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  • 特開-半導体装置および電力変換装置 図1
  • 特開-半導体装置および電力変換装置 図2
  • 特開-半導体装置および電力変換装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144467
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】半導体装置および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20231003BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20231003BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20231003BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 653C
H01L29/91 C
H01L29/78 652R
H01L27/06 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051445
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白石 正樹
【テーマコード(参考)】
5F048
【Fターム(参考)】
5F048AC10
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC12
5F048BD07
(57)【要約】
【課題】
RC-IGBTのダイオード部のpボディ層面積を低減してホール注入を抑制し、リカバリー特性を向上できる半導体装置および電力変換装置を提供する。
【解決手段】
本発明の半導体装置100は、1つのチップ内にIGBT部とダイオード部とを有するRC-IGBTにおいて、1チップの裏面側から表面側に向かって、コレクタ電極層/カソード電極層1、バッファ層2、ドリフト層3、ボディ層10、絶縁層4およびエミッタ電極層5が積層され、ダイオード部は複数のトレンチ6を有し、複数のトレンチ6は、トレンチ6間にボディ層10を有する領域と、トレンチ6間にボディ層10を有しない領域11とを含むことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのチップ内にIGBT部とダイオード部とを有するRC-IGBTにおいて、
前記チップの裏面側から表面側に向かって、コレクタ電極層/カソード電極層、バッファ層、ドリフト層、ボディ層、絶縁層およびエミッタ電極層が積層され、
前記ダイオード部は複数のトレンチを有し、
前記複数のトレンチは、前記トレンチ間にボディ層を有する領域と、前記トレンチ間にボディ層を有しない領域とを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記ボディ層を有しない領域の前記トレンチの間隔が、前記ボディ層を有する領域の前記トレンチの間隔よりも小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記ダイオード部を平面視したときに、前記カソード電極層に対する前記ボディ層の面積50%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記IGBT部と前記ダイオード部との境界に、前記ボディ層を有しない前記トレンチを複数配置することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
一対の直流端子と、
交流出力の相数と同数の交流端子と、
前記一対の直流端子間に接続され、スイッチング素子と前記スイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとで構成された並列回路が2個直列に接続された、交流出力の相数と同数のスイッチングレッグと、
前記スイッチング素子を制御するゲート回路と、を有する電力変換装置であって、
前記ダイオードおよび前記スイッチング素子は、請求項1に記載の半導体装置であることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一チップ内にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードを内蔵した逆導通IGBT(以降、「RC-IGBT」と称する。)は、(1)IGBTとダイオードのターミネーション領域を共通化できることによるチップサイズ低減および(2)IGBT領域またはダイオード領域で発生した損失がチップ全体で放熱されるために熱抵抗が低減、といったメリットがある。一方、IGBTとダイオードを同一チップ内に作りこむため、各々のチップの同時最適化が難しく、特にダイオード部のライフタイム制御が困難であり、ダイオードの低注入化やリカバリー損失低減が課題である。
【0003】
RC-IGBTのダイオード部の低注入化を課題とする技術として、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、領域A(IGBT領域)に第1の溝6が複数設けられ、これらの溝は、第1の間隔で等間隔に設けられており、領域B(ダイオード領域)では、第2の溝10が複数設けられ、これらの溝は、第2の間隔で等間隔に設けられており、上記第2の間隔を、上記第1の間隔よりも小さくするようにした半導体装置の構成が開示されている。特許文献1の構成によれば、領域B(ダイオード領域)により多くの溝が設けられているため、ダイオードがオンした時にダイオードのアノードとして寄与するPベース層2の面積が相対的に減少するため、Pベース層2へのホールの注入が抑制され、第1主面近傍のキャリア密度が減少し、リカバリー動作時のピーク電流を下げることが可能となり、ダイオードのリカバリー特性を改善することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-53648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、RC-IGBTのダイオード部のPベース層2(pボディ層)の面積を減少することで、ホール注入が抑制するものであるが、上記特許文献1の手法では、トレンチ間隔を小さくすることで、pボディ層面積を減少させているため、トレンチの加工の限界で、pボディ層面積の低減には限界がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、RC-IGBTのダイオード部のpボディ層面積を低減してホール注入を抑制し、リカバリー特性を向上できる半導体装置および電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の一態様は、1つのチップ内にIGBT部とダイオード部とを有するRC-IGBTにおいて、チップの裏面側から表面側に向かって、コレクタ電極層/カソード電極層、バッファ層、ドリフト層、ボディ層、絶縁層およびエミッタ電極層が積層され、ダイオード部は複数のトレンチを有し、複数のトレンチは、トレンチ間にボディ層を有する領域と、トレンチ間にボディ層を有しない領域とを含むことを特徴とする半導体装置である。
【0008】
また、上記課題を解決するための本発明の他の態様は、一対の直流端子と、交流出力の相数と同数の交流端子と、一対の直流端子間に接続され、スイッチング素子とスイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとで構成された並列回路が2個直列に接続された、交流出力の相数と同数のスイッチングレッグと、スイッチング素子を制御するゲート回路と、を有する電力変換装置であって、ダイオード、スイッチング素子およびゲート回路は、上記半導体装置であることを特徴とする電力変換装置である。
【0009】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、RC-IGBTのダイオード部のpボディ層面積を低減してホール注入を抑制し、リカバリー特性を向上できる半導体装置および電力変換装置を提供できる。
【0011】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の半導体装置の第1の例を模式的に示す断面図
図2】本発明の半導体装置の第2の例を模式的に示す断面図
図3】本発明の電力変換装置の概略構成を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
[半導体装置]
図1は本発明の半導体装置の第1の例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明の半導体装置(RC-IGBT)100は、IGBT部とDiode部を有する。裏面側から表面側に向かって、コレクタ電極層/カソード電極層1、拡散層2、バッファ層3、ドリフト層4およびボディ層5、絶縁層12およびエミッタ/アノード電極層6が積層された構造を有している。なお、図1中の導電型「p」および「n」は、反転しても良い。
【0015】
IGBT部において、表面側の構造は、ゲート電極Gおよびエミッタ/アノード電極E(A)とトレンチ(ゲートトレンチ)6とが電気的に接続されている。トレンチ6は、酸化膜8で覆われている。トレンチ6間はpボディ層10が設けられている。なお、トレンチ9は、エミッタとしても良い。
【0016】
Diode部において、表面側の構造は、一部のトレンチ6間はpボディ層10が設けられていない領域(pボディ層10が間引かれた領域)11を有している。そして、pボディ層がない領域11においては、トレンチ6の間隔がpボディ層のある領域より狭く設けられている。具体的には、トレンチ6a~6c、6d~6fおよび6g~6iの間隔が、トレンチ6cとトレンチ6d間隔およびトレンチ6fとトレンチ6gの間隔よりも狭くなっている。このようにトレンチ間を狭くすることで、トレンチ6間のn層を空乏化し、耐圧を確保している。
【0017】
上記構造により、Diode部におけるpボディ層の面積を低減することができ、ダイオードの低注入化を実現できる。これによって、半導体装置100のリカバリー特性を向上できる。
【0018】
図1では、pボディ層のある領域とない領域が1:1で示されているが、両者の比は任意に変えてもよく、pボディ層の面積を任意に設定することで、ダイオードの順方向電圧とリカバリー損失のトレードオフを調整することができる。例えば、ダイオード部を平面視したときに、カソード電極層1に対するボディ層10の面積50%以下とすることで、ダイオードの低注入化を実現できる。
【0019】
図2は本発明の半導体装置の第1の例を模式的に示す断面図である。図2に示す半導体装置200は、図1に示す半導体装置100の構成に加えて、IGBT部とDiode部との境界にpボディ層10のない複数のトレンチ6が設けられている領域12を有する。RC-IGBTにおいて、ダイオードのリカバリー時に、IGBT部のDiode部との境界部分にホールが流れ込み、境界部で半導体装置200が破壊する恐れがある。図2に示す半導体装置200では、Diode部とIGBT部の境界にpボディ層10のないトレンチ6を複数配置することで、Diode端部とIGBT端部間の距離を広くすることができ、上記のような、IGBT部のDiode部との境界部分にホールが流れ込むことを抑制でき、半導体装置200の破壊を抑制することができる。また、境界部のトレンチ間にはpボディ層10を設けないことで、pボディ層10からのホール注入を抑制できる。
【0020】
[電力変換装置]
図8は本発明の電力変換装置の概略構成を示す回路図である。図8は、本実施形態の電力変換装置500の回路構成の一例と直流電源と三相交流モータ(交流負荷)との接続の関係を示す。
【0021】
本実施形態の電力変換装置500では、本発明の半導体装置を素子521~526として使用する。
【0022】
図8に示すように、本実施形態の電力変換装置500は、一対の直流端子であるP端子531、N端子532と、交流出力の相数と同数の交流端子であるU端子533、V端子534、W端子535とを備えている。
【0023】
また、一対の電力スイッチング素子501および502の直列接続からなり、その直列接続点に接続されるU端子533を出力とするスイッチングレッグを備える。また、それと同じ構成の電力スイッチング素子503および504の直列接続からなり、その直列接続点に接続されるV端子534を出力とするスイッチングレッグを備える。また、それと同じ構成の電力スイッチング素子505および506の直列接続からなり、その直列接続点に接続されるW端子535を出力とするスイッチングレッグを備える。
【0024】
電力スイッチング素子501~506からなる3相分のスイッチングレッグは、P端子531、N端子532の直流端子間に接続されて、図示しない直流電源から直流電力が供給される。電力変換装置500の3相の交流端子であるU端子533、V端子534、W端子535は図示しない三相交流モータに三相交流電源として接続されている。
【0025】
電力スイッチング素子501~506には、それぞれ逆並列にダイオード521~526が接続されている。例えばIGBTからなる電力スイッチング素子501~506のそれぞれのゲートの入力端子には、ゲート回路511~516が接続されており、電力スイッチング素子501~506はゲート回路511~516によりそれぞれ制御される。なお、ゲート回路511~516は統括制御回路(不図示)によって統括的に制御されている。
【0026】
ゲート回路511~516によって、電力スイッチング素子501~506を統括的に適切に制御して、直流電源Vccの直流電力は、三相交流電力に変換され、U端子533、V端子534、W端子535から出力される。
【0027】
本発明の半導体装置(RC-IGBT)を電力変換装置500に適用することで、電力スイッチング素子501~506およびダイオード521~526を1つにまとめることができ、装置の小型化を図ることができる。また、上述した通り、本発明の半導体装置を用いることで、ダイオード部のリカバリー特性を向上した電力変換装置を提供することができる。
【0028】
以上、本発明によれば、RC-IGBTのダイオード部のpボディ層面積を低減してホール注入を抑制し、リカバリー特性を向上できる半導体装置および電力変換装置を提供できることが示された。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0029】
1…コレクタ電極層/カソード電極層、2…バッファ層2、3…ドリフト層、4…絶縁層、5…エミッタ電極層、6,6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6h,6i…トレンチ、10…pボディ層、11,12…pボディ層の無い領域、100,200…半導体装置、500…電力変換装置、501~506…電力スイッチング素子、511~516…ゲート回路、521~526…ダイオード、531…P端子、532…N端子、533…U端子、534…V端子、535…W端子。
図1
図2
図3