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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144362
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】積層体、および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20231003BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B32B9/00 A
C23C14/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051296
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳永 幸大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義和
(72)【発明者】
【氏名】室伏 義郎
【テーマコード(参考)】
4F100
4K029
【Fターム(参考)】
4F100AA19
4F100AA19B
4F100AA20
4F100AA20B
4F100AK42
4F100AK42B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100EH66
4F100EH66B
4F100EJ15
4F100EJ15B
4F100GB15
4F100JD03
4F100JD04
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
4K029AA11
4K029AA25
4K029BA44
4K029BA46
4K029CA02
4K029DB03
4K029FA05
4K029FA07
4K029JA10
(57)【要約】
【課題】生産性が高くかつ薄膜な構成でもガスバリア性を少ないばらつきで発現する積層体および積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】基材の少なくとも片側に、A層を有し、前記A層は少なくともアルミニウム(Al)および/またはケイ素(Si)、並びに酸素(O)を含み、A層中のESR分析において、A層エッチング前のラジカル量をR(個/cm)、A層エッチング後のラジカル量をR(個/cm)としたときに、R-R≦6.0×1011(個/cm)、である積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片側に、A層を有し、前記A層は少なくともアルミニウム(Al)および/またはケイ素(Si)、並びに酸素(O)を含み、以下に記載の方法で行うA層中の電子スピン共鳴法(ESR)分析において、A層エッチング前のラジカル量をR(個/cm)、A層エッチング後のラジカル量をR(個/cm)としたときに、R-R≦6.0×1011(個/cm)、である積層体。
<エッチング方法>
0.5%フッ酸水溶液中に、測定サンプルをA層膜厚が0.0%になるまで浸漬させる。浸漬させる時間は、サンプル毎にエッチングレートを確認したうえで決定する。
<ESR分析方法>
[狭域]
測定温度:室温
中心磁場:3513G
磁場掃引範囲:150G
変調:100kHz,4G
マイクロ波:9.86GHz,0.1mW
掃引時間:80s×32times
時定数:327.68ms
ポイント数:1000points
キャビティ:Super-high-Q
[広域]
測定温度:室温
中心磁場:3570G
磁場掃引範囲:200G
変調:100kHz,5G
マイクロ波:9.86GHz,0.1mW
掃引時間:80s×32times
時定数:327.68ms
ポイント数:1000points
キャビティ:Super-high-Q
<ESR解析方法>
分析により得られたエッチング前と後それぞれのラジカル量(個/cm)について、g値2.0041のエッチング前のラジカル量をR(個/cm)、エッチング後のラジカル量をR(個/cm)としたときに、R-R(個/cm)を求める。
【請求項2】
基材の少なくとも片側に、A層を有し、前記A層は少なくともアルミニウム(Al)および/またはケイ素(Si)、並びに酸素(O)を含み、以下に記載の方法で行うA層中のDynamicSIMS(D-SIMS)分析におけるH量(水素原子量)について、A層中の平均値をHave.(atm/cm)A層中の最大値をHMAX(atm/cm)としたときに、HMAX/Have.=1.20~1.90であり、HMAXとなる位置がA層最表面から40.0~65.0%の深さ位置に存在する、積層体。
<D-SIMS分析条件>
データは深さ0.1nm毎に採取する。具体的な測定条件は以下を使用する。
注目元素:H
一次イオン種:Cs
一次イオン加速エネルギー:1keV
二次イオン極性:Negative
酸素リーク:No
帯電補償:E-gun
【請求項3】
前記A層中の深さ方向において、長さ基準5.0~25.0%の箇所をX部、40.0~60.0%の箇所をY部、75.0~95.0%の箇所をそれぞれX部、Y部、Z部と規定したときに、以下に記載の方法で行う前記X部、Y部、Z部それぞれにおける走査透過型電子顕微鏡観察-電子エネルギー損失分光(STEM-EELS)分析の酸素K端スペクトルの530eV付近のピーク強度をI(530)、I(530)、I(530)、A層中のX部、Y部、Z部それぞれにおけるSTEM-EELS分析の酸素K端スペクトルの540eV付近のピーク強度をI(540)、I(540)、I(540)としたとき、I(530)/I(540)>I(530)/I(540)および/またはI(530)/I(540)>I(530)/I(540)である請求項1または2に記載の積層体。
<STEM観察>
走査透過型電子顕微鏡により、加速電圧200kVとして、観察用サンプルの断面を観察する。
<EELS分析>
加速電圧:200kV
ビーム径:0.2nmφ
エネルギー分解能:0.5eV FWHM(半値全幅)
【請求項4】
前記A層中のX部およびZ部において、I(530)/I(540)≦0.15および/またはI(530)/I(540)≦0.25である請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記A層の厚みが15.0nm以下である請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
HR-RBS(High Resolution Rutherford Backscattering Spectrometry)/HR-HFS(High Resolution Hydrogen Forward scattering Spectrometry)法で評価した際、前記A層の平均組成について、アルミニウム(Al)原子濃度:酸素(O)原子濃度:水素(H)原子濃度が15.0~40.0:40.0~55.0:10.0~35.0(atm%)である請求項1~5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
HR-RBS/HR-HFS法で評価した際、前記A層の平均組成について、アルミニウム(Al)と酸素(O)の組成比率O/Al=1.20~2.20である請求項1~6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
真空蒸着法によりアルミニウムを蒸発させ、アルミニウム蒸気中に酸素を導入することで、基材の少なくとも片面に蒸着層を形成する請求項1~7のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
基材上流側および/または下流側より酸素を導入する請求項8に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、電子部品などの包装材料として好適に使用できる、酸素および水蒸気に対する優れたバリア性を備える積層体、および積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム基材の表面に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法)、あるいはプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法)等により形成された酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機化合物膜を形成してなるガスバリアフィルムは、水蒸気や酸素などの各種ガスの遮断を必要とする食品、医薬品および工業用品等の種々の物品を包装するために用いられている。
【0003】
高いガスバリア性を満たす方法として、基材の平坦化や密着性向上を目的として基材と無機化合物層の間にアンダーコート層を設ける方法(特許文献1)や基材とガスバリア層の間に平坦化層を備え、更にガスバリア層の外面に積層される他の金属アルコキシドおよび/またはその加水分解物を含む組成物を用いたゾル・ゲル法により形成されている平坦化層とを設ける方法(特許文献2)、基材上を複数層形成し、さらにその上に重合可能なアクリル系のモノマーまたはモノマーとオリゴマーとの混合物を硬化させてなるガスバリア性被膜層を設ける方法(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-043182号公報
【特許文献2】特開2005-324469号公報
【特許文献3】特開2008-036948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のアンダーコート層を用いる方法は、基材表面の平滑化により無機化合物層の欠陥減少や基材表面との密着性向上には優位であるが、製造工程が増えることから生産性に問題があった。また、特許文献2、3に記載のように、積層構成を用いる方法は、バリア性のばらつきの少なさや機械特性に優位であるが、こちらも製造工程が増えることから生産性に問題があった。さらに工程数が増えることにより、各工程における品質保証などの観点からもコストアップの要因となる。
【0006】
本発明の課題は、かかる従来技術の背景に鑑み、生産性が高くかつ薄膜な構成でもガスバリア性を少ないばらつきで発現する積層体および積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい一態様は以下である。
(1)基材の少なくとも片側に、A層を有し、前記A層は少なくともアルミニウム(Al)および/またはケイ素(Si)、並びに酸素(O)を含み、以下に記載の方法で行うA層中の電子スピン共鳴法(ESR)分析において、A層エッチング前のラジカル量をR(個/cm)、A層エッチング後のラジカル量をR(個/cm)としたときに、R-R≦6.0×1011(個/cm)、である積層体。
<エッチング方法>
0.5%フッ酸水溶液中に、測定サンプルをA層膜厚が0.0%になるまで浸漬させる。浸漬させる時間は、サンプル毎にエッチングレートを確認したうえで決定する。
<ESR分析方法>
[狭域]
測定温度:室温
中心磁場:3513G
磁場掃引範囲:150G
変調:100kHz,4G
マイクロ波:9.86GHz,0.1mW
掃引時間:80s×32times
時定数:327.68ms
ポイント数:1000points
キャビティ:Super-high-Q
[広域]
測定温度:室温
中心磁場:3570G
磁場掃引範囲:200G
変調:100kHz,5G
マイクロ波:9.86GHz,0.1mW
掃引時間:80s×32times
時定数:327.68ms
ポイント数:1000points
キャビティ:Super-high-Q
<ESR解析方法>
分析により得られたエッチング前と後それぞれのラジカル量(個/cm)について、g値2.0041のエッチング前のラジカル量をR(個/cm)、エッチング後のラジカル量をR(個/cm)としたときに、R-R(個/cm)を求める。
(2)基材の少なくとも片側に、A層を有し、前記A層は少なくともアルミニウム(Al)および/またはケイ素(Si)、並びに酸素(O)を含み、以下に記載の方法で行うA層中のDynamicSIMS(D-SIMS)分析におけるH量(水素原子量)について、A層中の平均値をHave.(atm/cm)A層中の最大値をHMAX(atm/cm)としたときに、HMAX/Have.=1.20~1.90であり、HMAXとなる位置がA層最表面から40.0~65.0%の深さ位置に存在する、積層体。
<D-SIMS分析条件>
データは深さ0.1nm毎に採取する。具体的な測定条件は以下を使用する。
注目元素:H
一次イオン種:Cs
一次イオン加速エネルギー:1keV
二次イオン極性:Negative
酸素リーク:No
帯電補償:E-gun
(3)前記A層中の深さ方向において、長さ基準5.0~25.0%の箇所をX部、40.0~60.0%の箇所をY部、75.0~95.0%の箇所をそれぞれX部、Y部、Z部と規定したときに、以下に記載の方法で行う前記X部、Y部、Z部それぞれにおける走査透過型電子顕微鏡観察-電子エネルギー損失分光(STEM-EELS)分析の酸素K端スペクトルの530eV付近のピーク強度をI(530)、I(530)、I(530)、A層中のX部、Y部、Z部それぞれにおけるSTEM-EELS分析の酸素K端スペクトルの540eV付近のピーク強度をI(540)、I(540)、I(540)としたとき、I(530)/I(540)>I(530)/I(540)および/またはI(530)/I(540)>I(530)/I(540)である(1)または(2)に記載の積層体。
<STEM観察>
走査透過型電子顕微鏡により、加速電圧200kVとして、観察用サンプルの断面を観察する。
<EELS分析>
加速電圧:200kV
ビーム径:0.2nmφ
エネルギー分解能:0.5eV FWHM(半値全幅)
(4)前記A層中のX部およびZ部において、I(530)/I(540)≦0.15および/またはI(530)/I(540)≦0.25である(3)に記載の積層体。
(5)前記A層の厚みが15.0nm以下である(1)~(4)のいずれかに記載の積層体。
(6)HR-RBS(High Resolution Rutherford Backscattering Spectrometry)/HR-HFS(High Resolution Hydrogen Forward scattering Spectrometry)法で評価した際、前記A層の平均組成について、アルミニウム(Al)原子濃度:酸素(O)原子濃度:水素(H)原子濃度が15.0~40.0:40.0~55.0:10.0~35.0(atm%)である(1)~(5)のいずれかに記載の積層体。
(7)HR-RBS/HR-HFS法で評価した際、前記A層の平均組成について、アルミニウム(Al)と酸素(O)の組成比率O/Al=1.20~2.20である(1)~(6)のいずれかに記載の積層体。
(8)真空蒸着法によりアルミニウムを蒸発させ、アルミニウム蒸気中に酸素を導入することで、基材の少なくとも片面に蒸着層を形成する(1)~(7)のいずれかに記載の積層体の製造方法。
(9)基材上流側および/または下流側より酸素を導入する(8)に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生産性が高くかつ薄膜な構成でもガスバリア性を少ないばらつきで発現する積層体および積層体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の積層体の一例を示した断面図である。
図2】本発明の積層体を製造するための巻き取り式真空蒸着装置を模式的に示す概略図である。
図3】積層体を製造するための巻き取り式真空蒸着装置内の酸素ガス導入管の一例を模式的に示す概略図である。
図4】積層体を製造するための巻き取り式真空蒸着装置内の酸素ガス導入管の一例を模式的に示す概略図である。
図5】積層体を製造するための巻き取り式真空蒸着装置内の酸素ガス導入管の一例を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の詳細を説明する。
【0011】
[積層体]
本発明の積層体の好ましい一態様は、基材の少なくとも片側に、A層を有し、前記A層は少なくともアルミニウム(Al)および/またはケイ素(Si)、並びに酸素(O)を含み、A層中のESR分析において、A層エッチング前のラジカル量をR(個/cm)、A層エッチング後のラジカル量をR(個/cm)としたときに、R-R≦6.0×1011(個/cm)となる積層体、である。A層に含まれる元素は、少なくともアルミニウム(Al)および/またはケイ素(Si)並びに酸素(O)を含んでいれば、他の元素を含んでいても構わない。例えば、水素(H)、炭素(C)、窒素(C)などを含んでいても構わない。
【0012】
A層がアルミニウム(Al)を含む、とは実施例に記載の条件でHR-RBS(High Resolution Rutherford Backscattering Spectrometry)/HR-HFS(High Resolution Hydrogen Forward scattering Spectrometry)法で評価を行った場合に検出される、A層を構成する全原子100.0atm%中に、Al元素に関して、元素の含有比率が5.0atm%以上であることをいう。ケイ素(Si)、酸素(O)などについても同様である。
【0013】
HR-RBS/HR-HFS法は、対象物に高速のイオンを照射し、固体中の原子核によりラザフォード後方散乱されたイオンと、弾性的な反跳により前方に散乱された水素原子のエネルギースペクトルを取得し、対象物に含まれる元素組成を得る手法である。詳細な評価条件は実施例に記載の通りである。
【0014】
前記A層中のESR分析において、A層エッチング前のラジカル量をR(個/cm)、A層エッチング後のラジカル量をR(個/cm)としたときに、R-R≦6.0×1011(個/cm)となることが好ましい。
【0015】
ESR分析は、電子スピン共鳴法(Electron Spin Resonance)のことであり、不対電子が磁場中に置かれた時に生じる準位間の遷移を観測する分光分析である。例えば積層体がA層と基材による2層構造の場合、A層エッチング前のラジカル量をRは、A層と基材による2層構造のまま測定した結果を用い、A層エッチング後のラジカル量をRは、後述するようにA層をフッ酸でエッチングして除去した構成のものを測定した結果を用いる。なお、ESR分析は以下のように行うものとする。
【0016】
<ESR分析方法>
ESR分析は、電子スピン共鳴装置EMXplus(Bruker製)を使用して実施した。試料は12mm×90mm程度にカットして、測定用試料管(内径約3mmの石英管)に丸めて入れて室温にて測定を実施する。分析条件は実施例に記載のとおりとした。A層上に別の層が積層されている場合には、該当層を除去したうえで分析を実施する。例えば、有機系のコーティング層が積層されている場合には、RIEなどのドライエッチングによるコーティング層を除去したうえで測定を行う。
【0017】
<エッチング方法>
A層はフッ酸エッチングにより除去する。0.5%フッ酸水溶液中に、該当サンプルをA層膜厚が0.0%になるまで浸漬させる。浸漬させる時間は、サンプル毎にエッチングレートを確認したうえで決定する。
【0018】
<ESR解析方法>
分析により得られたエッチング前と後それぞれのラジカル量(個/cm)について、g値2.0041のエッチング前のラジカル量をR(個/cm)、エッチング後のラジカル量をR(個/cm)としたときに、R-R(個/cm)を求める。
【0019】
g値とは、電子スピンの環境によって決まる物質固有の値であり、実験的に共鳴周波数と磁場の強さが定まれば求めることが出来る値である。g値2.0041の信号はPET起因の信号であり、PET表面及び内部のラジカル量を見積もることに使用できる。また、g値2.028にも信号が現れる場合があるが、これはアルミナ由来の信号である。エッチング前のラジカル量Rとは、A層及び基材のラジカル量を反映するパラメータであるが、A層由来のg値2.0041の信号はほとんど検出されないので、実質のところ、A層寄りのPET表面、PET内部、及びA層より遠い側のPET表面のラジカル量を反映するものとなる。エッチングにより、A層に加え、A層寄りのPET表面も削られていくことから、エッチング後のラジカル量Rは、PET内部、及びA層より遠い側のPET表面のラジカル量を反映するものとなる。つまり、R-RはA層寄りのPET表面付近のラジカル量を見ていることに相当する。
【0020】
A層中のESR分析において、A層エッチング前のラジカル量をR(個/cm)、A層エッチング後のラジカル量をR(個/cm)としたときに、R-R≦6.0×1011(個/cm)である、ということは、A層寄りの基材表面付近のラジカル量が一定量以下であることを意味する。本発明者らはR-R≦6.0×1011(個/cm)であること、つまりA層と接する側の基材表面のラジカル量を少なくすることで、その上に形成されるA層の欠陥が少なくなり、バリア性が良好でよりばらつきの少ない膜になることを見出した。
【0021】
A層と接する側の基材表面のラジカル量が多い、ということはA層と接する側の基材表面において、A層の元素と結合が十分にできていない状態であると考える。その部分では基材における分子鎖の自由度が高くなり、A層が緻密となることを妨害すると考える。したがって、A層と接する側の基材表面のラジカル量を少なくすることで、A層が緻密となり、欠陥が少なくなり、バリア性が良好でよりばらつきが少なくなると考える。また、A層の基材寄りの部分からA層が積みあがるように形成されていくことから、A層の基材寄りの部分が緻密かつ欠陥が少ない状態となると、A層全体としても緻密かつ欠陥が少ない状態となると考える。また、ラジカル量が少ないということは基材表面の分子とA層とが強く結合していると考えられるため、A層と基材とが強く密着していると考える。
【0022】
上記同様の観点よりR-R≦4.5×1011(個/cm)がより好ましく、R-R≦3.0×1011(個/cm)が更に好ましい。
【0023】
本発明の積層体の好ましい一態様は、基材の少なくとも片側に、A層を有し、前記A層は少なくともアルミニウム(Al)および/またはケイ素(Si)、並びに酸素(O)を含み、A層中のD-SIMS分析におけるH量(水素原子量)について、A層中の平均値をHave.(atm/cm)A層中の最大値をHMAX(atm/cm)としたときに、HMAX/Have.=1.20~1.90であり、HMAXとなる位置がA層最表面から40.0~65.0%の深さ位置に存在する、積層体、である。
【0024】
D-SIMS分析は、DynamicSIMS分析のことであり、試料にイオンを照射し、試料表面からスパッタリング放出される二次イオンを質量分析することによって深さ方向の元素分布情報を得る分析手法である。なお、D-SIMS分析は四重極型二次イオン質量分析装置PHI ADEPT-1010(アルバック・ファイ製)を使用し、実施例に記載の条件で行うものとする。
【0025】
A層中のD-SIMS分析における水素(H)の量であるH量について、A層中の平均値をHave.(atm/cm)A層中の最大値をHMAX(atm/cm)としたときに、HMAX/Have.=1.20~1.90であり、かつHMAXとなる位置がA層最表面から40.0~65.0%の深さ位置に存在することが好ましい。HMAX/Have.=1.20~1.90であるということは、水素が全体的に満遍なく存在するのではなく、厚み方向のうち局所的に水素の量が多い所が存在することを意味する。このように水素の量が多い所ではAlOOHとして存在するものが多く、AlOOHは透過する水分を水素結合でトラップする働きをする。一方でAlOOHが多く存在するところでは膜の緻密度が低下する。そのため、HMAX/Have.=1.20~1.90であることにより、バリア性が良好となると考えられる。
【0026】
MAXとなる位置がA層最表面から40.0~65.0%の深さ位置に存在する、ということは、AlOOH存在量が多い箇所がA層深さ方向の中央付近に存在することを意味する。AlOOHにより透過する水分をトラップできる量は限度があるため、A層深さ方向の0.0~39.9%及び65.1~100.0%の深さ位置においては膜密度を高くし、可能な限り水分を遮蔽しておき、40.0~65.0%の深さ位置において、透過してきた水分をトラップことで、全体として優れたバリア性が発現すると考える。
【0027】
つまり、上記態様とすることにより、膜の緻密さとAlOOHなどによるトラッピングの2つのメカニズムで透過ガスをバリアできるので、バリア性が良好でよりばらつきが少なくなると考える。
【0028】
上記同様の観点から、HMAX/Have.=1.40~1.90であり、かつHMAXとなる位置がA層最表面から50.0~60.0%の深さ位置に存在することがより好ましい。さらに好ましくは、HMAX/Have.=1.50~1.80である。
【0029】
D-SIMS分析にてHave.及びHMAXを算出するにあたり、A層は以下のように定義する。A層の基材との界面はD-SIMS分析にて求められる基材の平均炭素量をCとA層の平均炭素量をCとした場合、(C+C)/2の箇所をA層と基材の基準界面とし、基準界面から表層までの領域をD-SIMSにおけるA層領域とする。平均炭素量の値の収束させかたや、A層や基材以外の層も含む場合の考え方は後述するHR-RBS/HR-HFS法での考え方と同様とする。D-SIMS分析におけるA層中のHの量の平均値Have.は、A層表面から15.0%~70.0%の範囲の測定結果を平均したものとする。また、A層中のHの量の最大値HMAXはA層表面から15.0%~70.0%の範囲の測定結果の最大値とする。最大値HMAXの存在箇所としては、A層表面から最大値の存在する箇所までの厚みをA層厚みで割り返すことで算出する。A層表面から0.0~14.9%及び70.1~100.0%を除く理由としては、表面汚染や界面ミキシングなどでノイズを含みやすいためである。また、界面側の方が除く領域を広くしているのは、ミキシングの範囲が含有元素などによりバラつきやすいためである。
【0030】
上記した積層体を得るための達成手段として、以下の方法を好ましく例示することができる。酸素ガスの導入位置と導入量、導入方法を適切にすることを好ましく挙げることができる。具体的には、図2に示す巻き取り式真空蒸着装置3を例とすると、酸素ガスの導入量として、A層形成時に、5.0×10-3Pa以下の減圧度とし、基材搬送速度400m/min、基材幅1.0m、A層狙い厚み8nmでアルミニウムを蒸発させた際に、導入酸素ガス量が2~19L/minであることが好ましい。酸素ガスの導入方法としては、X部、Y部、Z部それぞれの箇所にピンポイントで酸素を導入する観点から図4のように導入方向が一方向の管状形状のものを用いることが好ましい。図4のようにガス導入口が管状形状であることにより、ガス導入口から導入したガスの指向性が高く、狙った位置を効率的に酸化させることが出来る。図3のようにピンホール形状とすることで、ガス導入口から導入した酸素ガスを、アルミ蒸気中に均一に浸透させることが出来るが、狙った箇所をピンポイントで酸化させる観点では、管状形状のものと比較して劣る可能性がある。以上のように狙った位置に局所的に酸素を吹き込むことにより、基材表面の炭素と効率的に結合し共有結合を形成したうえでAl-O結合を形成し易くなる。基材表面の炭素が効率的に結合していくことから、結果的に基材表面のラジカル量が少なくなる。また、狙った位置に局所的に酸素を吹き込むことにより、A層表層付近及び/または界面付近の酸化度が高くできる一方で、A層深さ方向中央付近においては酸化度を低くし、AlOOHが形成されてH量を多くすることができる。つまり、狙った位置に局所的に酸素を吹き込むことにより、HMAXがA層最表面から40.0~65.0%の深さ位置において、HMAX/Have.=1.20~1.90とすることができる。
【0031】
本発明のA層中には、さらに水素(H)を含み、X部、Y部、Z部それぞれにおける電子エネルギー損失分光(EELS)分析の酸素K端スペクトルの530eV付近のピーク強度をI(530)、I(530)、I(530)、A層中のX部、Y部、Z部それぞれにおけるEELS分析の酸素K端スペクトルの540eV付近のピーク強度をI(540)、I(540)、I(540)としたとき、I(530)/I(540)>I(530)/I(540)および/またはI(530)/I(540)>I(530)/I(540)であることが好ましい。
【0032】
EELS分析とは、電子エネルギー損失分光分析のことであり、測定試料へ電子を入射し、その入射電子が測定試料との相互作用によりエネルギーを失った後の電子(非弾性散乱電子)を分光分析することで、測定試料の元素組成や化学結合状態を解析する手法である。分析対象となる非弾性散乱は、内殻電子励起(50eV~)、価電子の励起によるバンド間遷移(0~10eV)、電子の集団振動によるプラズモン励起(10~50eV)である。酸素K端スペクトルは、EELSスペクトルにおける内殻電子領域の吸収スペクトルを指す。なお、530eV付近のピーク強度をI(530)とは、528.0~531.0eVの間に検出されるピークトップの強度である。ただし、528.0~531.0eVの間に複数のピークトップが検出される場合は最もピーク強度の高いピークトップにおける強度を採用し、ピークトップが検出されない場合は530eVにおける強度を採用する。540eV付近のピーク強度をI(540)とは、535.0~545.0eVの間に検出されるピークトップの強度である。ただし、535.0~545.0eVの間に複数のピークトップが検出される場合は最もピーク強度の高いピークトップにおける強度を採用し、ピークトップが検出されない場合は540eVにおける強度を採用する。
【0033】
EELS分析は、STEM-EELS(Scanning Transmission Electron Microscopy-Electron Energy Loss Spectroscopy)により測定される。STEM-EELSを測定する前の試料の前処理としては、FIB法(Focused Ion Beam法)を用いる。具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118~119に記載の方法に基づいて、マイクロサンプリングシステムを使用して断面観察用サンプルを作製する。その際、試料は表面に導電性を付与する目的で実施するカーボン蒸着を施す時を除き、全てグローブボックス中(窒素雰囲気下)で扱う。詳細な測定条件は実施例の通りである。前述のHR-RBS/HR-RFS法により、アルミニウム(Al)、および酸素(O)を含む層の位置の概略を把握しておき、STEM測定にてその層の界面を把握する、当該層のX部、Y部、Z部についてEELS測定を行い、当該層各部のI(530)、I(540)を求める。
【0034】
なお、EELS測定の際、A層において、X部、Y部、Z部はそれぞれ以下のように定義する。X部は、STEM(走査透過型電子顕微鏡)による断面観察像から特定されるA層厚みに対して、長さ基準で5.0~25.0%の箇所を指す。Y部は、A層厚みに対して、中央の40.0~60.0%の箇所を指す。さらに、Z部は、当該厚みに対して、75.0~95.0%の箇所を指す。なお、A層厚みはSTEM(走査透過型電子顕微鏡)による断面観察像から測定した値を使用し、基材を特定できる場合、例えば積層体がA層と基材による2層構造の場合、A層の基材側との界面を0%、最表面を100%とする。A層と基材との間に別の層を有する場合は、A層の当該別の層との界面を0%とする。別の層が複数ある場合はA層と隣接する層とA層との界面を0%とする。A層の両面にそれぞれ隣接する層がある場合は、各隣接する層との界面を適宜0%、100%とする。
【0035】
アルミニウム(Al)、および酸素(O)を含む層が複数あるときは、少なくとも1つの層において、I(530)/I(540)>I(530)/I(540)および/またはI(530)/I(540)>I(530)/I(540)であれば、その積層体はA層を有し、前記A層は少なくともアルミニウム(Al)、および酸素(O)を含み、さらに水素(H)を含み、X部、Y部、Z部それぞれにおける電子エネルギー損失分光(EELS)分析の酸素K端スペクトルの530eV付近のピーク強度をI(530)、I(530)、I(530)とし、A層中のX部、Y部、Z部それぞれにおけるEELS分析の酸素K端スペクトルの540eV付近のピーク強度をI(540)、I(540)、I(540)としたとき、I(530)/I(540)>I(530)/I(540)および/またはI(530)/I(540)>I(530)/I(540)である、とする。
【0036】
EELS分析における酸素K端スペクトルの、530eV付近のピークは水酸化物由来のものであり、540eV付近のピークはAlおよびOの混成ピークである。つまり、それぞれのピーク強度をI(530)、I(540)とした場合、I(530)/I(540)の値が大きいほど膜中の水酸化物量が多いことを表し、値が小さいほど膜中の水酸化物量が少ないことを表す。
【0037】
(530)/I(540)>I(530)/I(540)および/またはI(530)/I(540)>I(530)/I(540)であるとは、Y部よりも外側部分(X部および/またはZ部)の水酸化物量が少ないことを表す。Y部よりも外側部分(X部および/またはZ部)の水酸化物量が少ないことにより、Y部よりも外側部分(X部および/またはZ部)の緻密性が高くなり、外部からA層中への水分侵入を防ぐことが出来る。つまり、外部からA層中への水分侵入を防ぐことは、A層の膜質変化を最小限に抑えることに繋がることから膜質ばらつきを少なくすることができる。その結果水蒸気透過度に関するばらつきをより低減することができる。上記した膜質およびバリア性のばらつきの観点より、I(530)/I(540)>I(530)/I(540)であることがより好ましく、I(530)/I(540)>I(530)/I(540)およびI(530)/I(540)>I(530)/I(540)であることがさらに好ましい。
【0038】
上記態様とするための達成手段として、酸素ガスの導入位置と導入量、導入方法を適切にすることが挙げられ、詳細は上記した内容と同様であるが、図2に示す巻き取り式真空蒸着装置3を例とすると、図4のように導入方向が一方向の管状形状の酸素ガス導入管を用い、基材上流側へ多く酸素を導入する、および/または蒸発源直上へ多く酸素を導入することにより、そうしない場合と比べてI(530)/I(540)を低くすることができる。蒸発源直上へ多く酸素を導入することにより、そうしない場合と比べてI(530)/I(540)を低くすることができる。基材下流側へ多く酸素を導入する、および/または蒸発源直上へ多く酸素を導入することにより、そうしない場合と比べてI(530)/I(540)を低くすることができる。また、より減圧度を高める、つまり雰囲気圧力を低くすることで全体的にI(530)/I(540)の値を低くすることができる。
【0039】
A層中に水素(H)を含むとは、実施例に記載の条件でHR-RBS/HR-HFS法で評価を行った場合に、A層中の平均組成として5.0atm%以上水素を含有することをいう。水素(H)を含むことで、積層体に柔軟性を付与することが出来る。
【0040】
基材を含むフィルムに対して前記A層が形成されており、前記A層中のX部およびZ部において、I(530)/I(540)≦0.15および/またはI(530)/I(540)≦0.25、であることが好ましい。I(530)/I(540)≦0.15および/またはI(530)/I(540)≦0.25であることにより、基材に近いX部および/または基材から遠いZ部における水酸化物量が少なくなり、緻密膜となるため、バリア性が良好となる。バリア性の観点より、I(530)/I(540)≦0.11および/またはI(530)/I(540)≦0.20がより好ましく、I(530)/I(540)≦0.083および/またはI(530)/I(540)≦0.15がさらに好ましい。
【0041】
積層体の全光線透過率は、85.0%以上であることが好ましい。積層体の全光線透過率が85.0%以上であることで、内容物の視認性に優れる。全光線透過率はヘイズメーターを用いて測定することが出来る。
【0042】
A層の厚みは15.0nm以下であることが好ましい。A層の厚みが15.0nm以下であることで、バリア性が良好かつ折曲げ耐性に優れる。同様の観点より、10.0nm以下がより好ましく、8.0nm以下がさらに好ましく、7.0nm以下が特に好ましい。A層の厚みは、走査透過型電子顕微鏡(STEM)による断面観察像から測定することが可能である。
【0043】
前記A層の厚みをX(nm)、水蒸気透過度をY(g/m/day)としたときに、X×Y≦20.0であることが好ましい。X×Y≦20.0であることで薄膜でもバリア性を発現することが可能となる。生産性、コストの観点より、X×Y≦15.0がより好ましく、X×Y≦8.0がさらに好ましい。水蒸気透過度は、水蒸気透過率計により40℃90%RH環境下で測定することが可能である。なお、上記測定単位におけるdayは24時間に相当する。
【0044】
本発明の積層体は、HR-RBS/HR-HFS法を用い、A層中の深さ方向において長さ基準5.0~25.0%の箇所、40.0~60.0%の箇所、75.0~95.0%の箇所をそれぞれX部、Y部、Z部と規定したときに、アルミニウム(Al)と酸素(O)の組成比率O/Alの異なる箇所が存在する積層体、であることが好ましい。
【0045】
HR-RBS/HR-HFS法によって、深さ方向に対する組成比率のグラフを得ることができるが、例えば積層体がA層と基材による2層構造の場合、A層の表層0.4nmまでの領域は表面汚染の情報を含むため、表層0.4nmより深い位置からA層の組成を算出していく。また、A層の基材との界面は基材の影響をうけるので、基材の平均炭素量CとA層の平均炭素量Cとした場合、(C+C)/2の箇所をA層と基材の基準界面とし、基準界面から表層0.4nmまでの領域をHR-RBS/HR-HFS法におけるA層の測定領域とする。特に断りのない限り、当該測定領域における各測定点における測定結果を平均してA層の平均組成を算出するものとする。具体的には、まずは適宜仮の界面として、界面と思わしき場所をA層と基材との基準界面として、A層と基材の平均炭素量を求める。求めた平均炭素量から導かれるA層と基材との基準界面を用いてA層と基材の平均炭素量を求める。これを繰り返して、各平均炭素量が収束するときの基準界面をA層と基材の基準界面とする。また、A層と基材との間に別の層を有する場合のように、A層と隣接する層がある場合は、上記同様の考え方でA層と当該隣接する層の平均炭素量から基準界面を求める。A層の両面にそれぞれ隣接する層がある場合は、表層0.4nmの箇所の代わりに、上記同様に求めたそれぞれの基準界面を用いる。
【0046】
HR-RBS/HR-HFS法にて測定する際、A層において、X部、Y部、Z部をそれぞれ以下のように定義する。X部は、HR-RBS/HR-HFS法にて特定される無機化合物層(A層)の厚みに対して、長さ基準で5.0~25.0%の箇所を指す。Y部は、A層厚みに対して、中央の40.0~60.0%の箇所を指す。さらに、Z部は、当該厚みに対して、75.0~95.0%の箇所を指す。基材を特定できる場合、例えば積層体がA層と基材による2層構造の場合、A層の基材側との界面を0%、最表面を100%とする。A層と基材との間に別の層を有する場合は、A層の当該別の層との界面を0%とする。別の層が複数ある場合はA層と隣接する層とA層との界面を0%とする。A層の両面にそれぞれ隣接する層がある場合は、各隣接する層との界面を適宜0%、100%とする。また、それぞれの部位における各測定点における測定結果を平均してそれぞれの部位の組成を算出するものとする。
【0047】
アルミニウム(Al)と酸素(O)の組成比率O/Alの異なる箇所が存在するとは、HR-RBS/HR-HFS法にて測定された、上記で定義したX部、Y部、Z部のそれぞれの組成比率O/Alの値のいずれかが、0.10以上差異があることを言う。一方で組成比率O/Alの異なる箇所が存在した場合、差異が0.50以下であることによりA層の平均的組成に対して過酸化Alが多い箇所や亜酸化Alが多い箇所が少なくなりバリア性が良好でよりばらつきの少ない膜になるため好ましい。
【0048】
組成比率O/AlがA層中の深さ方向において異なる箇所が存在することにより緻密な箇所と比較的疎であり柔軟性の高い箇所を同一膜中に混在させることができる。A層全体が深さ方向においてすべて緻密な膜であった場合、硬い膜となることから割れやすく面内ばらつきが発生しやすい膜となる場合がある。一方で、深さ方向において、緻密な箇所と柔軟性の高い箇所を同一膜中に混在させることにより、割れにくくバリア性も良好な面内ばらつきの少ない膜を実現出来る。
【0049】
同様の観点より、X部、Y部、Z部のそれぞれの値のいずれかが、0.15以上差異があることが好ましい。また、差異のある箇所としては、X部とY部とで0.10以上差異があること、および/またはZ部とY部とで0.10以上差異があることが好ましい。A層中のAlとOの元素比の具体的な測定条件は実施例に記載の通りである。なお、アルミニウム(Al)、および、酸素(O)を含む層が複数ある場合には、少なくとも1つの層において、組成比率O/AlがA層中の深さ方向において異なる箇所が存在すれば、A層を有し、前記A層は少なくともアルミニウム(Al)、および、酸素(O)を含み、A層中の深さ方向において長さ基準5.0~25.0%の箇所、40.0~60.0%の箇所、75.0~95.0%の箇所をそれぞれX部、Y部、Z部と規定したときに、アルミニウム(Al)と酸素(O)の組成比率O/Alの異なる箇所が存在する積層体、であるとする。なお、1つの層とは、厚み方向に向かって、隣接する部位と区別可能な境界面を有し、かつ有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、実施例に記載のとおりにA層の断面を走査透過型電子顕微鏡(STEM)にて観察した際、不連続な境界面により区別されるものを指す。A層の厚み方向に組成が変わっていても、その間に前述の境界面がない場合には、1つの層として取り扱う。
【0050】
また、特にバリア性ばらつきを低減させる観点より、組成比率O/Alについて、X部の組成比率O/Al≠Y部の組成比率O/Alおよび/またはY部の組成比率O/Al≠Z部の組成比率O/Alであることが好ましい。同様の観点より、組成比率O/Alについて、X部の組成比率O/Al>Y部の組成比率O/Alおよび/またはY部の組成比率O/Al<Z部の組成比率O/Alであることがより好ましい。
【0051】
A層の平均組成について、アルミニウム(Al)と酸素(O)の組成比率が1.20≦O/Al≦2.20であることが好ましい。1.20≦O/Al≦2.20であることにより、A層中において金属アルミニウムではなく、酸化アルミニウムや水酸化アルミニウムとして存在するアルミニウムの割合が多くなることから、透明性およびバリア性が良好となる。透明性およびバリア性の観点より、1.40≦O/Al≦2.10であることがより好ましい。A層中のAlとOの元素比は、HR-RBS/HR-HFS法で測定することとする。具体的な測定条件は実施例に記載の通りである。また、仮にO/Al=1.5である場合であっても、必ずしもアルミニウムが完全な酸化物であるわけではなく、水酸化物を含有していたり、亜酸化Alや過酸化Alを含有している可能性がある。これは蒸着時の雰囲気における水分や、蒸着後の水分の付着を防いだとしても、蒸着槽内の残留水分や基材に含まれている水分などが、蒸着時や蒸着後に膜中に取り込まれるためであると考えられる。
【0052】
バリア性および柔軟性を確保する観点より、A層は、前記A層の平均組成について、アルミニウム(Al)原子濃度:酸素(O)原子濃度:水素(H)原子濃度が15.0~40.0:40.0~55.0:10.0~35.0(atm%)であることが好ましい。前記A層の平均組成はHR-RBS/HR-HFS法で測定することとする。具体的な測定条件は実施例に記載の通りである。同様の観点より、Al原子濃度:O原子濃度:H原子濃度が20.0~35.0:40.0~55.0:15.0~30.0(atm%)であることがより好ましい。また、窒素(N)原子、炭素(C)原子の濃度がいずれも5atm%以下であることが好ましい。
【0053】
[A層の製造方法一例]
A層の形成方法については、特に限定はなく、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、原子層堆積法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。製造コスト、ガスバリア性等の観点から、真空蒸着法を用いることが好ましい。
【0054】
A層は、真空蒸着法によりアルミニウムを蒸発させ、アルミニウム蒸気中に酸素を導入することで、基材の少なくとも片面に形成できる。真空蒸着法によりアルミニウムを蒸発させる方法としては、電子線(EB)蒸着法、抵抗加熱法、誘導加熱法などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。前記方法でアルミニウムの蒸発量を調整したうえで、アルミニウム蒸発ガス中に酸素を導入することで酸素量や膜質を制御したA層を得ることができる。導入するガスとしては、酸素を含んでいれば、膜質制御のために他のガスとして不活性ガスなどを含んでいても構わない。
【0055】
基材上流側および/または下流側より酸素を導入することが好ましい。前記位置からアルミニウムの蒸発ガス方向に向かって酸素を導入することが好ましい。前記のように酸素を導入することで、A層のX部および/またはZ部の膜質が良好になりバリア性や密着性が向上する。酸素導入位置として、基材上流側もしくは、基材上流側および下流側から酸素を導入することがより好ましい。
【0056】
巻き取り式真空蒸着装置図2によるA層の形成方法の一例を示す。電子線(EB)加熱蒸着法により、基材1の表面にA層として、酸化アルミニウム蒸着層を設ける。まず蒸着材料として、アルミニウム顆粒を蒸発源15にセットする。巻き取り室4の中で、巻き出しロール5に前記基材1のA層を設ける側の面が蒸発源15に対向するようにセットし、巻き出しガイドロール6,7,8を介して、メインドラム9に通す。次に、真空ポンプにより、真空蒸着装置3内を減圧し、5.0×10-3Pa以下を得る。到達真空度は5.0×10-2Pa以下が好ましい。到達真空度は5.0×10-3Pa以下であることにより、真空蒸着装置内の残留ガスが少なくなり、A層の膜質が向上する。メインドラム9の温度は一例として、-30℃に設定する。基材の熱負けを防ぐ観点から、20℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下である。次に、加熱源として電子銃(EB銃)17を用い、蒸発源内のアルミニウムの溶かし込みを行う。アルミニウム顆粒が全て溶融した後、フィルム走行面から50mmの距離に設置されたリニア型アノードレイヤータイプのイオン源14(米Veeco社、ALS1000L)を、酸素を8L/min導入し、アノード電圧10kV、アノード電流8.6Aで動作させて基材表面を処理する。その後、EB銃、形成するA層の厚みが5nmとなるように加速電流とフィルム搬送速度、酸素ガス導入量を調整し、前記基材1の表面上にA層を形成する。酸素ガスの導入位置は狙い膜質に応じて酸素ガス導入管16a~cのうちから単独もしくは複数用いる。酸素ガス導入管は図4のように導入方向が一方向の管状形状のものを用いる。蒸着初期の膜質を向上させ、密着性およびバリア性を良好にする観点より、16aおよびまたは16bを用いることが好ましい。その後、ガイドロール10,11,12を介して巻き取りロール13に巻き取る。イオン源による基材表面処理とA層の蒸着は同一搬送内で実施してもよいし、別搬送で行ってもよい。
【0057】
[基材]
本発明に用いられる基材は、柔軟性を確保する観点からフィルム形態を有することが好ましい。フィルムの構成としては、単層フィルム、または2層以上の、例えば、共押し出し法で製膜したフィルムであってもよい。フィルムの種類としては、無延伸、一軸延伸あるいは二軸延伸フィルム等を使用してもよい。
【0058】
本発明に用いられる基材の素材は特に限定されないが、有機高分子を主たる構成成分とするものであることが好ましい。本発明に好適に用いることができる有機高分子としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン、環状構造を有する非晶性環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール等の各種ポリマーなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性や汎用性に優れたポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンを用いることが好ましい。また、前記有機高分子は、単独重合体、共重合体のいずれでもよいし、有機高分子として1種類のみを用いてもよいし、複数種類をブレンドして用いてもよい。
【0059】
基材のA層を形成する側の表面には、密着性や平滑性を良くするためにコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、イオンボンバード処理、溶剤処理、有機物もしくは無機物またはそれらの混合物で構成されるアンカーコート層の形成処理、等の前処理が施されていてもよい。また、A層を形成する側の反対側には、基材の巻き取り時の滑り性の向上や基材の耐擦傷性を目的として、有機物や無機物あるいはこれらの混合物のコーティング層が積層されていてもよい。
【0060】
本発明に使用する基材の厚みは特に限定されないが、柔軟性を確保する観点から200μm以下が好ましく、引張りや衝撃に対する強度を確保する観点から5μm以上が好ましい。さらに、フィルムの加工やハンドリングの容易性から基材の厚みは10μm以上、包装材料に使用する観点より25μm以下がより好ましい。
【0061】
[その他の層]
本発明の積層体の最表面の上、つまりA層の上には、ガスバリア性が低下しない範囲で耐擦傷性、印刷性、耐レトルト性等の向上を目的としたオーバーコート層を形成してもよいし、貼合するための有機高分子化合物からなる粘着層やフィルムをラミネートした積層構成としてもよい。なお、ここでいう最表面とは、基材上にA層が積層された後の、A層の表面をいう。
【0062】
[積層体の用途]
本発明の積層体は、酸素および水蒸気に対する優れたバリア性を備え、ばらつきが少なくかつ低コストであることから、ガスバリア性フィルムとして好適に用いることができる。本発明の積層体は、食品、医薬品、電子部品などの包装材料として好適に使用できる。
【実施例0063】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0064】
[評価方法]
(1)ESR分析
ESR分析は、電子スピン共鳴装置EMXplus(Bruker製)を使用して実施した。試料は12mm×90mm程度にカットし、ESR測定用の試料管(内径約3mmφの石英管)に丸めて入れて室温にて測定を実施した。具体的な測定条件は以下を使用した。観測するR(個/cm)、R(個/cm)はg値が2.004の値を用いた。
[狭域]
測定温度:室温
中心磁場:3513G
磁場掃引範囲:150G
変調:100kHz,4G
マイクロ波:9.86GHz,0.1mW
掃引時間:80s×32times
時定数:327.68ms
ポイント数:1000points
キャビティ:Super-high-Q
[広域]
測定温度:室温
中心磁場:3570G
磁場掃引範囲:200G
変調:100kHz,5G
マイクロ波:9.86GHz,0.1mW
掃引時間:80s×32times
時定数:327.68ms
ポイント数:1000points
キャビティ:Super-high-Q
(2)D-SIMS分析
D-SIMS分析は、四重極型二次イオン質量分析装置PHI ADEPT-1010(アルバック・ファイ製)を使用して実施した。データは深さ0.1nm毎に採取した。具体的な測定条件は以下を使用した。
注目元素 H
一次イオン種 Cs
一次イオン加速エネルギー 1keV
二次イオン極性 Negative
酸素リーク No
帯電補償 E-gun
(3)走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察
マイクロサンプリングシステム(FEI製 Helios G4)を使用して断面観察用サンプルをFIB法により作製した。走査透過型電子顕微鏡(JEOL製 JEM-ARM200F)により、加速電圧200kVとして、観察用サンプルの断面を観察し、積層体のA層を特定し、その厚みを測定した。
【0065】
(4)EELS分析
A層のEELS分析は、EELS検出器(GATAN GIF Quantum)を用いて実施した。具体的な測定条件としては、加速電圧200kV、ビーム径0.2nmφ、エネルギー分解能0.5eV FWHM(半値全幅)にて、各箇所(X部、Y部、Z部)分析を行い、酸素K端の吸収スペクトルを得た。A層の厚みに対して、A層の基材側との界面を0%、最表面を100%とし、X部は5.0~25.0%、Y部は40.0~60.0%、Z部は75.0~95.0%の位置にて分析を実施し、該領域の平均値を分析結果として用いた。
【0066】
その後、530eV付近のピーク強度をI(530)、I(530)、I(530)、および540eV付近のピーク強度をI(540)、I(540)、I(540)から、I(530)/I(540),I(530)/I(540),I(530)/I(540)を算出した。
【0067】
(5)A層の組成
積層体のA層の組成分析は、HR-RBS/HR-HFS法により行った。詳細な測定条件は下記とした。
<HR-RBS測定>
装置 : (株)神戸製鋼所製RBS分析装置 HRBS500
入射イオン : He
入射エネルギー: 450eV
入射角 : 60deg
散乱角 : 60deg
試料電流 : 30nA
照射量 : 12.5μC
<HR-HFS測定>
装置 : (株)神戸製鋼所製RBS分析装置 HRBS500
入射イオン : N
入射エネルギー: 480eV
入射角 : 70deg
散乱角 : 30deg
試料電流 : 2nA
照射量 : 0.4μC
(6)酸素透過度(cc/m/day)
積層体の酸素透過度は、JISK7126-2(制定2006年8月20日)に準じて、モコン(MOCON)社製酸素透過率測定装置OX-TRAN2/20を用いて、23℃、0%RHの条件にて測定した。異なる位置から採取したサンプル5点を平均し、その値を酸素透過度(cc/m/day)とした。また、ばらつきとして5点の標準偏差を算出した。
【0068】
(7)水蒸気透過度(g/m/day)
積層体の水蒸気透過度は、JISK7129B(制定2008年3月20日)に準じて、モコン(MOCON)社製水蒸気透過率測定装置Permatran-W3/30を用いて、40℃、90%RHの条件にて測定した。異なる位置から採取したサンプル5点を平均し、その値を水蒸気透過度(g/m/day)とした。また、ばらつきとして5点の標準偏差を算出した。
【0069】
(8)全光線透過率
積層体の全光線透過率は、JISK7361(1997年制定)に基づき、日本電色工業社製ヘイズメーターNDH4000を用いて、全光線透過線透過率の測定を実施した。測定は2回行い、得たデータを平均し、小数点第2位を四捨五入し、当該水準における平均値を求め、その値を全光線透過率(%)とした。
【0070】
(実施例1)
(A層の形成)
図2に示す巻き取り式真空蒸着装置3を使用し、電子線(EB)蒸着法により、A層として酸化アルミニウム蒸着層を厚み8nm狙いで設けた。基材としては、厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”(登録商標)P60)を用いた。
【0071】
具体的な操作は以下の通りである。蒸着材料として、2~5mm程度の大きさの顆粒状のアルミニウム(真空冶金(株)製、純度99.99%)を蒸発源15にセットした。巻き取り室4の中で、巻き出しロール5に前記基材1のA層を設ける側の面が蒸発源15に対向するようにセットし、巻き出しロール6,7,8を介して、メインドラム9に通した。このとき、メインドラムは温度-30℃に制御した。次に、真空ポンプにより真空蒸着装置3内を減圧し、3.0×10-3Paを得た。次に、加熱源として電子銃17を用い、アルミニウムが顆粒状でなくなるまで溶融した。その後、フィルム走行面から50mmの距離に設置されたリニア型アノードレイヤータイプのイオン源14(米Veeco社、ALS1000L)を、酸素を8L/min導入し、アノード電圧10kV、アノード電流8.6Aで動作させて基材表面を処理した。イオン源用電源は、米グラスマン・ハイボルテージ社SHタイプを用いた。次に、酸素ガス導入管16a,16bより合計10L/minの酸素ガスを1:9の比率で導入(すなわち、ガス導入管16aからは1L/min、ガス導入管16bからは9L/minの比率で酸素ガスを導入することである。)し、形成するA層の厚みが8nmとなるように投入電力、投入電流および搬送速度を調整して、前記基材1の表面上にA層を形成した。酸素ガス導入管としては、図4のように管状形状のものを用いた。その後、ガイドロール10,11,12を介して巻き取りロール13に巻き取った。
【0072】
(実施例2)
A層を形成する際、酸素ガス導入管16a,16cより合計10L/minの酸素ガスを1:1の比率で導入した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0073】
(実施例3)
A層を形成する際、酸素ガスを、酸素ガス導入管16aのみから合計10L/min導入した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0074】
(実施例4)
真空装置内を8.0×10-3Paまで減圧してA層を形成した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0075】
(実施例5)
真空装置内を3.0×10-2Paまで減圧してA層を形成した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0076】
(実施例6)
A層を形成する際、酸素ガス導入管16a,16bより合計10L/minの酸素ガスを1:4の比率で導入した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0077】
(実施例7)
A層を形成する際、酸素ガス導入管16a,16bより合計10L/minの酸素ガスを0.5:9.5の比率で導入した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0078】
(実施例8)
形成するA層の厚みを5nm狙いで蒸着した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0079】
(実施例9)
形成するA層の厚みを13nm狙いで蒸着した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0080】
(実施例10)
A層を形成する際、酸素ガスを、酸素ガス導入管16bのみから合計10L/min導入した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0081】
(実施例11)
A層を形成する際、酸素ガス導入管16b,16cより合計10L/minの酸素ガスを9:1の比率で導入した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0082】
(実施例12)
A層を形成する際、酸素ガスを、酸素ガス導入管16cのみから合計10L/min導入した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0083】
(実施例13)
A層を形成する際、酸素ガス導入管16a,16b,16cより合計10L/minの酸素ガスを1:8:1の比率で導入した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0084】
(実施例14)
A層を形成する際、酸素ガス導入管16a,16cより合計10L/minの酸素ガスを0.5:9.5の比率で導入した以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。
【0085】
(実施例15)
A層を形成する際、酸素ガス導入管16a,16cより合計10L/minの酸素ガスを9.5:0.5の比率で導入した以外は、実施例2と同様にして積層体を得た。
【0086】
(比較例1)
A層形成時に酸素ガスを導入しない以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0087】
(比較例2)
A層を形成する際、酸素ガス導入量を合計1L/minとした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0088】
(比較例3)
A層を形成する際、酸素ガス導入量を合計20L/minとした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0089】
(比較例4)
A層を形成する際、酸素ガス導入管として、図3のようなピンホール形状のものを使用した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0090】
各実施例および比較例で得られた積層体に関しては、試験片を切り出し、各種評価を実施した。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の積層体は、酸素ガス、水蒸気等に対するガスバリア性に優れているため、食品、医薬品、電子部品などの包装材料として好適に使用できるが、用途がこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0096】
1 基材
2 A層
3 巻き取り式真空蒸着装置
4 巻き取り室
5 巻き出しロール
6,7,8 巻き出し側ガイドロール
9 メインドラム
10,11,12 巻き取り側ガイドロール
13 巻き取りロール
14 イオン源
15 蒸発源
16a,16b,16c 酸素ガス導入管
17 電子銃(EB銃)
19 酸素ガス導入管
20 ガス導入口
図1
図2
図3
図4
図5