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2023-144303ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体、その製造方法、および、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子
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  • -ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体、その製造方法、および、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144303
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体、その製造方法、および、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/07 20060101AFI20231003BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20231003BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20231003BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08J3/07 CFD
C08J3/16
C08G63/16
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051214
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】前山 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】工藤 美穂
【テーマコード(参考)】
4F070
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AC12
4F070AC43
4F070AC45
4F070AC47
4F070AC50
4F070AC71
4F070AC80
4F070AE14
4F070AE28
4F070CA03
4F070CA20
4F070CB03
4F070CB12
4F070DA33
4F070DC07
4F070DC09
4J029AA03
4J029AB07
4J029AC02
4J029AE04
4J029AE11
4J029AE18
4J029BA05
4J029CA04
4J029CA06
4J200AA27
4J200BA19
4J200DA20
4J200DA29
4J200EA04
(57)【要約】
【課題】水への分散安定性に優れた、粒子径が小さく、粒度分布が狭い生分解性ポリマー樹脂粒子の水分散体を容易に提供する。そのような生分解性ポリマー樹脂粒子の水分散体を効率よく製造する方法を提供する。粒子径が小さく、粒度分布が狭い生分解性ポリマー樹脂粒子を容易に提供する。
【解決手段】本発明の実施形態によるポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体は、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子が水に分散されたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体であって、該水分散体はイオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤と水溶性高分子を含み、該ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の体積平均粒子径が0.1μm~10.0μmであり、該水溶性高分子が、けん化度が60mol%~87mol%のポリビニルアルコールである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子が水に分散されたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体であって、
該水分散体はイオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤と水溶性高分子を含み、
該ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の体積平均粒子径が0.1μm~10.0μmであり、
該水溶性高分子が、けん化度が60mol%~87mol%のポリビニルアルコールである、
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体。
【請求項2】
前記界面活性剤と前記水溶性高分子の質量比が0.1:99.9~50:50である、請求項1に記載のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体。
【請求項3】
前記ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の粒子径の変動係数が0.700未満である、請求項1または2に記載のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体。
【請求項4】
前記ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子のアスペクト比が1.00~1.15である、請求項1から3までのいずれかに記載のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体。
【請求項5】
前記ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子100質量部に対する、前記界面活性剤と前記水溶性高分子の合計量の割合が、2.0質量部~10質量部である、請求項1から4までのいずれかに記載のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体。
【請求項6】
前記イオン性界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1から5までのいずれかに記載のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコールの粘度が11.0mPa・s~64.0mPa・sである、請求項1から6までのいずれかに記載のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体。
【請求項8】
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子が水に分散されたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体の製造方法であって、
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂を有機溶媒に溶解させた樹脂溶液(A)とイオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤と水溶性高分子と水を含む水溶液(B)とを混合して攪拌することによって乳化を行う、
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体の製造方法。
【請求項9】
前記乳化は、前記樹脂溶液(A)に前記水溶液(B)を添加した後に転相させる転相乳化である、請求項8に記載のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体の製造方法。
【請求項10】
前記乳化は、前記樹脂溶液(A)の液温を40℃以上として行う、請求項8または9に記載のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体の製造方法。
【請求項11】
請求項1から7までのいずれかに記載のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体から固液分離して得られる、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体の製造方法、および、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー樹脂粒子は、コーティング材料、外用剤、光学部材、プラスチック改質剤、各種スペーサー、アンチブロッキング剤、各種充填剤など、多くの分野で用いられている。ポリマー樹脂粒子は、通常、水に分散させた水分散体として得られる。
【0003】
ポリマー樹脂粒子には、その用途に応じて、様々な特性が要求される。多くの用途に求められる特性の代表的なものとして、粒子径が小さいこと、粒度分布が狭いこと、水への分散安定性に優れること、などが挙げられる。また、工業的な生産性を考慮すると、ポリマー樹脂粒子は、容易に製造できることも重要である。
【0004】
最近、世界的な環境問題への取り組みを背景に、生分解性ポリマー樹脂粒子の検討が行われている。
【0005】
有機溶媒に溶解したポリ乳酸を、アニオン系乳化剤とノニオン系乳化剤の存在下、0~60℃で乳化することによって、粒子径が小さく、接着性、造膜性に優れたポリ乳酸水性分散液を製造する方法が報告されている(特許文献1)。しかし、特許文献1に記載のポリ乳酸水性分散液は、一般的な乳化機を用いて機械的に攪拌して製造しており、樹脂粒子の粒度分布が広くなってしまうという問題がある。また、特許文献1に記載のポリ乳酸水性分散液は、その分散安定性が十分ではないという問題がある。
【0006】
D体の含有率が10%以上であるポリ乳酸を溶媒に溶解させたポリ乳酸溶液と、けん化度が68~85%であるポリビニルアルコール水溶液とを混合して攪拌することによって液滴を形成する工程と、減圧によって液滴から溶媒を除去してポリ乳酸微粒子水分散液を得る工程と、ポリ乳酸微粒子水分散液から水を除去してポリ乳酸微粒子を得る工程と、を含むことを特徴とするポリ乳酸微粒子の製造方法が報告されている(特許文献2)。しかし、特許文献2に記載のポリ乳酸微粒子水分散液の製造方法によれば、得られるポリ乳酸微粒子の粒度分布が広くなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-323640号公報
【特許文献2】特開2016-164240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、水への分散安定性に優れた、粒子径が小さく、粒度分布が狭い生分解性ポリマー樹脂粒子の水分散体を容易に提供すること、そのような生分解性ポリマー樹脂粒子の水分散体を効率よく製造する方法を提供すること、および、粒子径が小さく、粒度分布が狭い生分解性ポリマー樹脂粒子を容易に提供すること、にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によるポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体は、
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子が水に分散されたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体であって、
該水分散体はイオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤と水溶性高分子を含み、
該ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の体積平均粒子径が0.1μm~10.0μmであり、
該水溶性高分子が、けん化度が60mol%~87mol%のポリビニルアルコールである。
【0010】
一つの実施形態においては、上記界面活性剤と上記水溶性高分子の質量比が0.1:99.9~50:50である。
【0011】
一つの実施形態においては、上記ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の粒子径の変動係数が0.700未満である。
【0012】
一つの実施形態においては、上記ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子のアスペクト比が1.00~1.15である。
【0013】
一つの実施形態においては、上記ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子100質量部に対する、上記界面活性剤と上記水溶性高分子の合計量の割合が、2.0質量部~10質量部である。
【0014】
一つの実施形態においては、上記イオン性界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0015】
一つの実施形態においては、上記ポリビニルアルコールの粘度が11.0mPa・s~64.0mPa・sである。
【0016】
本発明の実施形態によるポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体の製造方法は、
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子が水に分散されたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体の製造方法であって、
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂を有機溶媒に溶解させた樹脂溶液(A)とイオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤と水溶性高分子と水を含む水溶液(B)とを混合して攪拌することによって乳化を行う。
【0017】
一つの実施形態においては、上記乳化は、上記樹脂溶液(A)に上記水溶液(B)を添加した後に転相させる転相乳化である。
【0018】
一つの実施形態においては、上記乳化は、上記樹脂溶液(A)の液温を40℃以上として行う。
【0019】
本発明の実施形態によるポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子は、
上記ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体から固液分離して得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、水への分散安定性に優れた、粒子径が小さく、粒度分布が狭い生分解性ポリマー樹脂粒子の水分散体を容易に提供することができる。また、そのような生分解性ポリマー樹脂粒子の水分散体を効率よく製造する方法を提供することができる。さらに、粒子径が小さく、粒度分布が狭い生分解性ポリマー樹脂粒子を容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1で得られた水分散体(1)のマイクロスコープで撮影した写真図である。
図2】実施例2で得られた水分散体(2)のマイクロスコープで撮影した写真図である。
図3】実施例3で得られた水分散体(3)のマイクロスコープで撮影した写真図である。
図4】実施例4で得られた水分散体(4)のマイクロスコープで撮影した写真図である。
図5】実施例5で得られた水分散体(5)のマイクロスコープで撮影した写真図である。
図6】実施例6で得られた水分散体(6)のマイクロスコープで撮影した写真図である。
図7】比較例2で得られた水分散体(C2)のマイクロスコープで撮影した写真図である。
図8】比較例3で得られた水分散体(C3)のマイクロスコープで撮影した写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0023】
本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
【0024】
以下、本明細書においては、便宜上、「ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体」を単に「水分散体」、「ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子」を単に「樹脂粒子」、「ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂を有機溶媒に溶解させた樹脂溶液(A)」を単に「樹脂溶液(A)」、「イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤と水溶性高分子と水を含む水溶液(B)」を単に「水溶液(B)」と称することがある。
【0025】
本発明の実施形態による水分散体は、樹脂粒子が水に分散された水分散体である。
【0026】
樹脂粒子は、体積平均粒子径が、好ましくは0.1μm~10.0μmであり、より好ましくは0.1μm~9.0μmであり、さらに好ましくは0.1μm~8.0μmであり、特に好ましくは0.1μm~7.0μmであり、最も好ましくは0.1μm~6.5μmである。樹脂粒子の体積平均粒子径が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、粒子径がより小さい樹脂粒子となり得る。
【0027】
樹脂粒子は、粒子径の変動係数が、好ましくは0.700未満であり、より好ましくは0.650未満であり、さらに好ましくは0.600未満であり、さらに好ましくは0.550未満であり、特に好ましくは0.500未満であり、最も好ましくは0.450未満である。樹脂粒子の粒子径の変動係数が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、粒度分布が狭い樹脂粒子となり得る。
【0028】
樹脂粒子は、アスペクト比が、好ましくは1.00~1.15であり、より好ましくは1.00~1.11であり、さらに好ましくは1.00~1.09であり、特に好ましくは1.00~1.07であり、最も好ましくは1.00~1.06である。樹脂粒子のアスペクト比が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、真球状の樹脂粒子となり得る。
【0029】
樹脂粒子は、中実構造を有する中実粒子であってもよいし、中空構造を有する中空粒子であってもよい。本明細書において、中実構造を有する中実粒子とは、中空構造を有していない粒子または多孔質構造を有していない粒子を意味する。ここで、中空構造とは、殻で囲まれた内部が中空(完全な空洞状態)である構造、または粒子内部に空隙を少なくとも1個有する構造を意味する。ここでいう空隙とは、粒子の断面をSEM等で観察した際に確認することができる粒子内部の孔となった部分を意味する。
【0030】
本発明の実施形態による水分散体は、好ましくは、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤と水溶性高分子を含み、該界面活性剤と該水溶性高分子の質量比が、界面活性剤:水溶性高分子として、好ましくは0.1:99.9~50:50であり、より好ましくは1:99~50:50であり、さらに好ましくは3:97~50:50であり、さらに好ましくは3.5:96.5~45:55であり、特に好ましくは4:96~40:60であり、最も好ましくは4.5:95.5~30:70である。本発明の実施形態による水分散体に含まれる界面活性剤と水溶性高分子の質量比が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、水への分散安定性により優れたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の水分散体を提供することができる。
【0031】
本発明の実施形態による水分散体中の、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子100質量部に対する、界面活性剤と水溶性高分子の合計量の割合は、好ましくは2.0質量部~10質量部であり、より好ましくは2.5質量部~9.5質量部であり、さらに好ましくは3.0質量部~9.0質量部であり、特に好ましくは3.2質量部~8.5質量部であり、最も好ましくは3.5質量部~8.0質量部である。本発明の実施形態による水分散体中の、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子100質量部に対する、界面活性剤と水溶性高分子の合計量の割合が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、水への分散安定性により優れたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の水分散体を提供することができる。
【0032】
界面活性剤は、好ましくは、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0033】
ポリマー樹脂粒子の水分散体を製造するために乳化を行う際には乳化剤を用いる。このような乳化剤として、従来、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子が用いられている。しかしながら、これらの水溶性高分子の水溶液は、室温よりも高い温度で曇点を示すため、該水溶性高分子の水への溶解性が急激に低下する。このため、水溶性高分子は、乳化の際に乳化剤としての機能を十分に発揮できてはおらず、このため、従来、得られるポリマー樹脂粒子は、粒子径を十分に小さくできないという問題や、粒子径のバラつきが大きくなるという問題がある。そこで、検討を重ねた結果、本発明においては、水溶性高分子に、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤を、特定の割合で組み合わせて併用することに想到し、これにより、水溶性高分子の曇点が消失する等によって、水への分散安定性に優れた、粒子径が小さく、粒度分布が狭い生分解性ポリマー樹脂粒子の水分散体を提供できるに至った。
【0034】
イオン性界面活性剤としては、好ましくは、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種である。イオン性界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0035】
アニオン性界面活性剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なアニオン性界面活性剤を採用し得る。このようなアニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸スルホン酸塩、グリセロールボレート脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステルが挙げられ、具体的には、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩が挙げられる。アニオン性界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0036】
カチオン性界面活性剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なカチオン性界面活性剤を採用し得る。このようなカチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられ、具体的には、例えば、ステアリルアミンアセテート、トリメチルヤシアンモニウムクロリド、トリメチル牛脂アンモニウムクロリド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロリド、メチルオレイルジエタノールクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムブロマイド、ラウリルピリジニウムジサルフェート、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムブロマイド、4-アルキルメルカプトピリジン、ポリ(ビニルピリジン)-ドデシルブロマイド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリドが挙げられる。カチオン性界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0037】
両性界面活性剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な両性界面活性剤を採用し得る。このような両性界面活性剤としては、例えば、アミノカルボン酸塩、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン誘導体が挙げられ、具体的には、例えば、ラウリル酸アミドプロピルベタインが挙げられる。両性界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0038】
ノニオン性活性剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なノニオン性界面活性剤を採用し得る。このようなノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルアリルエーテルが挙げられ、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルが挙げられる。ノニオン性界面活性剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0039】
水溶性高分子としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な水溶性高分子を採用し得る。このような水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースが挙げられる。水溶性高分子は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0040】
ポリビニルアルコールは、けん化度が、好ましくは60mol%~87mol%であり、より好ましくは62mol%~85mol%であり、さらに好ましくは65mol%~84mol%であり、特に好ましくは68mol%~83mol%であり、最も好ましくは70mol%~82mol%である。ポリビニルアルコールのけん化度が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、水への分散安定性により優れたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の水分散体を提供することができる。ポリビニルアルコールのけん化度は、例えば、JIS K 6726:1994に基づいて測定できる。
【0041】
ポリビニルアルコールは、重合度(平均重合度)が、好ましくは700~4000であり、より好ましくは900~3500であり、さらに好ましくは1100~3200であり、特に好ましくは1300~2800である。ポリビニルアルコールの重合度が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、水への分散安定性により優れたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の水分散体を提供することができる。ポリビニルアルコールの重合度(平均重合度)は、例えば、JIS K 6726:1994に基づいて測定できる。
【0042】
ポリビニルアルコールは、粘度が、好ましくは11.0mPa・s~64.0mPa・sであり、より好ましくは14.0mPa・s~56.0mPa・sであり、さらに好ましくは18.0mPa・s~51.0mPa・sであり、特に好ましくは21.0mPa・s~45.0mPa・sである。ポリビニルアルコールの粘度が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、水への分散安定性により優れたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の水分散体を提供することができる。なお、ポリビニルアルコールの粘度は、JIS K 6726:1994に基づいて測定するものとする。
【0043】
本発明の実施形態による水分散体は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、流動性調整剤、粘度調整剤、表面平滑剤、撥水剤、離型剤、防錆剤、ワックス類が挙げられる。
【0044】
本発明の実施形態による水分散体は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で製造し得る。本発明の効果をより発現し得る点で、本発明の実施形態による水分散体は、樹脂溶液(A)と水溶液(B)とを混合して攪拌することによって乳化を行うことによって得られ得る。
【0045】
樹脂溶液(A)は、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂と有機溶媒を混合して調製する。
【0046】
有機溶媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な溶媒を採用し得る。このような溶媒としては、例えば、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶媒;クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;が挙げられる。有機溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂に対する有機溶媒の使用割合としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な使用割合を採用し得る。このような有機溶媒の使用割合としては、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂100質量部に対して、好ましくは110質量部~400質量部であり、より好ましくは130質量部~350質量部であり、さらに好ましくは150質量部~320質量部であり、特に好ましくは170質量部~290質量部であり、最も好ましくは190質量部~260質量部である。
【0048】
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂と有機溶媒の混合液は、通常、室温では固化し流動性を示さない。このため、樹脂溶液(A)を調製する際は、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂と有機溶媒を混合する際、および/または、混合した後に、室温より高い温度に加熱することが好ましい。このような加熱温度としては、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは45℃~100℃であり、さらに好ましくは50℃~90℃であり、特に好ましくは52℃~80℃であり、最も好ましくは55℃~75℃である。
【0049】
ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂と有機溶媒の混合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な攪拌装置を用いて行うことができる。このような攪拌装置としては、通常の分散や混合攪拌に使用し得る回転式攪拌機、ホモミキサー、高圧乳化機などの攪拌装置を採用し得る。このような攪拌装置を用いる場合の攪拌速度等の攪拌条件としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な攪拌条件を採用し得る。このような攪拌条件としては、通常の分散や混合攪拌に使用し得る攪拌条件を採用し得る。
【0050】
水溶液(B)は、イオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤と水溶性高分子と水を混合して調製する。
【0051】
界面活性剤と水溶性高分子の質量比は、界面活性剤:水溶性高分子として、好ましくは0.1:99.9~50:50であり、より好ましくは1:99~50:50であり、さらに好ましくは3:97~50:50であり、さらに好ましくは3.5:96.5~45:55であり、特に好ましくは4:96~40:60であり、最も好ましくは4.5:95.5~30:70である。界面活性剤と水溶性高分子の質量比が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、水への分散安定性により優れたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の水分散体を提供することができる。
【0052】
樹脂溶液(A)中のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子100質量部に対する、界面活性剤と水溶性高分子の合計量の割合は、好ましくは2.0質量部~10質量部であり、より好ましくは2.5質量部~9.5質量部であり、さらに好ましくは3.0質量部~9.0質量部であり、特に好ましくは3.2質量部~8.5質量部であり、最も好ましくは3.5質量部~8.0質量部である。樹脂溶液(A)中のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子100質量部に対する、界面活性剤と水溶性高分子の合計量の割合が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、水への分散安定性により優れたポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の水分散体を提供することができる。
【0053】
水溶性高分子に対する水の使用割合としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な使用割合を採用し得る。このような水の使用割合としては、水溶性高分子100質量部に対して、好ましくは1500質量部~5000質量部であり、より好ましくは1700質量部~4200質量部であり、さらに好ましくは1900質量部~3900質量部であり、特に好ましくは2100質量部~3600質量部であり、最も好ましくは2200質量部~3300質量部である。
【0054】
水溶液(B)には、高粘度のアニオン性高分子化合物が含まれていないので、製造の際のハンドリング性が良好である。
【0055】
乳化は、樹脂溶液(A)と水溶液(B)とを混合して攪拌することによって行う。
【0056】
樹脂溶液(A)と水溶液(B)との質量比率は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な質量比率を採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、このような質量比率としては、樹脂溶液(A):水溶液(B)として、好ましくは90:10~50:50であり、より好ましくは86:14~55:45であり、さらに好ましくは84:16~60:40であり、特に好ましくは82:18~65:35であり、最も好ましくは80:20~70:30である。樹脂溶液(A)と水溶液(B)との質量比率が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現でき、特に、粒子径が小さく、粒度分布が狭い生分解性ポリマー樹脂粒子を提供し得る液滴を効果的に形成し得る。
【0057】
乳化は、好ましくは、樹脂溶液(A)の液温を40℃以上として行う。この液温は、より好ましくは45℃~100℃であり、さらに好ましくは50℃~90℃であり、特に好ましくは52℃~80℃であり、最も好ましくは55℃~75℃である。このような温度条件で乳化を行うことにより、本発明の効果をより発現でき、特に、粒子径が小さく、粒度分布が狭い生分解性ポリマー樹脂粒子を提供し得る液滴を効果的に形成し得る。
【0058】
乳化の方法としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な乳化方法を採用し得る。このような乳化方法としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、樹脂溶液(A)に水溶液(B)を添加した後に転相させる転相乳化が好ましい。転相乳化を採用することにより、本発明の効果をより発現できる。
【0059】
転相乳化の方法としては、具体的には、樹脂を有機溶媒中に溶解させた溶液に、水溶性高分子を含む水溶液を添加して、油相から水相へ転相させる方法が挙げられる。
【0060】
乳化の後、好ましくは、乳化で得られた乳化液を水系溶媒(代表的には水)によって希釈し、その後、有機溶媒を除去し、水分散体を得る。有機溶媒の除去は、必要に応じて減圧状態で除去する。また、有機溶媒を除去する際に、樹脂粒子の凝集を抑制するため、アニオン性界面活性剤を添加してもよい。
【0061】
得られた水分散体を固液分離することにより、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子が得られる。
【0062】
本発明の実施形態によるポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体を製造する際には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の樹脂を混合してもよい。このような他の樹脂を混合する場合は、代表的には、樹脂溶液(A)を調製する時に該他の樹脂を有機溶媒に添加して溶解させ、樹脂溶液(A)を調製する。他の樹脂としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体;ポリ乳酸;乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体;ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の二塩基酸ポリエステル;ポリカプロラクトン;カプロラクトンと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体;が挙げられる。
【0063】
本発明の実施形態によるポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体を製造する際には、ポリエステル末端基を、カルボジイミド、エポキシ化合物、単官能性のアルコール、またはカルボン酸によって封止してもよい。この封止は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なタイミングで行い得る。例えば、樹脂溶液(A)を調製するタイミングや水分散体が得られた後のタイミングなどが挙げられる。ポリエステル末端基を封止することにより、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子の耐加水分解性の向上が期待できる。
【実施例0064】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0065】
<体積平均粒子径および変動係数(CV値)の測定>
樹脂粒子の体積平均粒子径は、MultisizerTM3(ベックマン・コールター社製測定装置)を用い、コールターカウンター法を用いて測定した。測定は、ベックマン・コールター社発行のMultisizerTM3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施した。
測定に用いるアパチャーは、測定する樹脂粒子の大きさによって、適宜選択した。測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズのアパチャーを選択し、樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、樹脂粒子の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択する等、適宜行った。測定後の体積平均粒子径が想定の体積平均粒子径と異なった場合は、適正なサイズを有するアパチャーに変更して、再度測定を行った。
Current(アパチャー電流)およびGain(ゲイン)は、選択したアパチャーのサイズによって、適宜設定した。例えば、50μmサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-800、Gain(ゲイン)は4と設定し、100μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-1600、Gain(ゲイン)は2と設定し、280μmおよび400μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-3200、Gain(ゲイン)は1と設定した。
測定用試料としては、溶媒除去後のポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体0.1gをイオン交換水30mL中にタッチミキサー(ヤマト科学社製、「TOUCHMIXER MT-31」)および超音波洗浄器(ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用した。測定中は、ビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、樹脂粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。樹脂粒子の体積平均粒子径は、10万個の樹脂粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、以下の数式によって算出した。
樹脂粒子の粒子径の変動係数=(樹脂粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差÷樹脂粒子の体積平均粒子径)
樹脂粒子の粒子径の変動係数(CV値)の評価基準を下記の通りとした。
◎:0.450未満
〇:0.450以上0.500未満
△:0.500以上0.700未満
×:0.700以上
【0066】
<アスペクト比の測定>
樹脂粒子のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製「SU1510」)撮影によって得られた樹脂粒子の写真を画像処理・解析して計測した樹脂粒子(30個)の長径と短径の比の平均値で評価した。
【0067】
<水分散体の分散安定性の評価>
水分散体の安定性は、目視により次の基準で評価した。なお、粒子の合一とは、粒子が融合した状態のことである。
◎:凝集は認められない。
○:一部凝集が認められる。
△:あきらかに凝集が認められる。
×:分離または粒子の合一が認められる。
【0068】
〔実施例1〕
攪拌機、温度計を備えた内容積2Lのオートクレーブに、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂(三菱ケミカル株式会社製、製品名「FD-92PM」):100g、酢酸エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製):233gを入れ、撹拌混合し、加熱溶解して70℃の樹脂溶液(1A)を調製した。
ポリビニルアルコール(けん化度=79mol%~81mol%、重合度=2000、粘度=29.0mPa・s~35.0mPa・s、株式会社クラレ製、製品名「クラレポバール32-80」):4gとラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、製品名「エマール2FG」、固形分100%):0.37gと水:113gを混合し、水溶液(1B)を調製した。
撹拌を維持したまま、70℃に加熱した水溶液(1B)を70℃の樹脂溶液(1A)に徐々に加えながら、両成分を混合し、転相により乳化した。
次に、得られた乳化液にイオン交換水を444g添加して系を希釈したのち、減圧することで酢酸エチルを除去し、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体(1)を得た。
得られた水分散体(1)を濾過し、得られた樹脂粒子を真空乾燥機にかけて水を除去することにより、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子(1)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた水分散体(1)をマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製の製品名「VHX-1000」)で撮影した写真図を図1に示した。
【0069】
〔実施例2〕
ラウリル硫酸ナトリウムの使用量を0.2gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体(2)、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子(2)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた水分散体(2)をマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製の製品名「VHX-1000」)で撮影した写真図を図2に示した。
【0070】
〔実施例3〕
ラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、製品名「エマール2FG」):0.37gに代えて、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王株式会社製、製品名「ラテムルPD-104」、固形分20%):2.6gを用いた以外は、実施例1と同様に行い、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体(3)、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子(3)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた水分散体(3)をマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製の製品名「VHX-1000」)で撮影した写真図を図3に示した。
【0071】
〔実施例4〕
ラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、製品名「エマール2FG」):0.37gに代えて、セチルトリメチルアンモニウムクロライド(花王株式会社製、製品名「コータミン60W」、固形分30%):1.23gを用いた以外は、実施例1と同様に行い、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体(4)、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子(4)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた水分散体(4)をマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製の製品名「VHX-1000」)で撮影した写真図を図4に示した。
【0072】
〔実施例5〕
ラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、製品名「エマール2FG」):0.37gに代えて、ラウリン酸アミドプロピルベタイン(花王株式会社製、商品名「アンヒトール20AB」、固形分30%):1.23gを用いてpHをアルカリ性領域へ調整した以外は、実施例1と同様に行い、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体(5)、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子(5)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた水分散体(5)をマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製の製品名「VHX-1000」)で撮影した写真図を図5に示した。
【0073】
〔実施例6〕
ラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、製品名「エマール2FG」):0.37gに代えて、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(花王株式会社製、商品名「エマルゲン420」、固形分100%):2.46gを用いた以外は、実施例1と同様に行い、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体(6)、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子(6)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた水分散体(6)をマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製の製品名「VHX-1000」)で撮影した写真図を図6に示した。
【0074】
〔比較例1〕
ポリビニルアルコール(けん化度=79mol%~81mol%、重合度=2000、粘度=29.0mPa・s~35.0mPa・s、株式会社クラレ製、製品名「クラレポバール32-80」):4gに代えて、ポリビニルアルコール(けん化度=86.5mol%~89mol%、重合度=2000、粘度=40.0mPa・s~46.0mPa・s、三菱ケミカル株式会社製、製品名「ゴーセノールGH-20」):4gを用いた以外は、実施例1と同様に行ったところ、乳化行程において乳化液が凝集してしまった。
結果を表1に示した。
【0075】
〔比較例2〕
ラウリル硫酸ナトリウムの使用量を0.1gに変更した以外は、実施例1と同様に行い、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体(C2)、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子(C2)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた水分散体(C2)をマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製の製品名「VHX-1000」)で撮影した写真図を図7に示した。
【0076】
〔比較例3〕
ラウリル硫酸ナトリウムを用いなかった以外は、実施例1と同様に行い、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体(C3)、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子(C3)を得た。
結果を表1に示した。
また、得られた水分散体(C3)をマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製の製品名「VHX-1000」)で撮影した写真図を図8に示した。
【0077】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の実施形態によるポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子水分散体、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂粒子は、コーティング材料、外用剤、光学部材、プラスチック改質剤、各種スペーサー、アンチブロッキング剤、各種充填剤など、多くの分野で利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8