(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144350
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】パワー半導体モジュール及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231003BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20231003BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01L25/04 C
H01L23/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051276
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西森 独志
(72)【発明者】
【氏名】中里 典生
(72)【発明者】
【氏名】串間 宇幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康二
【テーマコード(参考)】
5F136
5H770
【Fターム(参考)】
5F136BA04
5F136BA06
5F136BA22
5F136CB07
5F136CB08
5F136GA13
5H770AA21
5H770BA01
5H770CA02
5H770CA08
5H770DA03
5H770DA41
5H770PA12
5H770PA22
5H770PA42
5H770QA06
5H770QA28
5H770QA37
(57)【要約】
【課題】二つの実装領域の間に離間領域を有するパワー半導体モジュールにおいて、冷却水を流す方向についての選択肢を増やし、パワー半導体モジュールを備える電力変換装置の実装寸法の設計変更を容易なものとする。
【解決手段】二個のパワー半導体チップと、これらのパワー半導体チップが設置された絶縁基板と、絶縁基板が設置されたベース板、を備え、ベース板のパワー半導体チップが設置された側の面の裏面である冷却面であって二個のパワー半導体チップがそれぞれ設置された二つの実装領域に対応する部分には、第一のフィンが設置され、二つの実装領域の間には、離間領域が設けられたパワー半導体モジュールにおいて、ベース板の冷却面であって離間領域に対応する部分における冷却媒体の流路抵抗は、二つの実装領域が対向する面に平行する方向では、二つの実装領域が対向する面に直交する方向に比べて大きい。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二個のパワー半導体チップと、
これらのパワー半導体チップが設置された絶縁基板と、前記絶縁基板が設置されたベース板、を備え、
前記ベース板の前記パワー半導体チップが設置された側の面の裏面である冷却面であって前記二個のパワー半導体チップがそれぞれ設置された二つの実装領域に対応する部分には、第一のフィンが設置され、
前記二つの実装領域の間には、離間領域が設けられたパワー半導体モジュールにおいて、
前記ベース板の前記冷却面であって前記離間領域に対応する部分における冷却媒体の流路抵抗は、前記二つの実装領域が対向する面に平行する方向では、前記二つの実装領域が対向する前記面に直交する方向に比べて大きいことを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項2】
二個のパワー半導体チップと、
これらのパワー半導体チップが設置された絶縁基板と、前記絶縁基板が設置されたベース板、を備え、
前記ベース板の前記パワー半導体チップが設置された側の面の裏面である冷却面であって前記二個のパワー半導体チップがそれぞれ設置された二つの実装領域に対応する部分には、第一のフィンが設置され、
前記二つの実装領域の間には、離間領域が設けられたパワー半導体モジュールにおいて、
前記二つの実装領域が対向する面に平行する方向に冷却媒体を流す第一の構成と、
前記二つの実装領域が対向する前記面に直交する方向に前記冷却媒体を流す第二の構成と、が選択可能であることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項3】
前記第一の構成は、前記冷却媒体が、前記ベース板の前記冷却面であって前記二つの実装領域に対応する部分の両方に分流するようにする構成であり、
前記第二の構成は、前記冷却媒体が、前記ベース板の前記冷却面であって前記二つの実装領域のうちの一方に対応する部分を流れた後、前記ベース板の前記冷却面であって前記離間領域に対応する部分を流れ、その後、前記ベース板の前記冷却面であって前記二つの実装領域のうちの他方に対応する部分を流れるようにする構成である、請求項2記載のパワー半導体モジュール。
【請求項4】
前記ベース板の前記冷却面であって前記離間領域に対応する前記部分には、第二のフィンが設置され、
前記第二のフィンは、前記二つの実装領域が対向する前記面に直交する方向に長軸を有する、請求項1又は2に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項5】
前記第一のフィンは、断面形状が四回対称の形状を構成する、請求項1又は2に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項6】
前記第一のフィンは、断面形状が円形又は正方形である、請求項1又は2に記載のパワー半導体モジュール。
【請求項7】
前記第二のフィンは、断面形状が楕円形、菱形又は長方形である、請求項4記載のパワー半導体モジュール。
【請求項8】
前記第二のフィンは、前記二つの実装領域が対向する前記面に平行する方向に複数個配置されている、請求項4記載のパワー半導体モジュール。
【請求項9】
前記第二のフィンは、断面形状が楕円形又は菱形であり、前記二つの実装領域が対向する前記面に直交する方向に複数個配置されている、請求項4記載のパワー半導体モジュール。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のパワー半導体モジュールと、
水路形成体と、を備え、
前記パワー半導体モジュールは、前記水路形成体を流れる前記冷却媒体により冷却されるように構成されている、電力変換装置。
【請求項11】
前記パワー半導体モジュールを複数個有し、
前記複数個の前記パワー半導体モジュールを一個の前記水路形成体に設置した構成を有する、請求項10記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワー半導体モジュール及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の駆動用モータの制御装置として、パワー半導体素子を用いて電車線電圧を交流から直流に変換する装置(コンバータ)、あるいは直流から交流に変換する装置(インバータ)がある。パワー半導体素子は、変換時損失に起因して発熱するため、パワー半導体素子を適切に冷却して温度上昇を抑制する必要がある。その冷却方法は、高速車両運行や通勤車両運行などの負荷の違いに応じて選択され、負荷の大きい高速車両では効率よく冷却できる水冷装置を用いる場合がある。
【0003】
パワー半導体素子を複数設置するパワー半導体モジュールの従来の水冷技術は、パワー半導体モジュールに、例えば熱伝導グリースを介して放熱フィン付きのヒートシンクが取り付けられ、その放熱フィンが冷却水流路の中に浸漬されて放熱する方式(間接水冷方式)である。ところが、熱伝導グリースは、金属に比べて熱伝導率が低いことから、熱抵抗が大きく、温度上昇抑制の妨げとなっている。
【0004】
これに対して、より高い冷却能力を確保するために、熱伝導グリースを介さずにパワー半導体素子から冷却水へと熱伝達する方式(直接水冷方式)を適用したパワー半導体モジュールが知られている。その直接水冷方式のパワー半導体モジュールによれば、ベース板の一方の面に絶縁層を介してパワー半導体素子が設置され、他方の面に放熱フィンが設けられている。そのパワー半導体モジュールは、ボルトやビス等を用いて水路形成体に固定され、水路形成体の開口部がベース板の放熱フィン形成面によって覆い塞がれる構造であるので、放熱フィン形成面を冷却水で直接冷やすことになり、パワー半導体素子の発熱を効率よく放熱できる利点を有する。
【0005】
また、システム電圧の高い鉄道等の高耐圧インバータを高出力化するために、パワー半導体モジュールの多並列使用が重要となっている。パワー半導体モジュールの多並列使用は、パワー半導体モジュール一つあたりの電流負荷を小さくし、パワー半導体素子の温度上昇を抑制する効果がある。
【0006】
特許文献1には、冷却されるための放熱領域を有し、平面レイアウトにおいて、第1の素子実装範囲と、第2の素子実装範囲と、第1の素子実装範囲および第2の素子実装範囲の間の離間範囲とを有する半導体装置であって、ベース板の面に突出部が直接固定され、突出部は、2つの素子実装範囲内に位置する実装範囲突出部と、離間範囲内に位置する離間範囲突出部とを含み、離間範囲突出部は、1つの突出部のみから構成されているものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の構成を用いる場合、冷却水を半導体装置の短辺方向にのみ流す場合には、冷却水が入口側から入り、左右に分かれて左右にある素子を効率的に冷却することが可能である。しかしながら、この半導体装置において、長辺方向に冷却水を流そうとすると、離間範囲にある突出部により流れが妨げられ、素子を効果的に冷却することができない。
【0009】
また、パワー半導体モジュール(半導体装置)を複数個並列に配置したパワーユニットにおいては、隣接する二個のパワー半導体モジュールの長辺が対向するように配置する場合と、短辺が対向するように配置する場合と、が考えられる。
【0010】
特許文献1に記載の構成は、長辺が対向するように配置する場合には適用可能であるが、短辺が対向するように配置する場合には適用が困難である。仮に短辺が対向するように配置して長辺方向に冷却水を流す場合には、離間範囲突出部により流れが妨げられ、パワー半導体素子を効果的に冷却できない。したがって、特許文献1に記載の半導体装置においては、冷却水を流す方向が限定されるため、パワーユニットを構成する複数個のパワー半導体モジュールの配置に関して選択肢が少なく、改善の余地があると考えられる。
【0011】
本開示は、二つの実装領域の間に離間領域を有するパワー半導体モジュールにおいて、冷却水を流す方向についての選択肢を増やし、パワー半導体モジュールを備える電力変換装置の実装寸法の設計変更を容易なものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、二個のパワー半導体チップと、これらのパワー半導体チップが設置された絶縁基板と、絶縁基板が設置されたベース板、を備え、ベース板のパワー半導体チップが設置された側の面の裏面である冷却面であって二個のパワー半導体チップがそれぞれ設置された二つの実装領域に対応する部分には、第一のフィンが設置され、二つの実装領域の間には、離間領域が設けられたパワー半導体モジュールにおいて、ベース板の冷却面であって離間領域に対応する部分における冷却媒体の流路抵抗は、二つの実装領域が対向する面に平行する方向では、二つの実装領域が対向する面に直交する方向に比べて大きいことを特徴とする。
【0013】
また、本開示の別の態様は、二個のパワー半導体チップと、これらのパワー半導体チップが設置された絶縁基板と、絶縁基板が設置されたベース板、を備え、ベース板のパワー半導体チップが設置された側の面の裏面である冷却面であって二個のパワー半導体チップがそれぞれ設置された二つの実装領域に対応する部分には、第一のフィンが設置され、二つの実装領域の間には、離間領域が設けられたパワー半導体モジュールにおいて、二つの実装領域が対向する面に平行する方向に冷却媒体を流す第一の構成と、二つの実装領域が対向する面に直交する方向に冷却媒体を流す第二の構成と、が選択可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、二つの実装領域の間に離間領域を有するパワー半導体モジュールにおいて、冷却水を流す方向を選択することが可能となる。これにより、パワー半導体モジュールを備える電力変換装置の実装寸法の設計変更が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係る鉄道車両の主電力変換装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の主電力変換装置10を構成するコンバータ4を示す回路図である。
【
図3】
図1の主電力変換装置10を構成するインバータ5を示す回路図である。
【
図4】第1の実施形態に係るパワー半導体モジュールの冷却装置を示す模式構成図である。
【
図5】第1の実施形態に係るパワーユニットの例を示す外観斜視図である。
【
図6】
図5のパワー半導体モジュール100の主要部分を示す回路図である。
【
図7】
図5のパワー半導体モジュール100を示す外観斜視図である。
【
図8A】
図7のパワー半導体モジュール100のB-B方向の側面図である。
【
図8B】
図7のパワー半導体モジュール100のC-C方向の側面図である。
【
図9A】
図8Bに示すパワー半導体モジュール100の分解図である。
【
図9B】
図9Aのベース板130の素子実装面を示す平面図である。
【
図10】
図9Bのベース板130の放熱フィン形成面を示す平面図である。
【
図11】
図5のパワーユニット53の分解斜視図である。
【
図12】
図11の水路形成体70における冷却水の流れ方向を示す斜視図である。
【
図14】第2の実施形態に係るパワー半導体モジュール100のベース板130の放熱フィン形成面を示す平面図である。
【
図15】変形例1に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面を示す平面図である。
【
図16】変形例2に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面を示す平面図である。
【
図17】変形例3に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面を示す平面図である。
【
図18】変形例4に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面の一部を示す平面図である。
【
図19】変形例5に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面の一部を示す平面図である。
【
図20】変形例6に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、パワー半導体チップをモジュール化した構造に関する。
【0017】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
本実施形態においては、一例として、電力変換装置に用いられる直接水冷方式のパワー半導体モジュールについて説明する。
【0019】
図1は、鉄道車両の主電力変換装置を示す概略構成図である。主電力変換装置は、パワー半導体モジュールを有する電力変換装置の一種である。
【0020】
本図に示すように、主電力変換装置10は、整流回路であるコンバータ4と、インバータ5と、平滑コンデンサ3と、を含む。コンバータ4とインバータ5とは、直流配線40p、40nで接続されている。直流配線40p、40nの間には、平滑コンデンサ3が設けられている。インバータ5は、三相交流配線40u、40v、40wにより交流電動機6に接続されている。コンバータ4、インバータ5、平滑コンデンサ3等は、パワー半導体モジュールを構成する。パワー半導体モジュールは、主電力変換装置10の主たる構成要素である。
【0021】
コンバータ4には、電車線1から変圧器2を介して交流電力が供給される。交流電力は、コンバータ4によって直流電力に変換される。コンバータ4での整流後、平滑コンデンサ3によって平滑化された直流電力がインバータ5に印加され、所望の電圧及び周波数を有する三相交流電力に逆変換される。三相交流電力は、三相交流配線40u、40v、40wにより交流電動機6に出力される。交流電動機6は、インバータ5の出力制御により所望の回転速度で駆動する。
【0022】
図2は、
図1の主電力変換装置10を構成するコンバータ4を示す回路図である。
【0023】
図2に示すように、コンバータ4は、レグ35と、コンバータ制御回路200と、を含む。レグ35は、各相に設けられ、それぞれ、上アームのスイッチング素子31及び整流素子33、並びに下アームのスイッチング素子32及び整流素子34を含む。スイッチング素子31、32及び整流素子33、34は、それぞれがパワー半導体素子である。コンバータ制御回路200は、スイッチング素子31、32に対して駆動信号210を送信するように構成されている。コンバータ4は、交流配線40r、40sにより変圧器2に接続されている。
【0024】
コンバータ4は、交流配線40r、40sを介して入力される交流電力を直流電力に変換し、直流配線40p、40nに出力する。コンバータ4の内部においては、レグ35が交流電力を整流する。スイッチング素子31、32は、駆動信号210を受信して駆動する。
【0025】
なお、本図においては、スイッチング素子31、32としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、整流素子33、34としてダイオードを用いているが、これらに限らず、他の種類の素子を適用することも可能である。
【0026】
図3は、
図1の主電力変換装置10を構成するインバータ5を示す回路図である。
【0027】
図3に示すように、インバータ5は、レグ35と、インバータ制御回路201と、を含む。レグ35は、出力する各相に設けられ、それぞれ、上アームのスイッチング素子31及び整流素子33、並びに下アームのスイッチング素子32及び整流素子34を含む。インバータ制御回路201は、スイッチング素子31、32に対して駆動信号211を送信するように構成されている。インバータ5は、直流配線40p、40nに接続されている。
【0028】
インバータ5は、平滑コンデンサ3で平滑化され直流配線40p、40nを介して入力された直流電力を三相交流電力に変換し、三相交流配線40u、40v、40wに出力する。インバータ5のスイッチング素子31、32は、駆動信号211を受信して駆動する。
【0029】
パワー半導体モジュールのコンバータ4及びインバータ5は、スイッチング素子31、32及び整流素子33、34を有するため、その電力変換動作に際して熱が発生し、温度が上昇する。この温度上昇を抑制するために、パワー半導体モジュールには冷却装置が取り付けられている。
【0030】
図4は、パワー半導体モジュールの冷却装置を示す模式構成図である。
【0031】
本図においては、冷却装置20は、複数のパワーユニット53(電力変換装置)において発生する熱を冷却媒体により除去する構成として、ポンプ50と、低温側分配管52と、高温側合流管55と、ラジエータ56と、ファン57と、タンク59と、を有する。複数のパワーユニット53にはそれぞれ、4個のパワー半導体モジュール100が一列に隣り合う状態で配置されている。この例においては、パワーユニット53の数は、3個である。よって、4並列のパワー半導体モジュール100から成るパワーユニット53を3並列としている、と見ることができる。なお、定格出力に応じて、パワー半導体モジュール100の並列数、あるいはパワーユニット53の並列数を変えてもよい。また、並列・直列は、任意に設定することができる。
【0032】
循環する冷却媒体がパワー半導体モジュール100の熱を除去することにより、電力変換装置を安定的に動作させることができる。冷却媒体としては、水やエチレングリコール水溶液が好適であるが、他の液体であってもよい。また、液体に限らず、気体を冷媒としてもよい。以下では、冷却媒体として水を用いるものとして説明する。
【0033】
ポンプ50から吐き出される低温冷却水51(液体冷媒)は、低温側分配管52によって各パワーユニット53に分配して送られる。低温冷却水51は、各パワーユニット53に設けられたパワー半導体モジュール100の熱を除去する。このとき、水温が上昇するため、高温冷却水54となる。高温冷却水54は、パワーユニット53から流出した後、高温側合流管55によって合流し、ラジエータ56に送られる。ラジエータ56内を通る高温冷却水54は、ファン57によって導入される冷却風58と熱交換して冷却され、低温冷却水51となり、ポンプ50に送られる。したがって、冷却水は、上記のような閉じた循環経路を循環する。
【0034】
このような循環経路における冷却水の温度変化に伴う冷却水の体積変化は、タンク59によって吸収される。
【0035】
図5は、パワーユニットの例を示す外観斜視図である。
【0036】
本図に示すように、パワーユニット53は、4並列のパワー半導体モジュール100と、水路形成体70と、を備えている。水路形成体70には、低温側冷却水継手71及び高温側冷却水継手72が設けられている。
【0037】
図6は、
図5のパワー半導体モジュール100の主要部分を示す回路図である。
【0038】
図6に示すように、パワー半導体モジュール100は、スイッチング素子31、32と、整流素子33、34と、を含む。これらの素子は、絶縁基板にマウントされている。これらの素子は、
図2及び3に示すレグ35を構成するように接続されている。また、スイッチング素子31、32には、ゲート端子110gが接続されている。ゲート端子110gは、スイッチング素子31、32のオンとオフとを制御するものである。このほか、パワー半導体モジュール100には、正極直流端子110p、負極直流端子110n及び交流端子110acが接続されている。これらの端子は、絶縁基板に設置されている。
【0039】
図7は、
図5のパワー半導体モジュール100を示す外観斜視図である。
【0040】
図7に示すように、パワー半導体モジュール100の外郭は、パワー半導体素子で発生する熱を冷却水に放熱するベース板130と、パワー半導体素子及び絶縁基板を保護する筐体113と、で構成されている。
【0041】
パワー半導体モジュール100の一方の辺には正極直流端子110p及び負極直流端子110nを配置し、その辺の対辺には交流端子110acを配置している。これらは、強電系の端子である。このほか、中央寄りに弱電系の端子としてゲート端子110g及び弱電系電極111が設けられている。
【0042】
ベース板130は、パワー半導体モジュールを水路形成体70(
図5)に固定するための通し穴114と、ゲートドライブ基板固定用ネジ穴112と、を有する。
【0043】
ベース板130の材料としては、熱伝導率が100W/mKよりも大きいもの、例えば銅、アルミニウム、AlSiC、MgSiC等が好適である。筐体113の材料としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂等が好適である。
【0044】
図8Aは、
図7のパワー半導体モジュール100のB-B方向の側面図である。
【0045】
図8Bは、
図7のパワー半導体モジュール100のC-C方向の側面図である。
【0046】
図8Aに示すように、ベース板130の上部には、筐体113が設置されている。ベース板130が水路形成体70(
図5)に当接する面135には、微小円柱状の突起であるピンフィン131(放熱フィン)が、多数(例えば、合計約100本以上)突出している。
【0047】
また、
図8Bに示すように、2つのピンフィン131の領域の間には、平板フィン132が設置されている。
【0048】
図9Aは、
図8Bに示すパワー半導体モジュール100の分解図である。
【0049】
図9Bは、
図9Aのベース板130の素子実装面を示す平面図である。
【0050】
図9Aに示すように、パワー半導体素子101(パワー半導体チップ)を設置した絶縁基板102は、単一のベース板130と接合材(図示省略)を介して接合されている。
【0051】
また、
図9Bに示すように、ベース板130の素子実装面には、大きく分けて2つのパワー半導体素子実装領域140(単に「実装領域」ともいう。)が設けられている。パワー半導体素子実装領域140には、パワー半導体素子101が実装されている。それぞれのパワー半導体素子実装領域140には、複数個のパワー半導体素子101が実装されていてもよい。それぞれのパワー半導体素子実装領域140は、ベース板130の短辺方向に長辺を有する形状となっている。2つのパワー半導体素子実装領域140の間には、パワー半導体素子が実装されていない離間領域142が設けられている。離間領域142も、ベース板130の短辺方向に長辺を有する形状となっている。
【0052】
また、筐体113を固定するためのネジ穴116が設けられている。
【0053】
図10は、
図9Bのベース板130の放熱フィン形成面(裏面)を示す平面図である。
【0054】
図10においては、ベース板130の素子実装面におけるパワー半導体素子実装領域140の裏側に該当する部分には、円柱状のピンフィン131が多数形成されている。一方、離間領域142の裏側に該当する部分には、複数の平板フィン132が形成されている。複数の平板フィン132は、ベース板130の長辺方向に平行に配置されている。
【0055】
円柱状のピンフィン131は、鍛造によりベース板130から形成してもよい。また、別途作製したピン形状の部材をベース板130にロウ付け等により接合してもよい。
【0056】
平板フィン132は、鍛造で形成してもよい。また、別途作製した平板をベース板130に、例えばロウ付け等により接合させてもよい。
【0057】
さらに、本図に示すように冷却水60(液体冷媒)が短辺方向に流入する場合、平板フィン132が邪魔板となるため、冷却水60は、ピンフィン131が設けられている領域に流入する。
【0058】
本明細書においては、本図に示すように二つの実装領域が対向する面に平行する方向に冷却媒体を流す構成を「第一の構成」と呼ぶ。第一の構成は、冷却媒体が、ベース板130の冷却面であって二つの実装領域に対応する部分の両方に分流するようにする構成である。
【0059】
また、ピンフィン131は、「第一のフィン」の一例である。第一のフィンは、ベース板130のパワー半導体チップが設置された側の面の裏面である冷却面であって二個のパワー半導体チップがそれぞれ設置された二つの実装領域に対応する部分に設置されている。
【0060】
ピンフィン131は、断面形状が四回対称の形状を構成する。
【0061】
平板フィン132は、「第二のフィン」の一例である。第二のフィンは、ベース板130の冷却面であって離間領域に対応する部分に設置されている。第二のフィンは、二つの実装領域が対向する面に直交する方向に長軸を有する。
【0062】
図11は、
図5のパワーユニット53の分解斜視図である。
【0063】
図11に示すように、パワーユニット53は、水路形成体70の上面に位置する開口部75を塞ぐように、Oリング73を介してパワー半導体モジュール100を設けることによって構成される。パワー半導体モジュール100は、ボルト穴76にボルトを通すことにより固定される。
【0064】
本図においては、封止部材としてOリング73を用いているが、他のシール材であってもよい。Oリング73を用いる場合、組み付けの際に、上面からOリング73がOリング用溝74から外れることがないため、組立性が向上する。
【0065】
まとめると、パワーユニット53(電力変換装置)は、パワー半導体モジュール100と、水路形成体70と、を備え、パワー半導体モジュール100は、水路形成体70を流れる冷却媒体により冷却されるように構成されている。
【0066】
電力変換装置は、パワー半導体モジュール100を複数個有し、複数個のパワー半導体モジュール100を一個の水路形成体70に設置した構成を有する。
【0067】
図12は、
図11の水路形成体70における冷却水の流れ方向を示す斜視図である。
【0068】
図12に示すように、低温冷却水51は、低温側冷却水継手71から水路形成体70に流入する。水路形成体70の内部において、冷却水60は、開口部75が直列に並んでいる方向に流れる。そして、冷却水60は、高温冷却水54となり、高温側冷却水継手72から流出する。
【0069】
図12のように、高温側冷却水継手72の出口は、流路が狭い。低温冷却水51が流入する低温側冷却水継手71の入口も、流路が狭い。一方、隣接する開口部75を水路形成体70の内部で接続する隣接モジュール間流路77は、開口部75の長辺と同等程度に幅を広くしてある。一旦冷却水60がピンフィン131の領域を流れて広がった後は、そのままの流路幅で流す方が、不必要な流路抵抗を生じさせることなく、強制対流の流速を維持することができ、熱交換効率が高くなるからである。
【0070】
【0071】
図13に示すように、冷却水60の流路は、ピンフィン131の領域を経て隣接モジュール間流路77につながり、隣接モジュール間流路77ではピンフィン131の領域よりも低い位置に形成されている。言い換えると、隣接モジュール間流路77は、Oリング73及びOリング用溝74の下方においては、ピンフィン131よりも低い位置に形成されている。
【0072】
以上説明した構造による効果を説明する。
【0073】
本実施形態は、
図10に示すようにパワー半導体モジュール100のベース板130の短辺方向に冷却水60を流す場合である。
【0074】
図12のように、冷却水60は、低温側冷却水継手71の側から流入し、計4つのパワー半導体モジュール100(
図11)が設置されパワー半導体モジュール100と開口部75との間に形成された空間を流れ、高温側冷却水継手72から流出する。
【0075】
1つ目のパワー半導体モジュールでは、流路入口に低温側冷却水継手71があって流路が狭く、出口は広い。2つ目及び3つ目のパワー半導体モジュールでは、出入口ともに広い。4つ目のパワー半導体モジュールでは、入口が広く、出口は高温側冷却水継手72のために流路が狭い。
【0076】
それぞれのパワー半導体モジュールの下の冷却水60の流れ及びその流れに伴う冷却性能について説明する。
【0077】
1つ目のパワー半導体モジュールについて説明する。
【0078】
狭い入口から入った冷却水は、
図10のように正面にある平板フィン132に当たり、流れが左右に分かれる。そして、左右にあるパワー半導体素子実装領域140にあるピンフィン131の周りに冷却水60が流れるため、パワー半導体素子101の熱を効率的に除去できる。
【0079】
また、平板フィン132により離間領域142への冷却水の流れは抑制されるため、パワー半導体素子101(
図9A)がなく温度上昇が小さい離間領域142を必要以上に冷却することがない。
【0080】
離間領域142に複数の平板フィン132を設けたが、入口直近の平板フィン132で流れが左右に分かれても、平板フィン132が入口付近に1つだけでは、ピンフィン131の領域を冷却水が流れているうちに離間領域142に冷却水60がある程度流入するようになる。
図10に示すように平板フィン132を入口直近だけでなく重ねて配置することにより、冷却水60が、主として、ピンフィン131の領域を流れるようにすることができる。これにより、冷却水60の流れがピンフィンの領域に偏ることになり、パワー半導体素子実装領域140(
図9B)にあるパワー半導体素子101を効率的に冷却できる。
【0081】
ピンフィン131の領域を通過した冷却水60の出口では、流路の幅が広く、ピンフィン131、平板フィン132等、流れの障害となるものがないため、冷却水60は、隣接モジュール間流路77を流れる過程で、流速が一様になる。
【0082】
2つ目及び3つ目のパワー半導体モジュールについて説明する。
【0083】
2つ目及び3つ目のパワー半導体モジュールにおいては、入口側及び出口側ともに、流路の幅が広くしてある。
【0084】
入口側では、上述のとおり、幅広い流路から入ってきた冷却水60の流速が一様になっている。離間領域142に向かう冷却水60は、平板フィン132が抵抗となるため、流れが左右に分かれ、ピンフィン131の領域に流入する。また、ピンフィン131の領域に向かう冷却水60も、ピンフィン131の領域に流入するピンフィン131の領域に流入した冷却水60の挙動は、1つ目のパワー半導体モジュールと同様である。
【0085】
冷却水60は、ピンフィン131の領域に偏って流れるため、流速も速く、パワー半導体素子実装領域140にあるパワー半導体素子101を効率的に冷却することが可能である。
【0086】
4つ目のパワー半導体モジュールについて説明する。
【0087】
4つ目のパワー半導体モジュールにおいては、入口側の流路幅は広く、出口側は狭くしてある。
【0088】
2つ目及び3つ目のパワー半導体モジュールと同様に、幅広い流路から入ってきた冷却水60の流速は一様になっている。ピンフィン131の領域及び離間領域142に流入した冷却水60の挙動は、1つ目、2つ目及び3つ目のパワー半導体モジュールと同様である。ピンフィン131の領域に偏って流れてきた冷却水60は、高温側冷却水継手72のある狭い出口に向かう。
【0089】
4つ目のパワー半導体モジュールの場合も、冷却水60がピンフィン131の領域に偏って流れるため、パワー半導体素子実装領域140にあるパワー半導体素子101を効率的に冷却することが可能である。
【0090】
つまり、
図11に示すパワーユニット53のように、隣接するパワー半導体モジュール100を長辺が対向するように並べた状態で、パワー半導体モジュール100の短辺方向に冷却水60を流す構成によれば、パワーユニット53を構成するいずれのパワー半導体モジュール100においても、ピンフィン131の領域に冷却水60を集中的に流すことができるため、パワー半導体素子101を効率的に冷却することが可能である。
【0091】
(第2の実施形態)
図14は、第2の実施形態に係るパワー半導体モジュール100のベース板130の放熱フィン形成面を示す平面図である。
【0092】
本図において、ピンフィン131及び平板フィン132の配置は、
図10と同一である。冷却水60を流す方向がパワー半導体モジュール100の短辺方向から長辺方向に変わっている点が異なる。これは、パワーユニット形成のためにパワー半導体モジュール100を並べる方向が
図11に示すものとは異なり、
図11に示すパワー半導体モジュール100を90度回転して、水路形成体70においてパワー半導体モジュール100の短辺が隣接させるように配置している。その他の構成は、
図11と同様であり、説明を省略する。
【0093】
【0094】
1つ目のパワー半導体モジュールについて説明する。
【0095】
狭い入口から入った冷却水60は、
図14のように正面付近のパワー半導体素子実装領域140にあるピンフィン131に当たる。冷却水60は、ピンフィン131の領域にほぼ均等に分配され流入する。ピンフィン131は、密であり、冷却水60の流れがパワー半導体モジュールの短辺側であるため、長辺方向の流れに流速分布は生じにくい。冷却水60がこの方向に流れる場合は、離間領域142にある平板フィン132による流れの阻害はほとんど生じない。次いで出口側のピンフィン131の領域に入っても、冷却水60はほぼ一様に流れる。ピンフィン131の領域から流出した後は、流路幅が広く、流れを阻害するものがないため、流れの一様性は維持される。
【0096】
つまり、ピンフィン131の領域をほぼ一様に冷却水60が流れるため、パワー半導体素子101の発熱を効率的に冷却できる。また、離間領域142においては、平板フィン132による抵抗がないため、冷却水60を送るための動力に無駄が生じない。
【0097】
2つ目及び3つ目のパワー半導体モジュールについて説明する。
【0098】
2つ目及び3つ目のパワー半導体モジュールにおいては、入口側及び出口側ともに、流路の幅が広くしてある。
【0099】
入口側では、上述のとおり、幅広い流路から入ってきた冷却水60の流速が一様になっている。冷却水60は、一様な流れを維持した状態でピンフィン131の領域に流入する。そして、冷却水60は、一様な流れを維持したまま、離間領域142及び出口側のピンフィン131の領域を通過し、流出する。
【0100】
よって、冷却水60は、ピンフィン131の領域に一様な流れを維持した状態で流れるため、パワー半導体素子実装領域140にあるパワー半導体素子101を均等に冷却することができる。
【0101】
4つ目のパワー半導体モジュールについて説明する。
【0102】
4つ目のパワー半導体モジュールにおいては、入口側の流路幅は広く、出口側は狭くしてある。
【0103】
2つ目及び3つ目のパワー半導体モジュールと同様に、幅広い流路から入ってきた冷却水60の流速は一様になっている。ピンフィン131の領域及び離間領域142に流入した冷却水60の挙動は、1つ目、2つ目及び3つ目のパワー半導体モジュールと同様である。ピンフィン131の領域に偏って流れてきた冷却水60は、高温側冷却水継手72のある狭い出口に向かう。
【0104】
よって、冷却水60は、ピンフィン131の領域に一様な流れを維持した状態で流れるため、パワー半導体素子実装領域140にあるパワー半導体素子101を均等に冷却することができる。
【0105】
本明細書においては、本図に示すように二つの実装領域が対向する面に直交する方向に冷却媒体を流す構成を「第二の構成」と呼ぶ。第二の構成は、冷却媒体が、ベース板130の冷却面であって二つの実装領域のうちの一方に対応する部分を流れた後、ベース板130の冷却面であって離間領域に対応する部分を流れ、その後、ベース板130の冷却面であって二つの実装領域のうちの他方に対応する部分を流れるようにする構成である。
【0106】
以上のとおり、
図10及び
図14に示す放熱フィン形成面を有するパワー半導体モジュール100のベース板130は、冷却水60を短辺方向及び長辺方向のいずれの方向に流す場合であっても、パワー半導体素子実装領域140(
図9B)を均等に冷却することができる。
【0107】
(変形例1)
図15は、変形例1に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面を示す平面図である。
【0108】
本図における
図10との相違点は、
図10の平板フィン132の代わりに、断面形状が略楕円形状のフィン133を1列あたり複数用いていることである。その他の構成は、
図10と同一であるため、説明を省略する。
【0109】
本変形例の構成による効果を説明する。
【0110】
冷却水の流れに関する効果は、平板フィン132の場合と同様であるが、フィン133と平板フィン132とが同一の高さを有する場合、略楕円同士の間に隙間が空くために、パワー半導体モジュール100の短辺方向に冷却水を流した場合に離間領域142を流れる冷却水の量が多くなり、相対的にパワー半導体素子実装領域140を流れる冷却水の量が減る。
【0111】
そのため、第1の実施形態に対してパワー半導体素子実装領域140の冷却性能は減少するが、離間領域142の冷却性能が向上する。
【0112】
また、第2の実施形態のように長辺方向に冷却水を流した場合には、パワー半導体素子実装領域140の流れは同等であるため、冷却性能は同等であるが、離間領域142では、略楕円形状で流路幅が進行方向で変化するために流れが乱される。このため、離間領域142においては、第2の実施形態に対して冷却性能が向上する。
【0113】
また、平板フィン132の場合と同様に、冷却水の流れが長辺方向であっても短辺方向であっても同等の冷却性能を得ることができる。そのため、ピンフィン131の配置は同一のまま、冷却水を流す方向を長辺方向と短辺方向とで選択可能なパワー半導体モジュールとすることができる。
【0114】
なお、フィン133は、第二のフィンの一例である。フィン133は、断面形状が楕円形であるが、菱形であってもよい。フィン133は、二つの実装領域が対向する面に直交する方向に複数個配置されている。
【0115】
(変形例2)
図16は、変形例2に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面を示す平面図である。
【0116】
本図における
図10との相違点は、離間領域142にも円柱状のピンフィン131を設け、かつ、離間領域142の両端部に平板フィン132を1個ずつ配置していることである。平板フィン132は、第二のフィンの一例である。その他の構成は、
図10と同一であるため、説明を省略する。
【0117】
本変形例の構成による効果を説明する。
【0118】
図16においては、離間領域142のフィンが一対の平板フィン132と複数の円柱状のピンフィン131とで構成されている。
【0119】
この構成の場合、パワー半導体モジュール100の短辺方向に冷却水を流した場合、入口側の直近の平板フィン132によって流れが左右に分かれ、左右のパワー半導体素子実装領域140にあるピンフィン131の領域に偏って流入する。
【0120】
冷却水は、流れが徐々に図中左右に広がって離間領域142にも流入するが、出口近傍にある平板フィン132により、パワー半導体素子実装領域140の出口近傍では、再び流れがパワー半導体素子実装領域140に偏ることとなる。
【0121】
そのため、第1の実施形態に比べて流れの偏りの度合いが減少するために、パワー半導体素子実装領域140の冷却性能の向上分が減少する。
【0122】
一方、パワー半導体モジュール100の長辺方向に冷却水を流した場合、冷却水の流れは、第2の実施形態と同等であり、パワー半導体素子実装領域140の冷却性能は、第2の実施形態と同等である。一方、離間領域142では、多数のピンフィン131が設けられているため、第2の実施形態より冷却性能が向上する。
【0123】
(変形例3)
図17は、変形例3に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面を示す平面図である。
【0124】
本図における
図10との相違点は、
図10の円柱状のピンフィン131の代わりに、断面形状が略正方形状のフィン134を用いていることである。そして、フィン134の断面を構成する正方形の対角線は、パワー半導体モジュール100の長辺方向及び短辺方向となっている。その他の構成は、
図10と同一であるため、説明を省略する。
【0125】
本変形例においても、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の冷却効果が得られる。
【0126】
なお、フィン134は、断面形状が四回対称の形状を構成する。
【0127】
(変形例4)
図18は、変形例4に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面の一部を示す平面図である。
【0128】
本図における
図10との相違点は、
図10の円柱状のピンフィン131の代わりに、平板フィン184をパワー半導体モジュール100の長辺方向及び短辺方向のいずれに対しても斜めに交わるように配置していることである。そして、近接する4つの平板フィン184がパワー半導体モジュール100の長辺方向(又は短辺方向)に対して45度の角度で放射状に配置された構成を有している。その他の構成は、
図10と同一であるため、説明を省略する。
【0129】
なお、近接する4つの平板フィン184は、これらを一体として見た場合、断面形状が四回対称の形状を構成すると言える。
【0130】
本変形例の放熱フィン形成面を有するパワー半導体モジュール100のベース板130は、冷却水60を短辺方向及び長辺方向のいずれの方向に流す場合にも、同様の単位長さ当たりの流路抵抗を有する。このため、冷却水60を短辺方向及び長辺方向のいずれの方向に流す場合にも、パワー半導体素子実装領域140(
図9B)をむらなく冷却することができる。更に厳密に言うと、冷却水60を短辺方向及び長辺方向のいずれの方向に流す場合にも、2つのパワー半導体素子実装領域140の伝熱係数をほぼ等しくすることができる。
【0131】
よって、本変形例においても、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の冷却効果が得られる。
【0132】
(変形例5)
図19は、変形例5に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面の一部を示す平面図である。
【0133】
本図における
図18との相違点は、
図18の平板フィン184の代わりに、断面形状が略楕円形状のフィン194を用いていることである。その他の構成は、
図18と同一であるため、説明を省略する。
【0134】
なお、近接する4つのフィン194は、これらを一体として見た場合、断面形状が四回対称の形状を構成すると言える。
【0135】
本変形例においても、冷却水60を短辺方向及び長辺方向のいずれの方向に流す場合にも、2つのパワー半導体素子実装領域140の伝熱係数をほぼ等しくすることができる。よって、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の冷却効果が得られる。
【0136】
(変形例6)
図20は、変形例6に係るパワー半導体モジュールのベース板の放熱フィン形成面の一部を示す平面図である。
【0137】
本図における
図18との相違点は、
図18の平板フィン184の代わりに、平板フィン204a、204bを用いていることである。
図20においては、平板フィン204a、204bの長辺の延長線が互いに他方の長辺に直交するように配置されている。その他の構成は、
図18と同一であるため、説明を省略する。
【0138】
なお、近接する4つの平板フィン204a、204bは、これらを一体として見た場合、断面形状が四回対称の形状を構成すると言える。
【0139】
本変形例においても、冷却水60を短辺方向及び長辺方向のいずれの方向に流す場合にも、2つのパワー半導体素子実装領域140の伝熱係数をほぼ等しくすることができる。よって、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の冷却効果が得られる。
【0140】
なお、上記の実施形態及び変形例においては、パワー半導体モジュール100の長辺方向に2つのパワー半導体素子実装領域140を配置し、2つのパワー半導体素子実装領域140の間に離間領域142を設けた構成について説明しているが、本開示のパワー半導体モジュール及び電力変換装置は、そのような構成に限定されるものではなく、パワー半導体モジュールの短辺方向に2つのパワー半導体素子実装領域を配置した構成であってもよい。また、パワー半導体モジュールの長辺方向及び短辺方向の寸法が等しく、平面図の形状が正方形であってもよい。このことは、単なる寸法の問題である。このように、上記の実施形態及び変形例と寸法が異なっていても、実装領域及び離間領域に設けたフィン等の構成、冷却媒体の流路の構成等に関する本開示の技術内容は、同様に適用できる。
【0141】
上記の実施形態及び変形例は、鉄道車両向けの主電力変換装置を例として示しているが、本開示の技術は、この例に限定されるものではなく、自動車やトラックなどの電力変換装置、船舶や航空機などの電力変換装置、工場設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられる家庭用電力変換装置に対しても適用することができる。
【0142】
上記の実施形態及び変形例は、本開示の内容をわかりやすく説明するためのものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0143】
1:電車線、2:変圧器、3:平滑コンデンサ、4:コンバータ、5:インバータ、6:交流電動機、10:主電力変換装置、31、32:スイッチング素子、33、34:整流素子、35:レグ、50:ポンプ、51:低温冷却水、52:低温側分配管、53:パワーユニット、54:高温冷却水、55:高温側合流管、56:ラジエータ、57:ファン、58:冷却風、59:タンク、60:冷却水、70:水路形成体、71:低温側冷却水継手、72:高温側冷却水継手、73:Oリング、74:Oリング用溝、75:開口部、76:ボルト穴、77:隣接モジュール間流路、100:パワー半導体モジュール、101:パワー半導体素子、102:絶縁基板、110p:正極直流端子、110n:負極直流端子、110ac:交流端子、110g:ゲート端子、111:弱電系電極、112:ゲートドライブ基板固定用ネジ穴、113:筐体、114:通し穴、130:ベース板、131:ピンフィン、132:平板フィン、133、134:フィン、135:面、140:パワー半導体素子実装領域、142:離間領域、200:コンバータ制御回路、201:インバータ制御回路。