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特開2023-144369未加硫ゴム用防着剤組成物及びその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144369
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】未加硫ゴム用防着剤組成物及びその利用
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20231003BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20231003BHJP
   C08C 4/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C08J7/04 Z CEQ
C08C4/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051306
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉本 元
(72)【発明者】
【氏名】武市 賢治
【テーマコード(参考)】
4F006
【Fターム(参考)】
4F006AA04
4F006AB64
4F006AB66
4F006AB69
4F006AB74
4F006AB76
4F006BA12
4F006EA05
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、水への浸透性に優れ、さらに、濡れ性に優れる未加硫ゴム用防着剤組成物と、その未加硫ゴム用防着剤組成物を使用して行われる防着処理された未加硫ゴムの製造方法を提供することにある。
【解決手段】 下記成分(A)~(C)を含み、下記成分(A)が水膨潤性無機粉体(A1)を含み、下記成分(A)に対する前記水膨潤性無機粉体(A1)の重量比(A1/A)が0.5~0.9であり、嵩密度が0.7~1.0g/cmである、未加硫ゴム用防着剤組成物。
成分(A):無機粉体
成分(B):脂肪酸アルカリ金属塩
成分(C):成分(B)を除く界面活性剤
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含み、
下記成分(A)が水膨潤性無機粉体(A1)を含み、下記成分(A)に対する前記水膨潤性無機粉体(A1)の重量比(A1/A)が0.5~0.9であり、
嵩密度が0.7~1.0g/cmである、未加硫ゴム用防着剤組成物。
成分(A):無機粉体
成分(B):脂肪酸アルカリ金属塩
成分(C):成分(B)を除く界面活性剤
【請求項2】
前記組成物100重量部に対する前記成分(A)の含有量が30~90重量部であり、前記成分(B)の含有量が1~30重量部であり、前記成分(C)の含有量が1~30重量部である、請求項1に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項3】
前記成分(C)が、陰イオン界面活性剤(C1)及び非イオン界面活性剤(C2)を含み、前記非イオン界面活性剤(C2)に対する前記陰イオン界面活性剤(C1)の重量比(C1/C2)が0.8~10である、請求項1又は2に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項4】
前記成分(B)が炭素数16の脂肪酸アルカリ金属塩(B1)を含み、前記成分(B)に対する前記脂肪酸アルカリ金属塩(B1)の重量比(B1/B)が0.1~0.8である、請求項1~3のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
【請求項5】
下記成分(D)及び/又は下記成分(E)を含む、請求項1~4のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
成分(D):金属石鹸
成分(E):ワックス
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤組成物と、水を含む、未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散物。
【請求項7】
未加硫ゴムの表面に、請求項6に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散物を付着させ、さらに水を揮発させる工程を含む、防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は未加硫ゴム用防着剤組成物及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品の生産加工工程において、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵することがあり、この場合にゴムの密着を防止する目的で密着防止剤(防着剤)が使用されている。
一般に、防着剤は水分散液の形態でゴム表面に塗布し乾燥させることが行われている。塗布方法としては、水分散液をスプレーしたり、水分散液に浸漬したりする。
防着剤としては、疎水性の金属石鹸やワックス粉体と界面活性剤の混合物が広く用いられている。金属石鹸やワックス粉体は疎水性であるため、同じ疎水性のゴム表面に付着し易く、良好な防着性を発揮する。しかし、前述したように、防着剤は水分散液の形態で使用することが多いため、疎水性の粉体成分を水に分散させるのに手間が掛かり、また、均一に分散されていない場合、ゴムへの濡れ性が悪化する問題がある。
また、特許文献1や特許文献2のように、水に分散した形態の防着剤が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-084489号公報
【特許文献2】特開2017-88686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載されている防着剤では、水への浸透性が不足するため、事前に強い機械的な力を加えて、強制的に水へ分散させる必要があり、手間や経済的な面で問題があることが確認された。
本発明の目的は、水への浸透性に優れ、さらに、濡れ性に優れる未加硫ゴム用防着剤組成物と、その未加硫ゴム用防着剤組成物を使用して行われる防着処理された未加硫ゴムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の成分を含み、特定の嵩密度である未加硫ゴム用防着剤組成物であれば、解決できることを見出した。
すなわち、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、下記成分(A)~(C)を含み、下記成分(A)が水膨潤性無機粉体(A1)を含み、下記成分(A)に対する前記水膨潤性無機粉体(A1)の重量比(A1/A)が0.5~0.9であり、嵩密度が0.7~1.0g/cmである。
成分(A):無機粉体
成分(B):脂肪酸アルカリ金属塩
成分(C):成分(B)を除く界面活性剤
【0006】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、前記組成物100重量部に対する前記成分(A)の含有量が30~90重量部であり、前記成分(B)の含有量が1~30重量部であり、前記成分(C)の含有量が1~30重量部であると、好ましい。
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、前記成分(C)が、陰イオン界面活性剤(C1)及び非イオン界面活性剤(C2)を含み、前記非イオン界面活性剤(C2)に対する前記陰イオン界面活性剤(C1)の重量比(C1/C2)が0.8~10であると、好ましい。
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、前記成分(B)が炭素数16の脂肪酸アルカリ金属塩(B1)を含み、前記成分(B)に対する前記脂肪酸アルカリ金属塩(B1)の重量比(B1/B)が0.1~0.8であると好ましい。
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、下記成分(D)及び/又は下記成分(E)を含むと、好ましい。
成分(D):金属石鹸
成分(E):ワックス
【0007】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散物は、上記の未加硫ゴム用防着剤組成物と、水を含む。
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、未加硫ゴムの表面に、上記の未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散物を付着させ、さらに水を揮発させる工程を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、水への浸透性に優れ、さらに、濡れ性に優れる。また、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は防着性に優れる。
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、上記未加硫ゴム用防着剤組成物を使用しており、効率的に防着処理された未加硫ゴム組成物を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物(以下、単に防着剤組成物ということがある)は、下記成分(A)~(C)を必須に含むものである。
成分(A):無機粉体
成分(B):脂肪酸アルカリ金属塩
成分(C):成分(B)を除く界面活性剤
以下、本発明の防着剤組成物を構成する各種成分について詳しく説明する。
【0010】
〔成分(A):無機粉体〕
無機粉体(以下、単に成分(A)ということがある)は、未加硫ゴム表面に被膜を形成して防着性を発揮する材料の成分である。
成分(A)は水膨潤性無機粉体(A1)(以下、単に成分(A1)ということがある)を含む。本発明において、成分(A1)は水を吸収し体積が増大する性質を有する無機粉末を意味する。
【0011】
成分(A1)としては、例えば、ベントナイト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、パイデライト、ノントロナイト、ソーコサイト、スチーブンサイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸等が挙げられ、これらは天然物であってもよく、合成物であってもよい。上記成分(A1)は1種または2種以上を併用してもよい。
また、成分(A1)は、特に限定はないが、防着性を向上させる点から、ベントナイト、モンモリロナイト、サポナイト及びヘクトライトから選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
【0012】
成分(A)に対する成分(A1)の重量比(A1/A)は、0.5~0.9である。該重量比が0.5未満であると防着性が低下し、0.9超であると分散性が低下する。A1/Aは、好ましくは0.525~0.875、より好ましくは0.55~0.85、特に好ましくは0.575~0.825である。
【0013】
成分(A)は成分(A1)以外の無機粉体を含む。成分(A1)以外の無機粉体としては、非水膨潤性無機粉体(A2)(以下、単に成分(A2)ということがある)がある。
成分(A2)としては、例えば、カオリナイト等の珪酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;非晶質シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
成分(A2)は、特に限定はないが、防着性の点から、珪酸塩及び炭酸塩から選ばれる少なくとも一種を含むと好ましい。
【0014】
成分(A)が成分(A2)を含む場合、成分(A)に対する成分(A2)の重量比(A2/A)は、特に限定はないが、好ましくは0.05~0.5、より好ましくは0.1~0.5、さらに好ましくは0.125~0.475、特に好ましくは0.15~0.45、最も好ましくは0.175~0.425である。該重量比が0.05以上であると分散性が向上する傾向があり、0.5以下であると防着性が向上する傾向がある。
【0015】
また、成分(A)は結晶性シリカを含むことがある。
結晶性シリカとしては、例えば、石英、クリストバライト、トリジマイト、コーサイト、ステイショバライト等が挙げられる。
成分(A)に対する結晶性シリカの重量比(結晶性シリカ/A)は、特に限定はないが、このましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下、特に好ましくは0.05以下である。該重量比が0.2以下であると、分散性及び防着性が向上する傾向がある。
【0016】
成分(A)の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.1~200μm、より好ましくは0.1~100μm、さらに好ましくは0.1~50μm、特に好ましくは0.1~40μm、最も好ましくは0.1~30μmである。該平均粒子径が上記範囲であると、未加硫ゴムへの付着性が向上する傾向がある。
本発明における成分(A)の平均粒子径は、乾式型レーザー回折式粒度分布測定装置(マスタサイザー3000、Malvern社製)を使用し、乾式測定法により測定した。平均粒子径は体積基準測定によるD50値を採用した。
【0017】
成分(A)の嵩比重は、特に限定はないが、水への浸透性を向上させる点から、好ましくは0.3~1.1g/cm、より好ましくは0.31~1.09g/cm、さらに好ましくは0.32~1.08g/cm、特に好ましくは0.33~1.07g/cm、最も好ましくは0.34~1.06g/cmである。
本発明の嵩密度はゆるみ嵩密度であり、実施例に記載された方法によるものである。
【0018】
防着剤組成物100重量部に対する成分(A)の含有量は、特に限定はないが、好ましくは30~90重量部、より好ましくは35~85重量部、特に好ましくは40~80重量部である。該含有量が30重量部以上であると防着性が向上する傾向があり、90重量部以下であると濡れ性が向上する傾向がある。
【0019】
〔成分(B):脂肪酸アルカリ金属塩〕
脂肪酸アルカリ金属塩(以下、単に成分(B)ということがある)は成分(A)が継粉になるのを防ぐとともに、成分(B)自体が水に溶解分散しやすいため、水への浸透性を高める。さらには、ゴム表面に付着して防着性を示す効果もある。
成分(B)の炭素数は、特に限定はないが、好ましくは6~22、より好ましくは8~20、さらに好ましくは10~18である。
【0020】
成分(B)を構成する脂肪酸は、直鎖もしくは分岐の飽和または不飽和脂肪酸を使用することができ、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の単一脂肪酸のほか、パーム核脂肪酸、パームステアリン脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の天然脂肪酸を使用することができる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。
また、成分(B)については、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、ルビニウム塩、セシウム塩等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0021】
成分(B)は、特に限定はないが、水への浸透性と防着性を高める点から、炭素数16の脂肪酸アルカリ金属塩(B1)(以下、単に成分(B1)ということがある)を含むと好ましい。
成分(B)が成分(B1)を含む場合、成分(B)に対する成分(B1)の重量比(B1/B)は、特に限定はないが、(1)0.1~0.8、(2)0.12~0.78、(3)0.14~0.76、(4)0.16~0.74、(5)0.18~0.72、(6)0.20~0.70の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。該重量比が0.1以上であると、防着性が向上する傾向があり、0.8以下であると、水への浸透性が向上する傾向がある。
【0022】
防着剤組成物100重量部に対する成分(B)の含有量は、特に限定はないが、好ましくは1~30重量部、さらに好ましくは2~25重量部、特に好ましくは3~20重量部である。
【0023】
〔成分(C):成分(B)を除く界面活性剤〕
上記で説明した成分(B)を除く界面活性剤(以下、単に成分(C)ということがある)は、防着剤組成物の水への浸透性を高めるともに、未加硫ゴムへの濡れ性と付着性を補助する成分である。
成分(C)は、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0024】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン3モル付加のデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のデシルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のデシルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のイソデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のイソデシルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のイソデシルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のイソデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のラウリルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のラウリルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のラウリルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のラウリルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加のセチルエーテル、ポリオキシエチレン3モル付加およびポリオキシプロピレン1モル付加のセチルエーテル、ポリオキシエチレン5モル付加のセチルエーテル、ポリオキシエチレン7モル付加のセチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;脂肪酸アルカノールアミド;ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0025】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;2-エチルヘキシルスルホコハク酸Na等の長鎖スルホコハク酸塩;オレオイルザルコシンNa、ラウロイルザルコシンNa等のN‐アシルサルコシン塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N-アシルグルタミン酸塩等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0026】
陽イオン界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩;アルキルアミン塩等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
両性界面活性剤としては、例えば、2-ウンデシル-N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N-ラウリルグリシン、N-ラウリルβ-アラニン、N-ステアリルβ-アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
成分(C)は、水への浸透性と濡れ性を高める点から、陰イオン界面活性剤(C1)及び非イオン界面活性剤(C2)を含むと好ましい。以下、陰イオン界面活性剤(C1)は単に成分(C1)ということがあり、非イオン界面活性剤(C2)は単に成分(C1)ということがある。
成分(C)が成分(C1)及び(C2)を含む場合、成分(C2)に対する成分(C1)の重量比(C1/C2)は、特に限定はないが、(1)0.8~10、(2)0.9~9.9、(2)1.0~9.8、(3)1.1~9.7、(4)1.2~9.6、(5)1.3~9.5、(6)1.4~9.4の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。該重量比が0.8以上であると、水への浸透性が向上する傾向があり、10以下であると濡れ性が向上する傾向がある。
【0028】
また、成分(C2)のグリフィン法によるHLBは、特に限定はないが、好ましくは3~13、より好ましくは4~12、さらに好ましくは5~11、特に好ましくは6~10である。該HLBが3以上であると水への浸透性が向上する傾向があり、13以下であると濡れ性が向上する傾向がある。
ここで、グリフィン法によるHLBとは、分子構造に基づき、下記(I)により算出できる数値である。すなわち、グリフィン法によるHLBとは、0から20までの数値をとり、数値が小さいほど親油性で、数値が大きいほど親水性であることの指標となる。
HLB=20×(親水部の式量の総和/分子量)(I)
【0029】
成分(C2)は、下記一般式(1)で表される化合物を含んでいてもよく、該化合物のグリフィン法によるHLBが3~13であってもよい。
RO-(AO)n-H (1)
【0030】
一般式(1)中、Rは脂肪族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。
一般式(1)中、AOは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基であり、nはAOの平均付加モル数である。炭素原子数2~4のオキシアルキレン基としては、例えば、炭素原子数2~4のアルキレンオキサイドが付加してなる重合単位である。オキシアルキレン基を複数種含む場合は、これらの基がブロック状に配列していても、ランダム状に配列していてもよい。
【0031】
未加硫ゴム用防着剤組成物100重量部に対する成分(C)の含有量は、特に限定はないが、好ましくは1~30重量部、さらに好ましくは2~25重量部、特に好ましくは3~20重量部である。該含有量が1重量部以上であると水への浸透性が向上する傾向があり、該含有量が30重量部以下であると防着性が向上する傾向がある。
【0032】
本発明の防着剤組成物は、下記成分(D)及び/または成分(E)をさらに含んでもよい。
成分(D):金属石鹸
成分(E):ワックス
【0033】
〔成分(D):金属石鹸〕
金属石鹸(以下、単に成分(D)ということがある)は、未加硫ゴム表面に付着し、未加硫ゴム間の摩擦を軽減し、防着性を向上させる成分である。
成分(D)としては、例えば、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸バリウム等が挙げられる。
成分(D)は、特に限定はないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1つであると、未加硫ゴム間の摩擦を軽減する効果が高く、好ましい。
【0034】
〔成分(E):ワックス〕
ワックス(以下、単に成分(E)ということがある)は成分(D)と同様に、未加硫ゴム表面に付着し、未加硫ゴム間の摩擦を軽減し、防着性を向上させる成分である。
成分(E)としては、例えば、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックス、合成炭化水素系ワックス、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸アミドおよび無水フタル酸イミド等の粒子が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0035】
植物系ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ほほば油、シュガーワックス、ベイベリーワックス、オーキュリーワックス、エスパルトワックス等が挙げられる。
動物系ワックスとしては、例えば、みつろう、ラノリン、鯨蝋等、昆虫ろう、セラックろう等が挙げられる。
鉱物系ワックスとしては、例えば、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等が挙げられる。
石油ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ペトロラクタム等が挙げられる。
合成炭化水素系ワックスとしては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
変性ワックスとしては、例えば、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタンワックス誘導体等が挙げられる。
【0036】
水素化ワックスとしては、例えば、硬化ひまし油、12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N-ヒドロキシエチル-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-エチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-キシリレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、メチル-12-ヒドロキシステアレート、プロピレングリコール-モノ-12-ヒドロキシステアレート、エチレングリコール-モノ-12-ヒドロキシステアレート等が挙げられる。
脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、N,N’-キシリレンビスステアリン酸アミド、やし油脂肪酸モノエタノールアミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド等が挙げられる。
【0037】
防着剤組成物100重量部に対する、成分(D)及び成分(E)の含有量の合計は、特に限定はないが、好ましくは1~30重量部、さらに好ましくは2~25重量部、特に好ましくは3~20重量部である。該含有量が1重量部以上であると防着性が向上する傾向があり、該含有量が30重量部以下であると水への浸透性が向上する傾向がある。
【0038】
本発明の防着剤組成物は、上記で説明した成分(A)~(E)以外のその他成分(以下、単にその他成分ということがある)を含んでもよい。その他成分としては、特に限定はないが、例えば、水溶性高分子、多価アルコール、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0039】
〔水溶性高分子〕
水溶性高分子は防着剤組成物の水分散液に粘性を付与し、未加硫ゴム表面への付着性を向上させる成分である。
水溶性高分子としては、例えば、酸化でんぷん、酢酸でんぷん、燐酸でんぷん、カルボキシメチルスターチ、カルボキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、陽性でんぷん、シアノエチル化でんぷん、ジアルデヒドでんぷん等のでんぷん類;マンナン;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類;タラカントガム、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ブリティッシュガム、グルコマンナン、ジェランガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギーナン等の天然ガム類;ポリアクリル酸ソーダ;ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;水溶性アクリル樹脂;水溶性ウレタン樹脂;水溶性メラミン樹脂;水溶性エポキシ樹脂;水溶性ブタジエン樹脂;水溶性フェノール樹脂等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0040】
〔多価アルコール〕
多価アルコールは未加硫ゴム表面に付着し、未加硫ゴム間に潤滑性を付与し、未加硫ゴム間の摩擦を軽減する成分である。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、マルトトリオース、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0041】
〔消泡剤〕
消泡剤としては、例えば、ポリメチルシロキサン、ポリエーテル変性シリコー等のシリコーン系消泡剤;ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フオスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレン系消泡剤;鉱物油等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0042】
〔防腐剤〕
防腐剤としては、例えば、チアゾール、2-メルカプトチアゾール等のチアゾール類;メチレンビスチオシアネート、アンモニウムチオシアネート等のチオシアネート類;o-ベンゾイックスルフィミド、フェニルマーキュリック-o-ベンゾイックスルフィミド等のスルフィミド類;メチルジメチルチオカルバメート、エチルジエチルジチオカルバメート等のアルキルジアルキルチオカルバメート類;テトラメチルチラウムスルフィド、テトラエチルチラウムスルフィド等のチラウムスルフィド類;テトラメチルチラウムジスルフィド、テトラエチルチラウムジスルフィド等のチラウムジスルフィド類;フェリックジエチルジチオカルバメート、リードジメチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;o-トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルフォンアニリド等のスルファミド類;1-アミノナフチル-4-スルホン酸、1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸等のアミノスルホン酸類;ペンタクロロフェノール、o-フェニルフェノール等のフェノール類及びこれらのアルカリ金属塩類;テトラクロロ-p-ベンゾキノン、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン等の塩化キノン類;ジニトロカプリルフェニルクロトネート、ジニトロ-o-クレゾール等のニトロ基含有化合物類;1,3,5-トリヒドロキシエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン等のトリアジン類;フェニルマーキュリックフタレート、o-ヒドロキシフェニルマーキュリッククロライド等の有機水銀化合物;p-アミノアゾベンゼン、ジフェニルアミン等のアミン類;シンナムアニリド等のアミド類;1,3-ジヨード-2-プロパノール等のヨウ素含有化合物等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0043】
〔未加硫ゴム用防着剤組成物〕
本発明の防着剤組成物の嵩密度は、0.70~1.0g/cmである。
上記成分(A)~(C)を必須に含み、かつ上記範囲の嵩密度を有する防着剤組成物であることで、水への浸透性に優れ、さらに濡れ性に優れる。
防着剤組成物の嵩密度は、好ましくは0.71~0.99g/cm、より好ましくは0.72~0.98g/cm、さらに好ましくは0.73~0.97g/cm、特に好ましくは0.74~0.96g/cm、最も好ましくは0.75~0.95g/cmである。なお、未加硫ゴム用防着剤組成物の嵩密度は、実施例に記載の方法によるものである。
また、本発明の防着剤組成物は、本願効果を奏する点から、粉末状であるとよい。
【0044】
〔未加硫ゴム用防着剤組成物の製造方法〕
本発明の防着剤組成物について、その製造方法は、成分(A)~(C)を必須として、必要に応じて成分(D)、成分(E)、その他成分を混合する工程を含むものであれば、混合順序や使用する混合装置等について特に限定はない。混合装置としては、例えば、リボン型混合機、ナウターミキサー等の粉体混合機が挙げられる。
【0045】
〔未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散物及びその製造方法〕
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液は、特に限定はないが、上記未加硫ゴム用防着剤組成物と、水を含み、防着剤組成物が水に分散された水分散物である。
【0046】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散物において、その製造方法は、例えば、水に上記未加硫ゴム用防着剤組成物を混合、分散させる方法であればよい。
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散物における、防着剤組成物の濃度は、特に限定はないが、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.05~7.5重量%、さらに好ましくは0.1~5.0重量%である。該濃度が0.01重量%以上であると防着性が向上する傾向があり、10重量%以下であると乾燥性が向上する傾向がある。
【0047】
〔防着処理された未加硫ゴムの製造方法〕
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、上記未加硫ゴム用防着剤組成物を未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む。ここで、未加硫ゴムは、成形加工されたものであるとよい。
【0048】
処理工程では、ウェット法、すなわち、未加硫ゴム用防着剤組成物として水に分散された水分散物を用いる方法が好ましい。
ウェット法で処理工程を行う場合、例えば、未加硫ゴム用防着剤組成物又はその水分散物をスプレーする方法、細流にてゴムに吹き付ける方法、水分散物中に浸漬する方法等が挙げられる。なかでも、水分散物中に浸漬する方法は、均一に未加硫ゴム用防着剤組成物を付着させることができ、好ましい。
次いで、水分散物を付着させた後に、乾燥を実施してもよい。乾燥方法としては、特に限定はないが、熱風機やブローヒーターにより熱風を送ることで強制的に乾燥させる方法であるとよい。
【0049】
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法で用いる未加硫ゴムは、通常、100~180℃に加熱された状態にあり、水分散物中に浸漬する方法において、未加硫ゴムを冷却することもできる。水分散物の温度は特に限定はないが、0~60℃であると好ましい。
次いで、水分散物を付着後に未加硫ゴムを乾燥する工程を実施してもよい。乾燥の方法としては、特に限定はないが、経済面の点で、熱風機やブローヒーターにより熱風を送ることで強制的に乾燥させる方法であると好ましい。
【0050】
処理工程では、ドライ法、すなわち、水分散物の形態ではない防着剤組成物を用いてもよい。
上記製造方法で製造された防着処理された未加硫ゴムは、次の工程に移行するまでの間に積み重ねて貯蔵する場合、未加硫ゴム同士の密着を防止することができる。
【実施例0051】
以下に、本発明を実施例及び比較例を示して具体的に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における各物性の評価は、以下のようにして行った。
【0052】
[嵩密度]
成分(A)および未加硫ゴム用防着剤組成物の嵩密度は、多機能型粉体物性測定器マルチテスター(MT-1001k型/(株)セイシン企業製)を用いて、ゆるみ嵩密度(g/cm)を測定した。フィーダーユニット上部にロート、フルイ(目開き710μm)、フルイスペーサーの順に重ね置き、ストッパーで固定した。サンプル台にセル容器(SUS製、寸法:50.5mm(内径)×50mm(高さ)、内容積:100cm)を置き、サンプルユニットにサンプルを投入するとともに、フィーダーを振動させ、ふるい落としたサンプルでセルを充填し、擦り切り板で擦り切った。各サンプルのゆるめ嵩密度ρ(g/cm)は以下の式より測定した。
ρ=(W-W)/V
:セル容器の容量(cm
:セル容器の重量(g)
:サンプル充填後のセル容器の重量(セル容器とサンプルの合計の重量)(g)
【0053】
[水への浸透性]
300ml容ガラスビーカーに、20℃に調温した水294gを入れ、未加硫ゴム用防着剤組成物6gを静かに投入し静置した。5分間経過した後、浮遊している未加硫ゴム用防着剤組成物を回収し、重量と水分量を測定して、浮遊して浸透しなかった重量(W)を算出した。得られたWを用いて浸透率を計算し、水への浸透性を下記のように評価した。
分散率(%)=(6-W)/6×100
分散率が90%以上:水への浸透性は非常に良好(指標◎)
分散率が70%以上~90%未満:水への浸透性は良好(指標○)
分散率が40%以上~70%未満:水への浸透性は不良(指標△)
分散率が40%未満:水への浸透性は非常に不良(指標×)
【0054】
[濡れ性]
上記水への浸透性試験で得られた未分散物除去後の分散液を使用した。未分散物と同時に除かれた水分は補足した。分散液を45℃に調温した温浴中で、マグネチックスターラーにて30分以上撹拌し、均一な分散液を得た。
100℃に加熱したNR/BRゴム試験片(天然ゴム/ブタジエンゴム;厚み0.5cm×縦5cm×横3cm)を45℃の分散液に浸漬し、直ちに引き上げた。そして、未加硫ゴム表面の濡れを下記のように評価した。
未加硫ゴム表面全体が濡れている:濡れ性は良好(指標は○)
未加硫ゴム表面の一部にはじきがある:濡れ性はやや不良(指標は△)
未加硫ゴム表面全体がはじいている:濡れ性は不良(指標は×)
【0055】
[防着性]
上記濡れ性の評価で使用した分散液を使用した。100℃に加熱したNR/BR試験片(天然ゴム/ブタジエンゴム;厚み0.5cm×縦5cm×横3cm)を45℃に調温した分散液に浸漬して直ちに引き上げた。浸漬させたゴム試験片を2枚作製し、風乾した後に重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。恒温槽から取出した試験片を室温まで空冷し、引張り試験機を用いて100mm/minの速度下で剥離抗力(N/cm)を測定した。測定した剥離抗力より、防着性を下記のように評価した。
剥離抗力が1N/cm以下:防着性は非常に良好(容易に未加硫ゴム同士を剥がすことができる、指標は◎)
剥離抗力が1N/cm超2N/cm未満:防着性は良好(負荷なく未加硫ゴム同士を剥がすことができる、指標は○)
剥離抗力が2N/cm以上3N/cm以下:防着性は不良(未加硫ゴム同士を剥がす時の負荷が大きく、防着性が低い、指標は△)
剥離抗力が3N/cm超:防着性が非常に不良(ゴム同士が密着して剥離が困難である。防着性が非常に低い、指標は×)
【0056】
(実施例1)
ベントナイト50g、カオリナイト20g、炭酸カルシウム10g、カプリン酸Na7g、パルミチン酸Na3g、ジオクチルスルホサクシネート9g、POE(3)sec-アルキル(C12-C14)エーテル1gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤組成物を得た。
次いで、水道水294gに得られた防着剤組成物を6g加え、水への浸透性、濡れ性、防着性を評価した。評価の結果は表1に示すとおりで、水への浸透性及び濡れ性に優れ、防着性に優れた。
【0057】
(実施例2~26)
実施例2~26では、表1に示すように組成を変更した以外は、実施例1と同様にして評価した。評価の結果は表1~2に示す。
【0058】
(比較例1)
ベントナイト5g、カオリナイト65g、炭酸カルシウム10g、カプリン酸ナトリウム7g、パルミチン酸Na3g、ジオクチルスルホサクシネート9g、POE(3)sec-アルキル(C12-C14)エーテル1gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤組成物を得た。
次いで、水道水294gに得られた防着剤組成物を6g加え、水への浸透性、濡れ性、防着性を評価した。評価の結果は表2に示すとおりで、水への浸透性及び濡れ性が不良であり、防着性が非常に不良であった。
【0059】
(比較例2~7)
比較例2~7では、表2に示すように組成を変更した以外は、比較例1と同様にして評価した。
なお、表1~2において、POE(m)とはポリオキシエチレン(オキシエチレンの繰返し単位数:m)を意味する。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1~2からわかるように、実施例1~28の未加硫ゴム用防着剤組成物は、水膨潤性無機粉体(A1)を特定量含む無機粉体(A)と、脂肪酸アルカリ金属塩(B)と、脂肪酸アルカリ金属塩(B)を除く界面活性剤(C)を含む未加硫ゴム用防着剤組成物であって、その組成物の嵩密度が0.7~1.0g/cmであると、水への浸透性に優れ、さらに、濡れ性に優れる。
一方、表2からわかるように、水膨潤性無機粉体(A1)が特定の含有量でない場合(比較例1)、無機粉体(A)を含まない場合(比較例2、3)、脂肪酸アルカリ金属塩(B)を含まない場合(比較例4)、脂肪酸アルカリ金属塩を除く界面活性剤(C)を含まない場合(比較例5)、未加硫ゴム用防着剤組成物の嵩密度が0.5~0.9g/cmの範囲外の場合(比較例6、7)では、水への浸透性及び濡れ性のうちの少なくとも一つが優れない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、未加硫ゴム製品の生産加工工程に用いられ、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵する場合にゴムの密着を防止することができる。その際、水への浸透性及び濡れ性が優れ、ゴム製品の生産性の向上が可能となる。