(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144452
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01G4/30 201H
H01G4/30 516
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051427
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 結
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智紀
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF01
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
(57)【要約】
【課題】素体におけるクラックの発生を抑制し得る電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品1は、素体3と、素体3の端部上に配置されている外部電極5と、素体3内に配置されていると共に外部電極5に電気的に接続されている内部電極7,9と、外部電極5に電気的に接続されている金属端子20と、外部電極5と金属端子20とを電気的かつ物理的に接続しているはんだ30と、を備えている。外部電極5は、素体上に形成されている電極層E1と、電極層E1上に形成されている電極層E2と、電極層E1と電極層E2との界面に存在していると共に電極層E1と電極層E2との剥離を制御する領域Rと、を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体の端部上に配置されている外部電極と、
前記素体内に配置されていると共に前記外部電極に電気的に接続されている内部導体と、
前記外部電極に電気的に接続されている金属端子と、
前記外部電極と前記金属端子とを電気的かつ物理的に接続しているはんだと、を備え、
前記外部電極は、
前記素体上に形成されている下地層と、
前記下地層上に形成されているめっき層と、
前記下地層と前記めっき層との界面に存在していると共に前記下地層と前記めっき層との剥離を制御する剥離制御領域と、を有している、電子部品。
【請求項2】
前記剥離制御領域は、前記下地層と前記めっき層との密着強度を低下させ得る材料を含む、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記剥離制御領域は、前記材料を含むと共に点在している複数の領域を含む、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記材料は、金属酸化物又は有機物を含む、請求項2又は3記載の電子部品。
【請求項5】
前記有機物は、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物を含む、請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記金属端子は、前記外部電極との間に前記はんだが存在している状態で前記外部電極と対向している部分を有し、
前記外部電極と前記部分とが対向している方向から見て、前記はんだは、前記剥離制御領域の外縁より内側に位置している、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記外部電極と前記部分とが対向している前記方向から見て、前記はんだは、前記素体の外縁より内側に位置している、請求項6に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
知られている電子部品は、素体と、素体の端部上に配置されている外部電極と、素体内に配置されている内部導体と、金属端子と、はんだと、を備えている(たとえば、特許文献1)。内部導体は、外部電極に電気的に接続されている。金属端子は、外部電極に電気的に接続されている。はんだは、外部電極と金属端子とを電気的かつ物理的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電子部品が電子機器に実装されている場合、電子機器から電子部品に外力が働くことがある。電子機器は、たとえば、回路基板又は別の電子部品を含む。電子機器から電子部品に働く外力は、たとえば、電子機器のたわみに起因する。この外力は、金属端子、はんだ、及び外部電極を介して素体に作用する。電子機器からの外力が素体に作用すると、素体にクラックが生じるおそれがある。素体にクラックが生じた場合、たとえば、素体内に配置されている内部導体同士の間でショートが発生する。
【0005】
本発明の一つの態様は、素体におけるクラックの発生を抑制し得る電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述したように、電子機器からの外力は、はんだ、金属端子、及び外部電極を介して、素体に作用する。外部電極が、たとえば、素体上に形成されている下地層と、下地層上に形成されているめっき層と、を有している構成では、下地層とめっき層との間に界面が存在する。本発明者らは、上記界面に着目した。この結果、本発明者らは、この界面において下地層とめっき層との剥離を制御した場合、電子部品の構造を複雑化させることなく、電子機器からの外力が素体に作用しがたいことを新たに見出した。すなわち、下地層とめっき層との界面において、下地層とめっき層との剥離を制御する構成は、素体におけるクラックの発生を抑制し得る。
【0007】
一つの態様に係る電子部品は、素体と、素体の端部上に配置されている外部電極と、素体内に配置されている内部導体と、金属端子と、はんだと、を備えている。内部導体は、外部電極に電気的に接続されている。金属端子は、外部電極に電気的に接続されている。はんだは、外部電極と金属端子とを電気的かつ物理的に接続している。外部電極は、素体上に形成されている下地層と、下地層上に形成されているめっき層と、下地層とめっき層との界面に存在していると共に下地層とめっき層との剥離を制御する剥離制御領域と、を有している。
【0008】
上記一つの態様では、下地層とめっき層との界面に、下地層とめっき層との剥離を制御する剥離制御領域が存在する。電子機器から電子部品に外力が働く際に、剥離制御領域は下地層とめっき層との界面において、下地層とめっき層とを剥離させ得るように機能する。剥離制御領域により下地層とめっき層とが剥離した場合、電子機器からの外力が素体に作用しがたい。したがって、上記一つの態様は、素体におけるクラックの発生を抑制し得る。
【0009】
上記一つの態様では、剥離制御領域は、下地層とめっき層との密着強度を低下させ得る材料を含む。
剥離制御領域が下地層とめっき層との密着強度を低下させ得る材料を含む構成では、下地層とめっき層との剥離が生じやすい。この場合、剥離制御領域が下地層とめっき層との界面において下地層とめっき層との剥離を確実に制御するので、電子機器からの外力が外部電極を介して素体に確実に作用しがたい。したがって、上記一つの態様は、素体におけるクラックの発生を確実に抑制し得る。
【0010】
上記一つの態様では、剥離制御領域は、材料を含むと共に点在している複数の領域を含む。
剥離制御領域が下地層とめっき層との密着強度を低下させ得る材料を含むと共に点在している複数の領域を含んでいる構成では、外部電極において、下地層とめっき層との界面に上記複数の領域が存在する部分と、下地層とめっき層とが直接接している部分と、が存在する。この場合、下地層とめっき層とが直接接している部分において、下地層とめっき層との導通が確実にとられる。さらに、下地層とめっき層とが直接接している部分が、下地層とめっき層との密着強度の低下を抑制する。したがって、上記一つの態様は、下地層とめっき層との電気的接続を確保すると共に下地層とめっき層との密着強度の低下を抑制する。
【0011】
上記一つの態様では、材料は、金属酸化物又は有機物を含む。
下地層とめっき層との密着強度を低下させ得る材料が金属酸化物又は有機物を含む構成では、下地層とめっき層との剥離がより一層生じやすい。この場合、剥離制御領域が下地層とめっき層との界面において剥離をより一層確実に制御するので、電子機器からの外力が外部電極を介して素体により一層確実に作用しがたい。したがって、上記一つの態様は、素体におけるクラックの発生をより一層確実に抑制し得る。
【0012】
上記一つの態様では、有機物は、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物を含む。
有機物がシリコーン系化合物又はフッ素系化合物を含む構成は、下地層とめっき層との間の剥離を制御する剥離制御領域を簡易に実現する。
【0013】
上記一つの態様では、金属端子は、外部電極との間にはんだが存在している状態で外部電極と対向している部分を有している。外部電極と部分とが対向している方向から見て、はんだは、剥離制御領域の外縁より内側に位置している。
電子機器から電子部品に外力が働く場合、この外力は外部電極と金属端子とを電気的かつ物理的に接続しているはんだの端縁に集中しやすい。はんだが剥離制御領域の外縁より内側に位置している構成でははんだが剥離制御領域の外縁より内側に位置しているので、外力が集中しやすいはんだの端縁が剥離制御領域の外縁より内側に位置している。この場合、剥離制御領域が下地層とめっき層との界面において下地層とめっき層との剥離を確実に制御するので、電子機器からの外力が外部電極を介して素体に確実に作用しがたい。したがって、上記一つの態様は、素体におけるクラックの発生を確実に抑制し得る。
【0014】
上記一つの態様では、外部電極と部分とが対向している方向から見て、はんだは、素体の外縁より内側に位置している。
はんだが素体の外縁より内側に位置している構成は、素体におけるクラックの発生を抑制し得る電子部品を簡易に実現する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一つの態様は、素体におけるクラックの発生を抑制し得る電子部品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る電子部品の断面構成を示す図である。
【
図3】
図3は、外部電極の断面構成を示す図である。
【
図5】
図5は、外部電極の断面構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の変形例に係る電子部品の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1~
図4を参照して、本実施形態に係る電子部品の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る電子部品の断面構成を示す図である。
図3は、外部電極の断面構成を示す図である。
図4は、外部電極の構成を示す図である。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、電子部品1は、素体3と、外部電極5と、金属端子20と、はんだ30と、を備えている。本実施形態では、電子部品1は、一対の外部電極5と、一対の金属端子20と、一対のはんだ30と、を備えている。電子部品1は、たとえば、不図示の電子機器に実装される。電子部品1が実装される電子機器は、たとえば、回路基板又は別の電子部品を含む。電子部品1は、素体3及び外部電極5を有する一つの素子と、金属端子20と、素子と金属端子20とを接続するはんだ30と、を備えている。本実施形態では、素子は、積層コンデンサを含む。素子は、積層コンデンサ以外の素子を含んでいてもよい。
【0020】
素体3は、直方体形状を呈している。直方体形状は、たとえば、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。素体3は、一対の側面3aと、一対の側面3cと、一対の端面3eと、を有している。本実施形態では、一対の側面3aは第一方向D1で互いに対向し、一対の側面3cは第二方向D2で互いに対向し、一対の端面3eは第三方向D3で互いに対向している。一対の側面3a、一対の側面3c、及び一対の端面3eは、素体3の外表面を構成している。一対の側面3a及び一対の側面3cは、それぞれ一対の端面3eと隣り合うと共に、一対の端面3eを接続するように第三方向D3に延在している。
【0021】
第一方向D1は、素体3の高さ方向であり、第二方向D2は、素体3の幅方向であり、第三方向D3は、素体3の長さ方向である。素体3の高さは、0.05mm以上5mm以下である。素体3の幅は、0.05mm以上10mm以下である。素体3の長さは、0.05mm以上12mm以下である。本実施形態では、素体3の高さは、5mmであり、素体3の幅は、5mmであり、素体3の長さは、6mmである。
【0022】
素体3は、複数の誘電体層が積層されて構成されている。各誘電体層は、第一方向D1に積層されている。素体3は、積層された複数の誘電体層を含んでいる。各誘電体層は、たとえば、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成されている。誘電体材料は、たとえば、BaTiO3系、Ba(Ti,Zr)O3系、(Ba,Ca)TiO3系、CaZrO3系、又は(Ca,Sr)ZrO3系の誘電体セラミックである。各誘電体層は、各誘電体層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0023】
図2に示されるように、電子部品1は、複数の内部電極7と、複数の内部電極9と、を備えている。各内部電極7,9は、素体3内に配置されている内部導体である。内部電極7,9は、導電性材料を含む。導電性材料は、たとえば、Cu、Ni又はSnを含む。内部電極7,9は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0024】
内部電極7と内部電極9とは、第一方向D1において異なる位置に配置されている。内部電極7と内部電極9とは、素体3内において、第一方向D1に間隔を有して対向するように交互に配置されている。内部電極7と内部電極9とは、互いに極性が異なる。内部電極7,9の一端は、対応する端面3eに露出している。内部電極7,9は、一対の端面3eのうち対応する端面3eに露出している一端を有している。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、外部電極5は、第三方向D3において互いに離間している。外部電極5は、素体3における端面3e寄りに、それぞれ配置されている。外部電極5は、素体3の端部上にそれぞれ配置されている。外部電極5は、端面3eに配置されている。外部電極5は、一対の側面3a及び一対の側面3cの各一部にも配置されている。側面3aの、外部電極5が配置されている一部は、端面3e寄りに位置している。側面3cの、外部電極5が配置されている一部は、端面3e寄りに位置している。外部電極5は、端面3eの全面と、一対の側面3a及び一対の側面3cの端面3e寄りの端部と、に配置されている。外部電極5は、一対の側面3a、一対の側面3c、及び一つの端面3eの五つの面に配置されている。
【0026】
外部電極5は、一対の側面3a上に配置されている電極部分5a、一対の側面3c上に配置されている電極部分5c、及び一つの端面3e上に配置されている電極部分5eを有している。電極部分5aは、一対の側面3aの各一部を覆っている。電極部分5cは、一対の側面3cの各一部を覆っている。電極部分5eは、対応する端面3eの全面を覆っている。互いに隣り合う電極部分同士は、素体3の稜線部において接続されており、互いに電気的に接続されている。電極部分5a,5c,5eは、一体的に形成されている。
【0027】
上述したように、電極部分5eは、対応する端面3eの全面を覆うように配置されている。電極部分5eは、対応する内部電極7,9の端面3eに露出している一端を全て覆うように配置されている。電極部分5eは、対応する内部電極7,9と直接的に接続されている。内部電極7,9は、対応する外部電極5に電気的に接続されている。
【0028】
金属端子20は、第三方向D3において、素体3の端面3eに対向するように配置されている。一対の金属端子20は、第三方向D3において互いに対向している。一対の金属端子20は、対応する外部電極5と電気的に接続されている。金属端子20は、対応する外部電極5を介して、対応する内部電極7,9と電気的に接続されている。一方の金属端子20は、一方の外部電極5を介して、内部電極7と電気的に接続されている。他方の金属端子20は、他方の外部電極5を介して、内部電極9と電気的に接続されている。
【0029】
金属端子20は、接続部21と、脚部23とを有している。接続部21は、第一方向D1に延在している。接続部21は、第三方向D3から見て、矩形状を呈している。接続部21は、はんだ30によって、電極部分5eと接合されている。金属端子20は、外部電極5との間にはんだ30が存在している状態で、第三方向D3で外部電極5と対向している部分21aを含んでいる。金属端子20は、外部電極5の間にはんだ30が存在している状態で、第三方向D3で外部電極5と対向している部分21aを含んでいる。
【0030】
脚部23は、接続部21の一端から延在している。脚部23は、部分23aと部分23bとを含んでいる。部分23aは、接続部21の一端から第一方向D1に延在している。部分23aは、接続部21と同様に第一方向D1に延在しており、接続部21と部分23aとは略同一平面上に位置している。
【0031】
部分23bは、部分23aの一端から第三方向D3に延在している。部分23bは、第一方向D1から見て、矩形状を呈している。部分23aと部分23bとは、互いに交差する方向に延在している。本実施形態では、部分23aと部分23bとは、互いに直交する方向に延在している。一対の金属端子20の各部分23bは、略同一平面上に位置している。部分23bは、電子部品1が実装される電子機器に接続される。本実施形態では、各部分23bは、互いに向き合う方向に延在している。各部分23bは、相反する方向に延在していてもよい。
【0032】
部分23aは、接続部21と部分23bとを連結している。部分23aは、接続部21の一端と部分23bの一端との間を連結するように、第一方向D1に延在している。接続部21と部分23bとは、第一方向D1に見て、部分23aの長さ分離れて位置している。接続部21と脚部23とは、一体的に形成されている。
【0033】
はんだ30は、外部電極5の電極部分5eと、金属端子20の部分21aとの間に配置されている。外部電極5の電極部分5eと金属端子20の部分21aとは、第三方向D3において、はんだ30を介して互いに対向している。はんだ30は、外部電極5と金属端子20とを接合している。はんだ30は、導電性を有しており、外部電極5と金属端子20とを電気的に接続している。はんだ30は、外部電極5と金属端子20とを電気的かつ物理的に接続している。
【0034】
図2及び
図3に示されるように、外部電極5は、素体3上に形成されている電極層E1と、電極層E1上に形成されている電極層E2と、電極層E1と電極層E2との界面に存在している領域Rと、を有している。本実施形態では、外部電極5の各電極部分5a,5c,及び5eが、電極層E1と電極層E2とを有している。電極層E2は、外部電極5の最外層を構成している。
【0035】
電極層E1は、素体3の表面に付与された導電性ペーストを焼き付けることにより形成されている。電極層E1は、導電性ペーストに含まれる金属成分が焼結されて形成された焼結金属層である。電極層E1は、素体3に形成された焼結金属層である。導電性ペーストは、たとえば、Cu又はNiからなる粉末、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を含む。本実施形態では、電極層E1は、Cuからなる焼結金属層である。電極層E1は、Niからなる焼結金属層であってもよい。電極層E1は、Cu又はNiを含む。
【0036】
電極層E2は、電極層E1上に形成されためっき層である。電極層E2は、たとえば、めっき法により、電極層E1上に形成される。本実施形態では、電極層E2は、電極層E1全体を覆うように形成されている。電極層E1は、電極層E2を形成するための下地層である。電極層E1は、下地金属層である。本実施形態では、電極層E2は、電極層E1上にNiめっきにより形成されたNiめっき層である。電極層E2は、たとえば、電極層E1上に形成されたNiめっき層と、Niめっき層上に形成されたSnめっき層と、を含んでいてもよい。
【0037】
領域Rは、電極層E1と電極層E2との界面に存在する。本実施形態では、領域Rは電極層E1と電極層E2との界面全体にわたって存在する。外部電極5の各電極部分5a,5c,5eは、電極層E1及び電極層E2に加えて、領域Rを有している。領域Rは、電極層E1と電極層E2とを剥離させ得るように機能する。領域Rは、電極層E1と電極層E2との剥離を制御する剥離制御領域である。
【0038】
図3に示されるように、領域Rは、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を含む複数の領域R1を含んでいる。領域Rは、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を含んでいる。電極層E1と電極層E2との界面に存在している領域Rにおいて、複数の領域R1は、点在している。領域R、すなわち、電極層E1と電極層E2との界面には、領域R1が存在している部分と、領域R1が存在していない部分と、が存在している。電極層E1は、領域R1を介して電極層E2に覆われている部分と、電極層E2に直接覆われている部分と、を含んでいる。本実施形態では、領域Rにおいて点在して存在する複数の領域R1が、電極層E1と電極層E2とを剥離させ得るように機能する。電極層E1と電極層E2との剥離は、領域Rのうち複数の領域R1が存在している位置において生じ得る。領域Rは、複数の領域R1を含まない領域も含む。複数の領域R1を含まない領域では、電極層E1と電極層E2とが密着している。複数の領域R1を含まない領域では、電極層E1と電極層E2とは、直接接続されている。
【0039】
上述したように、領域R1は、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を含んでいる。上記材料は、たとえば、金属酸化物又は有機物を含んでいる。金属酸化物は、たとえば、電極層E1が含む金属成分を酸化させることにより形成される。有機物は、たとえば、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物を含んでいる。
複数の領域R1は、たとえば、素体3上に電極層E1が形成された状態で、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を含む液中に電子部品1を浸漬することにより形成される。複数の領域R1は、素体3上に電極層E1が形成された状態で、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を電子部品1に噴霧することにより形成されてもよい。
【0040】
シリコーン系化合物は、シロキサン結合による主骨格を持つ化合物を示す。シリコーン系化合物は、たとえば、未変性シリコーン又は変性シリコーンを含んでいる。未変性シリコーンは、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、又は、ポリメチル水素シロキサンを含む。変性シリコーンは、ポリエーテル、エポキシ、アミン類、カルボキシル基、アラルキル基、又は、フッ素を含むフルオロアルキル基、を導入した変性シリコーンを含む。シリコーン系化合物は、シリコーンオイル、シリコーンゴム、又は、シリコーン系熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0041】
フッ素系化合物は、フッ素原子を含む有機化合物を示す。フッ素系化合物は、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー類、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテル類とのコポリマー類、又は、ポリフッ化ビニリデンを含む。
【0042】
図4に示されるように、はんだ30は、第三方向D3から見て、領域Rの外縁Reより内側に位置している。本実施形態では、領域Rは電極層E1と電極層E2との界面全体にわたって存在しているので、領域Rの外縁Reは電極層E1の外縁によって画成されている。はんだ30は、第三方向D3から見て、領域Rの中央領域に位置している。はんだ30は、第三方向D3から見て、素体3の外縁3gの内側にも位置している。素体3の外縁3gは、一対の側面3aと、一対の側面3cと、によって画成されている。はんだ30の第一方向D1における端は、第一方向D1において、素体3の一対の側面3aの間に位置している。本実施形態では、はんだ30は、第三方向D3から見て、端面3eの中央領域にも位置している。一対の金属端子20の各部分23bを含む仮想平面と、側面3aとの最短距離は、当該仮想平面とはんだ30との最短距離より小さい。上記仮想平面と領域Rの外縁Reとの最短距離は、当該仮想平面とはんだ30との最短距離より小さい。上記仮想平面が第一方向D1と直交している構成では、各最短距離は、第一方向D1での間隔で規定される。
【0043】
以上説明したように、電子部品1では、電極層E1と電極層E2との界面に、領域Rが存在する。電子機器から電子部品1に外力が働く際に、領域Rは電極層E1と電極層E2との界面において、電極層E1と電極層E2とを剥離させ得るように機能する。たとえば、電極層E1と電極層E2との剥離は、領域Rのうち、はんだ30の外縁近傍に位置する箇所から生じ得る。領域Rのうち、はんだ30の外縁近傍の位置が、電極層E1と電極層E2との剥離の起点となり得る。領域Rにより、電極層E1と電極層E2とが剥離した場合、電子機器からの外力が素体3に作用しがたい。したがって、電子部品1は、素体3におけるクラックの発生を抑制し得る。
【0044】
電子部品1では、領域Rは、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を含む。
電子部品1では、電極層E1と電極層E2との剥離が生じやすい。この場合、領域Rが電極層E1と電極層E2との界面において電極層E1と電極層E2との剥離を確実に制御するので、電子機器からの外力が外部電極5を介して素体3に確実に作用しがたい。したがって、電子部品1は、素体3におけるクラックの発生を確実に抑制し得る。
【0045】
電子部品1では、領域Rは、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を含むと共に点在している複数の領域R1を含む。
電子部品1では、外部電極5において、電極層E1と電極層E2との界面に複数の領域R1が存在する部分と、電極層E1と電極層E2とが直接接している部分と、が存在する。この場合、電極層E1と電極層E2とが直接接している部分において、電極層E1と電極層E2との導通が確実にとられる。さらに、電極層E1と電極層E2とが直接接している部分が、電極層E1と電極層E2との密着強度の低下を抑制する。したがって、電子部品1は、電極層E1と電極層E2との電気的接続を確保すると共に電極層E1と電極層E2との密着強度の低下を抑制する。
【0046】
電子部品1では、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料は、金属酸化物又は有機物を含む。
電子部品1では、電極層E1と電極層E2との剥離がより一層生じやすい。この場合、領域Rが電極層E1と電極層E2との界面において剥離をより一層確実に制御するので、電子機器からの外力が外部電極5を介して素体3により一層確実に作用しがたい。したがって、電子部品1は、素体3におけるクラックの発生をより一層確実に抑制し得る。
【0047】
電子部品1では、有機物は、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物を含む。
電子部品1は、電極層E1と電極層E2との間の剥離を制御する領域Rを簡易に実現する。
【0048】
電子部品1では、金属端子20は、外部電極5との間にはんだ30が存在している状態で外部電極5と対向する部分21aを有している。第三方向D3から見て、はんだ30は、領域Rの外縁Reのより内側に位置している。
電子機器から電子部品1に外力が働く場合、この外力は外部電極5と金属端子20とを電気的かつ物理的に接続しているはんだ30の端縁に集中しやすい。電子部品1では、はんだ30が領域Rの外縁Reより内側に位置しているので、外力が集中しやすいはんだ30の端縁が領域Rの外縁Reより内側に位置している。この場合、領域Rが電極層E1と電極層E2との界面において電極層E1と電極層E2との剥離を確実に制御するので、電子機器からの外力が外部電極5を介して素体3に確実に作用しがたい。したがって、電子部品1は、素体3におけるクラックの発生を確実に抑制し得る。
【0049】
電子部品1では、第三方向D3から見て、はんだ30は、素体3の外縁3gより内側に位置している。
電子部品1は、素体におけるクラックの発生を抑制し得る電子部品を簡易に実現する。
【0050】
次に、
図5を参照して、外部電極5の一変形例の構成を説明する。
図5は、本変形例に係る外部電極の断面構成を示す図である。本変形例では、領域Rの構成に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した本実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0051】
図5に示されるように、領域Rにおいて点在している複数の領域R1は、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料として金属酸化物を含む領域R2と、上記材料として有機物を含む領域R3と、を含んでいる。したがって、領域Rは、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料として、金属酸化物及び有機物を含んでいる。領域R2は、電極層E1と直接接するように電極層E1と電極層E2との界面に存在している。領域R3は、領域R2を覆うように電極層E1と電極層E2との界面に存在している。
【0052】
さらに、
図6を参照して、本実施形態の別の変形例に係る電子部品1Aの構成を説明する。
図6は、本変形例に係る電子部品の断面構成を示す図である。本変形例では、領域Rの構成に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した本実施形態と本変形例との相違点を主として説明する。
【0053】
図6に示されるように、電子部品1Aでは、領域Rは、電極層E1と電極層E2との界面の一部に存在している。たとえば、領域Rは、端面3e上における電極層E1と電極層E2との界面に存在している。領域Rは、電極部分5eにおいて、電極層E1と電極層E2との界面に存在している。領域Rは、電極部分5a及び電極部分5cにおいて、電極層E1と電極層E2との界面に存在していない。電極部分5eのみが領域Rを含んでおり、電極部分5a及び電極部分5cは領域Rを含んでいない。電極部分5a及び電極部分5cにおいて、電極層E2は、電極層E1の全体を直接覆っている。本変形例では、領域Rは、電極部分5eが含んでいる電極層E1と電極層E2との界面において、電極層E1と電極層E2とを剥離させ得るように機能する。
【0054】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0055】
電子部品1,1Aでは、領域Rは、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を含んでいなくともよい。領域Rが電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を含む電子部品1は、上述したように、素体3におけるクラックの発生を確実に抑制し得る。
【0056】
電子部品1,1Aでは、領域Rは、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を含むと共に点在している複数の領域R1を含んでいなくともよい。領域Rが電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料を含むと共に点在している複数の領域R1を含んでいる電子部品1,1Aは、上述したように、電極層E1と電極層E2との電気的接続を確保すると共に電極層E1と電極層E2との密着強度の低下を抑制する。
【0057】
電子部品1,1Aでは、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料は、金属酸化物又は有機物を含んでいなくともよい。電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料が金属酸化物又は有機物を含んでいる電子部品1,1Aは、上述したように、素体3におけるクラックの発生をより一層確実に抑制し得る。
【0058】
電子部品1,1Aでは、電極層E1と電極層E2との密着強度を低下させ得る材料として含まれる有機物は、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物を含んでいなくともよい。上記有機物がシリコーン系化合物又はフッ素系化合物を含んでいる電子部品1,1Aは、上述したように、領域Rを簡易に実現する。
【0059】
電子部品1,1Aでは、第三方向D3から見て、はんだ30は、領域Rの外縁Reより内側に位置していなくともよい。第三方向D3から見て、はんだ30が領域Rの外縁Reより内側に位置している電子部品1,1Aは、上述したように、素体3におけるクラックの発生を確実に抑制し得る。
【0060】
電子部品1,1Aでは、第三方向D3から見て、はんだ30は、素体3の外縁3gより内側に位置していなくともよい。第三方向D3から見て、はんだ30は、素体3の外縁3gより内側に位置している電子部品1,1Aは、上述したように、素体3におけるクラックの発生を抑制し得る電子部品を簡易に実現する。
【0061】
電子部品1,1Aは、一対の外部電極5を備えているが、電子部品1,1Aは、一対の外部電極5のうちいずれか一方の外部電極、すなわち、単一の外部電極を備えていてもよい。電子部品1,1Aが備える金属端子、及びはんだの各数は、外部電極の数に対応させてもよい。
【0062】
電子部品1,1Aは、一つの素子を備えているが、電子部品1,1Aは、複数の素子を備えていてもよい。電子部品1,1Aが複数の素子を備えている構成では、たとえば、各素子において、外部電極5が金属端子20に接続される。この場合、各素子において、外部電極5が領域Rを有していてもよい。複数の素子のうち所定の素子においてのみ、電子部品1,1Aが実装される電子機器からの外力が素体3に作用する場合、所定の素子において、外部電極5が領域Rを有していてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,1A…電子部品、3…素体、3g…素体の外縁、5…外部電極、7,9…内部電極、20…金属端子、21a…金属端子の部分、30…はんだ、E1,E2…外部電極の電極層、R…外部電極の領域、Re…領域の外縁、R1…複数の領域。