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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144290
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051199
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 賢治
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EB03
2C056EB13
2C056EB37
2C056EB58
2C056EC03
2C056EC79
2C056FA02
2C056FA13
2C056FB01
2C056HA07
2C056HA22
2C056HA29
(57)【要約】
【課題】ユーザの手間をかけずに印刷媒体の印刷面外へのインク吐出を防止することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】搬送面に対して垂直方向に立設される側面を有する立体物の印刷媒体Pを所定の搬送方向に搬送する搬送ユニット2と、搬送ユニット2によって搬送された印刷媒体Pの側面に対して液滴を吐出するヘッドユニット10と、ヘッドユニット10よりも搬送方向上流側に設けられ、搬送ユニット2によって搬送された印刷媒体Pとの距離を検出する距離検出部5と、距離検出部5によって検出された距離に基づいて印刷条件を決定し、その決定した印刷条件に基づいて印刷制御を行う制御部60とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面に対して垂直方向に立設される側面を有する立体物の印刷媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送された印刷媒体の側面に対して液滴を吐出するヘッド部と、
前記ヘッド部よりも前記搬送方向上流側に設けられ、前記搬送部によって搬送された印刷媒体との距離を検出する距離検出部と、
前記距離検出部によって検出された距離に基づいて印刷条件を決定し、該決定した印刷条件に基づいて印刷制御を行う制御部とを備えた印刷装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記距離検出部によって検出された距離に基づいて算出される前記印刷媒体の高さ情報が、予め設定された閾値以上である場合には、前記高さ情報と前記閾値との差に基づいて前記印刷条件を決定する請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記印刷条件として、前記印刷媒体に印刷される画像データに対する縮小処理の条件を決定する請求項1または2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記画像データに含まれる文字情報を認識し、前記文字情報の領域と該文字情報の領域以外の領域とで前記縮小処理の条件を変更する請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記印刷条件として、前記印刷媒体に印刷される画像データに対するマスク処理の条件を決定する請求項1または2記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物の印刷媒体に印刷を行う印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を施すインクジェット印刷装置が提案されている。
【0003】
インクジェット印刷装置としては、印刷面が水平となるように配置された印刷媒体に対して、鉛直方向上方からインクを吐出するインクジェット印刷装置だけでなく、印刷面が水平以外の方向となるように配置された印刷媒体に対して、たとえば印刷面に垂直な方向からインクを吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置が提案されている。
【0004】
たとえば特許文献1においては、ベルトコンベアによって商品や梱包容器を水平に搬送し、その搬送された商品や梱包容器の側面に、インクジェットヘッドによって印刷を行う装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-175574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したようにベルトコンベアによって搬送される印刷媒体に対して印刷を行う場合、印刷媒体の側面における所望の位置に印刷を行うため、種々の設定を行う必要がある。たとえば特許文献1においては、搬送される印刷媒体を携帯端末のカメラによって撮影し、その撮影された複数の撮影画像を用いて搬送速度を算出し、その搬送速度に基づいて、印刷位置などを決定することが提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、携帯端末のカメラを使用して複数の撮影画像を撮影する必要があり、手間がかかる。また、撮影者の撮影の仕方によっては、適切な撮影画像を撮影することができず、何度も撮影が必要となったり、搬送速度の算出精度が低下して印刷位置の精度が低下する問題がある。印刷位置が印刷媒体の印刷面外となった場合には、印刷面がない範囲にインクを吐出することになり、周辺をインクで汚染する問題がある。
【0008】
本発明は、ユーザの手間をかけずに印刷媒体の印刷面外へのインク吐出を防止することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の印刷装置は、搬送面に対して垂直方向に立設される側面を有する立体物の印刷媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、搬送部によって搬送された印刷媒体の側面に対して液滴を吐出するヘッド部と、ヘッド部よりも搬送方向上流側に設けられ、搬送部によって搬送された印刷媒体との距離を検出する距離検出部と、距離検出部によって検出された距離に基づいて印刷条件を決定し、その決定した印刷条件に基づいて印刷制御を行う制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の印刷装置によれば、搬送された印刷媒体との距離を検出する距離検出部を備え、その距離検出部によって検出された距離に基づいて印刷条件を決定し、その決定した印刷条件に基づいて印刷制御を行うようにしたので、ユーザの手間をかけずに印刷媒体の印刷面外へのインク吐出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の印刷装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の基本的な構成を示す外観斜視図
図2】ラインヘッドの詳細な構成を示す図
図3】本発明の印刷装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図
図4】本発明の印刷装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の処理を説明するための説明図
図5】本発明の印刷装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の処理を説明するためのフローチャート
図6】距離検出部によって検出された距離情報の一例を示す図
図7】印刷対象の画像データの一例を示す図
図8】画像データにマスク処理を施す例を説明するための説明図
図9】画像データにマスク処理を施す例を説明するための説明図
図10】画像データに縮小処理を施す例を説明するための説明図
図11】画像データに縮小処理を施す例を説明するための説明図
図12】文字領域に縮小処理を施さない例を示す図
図13】ベルトコンベアの繋ぎ目上に印刷媒体が設置された例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の印刷装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。図1は、インクジェット印刷装置1の概略構成を示す外観斜視図である。以下に示す実施形態の説明では、図1に矢印で示す上下左右前後を、インクジェット印刷装置1の上下左右前後方向とする。また、インクジェット印刷装置1の上下方向が鉛直方向である。
【0013】
インクジェット印刷装置1は、図1に示すように、ヘッドユニット10と、搬送ユニット2と、距離検出部5とを備えている。
【0014】
搬送ユニット2は、印刷媒体Pを図1に示す矢印方向に搬送する。印刷媒体Pとしては、たとえば図1に示すような鉛直方向に立設する印刷面Psを有する立体物の印刷媒体(たとえば段ボール箱などの箱体)が用いられる。ただし、印刷媒体Pは、箱体に限らず、鉛直方向に立設する印刷面を有するものであれば如何なるものでもよく、たとえば円柱形状をした缶などでもよい。なお、本実施形態においては、搬送ユニット2が、本発明の搬送部に相当する。
【0015】
搬送ユニット2は、支持台3と、搬送ベルト部4とを備えている。支持台3は、搬送ベルト部4を支持する台である。
【0016】
搬送ベルト部4は、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設された2本のプラテンローラ2a(図4参照)と搬送ベルト2b(図4参照)などを備える。2本のプラテンローラ2aは、印刷媒体Pの搬送方向について離間して平行に配置される。そして、平行に配列された2本のプラテンローラ2a間に環状の搬送ベルト2bが掛け渡される。なお、図1に示す搬送ユニット2は、その一部を示しており、実際には、その前後方向にさらに延設されているものとする。
【0017】
そして、後述する制御部60の制御によって駆動モータ21が駆動し、これによりプラテンローラ2aが回転して搬送ベルト2bが移動し、これにより印刷媒体Pが搬送される。また、搬送ユニット2は、エンコーダ20(図3参照)を有し、エンコーダ20のパルス信号が制御部60に出力される。制御部60は、入力されたパルス信号に基づいて、印刷媒体Pの搬送方向の幅を計測するが、印刷媒体Pの幅の計測については、後で詳述する。
【0018】
ヘッドユニット10は、搬送ユニット2によって搬送された印刷媒体Pの印刷面Psに対してインクを吐出することによって印刷を施す。
【0019】
ヘッドユニット10は、図1に示すように、4本のラインヘッド11,12,13,14を有する。4本のラインヘッド11~14は、鉛直方向に延設されるものであり、印刷媒体Pの搬送方向について平行に配列される。本実施形態においては、各ラインヘッド11~14が、本発明のヘッド部に相当する。
【0020】
4本のラインヘッド11~14は、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)およびK(ブラック)のインクを吐出するものである。
【0021】
図2は、ラインヘッド11~14の詳細な構成を示す図である。ここでは4本のラインヘッド11~14のうちのラインヘッド11の構成について説明するが、残りのラインヘッド12~14についても同様の構成である。
【0022】
ラインヘッド11は、6つのインクジェットヘッド11a,11b,11c,11d,11e,11fを備えている。
【0023】
各インクジェットヘッド11a~11fは、インクを吐出する複数のノズルを有し、その複数のノズルの配列方向が鉛直方向となるように配置されている。なお、ノズルの配列方向とは、たとえばノズルが2次元状に配列される場合には、ノズル列が最も長い配列方向のことをいう。
【0024】
また、ラインヘッド11は、3つのインクジェットヘッド11a,11c,11eから構成される第1のヘッド列と、3つのインクジェットヘッド11b,11d,11fから構成される第2のヘッド列とを有する。第1のヘッド列と第2のヘッド列は、印刷媒体Pの搬送方向について異なる位置に隣接して配置される。
【0025】
第1のヘッド列の3つのインクジェットヘッド11a,11c,11eは、鉛直方向について所定の間隔を空けて配置されている。また、第2のヘッド列の3つのインクジェットヘッド11b,11d,11fは、鉛直方向について所定の間隔を空けて配置されている。
【0026】
そして、図2に示すように、第1のヘッド列のインクジェットヘッド11a,11c,11eと、第2のヘッド列のインクジェットヘッド11b,11d,11fは、鉛直方向について異なる位置となるように千鳥配置される。
【0027】
たとえばラインヘッド11によって鉛直方向に延びる直線を印字する場合には、第1のヘッド列と第2のヘッド列とで異なるタイミングでインクを吐出することによって、上記直線が印字される。
【0028】
距離検出部5は、ヘッドユニット10よりも搬送方向上流側に設けられ、搬送ユニット2によって搬送された印刷媒体Pとの距離を印刷媒体Pの上方から検出する。距離検出部5は、たとえばレーザ変位センサまたは超音波センサなどの測距センサを有する。
【0029】
搬送方向についてのヘッドユニット10と距離検出部5との間の距離D(図4A参照)は、印刷が想定される印刷媒体Pの搬送方向の最大幅以上であることが好ましい。たとえば上記最大幅の1.5倍程度の距離に設定される。
【0030】
図3は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の構成を示すブロック図である。
【0031】
インクジェット印刷装置1は、制御部60を備える。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)並びに半導体メモリおよびハードディスクなどの記憶媒体を備え、インクジェット印刷装置1全体を制御する。制御部60は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶された印刷制御プログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって、インクジェット印刷装置の各部の動作を制御するものである。
【0032】
特に、本実施形態の制御部60は、距離検出部5によって検出された距離に基づいて印刷条件を決定し、その決定した印刷条件に基づいて印刷制御を行う。具体的には、本実施形態においては、距離検出部5によって検出された距離に基づいて、印刷媒体Pの印刷面Psの高さ情報(鉛直方向の幅)および搬送方向の幅情報を算出し、その算出した高さ情報および幅情報と印刷対象の画像データの大きさとに基づいて、画像データに対してマスク処理を施す。本実施形態のマスク処理とは、画像データの一部の範囲をマスクすることによって、そのマスクされた一部の範囲に対応するインクジェットヘッドのノズルからインクが吐出されないように印刷制御する処理である。
【0033】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1におけるマスク処理を含む印刷制御について、図4および図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0034】
まず、搬送ベルト部4の搬送面と距離検出部5との間の距離Lが制御部60に設定される(S10)。距離Lについては、ユーザが所定入力装置(図示省略)を用いて予め計測された値を設定入力するようにしてもよいし、印刷開始時に距離検出部5によって計測して設定するようにしてもよい。
【0035】
そして、搬送ベルト部4の上流に、印刷対象の印刷媒体Pが設置され(S12)、ユーザによる印刷要求に応じて、図4Aに示すように、搬送ベルト部4によって距離検出部5に向けて搬送される(S14)。
【0036】
そして、図4Bに示すように、印刷媒体Pが距離検出部5に到達すると、距離検出部5による距離計測が開始される(S16)。距離検出部5は、印刷媒体Pが距離検出部5の下を通り過ぎるまで距離の計測を継続する。そして、距離検出部5によって検出された距離情報が、制御部60に出力される。図6は、距離検出部5によって検出された距離情報の一例を示す図である。
【0037】
制御部60は、図6に示す距離情報に基づいて、画像データの印刷範囲を決定する。具体的には、制御部60は、図6に示す距離情報から印刷媒体Pの高さ情報Hと搬送方向の幅情報Wを算出する(S18)。制御部60は、印刷媒体Pの高さ情報Hについては、S10において設定入力された距離Lから距離検出部5によって検出された距離A(図4B参照)を減算することによって算出する。また、制御部60は、印刷媒体Pの幅情報Wについては、図6に示す距離情報の信号の立ち上がりから立ち下りまでのエンコーダ20のパルス信号のカウント数から搬送距離を算出することによって求める。
【0038】
そして、制御部60は、印刷対象の画像データが、図7に示すような画像データである場合、制御部60は、印刷媒体Pの高さ情報Hと画像データの高さ情報Hgとを比較するとともに、印刷媒体Pの幅情報Wと画像データの幅情報Wgとを比較する(S20)。
【0039】
なお、画像データの高さ情報Hgと幅情報Wgについては、本実施形態のように余白も含む画像データ全体の高さ情報Hgと幅情報Wgを用いるのではなく、図7において点線四角で示すような、余白部分を除く実際に印刷される画像データの高さ情報および幅情報を用いるようにしてもよい。なお、図7に示す点線四角は、画像データの高さ情報および幅情報を説明するためのものであり、印刷されるものではない。
【0040】
そして、制御部60は、印刷媒体Pの高さ情報Hと画像データの高さ情報Hgとの比較結果と、印刷媒体Pの幅情報Wと画像データの幅情報Wgとの比較結果に基づいて、画像データの印刷範囲を決定する(S22)。
【0041】
制御部60は、たとえば図8Aに示すようにH<Hgである場合には、図8Bに示すように画像データの上側の部分(Hg-Hの部分)を削除するなどしてマスクすることによって、画像データの印刷範囲が、印刷媒体Pの印刷面Ps内に収まるようにする。また、たとえば図9Aに示すようにW<Wgである場合には、図9Bに示すように画像データの横の部分(Wg-Wの部分)を削除するなどしてマスクすることによって、画像データの印刷範囲が、印刷媒体Pの印刷面Ps内に収まるようにする。
【0042】
また、制御部60は、図6に示す距離情報の信号の立ち上がりの時点を取得し、その立ち上がりの時点からのエンコーダ20のパルス信号をカウントする。
【0043】
そして、制御部60は、距離情報の信号の立ち上がりの時点からのパルス信号のカウント数が、予め設定された印字開始タイミングに対応するカウント数に到達した時点から、ヘッドユニット10からのインク吐出を開始する(S24)。印字開始タイミングに対応するカウント数は、図4Aに示す距離Dと印刷面Psにおける搬送方向の印刷開始位置とに基づいて予め算出される。
【0044】
そして、制御部60は、上述したように決定した画像データの印刷範囲に基づいて、ヘッドユニット10のラインヘッド11~14からインクを吐出させ、印刷面Psに対して印刷処理を施す(S26)。
【0045】
そして、図4Cに示すように、次に印刷すべき印刷媒体Pが存在する場合には(S28,YES)、S16~S26までの処理を繰り返して行う。次に印刷すべき印刷媒体Pが存在しない場合には(S28,NO)、処理を終了する。
【0046】
本実施形態のインクジェット印刷装置1によれば、搬送された印刷媒体Pとの距離を印刷媒体Pの上方から検出する距離検出部5を備え、その距離検出部5によって検出された距離に基づいてマスク処理の条件を決定し、その決定した条件に基づいて印刷制御を行うようにしたので、ユーザの手間をかけずに印刷媒体の印刷面外へのインク吐出を防止することができる。
【0047】
また、上述したようにマスク処理を行うようにしたので、簡易な処理によって印刷面外へのインク吐出を防止することができる。
【0048】
なお、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、印刷対象の画像データが、印刷媒体Pの印刷面Ps内に収まらない場合に、画像データに対してマスク処理を施すようにしたが、これに限らず、印刷媒体Pの印刷面Ps内に収まるように画像データに対して縮小処理を施すようにしてもよい。
【0049】
たとえば印刷媒体Pの高さ情報Hと画像データの高さ情報Hgとの関係が、たとえば図10Aに示すようにH<Hgである場合には、制御部60は、図10Bに示すように印刷媒体Pの印刷面Ps内に収まるように画像データに対して縮小処理を施す。
【0050】
また、たとえば図11Aに示すようにW<Wgである場合には、図11Bに示すように印刷媒体Pの印刷面Ps内に収まるように画像データに対して縮小処理を施す。このように、縮小処理を行うようにした場合には、印刷画像を欠損させることなく、印刷面外へのインク吐出を防止することができる。
【0051】
また、上述したように制御部60が画像データに対して縮小処理を施す際、画像データに含まれる文字情報を認識し、文字情報の領域とその文字情報の領域以外の領域とで縮小処理の条件を変更するようにしてもよい。
【0052】
たとえば印刷対象の画像データが、図7に示すような画像データである場合、図12に示すように、文字領域以外のイラストの領域Rの画像データに対して印刷媒体Pの印刷面Ps内に収まるように縮小処理を施し、文字領域の画像データに対しては縮小処理を施さないようにしてもよい。このように文字領域に対して縮小処理を施さないようにすることによって、文字の明瞭性を担保することができる。
【0053】
なお、文字領域の認識については、画像データに対して文字領域の情報とそれ以外の領域の情報を付与しておくようにしてもよいし、画像データに含まれる文字のデータを自動認識するようにしてもよい。文字のデータを自動認識する方法としては、公知の手法を用いることができるが、たとえば畳み込みニューラルネットワークを用いるようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1のように、環状の搬送ベルト2bを用いて印刷媒体Pを搬送する場合、搬送ベルトに繋ぎ目が存在する場合がある。このように繋ぎ目が存在する搬送ベルトによって印刷媒体Pを搬送する場合、その繋ぎ目の上に印刷媒体Pが設置される場合がある。このように繋ぎ目の上に印刷媒体Pが設置されると、図13に示すように、印刷媒体Pの位置が高くなり、画像データの印刷位置の位置ずれが発生してしまう。
【0055】
そこで、制御部60が、たとえば印刷媒体Pの高さ情報Hが、予め設定された閾値以上である場合には、印刷媒体Pの高さ情報Hと閾値との差に基づいて、印刷対象の画像データを上方に移動するシフト処理を画像データに施すようにしてもよい。
【0056】
シフト処理としては、たとえば高さ情報Hと閾値との差の分だけ画像データを上方に移動させるようにすればよい。このように、印刷媒体Pの高さ情報Hと閾値との差に基づいて、画像データに対してシフト処理を施すことによって、搬送ベルトに繋ぎ目上に印刷媒体Pが設置された場合でも、画像データの印刷位置の位置ずれを防止することができる。
【0057】
また、上記閾値と比較する印刷媒体Pの高さ情報Hについては、所定の印刷媒体Pが、距離検出部5の下を搬送される間に連続して検出された複数の高さ検出信号の平均値を用いるようにしてもよいし、複数の高さ検出信号のうち最も高い高さ検出信号を高さ情報Hとして用いるようにしてもよい。
【0058】
また、上記予め設定された閾値としては、ユーザによって設定入力された印刷媒体Pの高さ情報を閾値として用いるようにしてもよいし、複数の印刷媒体Pに対して印刷処理を施す場合には、複数の印刷媒体Pが順次搬送されるのに伴って順次算出される複数の印刷媒体Pの高さ情報Hの累積平均を閾値として用いるようにしてもよい。累積平均とは、一つ前の平均値と新しい値と要素数で、新しい平均値を算出することを意味する。
【0059】
また、上述したように印刷媒体Pの高さ情報Hの累積平均を算出する場合にも、各印刷媒体の高さ情報Hは、距離検出部5の下を搬送される間に連続して検出された複数の高さ検出信号の平均値を用いるようにしてもよいし、複数の高さ検出信号のうち最も高い高さ検出信号を用いるようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、印刷面Ps外へのインク吐出を防止する方法としてマスク処理または縮小処理を施すようにしたが、これに限らず、たとえば図7に示す画像データのように、実際に印刷される画像データの範囲(図7で点線四角で示す範囲)の下に余白を有する画像データである場合には、印刷媒体Pの高さ情報H<画像データの高さ情報Hgである場合、制御部60が、余白を除く実際に印刷される画像データの範囲を下方向に移動させるシフト処理を施すようにしてもよい。この場合、たとえば(Hg-H)の長さだけシフト処理を施すようにすればよい。
【0061】
また、制御部60が、実際に印刷される画像データの範囲(図7で点線四角で示す範囲)の下の余白の上下方向の長さBLと(Hg-H)の長さを比較し、BL>(Hg-H)の場合に、上述したシフト処理を施し、BL≦(Hg-H)の場合に、上述したマスク処理または縮小処理を施すようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、印刷媒体Pの上方に距離検出部5を設けるようにしたが、印刷媒体Pの上面を検出できる構成であれば、距離検出部5の位置は特に限定されない。たとえば印刷媒体Pの上方に反射板を設け、この反射板に向けて光を出射して反射板での反射光を下方(印刷媒体Pの方)に向けて照射する。そして、印刷媒体Pで反射し、その後、反射板で反射した反射光を受光することによって距離を計測するようにしてもよい。光を出射する出射部と反射光を受光する受光部の位置は、特に限定されず、たとえば搬送ベルトに出射光と反射光を常に透過するような細い孔を設けることによって、搬送ベルトの下側に出射部と受光部とを設けるようにしてもよい。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。たとえば実施形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。
【0064】
本発明に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0065】
本発明の印刷装置において、制御部は、距離検出部によって検出された距離に基づいて算出される印刷媒体の高さ情報が、予め設定された閾値以上である場合には、高さ情報と閾値との差に基づいて印刷条件を決定することができる。
【0066】
本発明の印刷装置において、制御部は、印刷条件として、印刷媒体に印刷される画像データに対する縮小処理の条件を決定することができる。
【0067】
本発明の印刷装置において、制御部は、画像データに含まれる文字情報を認識し、文字情報の領域とその文字情報の領域以外の領域とで縮小処理の条件を変更することができる。
【0068】
本発明の印刷装置において、制御部は、印刷条件として、印刷媒体に印刷される画像データに対するマスク処理の条件を決定することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 インクジェット印刷装置
2 搬送ユニット
3 支持台
4 搬送ベルト部
5 距離検出部
10 ヘッドユニット
10~14 ラインヘッド
11a~11f インクジェットヘッド
20 エンコーダ
60 制御部
A 距離
H 印刷媒体の高さ情報
Hg 画像データの高さ情報
P 印刷媒体
Ps 印刷面
W 印刷媒体の幅情報
Wg 画像データの幅情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13