(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144426
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】顕微鏡システム、動作方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G02B 21/26 20060101AFI20231003BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20231003BHJP
G02B 21/34 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G02B21/26
G02B21/36
G02B21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051393
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕介
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AD18
2H052AD20
2H052AD33
2H052AE04
2H052AE13
2H052AF21
(57)【要約】
【課題】ステージの移動に伴う対物レンズの衝突可能性に対処する。
【解決手段】顕微鏡システムは、観察光路上に配置された対物レンズの種別を識別するレンズ種別情報と、ステージに置かれた容器の種別を識別する容器種別情報を検出する検出部11と、検出部11で検出したレンズ種別情報と容器種別情報とに基づいて、対物レンズが衝突する可能性のある衝突領域を特定する領域情報を取得する取得部13と、取得部13で取得した領域情報に基づいて、出力装置とステージの少なくとも一方の制御に関連する制御情報を出力する制御部14と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡システムの観察光路上に配置された対物レンズの種別を識別するレンズ種別情報と、前記顕微鏡システムのステージに置かれた容器の種別を識別する容器種別情報と、を検出する検出部と、
前記検出部で検出した前記レンズ種別情報と前記容器種別情報とに基づいて、前記対物レンズが衝突する可能性のある衝突領域を特定する領域情報を取得する取得部と、
前記取得部で取得した領域情報に基づいて、出力装置と前記ステージの少なくとも一方の制御に関連する制御情報を出力する制御部と、を備える
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御部は、前記衝突領域内の移動先を指定する前記ステージの移動指示を検出すると、前記ステージの前記衝突領域内への移動を禁止するように前記ステージを制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項3】
請求項2に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御部は、前記衝突領域内の移動先を指定する前記ステージの移動指示を検出すると、前記ステージが現在位置と指定された前記移動先との間の前記衝突領域外の位置まで移動して停止するように、前記ステージを制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項4】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御部は、前記衝突領域内の移動先を指定する前記ステージの移動指示を検出すると、前記ステージの前記衝突領域内での移動速度を前記衝突領域外よりも低い速度に制限するように前記ステージを制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項5】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記衝突領域は、前記ステージの移動が禁止される禁止領域と、前記対物レンズが衝突する可能性はあるが前記ステージの移動が禁止されない制限領域と、を含み、
前記制御部は、前記禁止領域内の移動先を指定する前記ステージの移動指示を検出すると、前記ステージの前記禁止領域内への移動を禁止するように、前記ステージを制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項6】
請求項1に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記衝突領域は、前記ステージの移動が禁止される禁止領域と、前記ステージの移動速度が制限される制限領域と、を含み、
前記制御部は、
前記制限領域内の移動先を指定する前記ステージの移動指示を検出すると、前記ステージの前記制限領域内での移動速度を前記衝突領域外よりも低い速度に制限するように、前記ステージを制御し、
前記禁止領域内の移動先を指定する前記ステージの移動指示を検出すると、前記ステージの前記制限領域内での移動速度を前記衝突領域外よりも低い速度に制限し、且つ、前記ステージの前記禁止領域内への移動を禁止するように、前記ステージを制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御部は、前記衝突領域内の移動先を指定する前記ステージの移動指示を検出すると、前記出力装置が前記対物レンズの衝突可能性を報知するように、前記出力装置を制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項8】
請求項4又は請求項5に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御部は、前記ステージが前記衝突領域内を移動中に前記出力装置が前記対物レンズの衝突可能性を報知するように、前記出力装置を制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記出力装置は、表示装置を含み、
前記制御部は、前記ステージの移動指示を受け付けるGUI領域に表示された前記容器の画像上に前記表示装置が前記衝突領域を示す情報を表示するように、前記表示装置を制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項10】
請求項9に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御部は、前記観察光路上に配置された対物レンズの切替、又は、前記ステージに置かれた容器の切替を検出すると、前記表示装置が前記容器の画像上に表示された前記衝突領域を示す情報を更新するように、前記表示装置を制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御部は、前記容器種別情報から特定される前記容器の形状に応じた形状で前記衝突領域を示す情報を表示するように、前記表示装置を制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項12】
請求項5又は請求項6のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記出力装置は、表示装置を含み、
前記制御部は、前記ステージの移動指示を受け付けるGUI領域に表示された前記容器の画像上に前記表示装置が前記制限領域を示す情報を表示するように、前記表示装置を制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項13】
請求項12に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御部は、前記観察光路上に配置された対物レンズの切替、又は、前記ステージに置かれた容器の切替を検出すると、前記表示装置が前記容器の画像上に表示された前記制限領域を示す情報を更新するように、前記表示装置を制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記制御部は、前記容器種別情報から特定される前記容器の形状に応じた形状で前記制限領域を示す情報を表示するように、前記表示装置を制御する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、さらに、
前記領域情報は、少なくとも対物レンズの3次元形状情報と容器の3次元形状情報と対物レンズの作動距離を用いて生成される
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、さらに、
前記レンズ種別情報と前記容器種別情報との組み合わせに関連付けて前記領域情報を記憶する記憶部を備え、
前記取得部は、前記検出部で検出した前記レンズ種別情報と前記容器種別情報との組み合わせに関連付けられた前記領域情報を前記記憶部から取得する
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載の顕微鏡システムにおいて、
前記容器種別情報は、少なくとも前記容器の形状と前記容器の材質とを識別する情報を含む
ことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項18】
顕微鏡システムの動作方法であって、
前記顕微鏡システムの観察光路上に配置された対物レンズの種別を識別するレンズ種別情報と、前記顕微鏡システムのステージに置かれた容器の種別を識別する容器種別情報と、を検出し、
検出した前記レンズ種別情報と前記容器種別情報とに基づいて、前記対物レンズが衝突する可能性のある衝突領域を特定する領域情報を取得し、
取得した領域情報に基づいて、出力装置と前記ステージの少なくとも一方の制御に関連する制御情報を出力する
ことを特徴とする動作方法。
【請求項19】
顕微鏡システムのコンピュータに、
前記顕微鏡システムの観察光路上に配置された対物レンズの種別を識別するレンズ種別情報と、前記顕微鏡システムのステージに置かれた容器の種別を識別する容器種別情報と、を検出し、
検出した前記レンズ種別情報と前記容器種別情報とに基づいて、前記対物レンズが衝突する可能性のある衝突領域を特定する領域情報を取得し、
取得した領域情報に基づいて、出力装置と前記ステージの少なくとも一方の制御に関連する制御情報を出力する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、顕微鏡システム、動作方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡では、ステージを動してサンプルに対する対物レンズの相対的な位置を変更することで、サンプルの任意の位置を観察することができる。一方で、サンプルと対物レンズの位置関係によっては対物レンズがサンプルに衝突してしまうことがある。このような課題に関連する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、対物レンズのサイズとステージの開口部のサイズを用いて対物レンズとステージが衝突しないステージの駆動可能範囲を算出する技術が開示されている。特許文献1では、対物レンズの物理的な大きさを考慮した駆動可能範囲が算出されるが、対物レンズがステージの開口部内に配置されたサンプルに衝突する可能性については考慮されていない。
【0005】
ステージを移動したときに対物レンズとサンプルが衝突するか否かは、対物レンズの作動距離やサンプルの3次元形状などに依存するため、特許文献1に記載の技術では、対物レンズとサンプルの衝突を回避することは難しい。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、ステージの移動に伴う対物レンズの衝突可能性に対処する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る顕微鏡システムは、顕微鏡システムの観察光路上に配置された対物レンズの種別を識別するレンズ種別情報と、前記顕微鏡システムのステージに置かれた容器の種別を識別する容器種別情報と、を検出する検出部と、前記検出部で検出した前記レンズ種別情報と前記容器種別情報とに基づいて、前記対物レンズが衝突する可能性のある衝突領域を特定する領域情報を取得する取得部と、前記取得部で取得した領域情報に基づいて、出力装置と前記ステージの少なくとも一方の制御に関連する制御情報を出力する制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る顕微鏡システムの動作方法は、前記顕微鏡システムの観察光路上に配置された対物レンズの種別を識別するレンズ種別情報と、前記顕微鏡システムのステージに置かれた容器の種別を識別する容器種別情報と、を検出し、検出した前記レンズ種別情報と前記容器種別情報とに基づいて、前記対物レンズが衝突する可能性のある衝突領域を特定する領域情報を取得し、取得した領域情報に基づいて、出力装置と前記ステージの少なくとも一方の制御に関連する制御情報を出力する工程を含む。
【0009】
本発明の一態様に係るプログラムは、顕微鏡システムのコンピュータに、前記顕微鏡システムの観察光路上に配置された対物レンズの種別を識別するレンズ種別情報と、前記顕微鏡システムのステージに置かれた容器の種別を識別する容器種別情報と、を検出し、検出した前記レンズ種別情報と前記容器種別情報とに基づいて、前記対物レンズが衝突する可能性のある衝突領域を特定する領域情報を取得し、取得した領域情報に基づいて、出力装置と前記ステージの少なくとも一方の制御に関連する制御情報を出力する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、ステージの移動に伴う対物レンズの衝突可能性に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る顕微鏡システムを例示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る制御装置が行う処理のフローチャートである。
【
図4】領域情報が格納した領域情報テーブルの構成を例示した図である。
【
図5】安全領域と衝突領域の関係の一例を示した図である。
【
図6】安全領域と衝突領域の関係の別の例を示した図である。
【
図7】表示装置に表示されるアプリケーション画面の一例を示した図である。
【
図8】第1の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図9】第1の実施形態に係る領域情報テーブルの構成の一例を示した図である。
【
図10】第1の実施形態における開口部と衝突領域の関係の一例について説明するための図である。
【
図11】第1の実施形態に係る領域情報テーブルの構成の別の例を示した図である。
【
図12】第1の実施形態における開口部と衝突領域の関係の別の例について説明するための図である。
【
図13】マイクロプレートの材質に起因する対物レンズ位置の違いについて説明するための図である。
【
図14】第1の実施形態に係る材質情報テーブルの構成の別の例を示した図である。
【
図15】第2の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図16】第2の実施形態に係るステージナビゲータの表示の一例を示した図である。
【
図17】第2の実施形態に係るステージナビゲータの表示の別の例を示した図である。
【
図18】第3の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図19】第3の実施形態に係る警告ウィンドウの一例を示した図である。
【
図20】第4の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図21】第5の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図22】第6の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図23】第7の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図24】第8の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図25】第9の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図26】第9の実施形態における開口部と制限領域の関係の一例について説明するための図である。
【
図27】第9の実施形態における開口部と制限領域の関係の別の例について説明するための図である。
【
図28】第10の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図29】第10の実施形態に係るステージナビゲータの表示の一例を示した図である。
【
図30】第10の実施形態に係るステージナビゲータの表示の別の例を示した図である。
【
図31】第10の実施形態に係るステージナビゲータの表示のさらに別の例を示した図である。
【
図32】第11の実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
【
図33】制御装置を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を例示した図である。
【
図34】対物レンズ切替時におけるステージナビゲータの表示の変化について説明するための図である。
【
図35】ステージナビゲータの表示設定について説明するための図である。
【
図36】マイクロプレートのタイプに起因する観察高さの違いについて説明するための図である。
【
図37】容器のタイプ列を含む領域情報テーブルの構成の一例を示した図である。
【
図38】容器設定の一例について説明するための図である。
【
図39】容器設定の別の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る顕微鏡システムを例示した図である。
図1に示す顕微鏡システム1は、
図1に示すように、顕微鏡100と、制御装置10と、顕微鏡コントローラ20と、出力装置30と、入力装置40を備えている。
【0013】
顕微鏡100は、デジタルカメラ105を備える顕微鏡であり、例えば、BOX型の倒立顕微鏡である。顕微鏡100は、ステージ101に置かれたサンプルSの光学像を、ステージ101下方に設けられた対物レンズ103を用いてデジタルカメラ105上に形成する。なお、サンプルSとは、撮像対象物といった程度の意味であり、利用者が主に観察する標本とは区別される。なお、サンプルSには、標本と標本を収容する容器(ペトリディッシュ、マイクロプレートなど)が含まれ得る。
【0014】
ステージ101は、図示しないモータと原点センサを有する電動ステージである。ステージ101は、少なくとも、対物レンズ103の光軸と直交する方向に移動するXYステージを含んでいる。ステージ101は、制御装置10からの命令に従って顕微鏡コントローラ20によって制御される。より詳細には、顕微鏡コントローラ20が原点センサによって検出されたXY方向についての原点を基準としてモータを制御することで、指定されたXY位置へステージ101が移動する。なお、顕微鏡コントローラ20は、ステージ101の位置情報を、適宜又は要求に応じて制御装置10へ出力する。
【0015】
光源102は、例えば、キセノンランプなどのランプ光源、発光ダイオード(LED)である。光源102から出射する照明光量は、制御装置10からの命令に従って顕微鏡コントローラ20によって制御される。
【0016】
図1には、ステージ101の下方に設けられた光源102が、対物レンズ103を介してサンプルSに照明光を照射する落射照明用の構成が例示されている。ただし、顕微鏡100が採用する照明法は落射照明に限らず、透過照明など他の照明法であってもよい。
【0017】
対物レンズ103は、レボルバ104に装着されている。レボルバ104には、仕様の異なる複数の対物レンズが装着されてもよい。レボルバ104に装着される複数の対物レンズは、倍率の異なる対物レンズであってもよく、対応する観察法が異なる対物レンズであってもよい。光軸上に配置される対物レンズ103は、例えば、制御装置10からの命令に従って顕微鏡コントローラ20がレボルバ104の回転を制御することで、電動で切り替えることができる。
【0018】
レボルバ104は、光軸上に配置される対物レンズを切り替える。また、レボルバ104は、焦準装置として機能する。レボルバ104は、図示しないモータと原点センサを有している。レボルバ104は、モータが回転することで、対物レンズ103の光軸方向(Z方向)に移動する。レボルバ104は、制御装置10からの命令に従って顕微鏡コントローラ20によって制御される。より詳細には、顕微鏡コントローラ20が原点センサによって検出されたZ方向についての原点を基準としてモータを制御することで、レボルバ104が対物レンズ103とともに光軸方向に移動する。これにより、フォーカスを調整することができる。なお、顕微鏡コントローラ20は、レボルバ104の位置情報を、適宜又は要求に応じて制御装置10へ出力する。
【0019】
レボルバ104がZ方向に移動する焦準装置として機能する例を示したが、レボルバ104の代わりにステージ101が光軸方向に移動してもよい。即ち、ステージ101は、XYステージに加えて、Zステージを含んでもよい。
【0020】
デジタルカメラ105は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの撮像素子を有している。デジタルカメラ105は、顕微鏡100の光学系がデジタルカメラ105の撮像面上に形成した光学像をデジタル画像(以降、単に画像と記す。)に変換する。画像は、デジタルカメラ105から制御装置10へ出力される。
【0021】
デジタルカメラ105で行われる撮像動作等は、制御装置10によって制御される。制御装置10は、デジタルカメラ105を制御して、例えば、自動ゲイン制御のON/OFF切換、ゲインの設定、自動露出制御のON/OFF切換、露光時間の設定、エッジ強調度の設定、ガンマ補正の設定等を行ってもよい。
【0022】
制御装置10は、顕微鏡100及び顕微鏡コントローラ20を制御することで、顕微鏡システム1全体を制御する。制御装置10は、ステージ101の動作制御に関連して、後述する
図2に示す機能構成を実現するコンピュータである。制御装置10は、ワークステーションやパーソナルコンピュータといった汎用コンピュータによって実現されてもよく、専用のコンピュータによって実現されてもよい。
【0023】
顕微鏡コントローラ20は、顕微鏡100を制御する装置であり、例えば、制御装置10からの命令に従って動作する。より詳細には、顕微鏡コントローラ20は、制御装置10からの命令に従って、ステージ101、光源102、レボルバ104などの動作を制御する。
【0024】
出力装置30は、制御装置10からの制御情報を用いて、顕微鏡システム1の利用者に情報を出力する装置である。出力装置30は、表示装置31を備えている。表示装置31は、例えば、液晶ディスプレイ装置、有機EL(OLE:Organic Electro-Luminescence)ディスプレイ装置、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置などである。表示装置31は、タッチパネルセンサを備えてもよく、その場合、入力装置40としても機能する。
【0025】
出力装置30は、表示装置31に加えて、音、光、振動などを利用して顕微鏡システム1の利用者に情報を伝えるその他の出力装置を含んでもよい。出力装置30は、例えば、音を出力するスピーカー、光を出力する発光装置、振動を出力するバイブレータなどを含んでもよい。
【0026】
入力装置40は、顕微鏡システム1の利用者の操作を検出して操作信号を制御装置10へ入力する装置である。入力装置40は、例えば、キーボード、マウス、フットスイッチ、タッチパッド、ハンドル、ジョイスティック、各種スイッチなどである。
【0027】
以上のように構成された顕微鏡システム1では、ステージ101の移動に関連して、対物レンズ103の衝突可能性に応じた制御を実行する。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係る制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る制御装置が行う処理のフローチャートである。
図4は、領域情報が格納した領域情報テーブルの構成を例示した図である。
図5及び
図6は、安全領域と衝突領域の関係を例示した図である。以下、
図2から
図6を参照しながら、顕微鏡システム1で行われる対物レンズ103の衝突可能性に応じた制御処理について説明する。
【0029】
制御装置10は、ステージ101の移動に伴う対物レンズ103の衝突可能性に応じた制御に関連する構成として、
図2に示すように、検出部11と、記憶部12と、取得部13と、制御部14を備えている。顕微鏡システム1では、
図2に示す機能的構成を有する制御装置10が、
図3に示す処理を実行することにより、ステージ101の移動に伴う対物レンズ103の衝突可能性に対処する。
【0030】
まず、検出部11は、顕微鏡システム1の観察光路上に配置された対物レンズ103の種別を識別するレンズ種別情報と、顕微鏡システム1のステージ101に置かれた容器の種別を識別する容器種別情報と、を検出する(ステップS1)。
【0031】
次に、取得部13は、検出部11で検出したレンズ種別情報と容器種別情報とに基づいて、衝突領域を特定する領域情報を取得する(ステップS2)。
【0032】
衝突領域とは、観察光路上に配置された対物レンズがステージ101に置かれた容器などと衝突する可能性のある領域をいう。衝突領域を決定するに当たり算出される対物レンズと容器の衝突可能性は、少なくとも、対物レンズの3次元形状情報と容器の3次元形状情報と対物レンズの作動距離(WD)に基づいて算出される。即ち、衝突可能性は、XY方向の情報に加えてZ方向の情報を用いて算出される。衝突可能性の算出に使用する3次元形状情報は、対物レンズのZ方向の位置によって異なる衝突可能性を算出することができる程度の情報を含んでいればよく、例えば、CADソフトウェアなどで作成された詳細な設計情報であってもよく、ある程度簡略化した情報であってもよい。
【0033】
ステップS2では、取得部13は、ステップS1で検出したレンズ種別情報と容器種別情報との組み合わせに対応する領域情報を、記憶部12から読み出してもよい。領域情報は、例えば、
図4に示すテーブルT1のように、レンズ種別情報と容器種別情報との組み合わせに関連付けて、記憶部12に記憶されていてもよい。
【0034】
図4には、レンズ種別列に記憶されているレンズ種別情報と、容器種別列に記憶されている容器種別とに関連付けて、領域列に領域情報が記憶されている例が示されている。領域情報は、衝突領域を特定する情報であればよく、その特定方法は特に限定しない。領域情報は、衝突領域そのものを表す情報であってもよい。また、領域情報は、ステージ101とサンプルSやサンプルホルダその他とが衝突する可能性がない安全領域を表す情報であってもよく、安全領域を表すことでそれ以外の領域を衝突領域として特定する情報であってもよい。
図4には、領域情報が安全領域を表すことでそれ以外の領域を衝突領域として特定する例が示されている。
【0035】
図4に示すテーブルT1に含まれている、“対物レンズX”を示すレンズ種別情報と“容器A”を示す容器種別情報の組み合わせに関連付けて記憶されている領域情報K1は、2点のXY座標を示している。この2点のXY座標は、
図5に示すように、矩形の安全領域Rsの左上の座標(X1、Y1)と右下の座標(X2、Y2)を表している。そして、この領域情報K1は、衝突領域Rcを、この2点で表した安全領域Rsの外側の領域として特定している。
【0036】
また、
図4に示すテーブルT1に含まれている、“対物レンズX”を示すレンズ種別情報と“容器C”を示す容器種別情報の組み合わせに関連付けて記憶されている領域情報K2は、原点(0、0)からの距離を示している。この距離は、
図6に示すように、円形の安全領域Rsの半径(R1)を表している。そして、この領域情報K2は、衝突領域Rcを、この半径で表した安全領域Rsの外側の領域として特定している。
【0037】
以上では、予め算出された衝突可能性に基づいて衝突領域が決定されていて、さらに、決定した衝突領域を特定する情報を領域情報として記憶部12が記憶している場合について説明した。ただし、ステップS2では、取得部13は、記憶部12に予め記憶されている領域情報を読み出して取得する代わりに、レンズ種別情報と容器種別情報との組み合わせに基づいて動的に領域情報を生成して取得してもよい。即ち、衝突可能性は、レンズ種別情報と容器種別情報から特定される対物レンズの3次元形状情報と容器の3次元形状情報と対物レンズの作動距離(WD)に基づいて動的に算出されてもよく、領域情報は、算出された衝突可能性に基づいて動的に生成されてもよい。
【0038】
制御部14は、取得部13で取得した領域情報に基づいて、出力装置30とステージ101の少なくとも一方の制御に関連する制御情報を出力する(ステップS3)。
【0039】
制御情報は、例えば、表示装置31へ出力する表示制御情報であってもよく、表示装置31は表示制御情報に基づいて衝突領域の画像を表示してもよい。これにより、利用者が観察位置に応じた衝突可能性を視覚的に認識することが可能となるため、顕微鏡システム1は、衝突可能性のあるステージ101の移動を未然に回避するよう利用者に促すことができる。また、制御情報は、例えば、顕微鏡コントローラ20へ出力するステージ制御情報であってもよく、顕微鏡コントローラ20はステージ制御情報に基づいて衝突可能性のある領域へのステージ101の移動を制限することができる。
【0040】
以上の様に、顕微鏡システム1によれば、
図4に示す制御処理が行われることで、領域情報に基づく顕微鏡システム1による衝突回避動作により、又は、領域情報に基づく利用者による自発的な衝突回避行動により、ステージ101の移動に伴う対物レンズ103の衝突可能性に対処することができる。
【0041】
また、顕微鏡システム1では、対物レンズの種別に加えて容器の種別に応じた制御が行われる。このため、ステージ101と対物レンズ103の衝突可能性に加えて、容器と対物レンズ103の衝突可能性にも対処することができる。さらに、顕微鏡システム1では、高さやWDなどZ方向の情報を考慮して生成された領域情報を用いて制御処理が行われる。このため、従来技術よりも高精度に衝突可能性に対処することができる。
【0042】
以下、制御処理の具体例について各実施形態で説明する。
(第1の実施形態)
図7は、表示装置に表示されるアプリケーション画面の一例を示した図である。
図8は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
図9は、本実施形態に係る領域情報テーブルの構成の一例を示した図である。
図10は、本実施形態における開口部と衝突領域の関係の一例について説明するための図である。
図11は、本実施形態に係る領域情報テーブルの構成の別の例を示した図である。
図12は、本実施形態における開口部と衝突領域の関係の別の例について説明するための図である。
図13は、マイクロプレートの材質に起因する対物レンズ位置の違いについて説明するための図である。
図14は、本実施形態に係る材質情報テーブルの構成の別の例を示した図である。
【0043】
顕微鏡システム1がプログラムを実行すると、表示装置31に
図7に示すウィンドウWが表示され、ウィンドウW内にアプリケーション画面が表示される。利用者は、
図7に示すアプリケーション画面を通じて、標本の観察や顕微鏡システム1に対する各種設定指示を行うことができる。まず、アプリケーション画面について説明する。
【0044】
領域R1は、対物レンズを選択する領域である。利用者が領域R1で対物レンズを選択することで、レボルバ104は、選択した対物レンズを光軸上に配置する。領域R2は、撮影指示を入力する領域である。領域R3は、ライブ画像が表示される領域である。
【0045】
領域R4は、マクロ画像が表示される領域であり、容器ホルダ全体の画像を表示する領域R41と、容器ホルダ内に置かれたサンプルの内の1つのサンプルの全体画像を表示する領域R42が含まれている。この例では、領域R41には、ペトリディッシュに対応する容器ホルダH1の画像が表示されている。領域R42には、容器ホルダH1に置かれたペトリディッシュDの画像と現在の視野を示すマークFが表示されている。
【0046】
領域R42は、ステージ101の移動指示を受け付けるGUI領域であり、以後「ステージナビゲータ」と称する。利用者は、例えば、領域R42上の任意の位置をクリックすることで、クリックした位置を移動先として指定する移動指示を顕微鏡システム1へ入力することができる。また、領域R42上でマークFをドラッグすることでドラッグ先への移動指示を顕微鏡システム1へ入力することができる。
【0047】
領域R5は、顕微鏡システム1の設定を選択する領域である。領域R5では、
図7に示すように“容器”タブを選択することで、例えば、容器形状と容器材質を選択することができる。
【0048】
以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図8に示す処理について説明する。
【0049】
制御装置10は、まず、容器種別情報とレンズ種別情報を検出する(ステップS11、ステップS12)。ここでは、検出部11は、例えば、領域R5の“容器”タブの設定を読み出すことで容器種別情報を検出し、領域R1の設定を読み出すことで対物レンズ種別情報を検出する。なお、検出部11は、レボルバに設けられたセンサの検出結果とレボルバに装着された対物レンズについて記憶部12に記憶されている情報に基づいて、光軸上に配置された対物レンズの対物レンズ種別情報を検出してもよい。また、容器や対物レンズにバーコードやRFID等の識別子を設け、それらを読み取ることで容器種別情報やレンズ種別情報を検出することとしても良い。ここでは、容器種別情報として、容器形状“ペトリディッシュ”、容器材料“ガラス”を検出し、レンズ種別情報として、レンズ種別“対物レンズA”を検出した場合を例に説明する。
【0050】
制御装置10は、次に、ステップS11で検出した容器種別情報とステップS12で検出したレンズ種別情報に基づいて、領域情報を取得する(ステップS13)。ここでは、取得部13は、例えば、記憶部12に記憶されている、容器形状“ペトリディッシュ”に関連する
図9に示すテーブルT2から、レンズ種別“対物レンズA”と容器材料“ガラス”に関連する領域情報を取得する。この例では、安全領域を示す領域情報として半径Ragを取得する。なお、容器材料列の「Plastic」「Glass」は、特に観察に影響する容器底面の使用材料を示している。
【0051】
その後、利用者が、領域R42上で観察位置であるXY位置を指定すると、制御装置10は、利用者によるXY位置の選択を検出する(ステップS14)。制御装置10は、衝突領域内への移動が指示されたか否かを判定する(ステップS15)。ここでは、制御部14は、ステップS13で取得した領域情報が示す原点から半径Ragの範囲を安全領域と判定し、さらに、安全領域の外側の領域を衝突領域と判定する。最後に、制御部14は、ステップS14で検出したXY位置が衝突領域内か否かを判定する。
【0052】
なお、
図10の境界B1は、ステップS13で取得した領域情報から算出した安全領域の外縁を示している。本実施形態では、後述するように、安全領域をステージ101の可動範囲としてステージ101を制御する。
図10に示す開口部APは、容器ホルダH1に形成された開口あり、照明光は開口部APを通ってサンプルSに照射される。
図10に示すように、対物レンズ103がステージ101と衝突しないように、安全領域の境界B1は開口部AP内に収まっている。また、
図10に示すガイドGは、ペトリディッシュを位置決めする容器ホルダH2内に形成された凹凸などの構造である。
【0053】
利用者が選択したXY位置が衝突領域内にない場合、つまり、
図10に示す境界B1内にある場合には(ステップS15NO)、制御装置10は、ステージ101を利用者が選択したXY位置へ移動するように制御する(ステップS16)。一方で、利用者が選択したXY位置が衝突領域内にある場合、つまり、
図10に示す境界B1外にある場合には(ステップS15YES)、制御装置10は、利用者が選択したXY位置へのステージ101の移動を制限する(ステップS17)。具体的には、制御装置10は、ステージ101の衝突領域内への移動を禁止するように、ステージ101を制御する。ここでは、制御装置10は、例えば、ステージ101が現在位置と利用者が選択したXY位置との間の衝突領域外の位置まで移動して停止するように、ステージ101を制御してもよい。つまり、制御装置10は、ステージ101を衝突可能性がない範囲内で選択されたXY位置へ近づけて停止させてもよい。
【0054】
以上の様に、本実施形態では、顕微鏡システム1は、
図8に示す処理を行うことで、衝突領域内の移動先を指定するステージ101の移動指示を検出すると、衝突可能性がある衝突領域への移動を禁止する。このため、対物レンズ103の衝突を回避することができる。また、本実施形態では、衝突領域内の移動先が指定された場合であっても、顕微鏡システム1は、衝突可能性がない範囲でステージ101を移動して観察位置を変更することができる。
【0055】
図9では、容器形状“ペトリディッシュ”に対応するテーブルT2を例示したが、記憶部12には、テーブルT2に加えて、
図11に示すテーブルT3も記憶されている。ステージ101に容器ホルダH1の代わりに
図12に示す容器ホルダH2が配置され、領域R5で容器形状“マイクロプレート”が選択されている場合には、制御装置10は、ステップS11で
図11に示すテーブルT3から容器種別情報を取得してもよい。
【0056】
図12の境界B1は、テーブルT3内の領域情報から算出した安全領域の外縁を示している。本実施形態では、マイクロプレートを用いた場合も、ペトリディッシュを用いた場合と同様に、安全領域をステージ101の可動範囲としてステージ101を制御する。
図12に示す開口部APは、容器ホルダH2に形成された開口であり、照明光は開口部APを通ってサンプルSに照射される。
図12に示すように、対物レンズ103がステージ101と衝突しないように、安全領域の境界B1は開口部AP内に収まっている。また、
図12に示すガイドGは、マイクロプレートを位置決めする容器ホルダH2内に形成された凹凸などの構造である。
【0057】
図7、
図9及び
図11に示すように、容器識別情報には、少なくとも容器の形状を識別する情報と容器の材質を識別する情報を含むことが望ましい。この点について、
図13及び
図14を参照しながら説明する。
図13(a)及び
図13(b)には、最下面P1とウェル裏面P2が同じ高さにある2つのマイクロプレートが例示されている。
図13(a)にはプラスチック製のマイクロプレートMpが、
図13(b)には、ガラス製のマイクロプレートMgが示されている。
【0058】
マイクロプレートMpとマイクロプレートMgは、いずれもウェル裏面P2が最下面P1から同じ高さHbの位置にある。しかしながら、材質の違いによってウェル底の厚さが異なる。例えば、
図14に示すように、ガラス製の場合には底の厚さは0.17mmだが、プラスチック製の場合は1.1mmである。このため、観察面の高さに相当するウェル底面P3の高さHuが、
図13及び
図14に示すように、マイクロプレートMpとマイクロプレートMgでは異なっている。
【0059】
標本にフォーカスを合わすためには、対物レンズ先端面P4をウェル底面P3(観察面)から対物レンズ103の作動距離WDだけ離れた位置まで近づける必要がある。つまり、対物レンズのZ位置は、ウェル底面P3(観察面)の高さ-作動距離WDで決定される。そして、ウェル底が厚いプラスチック製のマイクロプレートMpを使用する場合、ウェル底が薄いガラス製のマイクロプレートMgを使用する場合よりも、対物レンズ先端面P4をウェル裏面P2に近づける必要がある。その分、マイクロプレートMpとの衝突可能性が高まるため、マイクロプレートMpと衝突することなくステージ101が移動できる範囲は狭まってしまう。
【0060】
このように、容器の形状だけではなく材質によって衝突領域が異なり得る。このため、少なくとも容器の形状を識別する情報と容器の材質を識別する情報を容器識別情報として検出して、領域情報の取得に利用することが望ましい。なお、
図14に示すテーブルT3は、容器の3次元形状情報と共に記憶部12に記憶されていてもよく、取得部13は、これらの情報を用いて領域情報を動的に算出して取得してもよい。
【0061】
(第2の実施形態)
図15は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
図16及び
図17は、本実施形態に係るステージナビゲータの表示例を示した図である。本実施形態は、衝突領域が表示される点が、第1の実施形態とは異なっている。以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図15に示す処理について説明する。
【0062】
制御装置10は、まず、容器種別情報とレンズ種別情報を検出し(ステップS21、ステップS22)、検出した容器種別情報とレンズ種別情報に基づいて、領域情報を取得する(ステップS23)。ステップS21からステップS23の処理は、
図8のステップS11からステップS13の処理と同様である。
【0063】
その後、制御装置10は、マクロ画像上に衝突領域を表示する(ステップS24)。ここでは、制御部14は、ステージ101の移動指示を受け付けるGUI領域(即ち、ステージナビゲータである領域R41)に表示された容器の画像上に表示装置31が衝突領域を示す情報を表示するように、表示装置31を制御する。
【0064】
容器がペトリディッシュの場合には、制御部14は、例えば、
図16に示すように、ペトリディッシュDの画像上に表示装置31が衝突領域Rcを重ねて表示するように、表示装置31を制御する。また、容器がマイクロプレートMの場合には、制御部14は、例えば、
図17に示すように、マイクロプレートMの画像上に表示装置31が衝突領域Rcを重ねて表示するように、表示装置31を制御する。なお、衝突領域Rcの内側の境界は安全領域との境界B1であり、可動範囲を示している。また、衝突領域Rcの外側の境界は容器の外縁であってもよい。ただし、衝突領域Rcは、容器種別情報から特定される容器の形状に応じた形状(例えば、円形、矩形など)で表示されればよく、衝突領域Rcの外側の境界は容器の正確な外縁に限らない。
【0065】
その後の処理は、第1の実施形態と同様である。つまり、制御装置10は、利用者によるXY位置の選択を検出し(ステップS25)、衝突領域外への移動が指示された場合には(ステップS26NO)、ステージ101を利用者が選択したXY位置へ移動するように制御する(ステップS27)。また、制御装置10は、衝突領域内への移動が指示された場合には(ステップS26YES)、利用者が選択したXY位置へのステージ101の移動を制限する(ステップS28)。
【0066】
以上の様に、顕微鏡システム1は、
図15に示す処理を行うことによっても、第1の実施形態と同様に、対物レンズ103の衝突を回避することができる。特に、
図15に示す処理では、衝突領域が予め表示されるため、利用者自身に衝突領域内への移動を自発的に回避させることができる。
【0067】
(第3の実施形態)
図18は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
図19は、本実施形態に係る警告ウィンドウの一例を示した図である。本実施形態は、利用者が衝突領域内への移動を指示した場合に、衝突可能性を報知して移動を実行する否かを利用者に改めて選択させる点が、第2の実施形態とは異なっている。以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図18に示す処理について説明する。
【0068】
図18のステップS31からステップS37の処理は、
図15のステップS21からステップS27の処理と同様である。制御装置10は、衝突領域内への移動が指示された場合には(ステップS36YES)、衝突可能性を報知する(ステップS38)。ここでは、制御部14は、出力装置30が対物レンズ103の衝突の可能性を報知するように、出力装置30を制御する。具体的には、制御部14は、衝突領域Rc内の位置が選択されると、表示装置31に
図19に示すウィンドウW1を表示して、移動を実行するか否かを利用者に選択させてもよい。
【0069】
ウィンドウW1上で移動実行が選択されると(ステップS39YES)、制御装置10は、利用者が選択したXY位置へのステージ101の移動を制限する(ステップS40)。つまり、ステージ101を衝突可能性がない範囲内で選択されたXY位置へ近づけて停止させる。一方で、ウィンドウW1上で移動実行中止が選択されると(ステップS39NO)、制御装置10は、ステップS35に戻って、改めてXY位置が選択されるまで待機する。
【0070】
以上の様に、顕微鏡システム1は、
図18に示す処理を行うことによっても、第2の実施形態と同様に、対物レンズ103の衝突を回避することができる。また、
図18に示す処理では、衝突領域内への移動が指示されると、衝突可能性が報知される。これにより、利用者は観察位置の選択を見直すことができる。
【0071】
なお、本実施形態では、衝突可能性を表示装置31が報知する例を示したが、任意の出力装置30が衝突可能性を報知してもよい。例えば、スピーカーが音で衝突可能性を報知してもよく、バイブレータによる振動で衝突可能性を報知してもよい。また、複数の出力装置30が衝突可能性を報知してもよい。例えば、表示装置31とスピーカーが衝突可能性を報知してもよく、表示装置31とスピーカーとLEDランプが衝突可能性を報知してもよい。
【0072】
(第4の実施形態)
図20は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。第1の実施形態から第3の実施形態では、安全領域を可動範囲とし衝突領域への移動を禁止する例を示したが、本実施形態では、安全領域と衝突領域を可動範囲とする点が、第1の実施形態から第3の実施形態とは異なっている。以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図20に示す処理について説明する。
【0073】
図20のステップS41からステップS46の処理は、
図8のステップS11からステップS16の処理と同様である。制御装置10は、衝突領域内への移動が指示された場合には(ステップS45YES)、衝突領域中での移動速度を制限しながらステージ101を選択したXY位置へ移動させる(ステップS47)。ここでは、制御部14は、ステージ101の衝突領域内での移動速度を安全領域(衝突領域外)での移動速度よりも低い速度に制限するようにステージ101を制御する。
【0074】
以上の様に、顕微鏡システム1は、
図20に示す処理を行うことで、衝突可能性のある衝突領域を移動中に移動速度が制限されるため、対物レンズ103がステージ101や容器に衝突した場合の衝撃を抑えることが可能であり、即座に停止等を行うことで被害を最小限に抑えることができる。また、衝突領域を制限付きで移動可能にするため、衝突領域を移動禁止とする場合よりも観察範囲が広範囲となる。従って、本実施形態によれば、ステージの移動に伴う対物レンズの衝突可能性に対して被害を最小限に抑える対処が可能である。
【0075】
(第5の実施形態)
図21は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。本実施形態は、衝突領域が表示される点が、第4の実施形態とは異なっている。以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図21に示す処理について説明する。
【0076】
図21のステップS51からステップS53及びステップS55からステップS58の処理は、
図20のステップS41からステップS47の処理と同様である。また、
図21のステップS54の処理は、
図18のステップS34の処理と同様であり、例えば、
図16及び
図17に示すように、マクロ画像上に衝突領域Rcが表示される。
【0077】
以上の様に、顕微鏡システム1は、
図21に示す処理を行うことによっても、第4の実施形態と同様に、ステージの移動に伴い対物レンズが衝突した場合の被害を最小限に抑えることができる。さらに、
図21に示す処理では、衝突領域が予め表示されるため、利用者が衝突領域内への移動を自発的に回避することで、対物レンズ103の衝突を回避することができる。
【0078】
(第6の実施形態)
図22は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。本実施形態は、利用者が衝突領域内への移動を指示した場合に、衝突可能性を報知して移動を実行する否かを利用者に改めて選択させる点が、第5の実施形態とは異なっている。以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図22に示す処理について説明する。
【0079】
図22のステップS61からステップS67の処理は、
図21のステップS51からステップS57の処理と同様である。制御装置10は、衝突領域内への移動が指示された場合には(ステップS66YES)、衝突可能性を報知する(ステップS68)。ここでは、制御部14は、出力装置30が対物レンズ103の衝突の可能性を報知するように、出力装置30を制御する。具体的には、制御部14は、衝突領域Rc内の位置が選択されると、表示装置31に
図19に示すウィンドウW1を表示して、移動を実行するか否かを利用者に選択させてもよい。
【0080】
ウィンドウW1上で移動実行が選択されると(ステップS69YES)、制御装置10は、衝突領域中での移動速度を制限しながらステージ101を選択したXY位置へ移動させる(ステップS70)。ここでは、制御部14は、ステージ101の衝突領域内での移動速度を安全領域よりも低い速度に制限するようにステージ101を制御する。
【0081】
以上の様に、顕微鏡システム1は、
図22に示す処理を行うことによっても、第4及び第5の実施形態と同様に、ステージの移動に伴い対物レンズが衝突した場合の被害を最小限に抑えることができる。また、
図22に示す処理では、衝突領域内への移動が指示されると、衝突可能性が報知される。これにより、利用者が観察位置の選択を見直すことができる。
【0082】
(第7の実施形態)
図23は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。本実施形態は、利用者が衝突領域内への移動を指示した場合に、移動開始前に加えて衝突領域内を移動中にも衝突可能性を報知する点が、第6の実施形態とは異なっている。以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図23に示す処理について説明する。
【0083】
図23のステップS71からステップS79及びステップS81の処理は、
図22のステップS61からステップS70の処理と同様である。制御装置10は、衝突領域内を移動中に衝突可能性を報知する(ステップS80)。ここでは、制御部14は、ステージ101が衝突領域内を移動中に出力装置30が対物レンズ103の衝突の可能性を報知するように、出力装置30を制御する。
【0084】
なお、ステップS78で衝突可能性を報知する出力装置30と、ステップS80で衝突可能性を報知する出力装置30は、同じ装置であっても異なる装置であってもよい。例えば、ステップS78で表示装置31が衝突可能性を報知し、ステップS80でスピーカーやLEDランプが衝突可能性を報知してもよい。
【0085】
以上の様に、顕微鏡システム1は、
図23に示す処理を行うことによっても、第4から第6の実施形態と同様に、ステージの移動に伴い対物レンズが衝突した場合の被害を最小限に抑えることができる。また、
図23に示す処理では、衝突領域内を移動中に衝突可能性が報知されるため、利用者は衝突が起こり得るタイミングを把握することが可能であり、衝突に事前に備えることができる。このため、衝突発生後に即座にステージ101を停止して被害をさらに小さく抑えることができる。
【0086】
(第8の実施形態)
図24は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。本実施形態は、衝突領域内でステージ101に速度制限を課さない点が、第5の実施形態とは異なっている。以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図24に示す処理について説明する。
【0087】
図24のステップS91からステップS95の処理は、
図21のステップS51からステップS55の処理と同様である。また、
図24のステップS96の処理は、
図21のステップS57の処理と同様であり、移動先によらずステージ101が制御される。
【0088】
以上の様に、顕微鏡システム1は、
図22に示す処理を行うことによっても、第5の実施形態と同様に、衝突領域が予め表示されるため、利用者が衝突領域内への移動を自発的に回避することで、対物レンズ103の衝突を回避することができる。
【0089】
(第9の実施形態)
図25は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
図26及び
図27は、本実施形態における開口部と制限領域の関係の例について説明するための図である。上述した実施形態では、安全領域の外側の領域全体を衝突領域とする例で説明したが、衝突領域は衝突可能性の違いによってさらに細分化してもよい。本実施形態では、安全領域の外側の領域を衝突領域として定義する点は、上述した実施形態と同様であるが、衝突領域が、ステージの移動が禁止される禁止領域とステージの移動速度が制限される制限領域を含む点が上述した実施形態とは異なっている。
【0090】
ステージ101の移動により、対物レンズが
図26及び
図27に示す容器ホルダ(容器ホルダH1、容器ホルダH2)の開口部APの外側に移動しようとすると、対物レンズの種別によらず容器ホルダと衝突してしまう。より詳細には、対物レンズの太さを考慮すると、対物レンズは開口部APの縁部から対物レンズの半径分だけ内側(境界B2)までしか移動できない。このため、開口部APの縁部から対物レンズの半径分だけ内側の境界B2の内部をステージ101の可動範囲として定義する。そして、安全領域との境界B1と可動範囲を示す境界B2の間の領域を、衝突領域のうちの制限領域と定義し、境界B2の外側の領域を、衝突領域のうちの禁止領域と定義する。
【0091】
この場合、領域情報は、
図26に示すように容器がペトリディッシュである場合には、制限領域の内縁を画定する半径と制限領域の外縁を半径の計2つの半径であってもよい。つまり、境界B1の半径と境界B2の半径であってもよい。また、領域情報は、
図27に示すように容器がマイクロプレートである場合には、制限領域の内縁を画定する2点の座標と制限領域の外縁を画定する2点の座標の計4点の座標であってもよい。つまり、境界B1の左上と右下の座標と境界B2の左上と右下の座標であってもよい。
【0092】
以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図25に示す処理について説明する。
図25のステップS101からステップS104の処理は、
図8のステップS11からステップS14の処理と同様である。
【0093】
制御装置10は、禁止領域内又は制限領域内への移動が指示されたか否かを判定し(ステップS105、ステップS107)、判定結果に応じたステージ101の制御を行う。具体的には、制御装置10は、禁止領域内への移動が指示されたと判定すると、ステージ101の制限領域内での移動速度を衝突領域外(安全領域)よりも低い速度に制限し、且つ、ステージ101の禁止領域内への移動を禁止するように、ステージ101を制御する(ステップS106)。制御装置10は、制限領域内への移動が指示されたと判定すると、ステージ101の制限領域内での移動速度を衝突領域外(安全領域)よりも低い速度に制限しながら選択したXY位置へ移動するように、ステージ101を制御する(ステップS108)。制御装置10は、安全領域内への移動が指示されたと判定すると、選択したXY位置へ移動するように、ステージ101を制御する(ステップS109)。
【0094】
以上の様に、顕微鏡システム1は、
図25に示す処理を行うことで、衝突可能性の高い領域への移動を禁止しながら、衝突可能性が比較的低い領域への移動を許容することができる。また、ステージの移動に伴い対物レンズが衝突した場合の被害を最小限に抑えることもできる。さらに、衝突可能性が比較的低い領域を制限付きで移動可能にするため、衝突可能性がある衝突領域全体を移動禁止とする場合よりも観察可能な範囲を広く確保することができる。
【0095】
(第10の実施形態)
図28は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。
図29から
図31は、本実施形態に係るステージナビゲータの表示例を示した図である。本実施形態は、衝突領域(制限領域と禁止領域)が表示される点が、第9の実施形態とは異なっている。以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図28に示す処理について説明する。
【0096】
図28のステップS111からステップS113及びステップS115からステップS120の処理は、
図25のステップS101からステップ109の処理と同様である。ステップS114では、制御装置10は、マクロ画像上に制限領域Rrと禁止領域Reを表示する。具体的には、制御部14は、例えば、
図29に示すように、ステージ101の移動指示を受け付けるGUI領域に表示された容器の画像上に表示装置31が制限領域Rrと禁止領域Reを表示するように、表示装置31を制御する。
【0097】
以上の様に、顕微鏡システム1は、
図28に示す処理を行うことで、第9の実施形態と同様に、衝突可能性の高い領域への移動を禁止ながら、衝突可能性が比較的低い領域への移動を許容することができる。また、ステージの移動に伴い対物レンズが衝突した場合の被害を最小限に抑えることもできる。また、衝突可能性が比較的低い領域を制限付きで移動可能にするため、衝突可能性がある衝突領域全体を移動禁止とする場合よりも観察可能な範囲を広く確保することができる。さらに、
図28に示す処理では、禁止領域と制限領域が予め区別して表示されるため、衝突可能性の違いを把握しながら利用者に観察位置を選択させることができる。
【0098】
図28及び
図29では、禁止領域と制限領域の両方を表示する例を示したが、ステップS114では、
図30及び
図31に示すように、制限領域Rrのみを表示してもよい。制限領域Rrが表示されることで、その内側が安全領域であり、その外側が禁止領域であることを把握することができるからである。
【0099】
(第11の実施形態)
図32は、本実施形態に係る動作制御処理のフローチャートを示した図である。本実施形態は、制限領域内でステージ101に速度制限を課さない点が、第10の実施形態とは異なっている。以下、
図7に示すアプリケーション画面上で利用者がステージナビゲータを操作して観察位置を変更する場合を例に、
図32に示す処理について説明する。
【0100】
図32のステップS121からステップS126の処理は、
図28のステップS111からステップS116の処理と同様である。制御装置10は、禁止領域内への移動が指示されたと判定すると、ステージ101の禁止領域内への移動を禁止するように、ステージ101を制御する(ステップS127)。ステップS127の処理は、
図8のステップS17の処理と同様である。一方で、制御装置10は、禁止領域への移動が指示されていない、つまり、安全領域又は制限領域への移動が指示された、と判定すると、選択したXY位置へ移動するように、ステージ101を制御する(ステップS128)。ステップS128の処理は、
図28のステップS120の処理と同様である。
【0101】
以上の様に、顕微鏡システム1は、
図32に示す処理を行うことによっても、第10の実施形態と同様に、衝突可能性の高い領域への移動を禁止ながら、衝突可能性が比較的低い領域への移動を許容することができる。また、禁止領域と制限領域が予め区別して表示されるため、衝突可能性の違いを把握しながら利用者に観察位置を選択させることができる点も、第10の実施形態と同様である。さらに、衝突可能性が比較的低い領域を利用者に認識させた上で移動可能にするため、衝突可能性がある衝突領域全体を移動禁止とする場合よりも観察可能な範囲を広く確保することができる。
【0102】
図33は、上述した実施形態に係る制御装置10を実現するためのコンピュータのハードウェア構成を例示した図である。
図33に示すコンピュータ200は、例えば、プロセッサ201、メモリ202、記憶装置203、読取装置204、通信インタフェース206、及び入出力インタフェース207を備える。なお、プロセッサ201、メモリ202、記憶装置203、読取装置204、通信インタフェース206、及び入出力インタフェース207は、例えば、バス208を介して互いに接続されている。
【0103】
プロセッサ201は、例えば、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサやマルチコアプロセッサであってもよい。プロセッサ201は、記憶装置203に格納されているプログラムを読み出して実行することで、
図3、
図8、
図15、
図18、
図20から
図25、
図28、
図32等で例示された制御処理、すなわち検出部11、取得部13、制御部14等の少なくとも一部またはすべての機能を実行する。
【0104】
メモリ202は、例えば、半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んでいてよい。記憶装置203は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、または外部記憶装置である。これらの少なくとも一部またはすべては、記憶部12として動作する。
【0105】
読取装置204は、例えば、プロセッサ201の指示に従って着脱可能記憶媒体205にアクセスする。着脱可能記憶媒体205は、例えば、半導体デバイス、磁気的作用により情報が入出力される媒体、光学的作用により情報が入出力される媒体などにより実現される。なお、半導体デバイスは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリである。また、磁気的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、磁気ディスクである。光学的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray Disc等(Blu-rayは登録商標)である。
【0106】
通信インタフェース206は、例えば、プロセッサ201の指示に従って、他の装置(顕微鏡100、顕微鏡コントローラ20など)と通信する。入出力インタフェース207は、例えば、出力装置30及び入力装置40とのインタフェースである。
【0107】
プロセッサ201が実行するプログラムは、例えば、下記の形態でコンピュータに提供される。
(1)記憶装置203に予めインストールされている。
(2)着脱可能記憶媒体205により提供される。
(3)プログラムサーバなどのサーバから提供される。
【0108】
なお、
図33を参照して述べた制御装置を実現するためのコンピュータのハードウェア構成は例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の構成の一部が、削除されてもよく、また、新たな構成が追加されてもよい。また、別の実施形態では、例えば、上述の処理装置の一部または全部の機能がFPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System-on-a-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、およびPLD(Programmable Logic Device)などの電気回路によるハードウェアとして実装されてもよい。
【0109】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の顕微鏡システム、顕微鏡システムの動作方法、プログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0110】
上述したように、衝突領域は、対物レンズや容器によって異なる。このため、上述した実施形態では特に言及していないが、制御部14は、観察光路上に配置された対物レンズの切替、又は、ステージ101に置かれた容器の切替を検出すると、
図34に示すように、容器の画像上に表示された衝突領域を示す情報を表示装置31が更新するように、表示装置31を制御することが望ましい。
図34には、対物レンズの切替又は容器の切替によって、衝突領域が広がった様子が示されている。
【0111】
第10の実施形態では、禁止領域と制限領域の両方を表示する例と、制限領域のみを表示する例を示したが、禁止領域と制限領域の表示は、利用者が設定可能であってもよい。例えば、
図35に示すように、アプリケーション画面の領域R5で設定可能であってもよい。
【0112】
上述した実施形態では、容器種別情報が容器の形状の情報と容器の材質の情報を含む例を示したが、容器種別情報は、容器をさらに詳細に特定する情報を含んでもよい。これは、容器の形状と容器の材質が特定されても(例えば、容器がプラスチック製のマクロプレートと特定されても)、
図34に示すように、容器のタイプによって観察面に相当するウェル底面P3の高さは様々に異なり得るからである。
【0113】
図36(b)に示すマイクロプレートMgは、材質に起因するウェル底の厚さの違いによって、
図36(a)に示すマイクロプレートMpとは異なる高さの観察面(ウェル底面P3)を有している。
図36(c)に示すマイクロプレートMp1と
図36(d)に示すマイクロプレートMp2は、容器のタイプの違いによって、
図36(a)に示すマイクロプレートMpとは異なる高さの観察面(ウェル底面P3)を有している。
【0114】
このため、容器種別情報には、
図37に示すように、容器のタイプ(例えば、品番など)の情報が含まれてもよい。この場合も、容器のタイプは、
図38に示すように、アプリケーション画面の領域R5で設定可能であってもよく、検出部11は、
図38に示す領域R5の“容器”タブの設定を読み出すことで容器種別情報を検出してもよい。
【0115】
様々なタイプの容器に対応するために、タイプ毎の情報を記憶部12に記憶する代わりに、利用者が領域情報を調整する手段を提供してもよい。顕微鏡システム1は、例えば、記憶部12に記憶されている領域情報を編集可能とする編集画面を利用者に提供してもよい。編集画面で領域情報を直接編集することで、使用する容器のタイプに合わせて領域情報を更新してもよい。また、編集画面は、領域情報を直接編集する代わりに、
図39に示すように、観察高さなどのパラメータを指定する画面であってもよい。使用する容器のタイプに合わせて、パラメータを変更することで、領域情報が再計算されて領域情報が更新されてもよい。さらに、編集画面は、容器の画像上に表示された衝突領域の境界をドラッグ操作などで動かすことで、領域情報を更新する画面であってもよい。編集画面を提供し、必要に応じて領域情報を調整可能とすることで、任意の容器に対する対物レンズ103の衝突を回避することができる。
【0116】
また、領域情報を編集する編集画面では、新たな領域情報を追加する機能が提供されてもよい。例えば、利用者が新たな対物レンズを購入した場合には、新たな対物レンズを含む組み合わせに関連して領域情報を記憶部12に記憶させてもよい。
【0117】
また、上述した実施形態では、利用者がライブ観察位置を指定する場合を例に説明したが、上記の制御は、利用者が撮影位置を指定することでステージ101の移動が発生する場合に適用されてもよい。例えば、貼り合わせ画像を生成するために利用者が撮影領域を指定したときに、撮影領域の一部が衝突領域に重なる場合に、顕微鏡システム1は、撮影を停止して貼り合わせ画像の生成を断念してもよい。
【0118】
また、上述した実施形態では、衝突領域内でのステージ101の移動速度を安全領域よりも低下させる例を示したが、ステージ101の移動速度は、衝突領域内の位置に応じて変化させてもよい。例えば、衝突領域の中でも原点から離れた位置ほど移動速度を低下させてもよい。
【0119】
また、上述した実施形態では、領域情報を顕微鏡システム1の記憶部12から取得する例を示したが、領域情報は、例えば、クラウドサーバなどの顕微鏡システム1外の装置から取得してもよい。例えば、取得部13は、顕微鏡システム1外の装置にレンズ種別情報と容器種別情報を含むリクエストを送信することで、顕微鏡システム1外の装置から領域情報を取得してもよい。
【0120】
本明細書において、“Aに基づいて”という表現は、“Aのみに基づいて”を意味するものではなく、“少なくともAに基づいて”を意味し、さらに、“少なくともAに部分的に基づいて”をも意味している。即ち、“Aに基づいて”はAに加えてBに基づいてもよく、Aの一部に基づいてよい。
【符号の説明】
【0121】
1 顕微鏡システム
10 制御装置
11 検出部
12 記憶部
13 取得部
14 制御部
20 顕微鏡コントローラ
30 出力装置
31 表示装置
40 入力装置
100 顕微鏡
101 ステージ
102 光源
103 対物レンズ
104 レボルバ
105 デジタルカメラ
200 コンピュータ
201 プロセッサ
202 メモリ
203 記憶装置
204 読取装置
205 記憶媒体
206 通信インタフェース
207 入出力インタフェース
208 バス
Rc 衝突領域
Re 禁止領域
Rr 制限領域
Rs 安全領域