(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144341
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】吸着盤
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20231003BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B25J15/06 A
H01L21/68 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051263
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 優
(72)【発明者】
【氏名】河野 義和
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707FS01
3C707FT07
3C707FT08
5F131EB02
5F131EB54
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パッドの吸着面に対してワークが傾斜している場合でも、パッドの吸着面をワークに当接させることができる吸着盤を提供する。
【解決手段】一様な厚みを有し円板状に成形される不織布シート18と、不織布シートを取付アダプタ12に変位可能に支持するリング形状の保持体28とを備える。吸着面20は、不織布シートの平坦な表面によって構成され、不織布シートは、外周部の非通気領域と、外周部を除いた通気領域とを備え、非通気領域の密度は、通気領域の密度より高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと密着可能な吸着面を有する吸着盤であって、
真空発生装置に取り付けられる取付アダプタと、一様な厚みを有し円板状に成形される不織布シートと、前記不織布シートを前記取付アダプタに変位可能に支持するリング形状の保持体とを備え、前記吸着面は、前記不織布シートの平坦な表面によって構成され、前記不織布シートは、外周部の非通気領域と、前記外周部を除いた通気領域とを備え、前記非通気領域の密度は、前記通気領域の密度より高い吸着盤。
【請求項2】
請求項1記載の吸着盤において、
前記保持体は、独立気泡構造を有する吸着盤。
【請求項3】
請求項2記載の吸着盤において、
保持プレートが前記不織布シートに接合される吸着盤。
【請求項4】
請求項3記載の吸着盤において、
前記保持体は、治具挿入用の切欠き溝を有し、前記切欠き溝は、前記保持体の外周面を周回し、前記保持体は、両面テープを用いて前記取付アダプタに接合され、前記保持体は、両面テープを用いて前記保持プレートに接合される吸着盤。
【請求項5】
請求項4記載の吸着盤において、
前記取付アダプタに装着されるダンパを備え、前記ダンパは、前記保持プレートと当接可能である吸着盤。
【請求項6】
請求項5記載の吸着盤において、
前記保持体の本体部の高さをHとし、前記保持体が接合される前記取付アダプタの段差面から前記ダンパの突出端までの距離をLとすると、(H-L)/Hの値が0.3以下である吸着盤。
【請求項7】
請求項2記載の吸着盤において、
保持プレートが前記取付アダプタに接合される吸着盤。
【請求項8】
請求項7記載の吸着盤において、
前記保持体は、治具挿入用の切欠き溝を有し、前記切欠き溝は、前記保持体の外周面を周回し、前記保持体は、両面テープを用いて前記取付アダプタに接合され、前記保持体は、両面テープを用いて前記不織布シートに接合される吸着盤。
【請求項9】
請求項8記載の吸着盤において、
前記保持体の本体部の高さをHとし、前記保持体が接合される前記取付アダプタの段差面から保持プレートまでの距離をL´とすると、(H-L´)/Hの値が0.3以下である吸着盤。
【請求項10】
請求項2記載の吸着盤において、
前記不織布シートおよび前記保持体は、導電性を有する吸着盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧による吸引力でワークを吸着する真空吸着装置に用いられる吸着盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状またはプレート状のワークを吸着して搬送する真空吸着装置において、ワークに皺や歪みが発生するのを抑制するため、多孔質体からなる吸着パッドを用いることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、負圧流体が供給されるポートを有するボデイと、多孔質体からなり平坦な吸着面を有するパッドと、ボデイに対してパッドを変位自在に保持する保持体とを備えた真空吸着装置が記載されている。パッドは、本体部と、本体部の周縁に形成された薄肉のリップ部とを有し、保持体は、パッドのリップ部とボデイとの間に配置される。
【0004】
上記真空吸着装置によれば、パッドの吸着面に対してワークが傾斜している場合でも、パッドの吸着面をワークに当接させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記真空吸着装置のパッドは、リップ部を封止部として機能させるため、パッドをプレス成形する際にリップ部が押し潰され、本体部とリップ部との間に段差が形成されている。このようなパッドは、段差の近傍で変形し易く、吸着面がフラットな形状を維持できないおそれがある。
【0007】
また、上記真空吸着装置のパッドは、パッドの傾斜を許容するため、ボデイに取り付けられた保持プレートとパッドとの間に所定の空間が存在する。このため、高い負圧が作用する場合、パッドが保持プレートに対して傾斜した状態で変形し、吸着面がフラットな形状を維持できないおそれがある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ワークと密着可能な吸着面を有する吸着盤であって、真空発生装置に取り付けられる取付アダプタと、一様な厚みを有し円板状に成形される不織布シートと、不織布シートを取付アダプタに変位可能に支持するリング形状の保持体とを備える。吸着面は、不織布シートの平坦な表面によって構成され、不織布シートは、外周部の非通気領域と、外周部を除いた通気領域とを備え、非通気領域の密度は、通気領域の密度より高い。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る吸着盤によれば、不織布シートが一様な厚みを有するので、不織布シートが変形し難く、吸着面のフラットな形状が維持される。また、不織布シートの密度を調整することで、外周部の非通気領域と外周部を除いた通気領域とを容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る吸着盤の断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の吸着盤の保持プレートが姿勢を変えることなく変位してワークが吸着保持された様子を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1の吸着盤の保持プレートが傾斜してワークが吸着保持された様子を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る吸着盤の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る吸着盤10について、
図1~
図6を参照しながら説明する。以下の説明において、上下左右の方向に関する言葉を用いたときは、便宜上、図面上での方向をいうものであって、部材等の実際の配置を限定するものではない。
【0013】
図1および
図2に示されるように、吸着盤10は、取付アダプタ12、不織布シート18、保持プレート26、保持体28およびダンパ32を備える。取付アダプタ12は、アルミニウム合金等の金属材料からなり、円盤状に構成される。取付アダプタ12は、取付アダプタ12の中央を上下に貫通する負圧供給通路14を有し、図示しない真空発生装置に取り付けられる。取付アダプタ12の下部は、保持体28を装着するための段部16を有する。なお、参照符号12aで示されるのは、取付アダプタ12を真空発生装置に取り付けるためのボルト孔である。
【0014】
不織布シート18は、樹脂繊維および導電性フィラーを含有する。不織布シート18は、円板状に成形され、一様な厚みを有する。不織布シート18の平坦な下面は、シート状またはプレート状のワークと密着可能な吸着面20を構成する。
図3に示されるように、不織布シート18は、通気性を有しない外周部の非通気領域22と、外周部を除いた通気性を有する通気領域24とを備える。非通気領域22の密度は、通気領域24の密度より高い。
【0015】
保持プレート26は、ステンレス鋼等の金属材料からなり、円板状に構成される。保持プレート26の外径は、不織布シート18の外径と一致する。保持プレート26は、例えば導電性を有する両面テープを用いて不織布シート18に接合される。
図4に示されるように、保持プレート26の中央は、取付アダプタ12の負圧供給通路14と整合する第1孔部26aを有する。保持プレート26は、第1孔部26aを取り巻く複数の円弧状の第2孔部26bを有する。複数の第2孔部26bは、不織布シート18の通気領域24と対応する部位に形成される。
【0016】
不織布シート18は、一様な厚みを有し、段差のない形状であるので、変形し難い。また、不織布シート18は、剛性の高い保持プレート26に支持されるので、大きい負圧(高い真空圧)が作用しても変形することがなく、吸着面20の平坦な形状が確実に維持される。また、保持プレート26は、不織布シート18の通気領域24に対応して複数の第2孔部26bを有するので、不織布シート18の通気性が保持プレート26によって妨げられることがない。
【0017】
保持体28は、クロロプレンゴム等のゴム材料にカーボン、金属等の導電性フィラーを添加したものを発泡させ多孔質化したゴムスポンジ体である。保持体28は、内部に多数の独立気泡を有し、通気性を有しない。保持体28は、リング形状に成形され、取付アダプタ12と保持プレート26の間に配置される。保持体28は、取付アダプタ12の段部16に装着され、取付アダプタ12から下方に突出する。不織布シート18および保持プレート26は、保持体28によって、取付アダプタ12に変位可能に支持される。
【0018】
保持体28は、保持体28の外周面を周回する切欠き溝30を有する。すなわち、保持体28は、本体部28aの上部から径方向外方に延びる第1フランジ部28bと、本体部28aの下部から径方向外方に延びる第2フランジ部28cとを備える。保持体28の上面は、取付アダプタ12の段部16における段差面16aに接合され、保持体28の下面は、保持プレート26の外周部上面に接合される。
【0019】
ダンパ32は、NBR等のゴム材料からなり、リング形状に成形される。ダンパ32は、取付アダプタ12の下部に装着され、取付アダプタ12の下面から僅かに下方に突出する。ダンパ32は、保持プレート26の上面と所定の隙間を隔てて向き合う。ダンパ32は、保持プレート26が上方に変位したとき、保持プレート26と当接する。
【0020】
独立気泡構造を有する保持体28は、30%以下の潰し率で使用するのが好ましい。換言すれば、保持体28は、弾性変形の範囲内である30%以下の圧縮率で使用するのが好ましい。繰り返し使用において、潰し率が30%を大きく超えると、保持体28内部の気泡が破裂して、保持体28のクッション性および非通気性が損なわれる。
【0021】
したがって、保持体28の本体部28aの高さ(上下方向の厚さ)をHとし、取付アダプタ12の段差面16aからダンパ32の突出端までの上下方向の距離をLとすると、(H-L)/Hの値が0.3以下であるのが好ましい。これにより、保持体28による所望のクッション性および非通気性が長期にわたって維持される。なお、保持体28のクッション性は、本体部28aに依存するものであり、第1フランジ部28bおよび第2フランジ部28cは、保持体28のクッション性に寄与しない。
【0022】
保持体28の上面は、図示しない導電性を有する両面テープを用いて、取付アダプタ12の段差面16aに接合される。保持体28の下面は、図示しない導電性を有する両面テープを用いて、不織布シート18に接合された保持プレート26の外周部上面に接合される。具体的には、保持体28の上面と取付アダプタ12の段差面16aとの間に両面テープが置かれ、保持体28の下面と保持プレート26の上面との間に両面テープが置かれた状態で、保持体28の切欠き溝30に図示しない硬い治具が挿入される。
【0023】
その後、取付アダプタ12と治具との間で保持体28の第1フランジ部28bが挟み込まれ、保持体28、両面テープおよび取付アダプタ12が相互に圧着される。その後、保持プレート26と治具との間で保持体28の第2フランジ部28cが挟み込まれ、保持体28、両面テープおよび保持プレート26が相互に圧着される。なお、これらの二つの圧着工程の順序は逆でもよい。
【0024】
上記圧着工程によって、保持体28の第1フランジ部28bは、大きく潰されながら両面テープに密着する。同様に、保持体28の第2フランジ部28cは、大きく潰されながら両面テープに密着する。このため、両面テープによる保持体28と取付アダプタ12との接合が確実に行われ、両面テープによる保持体28と保持プレート26との接合が確実に行われる。
【0025】
次に、
図5および
図6を参照しながら、ガラス基板等のプレート状のワークWが吸着盤10により吸着保持される作用について説明する。ワークWは、吸着盤10の吸着面20よりも大きいサイズを有し、複数の吸着盤10によって吸着保持される場合を想定する。以下、図示しない真空発生装置に複数の吸着盤10が取り付けられたものを「真空吸着装置」という。
【0026】
真空吸着装置が作動して、吸着盤10の負圧供給通路14に負圧(真空圧)が供給されるとともに、真空吸着装置が移動せしめられて、吸着盤10がワークWに接近する。負圧供給通路14に負圧が供給されると、保持プレート26の第1孔部26aおよび第2孔部26bを通じて、不織布シート18の上面に負圧が作用する。この負圧は、さらに、不織布シート18の通気領域24を介して、不織布シート18の下面と向き合うワークWに作用する。
【0027】
ワークWの重量が比較的小さい場合は、吸着盤10をワークWに押し付けなくても、ワークWが上方に変位して(リフトして)吸着盤10の吸着面20に密着する。ワークWの重量が比較的大きい場合は、吸着盤10をワークWに押し付けることで、吸着盤10の吸着面20をワークWに密着させる。
【0028】
ワークWが吸着盤10の吸着面20に一旦密着すると、ワークWの上面に作用する負圧とワークWの下面に作用する大気圧との差圧が急激に増大する。ワークWは、この差圧により、不織布シート18および保持プレート26を押上げ、保持体28を潰しながら上方に変位する。保持プレート26がダンパ32に当接すると、ワークWの変位が止まる。こうして、ワークWが安定した状態で吸着盤10に吸着保持される。ワークWのリフト時の衝撃は、保持体28が潰されることによって吸収されるとともに、保持プレート26がダンパ32に当接することによって吸収される。
【0029】
不織布シート18は外周部に非通気領域22を有し、かつ、独立気泡構造を有する保持体28は通気性を有しないので、真空漏れが生じない。なお、保持体28と取付アダプタ12との接合部、保持体28と保持プレート26との接合部、および、保持プレート26と不織布シート18との接合部は、真空漏れが生じないように封止されている。
【0030】
不織布シート18および保持プレート26が姿勢を変えることなく上方に変位してワークWが吸着保持された様子が
図5に示されている。剛性の高いワークWの上面が比較的精度の高い平面を有し、かつ、複数の吸着盤10が精度良く真空発生装置に取り付けられている場合は、ワークWは、すべての吸着盤10において、
図5に示される状態で吸着保持される。
【0031】
これに対して、複数の吸着盤10の一部が真空発生装置に正確な姿勢で取り付けられていない場合(取付誤差が所定以上の場合)は、ワークWは、一部の吸着盤10において、
図6に示される状態で吸着保持される。同様に、剛性の高いワークWの上面が平坦面となっていない場合も、ワークWは、一部の吸着盤10において、
図6に示される状態で吸着保持される。これにより、ワークWは、すべての吸着盤10の吸着面20に密着することができる。
【0032】
図6に示されるように、不織布シート18および保持プレート26は、取付アダプタ12に対して傾斜しており、ワークWは、傾斜した不織布シート18に密着している。保持体28の潰し量は、直径方向の一端である右端において最も大きく、保持体28の潰し量は、該直径方向の他端である左端において最も小さくなっている。なお、吸着保持作用の説明の冒頭において、吸着盤10の負圧供給通路14に負圧が供給されるとともに吸着盤10がワークWに接近するとしたが、吸着盤10がワークWに押し付けられた後に、負圧供給通路14に負圧が供給されてもよい。
【0033】
本実施形態に係る吸着盤10によれば、不織布シート18が一様な厚みを有するので、不織布シート18が変形し難く、吸着面20のフラットな形状が維持される。しかも、不織布シート18は、剛性の高い保持プレート26に支持されるので、大きい負圧(高い真空圧)が作用しても変形することがない。
【0034】
また、不織布シート18について、密度を調整することで、外周部の非通気領域22と外周部を除いた通気領域24とを容易に形成できる。不織布シート18が非通気領域22を備え、かつ、保持体28が通気性を有しないので、真空漏れが生じない。
【0035】
また、独立気泡構造を有する保持体28によって、不織布シート18および保持プレート26が取付アダプタ12に変位可能に支持されるので、ワークWのリフト時の衝撃が吸収される。しかも、真空発生装置に対する吸着盤10の取付けに所定以上の誤差があっても、ワークWが吸着盤10の吸着面20に確実に密着する。
【0036】
また、保持体28は、治具挿入用の切欠き溝30を有するので、使用時の本体部28aの潰し率を好ましい値としつつ、両面テープによる保持体28の接合を確実に行うことができる。また、不織布シート18、保持体28および両面テープは、導電性機能を有するので、ワークWの吸引保持に伴う静電気を外部に逃がすことができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る吸着盤40について、
図7および
図8を参照しながら説明する。なお、第2実施形態に係る吸着盤40において、上述した吸着盤10と同一または同等の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
図7および
図8に示されるように、吸着盤40は、取付アダプタ12、不織布シート18、保持プレート42および保持体28を備える。
【0038】
保持プレート42は、ステンレス鋼等の金属材料からなり、円板状に構成される。保持プレート42は、例えば導電性を有する両面テープを用いて取付アダプタ12に接合される。保持プレート42の中央は、取付アダプタ12の負圧供給通路14と整合する第1孔部42aを有する。保持プレート42は、第1孔部42aを取り巻く複数の円弧状の第2孔部42bを有する。複数の第2孔部42bは、不織布シート18の通気領域24と対応する部位に形成される。保持プレート42は、不織布シート18と所定の隙間を隔てて向き合う。不織布シート18が上方に変位したとき、不織布シート18は、保持プレート42に当接する。
【0039】
ゴムスポンジ体である保持体28は、内部に多数の独立気泡を有し、通気性を有しない。保持体28は、リング形状に成形され、取付アダプタ12と不織布シート18の間に配置される。保持体28の外径は、不織布シート18の外径と一致する。保持プレート42は、保持体28の内側に配置される。保持体28は、取付アダプタ12の段部16に装着され、保持プレート42を越えて下方に突出する。不織布シート18は、保持体28によって、取付アダプタ12に変位可能に支持される。
【0040】
保持体28は、保持体28の外周面を周回する切欠き溝30を有する。保持体28の第1フランジ部28bは、取付アダプタ12の段差面16aに接合される。保持体28の第2フランジ部28cは、不織布シート18の非通気領域22の上面に接合される。
【0041】
独立気泡構造を有する保持体28は、30%以下の潰し率で使用するのが好ましい。したがって、保持体28の本体部28aの高さをHとし、取付アダプタ12の段差面16aから保持プレート42の下面までの上下方向の距離をL´とすると、(H-L´)/Hの値が0.3以下であるのが好ましい。これにより、保持体28による所望のクッション性および非通気性が長期にわたって維持される。
【0042】
保持体28の上面は、導電性を有する両面テープを用いて、取付アダプタ12の段差面16aに接合される。保持体28の下面は、導電性を有する両面テープを用いて、不織布シート18の上面に接合される。具体的には、保持体28の上面と取付アダプタ12の段差面16aとの間に両面テープが置かれ、保持体28の下面と不織布シート18の上面との間に両面テープが置かれた状態で、保持体28の切欠き溝30に硬い治具が挿入される。
【0043】
その後、取付アダプタ12と治具との間で保持体28の第1フランジ部28bが挟み込まれ、保持体28、両面テープおよび取付アダプタ12が相互に圧着される。その後、不織布シート18と治具との間で保持体28の第2フランジ部28cが挟み込まれ、保持体28、両面テープおよび不織布シート18が相互に圧着される。なお、こららの二つの圧着工程の順序は逆でもよい。
【0044】
上記圧着工程によって、保持体28の第1フランジ部28bは、大きく潰されながら両面テープに密着する。同様に、保持体28の第2フランジ部28cは、大きく潰されながら両面テープに密着する。このため、両面テープによる保持体28と取付アダプタ12との接合が確実に行われ、両面テープによる保持体28と不織布シート18との接合が確実に行われる。
【0045】
負圧供給通路14に負圧が供給されると、保持プレート42の第1孔部42aおよび第2孔部42bを通じて、不織布シート18の上面に負圧が作用する。この負圧は、さらに、不織布シート18の通気領域24を介して、不織布シート18の下面と向き合うワークWに作用する。
【0046】
ワークWが吸着盤40の吸着面20に一旦密着すると、ワークWの上面に作用する負圧とワークWの下面に作用する大気圧との差圧が急激に増大する。ワークWは、この差圧により、不織布シート18を押上げ、保持体28を潰しながら上方に変位する。不織布シート18が保持プレート42に当接すると、ワークWの変位が止まる。保持プレート42に当接した不織布シート18は、剛性の高い保持プレート42によって支持されるので、大きい負圧が作用しても変形することがない。ワークWのリフト時の衝撃は、保持体28が潰されることによって吸収される。
【0047】
本発明に係る吸着盤は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0048】
10、40…吸着盤 12…取付アダプタ
16a…段差面 18…不織布シート
20…吸着面 22…非通気領域
24…通気領域 26、42…保持プレート
26b、42b…第2孔部(孔部) 28…保持体
30…切欠き溝 32…ダンパ