(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144443
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/64 20060101AFI20231003BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20231003BHJP
F04B 53/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
F04D29/64 F
F16F15/08 E
F04B53/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051416
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】澤田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】桐生 大輔
(72)【発明者】
【氏名】永井 淑仁
【テーマコード(参考)】
3H071
3H130
3J048
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB03
3H071CC32
3H071CC34
3H071DD82
3H071EE15
3H130AA03
3H130AB07
3H130AB22
3H130AB42
3H130AC13
3H130BA16A
3H130BA97A
3H130CA21
3H130CA23
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130EA01A
3H130EA06A
3H130EA07A
3H130EA08A
3H130EB01A
3H130EB02A
3H130EB05A
3H130EC08A
3H130ED02A
3J048AA01
3J048BA12
3J048DA08
3J048EA08
(57)【要約】
【課題】弾性部材が離脱しにくく、また形成費用が高くなりにくい電動ポンプを提供すること。
【解決手段】電動ポンプ10は、ハウジング20を備えたポンプ本体12と、ハウジング20の外周面に配置された弾性部材50とを備え、外周面には、弾性部材50が配置される弾性部材配置部22が設けられ、弾性部材配置部22には、突起部30が設けられ、突起部30は、柱部301と、柱部301から延在する留め部302と、を有し、留め部302は、掛かり部302Hを有し、弾性部材50は、その長手方向の両方の端部にそれぞれ配置された穴52を備え、穴52は、突起部30と係合し、2つの端部は、その厚さ方向に重なり、2つの端部が重なった部分と、その他の部分とで、弾性部材配置部22の表面から、弾性部材50のハウジング20の径方向における外側表面までの距離が等しい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ部と、前記ポンプ部を覆うハウジングと、を備えたポンプ本体と、
前記ハウジングの外周面に配置された弾性部材と、を備え、
前記外周面には、前記弾性部材が配置される弾性部材配置部が設けられ、
前記弾性部材配置部には、突起部が設けられ、
前記突起部は、前記外周面からその法線方向に延在する柱部と、前記柱部から延在する留め部と、を備え、
前記留め部は、前記ハウジングの周方向に前記柱部よりも突出する掛かり部を有し、
前記弾性部材は、その長手方向の両方の端部にそれぞれ配置された穴を備え、
前記穴は、前記突起部と係合し、
前記の2つの端部は、その厚さ方向に重なり、
前記の2つの端部が重なった部分と、その他の部分とで、前記弾性部材配置部の表面から、前記弾性部材の前記ハウジングの径方向における外側表面までの距離が等しい、
電動ポンプ。
【請求項2】
前記柱部及び前記留め部は、いずれも、略円柱型であり、
前記留め部の直径は、前記柱部の直径よりも大きい、
請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記弾性部材の前記穴は、平面視において円型であり、
前記穴の直径は、前記留め部よりも小さく、
前記の2つの端部が重なった部分の、前記弾性部材配置部の表面から、前記弾性部材の前記ハウジングの径方向における外側表面までの距離は、前記柱部の前記法線方向の長さと同等である、
請求項2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記弾性部材配置部には、ハウジング凸部が設けられ、
前記弾性部材配置部における周方向と直交する方向を幅方向とし、前記弾性部材配置部の前記幅方向の中央部を結ぶ線を中央線とした場合、
前記ハウジング凸部は、前記中央線を対象軸としたとき、線対称ではない形状を有し、
前記弾性部材の前記弾性部材配置部に面する側には、弾性部材凸部が設けられ、
前記弾性部材凸部には、前記ハウジング凸部に対応する位置に、切り欠き部が形成されている、
請求項1から3の何れか1項に記載の電動ポンプ。
【請求項5】
ポンプ部と、前記ポンプ部を覆うハウジングと、を備え、
前記ハウジングの外周面には、弾性部材が配置される弾性部材配置部が設けられ、
前記弾性部材配置部には、突起部が設けられ、
前記突起部は、前記弾性部材配置部から、前記外周面の法線方向に延在する柱部と、前記柱部から延在する留め部と、を備え、
前記留め部は、前記ハウジングの周方向に前記柱部よりも突出する掛かり部を有する、
ポンプ本体。
【請求項6】
ポンプ部を覆うための、電動ポンプ用のハウジングの製造方法であって、
前記ハウジングの外周面には、弾性部材が配置される弾性部材配置部が設けられ、
前記弾性部材配置部には、突起部が設けられ、
前記突起部は、前記弾性部材配置部から、前記外周面の法線方向に延在する柱部と、前記柱部から延在する留め部と、を備え、
前記留め部は、前記ハウジングの周方向に前記柱部よりも突出する掛かり部を有し、
前記弾性部材配置部の少なくとも一部と、前記突起部とは、一体として成形されており、
前記突起部に対応する位置にパーティングラインを有する金型に樹脂材料を充填するステップと、
前記樹脂材料を硬化させるステップと、
前記金型を前記パーティングラインで分割して、成形された前記の弾性部材配置部の少なくとも一部及び突起部を取り出すステップと、
を備えるハウジングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両には、冷却水などを循環させるための電動ポンプが用いられる。電動ポンプを車両に取り付ける場合、電動ポンプの振動が車両に伝わることを抑制するために、電動ポンプと留め具との間に、弾性部材を介在させる技術が知られている。
特許文献1には、ポンプ本体の外周に板状の弾性部材を巻き付ける技術が記載されている。この技術では、弾性部材を固定するために、弾性部材と係合する突起部がハウジングに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電動ポンプには、巻き付けた弾性部材が離脱しやすいという問題がある。ハウジングに設けられた突起部が、弾性部材の離脱を困難にする形状を有していないためである。
また、従来の電動ポンプでは、突起部がハウジングに複数設けられている。そのため、ハウジングの形成費用が高くなりやすいという問題がある。
【0005】
本発明は、弾性部材が離脱しにくく、また形成費用が高くなりにくい電動ポンプを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動ポンプは、ポンプ部と、前記ポンプ部を覆うハウジングと、を備えたポンプ本体と、前記ハウジングの外周面に配置された弾性部材と、を備え、前記外周面には、前記弾性部材が配置される弾性部材配置部が設けられ、前記弾性部材配置部には、突起部が設けられ、前記突起部は、前記外周面からその法線方向に延在する柱部と、前記柱部から延在する留め部と、を包含し、前記留め部は、前記ハウジングの周方向に前記柱部よりも突出する掛かり部を包含し、前記弾性部材は、その長手方向の両方の端部にそれぞれ配置された穴を備え、前記穴は、前記突起部と係合し、前記の2つの端部は、その厚さ方向に重なり、前記の2つの端部が重なった部分と、その他の部分とで、前記弾性部材配置部の表面から、前記弾性部材の前記ハウジングの径方向における外側表面までの距離が等しい電動ポンプである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弾性部材が離脱しにくく、また形成費用が高くなりにくい電動ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】本発明の弾性部材の斜視図であり、(a)は正しい巻き付け方を示し、(b)は誤った巻き付け方を示す。
【
図4】締結具が備えられた本発明の電動ポンプの斜視図である。
【
図7】本発明の他の形状の突起部を示すポンプ本体の斜視図である。
【
図8】本発明の他の位置に配置された突起部を示すポンプ本体の斜視図である。
【
図9】本発明のハウジング及び突起部を示す斜視図である。
【
図10】本発明のハウジング凸部が設けられたポンプ本体の側面図である。
【
図11】本発明の他の構成の弾性部材を示す斜視図である。
【
図12】本発明の他の構成のハウジング凸部が設けられたポンプ本体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<電動ポンプ>
図1に基づいて、本発明の実施形態の電動ポンプ10について説明する。
図1は、電動ポンプ10の概要を示す斜視図である。
図1に示すように、電動ポンプ10は、ポンプ本体12と、弾性部材50とを備える。
【0010】
<ポンプ本体>
ポンプ本体12は、ポンプ部(不図示)と、モータ部(不図示)と、ケース13とを備える。
モータ部は、ポンプ部を駆動するモータである。ケース13は、ポンプ部及びモータ部を覆う部材である。ポンプ部及びモータ部は、ケース13に覆われているため、
図1に示されていない。
【0011】
<ケース>
ケース13は、第1ケース部14と、第2ケース部16と、ハウジング20とを備える。
ハウジング20は、両端が開口した略円筒状に形成される。ハウジング20は、モータ部を覆う。
第1ケース部14及び第2ケース部16は、それぞれ、ハウジング20の一端側の開口部分及び他端側の開口部分を塞ぐように取り付けられ、ハウジング20と共に、ケース13を構成する。
第1ケース部14は、ポンプ本体12における吸入口141及び吐出口142を備える。
【0012】
<弾性部材>
弾性部材50は、ポンプ本体12に巻き付けられる部材である。弾性部材50は、ゴム材などの弾性を有する材料で形成されている。
図2に、弾性部材50が巻き付けられていないポンプ本体12の斜視図を示す。また、
図3(a)及び
図3(b)に、弾性部材50の斜視図を示す。
図1から
図3(a)及び
図3(b)に示すように、弾性部材50は、ハウジング20の外周面21に配置されている。詳しくは、
図2に示すように、ハウジング20の外周面21には弾性部材配置部22が設けられている。弾性部材配置部22は、ハウジング20の外周に周方向に延在する帯状の部分である。
図1に示すように、弾性部材50は、ハウジング20の外周面21における弾性部材配置部22に配置される。弾性部材50の詳細については、後述する。
【0013】
<締結具>
図4は、締結具70が備えられた電動ポンプ10の斜視図である。
電動ポンプ10は、装置に固定される際、締結具70を介して装置に固定される。
締結具70は、電動ポンプ10を車両などの装置に固定する際に使用されるとめ具である。締結具70は、金属などで形成されている。
図4に示すように、締結具70は、帯状の金属板部材の一端部及び他端部を除く部分が円形に湾曲されると共に一端部及び他端部が重なり合った形状に形成される。締結具70は、湾曲された部分がポンプ本体12に巻き付けられた弾性部材50の外周に沿うように配置される。締結具70の一端部及び他端部には、重なり合った状態で貫通する締結穴701が形成され、この締結穴701に挿入されたねじ(不図示)によって、装置(不図示)に固定される。
装置に固定された電動ポンプ10において、弾性部材50は、電動ポンプ10と装置との間で振動を吸収する役目を果たす。それにより、電動ポンプ10の振動が装置に伝わることを抑制したり、装置の振動が電動ポンプ10に伝わることを抑制したりできる。
【0014】
<弾性部材の固定>
本実施形態の電動ポンプ10では、ハウジング20の弾性部材配置部22に突起部30が設けられている。また、弾性部材50には、係合穴52が設けられている。
突起部30は、弾性部材50を固定するために弾性部材配置部22から突出する部分である。係合穴52は、突起部30にはめ込まれることで、突起部30と係合することが可能な穴である。
図1に示すように、弾性部材50の係合穴が突起部30にはめ込まれることにより、弾性部材50がポンプ本体12に固定される。
【0015】
<突起部>
図5及び
図6に基づいて突起部30について説明する。
図5は、
図1のA-A線断面図であり、
図6は、
図2のB-B線断面図である。
突起部30は、柱部301と、留め部302とを包含する。
柱部301は、弾性部材配置部22から突出し、その先端に配置された留め部302を支える部分である。
留め部302は、柱部301の先端から延在し、突起部30にはめ込まれた弾性部材50を、突起部30から外れにくくする部分である。
【0016】
<突起部の向き>
弾性部材配置部22は、
図2に示すとおり、円柱の側面のように所定の幅をもって円周を結んでいる。突起部30は、弾性部材配置部22の表面からその円周の径方向に突出している。すなわち、突起部30は、弾性部材配置部22からその法線方向に突出している。
【0017】
<突起部の位置>
突起部30は、所定の幅をもった弾性部材配置部22における、幅の中央部分に配置されている。
図2に、弾性部材配置部22の幅方向を矢印W2で示す。また、
図2に、弾性部材配置部22の周方向を矢印C2で示す。
図2に示す線CLは、弾性部材配置部22の幅方向の中央線である。中央線CLは、弾性部材配置部22の幅方向W2の中央の位置を、周方向C2に延びる。
図2に示すように、突起部30は、中央線CL上に配置されている。
【0018】
<突起部の形状>
柱部301は、円柱型の形状を有している。また、留め部302もほぼ円柱型の形状を有している。
柱部301と留め部302とでは、その円柱型における直径が異なる。留め部302の直径は、柱部301の直径よりも大きい。
そして、留め部302は、
図6に示すように、弾性部材配置部22の周方向C2に柱部301よりも突出する掛かり部302Hを有する。
これにより、留め部302は、柱部301にはめ込まれた弾性部材50が、柱部301から抜けて外れることを抑制する。弾性部材50の係合穴52が掛かり部302Hに引っかかり、弾性部材50が留め部302から抜けにくくなるためである。
【0019】
<突起部の直径>
柱部301及び留め部302の直径について説明する。
図5及び
図6に、柱部301の直径をD1として示し、留め部302の直径をD2として示す。
D1とD2とは、D1<D2との関係を有する。
図5及び
図6には、D1×1.5=D2である場合を例示している。
柱部301の直径D1と、留め部302の直径D2とを以上のような関係にすることで、弾性部材50の係合穴52を突起部30にはめ込む際のはめ込みやすさと、突起部30にはめ込まれた弾性部材50の外れにくさとを両立することができる。
【0020】
<留め部の形状>
留め部302は、上述のように、ほぼ円柱型の形状を有している。ただ、留め部302の形状は、完全な円柱型ではない。留め部302には、テーパー部302Tが設けられているためである。
テーパー部302Tとは、円柱型の形状からその一部が削り取られた部分である。
テーパー部302Tは、留め部302の弾性部材配置部22に遠い方の角部に設けられている。
テーパー部302Tは、弾性部材50の係合穴52を突起部30にはめ込む際のはめ込みやすさを向上させる。
一方、留め部302の弾性部材配置部22に近い方の角部には、テーパー部は設けられていない。そのため、突起部30の柱部301にはめ込まれた弾性部材50が突起部30から外れやすくなることはない。
【0021】
<突起部の他の形状>
突起部30の形状は、円柱型には限定されない。例えば、三角柱型や四角柱型にすることができる。
図7は、他の形状の突起部30を示すポンプ本体12の斜視図である。
図7に示すように、突起部30は、その柱部301及び留め部302の形状を三角柱型にすることができる。
【0022】
<突起部の他の配置>
突起部30の配置は、中央線CL上には限定されない。例えば、弾性部材配置部22の幅方向W2における中央部以外に設けることができる。
図8は、他の位置に配置された突起部30を示すポンプ本体12の斜視図である。
図8に示すように、突起部30は、中央線CLから幅方向W2にずれた位置に配置することができる。
【0023】
<誤組の防止>
図7に示した突起部30及び
図8に示した突起部30は、何れも、中央線CLを対称軸としたとき、線対称ではない形状を有する。これにより、弾性部材50の誤組を防止することができる。誤組とは、弾性部材50を弾性部材配置部22に、誤った向きで巻き付けることである。誤組については、後述する。
【0024】
<突起部の形成方法>
突起部30を弾性部材配置部22の設ける方法として、例えば次の方法がある。1つは、突起部30を弾性部材配置部22に取り付ける方法である。他には、突起部30と弾性部材配置部22とを一体として成形する方法である。この方法は、突起部30とハウジング20の少なくとも一部とを一体として成形する方法である。
突起部30を弾性部材配置部22に取り付ける方法では、突起部30となる部品を用意し、その部品を弾性部材配置部22に溶接などにより取り付ける。
突起部30と弾性部材配置部22とを一体として成形する方法については後述する。
【0025】
<弾性部材>
弾性部材50について、
図3(a)及び
図3(b)などに基づいて説明する。
帯長型の弾性部材50における、その長手方向の2つの端部を、第1端部501及び第2端部502とする。弾性部材50は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第1端部501と第2端部502とを重ね合わせることにより環状に形成され、弾性部材配置部22に配置されている。
【0026】
<弾性部材凸部と弾性部材凹部>
弾性部材50には、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、弾性部材凸部54が設けられている。
弾性部材50が弾性部材配置部22に配置された際に、弾性部材配置部22に面する側の弾性部材50の面を内面とする。
弾性部材凸部54は、弾性部材50の内面に設けられた突起である。
弾性部材50が、
図3(a)及び
図3(b)に示すように円を結んだ状態における、弾性部材50の周方向を、
図3(a)及び
図3(b)に矢印C1で示す。また、弾性部材50の幅方向をW2で示す。
弾性部材凸部54は、弾性部材50における、幅方向W1の一端から他端まで、幅方向W1に延在する。
また、弾性部材凸部54は、周方向C1において、一定の間隔をあけて、複数個設けられている。そのため、隣接する弾性部材凸部54の間に、弾性部材凹部56が形成される。
弾性部材凸部54及び弾性部材凹部56は、弾性部材50が弾性部材配置部22に配置された際に、弾性部材50とポンプ本体12との間での振動の伝搬を抑制することができる。
【0027】
<係合穴の直径>
図3(a)及び
図3(b)、
図5並びに
図6に基づいて、係合穴52についてより詳しく説明する。
弾性部材50の第1端部501及び第2端部502には、突起部30にはめ込まれる係合穴52が設けられている。係合穴52は、先に
図3(a)及び
図3(b)に示したように、平面視において円型である。係合穴52の直径は、
図5及び
図6に示すように、留め部302よりも小さい。留め部302が円柱型の形状を有している場合には、係合穴52の直径は、留め部302の直径D2よりも小さい。これにより、第1端部501及び第2端部502が突起部30にはめ込まれた際、弾性部材50を突起部30から抜けにくくすることができる。
さらに、弾性部材50の係合穴52の直径が柱部301の直径よりも小さい場合には、弾性部材50の弾性部材配置部22への固定がより強固になる。
また、第1端部501及び第2端部502が、留め部302を越えて、突起部30から抜けることを抑制する。留め部302の直径をD2は、柱部301の直径D1よりも大きいためである。
【0028】
<端部の形状と厚さ>
図3(a)及び
図3(b)、
図5並びに
図6に基づいて、第1端部501及び第2端部502の形状と厚さについて説明する。
図3(a)及び
図3(b)、
図5並びに
図6に示すように、第1端部501と第2端部502とは、重ね合わされた際に、互い違いにはまりあう形状を有している。すなわち、弾性部材50が弾性部材配置部22に配置された際、第1端部501は、第2端部502の内側に位置し、弾性部材配置部22に接する。一方、第2端部502は、第1端部501の外側に位置し、弾性部材配置部22には接さず、第1端部501に接する。
そして、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、弾性部材50は、第1端部501と第2端部502とが重ね合わされた部分と、その他の部分とで、見かけの厚さが同じである。第1端部501及び第2端部502は、重ね合わされた部分が他の部分よりも厚くならないように、該当する箇所の厚みが薄くされているためである。ここで見かけ厚さとは、弾性部材50が環状の形状になった状態における、弾性部材50の径方向の厚さを意味する。
【0029】
図5に基づいて具体的に説明する。
図5に見かけの厚さをD4として示す。
図5に示すように、見かけの厚さD4は、弾性部材配置部22の表面から、弾性部材50の外側表面58までの距離である。
本実施形態の電動ポンプ10では、第1端部501と第2端部502とが重ね合わされた部分と、その他の部分とで、弾性部材50の見かけの厚さD4が同じである。
これにより、電動ポンプ10を装置に取り付けることが容易になる。
図4に基づいて説明したように、電動ポンプ10は、弾性部材50の外側に配置された締結具70を介して装置に取り付けられる。弾性部材50の見かけの厚さD4が均一であれば、締結具70の形状を複雑な形状にすることなく、電動ポンプ10を装置にゆるみなく固定することができるためである。
【0030】
<突起部による固定>
図5及び
図6に、柱部301の高さをD3として示す。
図5及び
図6に示すように、第1端部501と第2端部502とが重ね合わされた部分の厚さ、すなわち、弾性部材50の見かけの厚さD4は、柱部301の高さD3と同じである。
これにより、第1端部501及び第2端部502が突起部30にはめ込まれた際、突起部30、特に留め部302は、弾性部材50を弾性部材配置部22にゆるみなく固定することができる。
【0031】
従来の電動ポンプでは、弾性部材をポンプ本体に取り付けたのち、電動ポンプを締結具で装置に固定するまでの間に、弾性部材がポンプ本体から外れることがある。
これに対して、本実施形態の電動ポンプ10では、弾性部材50が、上述のような構成を有る突起部30に係合されている。そのため、簡易な構造で、弾性部材50がポンプ本体12から外れることを抑制することができる。
【0032】
<ハウジングに突起部を備えさせる方法>
図9に基づいて、突起部30とハウジング20の少なくとも一部とを一体として成形する方法を説明する。
図9は、本実施形態のハウジング20及び突起部30を示す斜視図である。
図9の線PLは、パーティングラインを示す。
パーティングラインとは、次の意味を有する。すなわち、物を金型で成形する場合、成形された物を金型から取り出す際に金型を分割する必要がある。パーティングラインとは、その金型を分割する線を意味する。
本実施形態の電動ポンプ10では、線PLを金型成形の際のパーティングラインとすることで、突起部30と、ハウジング20の、弾性部材配置部22を含む少なくとも一部とを一体として成形することができる。突起部30を成形する金型の部分は、線PLをパーティングラインとした場合に、成形された突起部30に阻害されることなく分割することができるためである。
【0033】
具体的な製造方法は、例えば下記のようになる。
すなわち、突起部30に対応する位置にパーティングラインPLを有する金型に樹脂材料を充填するステップと、充填された樹脂材料を硬化させるステップと、金型をパーティングラインPLで分割して、充填された樹脂材料が硬化することで成形された弾性部材配置部22の少なくとも一部及び突起部30を取り出すステップと、を備える製造方法である。
これにより、突起部30が設けられた弾性部材配置部22を含むハウジング20を容易に形成することができる。
【0034】
<誤組の防止>
誤組の防止について説明する。
誤組とは、弾性部材50を弾性部材配置部22に巻き付ける際に、誤った方向に巻き付けることを意味する。
図3(a)及び
図3(b)に基づいて説明する。
図3(a)は、弾性部材50を弾性部材配置部22に巻き付ける際の、正しい弾性部材50の巻き付け方を示している。これに対し
図3(b)は、正しくない巻き付け方を示している。
図3(a)に示す巻き付け方を正組とし、
図3(b)に示す巻き付け方を誤組とする。なお、
図3(a)及び
図3(b)では、図面を見やすくするために、ハウジング20など、弾性部材50以外の部材を省略している。
誤組は、正組を上下反転させた組み方である。
図3(a)に示す正組では、第1端部501の係合穴52を起点とした場合、矢印Aの方向に弾性部材50を巻いていく。そして、第2端部502の係合穴52を第1端部501の係合穴52に重ねることで、弾性部材50を円形に巻く。
これに対し、
図3(b)に示す誤組では、第1端部501の係合穴52を起点とした場合、矢印Bの方向に弾性部材50を巻いていく。そして、第2端部502の係合穴52を、第1端部501の係合穴52に重ねることで、弾性部材50を円形に巻く。矢印Aと矢印Bとは、示す方向が逆方向である。
このように、正組と誤組とでは、弾性部材50を巻き付けていく方向が異なる。その結果、巻き付けられた弾性部材50は、正組と誤組とで、その上下が反転した形態となる。
【0035】
また、正組と誤組とでは、上述のような巻き付け方の相違から、切り欠き部541の幅方向W1における位置が相違する。すなわち、正組では、
図3(a)に示すように、切り欠き部541は幅方向W1における上方に位置する。これに対して、誤組では、
図3(b)に示すように、切り欠き部541は幅方向W1における下方に位置する。
【0036】
(突起部の形状による誤組防止)
誤組を防止する方法としては、突起部30の形状を、中央線CLを対象軸としたときに、線対称ではない形状とする方法がある。
突起部30のそのような形状としては、例えば
図7に示した形状がある。
図7に示した突起部30は、柱部301及び留め部302が三角柱型である。
突起部30の形状がこのような形状である場合、誤組をしようとすると、弾性部材50の係合穴52の形状が突起部30の形状と適合せず、係合穴52を突起部30にはめ込むことができない。それにより、誤組を防止することができる。
なお、
図7に示す突起部30の形状は例示である。中央線CLを対象軸として線対称ではない突起部30の形状は種々考えられる。それらは、いずれも誤組を防止する効果を奏する。
【0037】
(弾性部材の係合穴の形状)
なお、弾性部材50の係合穴52の形状は、突起部30の形状に対応させる。すなわち、突起部30の形状が
図2に示すように円柱型の場合には、係合穴52の形状は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように円形にする。
同様に、突起部30の形状が
図7に示すように三角柱型の場合には、係合穴52の形状は、三角形にする。
【0038】
(突起部の配置による誤組防止)
誤組を防止する他の方法としては、上述のように、突起部30を、弾性部材配置部22の中央線CL上以外の位置に配置する方法がある。
そのような突起部30の配置としては、例えば
図8に示した配置がある。
図8に示した突起部30は、弾性部材配置部22の中央線CLからずれて配置されている。
突起部30の配置がこのような配置である場合、誤組をしようとすると、弾性部材50の係合穴52の位置が、突起部30の位置と一致せず、係合穴52を突起部30にはめ込むことができない。それにより、誤組を防止することができる。
なお、
図8に示す突起部30の配置は例示である。突起部30を配置する、弾性部材配置部22の中央線CL上以外の位置には、種々が考えられる。また、それらは、いずれも誤組を防止する効果を奏する。
【0039】
(弾性部材の係合穴の位置)
なお、弾性部材50の係合穴52の位置は、突起部30の位置に対応させる。すなわち、突起部30の位置が中央線CLからずれた長さだけ、係合穴52の位置を移動させる。
【0040】
(ハウジング凸部による誤組防止)
誤組を防止する他の方法として、ハウジング20の弾性部材配置部22にハウジング凸部を形成する方法がある。
図10及び
図11に基づいて説明する。
図10は、弾性部材配置部22にハウジング凸部40が設けられたポンプ本体12の一部側面図である。
図10は、円柱の側面の形状に延在する弾性部材配置部22において、突起部30とは正反対の方向からポンプ本体12を見た際の図である。
ハウジング凸部40は、弾性部材配置部22の表面に形成された突起である。
弾性部材配置部22は、円柱の側面のように、所定の幅をもって周方向に延びている。ハウジング凸部40は、その円周表面に配置され、その表面から円周の径方向に突出している。すなわち、ハウジング凸部40は、弾性部材配置部22からその法線方向に突出している。
ハウジング凸部40は、第1凸部401と第2凸部402とを包含する。
第1凸部401は、ハウジング凸部40のなかで、弾性部材配置部22の中央線CLを対象軸として線対称な部分である。
第2凸部402は、ハウジング凸部40のなかで、弾性部材配置部22の中央線CLを対象軸として線対称ではない部分である。すなわち、ハウジング凸部40の非対称部分である。
弾性部材配置部22において、中央線CLに沿う方向を周方向とし、中央線CLと直交する方向を幅方向とする。
図10に、周方向を矢印C2で示し、幅方向を矢印W2で示す。
図10に示すハウジング凸部40では、第1凸部401は、弾性部材配置部22の幅方向W2における一端から他端まで、幅方向W2に延在する。一方、第2凸部402は、弾性部材配置部22の幅方向W2における一端において、周方向C2に延在する。
以上のようにハウジング凸部40は、略T字型の形状を有している。
【0041】
(ハウジング凸部に対応した弾性部材凸部)
図11に基づいて、弾性部材凸部54について説明する。
図11は、
図10に示したハウジング凸部40に適合するように形成された弾性部材50を示す斜視図である。
図11に示す弾性部材50では、弾性部材凸部54の一部に、切り欠き部541が設けられている。
切り欠き部541は、弾性部材凸部54の突起部分が一部切り取られた部分である。
図11に示す弾性部材では、隣接する2つの弾性部材凸部54の、幅方向W1における一端において、突起が切り取られている。
この切り取られた部分は、
図10に示すハウジング凸部40の第2凸部402に対応する部分である。すなわち、弾性部材50が弾性部材配置部22に配置された際、第2凸部402が切り欠き部541にはまる。
そのため、弾性部材50は、弾性部材配置部22に第2凸部402が設けられているにも関わらず、弾性部材配置部22の表面から浮き上がったりせずに、弾性部材配置部22に配置される。
【0042】
ここで、
図10に示す弾性部材配置部22及び
図11に示す弾性部材50は、誤組を防止することができる。
誤組をしようとした場合、第2凸部402が弾性部材凸部54に当接するため、弾性部材50を浮きなく弾性部材配置部22に巻き付けることができない。これにより、誤組を防止することができる。
【0043】
(位置ずれ)
第1凸部401は、弾性部材50が弾性部材配置部22に配置された際、周方向C2における弾性部材50の位置ずれを抑制する。
図10及び
図11から把握されるように、弾性部材50が弾性部材配置部22に配置された際、第1凸部401は、弾性部材50の弾性部材凹部56にはまる。
言い換えると、弾性部材凸部54の少なくとも一部は、第1凸部401の少なくとも一部に掛かる。ここで掛かるとは、当接することにより動きが制約されることをいう。
これにより、弾性部材50が、弾性部材配置部22において、周方向C2に位置ずれすることを抑制することができる。
【0044】
(第2凸部の他の形態)
図10では、ハウジング凸部40が略T字型である構成を示した。すなわち、第2凸部402が、弾性部材配置部22の幅方向W2の一端において、円周方向W2に延在する構成を示した。
第2凸部402の構成は、
図10に示した構成に限定されない。誤組を防止するとの観点からは、第2凸部402は、中央線CLを対象軸として線対称ではない形状を有すればよい。そのような形状としては、U字型やV字型を例示することができる。
第2凸部402の他の一例について、
図12に基づいて説明する。
図12は、
図10に対応する図であり、弾性部材配置部22に他の構成のハウジング凸部40が設けられたポンプ本体12の一部側面図である。
図10に記載されたハウジング凸部40はT字型であるのに対して、
図12に記載されたハウジング凸部40はY字型である。
すなわち、第2凸部402は、第1凸部401から、幅方向W2に対して斜め方向に、弾性部材配置部22の幅方向W2における一端まで延在している。また、第2凸部402は、第1凸部401を対称軸として、線対称に2つ設けられている。
【0045】
(弾性部材の切り欠き部)
なお、弾性部材50の切り欠き部541は、ハウジング凸部40の第2凸部402の形状に対応させる。すなわち、弾性部材50が弾性部材配置部22に配置された際に、第2凸部402が当接する位置に、切り欠き部541を形成する。
第2凸部402が
図12に示すような形状である場合、弾性部材凸部54の切り欠き部541もそれに合わせた位置に形成する。
これにより、
図10に示した構成と同様に誤組を防止することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 電動ポンプ
12 ポンプ本体
13 ケース
14 第1ケース部
141 吸入口
142 吐出口
16 第2ケース部
20 ハウジング
21 外周面
22 弾性部材配置部
30 突起部
301 柱部
302 留め部
302H 掛かり部
302T テーパー部
40 ハウジング凸部
401 第1凸部
402 第2凸部
50 弾性部材
501 第1端部
502 第2端部
52 係合穴
54 弾性部材凸部
541 切り欠き部
56 弾性部材凹部
58 外側表面
70 締結具
701 締結穴
CL 中央線
PL パーティングライン