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  • 特開-ギアモータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144282
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ギアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/116 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051191
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】志津 慶剛
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB09
5H607BB14
5H607BB26
5H607DD01
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE31
5H607GG08
5H607GG28
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ギアモータの損失を減らすことが可能なギアモータを提供することである。
【解決手段】ある態様のギアモータ100は、中空孔111が設けられたモータ軸11を有するモータ1と、別の中空孔211が設けられた入力軸21を有する減速機2を備えたギアモータであって、モータ軸11の負荷側に第1シール部材S1が配置される第1摺動面113を有する。第1摺動面113の外径は、入力軸21のモータ1側端部の外径よりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空孔が設けられたモータ軸を有するモータと、別の中空孔が設けられた入力軸を有する減速機を備えたギアモータであって、
前記モータ軸の負荷側に第1シール部材が配置される第1摺動面を有し、
前記第1摺動面の外径は、前記入力軸の前記モータ側端部の外径よりも小さいギアモータ。
【請求項2】
前記減速機は、歯車と、歯車よりもモータ側で前記入力軸を支持する入力軸受と、を有し、
前記第1摺動面の外径が、前記入力軸受よりもモータ側の前記入力軸の外径よりも小さい請求項1に記載のギアモータ。
【請求項3】
前記第1摺動面の外径は、前記入力軸のどの部位の外径よりも小さい請求項1または2に記載のギアモータ。
【請求項4】
前記モータ軸および前記入力軸の前記中空孔内に配置された筒状部材を有し、
前記モータ軸および前記入力軸の内周と前記筒状部材の外周との間の径方向隙間空間は、前記減速機の内部空間と潤滑剤が流通可能に連通し、
前記径方向隙間空間と前記モータの内部空間を封止するための第2シール部材を有する請求項1から3のいずれか1項に記載のギアモータ。
【請求項5】
前記モータ軸は、前記第2シール部材が配置される第2摺動面を有し、
前記第2摺動面の外径は、前記入力軸の負荷側端部の外径よりも小さい請求項4に記載のギアモータ。
【請求項6】
前記減速機の前記入力軸は、前記モータ軸と連結されている請求項1から5のいずれか1項に記載のギアモータ。
【請求項7】
前記径方向隙間空間と前記減速機より負荷側の空間との間を封止する第3シール部材を有する請求項4に記載のギアモータ。
【請求項8】
前記第3シール部材は、前記筒状部材の外周に配置される請求項7に記載のギアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
減速機の入力軸とモータ軸とを連結したギアモータが知られている。本出願人は、特許文献1において、モータと減速機を有するギアモータを開示している。このギアモータでは、モータのモータ軸と減速機の入力軸は、軸方向に貫通する中空部を有する。モータ軸と入力軸の間に連結部材が配置され、これらの軸と連結部材とは、ボルトにより連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-43667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータと減速機からなるギアモータは、組立性などの観点から別体で製造し、後に連結する構成が考えられる。この構成でモータと減速機の間にオイルシールが設けられる場合、このオイルシールによるギアモータの損失は小さいことが望ましい。特許文献1に記載のギアモータでは、減速機の入力軸の外周にオイルシールが配置されており、ギアモータの損失を減らす観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、ギアモータの損失を減らすことが可能なギアモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のギアモータは、中空孔が設けられたモータ軸を有するモータと、別の中空孔が設けられた入力軸を有する減速機を備えたギアモータであって、モータ軸の負荷側に第1シール部材が配置される第1摺動面を有する。第1摺動面の外径は、入力軸のモータ側端部の外径よりも小さい。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ギアモータの損失を減らすことが可能なギアモータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るギアモータの一例を示す断面図である。
図2図1のモータ軸と入力軸の連結部周辺を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0012】
[実施形態]
図1を参照して、実施形態に係るギアモータ100の構成を説明する。図1は、本発明の実施形態のギアモータ100を示す側面断面図である。以下、後述するモータ1のモータ軸11の中心軸線Laに沿った方向を「軸方向」といい、中心軸線Laを中心とする円の円周方向、半径方向をそれぞれ「周方向」、「径方向」とする。また、以下、便宜的に、軸方向の一方側(図中右側)を入力側といい、他方側(図中左側)を反入力側という。軸方向を矢印Xで示す。
【0013】
まず、ギアモータ100の全体構成を説明する。ギアモータ100は、モータ1と、減速機2と、筒状部材5と、機能ユニット6と、ケーシング7とを備える。モータ1は、減速機2に回転を入力する。減速機2は、入力された回転を減速して被駆動部材81に出力する。機能ユニット6は、ギアモータ100に所定の機能を付加する。
【0014】
ケーシング7は、モータ1、減速機2および機能ユニット6を包囲し、これらの外殻として機能する。この例では、ケーシング7は、反入力側から入力側に向かって、第1ケーシング71、第2ケーシング72、第3ケーシング73、第4ケーシング74、第5ケーシング75および第6ケーシング76が順に配置される。第1ケーシング71、第2ケーシング72および第3ケーシング73は、ボルトB2~B4によって連結され、第3ケーシング73、第4ケーシング74および第5ケーシング75は、ボルトB5によって連結され、第5ケーシング75および第6ケーシング76は、ボルトB6によって連結される。
【0015】
(モータ)
モータ1を説明する。モータ1としては、減速機2に回転を出力可能なものであれば制限はなく、様々な原理に基づくモータを用いうる。本実施形態のモータ1は、ブラシレスDCモータ(ACサーボモータと称されることもある)である。以下、便宜的に、軸方向においてモータ1の負荷となる減速機2が配置される側を負荷側といい、その反対側を反負荷側ということがある。この例では、モータ1の反入力側が負荷側であり、モータ1の入力側が反負荷側である。
【0016】
モータ1は、モータ軸11と、マグネット12と、ステータコア13と、電機子コイル14と、モータ軸受15、16と、第2ケーシング72と、第3ケーシング73と、第4ケーシング74と、を含む。モータ軸受15、16は、公知の種々の軸受機構を採用可能であり、この例では深溝玉軸受である。
【0017】
モータ軸11は、中空孔111を有する中空シャフトである。モータ軸11は、一体または複数ピースで構成可能であり、複数ピースで構成されるときはモータ軸と別体で当該軸に連結される軸部材も含んでモータ軸11という。モータ軸11は、軸方向に離間された2つのモータ軸受15、16によって、回転可能に支持されている。モータ軸11の外周には、反入力側から入力側に向かって順に、連結部112、第1摺動面113、第1軸受支持部114、マグネット支持部115、第2軸受支持部116、ディスク支持部117、エンコーダ支持部118および第2摺動面119が設けられる。
【0018】
モータ1のモータ軸11は減速機2の入力軸21にカップリング等の介在機構を介して接続されてもよいが、図1の例では、モータ軸11は減速機2の入力軸21と連結されている。この例では、これらが介在機構を介さずに直接的に連結されているから、介在機構のための製造コストや配置スペースを省ける。この例では、モータ軸11の連結部112は、入力軸21に連結される部分である。一例として、連結部112は、スプライン溝G11(外歯)を有し、入力軸21の中空孔211に設けられたスプライン溝G21(内歯)に嵌合し、スプライン連結される。
【0019】
第1摺動面113は、連結部112よりも大径で、第1シール部材S1のリップ部が当接する。第1軸受支持部114は、第1摺動面113よりも大径で、第1モータ軸受15の内輪を支持する。マグネット支持部115は、第1軸受支持部114よりも大径で、マグネット12が固定される。第2軸受支持部116は、第1軸受支持部114と同径で、第2モータ軸受16の内輪を支持する。ディスク支持部117は、第2軸受支持部116よりも小径で、ブレーキディスク63が固定される。エンコーダ支持部118は、ディスク支持部117よりも小径で、エンコーダマグネット67が固定される。第2摺動面119は、第1摺動面113と同径で、第2シール部材S2のリップ部が当接する。また、第2摺動面119の外径は、入力軸21の負荷側端部の外径よりも小さい。この場合、第2摺動面119を入力軸21に設けないので、損失を減らすことができる。
【0020】
第2ケーシング72は、ステータコア13の反入力側を塞ぐ中空のフランジ形状を有し、中央にモータ軸11が貫通する中空部を有する。第2ケーシング72の中空部とモータ軸11との間に第1モータ軸受15と、第1シール部材S1が配置される。第1シール部材S1は、モータ軸受15の反入力側に配置される。第3ケーシング73は、ステータコア13を環囲する筒状を有する。第4ケーシング74は、ステータコア13の入力側を塞ぐフランジ状の部材であり、中央にモータ軸11が貫通する中空部を有する。第4ケーシング74の中空部とモータ軸11との間に第2モータ軸受16が配置される。
【0021】
ステータコア13は、第3ケーシング73の内周に固定され、マグネット12の外周面と磁気的空隙を介して径方向に対向する。電機子コイル14は、ステータコア13のスロットに巻装される。マグネット12は、モータ軸11のマグネット支持部115に固定され、外周面に磁極が設けられる。モータ1は、図示しない駆動装置から駆動電力が供給されることにより、公知の原理に基づいてモータ軸11に回転駆動力を出力し、入力軸21を回転駆動する。
【0022】
(減速機)
減速機2を説明する。減速機2としては、入力回転を減速出力可能なものであれば制限はなく、様々な減速機構を用いることができる。実施形態の減速機2は、内歯歯車と噛み合う外歯歯車を揺動させることで、内歯歯車および外歯歯車の一方の自転を生じさせ、その生じた自転成分を出力部材から被駆動部材に出力する偏心揺動型減速機である。実施形態の減速機2は、入力軸21の回転中心線が中心軸線Laと同軸線上に設けられるセンタークランクタイプである。
【0023】
減速機2は、入力軸21と、外歯歯車33、34と、内歯歯車43と、キャリヤ35、36と、第1ケーシング71と、内ピン47と、偏心軸受41、42と、主軸受37、38と、入力軸軸受39、40を主に含む。特に、入力軸21、外歯歯車33、34、内歯歯車43、キャリヤ35、36、内ピン47、偏心軸受41、42、主軸受37、38および入力軸軸受39、40は減速部3を構成する。第1ケーシング71は、減速部3を包囲する筒状を有し、内周面に内歯歯車43が設けられる。
【0024】
(入力軸)
入力軸21は、モータ1から入力される回転動力によって回転中心線周りに回転させられる。入力軸21は、中空孔211を有する中空シャフトである。入力軸21の外周には、反入力側から入力側に向かって順に、第1軸部22、第1偏心部25、第2偏心部26、第2軸部27および第3軸部28が設けられる。第1軸部22は、第1入力軸軸受39の内輪を支持する。第2軸部27は、第2入力軸軸受40の内周側を支持する。第3軸部28は、第2軸部27から入力側に延びる部分である。
【0025】
実施形態では、入力軸21は、外歯歯車33、34を揺動させるための複数の偏心部25、26を有する偏心体軸であり、クランク軸と称されることがある。偏心部25、26の軸芯は、入力軸21の回転中心線に対して偏心している。本実施形態では2個の偏心部25、26が設けられ、隣り合う偏心部25、26の偏心位相は180°ずれている。
【0026】
入力軸21の入力側は、第2入力軸軸受40を介して第2キャリヤ36に支持される。入力軸21の反入力側は、入力軸軸受39を介して第1キャリヤ35に支持される。つまり、入力軸21は、第1キャリヤ35および第2キャリヤ36に対して回転自在に支持されている。入力軸軸受39、40は、公知の種々の軸受機構を採用できる。この例では、第1入力軸軸受39は、球体を転動体とする玉軸受であり、第2入力軸軸受40は、円筒ころを転動体とするころ軸受である。
【0027】
入力軸21は、中空孔211の入力側の第3軸部28に対応する部分にモータ軸11に連結されるための連結部212を有する。一例として、連結部212は、スプライン溝G21を有し、スプライン溝G21が、モータ軸11の連結部112のスプライン溝G11に嵌合し、スプライン連結される。この構成により、中空孔111および中空孔211は互いに連通する。
【0028】
(外歯歯車)
外歯歯車33、34は、複数の偏心部25、26のそれぞれに対応して個別に設けられる。外歯歯車33、34は、偏心軸受41、42を介して偏心部25、26の外周に揺動可能に組み込まれている。この例の偏心軸受41、42は、ころ軸受である。外歯歯車33、34は、それぞれ揺動しながら内歯歯車43に内接噛合する。外歯歯車33、34の外周には波形の歯が形成されており、この歯が内歯歯車43と接触しつつ移動することで、中心軸を法線とする面内で外歯歯車33、34が揺動できるようになっている。
【0029】
(内歯歯車)
内歯歯車43は、外歯歯車33、34と噛み合う。本実施形態の内歯歯車43は、第1ケーシング71の内周面に周方向に所定の間隔で形成されたピン溝に配置された複数の外ピン44を有する。外ピン44は、第1ケーシング71のピン溝に回転自在に支持される円柱状のピン部材である。外ピン44は、内歯歯車43の内歯を構成している。内歯歯車43の外ピン44の数(内歯の数)は、外歯歯車33、34の外歯数よりもわずかだけ(この例では1だけ)多い。
【0030】
(内ピン)
外歯歯車33、34には、その軸心からオフセットされた位置に複数の内ピン孔45、46が形成される。内ピン孔45、46には内ピン47が貫通する。内ピン47の外周には、円筒状のスリーブ48が配置されている。スリーブ48は、内ピン孔45、46との摺動を円滑にするための摺動促進体として機能する。スリーブ48の外径は、内ピン孔45、46の内径よりも偏心量の2倍相当分小さくなっている。スリーブ48と内ピン47の間には外歯歯車33、34の揺動成分を吸収するための遊びとなる隙間が設けられるとともに、内ピン47は、スリーブ48を介して内ピン孔45、46の一部と常に接触している。内ピン47は、外歯歯車33、34の自転成分と同期して入力軸21の軸心周りを公転し、キャリヤ35、36を入力軸21の軸心周りに回転させる。内ピン47は、キャリヤ35、36と外歯歯車33、34との間の動力の伝達に寄与するピン状部材を構成している。
【0031】
(キャリヤ)
キャリヤ35、36は全体として円形形状をなす。第1キャリヤ35は、外歯歯車33、34の反入力側の側部に配置され、第2キャリヤ36は、外歯歯車33、34の入力側の側部に配置される。第1キャリヤ35は、第1主軸受37を介して第1ケーシング71に回転自在に支持される。第2キャリヤ36は、第2主軸受38を介して第1ケーシング71に回転自在に支持される。第1キャリヤ35は、第1入力軸軸受39を介して入力軸21の反入力側を回転自在に支持する。第2キャリヤ36は、第2入力軸軸受40を介して入力軸21の入力側を回転自在に支持する。主軸受37、38は、公知の種々の軸受機構を採用可能であり、この例の主軸受37、38は、アンギュラころ軸受である。主軸受37、38の内側の転動面はキャリヤ35、36に形成されている。
【0032】
内ピン47は、第1キャリヤ35と一体的に形成され、第1キャリヤ35の入力側から第2キャリヤ36に向かって軸方向に延在する。ボルトB8が、第2キャリヤ36に設けられた貫通孔を通じて内ピン47の端部に設けられたタップ孔にねじ込まれることにより、キャリヤ35、36が互いに連結される。
【0033】
第1キャリヤ35は、被駆動部材81に回転動力を出力する出力部材として機能する。第1ケーシング71は、ギアモータ100を支持するための外部部材86に固定される被固定部材として機能する。一例として、ボルトB1が被駆動部材81に設けられた貫通孔を通じて第1キャリヤ35の反入力側の端部に設けられたタップ孔にねじ込まれることにより、被駆動部材81と第1キャリヤ35が互いに連結される。
【0034】
減速機2の動作を説明する。モータ1から入力軸21に回転動力が伝達されると、入力軸21の偏心部25、26が入力軸21を通る回転中心線周りに回転し、その偏心部25、26により外歯歯車33、34が揺動する。このとき、外歯歯車33、34は、自らの軸芯が入力軸21の回転中心線周りを回転するように揺動する。外歯歯車33、34が揺動すると、外歯歯車33、34と内歯歯車43の外ピン44の噛合位置が順次ずれる。この結果、入力軸21が一回転する毎に、外歯歯車33、34の歯数と内歯歯車43の外ピン44の数との差に相当する分、外歯歯車33、34および内歯歯車43の一方の自転が発生する。実施形態では、外歯歯車33、34が自転し、第1キャリヤ35から減速回転が出力される。第1キャリヤ35が回転することによって、第1キャリヤ35に連結された被駆動部材81が回転駆動される。
【0035】
機能ユニット6を説明する。機能ユニット6は、第5ケーシング75および第6ケーシング76に環囲され、入力側が第6ケーシング76に塞がれる。第5ケーシング75は、筒部と、筒部の入力側から径方向内向きに張り出す張出部を有する。第6ケーシング76は、中央にモータ軸11が貫通する中空部77を有し、全体として略フランジ形状を呈する。
【0036】
この例では、機能ユニット6は、モータ1の回転を減速させるブレーキ60と、モータ1の回転を検出するエンコーダ65とを含む。ブレーキ60は、モータ軸11と一体的に回転するブレーキディスク63と、ブレーキディスク63を軸方向に挟む可動板61、62を含み、可動板61、62とブレーキディスク63の摩擦力によってモータ軸11に制動力を付与できる。エンコーダ65は、モータ軸11と一体的に回転するエンコーダマグネット67と、エンコーダマグネット67の磁極を検知するエンコーダ検出部66を含み、モータ軸11の回転速度に応じたパルス数のFG信号をエンコーダ検出部66から出力する。エンコーダ検出部66は、第5ケーシング75の張出部に固定される。
【0037】
筒状部材5は、ギアモータ100の入力側と反入力側との間で配線や配管を通すための部材である。図1の例では、筒状部材5は、中空孔53を有する中空部材であり、モータ軸11と入力軸21の径方向内側に設けられる。筒状部材5は、中空孔53が設けられた筒部51と、筒部51の入力側端から径方向外向きに延在するフランジ部52と、筒部51の反入力側の外周に設けられる第3摺動面54とを有する。筒状部材5は、フランジ部52が複数のボルトB7によって、第6ケーシング76の入力側の端面に取り付けられる。
【0038】
第1シール部材S1は、第2ケーシング72の中空部とモータ軸11との間に配置され、第1シール部材S1のリップ部L1は、第1摺動面113に当接する。第2シール部材S2は、第6ケーシング76の中空部とモータ軸11との間に配置され、第2シール部材S2のリップ部は、第2摺動面119に当接する。
【0039】
第3シール部材S3は、被駆動部材81の中空孔82と筒状部材5との間に配置され、第3シール部材S3のリップ部L3は、第3摺動面54に当接する。実施形態は、径方向隙間空間J4と減速機2より負荷側の空間との間を封止する第3シール部材S3を有するので、入力軸21よりも径が小さい位置に配置された第3シール部材S3によって減速部3の空間を封止することが可能になり、この結果、損失を減らすことができる。第3シール部材S3は、筒状部材5および筒状部材5と別体で連結される部材の外周に配置される。
【0040】
第4シール部材S4は、第1ケーシング71と第1キャリヤ35の間に配置され、第1主軸受37からの潤滑材の漏出を防止する。
【0041】
次に、図1図2を参照して、本開示の特徴的な構成を説明する。図2は、モータ軸11と入力軸21の連結部周辺を拡大して示す図である。減速機2には、減速部3を潤滑するために潤滑材が充填される。減速機2から漏出する潤滑材を減らすために、減速機2の減速部3の空間Jと外部空間との間にシール部材が設けられる。空間Jは、第1キャリヤ35と第2キャリヤ36の間の空間の他に、第2キャリヤ36の入力側の空間J1と、第1主軸受37の反入力側の空間J2と、第1入力軸軸受39の反入力側の空間J3とを含む。上述したように、空間J2のシールのために、第1ケーシング71と第1キャリヤ35の間に第4シール部材S4が配置される。
【0042】
空間J1のシールのために、入力軸21と第2キャリヤ36の間にシール部材を設けることが考えられる。この場合、入力軸21の入力側の外径が、モータ軸11の負荷側の外径よりも大きいため、シール部材と入力軸21の外径との摺動損失が大きくなる。シール部材の摺動損失はギアモータ100の損失であり、この損失が大きいとモータの効率が低下する。
【0043】
そこで、実施形態では、モータ軸11の負荷側に第1シール部材S1が配置される摺動面113を設け、摺動面113の外径D11は、減速機2の入力軸21の第3軸部28の外径D21よりも小さく構成される。換言すると、第1摺動面113の外径D11は、入力軸21のモータ1側端部の外径D21よりも小さい。第1摺動面113の外径D11は、入力軸21のどの部位の外径よりも小さい。なお、入力軸21の止め輪が設けられる部分の外径は止め輪溝の外径ではなく止め輪の外径を意味する。また、第3軸部28は、入力軸21の減速部3と摺動面113との間の部分である。この場合、外径が小さいことに応じてシール部材の摺動損失が減り、モータ効率の低下を抑制できる。
【0044】
また、図1の例では、筒状部材5の外周の空間J4と減速機2の空間は連通している。具体的には、筒状部材5の外周の空間J4は、第1入力軸軸受39の反入力側の空間J3に連通している。このため潤滑材のミストが空間J4を通じて、空間J4の入力側の領域から機能ユニット6およびモータ1の内部に侵入する可能性がある。そこで、実施形態では、モータ軸11の反負荷側にモータ1内部への潤滑材の侵入を防ぐ第2シール部材S2が配置される。この場合、潤滑材の侵入を低減できる。
【0045】
つまり、モータ軸11および入力軸21の中空孔111、211内に配置された筒状部材5を有しており、モータ軸11および入力軸21の内周と筒状部材5の外周との間の径方向隙間空間J4は、減速機2の内部空間J3と潤滑剤が流通可能に連通している。そこで、実施形態は、径方向隙間空間J4とモータ1の内部空間を封止するための第2シール部材S2を有する。
【0046】
空間J3のシールのために、第1キャリヤ35と入力軸21の間にシール部材を設けることが考えられる。この場合、入力軸21の反入力側の外径が、筒状部材5の外径よりも大きいため、シール部材と入力軸21の外径との摺動損失が大きくなる。そこで、実施形態では、モータ軸11と入力軸21の径方向内側に筒状部材5を有し、筒状部材5に第3シール部材S3が配置される。この場合、第1キャリヤ35と入力軸21の間にシール部材を設ける場合よりも摺動損失を低減できる。一例として、空間J3のシールのために、被駆動部材81と筒状部材5の間に第3シール部材S3が配置される。
【0047】
上記のように構成されたギアモータ100の特徴を説明する。ギアモータ100は、中空孔111が設けられたモータ軸11を有するモータ1と、別の中空孔211が設けられた入力軸21を有する減速機2を備えたギアモータであって、モータ軸11の負荷側に第1シール部材S1が配置される第1摺動面113を有する。第1摺動面113の外径D11は、入力軸21のモータ1側端部の外径D21よりも小さい。
【0048】
入力軸の両端にオイルシールを配置する従来構造では、中空孔を設ける場合、剛性を確保する観点から、モータ軸および入力軸の外径は大きくせざるを得ず、これらの外径を大きくするとギアモータの損失が増大する。これに対して、上記構成のギアモータ100によれば、第1シール部材S1が、減速機2の入力軸21よりも小径であるモータ軸11の負荷側に配置されることにより、外径が小さい分だけ摺動損失を低減できるので、オイルシールによるギアモータの損失を減らすことが可能になる。実施形態のギアモータ100のように、高速回転する入力軸21、モータ軸11の径が小さい部分にシール部材S1、S2を配置し、低速回転のセンターパイプ(筒状部材5)にシール部材S3を配置するの方が、オイルシールの数は増えても損失は小さくなる。
【0049】
以上、本発明を、実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0050】
(変形例)
以下、変形例を説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0051】
上述の説明では、筒状部材5が、ギアモータ100のケーシング7に取り付けられ、筒状部材5が非回転である例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、筒状部材5は、反対向きにされて、被駆動部材81(相手機械側)に取り付けられてもよい。この場合、第3シール部材S3は、入力軸21の中空孔211と筒状部材5との間に配置できる。この構成では、筒状部材5は被駆動部材81と一体的に低速で回転する。
【0052】
上述の説明では、入力軸21が、モータ軸11にスプライン連結される例を示したが、本発明はこれに限定されない。入力軸とモータ軸は公知の種々の連結方式によって連結されてもよい。
【0053】
上述の説明では、ギアモータ100が、機能ユニット6を備える例を示したが、本発明はこれに限定されない。機能ユニット6は、ブレーキとエンコーダの一方のみを含んでもよいし、他の機能ユニットを含んでもよい。ギアモータ100は、機能ユニット6を有しなくてもよい。
【0054】
上述の説明では、減速機が偏心揺動型減速機である例を示したが、本発明の減速機の減速機構はこれに限定されない。例えば、減速機は、平行軸型、直交型、単純遊星型など各種減速機構を採用でき、また筒型の外歯歯車を有する撓み噛み合い式減速機(波動減速機と称されることがある)であってもよい。減速機は、カップ型やシルクハット型の撓み噛み合い式減速機であってもよい。
【0055】
上述の説明では、外歯歯車33、34を2枚備える例を示したが、本発明はこれに限定されない。減速機は、1枚または3枚以上の外歯歯車を備えてもよい。
【0056】
これらの各変形例は、実施形態と同様の作用と効果を奏する。
【0057】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0058】
1 モータ、 2 減速機、 3 減速部、 5 筒状部材、 7 ケーシング、 11 モータ軸、 21 入力軸、 33 外歯歯車、 43 内歯歯車、 111 中空孔、 211 中空孔、 S1 第1シール部材、 S2 第2シール部材、 S3 第3シール部材、 100 ギアモータ。
図1
図2