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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144285
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/025 20120101AFI20231003BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
F16H57/025
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051194
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】志津 慶剛
【テーマコード(参考)】
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3J063AB02
3J063AB12
3J063AB14
3J063AB15
3J063AC01
3J063BA01
3J063BA03
3J063CD41
3J063CD53
3J063XA03
3J063XA11
5H607BB01
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE31
5H607JJ05
(57)【要約】
【課題】ボルト挿入作業時に減速機ユニットとの干渉を回避しつつ、新しい移動経路を通してボルトを移動させることを可能とする技術を提供する。
【解決手段】減速機12と、減速機12とモータを連結するアダプタ16と、を備える動力伝達装置10であって、減速機12は、外部部材44に減速機12を固定するボルト52を挿通するための第1ボルト穴46を備え、アダプタ16又はモータの少なくとも一方は、ボルト52と軸方向Xに重なる位置から外周側に向かって開く外周開口部70を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機と、前記減速機とモータを連結するアダプタと、を備える動力伝達装置であって、
前記減速機は、外部部材に前記減速機を締結するボルトを挿通するための第1ボルト穴を備え、
前記アダプタ又は前記モータの少なくとも一方は、前記第1ボルト穴と軸方向に重なる位置から外周側に向かって開く外周開口部を備える動力伝達装置。
【請求項2】
前記動力伝達装置には、前記第1ボルト穴に挿通する予定の前記ボルトを配置するためのボルト配置空間が設けられ、
前記ボルトの軸方向寸法は、前記ボルト配置空間の軸方向寸法よりも大きく、かつ、前記ボルト配置空間と前記外周開口部の軸方向寸法の合計よりも小さい請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記アダプタは、前記モータに固定される第1アダプタ部材と、前記減速機に固定され前記第1アダプタ部材に着脱可能に接続される第2アダプタ部材とを備え、
前記モータに前記第1アダプタ部材を固定した状態で、前記第2アダプタ部材は前記第1アダプタ部材から着脱不能である請求項1または2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記ボルトが締結された状態において、前記外周開口部は、前記ボルトの軸部の一部と径方向に重なる請求項1から3のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記ボルトが締結された状態において、前記外周開口部は、前記ボルトの頭部と径方向に重なる請求項1から4のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記アダプタは、前記ボルトが挿通され前記第1ボルト穴と連通する第2ボルト穴を備え、
前記外周開口部は、前記第2ボルト穴に設けられる請求項1から5のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記アダプタは、前記モータに固定されるモータ固定部を備え、
前記外周開口部は、前記モータ固定部に設けられる請求項1から6のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記減速機は、前記外部部材が取り付けられる外部部材取付部を有し、当該外部部材取付部の反モータ側に前記外部部材が配置され、前記外部部材取付部のモータ側に前記アダプタが配置される請求項1から7のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記ボルトよりもモータ側において前記ボルトと軸方向に重なる位置には前記アダプタの一部又は前記モータの少なくとも一方が配置される請求項1から8のいずれかに動力伝達装置。
【請求項10】
減速機を備える動力伝達装置であって、
前記減速機は、外部部材に前記減速機を締結するボルトを挿通するための第1ボルト穴を備え、
前記減速機は、前記第1ボルト穴と軸方向に重なる位置から外周側に向かって開く外周開口部を備え、
前記外周開口部は、前記第1ボルト穴に設けられる動力伝達装置。
【請求項11】
前記ボルトよりもモータ側において前記ボルトと軸方向に重なる位置には前記モータが配置される請求項10に動力伝達装置。
【請求項12】
前記外部部材には、前記ボルトを挿通する第3ボルト穴が設けられ、
前記第1ボルト穴は内周面に雌ネジを有しない貫通孔であり、前記第3ボルト穴は内周面に雌ネジを有する請求項1から11のいずれかに記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、減速機と、減速機とモータを連結するアダプタとを備える動力伝達装置を開示する。減速機は、通常、外部部材に減速機を固定するボルトを挿通するためのボルト穴を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-180319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、ボルト穴に対するボルトの挿入作業(以下、ボルト挿入作業ともいう)時に動力伝達装置の干渉を回避しつつ、新しい移動経路を通してボルトを移動させることを可能とする新たなアイデアを見出した。
【0005】
本開示の目的の1つは、ボルト挿入作業時に動力伝達装置との干渉を回避しつつ、新しい移動経路を通してボルトを移動させることを可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の動力伝達装置は、減速機と、前記減速機とモータを連結するアダプタと、を備える動力伝達装置であって、前記減速機は、外部部材に前記減速機締結定するボルトを挿通するための第1ボルト穴を備え、前記アダプタ又は前記モータの少なくとも一方は、前記第1ボルト穴と軸方向に重なる位置から外周側に向かって開く外周開口部を備える。
【0007】
本開示の他の動力伝達装置は、アダプタを介してモータに連結される減速機を備える動力伝達装置であって、前記減速機は、外部部材に前記減速機を締結するボルトを挿通するための第1ボルト穴を備え、前記減速機は、前記第1ボルト穴と軸方向に重なる位置から外周側に向かって開く外周開口部を備え前記外周開口部は、前記第1ボルト穴に設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ボルト挿入作業時に動力伝達装置との干渉を回避しつつ、新しい移動経路を通してボルトを移動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の動力伝達装置の側面断面図である。
図2】第1実施形態の動力伝達装置の一部をモータ側から見た図である。
図3】第1実施形態のボルト挿入作業時の途中状態を示す側面断面図である。
図4図1の矢視V1から切欠部を見た部分的な斜視図である。
図5】第2実施形態の動力伝達装置の一部を示す側面断面図である。
図6図5の矢視V2から切欠部を見た部分的な斜視図である。
図7】第3実施形態の動力伝達装置の一部を示す側面断面図である。
図8図7の矢視V3から切欠部を見た部分的な斜視図である。
図9】第3実施形態のボルト挿入作業時の途中状態を示す側面断面図である。
図10】第4実施形態の動力伝達装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0011】
(第1実施形態)図1図2を参照する。図1は、図2のA-A断面図でもある。動力伝達装置10は、減速機12と、モータ14と、減速機12とモータ14を連結するアダプタ16とを備える。モータ14は、不図示のステータ及びロータを収容するモータケーシング14aと、ロータと一体的に回転するモータ軸14bとを備える。
【0012】
減速機12は、モータ14のモータ軸14bから入力回転が入力される入力軸18と、入力軸18の回転が伝達される歯車機構20と、歯車機構20から伝達される出力回転を被駆動部材に出力する出力部材22と、を備える。この他に、減速機12は、歯車機構20を収容する筒状の減速機ケーシング24と、歯車機構20を構成する外歯歯車28に対して軸方向側方に配置されるキャリヤ26A、26Bと、を備える。
【0013】
本実施形態の歯車機構20は、互いに噛み合う外歯歯車28及び内歯歯車30を備える偏心揺動型歯車機構である。この種の歯車機構20は、外歯歯車28及び内歯歯車30の一方(ここでは外歯歯車28)をクランク軸34によって揺動させることで出力部材22に出力回転を伝達可能である。本実施形態ではキャリヤ26Aが出力部材22となる例を説明するが、減速機ケーシング24が出力部材22となってもよい。
【0014】
以下、減速機ケーシング24の中心線C24に沿った方向を軸方向Xとし、その中心線C24を円中心とする半径方向、円周方向のそれぞれを単に径方向、周方向という。また、軸方向Xでモータ14のある側をモータ側といい、軸方向でモータ14とは反対側を反モータ側という。
【0015】
モータ軸14bと入力軸18は一体回転可能に連結される。これを実現するため、本実施形態のモータ軸14bと入力軸18は摩擦締結装置32を用いて連結される。モータ軸14bと入力軸18の連結方法は特に限定されず、例えば、キー等を用いてもよい。
【0016】
本実施形態の入力軸18はクランク軸34である。クランク軸34は、クランク軸34の回転中心C34に対して偏心した少なくとも一つ(ここでは三つ)の偏心体36を備える。偏心体36は、クランク軸34の回転中心C34周りに回転することで外歯歯車28を揺動させることができる。
【0017】
外歯歯車28は、歯車軸受38を介してクランク軸34の偏心体36に相対回転自在に支持される。内歯歯車30は、減速機ケーシング24と一体化している。減速機ケーシング24とキャリヤ26A、26Bとの間には両者を相対回転自在に連結する主軸受40が配置される。
【0018】
キャリヤ26A、26Bは、外歯歯車28に対して反モータ側に設けられる反モータ側キャリヤ26Aと、外歯歯車28に対してモータ側に設けられるモータ側キャリヤ26Bとを含む。キャリヤ26A、26Bは、外歯歯車28を貫通する内ピン42によって、外歯歯車28が揺動したとき、外歯歯車28の自転成分と同期可能である。
【0019】
減速機ケーシング24は、外部部材44に減速機12を締結するボルト52を挿通するための第1ボルト穴46を備える。図2では、減速機12に関して第1ボルト穴46のみを示す。第1ボルト穴46は周方向に間隔を空けて複数設けられる。ボルト52は、第1ボルト穴46にモータ側から挿入されている。ボルト52により外部部材44と減速機12を締結するうえで、外部部材44の第3ボルト穴44aに形成された雌ネジにボルト52をねじ込んでもよい。この他にも、外部部材44とは別に設けられたナットにボルト52をねじ込んでもよい。
【0020】
減速機12は、外部部材44が取り付けられる外部部材取付部24aを備える。本実施形態の外部部材取付部24aは、減速機ケーシング24に設けられる。本実施形態の外部部材取付部24aは、減速機ケーシング24の外周部において径方向外側に突き出るフランジ部である。第1ボルト穴46は、外部部材取付部24aに設けられる。外部部材取付部24aのモータ側にはアダプタ16が配置される。
【0021】
アダプタ16は、モータ14に固定されるモータ固定部16aと、減速機12に固定される減速機固定部16bとを備える。本実施形態のアダプタ16は、モータ14に固定される第1アダプタ部材48と、減速機12に固定され第1アダプタ部材48とは別体の第2アダプタ部材50とを備える。第1アダプタ部材48はモータ固定部16aを有し、第2アダプタ部材50は減速機固定部16bを有することになる。第1アダプタ部材48及び第2アダプタ部材50は中空構造であり、その内側にモータ軸14b及び入力軸18の一部が挿通される。第1アダプタ部材48と第2アダプタ部材50は着脱可能に接続される。これを実現するうえで、本実施形態において、これらは、第1アダプタ部材48の内部にモータ側から挿入されるボルトB1を用いて接続される。モータ14のサイズに応じて第1アダプタ部材48のみを変更することで、アダプタ16を用いて複数種類のモータ14と減速機12を連結するうえで第2アダプタ部材50を共用できる。
【0022】
本実施形態のモータ固定部16aは、アダプタ16のモータ側端部において径方向外側に突き出るアダプタフランジ部である。モータ固定部16aは、モータ14のモータケーシング14aに設けられるモータフランジ部14cと軸方向Xに重ね合わせたうえでボルトB2を用いて締結することで、モータ14に固定される。本実施形態のモータ固定部16aにはボルトB2をねじ込む雌ネジ孔16dが設けられる。モータ14に第1アダプタ部材48を固定した状態にあるとき、第1アダプタ部材48の内部にあるボルトB1に対してモータ14が軸方向に重なり、そのボルトB1がモータ14によって隠れた状態となる。この状態にあるとき、ボルトB1による接続を解除できず、第2アダプタ部材50は第1アダプタ部材48に着脱不能となる。
【0023】
本実施形態の減速機固定部16bは、減速機12の減速機ケーシング24に固定される。減速機固定部16bは、減速機ケーシング24の外部部材取付部24aと軸方向Xに重ね合わせたうえで、ボルト52を用いて締結することで減速機ケーシング24に固定される。減速機固定部16bは、ボルト52が挿通される第2ボルト穴16cを備える。減速機固定部16bは、減速機ケーシング24において外部部材取付部24aよりもモータ側に設けられるインロー部24bとインロー嵌合する。
【0024】
外部部材44は、動力伝達装置10の外部に配置される。外部部材44は、動力伝達装置10を支持する支持部材及び動力伝達装置10により駆動される被駆動部材のいずれかとなる。本実施形態のように出力部材22がキャリヤ26Aとなる場合、外部部材44は支持部材となる。この他に、出力部材22が減速機ケーシング24となる場合、外部部材44は被駆動部材となる。
【0025】
外部部材44は、減速機12の外部部材取付部24aに対して反モータ側に配置される。外部部材44は、ボルト52を挿通する第3ボルト穴44aとを備える。本実施形態の第3ボルト穴44aは内周面に雌ネジを有し、その雌ネジにはボルト52の軸部52aがねじ込まれる。第1ボルト穴46及び第2ボルト穴16cは内周面に雌ネジを有しない貫通孔であり、軸方向Xに貫通している。第1ボルト穴46、第2ボルト穴16c及び第3ボルト穴44aは連通している。なお、外部部材44は、減速機12の反モータ側の一部が挿通される挿通孔44bを備える。
【0026】
以上の動力伝達装置10の動作を簡単に説明する。モータ14の入力回転が入力軸18に伝達されると歯車機構20が作動する。歯車機構20が作動すると、歯車機構20から入力回転に対して減速された出力回転が出力部材22に伝達され、その出力回転が被駆動部材に伝達される。
【0027】
ここで、ボルト52よりもモータ側においてボルト52と軸方向Xに重なる位置にはアダプタ16の一部又はモータ14の少なくとも一方が配置される。本実施形態では、アダプタ16の一部となるモータ固定部16aとモータ14の両方が配置される。この他にも、ボルト52よりもモータ側においてアダプタ16の一部のみが配置されてもよいし、モータ14のみが配置されてもよい。
【0028】
図3を参照する。動力伝達装置10には、動力伝達装置10の外部において、第1ボルト穴46に対するボルト52の挿入作業時に、ボルト穴46に挿通する予定のボルト52を配置するためのボルト配置空間60が設けられる。ボルト配置空間60は、ボルト52と軸方向Xに重なる位置に設けられる。ボルト配置空間60は、ボルト挿入作業時にボルト52を通すことができるように径方向外側に向かって開いている。
【0029】
ボルト配置空間60は、軸方向Xに対向する二つの外面部62A、62Bの間に設けられる。ここでの「外面部62A、62B」からは後述する外周開口部70の内面部は除外される。ここでの二つの外面部62A、62Bは、モータ側にあるモータ側外面部62Aと、反モータ側にある反モータ側外面部62Bとを含む。本実施形態において、モータ側外面部62Aはアダプタ16のモータ固定部16aに設けられ、反モータ側外面部62Bはアダプタ16の減速機固定部16bに設けられる。モータ側外面部62Aは第1アダプタ部材48に設けられ、反モータ側外面部62Bは第2アダプタ部材50に設けられることになる。本実施形態においてモータ側外面部62Aは、第2アダプタ部材50から第1アダプタ部材48を取り外したときに除去される。
【0030】
図1図3図4を参照する。減速機12、モータ14及びアダプタ16の少なくともいずれかは、第1ボルト穴46と軸方向Xに重なる位置から外周側に向かって開く外周開口部70を備える。本実施形態ではアダプタ16が外周開口部70を備える。アダプタ16の外周開口部70は、アダプタ16の外周面に開口する第1開口縁70aを備える。アダプタ16の外周開口部70は、アダプタ16の外周面に対して凹むようにアダプタ16の一部を切り欠くことで設けられる。外周開口部70は、第1開口縁70aを通して外部空間72側に向けて開いている。本実施形態の外周開口部70は、径方向外側に向かって開いている。外周開口部70の開く方向は特に限定されず、例えば、外周開口部70の設けられる減速機12、モータ14又はアダプタ16の外周面の接線方向となってもよい。
【0031】
これにより、ボルト挿入作業時に第1開口縁70aから外周開口部70内にボルト52を挿入することで、外周開口部70を通して挿入直前位置P1までボルト52を移動させることができる。ここでの挿入直前位置P1とは、第1ボルト穴46よりもモータ側においてボルト52の軸部52aが第1ボルト穴46と軸方向Xに重なる位置をいう。また、ここでの挿入直前位置P1とは、ボルト挿入作業時において、第1ボルト穴46に向かって軸方向Xにボルト52を移動させる直前に配置される位置でもある。
【0032】
外周開口部70は、第1開口縁70aの他に、軸方向Xでボルト配置空間60側に向かって開く第2開口縁70bと、第2開口縁70bよりも軸方向Xで奥側に設けられる底部70cとを備える。本実施形態の外周開口部70は、ボルト配置空間60に対して反モータ側に設けられ、その第2開口縁70bは反モータ側外面部62Bに開口している。この場合、ボルト挿入作業時に、第1開口縁70aから外周開口部70内にボルト52の軸部52aを挿入することができる。この他にも、後述の第3実施形態のように、ボルト配置空間60に対してモータ側に外周開口部70を設ける場合、ボルト挿入作業時に、第1開口縁70aから外周開口部70内にボルト52の頭部52bを挿入することができる。
【0033】
外周開口部70は、ボルト52が締結された状態において、ボルト52の軸部52aの一部と径方向に重なる。ここでの「一部」とは、軸部52aのモータ側端部から反モータ側に向かって連続する一部をいう。この条件を満たすうえで、本実施形態の外周開口部70は、アダプタ16の第2ボルト穴16c(減速機固定部16b)に設けられる。本実施形態の第2ボルト穴16cには、その反モータ側の一部を残して、第2ボルト穴16cのモータ側端部から反モータ側に連続する軸方向範囲に外周開口部70が設けられる。外周開口部70の軸方向寸法L70は、ボルト52の頭部52bの軸方向寸法L52bよりも長くなる。外周開口部70は、軸方向Xから見て、ボルト52の軸部52aを収容可能で、かつ、ボルト52の頭部52bを収容不能な大きさとなる。ボルト52の軸部52aの一部は、外周開口部70を通して外部空間に露出している。なお、反モータ側外面部62Bにはボルト52の頭部52bが座する座面部74が設けられる。
【0034】
本実施形態のボルト52の軸方向寸法L52(以下、ボルト寸法L52ともいう)は、ボルト配置空間60の軸方向寸法L60よりも大きくなる。また、ボルト寸法L52は、外周開口部70の軸方向寸法L70とボルト配置空間60の軸方向寸法L60との合計よりも小さくなる。
【0035】
図3を参照する。第1ボルト穴46に対してボルト52を挿入するためのボルト挿入作業を説明する。ボルト挿入作業では、第1ボルト穴46にボルト52を挿入する直前に前述した挿入直前位置P1までボルト52を移動させる。ボルト52は、動力伝達装置10の外周開口部70及び外部空間72(ここではボルト配置空間60)の両方を通して挿入直前位置P1まで移動させる。このとき、前述のように、第1開口縁70aから外周開口部70内にボルト52を挿入することで、外周開口部70を通して挿入直前位置P1までボルト52を移動させる。ボルト52を挿入直前位置P1まで移動させたら、第1ボルト穴46に向かってボルト52を軸方向Xに移動させることで第1ボルト穴46にボルト52の軸部52aを挿入する。この後、外部部材44の第3ボルト穴44aの雌ネジ又は外部部材44とは別のナットにボルト52をねじ込むことで、外部部材44と減速機12を締結して減速機12を外部部材44に固定する。
【0036】
以上の動力伝達装置10の効果を説明する。
【0037】
(A)仮に、動力伝達装置10に外周開口部70がない場合、ボルト挿入作業時に動力伝達装置10との干渉を回避しつつボルト52を挿入直前位置P1まで移動させるうえでは、動力伝達装置10の外部空間(ここではボルト配置空間60)のみを経由する移動経路しかない。この点、本実施形態のアダプタ16は、第1ボルト穴46と軸方向Xに重なる位置に設けられる外周開口部70を備える。よって、第1開口縁70aから外周開口部70内にボルト52を挿入することで、外周開口部70を通して挿入直前位置P1までボルト52を移動させることができるようになる。つまり、ボルト挿入作業時に動力伝達装置10との干渉を回避しつつボルト52を挿入直前位置P1まで移動させるうえで、外周開口部70と外部空間72の両方を経由する新しい移動経路を通してボルト52を移動させることが可能となる。
【0038】
仮に、動力伝達装置10に外周開口部70がなく、動力伝達装置10の外部にボルト配置空間60がある場合、ボルト52を挿入直前位置P1に配置するうえで、ボルト52の全体をボルト配置空間60に配置する必要がある。この場合、ボルト配置空間60の軸方向寸法L60よりも長いボルト寸法L52を持つボルト52を使用しようとすると、動力伝達装置10とボルト52が干渉してしまう。これを回避するうえで、ボルト寸法L52の大きさはそのままに、そのボルト寸法L52よりもボルト配置空間60の軸方向寸法L60を広げてしまうと、動力伝達装置10の軸方向寸法の大型化を招いてしまう。
【0039】
(B)この点、本実施形態では、ボルト配置空間60の軸方向寸法L60よりもボルト寸法L52を長くしつつ、動力伝達装置10が前述の外周開口部70を備える。よって、動力伝達装置10の外周開口部70とボルト配置空間60を通るようにボルト52を移動させることで、ボルト配置空間60の軸方向寸法L60より長いボルト寸法L52のボルト52でも、動力伝達装置10と干渉させることなく挿入直前位置P1まで移動させることができる。このとき、外周開口部70の軸方向寸法L70の分だけ、ボルト52を挿入直前位置P1まで移動させるうえで、動力伝達装置10とボルト52の干渉を回避するために必要なボルト配置空間60の軸方向寸法L60を削減できる。このため、動力伝達装置10との干渉を回避するために、ボルト寸法L52の大きさはそのままにボルト寸法L52よりもボルト配置空間60の軸方向寸法L60を広げる場合と比べ、動力伝達装置10の軸方向寸法の小型化を図ることができる。
【0040】
(C)本実施形態のアダプタ16は、モータ14に固定される第1アダプタ部材48と減速機12に固定される第2アダプタ部材50とを備える。仮に、ボルト配置空間60の軸方向寸法L60よりもボルト寸法L52が長い場合、ボルト挿入作業での動力伝達装置10との干渉を回避するため、第1アダプタ部材48から第2アダプタ部材50を取り外すことで、ボルト配置空間60を形成するモータ側外面部62Aを除去する手段も考えられる。この点、本実施形態によれば、ボルト配置空間60の軸方向寸法L60よりもボルト寸法L52が長い場合でも、前述の外周開口部70により、第1アダプタ部材48から第2アダプタ部材50を取り外すことなく、ボルト挿入作業での動力伝達装置10とボルト52との干渉を回避できる。よって、ボルト挿入作業での組み立て性の低下を防止しつつ、動力伝達装置10の軸方向寸法の小型化を図ることができる。
【0041】
ボルト52が締結された状態において、外周開口部70は、ボルト52の軸部52aの一部と径方向に重なる。よって、ボルト52の頭部52bのみと径方向に重なる位置に外周開口部70を設ける場合と比べ、外周開口部70の軸方向寸法L70を容易に長くすることができる。この他に、外周開口部70の軸方向寸法L70を長くすることで、ボルト挿入作業時の動力伝達装置10とボルト52との干渉を回避するために必要なボルト配置空間60の軸方向寸法L60を更に削減できる。ひいては、動力伝達装置10の軸方向寸法の更なる小型化を図ることができる。
【0042】
(第2実施形態)図5図6を参照する。本実施形態の動力伝達装置10は、第1実施形態と比べて、次に説明する外周開口部70に関連する特徴において相違し、他の点において共通している。
【0043】
本実施形態の外周開口部70は、ボルト52が締結された状態において、ボルト52の頭部52bと径方向に重なる。この条件を満たすうえで、本実施形態の外周開口部70は、アダプタ16の第2ボルト穴16c(減速機固定部16b)に設けられる。外周開口部70の軸方向寸法L70は、ボルト52の頭部52bの軸方向寸法L52bよりも長い。外周開口部70は、第1実施形態とは異なり、軸方向Xから見て、ボルト52の頭部52bを収容可能な大きさとなる。本実施形態の外周開口部70の底部70cにはボルト52の頭部52bが座する座面部74が設けられる。
【0044】
このように外周開口部70は、ボルト52が締結された状態において、ボルト52の頭部52bと径方向に重なる。よって、ボルト52の頭部52bを外周開口部70内に収容できるようになり、外部空間72の物体とボルト52の頭部52bとの干渉を回避し易くすることができる。また、ボルト52の軸部52aと径方向に重なる位置に外周開口部70を設ける場合と異なり、外周開口部70の底部70cに環状に連続する座面部74を設けることができる。これにより、座面部74に外周開口部70を設ける場合と比べ、座面部74によりボルト52の頭部52bを受ける座面面積を広くすることができる。
【0045】
この他に、本実施形態の動力伝達装置10は、前述した(A)、(B)、(C)で説明した構成要素を備え、それらの説明に対応する効果を得ることができる。
【0046】
(第3実施形態)図7図9を参照する。本実施形態の動力伝達装置10は、第1実施形態と比べて、次に説明する外周開口部70に関連する特徴において相違し、他の点において共通している。
【0047】
本実施形態の外周開口部70は、アダプタ16のモータ固定部16aに設けられる。本実施形態の外周開口部70は、ボルト配置空間60に対してモータ側に設けられ、その第2開口縁70bはモータ側外面部62Aに開口している。本実施形態の外周開口部70は、軸方向Xから見て、ボルト52の頭部52bを収容可能な大きさとなる。外周開口部70の軸方向寸法L70は、ボルト52の頭部52bの軸方向寸法L52bよりも長い。アダプタ16の反モータ側外面部62Bにはボルト52の頭部52bが座するとともに環状に連続する座面部74が設けられる。
【0048】
本実施形態の動力伝達装置10も、前述した(A)、(B)、(C)で説明した構成要素を備え、それらの説明に対応する効果を得ることができる。
【0049】
(第4実施形態)図10を参照する。本実施形態の動力伝達装置10は、第1実施形態と比べて、次に説明するアダプタ16の減速機固定部16bと、外周開口部70に関連する特徴とにおいて相違し、他の点において共通している。
【0050】
本実施形態のアダプタ16の減速機固定部16bは減速機12のモータ側キャリヤ26Bに固定される。減速機固定部16bは、モータ側キャリヤ26Bと軸方向Xに重ね合わせたうえでボルトB3を用いて締結することでモータ側キャリヤ26Bに固定される。ボルトB3は、第1アダプタ部材48、第2アダプタ部材50の内部にモータ側から挿入される。アダプタ16は、ボルト52と軸方向に重なる位置で、かつ、モータ側キャリヤ26Bと径方向に重なる位置には配置されない。また、アダプタ16は、減速機ケーシング24の径方向外側において径方向に重なる位置には配置されない。これにより、モータ側キャリヤ26Bと径方向に重なる位置にアダプタ16が配置される場合と比べ、ボルト配置空間60を形成するモータ側外面部62Aを反モータ側外面部62Bに近づける余地が生じる。よって、動力伝達装置10の軸方向寸法の更なる小型化を図ることができる。
【0051】
本実施形態では、アダプタ16に替えて、減速機12が外周開口部70を備える。外周開口部70は、前述と同様、第1ボルト穴46と軸方向Xに重なる位置から外周側に向かって開く。減速機12の外周開口部70は、減速機12(ここでは減速機ケーシング24)の外周面に開口する第1開口縁70aを備える。減速機12の外周開口部70は、減速機12の外周面に対して凹むように減速機12の一部を切り欠くことで設けられる。減速機12の外周開口部70は第1ボルト穴46に設けられる。本実施形態の外周開口部70も、第1実施形態と同様、ボルト52の軸部52aの一部と径方向に重なる。このように、ボルト52の軸部52aの一部と径方向に重なる外周開口部70を設けるうえでは、減速機12の第1ボルト穴46及びアダプタ16の第2ボルト穴16cのいずれに外周開口部70が設けられてもよい。
【0052】
このように減速機12が外周開口部70を備える場合も、第1開口縁70aから外周開口部70内にボルト52を挿入することで、外周開口部70を通して挿入直前位置P1(図示せず)までボルト52を移動させることができるようになる。この場合も、前述の(A)と同様、ボルト挿入作業時に動力伝達装置10との干渉を回避しつつボルト52を挿入直前位置P1まで移動させるうえで、外周開口部70と外部空間72の両方を経由する新しい移動経路を通してボルト52を移動させることが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態のボルト52のボルト寸法L52も、第1実施形態と同様、ボルト配置空間60の軸方向寸法L60よりも大きくなる。また、ボルト寸法L52は、外周開口部70の軸方向寸法L70とボルト配置空間60の軸方向寸法L60との合計よりも小さくなる。また、本実施形態において、ボルト配置空間60を形成する反モータ側外面部62Bは、前述したアダプタ16の減速機固定部16bに替えて、減速機ケーシング24の外部部材取付部24aに設けられる。
【0054】
次に、ここまで説明した各構成要素の変形形態を説明する。
【0055】
動力伝達装置10はアダプタ16を備えずともよい。この場合、減速機12はモータ14にアダプタ16を介さずに連結されていてもよい。この場合、ボルト52と軸方向に重なる位置にモータ14が配置されていてもよい。この場合、減速機12とモータ14との間にボルト配置空間60が設けられる。また、動力伝達装置10は、アダプタ16の有無によらず、モータ14に減速機12が連結されることを前提として、モータ14を省略した態様によって実現してもよい。
【0056】
減速機12の種類は特に限定されない。減速機12は、例えば、偏心揺動型減速機の他に、撓み噛合い型減速機、単純遊星型減速機、直交軸型減速機、平行軸型減速機等でもよい。また、偏心揺動型減速機の種類は特に限定されない。実施形態では、内歯歯車30の軸心上にクランク軸34が配置されるセンタークランクタイプを例に説明したが、この他にも、例えば、内歯歯車30の軸心からオフセットした位置に複数のクランク軸34が配置される振り分けタイプでもよい。また、撓み噛合い型減速機の種類は特に限定されず、例えば、カップ型、シルクハット型、筒型等でもよい。
【0057】
ここまで減速機12、アダプタ16のいずれかに外周開口部70が設けられる例を説明したが、モータ14に外周開口部70が設けられてもよい。これは、例えば、アダプタ16の外径が減速機12の外径よりも小さく、モータ14の外径がアダプタ16の外径よりも大きい場合を想定している。ボルト52と軸方向にアダプタ16が重ならず、ボルト52と軸方向にモータ14のみが重なる場合ともいえる。
【0058】
ここまでボルト配置空間60は、減速機12とアダプタ16との間に設けられる例を説明したが、減速機12とモータ14の間に設けられてもよい。これは、ボルト52よりもモータ側においてボルト52と軸方向Xに重なる位置にアダプタ16の一部が配置されず、モータ14のみが配置される場合を想定している。この場合、アダプタ16にモータ14が固定された場合にボルト配置空間60が設けられることになる。この場合、ボルト配置空間60を形成するモータ側外面部62Aは、モータ14に設けられることになる。この場合も、ボルト配置空間60を形成するモータ側外面部62Aは、第2アダプタ部材50から第1アダプタ部材48を取り外したときに除去されてもよい。
【0059】
アダプタ16は、モータ14に固定されるモータ固定部16aを有する第1アダプタ部材48と減速機12に固定される減速機固定部16bを有する第2アダプタ部材50とを備える例を説明した。この他にも、モータ固定部16aと減速機固定部16bとは同じ部材により一体に構成されてもよい。
【0060】
外周開口部70は、第2実施形態のようにボルト52の頭部52bと径方向に重なる位置に設けるうえで、減速機12の第1ボルト穴46(外部部材取付部24a)に設けられてもよい。また、外周開口部70は、ボルト52の頭部52b及び軸部52aの両方と径方向に重なる位置に設けられてもよい。
【0061】
外周開口部70は、第1ボルト穴46、第2ボルト穴16c及びモータ固定部16aのうち二つ以上の箇所に設けられてもよい。例えば、外周開口部70は、減速機12の第1ボルト穴46とアダプタ16の第2ボルト穴16cに設けられてもよいし、アダプタ16の第2ボルト穴16cとモータ固定部16aに設けられてもよいし。
【0062】
外部部材44は、減速機12の外部部材取付部24aに対してモータ側に配置されてもよい。減速機12の第1ボルト穴46及び外部部材44の第3ボルト穴44aのいずれかは軸方向に貫通しない有底孔であってもよい。
【0063】
ボルト52よりもモータ側においてボルト52と軸方向に重なる位置にはアダプタ16の一部又はモータ14のいずれが配置されていなくともよい。
【0064】
ボルト52のボルト寸法L52は、ボルト配置空間60の軸方向寸法L60よりも小さくなってもよい。
【0065】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。実施形態及び変形形態において言及している構造/数値には、製造誤差等を考慮すると同一とみなすことができるものも当然に含まれる。
【0066】
以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。例えば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形形態に対して実施形態及び他の変形形態の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【0067】
実施形態において単数部材により構成された構成要素は複数部材で構成されてもよい。同様に、実施形態において複数部材により構成された構成要素は単数部材で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…動力伝達装置、12…減速機、14…モータ、16…アダプタ、16a…モータ固定部、16c…第2ボルト穴、26A…キャリヤ、28…外歯歯車、44…外部部材、44a…第3ボルト穴、46…第1ボルト穴、48…第1アダプタ部材、50…第2アダプタ部材、52…ボルト、52a…軸部、52b…頭部、60…ボルト配置空間、70…外周開口部。
図1
図2
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図10