(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144352
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】発信機カバー
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
G08B17/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051279
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】入谷 拓也
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA02
5G405CA09
5G405CA51
5G405FA04
5G405FA25
(57)【要約】
【課題】押釦を押下する際に発信機カバーを開ける操作が不要で、かつ、車両が跳ね上げた雪によって押釦が押下されるのを防止することができる発信機カバーを提供する。
【解決手段】本発明に係る発信機カバー1は、消火栓装置3又は消火器箱の前面パネル5に設けられる発信機8の押釦6を覆うように設けられるものであって、正面視において、前面パネル5における押釦6の左側または右側から立ち上がるように設けられた側面カバー体7と、側面カバー体7に連続するように設けられて、正面視において、押釦6における左側または右側を覆い、右側または左側が露出するように配置される正面カバー体9と、を備えたことを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火栓装置又は消火器箱の前面パネルに設けられる発信機の押釦を覆うように設けられる発信機カバーであって、
正面視において、前記前面パネルにおける前記押釦の左側または右側から立ち上がるように設けられた側面カバー体と、
該側面カバー体に連続するように設けられて、正面視において、前記押釦における左側または右側を覆い、右側または左側が露出するように配置される正面カバー体と、を備えたことを特徴とする発信機カバー。
【請求項2】
前記側面カバー体は取付部を回動軸として回動可能に設けられて、側面カバー体を回動させて前記前面パネル側に倒すことで、正面視で前記押釦の全体を露出させることができるようにしたことを特徴とする請求項1記載の発信機カバー。
【請求項3】
前記側面カバー体の起立状態を保持する保持手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の発信機カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火栓装置又は消火器箱の前面パネルに設けられる発信機の押釦を覆うように設けられる発信機カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般ビル向け火災報知設備の発信機に対するいたずらを防止する装置として、例えば特許文献1に、「火災報知器のいたずら防止装置」が開示されている。
特許文献1に開示のものは、透明な覗き窓を突き破って押しボタンを押し込むことにより警報システムに通報する火災報知器のいたずら防止装置であって、前記覗き窓を開閉する開閉扉と、該開閉扉の開閉を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果が開のときに所定時間警報を発動する警報装置とを備えたものである(特許文献1の請求項1参照)。
【0003】
特許文献1には、以下の作用効果が記載されている。
「開閉扉が開となると警報装置が作動する。いたずらをしようとする者は、押しボタンを押し込む前に警報装置が作動するので、驚いて逃走することになる。この結果、火災報知器のいたずらが防止され、いたずらによる警報システムの作動を防止することができる。」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のものは一般ビル向けの火災報知器に関するものであり、人為的な原因による誤報を防止しようとするものである。
しかし、本発明が対象としている発信機は、トンネル内で発生した火災を通報するためのものであり、消火栓装置や消火器箱等に取り付けられている。このため、一般ビル内に設置されるものとは異なる原因による誤報が発生する。
【0006】
雪の多い地域ではトンネルの坑口付近に雪が吹き込み積雪する。この積雪の上を車両が通行する際に跳ね上げられた雪によって、発信機の押釦が押されてしまう事象が発生していた。
そのため、このような雪の多い地域では、発信機にカバーを設け、車両が跳ね上げた雪に押釦が押されないようにする場合があった。
【0007】
しかしながら、発信機にカバー設けると、押釦を押す際に発信機カバーを開けてから押釦を押下する必要があり、緊急時における操作に手間を要するという問題がある。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、押釦を押下する際に発信機カバーを開ける操作が不要で、かつ、車両が跳ね上げた雪によって押釦が押下されるのを防止できる発信機カバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る発信機カバーは、消火栓装置又は消火器箱の前面パネルに設けられる発信機の押釦を覆うように設けられるものであって、
正面視において、前記前面パネルにおける前記押釦の左側または右側から立ち上がるように設けられた側面カバー体と、
該側面カバー体に連続するように設けられて、正面視において、前記押釦における左側または右側を覆い、右側または左側が露出するように配置される正面カバー体と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記側面カバー体は取付部を回動軸として回動可能に設けられて、側面カバー体を回動させて前記前面パネル側に倒すことで、正面視で前記押釦の全体を露出させることができるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記側面カバー体の起立状態を保持する保持手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る発信機カバーは、正面視において、前面パネルにおける押釦の左側または右側から立ち上がるように設けられた側面カバー体と、該側面カバー体に連続するように設けられて、正面視において、前記押釦における左側または右側を覆い、右側または左側が露出するように配置される正面カバー体と、を備えたことにより、押釦を押下する際に発信機カバーを開ける操作が不要で、かつ、車両が跳ね上げた雪によって押釦が押下されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態に係る発信機カバーの説明図である((a)左側面図、(b)正面図、(c)上面図)。
【
図2】
図1に示した発信機カバーが取り付けられた消火栓装置の正面図である。
【
図4】本実施の形態に係る発信機カバーの取付状態を説明する説明図である(その1)。
【
図5】本実施の形態に係る発信機カバーの取付状態を説明する説明図である(その2)。
【
図6】消火栓装置をトンネル内の監視員通路に設置する場合の配置の説明図である。
【
図7】トンネル内に設置された消火栓装置と路上を通過する車両による雪の跳ね上げ方向との関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態に係る発信機カバー1は、
図1~
図3に示すように、消火栓装置3の前面パネル5に設けられる発信機8(
図4参照)の押釦6を覆うように設けられるものであって、
正面視において、押釦6における左側において前面パネル5から立ち上がるように設けられた側面カバー体7と、側面カバー体7に連続するように設けられて、正面視において、押釦6における左側を覆い、右側が露出するように配置される正面カバー体9と、を備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0015】
<消火栓装置>
消火栓装置3は、
図2、
図3に示すように、箱状の筐体11と、筐体11の前面に設けられた開口部を有する前面パネル5と、前面パネル5の開口部に開閉可能に設けられた前傾式扉15とを備えている。
また、筐体11内には、またホース収容部及び消火器収納部が設けられている。
そして、前面パネル5における、ホース収容部と消火器収容部の間の部分に、発信機8の押釦6や表示灯17が設けられている。
【0016】
<発信機>
発信機8は、火災を発見した人が押釦6を押下することで、火災発生をトンネル管理室に伝えるものである。
発信機8は、防水型(防水型発信機)であり、ビル用の一般的な発信機のように、押釦6を押下後にフレキシガラスをワンタッチで復旧させる構造がなく、押下によりフレキシガラスが破損してしまう。このため、点検時にはフレキシガラスを外して押釦6を押下している。
また、この課題に対応したスライド式発信機もあり、点検時にはフレキシガラスをスライドホルダーごとずらして、フレキシガラスを破損させずに押釦6を押下できるものもある。
【0017】
<発信機カバー>
発信機カバー1は、
図1~
図4に示すように、前面パネル5における押釦6の左側から立ち上がるように設けられた側面カバー体7と、側面カバー体7に連続するように設けられて、正面視において、押釦6における左側を覆い、右側が露出するように配置される正面カバー体9と、を備えている。
【0018】
ここで、押釦6における左側とは、消火栓装置3をトンネル内進行方向の左側の壁面付近に設置した状態において、車道31における進行方向の後方側である(
図7参照)。換言すれば、車道31が左側通行である日本においては、正面視で左側が車道31における進行方向の後方側となる。
【0019】
また、本実施の形態では、側面カバー体7及び正面カバー体9に加えて、上面カバー体19と下面カバー体21とを有している。
正面カバー体9は、
図1(b)に示すように、中央部が透明のアクリル板9aの窓になっており、
図4(b)に示すように、押釦6をカバーした状態でも、押釦6の全体を視認できるようになっている。
【0020】
発信機カバー1の寸法の一例は
図1に示す通り、側面カバー体7の高さが50mm、正面カバー体9の左右方向の長さが50mm、正面カバー体9の上下方向の長さが100mm、アクリル板9aの窓は、左右方向の長さが33mm、上下方向の長さが66mmである。もっとも、発信機カバー1の寸法は、これに限定されるものではない。
【0021】
側面カバー体7の高さは、押釦6を操作する際に指が入ることを前提として、正面カバー体9が押釦6を覆う長さとも関連している。すなわち、側面カバー体7の高さを高くすることで、斜め後方から飛来する多くの雪を受け止めることができるので、正面カバー体9が押釦6を覆う面積を小さくできる。正面カバー体9が押釦6を覆う面積が小さい方が操作性の観点からは優れるが、側面カバー体7を高くすると、前面側への出っ張りが大きくなるため、両者の兼ね合いから適切な高さに設定する。
【0022】
この点、本実施の形態では、後述するように、斜め後方(消火栓装置3の正面に対して直交方向から車の進行方向に29°傾いた方向(
図7参照))から飛来する雪が押釦6にかからないようにするため、側面カバー体7の高さを50mmとして、正面カバー体9が押釦6を約半分覆うようにしている。
なお、発信機カバー1は、車両が跳ね上げた雪のうち、強い勢いを持って飛来するものが発信機8に直撃することを防げばよく、跳ね上げられた雪がさらに何かにぶつかって跳ね返ったり、風にあおられたりする等して、発信機8に当たる場合への対処を考慮する必要はない。
【0023】
また、本実施の形態の発信機カバー1においては、側面カバー体7の前面パネル5との取付部を2枚の蝶番23によって前面パネル5に取り付けることで回動可能に取り付けられている。
これにより、側面カバー体7は取付部を回動軸として回動可能になっており、
図5に示すように、側面カバー体7を回動させて前面パネル5側に倒すことで、発信機カバー1全体を回動させることができ、メンテナンス時等には正面視で押釦6の全体を露出させることができる。
本実施の形態では、
図5に示すように、約70°回動することで、押釦6の全体を露出させることができる。
なお、「取付部を回動軸として」の意味は、取付部自体が実在の回動軸となることを意味するのではなく、本実施の形態で示したように、例えば側面カバーの取付部の近傍に蝶番23が設けられることで、発信機カバー1が底辺部を仮想的な回動軸として回動することを意味している。
【0024】
また、上面カバー体19には、
図1に示すように、パチン錠25が取り付けられており、発信機カバー1を起立させた状態(通常の状態)で、パチン錠25を前面パネル5の係止部27に係止させることで、発信機カバー1の起立状態を保持できるようにしている。パチン錠25と係止部27は、側面カバー体7の起立状態を保持する本発明の保持手段に相当する。
【0025】
なお、蝶番23をスプリング蝶番として、発信機カバー1が起立状態(通常の状態)になるように付勢させることで、側面カバー体7の起立状態を保持させるようにしてもよい。この場合は、スプリング蝶番が本発明の保持手段としても機能し、上述のパチン錠25を併用しなくてもよい。
【0026】
以上のように構成された発信機カバー1が取り付けられた消火栓装置3をトンネル内に設置したときの機能について
図6、
図7に基づいて説明する。
図6は、消火栓装置3をトンネル内の監視員通路29に設置したときの配置の一例を示した図である。
図6に示すように配置された状態で、
図7に示すように、車道31を車両が走行した場合を想定すると、車両によって跳ね上げられる雪のうち発信機8の押釦6を押下する勢いを持った雪の飛来方向は、消火栓装置3の正面に対して直交方向から車の進行方向に29°以上傾いた方向となることが解析により分かった。
【0027】
このとき、発信機8の押釦6にカバーがない場合には、跳ね上げられた雪によって、押釦6が押されてしまう。
この点、本実施の形態の発信機カバー1を付けることで、
図4(a)に示すように、側面カバー体7と正面カバー体9が勢いよく飛来する雪から押釦6をカバーするので、飛来する雪によって押釦6が押されることはない。
他方、
図4(b)に示すように、発信機カバー1をした状態でも、押釦6は全面が覆われることなく、図中右側が露出しているので、発信機カバー1を開ける等の操作をすることなく、押釦6を押すことができる。
【0028】
また、発信機8のメンテ等の際には、
図5に示すように、パチン錠25を開錠して発信機カバー1を前面パネル5側に回動することで、押釦6の周辺を露出させることができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態の発信機カバー1においては、前面パネル5における押釦6の左側から立ち上がるように設けられた側面カバー体7と、側面カバー体7に連続するように設けられて、正面視において、押釦6における左側を覆い、右側が露出するように配置される正面カバー体9とを備えたことで、トンネル内に設置される消火栓装置3に適用することで、車両によって跳ね上げられる雪による誤作動を防止しつつ、緊急時の操作には全く支障がない。
【0030】
上記の実施の形態では、消火栓装置3がトンネル内の進行方向の左側に設置されている場合を例示して説明したが、1つのトンネルが1方向の車線のみを有する場合、消火栓装置3がトンネル内の進行方向の右側に設置される場合がある。この場合、前面パネル5における押釦6の右側から立ち上がるように設けられた側面カバー体7と、側面カバー体7に連続するように設けられて、正面視において、押釦6における右側を覆い、左側が露出するように配置される正面カバー体9とを備える発信機カバーとすればよい。これによって、上記の実施の形態と同様に、走行する車両の右側に跳ね上げられた雪による誤動作を防止することができ、緊急時の操作には全く支障がない発信機カバーとすることができる。
【0031】
また、上記の実施の形態では、消火栓装置3に設置された発信機8の押釦6をカバーする場合を例示して説明したが、トンネル内には消火器箱が設置され、消火器箱にも発信機8が設けられることがあるので、このような消火器箱に設けられた発信機8の押釦6をカバーする場合も適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 発信機カバー
3 消火栓装置
5 前面パネル
6 押釦
7 側面カバー体
8 発信機
9 正面カバー体
9a アクリル板
11 筐体
15 前傾式扉
17 表示灯
19 上面カバー体
21 下面カバー体
23 蝶番
25 パチン錠
27 係止部
29 監視員通路
31 車道