(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144287
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】居室構造、居室構造の加温方法
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20231003BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
E04H1/04 B
E04B1/76 100Z
E04B1/76 200Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051196
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】山本 正顕
(72)【発明者】
【氏名】高木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅之
(72)【発明者】
【氏名】池本 和大
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD15
2E001DD17
2E001DD18
2E001EA01
2E001EA04
2E001EA05
2E001FA07
2E001FA33
2E001GA24
2E001LA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】所定の居室に備えた暖房装置で、上記居室に隣接していない他の居室を効率よく加温しやすい居室構造及び居室構造の加温方法を提供すること
【解決手段】暖房装置11で加温可能な第1居室1と、第1居室1と通じる廊下3と、廊下3側に間仕切扉21を有する第2居室2と、間仕切扉21は、廊下3側と第2居室2側との温度に応じて相変化する潜熱蓄熱材を内蔵し、潜熱蓄熱材は、暖房装置11で第1居室1と共に加温された廊下3側より第2居室2側の温度が低く、かつ相変化温度以下になったときに、間仕切扉21で閉じられた第2居室内に放熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房装置で加温可能な第1居室と、
第1居室と通じる廊下と、
間仕切扉を廊下側に有する第2居室と、を備えた建築物の居室構造であって、
間仕切扉は、廊下側と第2居室側との温度に応じて相変化する潜熱蓄熱材を内蔵し、
潜熱蓄熱材は、暖房装置で第1居室と共に加温された廊下側より第2居室側の温度が低く、かつ相変化温度以下になったときに、間仕切扉で閉じられた第2居室内に放熱する
ことを特徴とする居室構造。
【請求項2】
廊下と通じていて第2居室付近に位置する玄関と、をさらに備えた請求項1に記載の居室構造であって、
潜熱蓄熱材の相変化温度は、玄関付近の温度に応じて設定される
ことを特徴とする居室構造。
【請求項3】
第1居室は、リビングルーム、リビングダイニングルーム、又はリビングダイニングキッチンルームであり、
第2居室は、第1居室より小さい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の居室構造。
【請求項4】
廊下は、第1居室に対して開閉自在な廊下扉を有し、
廊下扉は、第1居室の暖気を通過させる通気孔を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の居室構造。
【請求項5】
暖房装置で加温可能な第1居室と、
第1居室と通じる廊下と、
潜熱蓄熱材を内蔵している間仕切扉を廊下側に有する第2居室と、を備えた建築物の居室構造の加温方法であって、
潜熱蓄熱材を廊下側と第2居室側との温度に応じて相変化させ、
間仕切扉を閉じた状態で、暖房装置で第1居室と共に加温された廊下側より第2居室側の温度が低くなったときに、潜熱蓄熱材から第2居室内に放熱する
ことを特徴とする居室構造の加温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集合住宅の居室構造に関する
【背景技術】
【0002】
従来から、集合住宅等の居室には、広さや設備や居住者の希望に応じた間取りが採用されてきた。近年では、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)及び環境問題に鑑み、断熱性能を向上させたり、高効率な設備を導入したりして、大幅な省エネルギーを実現すると共に、再生可能エネルギーを導入してエネルギー消費量を抑える住宅{ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)}が注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定の居室と浴室と間にある洗面室の浴室扉や居室扉に潜熱蓄熱材を内蔵し、居室と洗面室内との温度差や浴室内と洗面室内との温度差に応じて潜熱蓄熱材を相変化させ、洗面室内の温度を下がりにくくする技術が開示されている。また、居室は、暖房機器を備えることで、冬の時期でも室内温度が下がり過ぎないように構成されている(段落「0031」、「0032」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、洗面室が居室と浴室とに隣接していなければ加温されにくく、換言すると、隣接する空間同士でなければ所望の効果を得にくい。ただし、洗面室は居室より狭くて高い温度になりやすいことから、居室側から暖気を得て蓄熱しにくく、実際には浴室側から暖気を得て蓄熱せざるを得ない。また、洗面室はもともと浴室からの熱気を受けて加温されやすいことから、潜熱蓄熱材による加温効果を体感しにくいばかりでなく、潜熱蓄熱材からの放熱により冷めにくくなるため、入浴後にかえって汗ばんでしまうおそれもある。
【0006】
また、高断熱仕様であるZEHでは、居室を複数有していても、例えばリビングルームに備えられた暖房装置の稼働のみにより省エネルギーを実現しやすく、離れた寝室や子ども部屋を含む住居全体で温度差の少ない環境を得やすい。しかし実際には、リビングルームが廊下扉を閉じて使用されたり、寝室や子ども部屋が間仕切扉を閉じて使用されたりすると、温度差が縮まりにくい。すなわち、潜熱蓄熱材の活用により、隣接していない部屋同士の温度差を少なくすべき課題に、発明者らは辿り着いた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、所定の居室に備えた暖房装置で、上記居室に隣接していない他の居室を効率よく加温しやすい居室構造及び居室構造の加温方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、暖房装置で加温可能な第1居室と、第1居室と通じる廊下と、廊下側に間仕切扉を有する第2居室と、を備えた建築物の居室構造であって、間仕切扉は、廊下側と第2居室側との温度に応じて相変化する潜熱蓄熱材を内蔵し、潜熱蓄熱材は、暖房装置で第1居室と共に加温された廊下側より第2居室側の温度が低く、かつ相変化温度以下になったときに、間仕切扉で閉じられた第2居室内に放熱することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1居室の暖気が廊下に伝わって第1居室と廊下との温度差が縮まりやすく、廊下に比べて冷えた第2居室の温度に応じて間仕切扉内の潜熱蓄熱材が放熱して第2居室を加温することから、間仕切扉を閉じた状態であっても第2居室を所望の環境に維持しやすい効果を期待できる。すなわち、第1居室の暖房装置のみで、第2居室を含む居室全体を均一な温度に維持しやすい効果を期待できる。また、第1居室の暖房を常時稼働すれば、廊下の暖気も確保されるため、第2居室に放熱した分を廊下から蓄熱できる効果を期待できる。
【0010】
以下、本発明における居室構造を構成する技術要素の定義や例示を記す。
【0011】
「建築物」とは、例えば、集合住宅・戸建住宅・仮設住宅・学校・病院・高齢者施設・障害者施設・各種商業施設であり、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄骨造といった構造やサイズを限定しない。「建築物」が集合住宅の場合、部屋数・サイズ・構造・施工方法といった本発明が実施される集合住宅内の各居室の仕様は限定されないが、好ましくはZEHの基準を満たす仕様である。ZEHの基準は、経済産業省資源エネルギー庁がインターネット上に公開している『ZEHの定義(改訂版)<戸建住宅> 平成31年2月』又は『ZEHの定義(改訂版)<集合住宅> 平成31年3月』に掲載されている内容である。
【0012】
集合住宅としての居室構造は、「第1居室」及び「第2居室」のように2つの居室に限らず、3つ以上の居室を含んでもよい。上記居室構造に含まれる居室の各々は、洋室でも和室でもよく、例えば、リビングルーム・リビングダイニングルーム、・リビングダイニングキッチンルーム・寝室・子ども部屋・書斎であり、サイズや形状を限定しない。上記居室構造は、上記居室以外に、玄関・洗面室・浴室・トイレ・キッチン・納戸・ウォークインクローゼットを含んでもよい。上記居室構造の間取りは、1LDK以上であればよく、例えば、田の字型・ワイドスパン型・角住戸型・センターイン型である。
【0013】
「廊下」とは、各居室を形成する間仕切壁や間仕切扉を含むその他建具で挟まれて第1居室と第2居室とを連結する細長い空間であり、第1居室及び/又は第2居室の出入口に長手方向から通じていても短手方向から通じていてもよく、第1居室及び/又は第2居室と高低差を有さない平坦状でも高低差を有する段差状でもよいが、第1居室の暖気を第2居室に伝えやすいよう少なくとも第1居室の出入口に対して長手方向から一直線状に通じていることが好ましく、玄関と一直線状に通じていてもクランク状に通じていてもよい。
【0014】
「間仕切扉」とは、第2居室を含む各居室の出入口用や開閉用として形成される扉であり、開き戸タイプでも引き戸タイプでもよく、各居室を形成する固定された間仕切壁の開口に設置されるものでも、折り畳んだりスライドしたりして可動可能な間仕切壁を形成する複数のパネルのうち少なくとも一つでもよく、木製や樹脂製や金属製の下地材やボードで形成されて潜熱蓄熱材を内蔵する分の厚みや空間を有していればよく、サイズや形状を限定しない。固定された間仕切壁は、下地材や石膏ボード等で形成されたものでよく、本発明を効果的に実施するために、潜熱蓄熱材を内蔵していないものが好ましい。
【0015】
「潜熱蓄熱材」とは、パラフィン等の原料を封入したパック材や塗布したシート材であり、好ましくは加温する第2居室に面するボードの裏面に貼られてもよく、間仕切扉の略全面に貼られても全体に点在するように貼られてもよく、間仕切扉の上部分・中央部分・下部分・上端付近・下端付近・一方の側端付近・両側端付近のいずれか1か所又は2か所以上に貼られてもよく、サイズや形状や原料の量を限定しない。
【0016】
「潜熱蓄熱材の相変化温度」は、居室の各々や居室以外の空間付近の温度に応じて設定されてもよく、例えば、15~20℃であり、夜間等で第2居室側の温度が18℃より低いのに吸熱したり放熱しなかったりすると第2居室が寒くて健康を害するおそれがあり、日中等で第2居室側の温度が22℃より高いのに吸熱しなかったり放熱したりすると、第2居室が暑くて不快を与えるのみならずエネルギー効率が下がるおそれがあるからである。
【0017】
「暖房装置」は、第1居室を加温できるものであればいずれでもよく、例えば、第1居室の壁面に据え付けられたエアコン、床に敷設された電気式の床暖房やカーペット、床に置いて持ち運べる電気式のファンヒーターや化石燃料式のストーブのいずれかであり、二種類以上の組み合わせでもよい。本発明を効果的に実施するために、暖房装置が廊下及び第2居室に備えられていないか、備えられていても稼働していない状態が好ましい。
【0018】
以下、本発明における居室構造としてより望ましい構成を記す。
【0019】
上記居室構造は、廊下と通じていて第2居室付近に位置する玄関と、をさらに備え、潜熱蓄熱材の相変化温度は、玄関付近の温度に応じて設定されていることが望ましい。玄関付近の温度は、17~18℃である。この構成によれば、玄関は外気に触れやすく相対的に冷えやすいことから、第2居室が冷え過ぎないうちに潜熱発熱体を放熱させて加温できる効果を期待できる。
【0020】
第1居室は、リビングルーム、リビングダイニングルーム、又はリビングダイニングキッチンルームであり、第2居室は、第1居室より小さいことが望ましい。この構成によれば、第1居室の使用頻度が最も高めになる分、暖房装置の稼働率も加温効率も高めになるため、第1居室より小さい第2居室も効率良く加温しやすいことから、第1居室と廊下と第2居室との温度差が生じにくくなる効果を期待できる。
【0021】
廊下は、第1居室に対して開閉自在な廊下扉を有し、廊下扉は、第1居室の暖気を通過させる通気孔を有することが望ましい。この構成によれば、廊下扉を閉じて第1居室のプライベート空間を確保したり加温効率を高めたりしつつ、第1居室の暖気を廊下に伝えやすくできるため、第1居室と廊下との温度差を縮めやすくする効果を期待できる。
【0022】
「廊下扉」とは、第1居室と廊下とを隔てる開き戸であり、第1居室と廊下との境界に取り付けられてもよく、木製や樹脂製や金属製の下地材やボードで形成されてもよく、サイズや形状を限定しない。「通気孔」は、廊下扉に形成された円形状や矩形状の小さ目な貫通孔でもよいが、意匠性やブラインド効果に鑑みれば、好ましくはスリットであり、より好ましくは廊下扉に形成された大き目な貫通孔に取り付けられたルーバーを構成する個々の羽の隙間である。
【0023】
また、本発明は、暖房装置で加温可能な第1居室と、第1居室と通じる廊下と、潜熱蓄熱材を内蔵している間仕切扉を廊下側に有する第2居室と、を備えた建築物の居室構造の加温方法であって、潜熱蓄熱材を廊下側と第2居室側との温度に応じて相変化させ、間仕切扉を閉じた状態で、暖房装置で第1居室と共に加温された廊下側より第2居室側の温度が低くなったときに、潜熱蓄熱材から第2居室内に放熱することを特徴とする。この方法により期待できる効果は、上述した居室構造により得られる効果と同様である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、所定の居室の暖房装置で、上記居室に隣接していない他の居室を効率よく加温しやすい効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態における居室構造の平面図である。
【
図2】上記平面図におけるA-A部分拡大端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、
図1及び
図2を参照しつつ、本発明の一実施形態における居室構造(以下、「本居室構造」ともいう。)及びこの加温方法について説明する。これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番した部分もある。説明の便宜上、所定の部位やこの部位の引き出し線をかくれ線(破線)で示した部分もある。説明において、上方、下方、側方、垂直方向、水平方向等の向きを示す用語は、基本的に通常の建築物を基準とし、これ以外を基準にする場合は適宜説明する。
【0027】
<本居室構造の概要>
図1に示すとおり、本居室構造は、集合住宅の所定階の居室Rに関し、居室Rの間取りは、田の字型の3LDKであり、暖房装置11で加温可能でキッチンKを含む第1居室1と、第1居室1と通じる廊下3と、廊下3側に間仕切扉21を有する第2居室2と、廊下3と通じていて第2居室2付近に位置する玄関4と、を少なくとも備えている。
図1に示す矢印は、暖房装置11の稼働により流れる暖気の方向である。
【0028】
換言しつつ詳細に説明すると、本居室構造は、平面視長方形状で、長手方向に略二等分した一方側に、ベランダV側から、第1居室1と、第1居室1に含まれるキッチンKと、キッチンKと隣接する第2居室2と、第1居室1と通じていて第2居室2の間仕切壁に沿って延びる廊下3と、廊下3と通じていて第2居室2と隣接している玄関4と、を備え、他方側に、ベランダV側から、第3居室R1と、第3居室R1と隣接するトイレTと、トイレTと隣接する洗面所兼脱衣所を含む浴室Bと、浴室Bと隣接する第4居室R2と、を備えており、短手方向に、第1居室1と第3居室R1・トイレT・浴室Bとが隣接し、第2居室2と第4居室R2とが廊下3及び玄関4を挟んで隣接している。
【0029】
<第1居室1・暖房装置11・キッチンKの詳細>
第1居室1は、リビングダイニングキッチンルームとして使用され、居室の中で最も大きい。第1居室1は、ベランダV側に配された壁の室内側に取り付けられた暖房装置11を有する。第1居室1は、ベランダVとの境界に図示しない掃き出し窓やハイサッシの窓を有していてもよく、日中にこれらの窓から入る太陽光により加温されてもよい。暖房装置11は、第1居室1の天井と壁とで形成される隅付近にあるが、例えば廊下3と一直線状になる位置にあってもよく、第1居室1内を加温できれば、位置を限定しない。キッチンKは、シンクやコンロを備えた腰高のカウンターを有し、カウンター越しから第1居室1を見渡せるように配置されており、暖房装置11で加温可能である。
【0030】
<第2居室2の詳細>
第2居室2は、洋室であり、子ども部屋や寝室として使用され、第1居室1より小さく、第2居室2の床面積が第1居室1の床面積の10分の1~10分の9でもよく、加温効率に鑑みて、好ましくは10分の3~10分の7であり、より好ましくは10分の4~10分の6である。第2居室2は、玄関4と通じる図示しない室外廊下に面する外壁と間仕切壁とで略長方形状に形成されており、間仕切壁に形成された出入口を廊下3側に有し、間仕切壁を介してキッチンK・玄関4と隣り合っている。第2居室2は、所定の暖房装置を上記外壁の室内側に取り付け可能な仕様でもよく、上記外壁に腰高の窓を有していてもよい。
【0031】
<間仕切扉21の詳細>
間仕切扉21は、公知技術に基づき、木製や樹脂製の下地材やボードで形成され、第2居室2の出入口を開閉する片引き戸であるが、両引戸でもよく、平坦状の床に設置されたレールを戸車でスライドしても、鴨居に設置されたレールを吊車でスライドしてもよく、アウトセット構造でもよい。
図2に示すように、間仕切扉21は、潜熱蓄熱材21aを内蔵している。潜熱蓄熱材21aは、パラフィン等の原料の封入したパック材であり、間仕切扉21の内側の略全体に貼られている。潜熱蓄熱材21aは、工場での間仕切扉21の製作時に内蔵され、建築現場での内蔵工事で内蔵されなくてもよく、この場合、間仕切扉21は、単体で流通されてもよい。
【0032】
<潜熱蓄熱材21aの詳細>
図1及び
図2に示すように、潜熱蓄熱材21aの相変化温度は、玄関4付近の温度である17~18℃に設定されている。
図2(a)及び
図2(b)に示す矢印は、潜熱蓄熱材21aによる吸熱・放熱の向きである。間仕切扉21が閉じている状態で、例えば、
図2(a)に示すように、日中の時間帯に廊下3側の温度も第2居室2側の温度も20℃以上になった場合、潜熱蓄熱材21aは廊下3側からも第2居室2側からも吸熱する。一方、
図2(b)に示すように、夜間の時間帯に、第1居室1の暖房装置11が稼働され、第1居室1と共に廊下3側の温度が20℃以上であり第2居室2側の温度が20℃未満の場合、潜熱蓄熱材21aは第2居室2側に放熱する。潜熱蓄熱材21aは、パック材の耐久性次第では、検査や交換を必要としない。
【0033】
<廊下3・玄関4の詳細>
図1に示すように、廊下3は、第2居室2を形成する間仕切壁と、第4居室R2を形成する間仕切壁と、床とで形成された細長い通路状の空間である。廊下3は、第1居室1の出入口と一直線状に直結しており、第1居室1との境界部分に廊下扉を有していてもよい。玄関4は、第1居室1とは逆側から廊下3と直結しており、換言すると、廊下3を経由して第1居室1と一直線状に通じており、第1居室1より小さいため、第1居室1からの暖気により廊下3を介して加温されてもよい。
【0034】
<廊下扉31の詳細>
図1に示すように、廊下扉31は、ルーバーを有している。ルーバーは、廊下扉31の所定の箇所に取り付けられ、廊下扉31の上層・中層・下層のいずれか或いは2か所以上、上半分・下半分のいずれか、又は略全面に取り付けられてもよい。ルーバーを構成する個々の羽の角度は、水平でもよいが、好ましくは第1居室1側から廊下3側に向かって斜め下方に30~60°であり、廊下3側からの第1居室1のブラインド効果を得るためより好ましくは40~50°であり、廊下扉31に対して固定式であっても可変式であってもよい。上記羽の幅は、50~120mmであり、50mmより細いと羽の枚数が多く通気路の幅が狭過ぎて通気効率が低下するおそれがあり、120mmより太いと羽の枚数が少なく通気路の幅が広過ぎてブラインド効果が低下するおそれがあるためである。
【0035】
<本居室構造の作用効果>
したがって、本居室構造によれば、暖房装置11による第1居室1の暖気が廊下3に伝わって第1居室1と廊下3との温度差が縮まりやすく、廊下3に比べて冷えた第2居室2の温度に応じて間仕切扉21内の潜熱蓄熱材21aが放熱して第2居室2を加温することから、間仕切扉21を閉じた状態であっても第2居室2を所望の環境に維持できる。すなわち、第1居室1の暖房装置11のみで、第2居室2を含む居室全体を均一な温度に維持できる。玄関4は外気に触れやすく相対的に冷えやすいため、玄関4に隣接している第2居室2が冷え過ぎないうちに潜熱蓄熱材21aを放熱させて加温できる。第1居室1の使用頻度が最も高めになる分、暖房機器11の稼働率も加温効率も高めになるため、第1居室1より小さい第2居室2も効率良く加温しやすいことから、第1居室1と廊下3と第2居室2との温度差が生じにくくできる。廊下扉3により廊下3の加温効率を下げることなく第1居室1のプライベート空間を確保できる。
【0036】
すなわち、本居室構造によれば、ダクト等で各居室を接続する全館空調のような特殊な設備が不要であるため、相対的に初期費用や稼働・管理費用も安価となり、廊下3から暖気を第2居室2に流入しやすくする間仕切扉21の下端等の隙間が不要であるため、第2居室2の遮音性もプライバシーも確保でき、熱還流率を高めるような間仕切扉21の薄化が不要であるため、間仕切扉21の強度や品質の低下を回避できる。
【0037】
なお、本実施形態に示した居室構造は、上述した内容に限定されず、同等の効果を得られる限り、あらゆる部分の位置・形状・寸法や、部分同士の関係を含む。
【0038】
例えば、第3居室R1は間仕切壁R1aに、第4居室R2は間仕切壁R2aに、それぞれ潜熱蓄熱材を内蔵し、第2居室2と同様に加温可能な仕様にしてもよい。間仕切壁R1aに内蔵される潜熱蓄熱材の相変化温度は、第1居室1に隣接している第3居室R1が玄関4に隣接している第2居室2や第4居室R2より相対的に暖まりやすいことから、潜熱蓄熱材21aの相変化温度より高めに設定してもよく、例えば21℃でもよい。
【0039】
<本居室構造の加温方法の一例>
第1居室1の温度が20℃以下の場合、暖房装置11で少なくとも第1居室1を20℃まで加温し、第1居室1から暖気を流して、所定時間後に廊下3の温度も第1居室1の温度と同等にする。第2居室2の温度が20℃以下の場合、廊下3と第2居室2との温度差を潜熱蓄熱材21aで感知し、潜熱蓄熱材21aから第2居室2の温度が20℃になるまで放熱する。廊下3と第2居室2との温度差がなくなると、潜熱蓄熱材21aの放熱を自動的に停止する。
【符号の説明】
【0040】
R 居室
1 第1居室
11 暖房装置
2 第2居室
21 間仕切壁
21a 潜熱蓄熱材
3 廊下
31 廊下扉
4 玄関
R1 第3居室
R2 第4居室
K キッチン
T トイレ
B 浴室