(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144414
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】自律掃除ロボット
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20231003BHJP
A47L 9/06 20060101ALI20231003BHJP
A47L 9/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A47L9/28 E
A47L9/06 Z
A47L9/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051372
(22)【出願日】2022-03-28
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】照本 進
(72)【発明者】
【氏名】白井 信人
【テーマコード(参考)】
3B006
3B057
3B061
【Fターム(参考)】
3B006KA01
3B057DE00
3B061AA05
3B061AA18
(57)【要約】
【課題】境界線近傍の未通過領域が少ない掃除を行うことができる自律掃除ロボットを提供する。
【解決手段】
前端の幅方向に設けられた横長の吸引ノズル20と、前後左右に自律走行可能に制御する制御手段60とを有する自律掃除ロボット1であって、制御手段60は自律掃除ロボット1を境界線SBに所定距離離間して近接するまで真横方向に左右移動させ、次に自律掃除ロボット1を境界線SBに沿って移動させる境界際掃除運転を行うことができる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端の幅方向に設けられた横長の吸引ノズルと、前後左右に自律走行可能に制御する制御手段とを有する自律掃除ロボットであって、
前記制御手段は、前記自律掃除ロボットを境界線に所定距離離間して近接するまで真横方向に左右移動させ、次に前記自律掃除ロボットを該境界線に沿って移動させる境界際掃除運転を行うことができることを特徴とする自律掃除ロボット。
【請求項2】
前記吸引ノズルは、その横幅が走行台車の前面の横幅より短寸であり、前記走行台車の前面の左右方向のいずれか一方側に偏在して固定されていることを特徴とする請求項1に記載の自律掃除ロボット。
【請求項3】
前記自律掃除ロボットは、走行用モータによりそれぞれ全方向に駆動可能である複数のメカナムホイール車輪を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の自律掃除ロボット。
【請求項4】
前記制御手段は、前記自律掃除ロボットを前記境界線に向けて前進移動させ、該境界線と所定距離近づいた時点で前記吸引ノズルの長手方向と前記境界線とが直交するように回転移動させ、次に前記境界際掃除運転を開始させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の自律掃除ロボット。
【請求項5】
前記自律掃除ロボットは、物体との距離を測る距離センサを備え、
前記制御手段は、前記境界際掃除運転と、前記掃除区画中心部を掃除する通常掃除運転と、を組み合わせた掃除運転を行い、
前記制御手段では、前記境界際掃除運転時において前記境界線に沿う移動時は、前記通常掃除運転時よりも前記境界線に近い接近可能距離で運転を制御することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の自律掃除ロボット。
【請求項6】
前記制御手段は、前記境界際掃除運転時に前記自律掃除ロボットを前記境界線に向けた前記真横方向への左右移動により前記接近可能距離まで移動させることを特徴とする請求項5に記載の自律掃除ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行可能な自律掃除ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス、商業施設、宿泊施設等において、衛生管理の一環として掃除機を用いて床面に落ちている塵埃を捕集する掃除が行われている。近年では、人件費高騰、人材不足等の要因により、作業者に掛かる負担を軽減するべく、塵埃を吸引させながら床面を自律走行させることを可能とした自律掃除ロボットに対する需要が高まってきている。
【0003】
このような掃除ロボットとして、駆動車輪を備え、内蔵されるMPU等の制御手段が超音波センサやレーザセンサ等の非接触センサを利用して壁、柱、人等の障害物までの距離を計測し、走行ルートの変更や障害物の回避を行うことにより、自律走行させることを可能としたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の自律掃除ロボットは、前方に幅広の吸引ノズルを備え、左右に駆動車輪を備えるとともに、制御手段と距離センサ等を有している。そして、これら左右の駆動車輪は別々の走行用モータによってそれぞれ駆動が制御されるようになっており、これら左右の駆動車輪の回転速度及び回転方向を調整することで、前進後退と左右旋回が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-49592号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
掃除ロボットは、その多くが壁際以外の室内の中心部を掃除する通常掃除運転と、壁際に沿ってのみ掃除を行う壁際掃除運転とを組み合わせた運転を行うことで、掃除のやり残しを防いでいる。特許文献1の自律掃除ロボットにあっては、壁際掃除運転を始めるにあたって、左右旋回をしながら壁際に車体が平行となるよう徐々に接近移動する態様となるが、この場合、旋回移動による走行台車の軌道の外径側に吸引ノズルの未通過領域、言い換えれば掃除区画における掃除のやり残し領域ができるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、境界線近傍の未通過領域が少ない掃除を行うことができる自律掃除ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の自律掃除ロボットは、
前端の幅方向に設けられた横長の吸引ノズルと、前後左右に自律走行可能に制御する制御手段とを有する自律掃除ロボットであって、
前記制御手段は、前記自律掃除ロボットを境界線に所定距離離間して近接するまで真横方向に左右移動させ、次に前記自律掃除ロボットを該境界線に沿って移動させる境界際掃除運転を行うことができることを特徴としている。
この特徴によれば、自律掃除ロボットを掃除区画の境界線に真横方向に左右移動させることで、自律掃除ロボットの旋回移動に伴い外径側に生じる境界線近傍の未通過領域が少ない掃除運転が可能となる。
【0009】
前記吸引ノズルは、その横幅が前記走行台車の前面の横幅より短寸であり、前記走行台車の前面の左右方向のいずれか一方側に偏在して固定されていることを特徴としている。
この特徴によれば、吸引ノズルを大型化することなく、境界線の近傍まで吸引ノズルを接近させて掃除することができる。
【0010】
前記自律掃除ロボットは、走行用モータによりそれぞれ全方向に駆動可能である複数のメカナムホイール車輪を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、走行用モータによりメカナムホイール車輪を駆動・制御していることから、自律掃除ロボットの前進移動から真横方向への左右移動への方向転換時において吸引ノズルの未通過領域がなく短時間で連続的に掃除が可能となる。
【0011】
前記制御手段は、前記自律掃除ロボットを前記境界線に向けて前進移動させ、該境界線と所定距離近づいた時点で前記吸引ノズルの長手方向と前記境界線とが直交するように回転移動させ、次に前記境界際掃除運転を開始させることを特徴としている。
この特徴によれば、真横方向の左右移動に比べて前進移動の推力が大きいメカナムホイール車輪を用いているため、境界線と所定距離近づくまで前進移動を行うことで、迅速に境界線まで自律掃除ロボットを近接させることができる。
【0012】
前記自律掃除ロボットは、物体との距離を測る距離センサを備え、
前記制御手段は、前記境界際掃除運転と、前記掃除区画中心部を掃除する通常掃除運転と、を組み合わせた掃除運転を行い、
前記制御手段では、前記境界際掃除運転時において前記境界線に沿う移動時は、前記通常掃除運転時よりも前記境界線に近い接近可能距離で運転を制御することを特徴としている。
この特徴によれば、通常掃除運転時には衝突の危険を回避するために必要な接近可能距離で運転され、境界際掃除運転時には境界線に可能な限り近接して運転することで、未通過領域をなくす掃除運転が可能となる。
【0013】
前記制御手段は、前記境界際掃除運転時に前記自律掃除ロボットを前記境界線に向けた前記真横方向への左右移動により前記接近可能距離まで移動させることを特徴としている。
この特徴によれば、境界線に対して迅速に自律掃除ロボットを平行かつ近接した状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例における自律掃除ロボットを示す斜視図である。
【
図5】自律掃除ロボットの電気系統を示す概略図である。
【
図6】自律掃除ロボットの車輪の構造を示す斜視図である。
【
図7】自律掃除ロボットの吸引ノズルの構造を示す下面図である。
【
図8】自律掃除ロボットの前進移動を示す図である。
【
図9】自律掃除ロボットの境界際掃除運転における回転移動を示す図である。
【
図10】自律掃除ロボットの境界際掃除運転における真横方向への左右移動を示す図である。
【
図11】自律掃除ロボットの境界際掃除運転における前進移動を示す図である。
【
図12】自律掃除ロボットの境界際掃除運転における角部に向かう前進移動を示す図である。
【
図13】角部での境界際掃除運転における自律掃除ロボットの真横方向への左右移動を示す図である。
【
図14】角部での境界際掃除運転における自律掃除ロボットの後進移動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る自律掃除ロボットを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例に係る自律掃除ロボットにつき、
図1から
図14を参照して説明する。以下、
図1の紙面左下側を自律掃除ロボットの正面側(前方側)として説明する。
【0017】
自律掃除ロボットは、オフィス、商業施設、宿泊施設等において、人の手を借りずに床面を自律走行しながら床面に落ちている塵埃を吸引・捕集することにより掃除を行うものである。
【0018】
図1~
図4に示されるように、自律掃除ロボット(以下、「掃除ロボット」という。)1は、前方下部に吸引ノズル20が取り付けられた走行台車10と、走行台車10の後方上部に載置された掃除機100と、から主に構成されている。尚、本実施例では、掃除機100は、下部に図示しない旋回キャスタを有し商用電源にて動作する業務用掃除機であり、掃除ロボット1の内部に配設されたノズルホース120により吸引ノズル20と接続されている。また、本実施例では、吸引ノズル20は、走行台車10よりも左右方向の幅(以下、単に「幅」と記載する。)が小さく、右側に偏らせて配置されているが、吸引ノズル20の幅や左右位置は自由に構成されてよい。
【0019】
走行台車10は、台車本体11の前方側部に設けられる左右一対の車輪30R,30Lおよび台車本体11の後方側部に設けられる左右一対の車輪40R,40Lと、これらの車輪30R,30L,40R,40Lと個別に接続される4つの走行用モータ50(
図5参照)と、走行用モータ50等に電力を供給可能な3本の走行用バッテリー70(
図3参照)と、制御装置60(制御手段,
図5参照)と、から主に構成されている。また、走行台車10は、走行用バッテリー70とは独立して、掃除機100にインバータ72(
図5参照)を介して電力を供給可能な4本の吸引用バッテリー71(
図3参照)を積載している。尚、3本の走行用バッテリー70および4本の吸引用バッテリー71は、いずれも同一規格であるため、互いに互換・兼用することができる。
【0020】
また、走行台車10は、走行台車10に載置された掃除機100や吸引用バッテリー71等を覆う上部外装80と、台車本体11や走行用バッテリー70等を覆う下部外装90を備えている。尚、上部外装80と下部外装90との間に形成される隙間から台車本体11の前後に設けられるセンサ61,61(
図2および
図3参照)がセンシング可能となっている。本実施例において、センサ61,61は、レーザセンサ、超音波センサ等の非接触式センサにより構成されている。
【0021】
上部外装80は、主に前部外装80Fと、後部外装80Bと、左右の側部外装80R,80Lとに四分割されている。上部外装80には掃除機100本体の外縁に沿う形状の開口81と、ノズルホース120を挿通可能なホース開口82が形成されている。
【0022】
図5に示されるように、制御装置60は、センサ61,61(
図2も参照)からの距離情報および位置情報や4つの走行用モータ50に接続される図示しないロータリエンコーダからの回転数等の情報等に基づいて、走行台車10の走行制御を行うことができる。具体的には、制御装置60は、4つの走行用モータ50に対する印加電圧の大きさおよび入力方向を個別に切り替えることにより、車輪30R,30L,40R,40Lの回転速度および回転方向を個別に制御することができる。尚、
図5では、太実線を電力供給線、点線を信号供給線として図示している。
【0023】
また、
図6に示されるように、車輪30L,40Lは、車輪外周上において異なる方向に45度傾斜する複数のローラ31L,41Lが設けられた所謂メカナムホイールであり、回転、旋回、前後直進、左右直進のいずれも行うことができる。尚、説明の便宜上、詳細な図示を省略するが、車輪30Rは、車輪40Lと同じ方向に45度傾斜する複数のローラ31Rが設けられたメカナムホイールであり、車輪40Rは、車輪30Lと同じ方向に45度傾斜する複数のローラ41Rが設けられたメカナムホイールである。言い換えれば、車輪30L,30Rは、走行台車10を前方側から見た際にローラ31L,31Rがハの字となるように配置され、車輪40L,40Rは、走行台車10を後方側から見た際にローラ41L,41Rがハの字となるように配置されている。
【0024】
これによれば、掃除ロボット1は、制御装置60により個別に制御される走行用モータ50による車輪30R,30L,40R,40Lの駆動と、床面に接触しているローラ31L,31R,41L,41Rの転動とを組み合わせて、前後左右と共に全方向へスムーズに移動可能となっている。
【0025】
図7に示されるように、吸引ノズル20は、吸引口21と、左右一対の車輪22,22と、を備えている。車輪22,22は、車輪外周上に沿って複数のローラ23が設けられた所謂オムニホイールであり、吸引ノズル20に内蔵される図示しない駆動モータにより前後方向に駆動可能となっている。尚、吸引ノズル20は、吸引口21に図示しない駆動モータ等により駆動可能な回転ブラシが設けられていてもよい。
【0026】
これによれば、吸引ノズル20は、図示しない駆動モータによる車輪22,22の駆動と、床面に接触しているローラ23の転動とを組み合わせて、掃除ロボット1の全方向への移動、特に後述する掃除ロボット1の左右移動や旋回・回転移動による吸引ノズル20と床面との抵抗を低減することができる。
【0027】
尚、後述する掃除ロボット1の前進移動や後進移動において、車輪30R,30L,40R,40Lの駆動による走行台車10の進行速度と、車輪22,22の駆動による吸引ノズル20の進行速度は、略同一速度に制御されることにより走行台車10の走行を邪魔しないことが好ましい。また、制御装置60は、車輪30R,30L,40R,40Lの駆動に合わせて、車輪22,22の駆動を協調制御してもよい。
【0028】
次いで、本実施例の掃除ロボット1による掃除動作、について説明する。掃除ロボット1の制御装置60は、例えば室内空間である掃除区画Sのマップデータを有し、掃除区画Sにおける例えば壁である境界線SBより内側、すなわち掃除区画S(室内)の中心部を掃除する通常掃除運転と、境界線SB(壁際)に沿ってのみ掃除を行う境界際掃除運転とを組み合わせた運転を行う。
【0029】
ここでは、特に境界際掃除運転について説明する。尚、
図11~
図14においては、掃除区画Sにおける掃除ロボット1の吸引口21の通過領域をドットにより示している。
【0030】
先ず、制御装置60は掃除区画Sのマップデータと、通常掃除運転により掃除が完了した領域とを比較して、通常掃除運転により掃除するべき領域の掃除が完了したと判断した場合、その時点から境界際掃除運転への移行を開始する。境界際掃除運転を開始するにあたり、制御装置60は掃除ロボット1の現在位置から境界際掃除運転を開始する地点まで掃除ロボット1を移動させる。
【0031】
図8に示されるように、まず制御装置60は掃除ロボット1の現在位置から直線距離で最も近い境界線SBに向けて掃除ロボット1を前進移動させる。詳しくは、制御装置60は、車輪30R,30L,40R,40Lを全て前方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を、位置P0から境界線SBと所定距離で近接する位置P1まで前進移動させる。この前進移動において制御装置60は、後述する回転移動における台車本体11の前方端の軌跡に境界線SBが重ならないように、台車本体11の前端と境界線SBが所定距離離間した位置まで移動させる。
【0032】
位置P0から境界線SBと所定距離で近接する位置P1までの移動が完了すると、制御装置60は、境界際掃除運転を開始する。
図9に示されるように、境界際掃除運転では、制御装置60は車輪30R,40Rを前方へ駆動させ、かつ車輪30L,40Lを後方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を、台車本体11の車輪30R,30Lと車輪40R,40Lとの前後左右方向の中心を回転中心として位置P1から位置P2まで反時計回りに回転移動させる。ここで制御装置60はセンサ61,61からの距離情報に基づき、台車本体11を境界線SBと平行に、換言すると吸引ノズル20の長手方向と境界線SBとが直交するまで(本実施例では90度)掃除ロボット1を回転移動させる。
【0033】
次に、
図10に示されるように、制御装置60は、車輪30L,40Rを前方へ駆動させ、かつ車輪30R,40Lを後方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を、吸引ノズル20が境界線SBに向けて位置P2から位置P3まで真横移動させる。尚、制御装置60は吸引ノズル20と境界線SBとの離間距離が10mmになるまで真横移動を行う。
【0034】
次に、
図11に示されるように、制御装置60は、車輪30R,30L,40R,40Lを全て前方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を位置P3から境界線SBに沿って位置P4まで前進移動させる。
【0035】
次いで、掃除ロボット1が位置P4から
図11におけるさらに紙面左方に移動し、吸引ノズル20が掃除区画Sの別の境界線SBと対向し境界線SBとともに角部を構成する次の境界線SB2に到達する際について説明する。
【0036】
図12に示されるように、掃除ロボット1が境界線SB2に近接すると、制御装置60は、まず境界線SB2との離間距離が10mmになる位置P5まで前進移動させる。次に制御装置60は、
図13に示されるように、車輪30L,40Rを後方へ駆動させ、かつ車輪30R,40Lを前方へ駆動させることにより、掃除ロボット1を、次の境界線SB2に沿うように左方向へ吸引ノズル20の幅以内の距離、真横移動させる。この真横移動において境界線SB2との離間距離が10mmを保つ。
【0037】
次に、制御装置60は、車輪30R,30L,40R,40Lを全て後方へ駆動させることにより境界線SB2から吸引ノズル20の幅以上の距離となる位置P7まで後進移動させる。制御装置60は、この左方向への小さい真横移動と小さい後進移動を繰り返して、掃除ロボット1の後端から吸引ノズル20までの前後方向寸法L1の領域を掃除する境界角部掃除動作を行うことで、角部分の未掃除領域を無くすように掃除を行う。
【0038】
そして、この後方掃除動作が完了した後、制御装置60は、車輪30L,40Rを後方へ駆動させ、かつ車輪30R,40Lを前方へ駆動させることにより、掃除ロボット1の台車本体11を次の境界線SB2と平行になるまで掃除ロボット1を回転移動させ、境界線SB2への真横移動、境界線に沿った前進移動、という動作を行い、境界線SB2際を掃除させる。このようにして、制御装置60は、真横移動、境界線に沿った前進移動、後方掃除動作を繰り返し、境界線SB1際,境界角部,境界線SB2際を対象とする境界際掃除運転を完了させる。
【0039】
また、制御装置60は、掃除ロボット1を走行させる際には、センサ61,61からの距離情報に基づき、掃除ロボット1の外縁からのそれぞれ直線距離で所定距離以内に物体がある状態、すなわち所定距離以上で相対的に離間した状態を保つように走行停止や物体の迂回を行うようになっている。
【0040】
詳しくは、掃除区画S(室内)の中心部を掃除する通常掃除運転では、50mmを接近可能距離とし、50mm以内に物体がない状態を保つように運転するようになっている。また、境界線SB(壁際)に沿ってのみ掃除を行う境界際掃除運転では、10mmを接近可能距離とし、10mm以内に物体がない状態を保つように運転するようになっている。制御装置60は掃除区画Sのマップデータにて掃除済み領域を確認し、通常掃除運転の完了を判別できるようになっている。
【0041】
つまり、通常掃除運転が完了してから境界際掃除運転に移行するため、境界際掃除運転を開始した時点から10mmを接近可能距離とした運転となる。言い換えると、制御装置60は境界際掃除運転を行うべき境界線SBを判別し、接近可能距離を切り替える処理を行う。そのため、通常掃除運転時には衝突の危険を回避するために十分な接近可能距離で運転され、境界際掃除運転時には境界線SBに可能な限り近接して運転することで、未通過領域をなくす掃除運転が可能となる。
【0042】
また、境界際掃除運転時における境界線SBに向けた真横方向への左右移動の際には、10mmを接近可能距離とするため、掃除ロボット1が境界線SBから離れた位置で一旦停止すること無く、迅速に境界線SBに対して掃除ロボット1を平行かつ近接した状態にすることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施例の掃除ロボット1の制御装置60は、掃除ロボット1を境界線SBに所定距離離間して近接するまで真横方向に左右移動させ、次に掃除ロボット1を境界線SBに沿って移動させる境界際掃除運転を行う。これによれば、掃除ロボット1を掃除区画Sの境界線SBに真横方向に左右移動させることで、掃除ロボット1の旋回移動に伴い外径側に生じる境界線SB近傍の未通過領域をなくす掃除運転が可能となる。
【0044】
また、吸引ノズル20は、その横幅が走行台車10の前面の横幅より短寸であり、走行台車10の前面の左右方向のいずれか一方側に偏在して固定されている。これによれば、吸引ノズル20を大型化することなく、十分な吸引力を確保しながら、壁際まで吸引ノズル20を近付けて掃除を行うことができる。
【0045】
また、走行用モータ50によりメカナムホイールである車輪30L,30R,40L,40Rをそれぞれ駆動・制御していることから、掃除ロボット1の前進移動から真横方向への左右移動への方向転換時において吸引ノズル20の未通過領域がなく短時間で連続的に掃除が可能となる。
【0046】
また、制御装置60は、掃除ロボット1を境界線SBと所定距離近づくまで前進移動させた後に、掃除ロボット1を境界線SBと平行になるように回転移動させ、境界際掃除運転を開始させる。メカナムホイールである車輪30L,30R,40L,40Rは真横方向の左右移動に比べて前進移動の推力が大きいため、境界線SBと所定距離近づくまで前進移動を行うことで、迅速かつ省電力で境界線SBまで掃除ロボット1を近接させることができる。
【0047】
また、センサ61,61は、非接触式センサであるレーザセンサにより構成されているため、境界線SBが例えば壁である場合、壁との接触なく、壁や掃除ロボット1の破損や汚れの付着を防止しながら、極至近距離を保ったまま境界線際を掃除することができる。
【0048】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における追加や変更があっても、本発明に含まれる。
【0049】
例えば、前記実施例における掃除ロボットは、吸引ノズルを有する走行台車の後方上部に別体の掃除機が載置される構成について説明したが、これに限らず、掃除ロボットは、掃除機の機能部分が走行台車と一体に形成されるものであってもよい。
【0050】
また、前記実施例における掃除ロボットは、自律走行中において、常に吸引が行われている態様について説明したが、これに限らず、例えば掃除ロボットの旋回・回転移動が行われている間は、吸引を停止する、あるいは吸引力を弱めるように制御手段により掃除機の動作が制御されてもよい。これによれば、掃除ロボットの旋回・回転移動時において、吸引ノズルが床面に吸い付くことにより生じる抵抗をなくす、あるいは低減することができるため、掃除ロボットをよりスムーズに旋回・回転移動させることができる。
【0051】
また、前記実施例では、吸引ノズルは、走行台車よりも左右方向の幅が小さい構成について説明したが、これに限らず、吸引ノズルの左右方向の幅は、掃除ロボットの左右方向の幅と同一であってもよいし、大きくてもよい。尚、吸引ノズルの左右方向の幅は、走行台車に載置される掃除機の掃除能力を維持できる大きさの吸引口が形成可能な範囲であればよい。
【0052】
また、前記実施例では、制御装置は境界際掃除運転を開始させるにあたり、掃除ロボットの現在位置から直線距離で最も近い境界線SBに向けて掃除ロボットを前進移動させる態様で説明したが、これに限らず、予め設定された座標から境界際掃除運転を開始させる構成とし、当該座標までマップデータを用いて掃除ロボットを移動させる態様であってもよい。
【0053】
また、前記実施例では、境界際掃除運転における掃除ロボットの回転移動が、台車本体の車輪30R,30Lと車輪40R,40Lとの前後左右方向の中心を回転中心とする態様について説明したが、これに限らず、例えば吸引ノズルにおける吸引口の幅の左右中心を中心に回転移動を行うとしてもよい。
【0054】
また、前記実施例では、掃除ロボットは、複数のメカナムホイールを有している構成について説明したが、これに限らず、掃除ロボットの車輪は、掃除ロボットを全方向に駆動可能とするものであれば、メカナムホイール以外の構成を有する車輪により構成されてもよい。また、掃除ロボットは、車輪とは別に、左右移動、旋回・回転移動をそれぞれ可能とする移動機構を有するものであってもよい。
【0055】
また、前記実施例では、吸引ノズルは、図示しない駆動モータにより駆動される複数のオムニホイールを有している構成について説明したが、これに限らず、吸引ノズルの車輪は、吸引ノズルを前後方向に駆動可能とするものであれば、オムニホイール以外の車輪であってもよい。また、吸引ノズルの車輪は、駆動するものではなく、従動輪であってもよい。
【0056】
また、掃除区画S(室内)の中心部を掃除する通常掃除運転と境界線SB(壁際)に沿ってのみ掃除を行う境界際掃除運転では、接近可能距離が異なり、いずれもセンサ61で得た距離情報に基づくものであるが、これに限らず、境界際掃除運転ではセンサ61をオフにし、別のセンサを用いて距離情報を得るようにしてもよい。
【0057】
また、掃除区画S(室内)の中心部を掃除する通常掃除運転の後に、境界線SB(壁際)に沿ってのみ掃除を行う境界際掃除運転を行う態様に限らず、例えば、境界際掃除運転が完了した後に、通常掃除運転を行う態様であってもよい。