降圧コンバータD1に出力する電力変換回路である。このような発電用インバータD3は、昇降圧コンバータD1と発電機Jとの間で直流電力と三相交流電力とを相互変換する電力回路である。
【0031】
このような昇降圧コンバータD1、駆動用インバータD2及び発電用インバータD3の各構成についてさらに詳しく説明する。昇降圧コンバータD1において、第1コンデンサ4は、一端が第1の電池用端子E1及びトランス5に接続され、他端が第2の電池用端子E2に接続されている。このような第1コンデンサ4は、両端が昇降圧コンバータD1にの一次側端子である。
【0032】
すなわち、第1コンデンサ4は、電池Pに対して並列接続されており、電池Pから昇降圧コンバータD1に入力される電池電力(直流電力)に含まれる高周波ノイズを除去する。また、第1コンデンサ4は、トランス5から入力される充電電力(直流電力)に含まれるリップルを平滑化する。
【0033】
トランス5は、一次巻線5aと二次巻線5bとを備えている。一次巻線5aの一端及び二次巻線5bの一端は、第1の電池用端子E1及び第1コンデンサ4の一端に接続されている。一次巻線5aの他端は、第1の変圧用IGBT6aのエミッタ端子及び第2の変圧用IGBT6bのコレクタ端子に接続されている。また、二次巻線5bの他端は、第3の変圧用IGBT6cのエミッタ端子及び第4の変圧用IGBT6dのコレクタ端子に接続されている。
【0034】
このような一次巻線5a及び二次巻線5bは、所定の結合係数kで電磁気的に結合した状態でトランス5を構成している。すなわち、一次巻線5aは、自身の巻き数等に応じた第1自己インダクタンスLaを有している。一方、二次巻線5bは、自身の巻き数等に応じた第2自己インダクタンスLbを有している。さらに、一次巻線5a及び二次巻線5bは、上述した第1自己インダクタンスLa、第2自己インダクタンスLb及び結合係数kに基づく相互インダクタンスを有している。
【0035】
4つの変圧用IGBT6a~6dのうち、第1の変圧用IGBT6a及び第2の変圧用IGBT6bは、昇降圧コンバータD1におけるA相変圧用スイッチングレグを構成する半導体スイッチング素子である。また、第3の変圧用IGBT6c及び第4の変圧用IGBT6dは、昇降圧コンバータD1におけるB相スイッチングレグを構成する半導体スイッチング素子である。
【0036】
第1の変圧用IGBT6aは、コレクタ端子が第3の変圧用IGBT6cのコレクタ端子及び第2コンデンサ7の一端に接続されており、エミッタ端子がトランス5の一次巻線5aの他端及び第2の変圧用IGBT6bのコレクタ端子に接続されている。また、第1の変圧用IGBT6aは、ゲート端子がゲートドライバ2の昇降圧コンバータD1用の第1出力端子に接続されている。このような第1の変圧用IGBT6aは、ゲートドライバ2の変圧用ゲート信号生成部2aから入力される第1変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0037】
第2の変圧用IGBT6bは、コレクタ端子がトランス5の一次巻線5aの他端及び第1の変圧用IGBT6aのエミッタ端子に接続され、エミッタ端子が第4の変圧用IGBT6dのエミッタ端子、第1コンデンサ4の他端及び第2コンデンサ7の他端に接続されている。また、第2の変圧用IGBT6bは、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第2出力端子に接続されている。このような第2の変圧用IGBT6bは、ゲートドライバ2の変圧用ゲート信号生成部2aから入力される第2変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0038】
第3の変圧用IGBT6cは、コレクタ端子が第1の変圧用IGBT6aのコレクタ端子及び第2コンデンサ7の一端に接続され、エミッタ端子がトランス5の二次巻線5bの他端及び第4の変圧用IGBT6dのコレクタ端子に接続されている。また、第3の変圧用IGBT6cは、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第3出力端子に接続されている。このような第3の変圧用IGBT6cは、ゲートドライバ2の変圧用ゲート信号生成部2aから入力される第3変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0039】
第4の変圧用IGBT6dは、コレクタ端子がトランス5の二次巻線5bの他端及び第3の変圧用IGBT6cのエミッタ端子に接続され、エミッタ端子が第1の変圧用IGBT6aのエミッタ端子、第1コンデンサ4の他端及び第2コンデンサ7の他端に接続されている。また、第4の変圧用IGBT6dは、ゲート端子がゲートドライバ2における昇降圧コンバータD1用の第4出力端子に接続されている。このような第4の変圧用IGBT6dは、ゲートドライバ2の変圧用ゲート信号生成部2aから入力される第4変圧用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0040】
また、第2コンデンサ7は、一端が第1の変圧用IGBT6aのコレクタ端子及び第3の変圧用IGBT6cのコレクタ端子に接続され、他端が第2の変圧用IGBT6bのエミッタ端子、第4の変圧用IGBT6dのエミッタ端子、第1コンデンサ4の他端及び第2の電池用端子E2に接続されている。このような第2コンデンサ7の両端は、昇降圧コンバータD1における二次側入出力端子である。
【0041】
このような第2コンデンサ7は、上述したA相変圧用スイッチングレグ及びB相変圧用スイッチングレグから入力される昇圧電力(直流電力)に含まれるリップルを平滑化する。また、この第2コンデンサ7は、駆動用インバータD2から入力される回生電力(直流電力)及び発電用インバータD3から入力される充電電力(直流電力)に含まれるリップルを平滑化する。
【0042】
ここで、
図1には示していないが、昇降圧コンバータD1には、昇降圧コンバータD1の状態量を検出する検出器として、一次側電圧センサ、二次側電圧センサ及びリアクトル電流センサが設けられている。一次側電圧センサは、昇降圧コンバータD1の一次側つまり電池P側の一次電圧Vp(直流電圧)を検出する電圧センサであり、一次電圧VpをECU3に出力する。
【0043】
二次側電圧センサは、昇降圧コンバータD1の二次側つまり駆動用インバータD2側(発電用インバータD3側)の二次電圧Vs(直流電圧)を検出する電圧センサであり、二次電圧VsをECU3に出力する。なお、上記二次電圧Vsは、駆動用インバータD2における一次側電圧であり、また発電用インバータD3の二次側における電圧である。
【0044】
また、リアクトル電流センサは、トランス5の一次巻線5aに流れる一次電流と二次巻線5bに流れる二次電流との合計電流をリアクトル電流ILとして検出する電流センサである。このリアクトル電流センサは、リアクトル電流ILを昇降圧コンバータD1の状態量としてECU3に出力する。なお、上記リアクトル電流ILは、昇降圧コンバータD1における一次側から二次側に流れる力行電流あるいは二次側から一次側に流れる回生電流または充電電流に相当する。
【0045】
続いて、駆動用インバータD2について説明する。この駆動用インバータD2は、変圧回路である昇降圧コンバータD1と走行モータMとの間に設けられ、昇降圧コンバータD1(変圧回路)から入力される直流電力を交流電力に変換して走行モータMを駆動するインバータ回路である。
【0046】
この駆動用インバータD2を構成する6つの駆動用IGBT8a~8fのうち、第1の駆動用IGBT8a及び第2の駆動用IGBT8bは、U相駆動用スイッチングレグを構成する半導体スイッチング素子である。また、第3の駆動用IGBT8c及び第4の駆動用IGBT8dは、V相駆動用スイッチングレグを構成する半導体スイッチング素子である。さらに、第5の駆動用IGBT8e及び第6の駆動用IGBT8fは、W相駆動用スイッチングレグを構成する半導体スイッチング素子である。
【0047】
第1の駆動用IGBT8a及び第2の駆動用IGBT8bのうち、第1の駆動用IGBT8aは、コレクタ端子が第3の駆動用IGBT8cのコレクタ端子及び第5の駆動用IGBT8eのコレクタ端子に接続されている。また、第1の駆動用IGBT8aは、エミッタ端子が第2の駆動用IGBT8bのコレクタ端子及び第1のモータ用端子Fuに接続されている。
【0048】
また、第1の駆動用IGBT8aは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第1出力端子に接続されている。このような第1の駆動用IGBT8aは、ゲートドライバ2の駆動用ゲート信号生成部2bから入力される第1駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0049】
第2の駆動用IGBT8bは、コレクタ端子が第1の駆動用IGBT8aのエミッタ端子及び第1のモータ用端子Fuに接続され、エミッタ端子が第4の駆動用IGBT8dのエミッタ端子及び第6の駆動用IGBT8fのエミッタ端子に接続されている。
【0050】
また、第2の駆動用IGBT8bは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第2出力端子に接続されている。このような第2の駆動用IGBT8bは、ゲートドライバ2の駆動用ゲート信号生成部2bから入力される第2駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0051】
第3の駆動用IGBT8cは、コレクタ端子が第1の駆動用IGBT8aのコレクタ端子及び第5の駆動用IGBT8eのコレクタ端子に接続され、エミッタ端子が第4の駆動用IGBT8dのコレクタ端子及び第2のモータ用端子Fvに接続されている。
【0052】
また、第3の駆動用IGBT8cは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第2出力端子に接続されている。このような第3の駆動用IGBT8cは、ゲートドライバ2の駆動用ゲート信号生成部2bから入力される第3駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0053】
第4の駆動用IGBT8dは、コレクタ端子が第3の駆動用IGBT8cのエミッタ端子及び第2のモータ用端子Fvに接続され、エミッタ端子が第2の駆動用IGBT8bのエミッタ端子及び第6の駆動用IGBT8fのエミッタ端子に接続されている。
【0054】
また、この第4の駆動用IGBT8dは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第4出力端子に接続されている。このような第4の駆動用IGBT8dは、ゲートドライバ2の駆動用ゲート信号生成部2bから入力される第4駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0055】
第5の駆動用IGBT8eは、コレクタ端子が第1の駆動用IGBT8aのコレクタ端子及び第3の駆動用IGBT8cのコレクタ端子に接続され、エミッタ端子が第6の駆動用IGBT8fのコレクタ端子及び第3のモータ用端子Fwに接続されている。
【0056】
また、この第5の駆動用IGBT8eは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第5出力端子に接続されている。このような第5の駆動用IGBT8eは、ゲートドライバ2の駆動用ゲート信号生成部2bから入力される第5駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0057】
第6の駆動用IGBT8fは、コレクタ端子が第5の駆動用IGBT8eのエミッタ端子及び第3のモータ用端子Fwに接続され、エミッタ端子が第2の駆動用IGBT8bのエミッタ端子及び第4の駆動用IGBT8dのエミッタ端子に接続されている。
【0058】
また、この第6の駆動用IGBT8fは、ゲート端子がゲートドライバ2における駆動用インバータD2用の第6出力端子に接続されている。このような第6の駆動用IGBT8fは、ゲートドライバ2の駆動用ゲート信号生成部2bから入力される第6駆動用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0059】
このような駆動用インバータD2において、相互に共通接続されたU相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグの両端は、駆動用インバータD2の一次側入出力端子である。また、U相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグにおける3つの中点は、駆動用インバータD2の二次側入出力端子である。
【0060】
すなわち、第1の駆動用IGBT8aのエミッタ端子と第2の駆動用IGBT8bのコレクタ端子との接続点、第3の駆動用IGBT8cのエミッタ端子と第4の駆動用IGBT8dのコレクタ端子との接続点、また第5の駆動用IGBT8eのエミッタ端子と第6の駆動用IGBT8fのコレクタ端子との接続点は、上記中点であり、駆動用インバータD2の二次側入出力端子である。
【0061】
また、駆動用インバータD2の一次側入出力端子の一方つまり第1の駆動用IGBT8aのコレクタ端子、第3の駆動用IGBT8cのコレクタ端子及び第5の駆動用IGBT8eのコレクタ端子は、昇降圧コンバータD1における二次側入出力端子の一方、つまり第2コンデンサ7の一端、第1の変圧用IGBT6aのコレクタ端子及び第3の変圧用IGBT6cのコレクタ端子に接続されている。
【0062】
さらに、駆動用インバータD2の一次側入出力端子の他方つまり第2の駆動用IGBT8bのエミッタ端子、第4の駆動用IGBT8dのエミッタ端子及び第6の駆動用IGBT8fのエミッタ端子は、昇降圧コンバータD1における二次側入出力端子の他方、つまり第1、第2コンデンサ4、7の他端、第2の変圧用IGBT6bのエミッタ端子及び第4の変圧用IGBT6dのエミッタ端子に接続されている。
【0063】
続いて、発電用インバータD3について説明する。この発電用インバータD3は、変圧回路である昇降圧コンバータD1と発電機Jとの間に設けられ、発電機Jから入力される発電電力(交流電力)を直流電力に変換して昇降圧コンバータD1(変圧回路)に出力するインバータ回路である。
【0064】
この発電用インバータD3を構成する6つの発電用IGBT9a~9fのうち、第1の発電用IGBT9a及び第2の発電用IGBT9bは、U相発電用スイッチングレグを構成する半導体スイッチング素子である。また、第3の発電用IGBT9c及び第4の発電用IGBT9dは、V相発電用スイッチングレグを構成する半導体スイッチング素子である。さらに、第5の発電用IGBT9e及び第6の発電用IGBT9fは、W相発電用スイッチングレグを構成する半導体スイッチング素子である。
【0065】
第1の発電用IGBT9a及び第2の発電用IGBT9bのうち、第1の発電用IGBT9aは、コレクタ端子が第3の発電用IGBT9cのコレクタ端子及び第5の発電用IGBT9eのコレクタ端子に接続され、エミッタ端子が第2の発電用IGBT9bのコレクタ端子及び第1の発電機用端子Huに接続されている。
【0066】
また、この第1の発電用IGBT9aは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第1出力端子に接続されている。このような第1の発電用IGBT9aは、ゲートドライバ2の発電用ゲート信号生成部2cから入力される第1発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0067】
第2の発電用IGBT9bは、コレクタ端子が第1の発電用IGBT9aのエミッタ端子及び第1の発電機用端子Huに接続され、エミッタ端子が第4の発電用IGBT9dのエミッタ端子及び第6の発電用IGBT9fのエミッタ端子に接続されている。また、この第2の発電用IGBT9bは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第2出力端子に接続されている。このような第2の発電用IGBT9bは、ゲートドライバ2の発電用ゲート信号生成部2cから入力される第2発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0068】
第3の発電用IGBT9cは、コレクタ端子が第1の発電用IGBT9aのコレクタ端子及び第5の発電用IGBT9eのコレクタ端子に接続され、エミッタ端子が第4の発電用IGBT9dのコレクタ端子及び第2の発電機用端子Hvに接続されている。また、この第3の発電用IGBT9cは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第3出力端子に接続されている。このような第3の発電用IGBT9cは、ゲートドライバ2の発電用ゲート信号生成部2cから入力される第3発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0069】
第4の発電用IGBT9dは、コレクタ端子が第3の発電用IGBT9cのエミッタ端子及び第2の発電機用端子Hvに接続され、エミッタ端子が第2の発電用IGBT9bのエミッタ端子及び第6の発電用IGBT9fのエミッタ端子に接続されている。また、この第4の発電用IGBT9dは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第4出力端子に接続されている。このような第4の発電用IGBT9dは、ゲートドライバ2の発電用ゲート信号生成部2cから入力される第4発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0070】
第5の発電用IGBT9eは、コレクタ端子が第1の発電用IGBT9aのコレクタ端子及び第3の発電用IGBT9cのコレクタ端子に接続され、エミッタ端子が第6の発電用IGBT9fのコレクタ端子及び第3の発電機用端子Hwに接続されている。また、この第5の発電用IGBT9eは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第5出力端子に接続されている。このような第5の発電用IGBT9eは、ゲートドライバ2の発電用ゲート信号生成部2cから入力される第5発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0071】
第6の発電用IGBT9fは、コレクタ端子が第5の発電用IGBT9eのエミッタ端子及び第3の発電機用端子Hwに接続され、エミッタ端子が第2の発電用IGBT9bのエミッタ端子及び第4の発電用IGBT9dのエミッタ端子に接続されている。また、この第6の発電用IGBT9fは、ゲート端子がゲートドライバ2における発電用インバータD3用の第6出力端子に接続されている。このような第6の発電用IGBT9fは、ゲートドライバ2の発電用ゲート信号生成部2cから入力される第6発電用ゲート信号に基づいてON/OFF動作が制御される。
【0072】
このような発電用インバータD3において、U相発電用スイッチングレグ、V相発電用スイッチングレグ及びW相発電用スイッチングレグにおける3つの中点は、発電用インバータD3の一次側入出力端子である。すなわち、第1の発電用IGBT9aのエミッタ端子と第2の発電用IGBT9bのコレクタ端子との接続点、第3の発電用IGBT9cのエミッタ端子と第4の発電用IGBT9dのコレクタ端子との接続点及び第5の発電用IGBT9eのエミッタ端子と第6の発電用IGBT9fのコレクタ端子との接続点は、上記中点であり、発電用インバータD3の一次側入出力端子である。
【0073】
このような発電用インバータD3における3つの一次側入出力端子のうち、U相発電用スイッチングレグの中点(第1の一次側入出力端子)は、電力変換装置Aにおける第1の発電機用端子Huに接続されている。また、V相発電用スイッチングレグの中点(第2の一次側入出力端子)は、電力変換装置Aにおける第2の発電機用端子Hvに接続されている。さらに、W相発電用スイッチングレグのの中点(第3の一次側入出力端子)は、電力変換装置Aにおける第3の発電機用端子Hvに接続されている。
【0074】
また、この発電用インバータD3において相互に並列接続されたU相発電用スイッチングレグ、V相発電用スイッチングレグ及びW相発電用スイッチングレグの両端は、発電用インバータD3における二次側入出力端子である。すなわち、第1の発電用IGBT9aのコレクタ端子、第3の発電用IGBT9cのコレクタ端子及び第5の発電用IGBT9eのコレクタ端子と第2の発電用IGBT9bのエミッタ端子、第4の発電用IGBT9dのエミッタ端子及び第6の発電用IGBT9fのエミッタ端子は、上記二次側入出力端子である。
【0075】
このような発電用インバータD3の二次側入出力端子は、図示するように、昇降圧コンバータD1の二次側入出力端子及び駆動用インバータD2の一次側入出力端子に接続されている。すなわち、発電用インバータD3は、昇降圧コンバータD1との間で直流電力の入出力を行う。
【0076】
ここで、昇降圧コンバータD1の変圧用IGBT6a~6d、駆動用インバータD2の駆動用IGBT8a~8f及び発電用インバータD3の発電用IGBT9a~9fは、各々に還流ダイオードを備えている。これら還流ダイオードは、各々のIGBTについて、カソード端子がコレクタ端子に接続され、またアノード端子がエミッタ端子に接続されている。このような還流ダイオードは、IGBTがOFF状態の時にアノード端子からカソード端子に還流電流を流すためのものである。
【0077】
続いて、ゲートドライバ2について説明する。このゲートドライバ2は、ECU3から入力される複数のDuty指令値(変圧用Duty操作量、駆動用Duty操作量及び発電用Duty操作量)に基づいて、昇降圧コンバータD1、駆動用インバータD2及び発電用インバータD3を駆動する。
【0078】
すなわち、変圧用ゲート信号生成部2aは、昇降圧コンバータD1の駆動回路であり、ECU3から入力される各種変圧用操作量に基づいて第1~第4変圧用ゲート信号を生成する駆動信号生成回路である。この変圧用ゲート信号生成部2aは、例えば変圧用Duty操作量を変圧用キャリア周波数に相当する周期の搬送波(三角波)と比較することにより、変圧用キャリア周波数及び変圧用Duty操作量に応じた繰返し周波数(繰返し周期)及びデューティ比を有するPWM(Pulse Width Modulation)信号を第1~第4変圧用ゲート信号として生成する。
【0079】
この変圧用ゲート信号生成部2aは、第1変圧用ゲート信号を昇降圧コンバータD1用の第1出力端子から第1変圧用IGBT6aのゲート端子に出力する。また、変圧用ゲート信号生成部2aは、第2変圧用ゲート信号を昇降圧コンバータD1用の第2出力端子から第2変圧用IGBT6bのゲート端子に出力する。また、変圧用ゲート信号生成部2aは、第3変圧用ゲート信号を昇降圧コンバータD1用の第3出力端子から第3変圧用IGBT6cのゲート端子に出力する。さらに、変圧用ゲート信号生成部2aは、第4変圧用ゲート信号を昇降圧コンバータD1用の第4出力端子から第4変圧用IGBT6dのゲート端子に出力する。
【0080】
駆動用ゲート信号生成部2bは、駆動用インバータD2の駆動回路であり、ECU3から入力される駆動用Duty操作量に基づいて第1~第6駆動用ゲート信号を生成する駆動信号生成回路である。この駆動用ゲート信号生成部2bは、例えば駆動用Duty操作量を駆動用キャリア周波数に相当する周期の搬送波(三角波)と比較することにより、駆動用キャリア周波数及び駆動用Duty操作量に応じた繰返し周波数(繰返し周期)及びデューティ比を有するPWM信号を第1~第6駆動用ゲート信号として生成する。
【0081】
この駆動用ゲート信号生成部2bは、第1駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2用の第1出力端子から第1駆動用IGBT8aのゲート端子に出力する。また、駆動用ゲート信号生成部2bは、第2駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2用の第2出力端子から第2駆動用IGBT8bのゲート端子に出力する。また、駆動用ゲート信号生成部2bは、第3駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2用の第3出力端子から第3駆動用IGBT8cのゲート端子に出力する。
【0082】
また、駆動用ゲート信号生成部2bは、第4駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2用の第4出力端子から第4駆動用IGBT8dのゲート端子に出力する。また、駆動用ゲート信号生成部2bは、第5駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2用の第5出力端子から第5駆動用IGBT8eのゲート端子に出力する。さらに、駆動用ゲート信号生成部2bは、第6駆動用ゲート信号を駆動用インバータD2用の第6出力端子から第6駆動用IGBT8fのゲート端子に出力する。
【0083】
発電用ゲート信号生成部2cは、発電用インバータD3の駆動回路であり、ECU3から入力される発電用Duty操作量に基づいて第1~第6発電用ゲート信号生成する駆動信号生成回路である。この発電用ゲート信号生成部2cは、例えば発電用Duty操作量を発電用キャリア周波数に相当する周期の搬送波(三角波)と比較することにより、発電用キャリア周波数及び発電用Duty操作量に応じた繰返し周波数(繰返し周期)及びデューティ比を有するPWM信号を第1~第6発電用ゲート信号として生成する。
【0084】
この発電用ゲート信号生成部2cは、第1発電用ゲート信号を発電用インバータD3用の第1出力端子から第1発電用IGBT9aのゲート端子に出力する。また、発電用ゲート信号生成部2cは、第2発電用ゲート信号を発電用インバータD3用の第2出力端子から第2発電用IGBT9bのゲート端子に出力する。また、発電用ゲート信号生成部2cは、第3発電用ゲート信号を発電用インバータD3用の第3出力端子から第3発電用IGBT9cのゲート端子に出力する。
【0085】
また、発電用ゲート信号生成部2cは、第4発電用ゲート信号を発電用インバータD3用の第4出力端子から第4発電用IGBT9dのゲート端子に出力する。また、発電用ゲート信号生成部2cは、第5発電用ゲート信号を発電用インバータD3用の第5出力端子から第5発電用IGBT9eのゲート端子に出力する。さらに、発電用ゲート信号生成部2cは、第6発電用ゲート信号を発電用インバータD3用の第6出力端子から第6発電用IGBT9fのゲート端子に出力する。
【0086】
ここで、変圧用ゲート信号生成部2aが生成する第1~第4変圧用ゲート信号は、昇降圧コンバータD1のA相変圧用スイッチングレグ及びB相スイッチングレグにおける貫通電流を回避するために、周知のデッドタイムが設けられた駆動信号である。
【0087】
また、駆動用ゲート信号生成部2bが生成する第1~第6駆動用ゲート信号は、U相駆動用スイッチングレグ、V相駆動用スイッチングレグ及びW相駆動用スイッチングレグにおける貫通電流を回避するために、周知のデッドタイムが設けられた駆動信号である。
【0088】
さらに、発電用ゲート信号生成部2cが生成する第1~第6発電用ゲート信号は、U相発電用スイッチングレグ、V相発電用スイッチングレグ及びW相発電用スイッチングレグにおける貫通電流を回避するために、周知のデッドタイムが設けられた駆動信号である。
【0089】
ECU3は、上述した各種電圧センサの検出値(電圧検出値)、各種電流センサの検出値(電流検出値)、上位制御装置(車両制御装置)から入力される制御指令及び予め記憶された制御プログラムに基づいて昇降圧コンバータD1、駆動用インバータD2及び発電用インバータD3をフィードバック制御する制御装置である。
【0090】
すなわち、このECU3は、制御プログラム(ソフトウエア資源)と演算回路及び記憶回路及び各種入出力回路等のハードウエア資源と協働によって、昇降圧コンバータD1、駆動用インバータD2及び発電用インバータD3をフィードバック制御するソフトウエア制御装置である。
【0091】
このようなECU3は、ソフトウエア資源とハードウエア資源と協働によって構成される複数の機能構成要素を備える。すなわち、ECU3は、変圧用Duty指令値を生成する昇降圧コンバータD1用の変圧制御部、駆動用Duty指令値を生成する駆動用インバータD2用の駆動制御部及び発電用Duty指令値を生成する発電用インバータD3用の発電制御部を上記機能構成要素として備える。
【0092】
ECU3は、上記変圧制御部が生成した変圧用Duty指令値をゲートドライバ2の変圧用ゲート信号生成部2aに出力することにより第1~第4変圧用ゲート信号を生成させる。また、ECU3は、上記駆動制御部が生成した駆動用Duty指令値をゲートドライバ2の駆動用ゲート信号生成部2bに出力することにより、第1~第6駆動用ゲート信号を生成させる。さらに、ECU3は、上記発電制御部が生成した発電用Duty指令値をゲートドライバ2の発電用ゲート信号生成部2cに出力することにより、第1~第6発電用ゲート信号を生成させる。
【0093】
続いて、
図2を参照してECU3における変圧制御部Bの詳細構成(制御構成)について説明する。この変圧制御部Bは、本実施形態に係る電力変換装置Aの特徴的な機能構成要素であり、変圧用ゲート信号生成部2aとともに変圧制御装置を構成している。
【0094】
すなわち、本実施形態に係る変圧制御装置は、変圧制御部B及び変圧用ゲート信号生成部2aによって構成されており、変圧回路である昇降圧コンバータD1を制御する。なお、ECU3において、変圧制御部B以外の駆動制御部及び発電制御部は、周知のものと同程度のものであり、詳細構成(制御構成)の説明を省略する。
【0095】
この変圧制御部Bは、
図2に示すように目標値設定部10、電圧制御部11、電流制御部12、Duty制御部13、第1ゲイン調整部14、第2ゲイン調整部15、第1乗算器16、第2乗算器17及びキャリア周波数設定部18を備える。
【0096】
目標値設定部10は、外部から入力される制御指令X0に基づいて二次側電圧指令値X1を生成する機能構成要素である。この二次側電圧指令値X1は、昇降圧コンバータD1の二次電圧Vsの目標値(変圧目標値)である。すなわち、二次側電圧指令値X1は、昇降圧コンバータD1の変圧比hつまり一次電圧Vpに対する二次電圧Vsの比率を指定する値である。
【0097】
目標値設定部10は、このような二次側電圧指令値X1を電圧制御部11に出力する。なお、上記制御指令X0は、上位制御装置(車両制御装置)から入力される制御指令である。また、一次電圧Vpは、昇降圧コンバータD1の一次側(電池P側)に設けられた一次側電圧センサの検出値であり、二次電圧Vsは、昇降圧コンバータD1の二次側(駆動用インバータD2側)に設けられた二次側電圧センサの検出値である。
【0098】
電圧制御部11は、上記二次側電圧指令値X1及び二次電圧Vsに基づいてリアクトル電流指令値X2を演算する機能構成要素である。この電圧制御部11は、周知のPI制御器である。より具体的には、電圧制御部11は、比例リアクトル電流指令値を生成する比例電圧制御部と積分リアクトル電流指令値を生成する積分電圧制御部とを備えている。比例電圧制御部は、電圧指令値X1と二次電圧Vsとの差分に比例電圧ゲインを乗算することにより比例リアクトル電流指令値を生成する。
【0099】
また、積分電圧制御部は、電圧指令値X1と二次電圧Vsとの差分に積分電圧ゲインを乗算するとともに積分処理することにより積分リアクトル電流指令値を生成する。上記リアクトル電流指令値X2は、比例リアクトル電流指令値と積分リアクトル電流指令値との合算値である。電圧制御部11は、このように生成したリアクトル電流指令値X2を電流制御部12に出力する。
【0100】
電流制御部12は、上記リアクトル電流指令値X2及びリアクトル電流ILに基づいてリアクトル電圧指令値X3を演算する機能構成要素である。なお、上記リアクトル電流ILは、上述したように昇降圧コンバータD1に付帯的に設けられたリアクトル電流センサの検出値である。
【0101】
この電流制御部12は、上述した電圧制御部11と同様に周知のPID制御器である。すなわち、電流制御部12は、比例リアクトル電圧指令値を生成する比例電流制御部と積分リアクトル電圧指令値を生成する積分電流制御部とを備えている。比例電流制御部は、電流指令値X2とリアクトル電流ILとの差分に比例電流ゲインを乗算することにより比例リアクトル電圧指令値を生成する。
【0102】
また、積分電流制御部は、電流指令値X2とリアクトル電流ILとの差分に積分電流ゲインを乗算するとともに積分処理することにより積分リアクトル電圧指令値を生成する。上記リアクトル電圧指令値X3は、比例リアクトル電圧指令値と積分リアクトル電圧指令値との合算値である。電流制御部12は、このように生成したリアクトル電圧指令値X3をDuty制御部13に出力する。
【0103】
Duty制御部13は、上記リアクトル電圧指令値X3に基づいてA相変圧用スイッチングレグ用のA相Duty指令値X4及びB相変圧用スイッチングレグ用のB相Duty指令値X5を演算する機能構成要素である。このDuty制御部13は、A相Duty指令値X4及びB相Duty指令値X5をゲートドライバ2の変圧用ゲート信号生成部2aに出力する。
【0104】
ここで、昇降圧コンバータD1は、上述したようにA相変圧用スイッチングレグとB相スイッチングレグとを備える。A相変圧用スイッチングレグとB相スイッチングレグとは、位相関係が180°異なる第1、第2変圧用ゲート信号と第3、第4変圧用ゲート信号とによって制御される。
【0105】
Duty制御部13は、このような昇降圧コンバータD1の2相構成に対応するために、A相Duty指令値X4とB相Duty指令値X5とを生成する。すなわち、A相Duty指令値X4は、A相変圧用スイッチングレグを制御する第1変圧用ゲート信号及び第2変圧用ゲート信号のデューティ比を指定する操作量である。また、B相Duty指令値X5は、B相変圧用スイッチングレグを制御する第3変圧用ゲート信号及び第4変圧用ゲート信号のデューティ比を指定する操作量である。
【0106】
第1ゲイン調整部14は、リアクトル電流ILに基づいて第1~第4ゲイン指示信号X6~X9を生成する機能構成要素である。第1~第4ゲイン指示信号X6~X9は、電圧制御部11及び電流制御部12の各制御ゲインを指示する指示信号である。この第1ゲイン調整部14は、第1ゲイン指示信号X6を第1乗算器16に出力し、第2ゲイン指示信号X7を電圧制御部11に出力し、第3ゲイン指示信号X8を第2乗算器17に出力し、第4ゲイン指示信号X9を電流制御部12に出力する。
【0107】
この第1ゲイン調整部14は、リアクトル電流ILが所定の電流しきい値より小さい電流小動作領域Rにおいて、電圧制御部11の比例電圧ゲイン及び電流制御部12の積分電流ゲインを通常領域Qのゲイン(通常ゲイン)よりも増大させるように第1ゲイン指示信号X6及び第4ゲイン指示信号X9を生成する。
【0108】
また、第1ゲイン調整部14は、電圧制御部11の積分電圧ゲイン及び電流制御部12の比例電流ゲインがリアクトル電流ILの大小に依らず通常ゲインを維持するように第2ゲイン指示信号X7及び第3ゲイン指示信号X8を生成する。
【0109】
すなわち、第1ゲイン指示信号X6は、通常領域Qにおいて「1」を係数として示す信号であり、電流小動作領域Rでは「1」より大きな係数(比例電圧調整係数KVP)を示す信号である。また、第4ゲイン指示信号X9は、通常領域Qにおいて「1」を係数として示す信号であり、電流小動作領域Rでは「1」より大きな係数(積分電流調整係数KID)を示す信号である。さらに、第2ゲイン指示信号X7及び第3ゲイン指示信号X8は、通常領域Q及び電流小動作領域Rのいずれにおいても、係数として「1」を示す信号である。
【0110】
なお、上記電流小動作領域Rは、走行モータMあるいは発電機Jに比較的小さな駆動電流あるいは発電電流が流れる走行モータMあるいは発電機Jの動作領域である。このような電流小動作領域Rでは、昇降圧コンバータD1のリアクトル電流ILの変動に起因して、走行モータMあるいは発電機Jが振動し易い。
【0111】
この第1ゲイン調整部14は、具体的には
図3に示すように電圧制御部11の比例電圧ゲイン及び電流制御部12の比例電流ゲインを可変設定する。この
図3において、(a)はリアクトル電流I
Lに基づく電圧制御部11の比例電圧ゲインG
VPの変化を示し、(b)はリアクトル電流I
Lに基づく電圧制御部11の積分電圧ゲインG
VDの変化を示している。また、
図3において、(c)はリアクトル電流I
Lに基づく電流制御部12の比例電流ゲインG
IPの変化を示し、(d)はリアクトル電流I
Lに基づく電流制御部12の積分電流ゲインG
IDの変化を示している。
【0112】
すなわち、第1ゲイン調整部14は、
図3(a)に示すように、電流小動作領域Rの比例電圧ゲインG
VPを通常領域Qの比例電圧ゲインG
VPよりも大きく設定する。また、電流小動作領域Rと通常領域Qとの間にはゲイン移行領域Tが設定されている。第1ゲイン調整部14は、このゲイン移行領域Tにおいて比例電圧ゲインG
VPをステップ状に変化させるのではなく緩やかに変化させる。
【0113】
また、第1ゲイン調整部14は、
図3(b)に示すように、積分電圧ゲインG
VDについては、電流小動作領域R、ゲイン移行領域T及び通常領域Qにおいて一定値に設定する。また、第1ゲイン調整部14は、
図3(c)に示すように、比例電流ゲインG
IPについても、電流小動作領域R、ゲイン移行領域T及び通常領域Qにおいて一定値に設定する。
【0114】
さらに、第1ゲイン調整部14は、
図3(d)に示すように、電流小動作領域Rの積分電流ゲインG
IDを通常領域Qの積分電流ゲインG
IDよりも大きく設定する。また、第1ゲイン調整部14は、ゲイン移行領域Tにおいて積分電流ゲインG
IDをステップ状に変化させるのではなく緩やかに変化させる。
【0115】
第2ゲイン調整部15は、走行モータMのモータ回転数Ntrc、発電機Jの発電機回転数Ngen、一次側電圧センサの一次電圧Vp及び二次側電圧センサの二次電圧Vsに基づいて第5、第6ゲイン指示信号X10,X11を生成する機能構成要素である。第5ゲイン指示信号X10は、電圧制御部11の比例電圧ゲインGVPを指示する指示信号であり、第6ゲイン指示信号X11は、電流制御部12の比例電流ゲインGIPを指示する指示信号である。第2ゲイン調整部15は、第5ゲイン指示信号X10を第1乗算器16に出力し、第6ゲイン指示信号X11を第2乗算器17に出力する。
【0116】
第2ゲイン調整部15は、
図4(a)に示すように、モータ回転数Ntrcあるいは電機回転数Ngenの如何に関わらず比例電圧ゲインG
VPが通常ゲインを維持するように第5ゲイン指示信号X10を生成する。また、第2ゲイン調整部15は、
図4(b)に示すように、モータ回転数Ntrcあるいは電機回転数Ngenが特定回転数N
Rにおける電流制御部12の比例電流ゲインG
IPを特定回転数N
R以外の周波数におけるゲイン(通常ゲイン)よりも増大させるように第6ゲイン指示信号X11を生成する。
【0117】
すなわち、第6ゲイン指示信号X11は、特定回転数NRでは「1」を超える係数(比例電流調整係数KIP)を示す信号であり、特定回転数NR以外では係数として「1」を示す信号である。なお、第5ゲイン指示信号X10は、特定回転数NRにおける電圧制御部11の比例電圧ゲインGVPをモータ回転数Ntrcあるいは電機回転数Ngenに応じて調整するものではなく、モータ回転数Ntrcあるいは電機回転数Ngenの如何に関わらず常に「1」を係数として示す信号である。
【0118】
ここで、第2ゲイン調整部15には、図示するように一次電圧Vp及び二次電圧Vsが入力されている。第2ゲイン調整部15は、これら一次電圧Vp及び二次電圧Vsに基づいて昇降圧コンバータD1の変圧比hを取得し、この変圧比hに応じて特定回転数NRにおける比例電流調整係数KIPを調整する。
【0119】
第1乗算器16は、第1ゲイン指示信号X6と第5ゲイン指示信号X10とを乗算する機能構成要素である。この第1乗算器16は、第1ゲイン指示信号X6と第5ゲイン指示信号X10との乗算結果である第7ゲイン指示信号X12を電圧制御部11に出力する。すなわち、第7ゲイン指示信号X12が示す比例電圧ゲインは、第1ゲイン指示信号X6が示す比例電圧ゲインと第5ゲイン指示信号X10が示す比例電圧ゲインとの乗算値である。
【0120】
第2乗算器17は、第3ゲイン指示信号X8と第6ゲイン指示信号X11とを乗算する機能構成要素である。この第2乗算器17は、第3ゲイン指示信号X8と第6ゲイン指示信号X11との乗算結果である第8ゲイン指示信号X13を電流制御部12に出力する。すなわち、第8ゲイン指示信号X13が示す比例電流ゲインは、第3ゲイン指示信号X8が示す比例電流ゲインと第6ゲイン指示信号X11が示す比例電流ゲインとの乗算値である。
【0121】
キャリア周波数設定部18は、一次電圧Vp、二次電圧Vs及びリアクトル電流ILに基づいて第1~第4変圧用ゲート信号のキャリア周波数fcを設定する機能構成要素である。キャリア周波数設定部18は、キャリア周波数fcを示す周波数指定信号X16をゲートドライバ2の変圧用ゲート信号生成部2aに出力する。キャリア周波数fcは、変圧用ゲート信号生成部2aが第1~第4変圧用ゲート信号を生成する際に用いる三角波信号の繰返し周波数である。
【0122】
次に、本実施形態に係る電力変換装置Aの要部動作つまり変圧制御部Bの制御動作について、
図5のフローチャートに沿って説明する。
【0123】
変圧制御部Bでは、最初にキャリア周波数設定部18が一次電圧Vp、二次電圧Vs及びリアクトル電流ILを取得することにより周波数指定信号X16を生成する(ステップS1)。キャリア周波数設定部18は、次電圧Vp、二次電圧Vs及びリアクトル電流ILを用いてキャリアマップ(制御マップ)を検索することによりキャリア周波数fcを設定し、当該キャリア周波数fcを示す周波数指定信号X16をゲートドライバ2の変圧用ゲート信号生成部2aに出力される。
【0124】
一方、変圧制御部Bでは、目標値設定部10が外部から制御指令X0を取り込むことにより二次側電圧指令値X1を設定する(ステップS2)。この二次側電圧指令値X1は、目標値設定部10から電圧制御部11に出力される。
【0125】
また、変圧制御部Bでは、第1ゲイン調整部14がリアクトル電流ILを取り込むことによって第1~第4ゲイン指示信号X6~X9を生成する(ステップS3)。そして、第1ゲイン指示信号X6は第1ゲイン調整部14から第1乗算器16に出力され、第2ゲイン指示信号X7は第1ゲイン調整部14から電圧制御部11に出力され、第3ゲイン指示信号X8は第1ゲイン調整部14から第2乗算器17に出力され、第4ゲイン指示信号X9は第1ゲイン調整部14から電流制御部12に出力される。
【0126】
また、この変圧制御部Bでは、第2ゲイン調整部15がモータ回転数Ntrc、発電機回転数Ngen、一次電圧Vp及び二次電圧Vsを取り込むことにより第5、第6ゲイン指示信号X10,X11を生成する(ステップS4)。そして、第5ゲイン指示信号X10は第2ゲイン調整部15から第1乗算器16に出力され、第6ゲイン指示信号X11は第2ゲイン調整部15から第2乗算器17に出力される。
【0127】
そして、この変圧制御部Bでは、第1乗算器16が第1ゲイン指示信号X6及び第5ゲイン指示信号X10を取り込むことにより第7ゲイン指示信号X12を生成し、また第2乗算器17が第2ゲイン指示信号X6及び第6ゲイン指示信号X11を取り込むことにより第8ゲイン指示信号X13を生成する(ステップS5)。そして、第7ゲイン指示信号X12は第1乗算器16から電圧制御部11に出力され、第8ゲイン指示信号X13は第2乗算器17から電流制御部12に出力される。
【0128】
そして、変圧制御部Bでは、電圧制御部11が二次側電圧指令値X1、二次側電圧Vs、第2ゲイン指示信号X7及び第7ゲイン指示信号X12を取り込むことによりリアクトル電流指令値X2を設定する(ステップS6)。そして、このリアクトル電流指令値X2は、電圧制御部11から電流制御部12に出力される。
【0129】
そして、変圧制御部Bでは、電流制御部12がリアクトル電流指令値X2、リアクトル電流IL、第4ゲイン指示信号X9及び第8ゲイン指示信号X13を取り込むことによりDuty指令値X3を設定する(ステップS7)。そして、このDuty指令値X3は、電流制御部12からDuty制御部13に出力される。
【0130】
そして、変圧制御部Bでは、Duty制御部13がDuty指令値X3を取り込むことによりA相Duty操作量X4及びB相Duty操作量X5を生成する(ステップS8)。そして、B相Duty操作量X5及びB相Duty操作量X5は、Duty制御部13からゲートドライバ2の変圧用ゲート信号生成部2aに出力される。
【0131】
そして、変圧用ゲート信号生成部2aは、変圧制御部BからA相Duty操作量X4、B相Duty操作量X5及び周波数指定信号X16を取り込むことにより第1~第4変圧用ゲート信号を生成する(ステップS9)。そして、第1~第4変圧用ゲート信号が変圧用ゲート信号生成部2aから昇降圧コンバータD1に出力されることによって昇降圧コンバータD1が所望の昇降圧動作を行う。
【0132】
本実施形態によれば、第1ゲイン調整部14によってリアクトル電流ILが所定の電流しきい値より小さい電流小動作領域Rにおいて、電圧制御部11の比例電圧ゲインが通常領域Qのゲイン(通常ゲイン)よりも増大される。このような本実施形態によれば、リアクトル電流ILの電流リップルが抑制されるので、走行モータMあるいは発電機Jの振動を抑制することが可能である。したがって、本実施形態によれば、走行モータMあるいは発電機Jの振動を抑制することが可能な変圧制御装置及び変圧装置を提供することが可能である。
【0133】
また、本実施形態によれば、第1ゲイン調整部14によってリアクトル電流ILが所定の電流しきい値より小さい電流小動作領域Rにおいて、電流制御部12の積分電流ゲインが通常領域Qのゲイン(通常ゲイン)よりも増大される。このような本実施形態によれば、第1~第4変圧用ゲート信号のデッドタイムに起因する二次電圧Vsの跳ね上がりを抑制することが可能である。したがって、本実施形態によれば、走行モータMあるいは発電機Jの振動を抑制することが可能な変圧制御装置を提供することが可能である。
【0134】
さらに、本実施形態によれば、第2ゲイン調整部15によってモータ回転数Ntrcあるいは電機回転数Ngenが特定回転数NRの場合において、電圧制御部11の比例電圧ゲインGVPが第1ゲイン調整部14よりもさらに増大されるとともに、電流制御部12の比例電流ゲインGIPが通常ゲインよりも増大される。このような本実施形態によれば、特定回転数NRにおける走行モータMあるいは発電機Jの振動を抑制することが可能である。
【0135】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、昇降圧コンバータD1つまりA相及びB相の二相構成の磁気結合インターリーブ型チョッパ回路について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、三相以上の構成を備える磁気結合インターリーブ型チョッパ回路にも適用することが可能である。
【0136】
(2)上記実施形態では、第1ゲイン調整部14と第2ゲイン調整部15とを設けたが、必要に応じて第2ゲイン調整部15を省略してもよい。すなわち、第1ゲイン調整部14によって電流小動作領域Rにおける電圧制御部11の比例電圧ゲインGVP及び電流制御部12の積分電流ゲインGIDを通常領域Qのゲイン(通常ゲイン)よりも増大させるのみとしてもよい。
【0137】
(3)上記実施形態では、第2乗算器17に加えて第1乗算器16を備えているので、構成的には特定回転数NRにおける比例電流ゲインGIPを他の周波数のゲインよりも増大させることに加えて、比例電圧ゲインGVPを他の周波数のゲインよりも増大させることが可能であるが、比例電流ゲインGIPのみを他の周波数のゲインよりも増大させている。しかしながら、比例電圧ゲインGVPを他の周波数のゲインよりも増大させるように第5ゲイン指示信号X10を生成してもよい。
【0138】
(4)上記実施形態では、半導体スイッチング素子としてIGBTを用いた電力変換回路1について説明したが、本発明はこれに限定されない。半導体スイッチング素子として、例えばMOSFETを採用してもよい。
【符号の説明】
【0139】
A 電力変換装置
B 変圧制御部
D1 昇降圧コンバータ(変圧回路、磁気結合インターリーブ型チョッパ回路)
D2 駆動用インバータ
D3 発電用インバータ
E1、E2 電池用端子
Fu、Fv、Fw モータ用端子
J 発電機(回転電機)
Hu、Hv、Hw 発電機用端子
P 電池
M 走行モータ(回転電機)
1 電力変換回路
2 ゲートドライバ
2a 変圧用ゲート信号生成部(駆動信号生成回路)
2b 駆動用ゲート信号生成部
2c 発電用ゲート信号生成部
3 ECU(Electronic Control Unit)
4 第1コンデンサ
5 トランス
5a 一次巻線
5b 二次巻線
6a~6d 変圧用IGBT
7 第2コンデンサ
8a~8f 駆動用IGBT
9a~9f 発電用IGBT
10 目標値設定部
11 電圧制御部
12 電流制御部
13 Duty制御部