(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144387
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】UAVを用いた作業方法、制御方法、及び作業用装置
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
E02D17/20 102F
E02D17/20 102G
E02D17/20 104B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051329
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】392012261
【氏名又は名称】東興ジオテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516304883
【氏名又は名称】エアロセンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛
(72)【発明者】
【氏名】中本 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康輔
(72)【発明者】
【氏名】平井 真二
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DA31
2D044DA33
2D044DA39
2D044DC03
2D044DC04
2D044DC05
(57)【要約】
【課題】ホース先端部を作業用UAVで保持して材料を対象物に対して吹付、散布、噴射する作業方法において安定しかつ確実な作業を実現する。
【解決手段】プラント1から材料をホース2により圧送しUAVを用いて対象物9に対して吹付、散布、又は噴射により前記材料を射出する作業方法であって、前記材料を射出する作業中、前記ホース2の先端部を作業用UAV6により保持すると共に、前記プラント1と前記作業用UAV6との間において、少なくとも1つの中継用装置3a又は少なくとも1つの中継用UAV4aにより前記ホース2の少なくとも1つの箇所を保持し、かつ、前記作業用UAV6の直前に位置する中継用装置3a又は中継用UAV4aにより保持する箇所における前記ホース2の高度Hが、前記作業用UAV6の飛行高度Fよりも高い状態で前記材料を射出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント(1)から材料をホース(2)により圧送しUAVを用いて対象物(9)に対して吹付、散布、又は噴射により前記材料を射出する作業方法であって、
前記材料を射出する作業中、前記ホース(2)の先端部を作業用UAV(6)により保持すると共に、前記プラント(1)と前記作業用UAV(6)との間において、少なくとも1つの中継用装置(3a)又は少なくとも1つの中継用UAV(4a)により前記ホース(2)の少なくとも1つの箇所を保持し、かつ、
前記作業用UAV(6)の直前に位置する中継用装置(3a)又は中継用UAV(4a)により保持する箇所における前記ホース(2)の高度(H)が、前記作業用UAV(6)の飛行高度(F)よりも高い状態で前記材料を射出することを特徴とするUAVを用いた作業方法。
【請求項2】
前記材料を射出する作業中、前記プラント(1)と前記直前に位置する中継用装置(3a)又は中継用UAV(4a)との間において、1つ以上の別の中継用装置(3b)により、1つ以上の別の中継用UAV(4b)により、又は、1つ以上の別の中継用装置(3b)と1つ以上の別の中継用UAV(4b)との組合せにより、前記ホース(2)の1つ以上の箇所を保持することを特徴とする請求項1に記載のUAVを用いた作業方法。
【請求項3】
前記ホース(2)が、前記プラント(1)と前記作業用UAV(6)との間における1つ以上の箇所にスイベル機構を具備する接続部(11)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のUAVを用いた作業方法。
【請求項4】
前記ホース(2)が、前記プラント(1)と前記作業用UAV(6)との間における1つ以上の箇所にて自在変形機構を具備する接続部(8)を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のUAVを用いた作業方法。
【請求項5】
前記中継用装置(3a)及び/又は前記中継用UAV(4a、4b)にそれぞれ内蔵された内蔵制御装置と、各前記内蔵制御装置と通信可能な位置制御装置(12)と、を用いて請求項1~4のいずれかに記載の作業方法を制御する制御方法であって、
前記位置制御装置(12)が、
(a)前記プラント(1)、前記中継用装置(3a)及び/又は前記中継用UAV(4a、4b)、並びに前記作業用UAV(6)の各々の現在位置の位置情報を取得する工程と、
(b)取得した位置情報を用いて、前記中継用装置(3a)及び/又は前記中継用UAV(4a、4b)の各々の目標位置を演算により決定する工程と、
(c)決定した目標位置を、前記中継用装置(3a)及び/又は前記中継用UAV(4a、4b)の各前記内蔵制御装置にそれぞれ送信する工程と、を含み、かつ、
前記中継用装置(3a)及び/又は前記中継用UAV(4a、4b)の各前記内蔵制御装置は、前記位置制御装置(12)から目標位置を受信し、当該中継用装置(3a)及び/又は当該中継用UAV(4a、4b)の位置を当該目標位置とするように制御することを特徴とする制御方法。
【請求項6】
前記位置制御装置(12)は、前記目標位置を決定する工程において、前記作業用UAV(6)に対する負荷が最小となるように、前記中継用UAV(4a、4b)の目標位置を補正して決定することを特徴とする請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記作業用UAV(6)に内蔵された内蔵制御装置と、前記材料の射出方向に向くように前記作業用UAV(6)に取り付けられた前方距離センサ(14)と、を用いて請求項1~4のいずれかに記載の作業方法による作業の実行を制御する制御方法であって、
前記作業用UAV(6)の内蔵制御装置が、前記前方距離センサ(14)により検知された前記対象物(9)との間の距離を基に、当該距離を一定に保持するように前記作業用UAV(6)の位置を制御することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の作業方法で用いる前記作業用UAV(6)と、前記作業用UAV(6)に取り付けられ前記材料を射出する射出装置(13)と、を有する作業用装置(15)であって、
前記作業用UAV(6)の水平姿勢状態おいて、前記射出装置(13)が前記作業用UAV(6)の機体の重心(G)よりも所定の距離(r)だけ鉛直下方の位置にて水平方向に延在し、前記射出装置(13)の延在方向において、その前端の射出口(13a)が前記作業用UAV(6)の機体の重心(G)よりも前方に位置することを特徴とする作業用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UAVを用いて対象物に対して材料を吹付、散布、又は噴射する作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるUAV(unmanned aerial vehicle/無人航空機)関連技術の発展は目覚ましく、さまざまな材料を吹付、散布、噴射したりする施工法が考案されている。
【0003】
吹付に類する分野では、法面保護工のうち、モルタル・コンクリート吹付工や植生基材吹付工に代表される吹付工法を用いて吹付材料を法面等の高所に吹き付ける吹付作業が行われている。その場合、施工プラント(プラントヤード)から吹付材料を、材料ホースを介して吹付位置まで圧送し、吹付作業員が材料ホース先端部(ノズル)を手で把持して吹き付ける施工法が長年にわたり行われている。近年では、こうした吹付作業の機械化が図られつつあり、バックホウ、クレーン、ゴンドラなどを使用した施工法も一部で適用されるようになった。こうした吹付作業の機械化の一つに、UAVによりホース先端部を保持して吹き付ける施工方法が考案されている(特許文献1)。
【0004】
また、散布に類する分野では、UAVを使用してポンプ圧送された農薬等の薬剤や肥料等を散布したり(例えば特許文献2)、塗料などを構造物の壁面等の対象物に塗布するために散布したりする方法(例えば特許文献3)が考案されている。
【0005】
さらに、噴射ないしは放出に類する分野では、水や消火剤等をビル火災などの対象物に放水、放出するためにホース先端部を作業用UAVで保持する方法がインターネット上などで公開されている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-108748号公報(高所吹付施工方法及び吹付装置)
【特許文献2】実用新案登録第3217561号公報(ドローン搭載噴霧装置)
【特許文献3】米国特許出願公開第2015-274294号明細書(Indoor and outdoor aerial vehicles for painting and related applications)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「最大200キロまで対応! 人をぶら下げ、自律飛行で救助する巨大レスキュードローン」https://time-space.kddi.com/it-technology/20180601/2327
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
材料を圧送するための耐圧性能や耐摩擦性能を有するホースは、その重量が単位長さ1m当たり2~3kg以上に達する。そのようなホースにより圧送された材料をUAVにより吹付、散布、噴射する施工を行う場合、UAVがそのようなホースを吊り下げたり持ち上げたりして保持する必要がある。そのためには、重量物に対応できる大型のUAVを使用せざるを得ない。しかし、大型のUAVは、機械経費や輸送費用が高額になるばかりでなく、UAVのプロペラの回転により発生する吹き下ろし風も相当なものとなる。そのため、砂埃の舞い上がりをはじめとする粉塵の発生によるプラント周辺の現場環境の悪化、プラントにおける吹付、散布、噴射する材料の計量作業、混合攪拌作業、投入作業等への支障、吹付、散布、噴射する施工時に材料が飛散してしまうことによる材料ロスの増加、吹き下ろし風による吹付、散布、噴射した材料(例えば吹き付けした生育基盤やモルタルなど)の剥離などの問題が発生する。
【0009】
また、こうした重量物を保持しながら吹付、散布、噴射する施工を行う場合、例えば吹付によって設計で定められた材料の吹付厚さの管理が必要な作業を正確に制御し、かつ圧送される材料がホース内で一時的な閉塞を起こしてそれが解放された際に生じるホースの搖動や大きな反力を受けた際などに速やかに機体を立て直すことが難しいという問題がある。
【0010】
こうした問題を回避するために、特許文献1では、施工プラントと施工用UAVとの間に延在するホースを中継用装置や中継用UAVにより保持させている。しかし、この方で法では、中継用装置又は中継用UAVと施工用UAVとの間に連接するホースの重量の影響により、施工用UAVが中継用装置又は中継用UAV側に引き寄せられたり、逆に中継用装置又は中継用UAVが施工用UAV側に引き寄せられる力が働く。その結果、吹付作業と吹付厚さを正確に制御したり、吹付材料のホース内閉塞が解放された際に生じるホースの搖動や大きな反力を受けた時に、速やかに機体を立て直すことが難しいという問題が発生する。
【0011】
こうした問題は、吹付施工だけではなく材料を散布又は噴射して施工する場合、又は水や消化剤等を噴射する場合にも発生する。特に、高圧液体を噴射する場合(例えば消火用放水など)はホースが硬直するため、ホース先端部を保持する作業用UAVの制御が困難になる場合がある。
【0012】
本発明は、プラントからホースにより材料を圧送し、ホースを中継用装置又は中継用UAVにより空中保持すると共に、ホース先端部を作業用UAVで保持して材料を対象物に対して吹付、散布、噴射する作業方法において、上述した諸問題を解消するUAVを用いた作業方法、材料射出を制御する方法、及び作業用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の構成を提供する。括弧付符号は後述する図面中の符号であり、参考のために付するものである。
- 本発明の第1の態様は、プラント(1)から材料をホース(2)により圧送しUAVを用いて対象物(9)に対して吹付、散布、又は噴射により前記材料を射出する作業方法であって、
前記材料を射出する作業中、前記ホース(2)の先端部を作業用UAV(6)により保持すると共に、前記プラント(1)と前記作業用UAV(6)との間において、少なくとも1つの中継用装置(3a)又は少なくとも1つの中継用UAV(4a)により前記ホース(2)の少なくとも1つの箇所を保持し、かつ、
前記作業用UAV(6)の直前に位置する中継用装置(3a)又は中継用UAV(4a)により保持する箇所における前記ホース(2)の高度(H)が、前記作業用UAV(6)の飛行高度(F)よりも高い状態で前記材料を射出することを特徴とする。
- 上記態様において、作業中、前記プラント(1)と前記直前に位置する中継用装置(3a)又は中継用UAV(4a)との間において、1つ以上の別の中継用装置(3b)により、1つ以上の別の中継用UAV(4b)により、又は、1つ以上の別の中継用装置(3b)と1つ以上の別の中継用UAV(4b)との組合せにより、前記ホース(2)の1つ以上の箇所を保持することを特徴とする。
- 上記態様において、前記ホース(2)が、前記プラント(1)と前記作業用UAV(6)との間における1つ以上の箇所にスイベル機構を具備する接続部(11)を有することを特徴とする。
- 上記態様において、前記ホース(2)が、前記プラント(1)と前記作業用UAV(6)との間における1つ以上の箇所にて自在変形機構を具備する接続部(8)を有することを特徴とする。
- 本発明の別の態様は、前記中継用装置(3a)及び/又は前記中継用UAV(4a、4b)にそれぞれ内蔵された内蔵制御装置と、各前記内蔵制御装置と通信可能な位置制御装置(12)と、を用いて上記作業方法を制御する制御方法であって、
前記位置制御装置(12)が、
(a)前記プラント(1)、前記中継用装置(3a)及び/又は前記中継用UAV(4a、4b)、並びに前記作業用UAV(6)の各々の現在位置の位置情報を取得する工程と、
(b)取得した位置情報を用いて、前記中継用装置(3a)及び/又は前記中継用UAV(4a、4b)の各々の目標位置を演算により決定する工程と、
(c)決定した目標位置を、前記中継用装置(3a)及び/又は前記中継用UAV(4a、4b)の各前記内蔵制御装置にそれぞれ送信する工程と、を含み、かつ、
前記中継用装置(3a)及び/又は前記中継用UAV(4a、4b)の各前記内蔵制御装置は、前記位置制御装置(12)から目標位置を受信し、当該中継用装置(3a)及び/又は当該中継用UAV(4a、4b)の位置を当該目標位置とするように制御することを特徴とする。
- 上記制御方法において、前記位置制御装置(12)は、前記目標位置を決定する工程において、前記作業用UAV(6)に対する負荷が最小となるように、前記中継用UAV(4a、4b)の目標位置を補正して決定することを特徴とする。
- 本発明のさらに別の態様は、前記作業用UAV(6)に内蔵された内蔵制御装置と、前記材料の射出方向に向くように前記作業用UAV(6)に取り付けられた前方距離センサー(14)と、を用いて上記作業方法による作業の実行を制御する制御方法であって、
前記作業用UAV(6)の内蔵制御装置が、前記前方距離センサー(14)により検知された前記対象物(9)との間の距離を基に、当該距離を一定に保持するように前記作業用UAV(6)の位置を制御することを特徴とする。
- 上記いずれかの態様の作業方法で用いる前記作業用UAV(6)と、前記作業用UAV(6)に取り付けられ前記材料を射出する射出装置(13)と、を有する作業用装置(15)であって、
前記作業用UAV(6)の水平姿勢状態おいて、前記射出装置(13)が前記作業用UAV(6)の機体の重心(G)よりも所定の距離(r)だけ鉛直下方の位置にて水平方向に延在し、前記射出装置(13)の延在方向において、その前端の射出口(13a)が前記作業用UAV(6)の機体の重心(G)よりも前方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は次のような作用効果を奏する。
1)プラントから作業用UAVまでホースが連接することに起因するホースの重量や、連接されたホースによる引張力を大幅に低減することができる。吹付作業の場合、作業用UAVによる吹付厚さの管理を正確に制御することが可能となる。また、材料がホース内で閉塞を起こして解放された際に生じるホースの搖動や大きな反力が生じた際に、速やかに正常な状態に立て直すことが容易になる。
2)大型UAVを用いる必要がない。これにより、大型UAVの吹き下ろし風によるプラントにおける材料の計量攪拌等の作業への支障、砂埃の舞い上がり等の粉塵の発生、材料射出時の材料の飛散による材料ロスの発生、吹き付けした材料の剥離などを防止できる。
3)中継用装置、中継用UAV、作業用UAVの移動に伴ってホースに捻じれや捩れが生じた場合に、スイベル接続部によってその捩れを速やかに解消することができる。
4)自在変形接続部によって作業用UAVの着陸時に、ホース自体が有する柔軟性を超えた角度までホースを曲げることができるようになる。これにより、ホースの柔軟性不足で正常な姿勢を保って着陸できなくなる問題を解消できる。
5)中継用装置、中継用UAV、作業用UAVの位置関係を自動制御することにより、操作が容易になり、操縦者の人数と負荷を削減することができる。
6)作業用UAVにおいて材料の射出方向に向いたセンサーにより、射出強度を一定にすることができ、又は、中継用装置、中継用UAV、作業用UAVの衝突を回避することができる。
7)作業用UAVの機体に対して射出装置の噴射口の位置を機体の重心より下に配置し回転モーメントによる傾きによって生じた推進力と噴射によって生じる反力とを相殺させることにより、飛行を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、プラントと作業用UAVとの間で1台の中継用UAVによりホースを保持する本発明の作業方法の第1の実施例を概略的に示した図である。
【
図2】
図2は、プラントと作業用UAVとの間で1台の中継用装置によりホースを保持する本発明の作業方法の第2の実施例を概略的に示した図である。
【
図3】
図3は、プラントと作業用UAVとの間で3台の中継用UAVによりホースを保持する本発明の第3の実施例を概略的に示した図である。
【
図4】
図4は、プラントと作業用UAVとの間で1台の中継用装置と2台の中継用UAVによりホースを保持する本発明の第4の実施例を概略的に示した図である。
【
図5】
図5は、一実施例における作業用UAV及びホースの先端部を概略的に示した図である。
【
図6】
図6は、本発明の作業方法を制御する制御方法の一実施例を概略的に示した図である。
【
図7】
図7は、作業用UAVによる対象物に対する作業状況を示す概略的な側面図である。
【
図8】
図8は、対象物の施工面に吹き付けられた材料の状態を概略的に示した図である。
【
図9】
図9は、作業中に作業用装置に加わる力を説明するための図である。
【
図10】
図10は、作業中に作業用装置に加わる力と作業用装置の姿勢との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施例を示した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の作業方法の第1の実施例を概略的に示した図である。本発明は、プラント1から材料をホース2により圧送して、対象物9(建物等の施工対象物及び法面等の施工対象地を含む)に対して材料を吹付、散布、又は噴射により射出する作業方法に関する。作業用UAV6は、ホース先端部の射出装置を保持する。射出装置はノズル5を含む。なお「射出」は吹付、散布、噴射の上位概念として用いる。「散布」には塗布も含まれる。「材料」は、液体、固体、液体と固体の混合物等、作業内容に応じて圧送される物を意味する。
【0017】
本発明の一実施形態は、材料を射出する作業中、ホース2の先端部を作業用UAV6により保持すると共に、プラント1と作業用UAV6との間において、少なくとも1つの中継用UAV4aによりホース2の少なくとも1つの箇所を保持する方法である。
図1の実施例は、本発明の最も単純な形態の一つである。本実施例では、プラント1と作業用UAV6との間で1台の中継用UAV4aによりホース2を保持している。本実施例の中継用UAV4aは、プラント1と作業用UAV6との間においてホース2を保持する唯一の中継用UAVでありかつ作業用UAV6の直前に位置する中継用UAVである。
【0018】
プラント1は、一般には地上に設置される。プラント1は、例えば、吹付、散布、又は噴射する材料を調製するための計量器やミキサ等の適宜の装置、調製した材料を高圧で圧送するためのポンプや吹付機等の圧送装置、これらの装置を駆動するための発動発電機、圧送装置に必要な空気圧縮機等から構成される。また、例えば消火のために水や消化剤を噴射する場合、プラント1は、水等を圧送するポンプやポンプ車、あるいは消火栓設備などである。
【0019】
さらに、プラント1は、可搬式の車両等に車載したり、クレーン等や大型UAVを用いて空中に設置したりする場合もある。対象物9が例えば法面の場合、プラント1を地上又は法面に設置された架台などのステージ上に設置する場合もある。
【0020】
プラント1の圧送装置には、材料を圧送するためのホース2の基端部が接続されている。ホース2は、中継用UAV4aを介して、作業用UAV6の保持するホース先端部のノズル5まで延在している。
【0021】
ホース2は、吹付作業や散布作業の場合は従来の吹付施工で用いられている耐圧ゴム製のデリバリーホース等を、噴射作業の場合は一般的な消防用ホース等の既往のホース等を利用できる。本発明では空中でホース2を保持する必要があることから、できる限り軽量のホースを用いることが望ましい。また図示しないが、電源用ケーブルをホース2に加えて使用する場合もある。また、乾式吹付の場合はノズル先端部で水を合流させるために用水圧送ホースなどをホース2に加えて使用する場合がある。
【0022】
図2は、本発明の作業方法の第2の実施例を概略的に示した図である。本発明の別の実施形態は、材料を射出する作業中、ホース2の先端部を作業用UAV6により保持すると共に、プラント1と作業用UAV6との間において、少なくとも1つの中継用装置3aによりホース2の少なくとも1つの箇所を保持する方法である。
図2の実施例も、本発明の最も単純な形態の一つである。本実施例では、プラント1と作業用UAV6との間で1台の中継用装置3aによりホースを保持している。本実施例の中継用装置3aは、プラント1と作業用UAV6との間においてホース2を保持する唯一の中継用装置でありかつ作業用UAV6の直前に位置する中継用装置である。
【0023】
中継用装置3aは、自走式クレーン、固定式クレーン、ケーブルクレーン等のクレーンが好ましいが、ホース2を保持できる装置であれば特に問わない。また、中継用装置3aとして自走式クレーンやバックホウなどの建設機械を使用する場合、必ずしもプラント1に近接する場所に設置する必要はなく、法面等の対象物9に近い位置を含めて、各現場の状況により適宜設定することができる。
【0024】
図1及び
図2に示す作業用UAV6、中継用UAV4a、及び、後述する図において符号4bで示す中継用UAVは無人航空機であり、マルチコプター(通称ドローン)が好適である。本発明に用いるUAVは、電気駆動、エンジン駆動などの動力やプロペラの数の違いは問わず、使用条件に応じて適宜選定される。例えば、プラント1から直接ホース2を地上から吊り上げるような場合は、最も重量がかかる最初の中継用UAVに大出力の機種を使用することが望ましい。
【0025】
図1又は
図2に示すように、材料を射出する作業中、作業用UAV6の直前に位置する中継用UAV4a又は中継用装置3aにより保持する箇所におけるホース2の高度Hが、作業用UAV6の飛行高度Fよりも高い状態で材料を射出することが好適である。
図1及び
図2は、一例として、吹付作業を行っている状況を示している。
【0026】
ここで、中継用UAV4a又は中継用装置3aにより保持する箇所におけるホース2の高度Hとは、ホース2が実際に保持されている箇所の高度である。例えばクレーンのフックでホースを吊り下げる場合は、クレーン先端の高度ではなく、クレーンで吊り下げられているホース2の高度である。これは、中継用UAV4aによりホース2を吊り下げる場合も同様である。
図1では中継用UAV4aからワイヤーロープ10を介して、
図2ではクレーン先端からワイヤーロープ10を介してホース2を吊っている。なお、
図1では、中継用UAV4aがワイヤーロープ10でホースを吊っている状況を示しているが、吊り部材はワイヤーロープに限定されるものではなく、その長さも現場の状況等に応じて適宜設定できる(以下の実施例の各中継用UAVについても同じ)。
【0027】
別の実施形態として、ホース2を例えばリフターや中継用UAVの上に設置された治具で持ち上げるようにして支持することもできる。その場合、ホース2の高度Hは、持ち上げられ保持されている箇所におけるホース2の高度である。
【0028】
図3は、本発明の第3の実施例を概略的に示した図である。
図3では、プラント1と作業用UAV6との間で3台の中継用UAV4a、4b、4bによりホースを保持している。
図4は、本発明の第4の実施例を概略的に示した図である。
図4では、プラント1と作業用UAV6との間で1台の中継用装置3bと2台の中継用UAV4a、3bによりホースを保持している。
【0029】
なお、図面では、作業用UAV6の直前に位置する中継用装置又は中継用UAVの符号には"a"を、それ以外の中継用装置又は中継用UAVの符号には"b"を付けている。本発明では、プラント1と作業用UAV6との間に少なくとも1つの中継用装置又は少なくとも1つの中継用UAVが配置されるので、作業用UAV6の直前に位置する1つの中継用装置3a又は1つの中継用UAV4aは、いずれの実施例でも必ず使用される。
【0030】
図3及び
図4に示すように、作業用UAV6の直前に位置するもの以外の中継用装置3b又は中継用UAV4bは、必要に応じて適宜使用される。中継用装置3b又は中継用UAV4bが使用される場合、プラント1と直前に位置する中継用UAV4a又は中継用装置3aとの間において、1つ以上の別の中継用装置3b、1つ以上の別の中継用UAV4b、又は、1つ以上の別の中継用装置3bと1つ以上の別の中継用UAV4bとの組合せにより、ホース2の1つ以上の箇所を保持する。よって、1つ以上の中継用装置3b及び/又は1つ以上の中継用UAV4bの多様な組合せが考えられる。
【0031】
図3及び
図4の実施例においても、材料を射出する作業中、作業用UAV6の直前に位置する中継用UAV4a又は中継用装置3aにより保持する箇所におけるホース2の高度Hが、作業用UAV6の飛行高度Fよりも高い状態で材料を射出することが好適である。
図3及び
図4は、一例として、吹付作業を行っている状況を示している。
【0032】
上述した各実施例のように、本発明では、作業用UAV6の直前に位置する中継用装置3a又は中継用UAV4aによりホース2を保持する高度Hを、作業用UAV6の飛行高度Fよりも高くなるようにして射出作業を行う。これによって、作業用UAV6が負担するホース2の重量と、作業用UAV6がホース2によってその直前に位置する中継用装置3a又は中継用UAV4a側に引っ張られる力とを減殺することができる。この減殺効果は、作業用UAV6とその直前の中継用装置3a又は中継用UAV4aとを連接するホース2が略「し」の字型になるようにすると好適である。
【0033】
これにより、吹付厚さの管理が必要な吹付作業の場合、吹付厚さを正確に制御することができる。また、吹付材料が一時ホース2内で閉塞を起こして解放された際にホース2の搖動や大きな反力が生じた場合でも、作業用UAV6を速やかに立て直すことができる。
【0034】
さらに、この作業方法を採用することにより、作業用UAV6として、中継用UAV4aよりも小さな出力のUAVを使用することが可能になる。その結果、吹付作業の場合、作業用UAV6のプロペラ回転による吹き下ろし風によって吹付中の吹付材料が飛散してしまうことによる吹付材料ロスや、吹き付けした材料の剥離などの問題も抑制できる。
【0035】
図5は、一実施例における作業用UAV6及びホース2の先端部を概略的に示した図である。ホース2の先端部は、作業用UAV6の本体下部に取り付けられる管路7を有する。管路の材質は特に問わないが、剛体が好適である。管路7の先端にはノズル5がある。管路7とノズル5は、射出装置13を構成する。ホース2を圧送されてきた材料は、スイベル機構を具備する接続部11及び/又は自在変形機構を具備する接続部8を介して、作業用UAV6と一体化されている管路7に送られる。これにより、ホース2を圧送されてきた材料が、ノズル5の先端から射出される。吹付作業の場合は吹付材料が吐出される。図示の管路7は一例であり、形状はこれに限られない。
【0036】
1本のホース2は、先端部だけでなくホース途中においても、スイベル機構を具備する接続部11及び/又は自在変形機構を具備する接続部8を、1つ以上の箇所に適宜設けられていることが好ましい。
【0037】
スイベル機構を具備する接続部(以下「スイベル接続部」と称する)11は、スイベル接続部11の軸方向の一方の接続点に接続されたホース部分と他方の接続点に接続されたホース部分とがスイベル接続部11の軸周りに互いに自由に回転できるようにした接続部である。スイベル接続部11は、ホース2に捻じれや捩れが生じやすい箇所に適宜設置できる。具体的には、スイベル接続部11は、例えば、ホース2が地上から空中へ立ち上がる箇所をはじめとするホース2の屈曲部、複数の中継用装置3a、3bや中継用UAV4a、4b間に連接するホース2の途中などに設けるのが好適である。
【0038】
本発明で使用するホース2は、材質、管径、可撓性の有無などは特に問わず、作業方法や立地条件、又は吹付、散布、噴射の射出方法の違いなどにより適宜選定される。特に吹付に類する施工を行う場合は、耐圧性と耐摩耗性に優れたものである必要があるため、一般には厚手の耐圧ゴム製ホースやポリホースが用いられる。こうしたホースは比較的硬質であることから、特に巻かれている状態のホース2を保持させて持ち上げた際などにホース2に捻じれや捩れを生じる。また、中継用装置3a、3bや中継用UAV4a、4bがホース2を吊り下げるなどして移動したりする際にも捻じれや捩れが生じやすい。特に、作業用UAV6に強い回転力が働くと、機体の制御が困難になる問題がある。こうした問題は、材料を散布、噴射して作業する際にホース2に圧力をかけた場合にも同様に発生する。
【0039】
このような場合は、ホース2を、スイベル接続部8を介して作業用UAV6に接続することにより、ホース2に捻じれや捩れが生じた場合でもスイベル機構によりその回転力が解放されるので、作業用UAV6に悪影響が及ぶことを回避できる。
【0040】
自在変形機構を具備する接続部(以下「自在変形接続部」と称する)8は、自在変形接続部8の長手方向の一方の接続点に接続されたホース部分と他方の接続点に接続されたホース部分とが互いになす角度を自由に変化できるようにした接続部である。自在変形接続部8は、
図5に例示するように、フレキシブルに変形自在の管状部材である。
【0041】
作業用UAV6が着陸する際には、
図5の実線のホース2に示すように、直前の中継用装置又は中継用UAVが作業用UAV6より高い高度を維持しながら着陸させれば大きな問題はない。しかしながら、直前の中継用装置又は中継用UAVが作業用UAV6より低い高度に位置するような場合には、着陸する際にホース2は、
図5に点線で示したホース2’のような形になる。比較的硬質なホース2は、着陸時に十分な柔軟性を確保することが難しいため、作業用UAV6が正常な姿勢で着陸できない問題が生じる。この問題は、地上からある程度の高さを確保した着陸用ステージなどに作業用UAV6を着陸させるようにすれば、ホース2が作業用UAV6より下方に垂れる状態になるので解消できるが、やむを得ない事情などにより地上に直接着陸させる必要がある場合には大きな問題となる。
【0042】
このような場合、ホース2を、自在変形接続部8を介して作業用UAV6に接続することにより、ホース2をホース自体の柔軟性の限度を超えて曲げられるようになるので、ホース2の柔軟性が不足して作業用UAV6の着陸が困難となることを回避できる。同様の問題は、中継用UAVを使用する際にも生じるが、
図1~
図4に示したようにある程度の長さを有するワイヤーロープ10等の吊り部材を使用することにより悪影響を回避できる。吊り部材は、ワイヤーロープをはじめとする所定の強度を有するものであれば種類は問わない。
【0043】
自在変形接続部8は、自在継手を複数連接した構造や蛇腹構造とすることによって鋭角に曲がることなく追従性を持ったしなやかな状態で曲げることができるので好適である。また、自在変形接続部8とスイベル接続部11の機構を併せもつ接続部とすることもできる。
【0044】
上述した
図1~
図5の実施例では、ノズル5を具備する射出装置13を作業用UAV6が直接保持しているが、別の形態として、作業用UAV6がワイヤーロープ等でノズル付き射出装置13を吊り下げて射出作業を行うこともできる。その場合も、同様の作用効果を奏する。
【0045】
UAVに関する現時点の法規制下では、十分な強度を有する紐等(30m以内)で係留した飛行において、飛行可能な範囲内への第三者の立入管理等の措置を行えば、一部の許可や承認が不要になるとされている。航空局の判断にもよるが、本発明のホース2を十分な強度を有する紐等と捉えて地上に係留点を設置するようにすれば、こうした措置の適用も可能となる。
【0046】
図6は、上述した本発明の作業方法を制御する制御方法の一実施例を概略的に示した図である。上述した作業方法を実行するためには、作業に関係する複数の装置を複雑な操作を伴うことなく自動制御することが必要となる。連携させる複数の装置には、少なくとも作業用UAV6と、その直前の中継用UAV4a(又は、別の実施例では中継用装置3a)と、その他の中継用UAV4bとが含まれる。
【0047】
これらを連動させるために、先ず、操作者の操作対象を作業用UAV6と定める。そして位置制御装置12を設ける。位置制御装置12は、プラント1、中継用UAV4a(又は中継用装置3a)、中継用UAV4b、及び作業用UAV6の各々との間で通信可能な機能を備え、所定のプログラムを導入されたコンピュータにより実施できる。一方、プラント1、中継用UAV4a(又は中継用装置3a)、中継用UAV4b、及び作業用UAV6の各々も、位置制御装置12と通信可能な内蔵制御装置をそれぞれ内蔵されている。
【0048】
位置制御装置12は、中継用UAV4a(又は中継用装置3a)及び中継用UAV4bの各々が、固定されたプラント1と作業用UAV6を両端とする経路の内分点の位置をそれぞれ維持するように、中継用UAV4a(又は中継用装置3a)及び中継用UAV4bの位置を制御する。位置制御装置12が、制御により維持しようとする各装置の位置を「目標位置」と称する。目標位置の決め方の一例は、次の通りである。例えば中継用UAV4a(又は中継用装置3a)の目標位置は、管路7に加わる張力を一定とするために作業用UAV6から一定の水平距離及び高度差を保つように決定する。また例えば中継用UAV4bの目標位置は、中継用UAV4a(又は中継用装置3a)から一定の弛み量を保つように決定する。
【0049】
位置制御装置12による制御フローの一例は以下の通りである。
・工程a:位置制御装置12が、プラント1、中継用UAV4a(又は中継用装置3a)、中継用UAV4b、及び作業用UAV6の各々の現在位置の位置情報を、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)又は地上に設置した測量機器等を用いて取得する。図示の例では、各装置1、4a(又は3a)、4b、6が複数の衛星Sを含むGNSSを利用して現在位置を取得して認識し、その位置情報を位置制御装置12にそれぞれ送信している。
・工程b:位置制御装置12は、上記工程aで取得した位置情報を用いて、中継用UAV4a(又は中継用装置3a)及び中継用UAV4bの各々の目標位置を演算により決定する。
・工程c:位置制御装置12は、決定した中継用UAV4a(又は中継用装置3a)及び中継用UAV4bの各々の目標位置を、当該中継用UAV4a(又は中継用装置3a)及び当該中継用UAV4bの各々の内蔵制御装置にそれぞれ送信する。
【0050】
一方、中継用UAV4a(又は中継用装置3a)及び中継用UAV4bの各々の内蔵制御装置による制御フローの一例は以下の通りである。
・工程d:上記工程cで位置制御装置12が送信した目標位置を受信する。
・工程e:上記工程dで受信した目標位置を基に、当該中継用UAV4a(又は中継用装置3a)及び当該中継用UAV4bの位置を目標位置とするように制御する。
【0051】
好ましくは、位置制御装置12は、目標位置を決定する上記工程bにおいて、作業用UAV6に対する負荷が最小となるように、中継用UAV4a(又は中継用装置3a)及び中継用UAV4bの目標位置を補正して決定する。例えば、UAVの機体が風で煽られた場合や、吹付時の反力等で機体の位置が目標位置からずれてしまった場合に補正を行う。
【0052】
また位置制御装置12は、各装置6、4a(又は3a)、4b同士が、指定した距離から逸脱したとき、又は、各装置6、4a(又は3a)、4bとホース2との接触可能性が生じたときには、操縦者に対して音又は光等で警告を通知したり、自動で各装置6、4a(又は3a)、4bの移動を止めたりすることで危険を回避することができる。
【0053】
図7は、作業用UAV6による対象物9に対する作業状況を示す概略的な側面図である。ここでは、法面に対する吹付施工を例としている。施工を行う上で、吹付圧力を一定にするため、対象物9の施工面との距離dを一定にする必要があるが、これを操作者が目視で操作することは困難である。そのため、
図7のように作業用UAV6の射出方向に前方距離センサー14を取り付け、施工面との距離dを検知する。作業用UAV6に内蔵された内蔵制御装置は、前方距離センサー14により検知された施工面との距離dを一定に保つように作業用UAV6の位置を制御する。これによって、施工面に対する射出強度を一定に保つことが可能となる。また、作業用UAV6を施工面に接近させる必要がある現場での施工面と作業用UAV6との衝突を防ぐことができる。前方距離センサー14は、ステレオカメラ、超音波測距系、レーザー測距系などを用いることできる。
【0054】
図8は、対象物9の施工面に吹き付けられた材料Mの状態を概略的に示した図である。施工にあたり、吹付、散布(塗布を含む)、噴射の量を一定にするために、作業用UAV6を上下左右方向に移動させる必要がある。特に、厚みのある材料を吹付、散布、噴射する場合は、射出した材料Mの厚みが一定になるように施工しなければならない。このため、作業用UAV6の機体に取り付けた前方距離センサー14としてステレオカメラやLiDAR(ライダー)などの3次元計測機器を用いることで、適正な射出量を算出することが可能になる。これにより。自動で吹き付けされ積層されていく材料Mの厚みが一定になるように作業用UAV6の位置を調整して、射出の自動化が可能となる。また、射出後の材料Mの積層状態を前方距離センサー14で検知して厚みを計測することにより、
図8のように次の場所に移動してよいかを判断できる。
【0055】
図9は、作業中に作業用装置15に加わる力を説明するための図である。
図9では、説明のために、作業用装置15をその水平姿勢状態で示している。作業用装置15は、作業用UAV6と、作業用UAV6に取り付けられ材料を射出する射出装置13とを備えている。吹付や噴射の作業では強い射出圧力(矢印31)が求められる場合が多く、その反力(矢印32)が大きくなる。その結果、回転モーメント(矢印33)が発生することによって作業用装置15が不安定になる。その不安定性を解消するために、作業用UAV6に対して射出装置13が適切な位置に取り付けられている。
【0056】
好適例として、作業用UAV6に取り付けられた射出装置13は、作業用UAV6の水平姿勢状態において作業用UAV6の機体の重心Gよりも所定の距離rだけ鉛直下方の位置にて水平方向に延在している。機体の重心Gは、射出装置13を保持していないときのUAVの重心である。さらに、射出装置13の延在方向(前後方向)において、射出装置13の前端の射出口13aは、作業用UAV6の機体の重心Gよりも前方に位置している。ここで、射出装置13とはホース先端部のことであり、管路7及びノズル5を含む。
【0057】
図10は、作業中に作業用装置15に加わる力と作業中の姿勢との関係を示した図である。
図9で説明したように、作業用装置15には射出時に発生する反力による回転モーメント(矢印33)が発生する。これにより、
図10に示すように作業用UAV6の姿勢が傾斜状態に変わることで、射出圧力の前方成分として前方への推進力(矢印34)が生じる。一方、噴射の反力(矢印32)による機体の重心Gの位置での作用は、後方成分(矢印35)と揚力成分(矢印36)に分解される。後方成分(矢印35)は、機体の姿勢変化による前方推進力(矢印34)と相殺される。また、反力による揚力成分(矢印36)は、機体にかかる負荷を軽減することになり、噴射反力に対する電力負荷を低減させる。
【符号の説明】
【0058】
1 プラント
2 ホース
3a、3b 中継用装置
4a、4b 中継用UAV
5 ノズル
6 作業用UAV
7 管路
8 自在変形接続部
9 施工対象物
10 ワイヤーロープ
11 スイベル接続部
12 位置制御装置
13 射出装置
13a 射出口
14 前方距離センサー
15 作業用装置
H ホース保持位置(直前の中継用UAV)
F 飛行高度(作業用UAV)
G 重心