(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144354
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】電動機の制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 6/20 20160101AFI20231003BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20231003BHJP
H02P 6/182 20160101ALI20231003BHJP
【FI】
H02P6/20
H02P27/06
H02P6/182
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051281
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 炳
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 彬夫
(72)【発明者】
【氏名】吉野 知也
【テーマコード(参考)】
5H505
5H560
【Fターム(参考)】
5H505AA08
5H505BB09
5H505CC04
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505HA07
5H505HB02
5H505JJ03
5H505KK05
5H505LL16
5H505LL22
5H505LL41
5H505MM02
5H560BB04
5H560BB12
5H560DA13
5H560DB20
5H560DC12
5H560DC13
5H560EB01
5H560GG04
5H560HA08
5H560JJ02
5H560SS02
(57)【要約】
【課題】
巻き線インダクタンスが小さい電動機において、空転状態から電動機を再駆動させる際に、大きな電流リップルが発生し、異常状態に陥ることがあるため、空転状態からの再駆動ができない問題があった。
【解決手段】
複数相の巻き線を有する電動機を制御する電動機の制御装置であって、直流電圧を正弦波の交流電圧に変換し電動機に供給するインバータと、正弦波の交流電圧の周波数に応じてスイッチング信号を生成する制御部と、制御部からのスイッチング信号の出力が停止したときに、電動機の空転中位相を検出し、位相信号を出力する位相検出手段と、を有し、制御部は、電動機が空転中から再駆動する際に一時的に前記インバータの制御周波数を高く設定した上で、位相信号に基づいて、スイッチング信号を生成する。さらに再駆動に成功し、制御が安定した後に、直ちにインバータの制御周波数を通常の状態に戻す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相の巻き線を有する電動機を制御する電動機の制御装置であって、直流電圧を正弦波の交流電圧に変換し電動機に供給するインバータと、正弦波の交流電圧の周波数に応じてスイッチング信号を生成する制御部と、制御部からのスイッチング信号の出力が停止したときに、電動機の空転中位相を検出し、位相信号を出力する位相検出手段と、を有し、前記制御部は、前記電動機が空転中から再駆動する際に一時的に前記インバータの制御周波数を高く設定した上で、位相信号に基づいて、スイッチング信号を生成し、再駆動後に制御の安定を確認したのちに前記インバータの制御周波数を通常状態に復帰することを特徴とする、電動機の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動機の制御装置であって、前記電動機は、永久磁石同期モータである、電動機の制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の電動機の制御装置において、前記位相検出手段は、前記電動機の固定子巻線と前記インバータ間の複数の配線にかかる線間電圧を分圧した複数の電圧を比較する比較回路を有する、電動機の制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動機の制御装置であって、前記位相検出手段からの信号が検出できない所定の電動機の回転数未満の場合は、停止制御を行い、回転停止後、再駆動させ、前記位相検出手段からの信号が検出可能な所定の電動機の回転数以上のときに、前記位相検出手段の位相信号に基づいて、スイッチング信号を生成する、電動機の制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動機の制御装置であって、前記電動機は電気掃除機の電動機である電動機の制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動機の制御装置であって、前記電動機は電気洗濯機の電動機である電動機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の制御装置に関し、特に磁極位置検出手段、モータ電流検出手段を省略したセンサレス制御方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機の制御装置において、部品削減による信頼性向上、及び設置場所における
制約の排除を目的に、電動機の磁極位置を検出するための磁極位置センサ、あるいはモータ電流センサを省略するセンサレス制御技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、このセンサレス制御においてインバータのスイッチング動作が停止している状態、即ち電動機が空転している状態において、位相検出手段により空転中の実際の位相を検出し、インバータのスイッチング動作再開時には前記の実際の位相を用いることで、空転状態からの再駆動を可能としている。また、特許文献2では電動機が同期PWM制御方式で制御された場合に、空転状態から電動機を駆動させたとしても、電気ショックの発生を抑止し、過電流や脱調等の異常状態に陥ることを低減可能な電動機の制御装置を提供されている。
【0004】
一方で、電気掃除機は軽量タイプの需要が伸びており、搭載されているモータもさらなる小型化が求められている。一般的に小型モータほど巻き線インダクタンスが小さい傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-137106号公報
【特許文献2】特開2020-005472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1並び2に示されるような電動機を空転状態から再駆動させる(空転再駆動とも呼ぶ)技術において、巻き線インダクタンスがより小さい電動機を再駆動させようとした場合、大きな電流リップルが発生し、過電流や脱調等の異常状態に陥る可能性がある。対策として、インバータの制御周波数をより高く設定した状態でモータを駆動し、特許文献1に記載の手法を実行することが考えられるが、特許文献2の同期PWM制御との併用が不可能であること、高い制御周波数では回路損失が増大し、インバータ回路の温度が上昇すること等が課題となる。
【0007】
本発明は、巻き線インダクタンスが小さい電動機において、空転状態から電動機を再駆動させる際に、大きな電流リップルを抑制し、異常状態に陥らず正常に再駆動可能な電動機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために、複数相の巻き線を有する電動機を制御する電動機の制御装置であって、直流電圧を正弦波の交流電圧に変換し電動機に供給するインバータと、正弦波の交流電圧の周波数に応じてスイッチング信号を生成する制御部と、制御部からのスイッチング信号の出力が停止したときに、電動機の空転中位相を検出し、位相信号を出力する位相検出手段と、を有し、制御部は、電動機が空転再駆動を行う際に一時的に前記インバータの制御周波数を高く設定した上で、位相信号に基づいて、スイッチング信号を生成する。さらに再駆動に成功し、制御が安定した後に、直ちにインバータの制御周波数を通常の状態に戻す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻き線インダクタンスが低い電動機において、空転再駆動を行ったとしても、大きな電流リップルを抑制し、異常状態に陥らない電動機の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る電動機の制御装置の一構成例を示す図である。
【
図3】本発明の電動機の制御装置の処理部の制御ブロックを示す図である。
【
図4】本発明の電動機の制御装置の全体動作フローを示す図である。
【
図5】本発明の電動機の制御装置の位相信号の処理フローを示す図である。
【
図6】本発明の位相検出手段の一回路例を示す図である。
【
図7】本発明の位相信号と分圧信号の関係を示す図である。
【
図8】本発明の位相検出手段の他の回路図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
本発明は、複数相の巻線を有する電動機103を制御する電動機103の制御装置に関し、本発明の実施例として、電動機103を含む電気掃除機10の制御装置に利用した場合について、以下詳細に説明する。
【0012】
図2は、本発明に関わる電気掃除機10の外観である。
図1は、本発明に関わるモータ制御装置の基本構成図である。
図1において、モータ制御装置はエネルギを供給する充電池100、平滑コンデンサ101、負荷としてのファン102が取り付けられた電動機103、直流電圧を正弦波の交流電圧に変換し、変換した交流電力を電動機103であるモータ(本実施例では永久磁石同期モータ)に出力するインバータ104、それを駆動するドライバ回路105、ドライバ回路105にPWM信号を出力する処理部であるマイコン106、電源電圧を検出する為の電圧検知手段107、掃除機のスイッチ入切信号を伝えるスイッチ信号生成部108、インバータ104からの電力出力を停止し、電動機103が空転しているときに磁極位置信号を生成する位相検出手段109、直流電流検出器110、過電流検出回路111、直流電流検出抵抗117と、を備えて構成されている。
【0013】
このように、本実施例は直接、磁極位置やモータ電流を検出する手段を省略した、センサレス構成となっている。
【0014】
なお、本図ではエネルギ供給手段として充電池100を用いているが、交流電力を直流電力に変換する手段を用いることにより、直流電力を利用することも可能である。
【0015】
スイッチ信号生成部108からのスイッチ信号112が入の状態になると、マイコン106は充電池100の電圧を電圧検知手段107によって、また、磁極位置を直流電流検出器110から得た電流情報114をもとにして出力演算を行い、ドライバ回路105にPWM波形を出力する。インバータ104はこの出力を受けて駆動され、電源100からの直流電力を交流電力として電動機103へ供給する。この結果、電動機103とそれに取り付けられたファン102が回転し、吸い込み力が発生、ゴミを吸引する風力を得る。
【0016】
スイッチ信号112が入から切の状態になると、マイコン106は、位相検出手段109からの位相信号113を受け付け、空転中の電動機103の状態を監視する。位相検出手段109は、電動機103とインバータ104を結ぶ各相の配線116からそれぞれの逆起電力を検出し、位相信号113としてマイコン106へ出力する。
【0017】
また、スイッチ信号生成部108は、入切情報の他にも数種類の動作モードを持っている。マイコン106は、それぞれの動作モードに応じて回転数等の制御を行い、吸い込み力に変化をつける。
【0018】
なお、本実施例において、位相検出手段109は、制御部であるPWM生成回路243からのスイッチング信号の出力が停止したときに、電動機103の空転中位相を検出し、位相信号を出力するものであり、
図6のように構成している。
図6ではU相とV相の逆起電力を用いる場合で説明する。
【0019】
分圧回路150、151はU相の逆起電力を、また、分圧回路152、153はV相の逆起電力を、分圧し、比較回路であるコンパレータ160へ出力する。
【0020】
比較回路であるコンパレータ160は、電動機103の固定子巻線とインバータ104間の複数の配線にかかる線間電圧を分圧した複数の電圧を比較するものであり、具体的には、分圧回路150~153によって得られた信号154、155を受け、位相信号113としてHまたはLを出力する。
【0021】
これらの波形の関係は
図7のようになっており、U-V間線間電圧のゼロクロス点を閾値として、HかLを出力する回路と等価である。
【0022】
本実施例では、位相信号113のみを検出して空転中の状態を監視しているが、正転、逆転させる場合は
図8のように第2の位相信号170を出力させることで、回転方向の検出を行うことも可能である。
【0023】
次に、
図3~
図5を用いて、処理部であるマイコン106内の動作について説明する。
【0024】
図3において、マイコン106の動作は、ベクトル制御系200、空転中位相検出系300から構成されている。
【0025】
ベクトル制御系200は、特許文献1、2で提案されているスマートベクトル方式であり、磁極位置センサ、モータ電流センサを省略した構成に対応している。キャリア周波数制御器245と、空転再駆動要求生成器246を除き、詳細は特許文献1、2に記載のものであるため、ここでは概略のみ説明する。
【0026】
まず、相電流再現器201により、増幅器114からの直流電流の電流情報IDCから得た情報からモータ電流を再現する。これを、d-q変換器202により3相のIu、Iv、Iwの交流電流情報から回転座標系に変換し、トルク電流成分Iqcと、励磁電流成分Idcに変換する。
【0027】
また、回転子位置推定器220は、これらのトルク電流成分Iqc、励磁電流成分Idcと、電圧指令演算器240の出力である電圧指令値Vdc*、Vqc*をもとにして、制御系で推定した磁極位置と、実際の電動機103との磁極位置のずれΔθcを算出する。ずれΔθcは、PLL制御器221によって周波数指令値ω1に反映される。
【0028】
電圧指令演算器240は、Id*、Iq*、ω1*から出力する電圧指令値Vdc*、Vqc*を演算する。
【0029】
キャリア周波数制御器245は、制御部であるPWM生成回路243の制御周波数Fcを可変させるものである。キャリア周波数制御器245の一つの入力である空転再駆動要求生成器246は、電動機103の測定指令値ωr*と電動機103が空転時周波数ωfrから空転再駆動要求の有無を判定するものである。具体的にはスイッチ108の切以外を押下された場合、すなわち運転要求(ωr*≠0)があった場合に、空転時周波数ωfrが十分に大きいと、電動機が停止するまで待ってから再駆動させるより、空転中に電動機を再駆動させる方が早いため、空転再駆動を要求する。空転再駆動要求の有無に応じてキャリア周波数制御器245から制御周波数Fcを出力する。ここで
図3に示されていような同期PWM制御方式を用いる場合には、Vdc*、Vdq*、θdc、ω1*をキャリア周波数制御器245に入力しω1*と同期した制御周波数Fcを出力する。前記空転再駆動の要求により出力されるFcは同期PWM制御により出力されるFcよりも優先されるものとする。これにより一時的に非同期PWM制御となるが、後述の手順で空転再駆動終了後に同期PWM制御へ復帰させることができる。
【0030】
d-q変換器242は、電圧指令値Vdc*、Vqc*を3相交流成分であるVu*、Vv*、Vw*に変換し、キャリア周波数制御器の出力であるキャリア周波数Fcに応じたVu*、Vv*、Vw*を制御部であるPWM生成回路243へ出力する。
【0031】
制御部であるPWM生成回路243は、正弦波の交流電圧の周波数に応じてスイッチング信号を生成するものであり、これらのVu*、Vv*、Vw*と、電圧検知手段107から得た情報Edcをもとに、出力パルスをドライバ回路105へ出力し、ドライバ回路105はインバータ104へ、パルスを出力する。
【0032】
なお、励磁電流指令値Id*はd軸電流生成器241で、トルク電流指令値Iq*は、トルク電流フィードバック値Iqcからフィルタ244を介することによって求めている。
【0033】
空転中位相検出系300は、インバータ104のパルス出力が停止し、電動機103が空転している時に動作するもので、電動機103が空転中の状態から再駆動できるようにするものである。
【0034】
空転時位相検出器301は、位相検出手段109からの位相信号113を受け、信号レベルがH→L、あるいはL→Hに変化したときのタイミングで位相θfrを更新する。
【0035】
空転時周波数計測器302は、空転時位相検出器301と同様に位相信号113を受け、その信号レベルの変化ごとに電動機103の空転時周波数ωfrを演算する。
【0036】
スイッチ310は、電動機103が空転中であるか否かによって、使用する指令値を切り替えるものである。
【0037】
空転時、スイッチ310は状態Aを選択する。このため、位相検出手段109からの位相信号113は空転時位相検出器301、空転時周波数計測器302で検出され、空転時の電動機103の状態を監視できるようになる。
【0038】
また、電圧指令生成器240への電流指令値Id*、Iq*として0を選択し、周波数指令として、空転時周波数ωfrを選択する。この結果、空転中の電圧指令値を常に演算することが可能となるため、空転中から電動機103を再駆動させる際、この電圧指令値を即座に利用することが可能となる。
【0039】
電動機103が完全停止している、あるいはインバータ104が電動機103へ電力を出力している状態において、スイッチ310は状態Bを選択する。このため、空転中位相検出系300はベクトル制御系200に何ら影響を与えない。
【0040】
以下、本実施例におけるシステムの動作の流れを、
図4、
図5を用いて説明する。
図4は、本実施例の全体的な動作の流れについて示したものである。
【0041】
まず、インバータ104へパルス出力処理を行っているかどうかを、インバータ出力中判定401で判断する。このとき、出力を停止していた場合、空転時周波数ωfrをもとにして判定405を行う。判定405は、再駆動可能か不可能かを判定するものであり、位相検出手段109からの信号が検出できない所定の電動機103の回転数未満、又は位相検出手段109からの信号が検出可能な所定の電動機103の回転数以上かどうかを判定するものである。具体的には、空転時周波数ωfrが、予め定めた下限値以上か否かを判定する。もし再駆動不可状態と判定した場合、具体的には、空転時周波数ωfrが、予め定めた下限値以上と判定された場合、処理407において空転中位相検出系300にあるスイッチ310をBに設定し、電動機を停止する停止処理408を実行する。また、空転中からの再駆動可能状態と判定した場合、具体的には、空転時周波数ωfrが、予め定めた下限値より小さいと判定された場合、インバータ制御周波数の高速化処理406を実施した後に処理410で空転中位相検出系300にあるスイッチ310をAに設定し、再駆動に備える。
【0042】
判定401において、インバータ104へパルス出力中であった場合、空転中位相検出系300にあるスイッチ310を判定402で実行する。このとき、状態Bだった場合、判定411を実行する。
【0043】
判定411は制御が安定したか否かの判定を行う。制御が安定したか否かについては「空転再駆動からの規定時間経過」や「磁極の位置ずれΔθcが規定範囲内」や「モータ相電流の大きさが定常時相当」等から判断可能である。また、その他のパラメータを用い、制御安定を定義しても良い。制御が安定した場合、処理412にてインバータの制御周波数Fcを高い設定値から通常の設定値に戻し、電圧演算処理409を行う。なお、制御周波数Fcを通常の設定値に戻す際には、非同期PWM制御、同期PWM制御ともに、即時通常の設定値に復帰させると変化が大きくショックが生じる可能性があるため、制御周波数Fcを段階的に戻す手法を取っても良い。一方、制御が安定していない場合、そのまま電圧演算409を行い、電動機103を制御する。
【0044】
判定402の判定結果が状態Aの場合、まだ空転時からの再駆動処理が継続されていることを示す。このときの電流指令値は、
図3にもあるとおりId*、Iq*共に0であり、また周波数指令値は、インバータ104へのパルス出力を開始する直前のままとなっている。
【0045】
そこで、通常のベクトル制御を行うため、状態Bに戻すためには、相電流再現器201から再現される相電流波形が正確である必要がある。このため、相電流波形が正常に再現されるまで状態Aを継続する。
【0046】
判定403にて、電流再現可能となった場合、処理404にて、スイッチ310を初めて状態Bに変更し通常の制御を行う。
【0047】
次に、電動機103が空転中のときにおいて、位相信号113の信号変化毎に実行される処理を、
図5を用いて示す。
【0048】
電動機103が空転中の間、位相信号検出処理501は、位相検出手段109から出力された位相信号113が変化した直後の状態を検出する。
【0049】
また、空転中周波数演算処理502は、位相検出手段109から出力された位相信号113が変化した時間間隔を計測する。
【0050】
位相信号113がH→L、L→Hに変化するタイミングは、
図7に示すように検出回路の波形、つまり磁極位置と常に1対1の対応を示す。このため、電動機103の正確な位相情報、空転時周波数を正確に得ることができる。
【0051】
インバータ出力開始判定503は、スイッチ108からの信号を監視し、入になったときに有効となる。スイッチ108が入になると、磁極位置設定処理504により、ソフトウェア内で保持している位相と実際の磁極の位相を合わせる。次に、インバータ104へパルスを出力することを許可するインバータ出力開始処理要求505を出力する。最後に、インバータ104から電動機103へ電力を出力している間、位相検出手段109は意味の無い位相信号を送出する。これを受け付けないようにするため、割り込み禁止処理506を実行する。
【0052】
以上のように、本発明では、電動機103が空転中から再駆動する際に、空転中の再駆動が不可能と判定された場合、停止制御を行い、回転停止後、再駆動させる。空転中の再駆動が可能と判定された場合、制御が安定するまでに、キャリア周波数制御器245にて一時的にインバータの制御周波数を高く設定し、制御する。制御が安定したら、直ちにインバータの制御周波数を通常の制御周波数に戻し、通常の制御を行うことで、巻き線インダクタンスが低い電動機においても大きな電流リップルなく再駆動できる。
【0053】
本発明を電気掃除機のような、軽負荷で電動機の出力を停止しても数秒間回転し続け、なおかつ、頻繁にスイッチの入切動作が実行可能な製品に適用することにより、再駆動までの時間を短くする効果を得ることができる。
【0054】
なお、上記実施例では、電動機を含む電気掃除機の例で説明したが、電気洗濯機などの他の家電製品に適用しても良い。