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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144289
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】位置検出システム、及び、照明装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/808 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
G01S3/808
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051198
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 弘通
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AB09
5J083AB14
5J083AC40
5J083AD01
5J083AD04
5J083AD17
5J083AE08
5J083AE10
5J083AF01
5J083AF04
5J083AG05
5J083CA10
5J083CA13
5J083CB01
5J083CB30
(57)【要約】
【課題】所定の空間における物体の座標を推定することができる位置検出システムを提供する。
【解決手段】位置検出システム10または位置検出システム10aは、室内空間60の天井に設置された照明装置30と、室内空間60の床面を移動する移動体に取り付けられた超音波発信器20とを備える。照明装置30は、光源31と、光源31を明滅させることにより光ID信号を出力する光源制御部32と、超音波発信器20が光ID信号を受信したことを契機に発する超音波を受信する超音波アレイセンサ35と、受信された超音波に基づいて、移動体の位置を検出する信号処理部34とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の天井に設置された照明装置と、
前記空間の床面を移動する移動体に取り付けられた超音波発信器とを備え、
前記照明装置は、
光源と、
前記光源を明滅させることにより光ID信号を出力する光源制御部と、
前記超音波発信器が前記光ID信号を受信したことを契機に発する超音波を受信する超音波アレイセンサと、
受信された前記超音波に基づいて、前記移動体の位置を検出する信号処理部とを備える
位置検出システム。
【請求項2】
前記位置検出システムは、複数の前記超音波発信器を備え、
複数の前記超音波発信器のそれぞれは、当該超音波発信器のIDを示す前記光ID信号を受信したことを契機に前記超音波を発し、
前記光源制御部は、複数の前記超音波発信器のIDに対応する複数の前記光ID信号を順番に出力し、
前記信号処理部は、複数の前記光ID信号の出力タイミングに基づいて、前記移動体の位置と他の移動体の位置とを区別して検出する
請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記位置検出システムは、複数の前記照明装置を備え、
複数の前記照明装置のそれぞれは、複数の前記光ID信号を同一順序で出力し、
複数の前記照明装置は、同一のIDを示す前記光ID信号を同一タイミングで出力するように同期する
請求項2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記位置検出システムは、複数の前記照明装置を備え、
複数の前記照明装置のそれぞれは、他の前記照明装置と同期した上で、固定の長さの期間を乱数に基づく調整量で調整した周期で、複数の前記光ID信号を同一順序で出力する
請求項2に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記光ID信号の出力タイミングから所定時間の経過後に前記超音波を受信した場合、前記超音波に基づく前記移動体の位置の検出を行わない
請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記移動体は、人であり、
前記超音波発信器は、さらに、前記超音波発信器を前記人に取り付けるためのストラップを備える
請求項1~5のいずれか1項に記載の位置検出システム。
【請求項7】
空間の天井に設置される照明装置であって、
光源と、
前記光源を明滅させることにより光ID信号を出力する光源制御部と、
前記空間の床面を移動する移動体に取り付けられた超音波発信器が前記光ID信号を受信したことを契機に発する超音波を受信する超音波アレイセンサと、
受信された前記超音波に基づいて、前記移動体の位置を検出する信号処理部とを備える
照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出システム、及び、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動体の数が多くても、各移動体の所在を正確にかつリアルタイムで把握できる位置検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-279640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、設置作業が簡略化された位置検出システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る位置検出システムは、空間の天井に設置された照明装置と、前記空間の床面を移動する移動体に取り付けられた超音波発信器とを備え、前記照明装置は、光源と、前記光源を明滅させることにより光ID信号を出力する光源制御部と、前記超音波発信器が前記光ID信号を受信したことを契機に発する超音波を受信する超音波アレイセンサと、受信された前記超音波に基づいて、前記移動体の位置を検出する信号処理部とを備える。
【0006】
本発明の一態様に係る照明装置は、空間の天井に設置される照明装置であって、光源と、前記光源を明滅させることにより光ID信号を出力する光源制御部と、前記空間の床面を移動する移動体に取り付けられた超音波発信器が前記光ID信号を受信したことを契機に発する超音波を受信する超音波アレイセンサと、受信された前記超音波に基づいて、前記移動体の位置を検出する信号処理部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設置作業が簡略化された位置検出システム等が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1に係る位置検出システムの機能構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1に係る位置検出システムが適用される室内空間を示す図である。
図3図3は、実施の形態1に係る照明装置の外観の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係る位置検出システムの動作のシーケンス図である。
図5図5は、実施の形態2に係る位置検出システムの機能構成を示すブロック図である。
図6図6は、複数の照明装置の超音波の検出可能エリアを模式的に示す図である。
図7図7は、位置検出の誤りが生じる場合のタイムチャートである。
図8図8は、実施の形態2に係る位置検出システムの光ID信号の出力動作例1を示すタイムチャートである。
図9図9は、実施の形態2に係る位置検出システムの光ID信号の出力動作例2のタイムチャートである。
図10図10は、所定時間の決定方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0011】
(実施の形態1)
[構成]
まず、実施の形態1に係る位置検出システムの構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る位置検出システムの機能構成を示すブロック図である。図2は、実施の形態1に係る位置検出システムが適用される室内空間を示す図である。
【0012】
実施の形態1に係る位置検出システム10は、超音波発信器20が発する超音波に基づいて室内空間60の床面を移動する移動体の位置(座標)を検出するシステムである。室内空間60は、例えば、オフィス空間であるが、商業施設内の空間、または、住宅内の空間などのその他の施設内の室内空間であってもよい。移動体は、例えば、人などの生命体であるが、ショッピングカートなどの有体物(人以外の物体。例えば、非生命体)であってもよい。
【0013】
図1及び図2に示されるように、位置検出システム10は、複数の超音波発信器20と、照明装置30とを備える。なお、位置検出システム10は、超音波発信器20を少なくとも1つ備えればよい。
【0014】
まず、超音波発信器20について説明する。超音波発信器20は、移動体(図2の例では人)に取り付けられた状態で超音波を発する。超音波発信器20は、例えば、ストラップを備え、人の首にぶら下げられるが、移動体(人)に超音波発信器20を取り付ける具体的方法は特に限定されない。超音波発信器20は、受光部21と、復調部22と、制御部23と、メモリ24と、ドライバ25と、音源26とを備える。
【0015】
受光部21は、照明装置30が出力する光ID信号を受信する。受光部21は、フォトダイオードまたはイメージセンサなどによって実現される。なお、光ID信号は、言い換えれば、可視光通信信号であり、照明装置30が備える光源の明滅(点滅)によって実現される。
【0016】
光ID信号は、具体的には、超音波発信器20のIDを示す信号であり、超音波発信器20は、当該超音波発信器20のIDを示す光ID信号を受信すると、これを契機に超音波を発する。なお、光ID信号は、ASK(Amplitude Shift Keying)または、PPM(Pulse Position Modulation)などの変調方式によって変調された信号である。
【0017】
復調部22は、受光部21によって受信された光ID信号を復調する復調回路である。
【0018】
制御部23は、復調部22によって復調された光ID信号が、当該制御部23を備える超音波発信器20(以下、自装置とも記載される)のIDを示すか否かを判定し、自装置のIDであると判定した場合に、ドライバ25へ制御信号を出力することにより、音源26から超音波を発生させる。なお、制御部23は、復調部22によって復調された光ID信号が自装置のIDではないと判定した場合には音源26から超音波を発生させない。
【0019】
制御部23は、具体的には、プロセッサまたはマイクロコンピュータによって実現される。制御部23の機能は、制御部23を構成するプロセッサまたはマイクロコンピュータがメモリ24に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
【0020】
メモリ24は、制御部23が実行するコンピュータプログラムなどが記憶される記憶装置である。メモリ24は、具体的には、半導体メモリなどによって実現される。メモリ24は、制御部23に内蔵されてもよい。
【0021】
ドライバ25は、制御部23が出力する制御信号の信号レベルを増幅する増幅回路である。ドライバ25によって増幅された制御信号は、音源26に出力される。
【0022】
音源26は、ドライバ25によって増幅された制御信号に基づいて空気を振動させることにより超音波を発生する。音源26は、具体的には、熱励起式の超音波発生素子によって実現されるが、圧電式の超音波発生素子によって実現されてもよい。
【0023】
次に、照明装置30について説明する。照明装置30は、室内空間60の天井に設置され室内空間60を照らす。照明装置30は、例えば、ベースライトであるが、シーリングライト、スポットライト、または、ダウンライトなどであってもよく、照明装置30の具体的態様については特に限定されない。照明装置30は、光源31と、光源制御部32と、メモリ33と、信号処理部34と、超音波アレイセンサ35とを備える。
【0024】
光源31は、室内空間60へ白色光(可視光)を照射する。光源31は、例えば、LED(Light Emitting Diode)素子によって実現されるが、半導体レーザ、有機EL(Electro-Luminescence)、または、無機EL等の他の発光素子によって実現されてもよい。
【0025】
光源制御部32は、光源31の発光制御を行う。例えば、光源制御部32は、光源31を明滅させることにより光ID信号を出力する。なお、光ID信号を出力しているときの光源31の明滅は高速であり、人間の目には光源31が定常発光しているように見えるが、受光部21であればこの明滅を電気信号として認識することができる。明滅とは、光源31が明るく発光する状態と暗く発光する状態(または光源31が消灯する状態)とが繰り返されることを意味し、点滅を含む意味である。
【0026】
光源制御部32は、具体的には、プロセッサまたはマイクロコンピュータによって実現される。光源制御部32の機能は、光源制御部32を構成するプロセッサまたはマイクロコンピュータがメモリ33に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
【0027】
メモリ33は、光源制御部32が実行するコンピュータプログラム、及び、信号処理部34が実行するコンピュータプログラムなどが記憶される記憶装置である。メモリ33は、具体的には、半導体メモリなどによって実現される。図1では、メモリ33は、光源制御部32及び信号処理部34によって共用されているが、照明装置30は、光源制御部32用のメモリと、信号処理部34用のメモリとを個別に備えてもよい。
【0028】
信号処理部34は、超音波アレイセンサ35によって受信された超音波に基づいて、超音波発信器20の位置、つまり、移動体の位置を検出する。信号処理部34は、具体的には、超音波アレイセンサ35に含まれる複数の受波素子のそれぞれにおける超音波の受信タイミングの差に基づいて、超音波発信器20が位置する方位を特定する。また、信号処理部34は、光ID信号の出力タイミング及び超音波の受信タイミングの差に基づいて、照明装置30から超音波発信器20までの距離を特定する。信号処理部34は、特定した方位及び距離により、移動体の位置を検出することができる。
【0029】
信号処理部34は、具体的には、プロセッサまたはマイクロコンピュータによって実現される。信号処理部34の機能は、信号処理部34を構成するプロセッサまたはマイクロコンピュータがメモリ33に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって実現される。
【0030】
超音波アレイセンサ35は、二次元アレイ状(言い換えれば、マトリクス状)に配置された複数の受波素子備え、複数の受波素子のそれぞれは、超音波を受信する。受波素子は、例えば、静電容量式のマイクロフォンによって実現されるが、圧電素子によって実現されてもよい。
【0031】
以上説明した照明装置30が備える構成要素は、照明装置30が備える外郭筐体に収容される。図3は、照明装置30の外観の一例を示す図である。図3に示されるように、光源31は、例えば、透光性カバー36によって覆われる。超音波アレイセンサ35は、例えば、超音波を通すための複数の小さな開口が設けられた非透光性カバー37によって覆われる。
【0032】
このように、位置検出システム10においては、超音波の発信のトリガとなる光ID信号を出力する照明装置30が超音波アレイセンサ35(超音波受信装置)を備えている。これにより、位置検出システム10における装置の設置作業は、照明装置30と超音波受信装置とを別途設置する必要がある位置検出システムに比べて簡略化される。
【0033】
ところで、熱励起式の超音波発生素子によって実現される音源26は共振特性のQ値が1程度であり、超音波アレイセンサ35が静電容量式のマイクロフォンによって実現される受波素子を備える場合の受波素子の共振特性のQ値は3~4程度である。
【0034】
このような構成によれば、音源26及び受波素子のそれぞれが圧電素子によって実現される場合に比べて、音源26から送波される超音波における残響成分に起因した不感帯を短くすることができる。また、受波素子で超音波を受波したときに発生する受波信号における残響時間についても短くすることができ、受波素子から出力される受波信号における残響成分に起因した不感帯を短くすることができる。したがって、角度分解能を改善することができる。なお、静電容量式のマイクロフォンは、圧電素子のように共振特性の高いQ値を持たないから、受波周波数の範囲を広くとることが可能になる。また、音源26及び受波素子それぞれの共振特性のQ値はいずれも10以下が望ましく、いずれも5以下がより望ましい。
【0035】
[動作]
次に、位置検出システム10の動作について説明する。図4は、位置検出システム10の動作のシーケンス図である。なお、以下の図4の説明では、移動体1に取り付けられた超音波発信器20を超音波発信器1と記載し、移動体2に取り付けられた超音波発信器20を超音波発信器2と記載する。超音波発信器1のIDは001であり、超音波発信器2のIDは002であるとする。
【0036】
照明装置30の光源制御部32は、複数の超音波発信器20(超音波発信器1及び超音波発信器2)のIDに対応する複数の光ID信号(ID001を示す光ID信号、及び、ID002を示す光ID信号)を順番に出力する。例えば、光源制御部32は、光源31を明滅させることによりID001を示す光ID信号を出力する(S11)。このとき、光源制御部32は、光ID信号の出力タイミングをメモリ33に記憶しておく。
【0037】
超音波発信器1の制御部23は、超音波発信器1の受光部21によって光ID信号が受信されると、当該光ID信号が示すIDがID001である(自装置のIDである)と判定し、ドライバ25及び音源26を介して超音波を発する(S12)。つまり、超音波発信器1の制御部23は、ID001を示す光ID信号を受信したことを契機に超音波を発する。
【0038】
一方、超音波発信器2の制御部23は、超音波発信器2の受光部21によって光ID信号が受信されると、当該光ID信号が示すIDがID002ではない(自装置のIDではない)と判定し、超音波を発しない。
【0039】
照明装置30の信号処理部34は、ステップS12において発せられた超音波が超音波アレイセンサ35によって受信されると、受信された超音波に基づいて、超音波発信器1の位置、つまり、移動体1の位置を検出する(S13)。信号処理部34は、具体的には、超音波アレイセンサ35に含まれる複数の受波素子のそれぞれにおける超音波の受信タイミングの差に基づいて、超音波発信器1が位置する方位を特定する。また、信号処理部34は、光ID信号の出力タイミング及び超音波の受信タイミングの差に基づいて、照明装置30から超音波発信器1までの距離を特定する。
【0040】
ここで、メモリ33には、室内空間60における照明装置30の設置位置(より詳細には、超音波アレイセンサの座標)があらかじめ記憶されている。信号処理部34は、照明装置30の設置位置、特定した方位、及び、特定した距離により、移動体1の位置(座標)を検出することができる。検出された位置(座標)は、現在時刻、及び、ID001と紐づけられてメモリ33に記憶される。
【0041】
次に、照明装置30の光源制御部32は、光源31を明滅させることによりID002を示す光ID信号を出力する(S14)。このとき、光源制御部32は、光ID信号の出力タイミングをメモリ33に記憶しておく。
【0042】
超音波発信器1の制御部23は、超音波発信器1の受光部21によって光ID信号が受信されると、当該光ID信号が示すIDがID001ではない(自装置のIDではない)と判定し、超音波を発しない。
【0043】
一方、超音波発信器2の制御部23は、超音波発信器2の受光部21によって光ID信号が受信されると、当該光ID信号が示すIDがID002である(自装置のIDである)と判定し、ドライバ25及び音源26を介して超音波を発する(S15)。つまり、超音波発信器2の制御部23は、ID002を示す光ID信号を受信したことを契機に超音波を発する。
【0044】
照明装置30の信号処理部34は、ステップS15において発せられた超音波が超音波アレイセンサ35によって受信されると、受信された超音波に基づいて、超音波発信器2の位置、つまり、移動体2の位置を検出する(S16)。信号処理部34は、具体的には、超音波アレイセンサ35に含まれる複数の受波素子のそれぞれにおける超音波の受信タイミングの差に基づいて、超音波発信器2が位置する方位を特定する。また、信号処理部34は、光ID信号の出力タイミング及び超音波の受信タイミングの差に基づいて、照明装置30から超音波発信器20までの距離を特定する。
【0045】
信号処理部34は、照明装置30の設置位置、特定した方位、及び、特定した距離により、移動体2の位置(座標)を検出することができる。検出された位置(座標)は、現在時刻、及び、ID002と紐づけられてメモリ33に記憶される。
【0046】
光源制御部32による光IDの出力は、周期的に繰り返される。したがって、メモリ33には、移動体1(超音波発信器1)の位置の時系列データ、及び、移動体2(超音波発信器2)の位置の時系列データが記憶される。このような時系列データが照明装置30からパーソナルコンピュータ等へ取り出されれば、当該時系列データを用いた動線解析などが可能となる。
【0047】
以上説明したように、位置検出システム10において、照明装置30の信号処理部34は、複数の光ID信号の出力タイミングに基づいて、移動体1の位置と他の移動体2の位置とを区別して検出することができる。
【0048】
(実施の形態2)
[構成]
次に、実施の形態2に係る位置検出システムの構成について説明する。図5は、実施の形態2に係る位置検出システムの機能構成を示すブロック図である。
【0049】
図5に示されるように、実施の形態2に係る位置検出システム10aは、複数の超音波発信器20と、複数の照明装置30と、制御コンピュータ40と、ハブ50とを備える。なお、位置検出システム10aが備える超音波発信器20の数、及び、照明装置30の数は特に限定されない。
【0050】
超音波発信器20及び照明装置30については、実施の形態1と同様の構成であるため詳細な説明が省略される。なお、位置検出システム10aは、位置検出システム10と同様の動作を行うことで移動体の位置を検出することができる。
【0051】
制御コンピュータ40は、複数の照明装置30を同期させるための時刻情報を出力する。時刻情報は、ハブ50を介して複数の照明装置30へブロードキャスト送信される。
【0052】
ハブ50の入力ポートには制御コンピュータ40が接続され、複数の出力ポートのそれぞれには照明装置30が接続される。なお、制御コンピュータ40及び複数の照明装置30の間の通信規格は、例えば、EIA-232-Eであるが、その他の通信規格であってもよい。
【0053】
[光ID信号の出力動作例1]
位置検出システム10aのように照明装置30が複数存在するシステムにおいては、複数の照明装置30が超音波を検出することができるエリアが重複する場合がある。図6は、複数の照明装置30の超音波の検出可能エリアを模式的に示す図である。なお、図6では、複数の照明装置30は、照明装置30a、及び、照明装置30bというように符号によって区別される。
【0054】
図6では、照明装置30aの超音波の検出可能エリアAと、照明装置30bの超音波の検出可能エリアBが図示されている。ここで、図6に示されるように、エリアA及びエリアBが重複するエリアCに移動体1が存在し、エリアBに移動体2が存在する場合、以下のように移動体の位置検出の誤りが生じ得る。図7は、位置検出の誤りが生じる場合のタイムチャートである。
【0055】
図7に示されるように、照明装置30aがID001を示す光ID信号を出力しているときに(図7の(a))、照明装置30bがID002を示す光ID信号を出力しているとする(図7の(c))。移動体2に取り付けられた超音波発信器2は、照明装置30bが出力した光ID信号を受信したことを契機に超音波を発する。ここで、移動体2は、エリアAの外であってエリアBの中に位置していることから、超音波発信器2によって発せられた超音波は、照明装置30bの超音波アレイセンサ35には到達するが(図7の(d))、照明装置30aの超音波アレイセンサ35には到達しない。
【0056】
一方、移動体1に取り付けられた超音波発信器1は、照明装置30aが出力した光ID信号を受信したことを契機に超音波を発する。ここで、移動体1は、エリアAの中であってエリアBの中でもあるエリアCに位置していることから、超音波発信器1によって発せられた超音波は、照明装置30aの超音波アレイセンサ35に到達し(図7の(b))、さらに、照明装置30bの超音波アレイセンサ35にも到達してしまう(図7の(d))。
【0057】
そうすると、照明装置30bが光ID信号を出力したことに応じて、照明装置30bの超音波アレイセンサ35は、超音波発信器1によって発せられた超音波、及び、超音波発信器2によって発せられた超音波を受信してしまう。
【0058】
そこで、位置検出システム10aにおいては、照明装置30a及び照明装置30bは、制御コンピュータ40によって出力される時刻情報に基づいて、同一のIDを示す光ID信号を同一タイミングで出力するように同期して動作する。図8は、このような光ID信号の出力動作例1を示すタイムチャートである。光ID信号の出力動作例1によれば、図7のように位置検出の誤りが生じてしまうことが抑制される。なお、ここでの同一タイミングとは、厳密に同一という意味ではなく、実質的に同一という意味である。
【0059】
[光ID信号の出力動作例2]
図8に示される光ID信号の出力動作例1においては、照明装置30aが出力した光ID信号、及び、照明装置30bが出力した光ID信号の衝突(一部または全部の相殺)により、これら2つの光ID信号を受信できる場所に位置する超音波発信器20が光ID信号を受信できなくなる可能性がある。
【0060】
そこで、位置検出システム10aにおいて、照明装置30a及び照明装置30bのそれぞれは、T+αの周期で、複数の前記光ID信号を同一順序で出力する。図9は、このような光ID信号の出力動作例2のタイムチャートである。
【0061】
Tは、固定の長さの期間であり、例えば、0.8秒である。αは、一様分布乱数に基づいて定まる調整量であり、光ID信号が出力されるごとに値が変化する。αは、例えば、-0.2秒以上0.2秒以下の範囲の任意の値となる。なお、αの絶対値は、Tの絶対値よりも小さい。
【0062】
このような光ID信号の出力動作例2によれば、調整量αにより照明装置30a及び照明装置30bの光ID信号の出力タイミングがずれやすくなることから、2つの光ID信号を受信できる場所において、2つの光ID信号の衝突が連続して発生することが抑制される。したがって、超音波発信器20が2つの光ID信号の衝突により光ID信号を受信できなかったとしても、次の光ID信号を受信できる可能性が高められる。
【0063】
[超音波を受信するまでの時間の制限]
ところで、図6のエリアCのような場所、及び、上記光ID信号の衝突が発生する場所は、照明装置30a、及び、照明装置30bのいずれからも遠い場所であることが多いと想定される。そこで、信号処理部34は、信号処理部34を備える照明装置30から遠い場所に位置する超音波発信器20が発した超音波を無効化してもよい。信号処理部34は、具体的には、光ID信号の出力タイミングから所定時間の経過後に超音波を受信した場合、当該超音波を無効なものとして取り扱い、当該超音波に基づく移動体の位置の検出を行わなくてもよい。
【0064】
移動体の位置の検出においては、複数の受波素子のそれぞれが受信した超音波の波形をメモリ33に記憶しておく必要があるが、上記構成によれば、不要な超音波の波形は破棄され、メモリ33には記憶されないため、メモリ33の容量を有効に活用することができる。
【0065】
所定時間は、例えば、図10に示されるように決定される。図10は、所定時間の決定方法の一例を示す図である。床面から天井までの高さをhとし、照明装置30から60°の範囲を有効範囲として定めると、図10の点Pよりも遠くに位置する超音波発信器20からの超音波が破棄されればよい。
【0066】
照明装置30の設置位置から点Pまでの距離は、2hとなり、点Pに位置する超音波発信器20が光ID信号を受信してすぐに超音波を発するとしたときに要する時間は、音速を340[m/s]として、2×2h/340となる。超音波発信器20が光ID信号を受信してから超音波を発するまでに実行すべき処理に要する時間をtとすると、点Pに位置する超音波発信器20が光IDを受信してから超音波を発するまでに要する時間は、t+2×2h/340となる。上記所定時間は、例えば、この式に基づいて定められる。なお、h=3[m]の場合、所定時間は、t+35.3[ms]となる。
【0067】
なお、このように光ID信号を出力してから超音波を受信するまでの時間に制限を設ける構成は、位置検出システム10aだけでなく位置検出システム10においても実現できる。
【0068】
(まとめ)
以上説明したように、位置検出システム10または位置検出システム10aは、室内空間60の天井に設置された照明装置30と、室内空間60の床面を移動する移動体に取り付けられた超音波発信器20とを備える。照明装置30は、光源31と、光源31を明滅させることにより光ID信号を出力する光源制御部32と、超音波発信器20が光ID信号を受信したことを契機に発する超音波を受信する超音波アレイセンサ35と、受信された超音波に基づいて、移動体の位置を検出する信号処理部34とを備える。
【0069】
このような位置検出システム10または位置検出システム10aは、光ID信号を出力する照明装置30が超音波アレイセンサ35を備えていることにより、設置作業が簡略化されている。つまり、位置検出システム10または位置検出システム10aは、設置作業が簡略化された位置検出システムとして有用である。
【0070】
また、例えば、位置検出システム10または位置検出システム10aは、複数の超音波発信器20を備える。複数の超音波発信器20のそれぞれは、当該超音波発信器20のIDを示す光ID信号を受信したことを契機に超音波を発する。光源制御部32は、複数の超音波発信器20のIDに対応する複数の光ID信号を順番に出力する。信号処理部34は、複数の光ID信号の出力タイミングに基づいて、移動体の位置と他の移動体の位置とを区別して検出する。
【0071】
このような位置検出システム10または位置検出システム10aは、複数の移動体の位置を区別して検出することができる。
【0072】
また、例えば、位置検出システム10aは、複数の照明装置30を備える。複数の照明装置30のそれぞれは、複数の光ID信号を同一順序で出力し、複数の照明装置は、同一のIDを示す前記光ID信号を同一タイミングで出力するように同期する。
【0073】
このような位置検出システム10aは、図7のように位置検出の誤りが生じてしまうことを抑制することができる。
【0074】
また、例えば、位置検出システム10aは、複数の照明装置30を備える。複数の照明装置30のそれぞれは、他の照明装置30と同期した上で、固定の長さの期間を乱数に基づく調整量で調整した周期で、複数の光ID信号を同一順序で出力する。
【0075】
このような位置検出システム10aは、複数の照明装置30が出力した光ID信号の衝突の発生頻度を低下させることができる。
【0076】
また、例えば、信号処理部34は、光ID信号の出力タイミングから所定時間の経過後に超音波を受信した場合、当該超音波に基づく移動体の位置の検出を行わない。
【0077】
このような位置検出システム10または位置検出システム10aは、移動体の位置の誤検出を抑制することができる。
【0078】
また、例えば、移動体は、人であり、超音波発信器20は、さらに、超音波発信器20を人に取り付けるためのストラップを備える。
【0079】
このような位置検出システム10または位置検出システム10aは、人の位置を検出することができる。
【0080】
また、照明装置30は、室内空間60の天井に設置される照明装置である。照明装置30は、光源31と、光源31を明滅させることにより光ID信号を出力する光源制御部32と、室内空間60の床面を移動する移動体に取り付けられた超音波発信器20が光ID信号を受信したことを契機に発する超音波を受信する超音波アレイセンサ35と、受信された超音波に基づいて、移動体の位置を検出する信号処理部34とを備える。
【0081】
このような照明装置30は、位置検出システム10または位置検出システム10aの設置作業を簡略化することができる。
【0082】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態に係る位置検出システムについて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0083】
また、上記実施の形態では、位置検出システムは、複数の装置によって実現されたが、単一の装置として実現されてもよい。位置検出システムが複数の装置によって実現される場合、位置検出システムが備える各構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。例えば、位置検出システムは、サーバ装置をさらに備え、照明装置が備える信号処理部の機能の一部または全部がサーバ装置によって備えられてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0086】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0087】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0088】
例えば、本発明は、位置検出システムなどのコンピュータによって実行される位置検出方法として実現されてもよい。また、本発明は、位置検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記憶された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0089】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
10、10a 位置検出システム
20 超音波発信器
21 受光部
22 復調部
23 制御部
24 メモリ
25 ドライバ
26 音源
30、30a、30b 照明装置
31 光源
32 光源制御部
33 メモリ
34 信号処理部
35 超音波アレイセンサ
36 透光性カバー
37 非透光性カバー
40 制御コンピュータ
50 ハブ
60 室内空間(空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10