(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014440
(43)【公開日】2023-01-30
(54)【発明の名称】エコノマイザ
(51)【国際特許分類】
F22D 1/02 20060101AFI20230123BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
F22D1/02
F23J15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022175862
(22)【出願日】2022-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】516015462
【氏名又は名称】有限会社ジャパンガスセパレーション
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 晴生
【テーマコード(参考)】
3K070
【Fターム(参考)】
3K070DA04
3K070DA48
3K070DA73
3K070DA77
3K070DA87
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ワイヤメツシュ等メデアを使用することなく単に流体的にミスト分離を行う。
【解決手段】排ガス1は熱交換器3で冷却されて発生したミストは大径ミスト5となり自然落下してドレンとなり排出され、その後分流筒9に通気することでミストの終末速度が下がり粒径の大きな大径ミスト10が流体的に分離され系外に排出される。その後は煙突出口迄の流路断面積を縮小して排ガス1の流速を分離筒9で分離時の2倍以上とすることでミストの再発生に関して流体的にエコノマイザ内の腐食問題を解決する。排ガス15は煙道・煙突の表面温度の低下でドレンが発生する場合は最少量の加熱空気19を吹き込みドレンによる腐食を軽減する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ等の燃焼ガスをその熱交換器で給水を加熱してエネルギー回収する凝縮形熱交換器と、その下流の排ガス通路に支持板を設けて、その中に複数の中空の円筒または正多角形の筒を設けて流れのレイノズル数が10~500の層流なるように、且つ垂直となるように下向きに設置することで出口の流れが上記凝縮形熱交換器によって発生したミストの終末速度より下げてミストを流体的に分離することを特徴とするエコノマイザ。
【請求項2】
請求項1によりミスト分離後は排ガスの流れをミストが再度析出しないように煙突出口迄の排ガスの流速を請求項1に於ける分離時の流速より2倍以上に高速とすることを特徴とする請求項1記載のエコノマイザ。
【請求項3】
燃焼ガスに導搬され熱交換器部の伝熱部やガス通路部に付着した煤やドレンを排出するために洗浄水または蒸気をエコノマイザの内部に噴射する洗浄部およびドレンと接する部分は耐酸性金属または耐熱耐酸性樹脂の使用を特徴とする請求項1、請求項2記載のエコノマイザ。
【請求項4】
前記の請求項1及び請求項2によってもミストの発生防止が困難な運転条件下ではボイラ、付帯設備等の放熱によって加熱され最少量の加熱空気をエコマイザの排ガス出口に吹込み煙道、煙突のミスト付着による腐食軽減が図れることを特徴とする第1項及至第3項に記載可能なエコノマイザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラ等の燃焼ガスを給水を加熱し熱回収するエコノマイザに関する。
【背景技術】
【0002】
小型貫流ボイラ等の出口に潜熱回収型のエコノマイザを設置することで熱回収の利点が高いが、その際に適切なミスト分離が採用されておらず下流に於いてミストの再発生による腐食の問題が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来ボイラ等の燃焼排ガスは煤を含むのでエコノマイザでは潜熱回収すると発生したミストは落下してドレンとなり煤が混じり泥状の混合物を形成してするので、例えば比較的簡単な構造のミスト分離法の一つであるワイヤメシュ法でミストを分離すると煤とドレンの泥状の混合物が分離メディアの網目を塞ぎ燃焼装置の燃焼不良や燃焼事故を起こす恐れあるとしてミスト分離で分離効率の高い方法は施工されておらず下流の流速の低下部分や温度低下等で残留のミストが再発生して煙道、煙突の燃焼ガス面にドレンとして付着して排ガス中の硫黄分がドレン水に溶け込み亜硫酸ガスとなり、燃焼状態によって異なるが120~140℃で水と結合して硫酸となり付着面を腐食することが問題となっている。一方、特開2014-085053ではエコノマイザの伝熱管で自然発生的したミストは何ら効率良く分離・回収されずに落下した煤と共に系外に排出するとされており効率的なミスト分離は行はれていない。然しながら、ボイラ等の平均負荷は40~50%と報じられており日常運転で負荷が下がり排ガス温度の低下でエコノマイ本体や下流の煙道、煙突の排ガス通路の腐食が問題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、従来の潜熱形回収熱交換器機能だけの単機能のエコノマザに対して発生したミストを煤による閉塞の恐れがある既存技術のワイヤメツシュ等メデアを使用することなく単に流体的にミスト分離行うことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は請求項1でミストの粒径の違いで流体的にミスト分離するが、排より小径のミストは含まれおり排ガスの速度を請求項1に於ける分離時比べて2倍以上とすることでミストを浮遊させて再度落下してドレン化しないようにすることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は燃焼の導搬の煤がドレンに混ざり酸性の泥状に付着するので耐酸性の金属製または樹脂を使用して洗浄水または蒸気を噴霧して傾斜した最低部から導管、弁を経由して系外へ排出することを設けていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、ボイラ等の運転が燃料、負荷の変動の他に大気温度の低下で下流の煙道、煙突の表面温度が低下してミストが再発生する場合はボイラ本体や付帯設備等近傍の放熱で加熱された乾燥空気をエコノマイザ出口に最少量注入してミスト発生の弊害を低減することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は産業用ボイラのエコノマイザの潜熱回収で省エネ効果がより容易となりドレンによる腐食が削減できる。
図1のX-X断面の下部分は単独でミスト分離器と利用可能で既設のボイラのエコノマイザのドレン分離器の他に湯沸器のドレン分離にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1はエコノマイザ本体内部の断面図を示す。
【
図2】
図2はドレン分離の基本のなる同寸法の分離筒7が密接して取付け板6に垂直に取り付けを示す。
【
図3】
図3は排ガス温度40,80,120℃に於けるミストの径と終末速度の計算結果を示す。排ガスのガス密度、粘度は各燃焼状態によってこれらの物性は異なるので一概には規定出来ないが排ガス温度が変化しても終末速度は大きくは変化せず、主に負荷による排ガス流量によって終末速度変化する。これは負荷の低下で排ガスの温度、流量が低下して終末速度が下がりミスト分離性能が上昇してボイラ等の運転は容易となる。
【発明を実地するための形態】
【0011】
以下、本発明の実地形態について
図1を用いて説明する。ただし、本発明は上流のボイラ本体に於ける燃焼方法、燃料の多様化の影響を受けるので多くの異なる実地が可能で以下に示す実地形態に例示にのみ限定されるわけではない。
図1は実地形態によるエコノマイザ(以下単にエコノマイザという。)の断面図で構成を示す。エコノマイザは熱交換器部A、ドレン分離部Bおよび乾燥空気供給部Cから構成され排ガス中の水分濃度はミストを2段階;A,B順で低下する。
【0012】
図1に示す乱流で供給された排ガス(入口)1は熱交換器3の給水4で冷却されて、従来形大径ミスト5は傾斜板6上に落下し最低部に設けられた導管1=7、弁2=8から排出される。更に排ガスは複数個の導寸法の分流筒9で筒の内径と基数で分割されてレイノルズ数が10~500の層流となって大径ミスト10は浮遊するエネルギー不足で次式の終末速度Vt以下となると底板12上に落下して液体のドレンとなり流体的に分離されて導管2=13,弁2=14から排出される。
Vt=Dp*(4/225g
2(ρw -ρf)
2/(μ*ρf))
1/3
分流筒9内の流れが完全なレイノルズ数10~500となるように
図2の分流筒7は長さLを内径Φdiの3倍以上とすることが望ましい。使用記号は以下の通リとする。
g=重力の加速度、ρw=水の密度、ρf=排ガスの密度、Dp=ミストの粒径
μ=排ガスの粘度、
【0013】
次にガス温度40、80、120℃に於ける排ガス、液体の水の物性の計算値を示し上記の終末速度の計算
図3に反映させた。
【0014】
排ガス組成は燃料、空気比によって変わるが計算には以下のような成分とした。
窒素:87, 二酸化炭素:11 酸素:2 (単位:v.%)
排ガスの温度と終末速度の計算結果を
図3に示す。計算結果から排ガスの温度変化は終末速度に対する影響は小さく、負荷変動による排ガス流量が主に終末速度に影響することが判明した。上記の事から最大負荷時の排ガス1の流量を基準に通気筒9の通気後のB部の排ガス速度Vt以下となるように計画すれば粒径サイズで大径ミスト10と小径ミスト11を分離されて負荷が下がれば排ガス量が減り流速下がり、より小径のミストが分離されドレンの回収率が上昇する。
【0015】
図2に本発明によるミストのミスト分離に部分の分流筒9を示す。傾斜板6に円筒又は他正多角径の円筒形の(3)を取り付ける。筒中の流れを100%層流とするために内径Φdに対して長さLは最短3倍以上とするが望ましい。
【0016】
エコノマイザ本体部分で排ガス1,15、ミストやドレンと接する洗浄器2以下至B,C間の排ガスに接する部材は適切な耐酸性金属又は耐熱耐酸樹脂を使用する。
【0017】
さらに排ガス1は前述の傾斜板6に下向き且つ垂直方向に取り付けられた分離筒9を通過することで計画された粒径より大きな大径ミスト10は前述計画値以上として出口B部が終末速度以下に計画するミストは落下して傾斜した底板12の上にドレンとして落下して最低部分に設けられた導管2=13を経由して弁2=14から煤と共に系外に排出される。分離後はC部以降の下流の排ガスの流速をB部の2倍以上とすることでエコノマイザ内は小径ミスト11の落下を流体的に防止できる。
【0018】
C部以下の排ガスの通路はで分離時の流速の2倍以上することで流体的にミスト付着に関しては余裕を有するが、気温低下等外的要因で煙道、煙突のガス側の表面温度の低下でミストがドレン化して付着による腐食問題が生じる場合は温度計16の値を参考にボイラ本体および付帯設備の放熱による加熱空気19を送気ファン18で調量弁17経由をして最少量を吸込みC部に吹込みミストによる腐食を軽減する。前項0014の終末速度Vtの選定は下流の煙道、煙突に於ける腐食対策を含めて選択する必要がある。
【符号の説明】
【0019】
1 排ガス(入口)
2 洗浄器
3 熱交換器
4 給水
5 従来形大径ミスト
6 傾斜板
7 導管1
8 弁1
9 分流筒
10 大径ミスト
11 小径ミスト
12 底板
13 導管2
14 弁2
15 排ガス(出口)
16 温度計
17 調量弁
18 送気ファン
19 加熱空気