(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144464
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】塩基度調整剤及びその製造方法、並びに廃棄物溶融処理方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/40 20060101AFI20231003BHJP
C10L 5/48 20060101ALI20231003BHJP
C10L 5/44 20060101ALI20231003BHJP
F23G 5/00 20060101ALI20231003BHJP
F23G 5/02 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C10L5/40
C10L5/48
C10L5/44
F23G5/00 115
F23G5/02 E ZAB
F23G5/02 D
F23G5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051442
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506000128
【氏名又は名称】日鉄環境エネルギーソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】星沢 康介
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 浩平
(72)【発明者】
【氏名】松本 和剛
(72)【発明者】
【氏名】村田 明優
【テーマコード(参考)】
3K065
3K161
4H015
【Fターム(参考)】
3K065AB03
3K065AC13
3K065AC17
3K065BA05
3K065BA08
3K065BA10
3K065CA03
3K065CA04
3K161BA02
3K161BA08
3K161CA05
3K161DA74
3K161EA41
3K161EA44
3K161EA50
3K161GA03
3K161GA15
3K161JA13
3K161LA22
3K161LA34
4H015AA13
4H015AA17
4H015AA27
4H015AA29
4H015AB07
4H015BB03
4H015BB05
4H015CA03
(57)【要約】
【課題】石灰源又はシリカ源のサイズが微細であっても塩基度の調整に有効利用することが可能な塩基度調整剤を提供すること。
【解決手段】石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物と、プラスチックと、バイオマスと、を含有する成形体を含み、成形体全体に対するプラスチックの含有率が20質量%以上且つ50質量%未満であり、成形体全体に対するバイオマスの含有率が20質量%以上である、塩基度調整剤を提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物と、プラスチックと、バイオマスと、を含有する成形体を含み、
前記成形体全体に対する前記プラスチックの含有率が20質量%以上且つ50質量%未満であり、
前記成形体全体に対する前記バイオマスの含有率が20質量%以上である、塩基度調整剤。
【請求項2】
前記無機物は前記石灰源を含み、
前記成形体全体に対する前記石灰源の含有率が10~60質量%である、請求項1に記載の塩基度調整剤。
【請求項3】
前記無機物は、1mm以下の粒径を有する粒子を含み、
前記成形体の粒径は5~100mmである、請求項1又は2に記載の塩基度調整剤。
【請求項4】
前記プラスチックは熱可塑性プラスチックを含み、前記バイオマスは木質系バイオマスを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の塩基度調整剤。
【請求項5】
前記成形体の密度は0.95g/cm3以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の塩基度調整剤。
【請求項6】
石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物と、プラスチックと、バイオマスと、を含む原料を、140~350℃に加熱した状態で加圧成形して成形体を作製する工程を有し、
前記原料全体に対する前記プラスチックの含有率が20質量%以上且つ50質量%未満であり、前記原料全体に対する前記バイオマスの含有率が20質量%以上である、前記成形体を含む塩基度調整剤の製造方法。
【請求項7】
廃棄物を溶融炉に装入して溶融する廃棄物溶融処理方法であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の塩基度調整剤を用いて溶融スラグの塩基度を調整する工程を有する、廃棄物溶融処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、塩基度調整剤及びその製造方法、並びに廃棄物溶融処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の処理方法として、溶融炉を用いて廃棄物を溶融処理する廃棄物溶融処理方法が知られている。このような処理方法では、溶融炉から溶融スラグが出滓される。溶融スラグに含まれるSiO2成分が過剰になると粘性が高くなり、溶融炉からの排出が困難になる。このため、石灰源を供給して溶融スラグの塩基度を調整する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、溶融スラグの塩基度調整用の石灰源としてCaCO3を主成分とする貝殻を溶融炉に装入するに際し、粒径を所定の範囲にすることが提案されている。これによって、溶融炉からの貝殻の飛散とスラグ中における遊離CaOの残留を抑制し、貝殻を塩基度調整剤として有効に利用することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塩基度調整剤に用いられる石灰源又はシリカ源のサイズを所定の範囲に調整して溶融炉に導入することは、石灰源又はシリカ源を塩基度調整剤として有効利用できるという利点がある。しかしながら、この場合、サイズが下限未満の石灰源及びシリカ源を塩基度調整剤に利用できないという事情がある。そこで、石灰源又はシリカ源のサイズが微細であっても塩基度の調整に有効利用することが可能な塩基度調整剤及びその製造方法を提供する。また、石灰源又はシリカ源のサイズが微細であっても塩基度の調整に有効利用することが可能な廃棄物溶融処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一側面は、石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物と、プラスチックと、バイオマスと、を含有する成形体を含み、成形体全体に対するプラスチックの含有率が20質量%以上且つ50質量%未満であり、成形体全体に対するバイオマスの含有率が20質量%以上である、塩基度調整剤を提供する。
【0007】
上記塩基度調整剤は、石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物を含有する成形体を含む。この成形体は、溶融炉等に導入されると徐々に加熱される。概ね400℃以下の温度域では、成形体に含まれるプラスチックが軟化又は溶融してバインダとして機能する。これによって、成形体の形状が保持される。400℃を超えるとプラスチックは分解し、バイオマスに含まれるリグニン等の成分がバインダとして機能する。これによって、成形体の形状が保持される。成形体は所定量のプラスチックとバイオマスを含有することから、常温から高温域に至るまで、その形状を保持することができる。このため、成形体に含まれる石灰源及びシリカ源の少なくとも一方が微細であっても、成形体中に保持されることから、溶融炉等から飛散することが抑制される。したがって、このような成形体を含む塩基度調整剤は、石灰源又はシリカ源が微細であっても塩基度の調整に有効利用することができる。
【0008】
(2)上記(1)において、無機物は石灰源を含み、成形体全体に対する石灰源の含有率が10~60質量%であってよい。溶融炉では、溶融スラグの塩基度を調整するための石灰源の使用量が多いことから、プラスチック及びバイオマスとともにある程度の石灰源を含有する成形体は、溶融炉の塩基度調整剤として特に有用である。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の塩基度調整剤において、無機物は、1mm以下の粒径を有する粒子を含み、成形体の粒径は5~100mmであってよい。無機物のうち、1mm以下の粒径を有する粒子は溶融炉において飛散する場合がある。しかしながら、上記塩基度調整剤における無機物は、所定サイズの粒径を有する成形体に含有される。このため、溶融炉において1mm以下の粒径を有する粒子を含む無機物が飛散することを十分に抑制することができる。また、上述のサイズの成形体であれば、加熱されるとプラスチック及びバイオマスが分解して消失するため、溶融スラグの塩基度調整機能を十分に発揮することができる。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれか一つの塩基度調整剤において、プラスチックは熱可塑性プラスチックを含み、バイオマスは木質系バイオマスを含んでよい。熱可塑性プラスチックは概ね400℃以下の温度で溶融してバインダとしての機能を十分に発揮することができる。木質系バイオマスはリグニンの含有量が高いため、400℃を超える温度環境下においてもバインダとしての機能を十分に発揮することができる。したがって、熱可塑性プラスチックと木質系バイオマスを含有する成形体は、加熱したときの強度を十分に高く維持することができる。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずれか一つの塩基度調整剤において、成形体の密度は0.95g/cm3以上であってよい。このような成形体は保形性に優れるため、石灰源又はシリカ源が微細であっても、無機物の飛散を十分に抑制することができる。
【0012】
(6)本開示の一側面は、石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物と、プラスチックと、バイオマスと、を含む原料を、140~350℃に加熱した状態で加圧成形して成形体を作製する工程を有し、原料全体に対するプラスチックの含有率が20質量%以上且つ50質量%未満であり、原料全体に対するバイオマスの含有率が20質量%以上である、成形体を含む塩基度調整剤の製造方法を提供する。
【0013】
上記塩基度調整剤は、石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物を含有する原料を、140~350℃に加熱した状態で加圧成形して作製される成形体を含む。このような成形体は、溶融炉等に導入されると徐々に加熱される。概ね400℃以下の温度域では、成形体に含まれるプラスチックが軟化又は溶融してバインダとして機能する。これによって、成形体の形状が保持される。400℃を超えるとプラスチックは分解し、バイオマスに含まれるリグニン等の成分がバインダとして機能する。これによって、成形体の形状が保持される。成形体は所定量のプラスチックとバイオマスを含有することから、常温から高温域に至るまで、その形状を保持することができる。このため、成形体に含まれる石灰源及びシリカ源の少なくとも一方が微細であっても、成形体中に保持されることから、溶融炉等から飛散することが抑制される。したがって、石灰源又はシリカ源が微細であっても塩基度の調整に有効利用することができる。
【0014】
(7)本開示の一側面は、廃棄物を溶融炉に装入して溶融する廃棄物溶融処理方法であって、副資材が上述の(1)~(5)のいずれか一つの塩基度調整剤を用いて溶融スラグの塩基度を調整する工程を有する、廃棄物溶融処理方法を提供する。
【0015】
上記廃棄物処理方法では、塩基度の調整に上述の(1)~(5)のいずれか一つの塩基度調整剤を用いている。この塩基度調整剤は、石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物を含有する成形体を含む。この成形体は、溶融炉に導入されると徐々に加熱される。概ね400℃以下の温度域では、成形体に含まれるプラスチックが軟化又は溶融してバインダとして機能する。これによって、成形体の形状が保持される。400℃を超えるとプラスチックは分解し、バイオマスに含まれるリグニン等の成分がバインダとして機能する。これによって、成形体の形状が保持される。成形体は所定量のプラスチックとバイオマスを含有することから、常温から高温域に至るまで、その形状を保持することができる。このため、成形体に含まれる石灰源及びシリカ源の少なくとも一方が微細であっても、成形体中に保持されることから、溶融炉から飛散することが抑制される。したがって、微細な石灰源又はシリカ源を塩基度の調整に有効利用することができる。
【発明の効果】
【0016】
石灰源又はシリカ源のサイズが微細であっても塩基度の調整に有効利用することが可能な塩基度調整剤及びその製造方法を提供することができる。また、石灰源又はシリカ源のサイズが微細であっても塩基度の調整に有効利用することが可能な廃棄物溶融処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】塩基度調整剤の製造方法のフローチャートである。
【
図2】溶融炉とこれを備える廃棄物溶融処理設備の一例を模式的に示す図である。
【
図3】成形体の圧壊強度の測定に用いられる測定装置の模式図である。
【
図4】成形体におけるプラスチック(PP)の含有率と、圧壊強度との関係を示すグラフである。
【
図5】成形圧力と成形体の密度との関係を示すグラフである。
【
図6】(A)は乾留前の成形体の外観を示す写真であり、(B)は乾留後の成形体の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0019】
一実施形態に係る塩基度調整剤は、石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物と、プラスチックと、バイオマスと、を含有する成形体で構成される。本明細書における石灰源は、CaO及びこれを含有する物質、並びに、加熱するとCaOを生じる物質が挙げられる。石灰源の例としては、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)、石灰石、鉄鋼スラグ、ドロマイト、セメント、及びフライアッシュ等が挙げられる。なお、取り扱い性及び安全性向上の観点から、石灰源は生石灰を含まなくてよい。
【0020】
本明細書におけるシリカ源は、SiO2又はケイ酸塩を含む物質が挙げられる。シリカ源と例としては、鉄鋼スラグ、珪砂、セメント、及びフライアッシュ等が挙げられる。なお、SiO2又はケイ酸塩と、CaO又は加熱するとCaOを生じる物質との両方を含む物質は、石灰源及びシリカ源の両方に該当する。石灰源及びシリカ源の両方に該当する物質は、石灰源にもなり得るし、シリカ源にもなり得る。本明細書の無機物は、石灰源及びシリカ源の両方に該当する一種又は二種以上の物質を含んでいてもよいし、石灰源及びシリカ源のどちらか一方のみに該当する一種又は二種以上の物質を含んでいてもよい。
【0021】
塩基度調整剤を構成する成形体が無機物を含有することによって、溶融スラグの塩基度を調整することができる。無機物におけるCaO/SiO2の質量比は、溶融スラグの塩基度の調整機能を十分に発揮する観点から、0.5以下又は2以上であってよく、0.3以下又は2.5以上であってもよい。なお、上述のCaO及びSiO2の各質量は、無機物に含まれるCa成分及びSi成分をCaO及びSiO2に換算して求められる。
【0022】
塩基度調整剤の塩基度調整機能を十分に高くする観点から、成形体全体に対する無機物の含有率は5質量%以上であってよく、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、25質量%以上であってもよい。塩基度調整剤を構成する成形体の常温から高温までの形状保持性を十分に高くする観点から、成形体全体に対する無機物の含有率は60質量%以下であってよく、55質量%以下であってよく、50質量%以下であってもよい。塩基度調整機能と形状保持性の両方を高水準に維持する観点から、成形体全体に対する無機物の含有率は5~60質量%であってよい。
【0023】
成形体全体に対する石灰源の含有率は、10~60質量%であってよく、20~50質量%であってよく、25~45質量%であってもよい。溶融炉(廃棄物溶融炉)では、溶融スラグの塩基度を調整するためにSiO2よりもCaOが必要となる場合が多い。このため、石灰源を含有する成形体は、溶融炉の塩基度調整剤として特に有用である。なお、この石灰源は、CaO又は加熱するとCaOを生成する物質に加えて、SiO2又はケイ酸塩を含んでいてもよい。溶融スラグの塩基度調整機能を十分に高くする観点から、石灰源におけるCaO/SiO2の質量比は1以上であってよく、3以上であってよく、5以上であってもよい。上述のCaO及びSiO2の各質量は、石灰源に含まれるCa成分及びSi成分をCaO及びSiO2に換算して求められる。
【0024】
プラスチックは、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。300~400℃付近における形状保持性の観点から、プラスチックは、熱可塑性プラスチックを含んでよい。製造コスト低減の観点から、プラスチック源として、廃プラスチックを用いてよい。プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、PET樹脂、PVA樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0025】
プラスチックは、概ね400℃以下の温度域で成形体の形状を保持する機能を有する。プラスチックの含有率が過剰になると、プラスチックが分解することによって生じる空隙が多くなる。400℃以下の温度域と400℃を超える温度域での成形体の形状保持性を良好に維持する観点から、成形体全体に対するプラスチックの含有率は20質量%以上且つ50質量%未満である。400℃以下の温度域での形状保持性を一層高くする観点から、成形体全体に対するプラスチックの含有率は25質量%以上であってよく、30質量%以上であってもよい。400℃を超える温度域での形状保持性を一層高くする観点から、成形体全体に対するプラスチックの含有率は45質量%以下であってよく、40質量%以下であってもよい。
【0026】
バイオマスは、木質系バイオマス、及び草本系バイオマス等が挙げられる。木質系バイオマスは、樹木のみならず、建設廃材、林地残材、製材工場等から発生する樹皮及びのこ屑、樹木の伐採及び街路樹の剪定のときに発生する枝葉等であってもよい。草本系バイオマスとしては、草類の他に、稲藁、籾殻、麦藁等の農産副産物が挙げられる。上述のバイオマスのうち、リグニンを含むバイオマスが、高温でのバインダとしての機能に優れる。バイオマスに含まれる成分のうち、ヘミセルロースは200~300℃で、セルロースは300~400℃で熱分解する。これに対して、リグニンは、熱分解温度が200~900℃であり、他の成分よりも熱分解温度が高い。このような観点から、バイオマスは、リグニンの含有量が高い木質系バイオマスを含んでよい。バイオマスにおけるリグニンの含有率は、例えば15~35質量%であってよい。
【0027】
バイオマスは、400℃を超える温度域でプラスチックが熱分解した後に成形体の形状を保持する機能を有する。この温度域における成形体の形状保持性を良好に維持する観点から、成形体全体に対するバイオマスの含有率は20質量%以上である。この温度域における成形体の形状保持性を一層向上する観点から、成形体全体に対するバイオマスの含有率は、25質量%以上であってよく、30質量%以上であってもよい。
【0028】
バイオマスの含有率が高くなると、プラスチック及び無機物の含有率が低くなる。400℃を超える温度域の成形体の形状保持性を高く維持しつつ、400℃未満の温度域における成形体の形状保持性と塩基度調整機能を向上する観点から、成形体全体に対するバイオマスの含有率は75質量%以下であってよく、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよい。
【0029】
無機物は、1mm以下、0.6mm以下、又は0.4mm以下の粒径を有する粒子を含んでよい。無機物が石灰源を含む場合、石灰源が1mm以下、0.6mm以下、又は0.4mm以下の粒径を有する粒子を含んでよい。無機物がシリカ源を含む場合、シリカ源が1mm以下、0.6mm以下、又は0.4mm以下の粒径を有する粒子を含んでよい。このように小さい粒径を有する粒子は、反応性に優れる。したがって、溶融スラグの塩基度調整機能を一層高くすることができる。無機物、石灰源及びシリカ源に含まれる上記粒子の粒径の下限に特に制限はなく、例えば、0.01mmであってよい。
【0030】
バイオマスはチップ状(木質チップ)であってよい。このような木質チップの粒径は、60mm以下であってよく、1~50mmであってよく、3~40mmであってよい。プラスチックは粒状又は塊状であってよい。このような粒状又は塊状のプラスチックの粒径は、60mm以下であってよく、1~50mmであってよく、3~40mmであってよい。
【0031】
本明細書において、無機物、石灰源、ケイ素源、バイオマス(木質チップ)、及びプラスチック(プラスチック塊又はプラスチック粒)の各粒径は、それぞれの粒子(チップ又は塊)の各二次元画像に外接する外接円の直径として測定される。なお、粒子(チップ又は塊)を撮像する際の向きによって外接円の直径が異なる場合は、直径の最大値を粒子(チップ又は塊)の粒径とする。
【0032】
塩基度調整剤に含まれる成形体の形状は特に限定されず、円柱形状、球形状、四角柱形状、マセック形状等、種々の形状のものが挙げられる。塩基度調整剤に含まれる成形体の粒径は、5~100mmであってよい。これによって、溶融炉に装入したときに、飛散量を十分に低減しつつ、塩基度調整機能を十分に発揮することができる。飛散量を一層低減する観点から、成形体の粒径は、10mm以上であってよく、30mm以上であってよく、50mm以上であってもよい。溶融スラグ中に未反応のまま残存する無機物を十分に低減する観点から、成形体の粒径は90mm以下であってよく、80mm以下であってもよい。
【0033】
本明細書において、塩基度調整剤に含まれる成形体の粒径は、成形体の二次元画像に外接する外接円の直径として測定される。なお、成形体を撮像する際の向きによって外接円の直径が異なる場合は、直径の最大値を成形体の粒径とする。
【0034】
成形体の密度は0.95g/cm3以上であってよく、1.0g/cm3以上であってよく、1.1g/cm3以上であってよい。このような成形体は、飛散し難く且つ形状保持性に一層優れる。成形体の密度は1.9g/cm3以下であってよく、1.6g/cm3以下であってもよい。このような成形体は一層優れた塩基度調整機能を有する。本明細書における密度は、ノギスを用いて測定される体積と、秤を用いて測定される質量とから算出される見掛け密度である。
【0035】
塩基度調整剤に含まれる成形体は、溶融炉に装入され加熱されると、概ね400℃以下の温度域ではプラスチックが溶融してバインダとして機能する。このため粉化が抑制され、成形体の形状が保持される。400℃を超える温度域になるとプラスチックが分解するものの、バイオマスに含まれるリグニンがバインダとして機能する。このため粉化が抑制され、成形体の形状が保持される。このように、広い温度域で粉化が抑制され形状が保持される。すなわち、この成形体は優れた形状保持性を有する。したがって、石灰源及びシリカ源のサイズが小さくても飛散量が十分に低減され、溶融スラグの塩基度調整剤として有効に機能する。
【0036】
一実施形態に係る塩基度調整剤の製造方法は、石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物と、プラスチックと、バイオマスと、を含む原料を、140~350℃の温度範囲に加熱した状態で加圧成形して成形体を作製する工程を有する。原料における無機物(石灰源及びシリカ源)、プラスチック及びバイオマスのそれぞれの種類は、塩基度調整剤の実施形態で説明したとおりである。また、原料全体に対する無機物、プラスチック及びバイオマスの含有率は、塩基度調整剤の実施形態で成形体全体に対する含有率として説明したとおりである。無機物としては、粒状のものを用いることができる。プラスチックとしては、ペレット又は廃プラスチック等の破砕物(プラスチック片)を用いることができる。バイオマスとしては、樹木又は廃材等を破砕して得られる木質チップ等を用いることができる。それぞれの粒径は、成形体に含まれるものと同様であってよい。
【0037】
塩基度調整剤の製造方法の一例は、
図1に示すように、石灰源及びシリカ源の少なくとも一方を含む無機物、プラスチック、及びバイオマスを混合する工程と、この工程によって得られる、無機物、プラスチック、及びバイオマスを含む原料(混合原料)を加熱成形して成形体を作製する工程と、当該成形体を冷却する工程と、を有する。
【0038】
無機物、プラスチック、及びバイオマスを含む原料を140~350℃に加熱することによって、プラスチックが軟化して十分に緻密化した成形体を得ることができる。成形する際の上記温度範囲の下限は、緻密化を一層促進する観点から、160℃であってよく、180℃であってもよい。成形する際の上記温度範囲の上限は、プラスチックの分解を抑制する観点から、300℃以下であってよく、250℃以下であってもよい。
【0039】
加圧成形する際の圧力(成形圧力)は、十分に緻密化した成形体を得る観点から5MPa以上であってよく、6MPa以上であってよく、7MPa以上であってもよい。成形方法は特に限定されず、加熱しながら成形可能な方法を適宜用いることができる。例えば、RPF(Refuse derived paper and plastics densified fuel)成形機を用いてもよく、ホットプレス機を用いてもよい。加熱及び加圧の時間は、2~30分間であってよく、5~20分間であってもよい。加熱及び加圧は大気中で行ってもよいし、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0040】
このようにして、溶融炉における溶融スラグの塩基度調整に好適に用いられる、成形体を含む塩基度調整剤が得られる。すなわち、上記成形体は、溶融スラグの塩基度調整用として有用である。なお、塩基度調整剤の製造方法は上述の方法に限定されない。
【0041】
一実施形態に係る廃棄物溶融処理方法は、廃棄物と炭材と副資材とを溶融炉に装入して溶融する廃棄物溶融処理方法であって、上述の成形体を含む塩基度調整剤を用いて溶融スラグの塩基度を調整する工程を有する。この廃棄物溶融処理方法は、例えば
図2に示すコークスベッド式の溶融炉40を備える廃棄物溶融処理設備100を用いて行うことができる。
【0042】
図2の廃棄物溶融処理設備100は、コークスベッド式の溶融炉40と溶融炉40の上部に設けられた装入装置50とを備えている。溶融炉40は、シャフト部42と該シャフト部42の下端に設けられる朝顔部44と、朝顔部44の下部に設けられる炉底部46と、を有する。シャフト部42から炉底部46には、上から順に、熱分解帯用の上段羽口45と、燃焼溶融帯用の下段羽口47とが設けられている。上段羽口45及び下段羽口47は、それぞれ複数段で設けられていてもよい。
【0043】
廃棄物、炭材及び副資材は、装入装置50によって、溶融炉40に装入される。廃棄物としては、一般廃棄物、産業廃棄物、これらに乾燥、焼却、破砕等の処理を施して得られた焼却灰等の処理物、及び、これらを一度埋め立て処理した後、再度掘り起こした土砂分を含む埋め立てごみ等が挙げられる。副資材は、上述の塩基度調整剤を含んでよい。副資材は、塩基度調整剤の他に、鉄鉱石、マグネシア、ペリクレース、クドカンラン石、及びジャモン石等から選ばれる少なくとも一つを含んでよい。このような副資材を用いることによって、溶融炉40の内部において、廃棄物48を十分に溶融させることができる。炭材としては、石炭、コークス又は成型炭等を用いることができる。
【0044】
装入装置50から溶融炉40に廃棄物、炭材及び副資材が装入される。下段羽口47からは酸素又は酸素富化空気が供給され、上段羽口45からは燃焼支持ガスとして空気が供給される。溶融炉40に装入された炭材は、下段羽口47から供給された酸素又は酸素富化空気によって燃焼され熱源として機能する。溶融炉40に装入された副資材を含む廃棄物48は、炭材の燃焼によって例えば1600℃以上にまで加熱されて、熱分解残渣43となる。熱分解残渣43は、主に上段羽口45から供給された空気によって燃焼される。
【0045】
溶融炉40で生成した熱分解ガスは、シャフト部42を上昇し、装入装置50の下部に接続された排ガス管52から燃焼室へ導入される。燃焼排ガスは可燃ガスとして燃焼された後、ボイラで廃熱回収される。その後、排ガスは、減温塔で温度が調整された後、集塵機及び触媒反応塔を通過して、煙突から排出される。
【0046】
溶融炉40の内部は、炭材等の燃焼によって温度勾配が生じている。具体的には、溶融炉40は、上方から下方に向けて乾燥・予熱帯40a、熱分解帯40b、及び燃焼・溶融帯40cを有する。装入装置50から溶融炉40に導入された塩基度調整剤は、廃棄物及び炭材とともに、乾燥・予熱帯40a、熱分解帯40b及び燃焼・溶融帯40cに、この順に到達する。乾燥・予熱帯40aにおいては、塩基度調整剤の成形体に含まれるプラスチックがバインダとして機能する。熱分解帯40b及び燃焼・溶融帯40cにおいては、塩基度調整剤の成形体に含まれるバイオマスがバインダとして機能する。このようにして塩基度調整剤に含まれる無機物が燃焼・溶融帯40cに到達する。
【0047】
廃棄物48中の可燃分と塩基度調整剤の成形体に含まれるプラスチック及びバイオマスはガス化して溶融炉40内を上昇し、排ガス管52を経由して燃焼室に導入される。一方、灰分は、熱分解残渣43を経て溶融スラグとなる。塩基度調整剤の成形体に含まれる石灰源及びシリカ源は、溶融スラグの塩基度調整剤として機能する。塩基度が調整された溶融スラグは、炉底部46のコークス充填層41を流下して出滓口49から排出される。
【0048】
溶融炉40の最高温度は、例えば、燃焼・溶融帯40cにおいて1600℃以上となってもよい。装入装置50から装入される塩基度調整剤に含まれる成形体は、溶融炉40に導入された後、暫くの間、形状を保持することができる。この間、成形体が粉化することが抑制されるため、無機物が飛散することが抑制される。これによって、成形体に含まれる無機物は溶融スラグの塩基度調整剤として十分に機能する。溶融炉40の出滓口49から出滓される溶融スラグの塩基度(CaO/SiO2)が例えば0.7~1.0となるように、装入装置50から装入される塩基度調整剤の量を調節してもよい。これによって、出滓口49から、流動性に優れる溶融スラグが排出される。
【0049】
出滓口49からの溶融スラグの出滓は、連続的に行ってもよいし(連続出滓)、間欠的に行ってもよい(間欠出滓)。間欠出滓の際の出滓の間隔は、例えば30分間以上であってよく、1時間以上であってもよい。出滓口49から出滓される溶融スラグは、例えば、冷却水が収容された水砕槽に導入され水砕されてよい。このように、上述の廃棄物溶融処理方法によれば、石灰源又はケイ素源が排ガス管52から排出されることが抑制され、小さいサイズを有する石灰源又はケイ素源を溶融スラグの塩基度調整に有効活用することができる。また、塩基度調整剤に含まれるプラスチック及びバイオマスは燃料源にもなり得ることから、装入装置50から装入する炭材の量を低減することができる。
【0050】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、廃棄物溶融処理設備の構造及び形状は、図示したものに限定されない。
【実施例0051】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0052】
<粒径による飛散率の変化>
(比較例1)
円筒体(内径:445mm、長さ:1000mm)を、中心軸方向が鉛直方向となるように固定した。円筒体の下部から600mmの高さに設けた網状の支持体の上に石灰石(粒径:≦0.3mm)を約10g載置した。支持体上の石灰石が舞い上がるように、円筒体の中空部において下方から上方に向けて、空気を0.5m/秒の流速で流通させた。空気の流通を開始してから5分経過後に支持体上に残存する石灰の質量(w1)を測定した。この質量(w1)と、空気の流通を開始する前に支持体上に載置した石灰の質量(w0)から、以下の式で飛散率を求めた。
飛散率(%)=(w0-W1)/w0×100
【0053】
空気の流速を1.0m/秒、及び、2.5m/秒に変えて、同様の実験を行い、それぞれの流速における飛散率を求めた。結果は表1に示すとおりであった。
【0054】
(実施例1)
粒状の石灰石(粒径:≦0.3mm)、廃プラスチック片(粒径:≦30mm)、建設廃材を破砕して得られた木質チップ(粒径:≦30mm)を、30質量%:20質量%:50質量%の比率で混合して得た原料を、RPF成形機で成形して、円柱形状の成形体(直径:約3.5cm、長さ:約6cm、体積:約58cm3、密度:1.25g/cm3)を得た。成形の際の温度は150℃、成形圧力は58MPa、成形時間は2分間、雰囲気は大気中とした。この成形体を用いたこと以外は、実験例1と同様にして各流速における飛散率を求めた。結果は、表1に示すとおりであった。
【0055】
【0056】
表1に示すとおり、粒径が0.3mm以下である石灰石を成形体にすることによって、飛散を抑制できることが確認された。
【0057】
<成形体の組成による形状安定性の変化1>
(実施例2~4、比較例2~6)
粒状の石灰石(粒径:≦1.0mm)、ポリプロピレンのペレット(PP、粒径:≦30mm)、建設廃材を破砕して得られた木質チップ(粒径:≦30mm)を準備した。これらを表2に示す質量比率で混合して原料を調製した。この原料を、大気中、ホットプレス装置で成形して、円柱形状の成形体(直径:約40mm、長さ:約30mm、質量:約40g)を得た。ホットプレスは、温度180℃、成形圧力20MPa、成形時間10分間の条件で行った。得られた成形体の体積はノギスを用いて測定した。この体積と質量とから密度(見掛け密度)を算出した。結果は表2に示すとおりであった。
【0058】
成形体の室温(20℃)における圧壊強度を測定した。圧壊強度の測定は、
図3に示す測定装置10を用いて測定した。具体的には、架台18の底板上に配置された支持板17の上に、測定対象である成形体16の周面と支持板17の上面とが接するように、成形体16を配置した。そして、昇降可能に架台18に取り付けられた可動板14を下降させて、成形体16を可動板14と支持板17との間に挟んだ。そして、可動板14を操作することによって、成形体16の径方向に荷重を加えた。最終的に成形体16が破壊した時の荷重から圧壊強度を求めた。結果は、表2に示すとおりであった。
【0059】
成形体の室温(20℃)における形状保持性と、900℃、2時間の条件で乾留した後の形状保持性を評価した。評価基準は以下のとおりとした。評価結果は、表2に示すとおりであった。
A:殆ど粉化せず、成形体の形状が十分に保持されている。
B:粉化が生じており、成形体の形状が十分に保持されていない。
C:粉化が生じており、成形体の形状が殆ど保持されていない。
【0060】
【0061】
表2に示すとおり、石灰石とともに、所定量のポリプロピレン及び木質チップを含む実施例2~4の成形体は、乾留後も形状が十分に保持されていた。また、これらは十分に高い圧壊強度を有していた。一方、木質チップを含まない比較例2、及び木質チップの含有率が低い比較例3,4は、室温下で十分に高い圧壊強度を有していたものの、乾留すると形状を保持できないことが確認された。また、プラスチックを含まない比較例6、及びプラスチックの含有率が低い比較例5は、室温下の圧壊強度が低く、乾留前においても形状を保持できていなかった。
【0062】
<成形体の組成による形状安定性の変化2>
(実施例5~7、比較例7~11)
粒状の石灰石(粒径:≦0.3mm)を用いたこと以外は、実施例2~4、比較例2~6と同じ手順で成形体を得た。実施例2~4、比較例2~6と同じ手順で成形体の評価を行った。結果は、表3に示すとおりであった。
【0063】
【0064】
図4には、表3に示す、成形体全体に対するポリプロピレンの含有率と、圧壊強度との関係を示している。表3及び
図4に示すとおり、石灰石とともに、所定量のポリプロピレン及び木質チップを含む実施例5~7(
図4のグループ2)の成形体は、高い圧壊強度を有し、乾留後も形状が十分に保持されていた。一方、ポリプロピレンの含有率が高く且つ木質チップの含有率が低い比較例7~9(
図4のグループ3)の成形体は、室温下での圧壊強度は高いものの、乾留すると形状を保持できないことが確認された。ポリプロピレンの含有率が低い比較例10,11(
図4のグループ1)は、室温下の圧壊強度が低く、成形体の形状が十分に保持できていなかった。表2と表3の成形体の圧壊強度を比較すると、表2の成形体の方が高い圧壊強度を有していた。このことは、石灰石の粒径が小さくなると、圧壊強度が低下する傾向にあることを示している。
【0065】
<石灰源割合の検討>
(実施例8、比較例12,13)
表4に示すとおり、粒状の石灰石と木質チップの配合割合を変更したこと以外は、実施例4と同じ手順で成形体を得た。実施例5~7、比較例7~11と同じ手順で成形体の評価を行った。結果は、表4に示すとおりであった。表5には、実施例4の結果も再度記載した。
【0066】
【0067】
表4に示すとおり、石灰石の配合割合を大きくした場合も、所定量のポリプロピレン及び木質チップを含む実施例8の成形体は、乾留後にも形状を十分に保持できることが確認された。なお、比較例12は、形状保持性に優れるものの石灰源を含有しないため、塩基度調整剤に該当しない。
【0068】
<成形圧力の検討1>
(実施例9~11)
成形体を作製する際の成形圧力を表5に示すとおりに変更したこと以外は、実施例4と同じ手順で実施例9~11の成形体を作製した。そして、実施例4と同じ手順でこれらの成形体の評価を行った。結果は、表5に示すとおりであった。表5には、実施例4の結果も再度記載した。
【0069】
【0070】
表5に示すとおり、成形圧力を変えても、十分な保形性を維持できることが確認された。
【0071】
<成形圧力の検討2>
(実施例12,13)
成形体を作製する際の成形圧力を表6に示すとおりに変更したこと以外は、実施例2と同じ手順で実施例12,13の成形体を作製した。そして、実施例2と同じ手順でこれらの成形体の評価を行った。結果は、表6に示すとおりであった。表6には、実施例2の結果も再度記載した。
【0072】
(比較例14,15)
成形体を作製する際の圧力を表6に示すとおりに変更したこと以外は、比較例3と同じ手順で比較例14,15の成形体を作製した。そして、比較例3と同じ手順でこれらの成形体の評価を行った。結果は、表6に示すとおりであった。表6には、比較例3の結果も再度記載した。
【0073】
【0074】
表6の実施例12,13,2の結果から、成形時の圧力を変えても、成形体の形状を十分に保持できることが確認された。一方、木質チップの含有率が低い比較例14,15,3の成形体は、成形時の圧力を大きくすると密度は向上するものの、乾留後に成形体の形状を維持することができなかった。
【0075】
図5は、表5及び表6に示す各実施例及び比較例の成形圧力と成形体の密度との関係を示している。
図5中、黒丸はプラスチック(PP)の含有率が20質量%のデータであり、白三角はプラスチック(PP)の含有率が40質量%のデータであり、黒四角はプラスチック(PP)の含有率が60質量%のデータである。
図5に示すとおり、プラスチックの比率が過剰(60質量%、黒四角)になると、成形圧力を上げても成形体の密度はあまり上昇しないことが確認された。
【0076】
<乾留による形状保持性の評価>
(実施例14)
粒状の石灰石(粒径:≦0.3mm)、廃プラスチック片(粒径:≦30mm)、建設廃材を破砕して得られた木質チップ(粒径:≦30mm)を、30質量%:20質量%:50質量%の比率で混合して得た原料を、RPF成形機で成形して、円柱形状の成形体(直径:35.01mm、長さ:61.11mm、質量:74.24g、密度:1.26g/cm
3)を得た。成形の際の温度は150℃、成形圧力は58MPa、成形時間は2分間、雰囲気は大気中とした。室温下における成形体の外観は、
図6(A)に示すとおりであった。
【0077】
この成形体を、900℃、2時間の条件で乾留した。乾留後の成形体の直径は32.09mm、長さは79.15mm、質量は21.19g、密度は0.33g/cm
3であった。乾留前の質量に対する乾留後の質量の比率は28.5%であった。この比率から、成形体に含まれていた廃プラスチック片はほぼ消失したものと推察される。また、木質チップの8割程度は揮発し、石灰石は熱分解(CaCO
3→CaO+CO
2)によって、二酸化炭素の分、質量が減少したものと推察される。乾留後の成形体の外観は
図6(B)に示すとおりであった。乾留後の成形体は乾留前の形状を十分に保持しており、形状保持性に優れることが確認された。この成形体の形状保持性を上記評価基準で評価すると「A」であった。
石灰源又はシリカ源のサイズが微細であっても塩基度の調整に有効利用することが可能な塩基度調整剤及びその製造方法が提供される。石灰源又はシリカ源のサイズが微細であっても塩基度の調整に有効利用することが可能な廃棄物溶融処理方法が提供される。
10…測定装置、14…可動板、16…成形体、17…支持板、18…架台、40…溶融炉、40a…乾燥・予熱帯、40b…熱分解帯、40c…燃焼・溶融帯、41…コークス充填層、42…シャフト部、43…熱分解残渣、44…朝顔部、45…上段羽口、46…炉底部、47…下段羽口、48…廃棄物、49…出滓口、50…装入装置、52…排ガス管、100…廃棄物溶融処理設備。