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特開2023-14447吊り下げ式テント及び吊り下げ式テントの設営方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014447
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】吊り下げ式テント及び吊り下げ式テントの設営方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/42 20060101AFI20230124BHJP
   E04H 15/64 20060101ALI20230124BHJP
   E04H 15/36 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
E04H15/42
E04H15/64
E04H15/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118371
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】399126293
【氏名又は名称】株式会社カンセキ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】根本 学
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141AA08
2E141BB05
2E141CC05
2E141DD13
2E141DD23
2E141EE26
2E141EE28
2E141EE32
2E141GG01
2E141GG06
2E141GG10
2E141HH01
(57)【要約】
【課題】テントを設営中に、起立したポールに対し、天幕部に設けられた係合部がずれ落ちることなく、安定的に架け止め可能な吊り下げ式テント及びその設営方法を提供する。
【解決手段】テントの天幕部とポールとを係合する係合部を抜け止めするための抜止部を、該ポールに少なくとも1つ以上備える。ポール先端をテントのフロア隅部に位置する固定部に固定することによってポールを起立させ、該テントの天幕部に固定された係合部のうち、該テントの該フロア隅部近傍に位置する該係合部を、抜止部に隣接し、且つ、該抜止部の上部に位置するように、起立した該ポールに架け、残りの該係合部を起立した該ポールに架けることで、安定した設営が可能である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り下げ式のテントであって、テントの天幕部とポールとを係合する係合部を抜け止めするための抜止部を、該ポールに少なくとも1つ以上備えることを特徴とするテント。
【請求項2】
前記抜止部が、前記テントの全高に対して50%以下の高さに位置することを特徴とする請求項1に記載のテント。
【請求項3】
前記抜止部が、前記テントの全高に対して、10%から50%の高さに位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテント。
【請求項4】
前記抜止部が、前記テントのフロアの隅部近傍に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のテント。
【請求項5】
前記抜止部が、前記ポールの周方向に突出した構造を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のテント。
【請求項6】
前記抜止部が、リング構造を有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のテント。
【請求項7】
交差させた複数のポール又は枝分かれした前記ポールに、前記テントの居住部を構成する前記天幕部が吊り下げされる構造であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のテント。
【請求項8】
吊り下げ式テント用のポールであって、テントの天幕部とポールを係合する係合部を抜け止めするための抜止部を少なくとも1つ以上備えることを特徴とする吊り下げ式テント用のポール。
【請求項9】
前記ポールの両端部近傍に前記抜止部を備えることを特徴とする請求項8に記載の吊り下げ式テント用のポール。
【請求項10】
前記ポールのジョイント部に前記抜止部を備えることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の吊り下げ式テント用のポール。
【請求項11】
吊り下げ式のテントの設営方法であって、
ポール先端をテントのフロア隅部に位置する固定部に固定することによってポールを起立させ、
該テントの天幕部に固定された係合部のうち、該テントの該フロア隅部近傍に位置する該係合部を、抜止部に隣接し、且つ、該抜止部の上部に位置するように、起立した該ポールに架け、残りの該係合部を起立した該ポールに架ける工程を備えることを特徴とするテントの設営方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り下げ式テントに関し、詳しくは、吊り下げ式テントの設営時の作業効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
吊り下げ式のテントは、ポールを曲げながらポールの先端部をテントのフロアの隅に位置する穴に固定したり、テントのフロアの隅に位置する差し込み部材に差し込んで固定したりすることで、ポールにテンションをかけて起立させる。その後、住居部を構成する天幕部(以下、「布地」とも言う)に設けられた係合部を起立したポールに架けることによって、居住部をポールに吊り下げて設営する。
【0003】
しかしながら、ポールに全ての係合部を架けるまでは、ポールは不安定な状態にあり、作業中にポールに係合した係合部がポールに沿って下に移動し、ずり落ちてしまう場合がある。また、ポールへの係合を開始した際、係合部からポールへの付勢が弱いと、ポールが不安定なままとなる。このような状態では、ポールが倒れてしまうことがあり、ポールを再度、起立させる等の作業を繰り返す必要があり、作業がスムーズに進まない場合も多かった。
そこで、テントを設営中に、起立したポールを安定させる技術が求められていた。
【0004】
テントのポールと係合部との関係についての技術として、例えば、テント用ホルダーに関し、ポールから外れるのを防止する技術(特許文献1参照)が開示されている。より詳しくは、ホルダーは、複数のフック部を備え、各々のフックは、開口部を持ち、2つの開口部の間にポールを通し、フックを回転させることによって、フックの脱落を防ぐものである。
しかしながら、上記技術によれば、ポールと係合部の保持力は向上するものの、係合部のずれ落ちを完全に防止することができないし、設営中のポールの安定については記載されておらず、前記問題の解決には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-81748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、テントを設営中に、起立したポールに対し、天幕部に設けられた係合部がずれ落ちることなく、安定的に架け止め可能な吊り下げ式テント及びその設営方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、テントであって、テントの天幕部とポールとを係合する係合部を抜け止めするための抜止部を、ポールに少なくとも1つ以上備える手段を採用する。
【0008】
また、本発明は、前記抜止部が、テントの全高に対して50%以下の高さに位置する手段を採用する。
【0009】
さらに、本発明は、前記抜止部が、テントの全高に対して、10%から50%の高さに位置する手段を採用する。
【0010】
またさらに、本発明は、前記抜止部が、テントのフロアの隅部近傍に設けられている手段を採用する。
【0011】
さらにまた、本発明は、前記抜止部が、ポールの周方向に突出した構造を有する手段を採用する。
【0012】
そしてまた、本発明は、前記抜止部が、リング構造を有している手段を採用する。
【0013】
またさらに、本発明は、交差させた複数のポール又は枝分かれしたポールに、テントの居住部を構成する天幕部が吊り下げされる構造を備える手段を採用する。
【0014】
さらにまた、本発明は、吊り下げ式テント用のポールであって、テントの天幕部とポールを係合する係合部を抜け止めするための抜止部を少なくとも1つ以上備える手段を採用する。
【0015】
そしてまた、本発明は、前記ポールの両端部近傍に抜止部を備える手段を採用する。
【0016】
またさらに、本発明は、前記ポールのジョイント部に抜止部を備える手段を採用する。
【0017】
さらにまた、本発明は、吊り下げ式のテントの設営方法であって、ポール先端をテントのフロア隅部に位置する固定部に固定することによってポールを起立させ、テントの天幕部に固定された係合部のうち、テントのフロア隅部近傍に位置する係合部を、抜止部に隣接し、且つ、抜止部の上部に位置するように、起立したポールに架け、残りの係合部を起立したポールに架ける工程を備える手段を採用する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るテント及びポール並びに設営方法によれば、ポールに架けた係合部のずれ落ちを防止することが可能であって、係合部がポールを固定する作用をもたらし、テントの設営中に、ポールが倒れることなく安定させることが可能となって、テント設営作業の効率化に資する、といった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るテントの実施形態を示す要部斜視図及び全体斜視図である。
図2】本発明に係るテントの設営工程を示す図である。
図3】本発明に係るポールの抜止部付近の構造を示す斜視図である。
図4】本発明に係るポールの構造を示す図である。
図5】本発明に係る抜止部の位置を示す図である。
図6】本発明に係る抜止部の変形例を示す図である。
図7】本発明に係る抜止部を複数用いる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るテントは、吊り下げ式のテントであって、テントの天幕部とポールとを係合する係合部を抜け止めするための抜止部を、該ポールに少なくとも1つ以上備えることを特徴とする。
本発明のテントは、抜止部を備えること以外の構成は公知の吊り下げ式テントの構成を採用することができる。
吊り下げ式テントとは、交差させた複数のポール又は枝分かれしたポールに、テントの居住部を構成する天幕部が吊り下げされる構造を有するテントである。吊り下げ式テントの形状としては、様々なものがあり、例えば、ドーム型、魚座型のテントが挙げられる。吊り下げ式テントのポールは、例えば、両端が、テントフロア(テントの床)に位置する固定部に固定され、撓み、その状態のポールに天幕部の係合部が係合されることによって起立状態で固定され、テントが設営される。雨風を防ぐために、天幕部の上からフライシートを被せる構成であってもよい。
【0021】
本発明における抜止部とは、テントの天幕部とポールとを係合する係合部を抜け止めするための構造ないし部位である。吊り下げ式のテントでは、テントの天幕部とポールとを係合する係合部は、設営途中では、係合物を固定する力がさほどかからないことから、ポールに沿ってある程度自由に移動することができる。
【0022】
抜止部は、テントの天幕部とポールとを係合する係合部を抜け止めする、即ちずれ落ちるのを防止するための構造ないし部位であり、形状は特に限定されない。係合部がポールに沿って移動するのを止められるようなものであればどのような形状、構成であってもよい。抜止部の形状としては、例えば、リング形状、突起、凹部、凹凸形状が挙げられる。また、抜止部として、ポール表面にゴムなどの滑り止め性に優れた素材を貼り付けたもの、ポール表面を部分的に加工して、凹凸や滑り止め性に優れた模様が形成されたものを挙げることができる。
【0023】
抜止部の数は限定されないが、複数存在することが好ましい。さらに、各ポールがテントフロアの固定部に接する位置の数と同じ数以上存在することが好ましい。例えば、2本のポールをX字に交差させて設営さドーム型テントは、通常、テントフロアの4隅にポールを固定する固定部が備わるものであり、このような構成の場合、抜止部もテントフロアの4隅近辺にそれぞれ一つ以上、合計で少なくとも4つ存在することが好ましい。
【0024】
抜止部の位置は特に限定されないが、好ましくは、テントが自立した状態で、テントの全高(フライシートが無い状態の全高であり、例えば、図5のような構造のテントでは、Tが全高に相当する)に対して50%以下の高さに位置し、さらに好ましくは、10%から50%の高さに位置する。全高に対して50%以下の高さとは、例えば、図5のような構造のテントにおいて、全高に相当するTに対して、抜止部が位置する地面からの高さLの割合が50%以下であるということである。また、抜止部は、テントが設営された状態で、テントフロアの隅部近傍に位置することが好ましい。
【0025】
係合部とは、テントの天幕部とポールとを係合するための部位であり、例えば、フック形状のものや、リング状のものが挙げられる。フック形状の係合部の場合、テント天幕部に繋がれたフックを、ポールに架けることで、テント天幕部がポールに吊り下げられる。
【0026】
固定部とは、ポール先端を固定するための部位であり、テントフロアの好ましくは隅部に位置する。形状は特に限定されず、穴、突起、棒状のものが挙げられる。固定部が穴の場合、ポール先端が細くなっており、穴に差し込むことによってポールが固定される。固定部が突起や棒状の場合、当該突起や棒状を、ポール先端に差し込むことでポールが固定される。一般的には、ポールの両端が固定される固定部間の直線距離がポールの長さよりも短いため、ポールの両端を固定部に固定すると、ポールは撓んだ(曲がった)状態となる。
【0027】
本発明のポールは、吊り下げ式テント用のポールであって、テントの天幕部とポールを係合する係合部を抜け止めするための抜止部を少なくとも1つ以上備えることを特徴とするものである。
【0028】
本発明のポールは、両端部近傍に、抜止部材を備えることが好ましく、ポールのジョイント部に抜止部材を備えることが好ましい。
【0029】
以下、本発明の実施形態の例を、図面に基づき説明する。
【0030】
なお、本発明に係るテント及びポール並びに設営方法の全体構成及び各部の構成は、下記に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更することができるものである。
【0031】
図1は、本発明に係るテントの実施形態を示す斜視図であり、(a)は要部の斜視図、(b)は全体の斜視図である。図2は、本発明に係るテントの設営工程を示す図であり、(a)がポールを起立させた状態、(b)が天幕部の一部をポールに係合した状態、(c)がポールと居住部の設営が完了した状態である。図3は、本発明に係るポールの抜止部付近の構造を示す斜視図であり、(a)がロッドを組み立てる前の状態、(b)がロッドを組み立てた状態、(c)が係合部を取り付けた状態である。図4は、本発明に係るポールの構造を示す図であり、(a)がポールの全体の組み立て前の構造を示し、(b)がポールの端部付近を拡大したものである。図5は、本発明に係る抜止部の位置を示しており、ポールの係合が完了した状態を示す側面図である。図6は、本発明に係る抜止部のバリエーションを示す図である。図7は、本発明に係る抜止部を複数用いる例を示す図である。
【0032】
本発明に係るテント1は、通常の吊り下げ式のテントの最小限の構成を備えている。さらに、フライシート等で被う場合もある。
テント1は、居住部10とポール部20とから構成されている。
居住部10は、テント1を使用する際に、使用者が入る空間を構成するものである。居住部10の材質は、ポリエステル、ナイロン、コットン等であり、通気性に優れ、耐久性に富むものが使用されている。居住部10は、主に天幕部12とフロア13と係合部11から成る(図1)。
【0033】
フロア13は、居住部10の底部分を構成するものであり、概ね、長方形か正方形である。地面に直接接する場合もあり、防水性に優れている。フロア13の頂点付近である隅部14の近傍には、固定部15が設けられ、ポール部20の端部であるロッドエンドプラグ25を挿入できるようになっている。
【0034】
天幕部12は、フロア13の周囲から上方に伸びて、天井を構成する部分である。天幕部12とフロア13により、1つの空間を構成する。天幕部12には、使用者が出入りする出入口16や窓17が設けてある。天幕部12である布地には、係合部11が複数配置されており、係合部11を介して、天幕部12は、ポール部20に固定される。
【0035】
係合部11は、ベルト部とフック部から成る。ベルト部は、一般的に樹脂繊維が用いられる。フック部は、樹脂でポール部20の径に合致したフック形状である。いずれもポール部20に対して、天幕部12を固定するのに十分な強度を持つ。
係合部11のベルト部の一方の端部が、天幕部12である布地に固定されている。ベルトの他方の端部はフック部に固定されている。フック部をポール部20に引っ掛けることで、天幕部12をポール部20に固定するものである。
【0036】
ポール部20は、居住部10を吊り上げ、形を整えるための棒状体である。弾力性があり、強靭で、腐食に強い素材でできている。1つの居住部10に対して、交差させた複数のポール部20を用いる。本実施形態のようにX型のものや、魚座型に交差させる形状のものがある。
また、居住部10の中央の最も高い位置である天頂部30付近にて枝分かれしたポール部20を用いるものもある。例えば、3つの枝に分岐するY型がある。
ポール部20は、ロッド21、ロッドエンドプラグ25、抜止部26及びショックコード27から成る。ポール部20全体は、図4(a)に示すように、複数のロッド21からなり、各々のロッド21をジョイント部22で接続して、長いポール部20を形成するものである。
【0037】
ロッド21は、ポール部20の主部材である。複数のロッド21から成り、軸方向にロッド21を繋ぎ合わせることで、吊り下げ部材としての長さを構成している。ロッド21同士の接続は、ジョイント部22によって行われる。ジョイント部22は、一方のロッド21がジョイントオス部23を構成し、他方のロッド21がジョイントメス部24を構成することによって、それぞれを組み合わせてロッド21同士を結合している。ジョイントオス部23とジョイントメス部24は精度よく作られ、結合後、容易に抜けない構造としている。
【0038】
ロッドエンドプラグ25は、ポール部20の両端に設けられるものであり、細い棒を軸方向に突出させる構造である。この細い棒を隅部14近傍の固定部15に挿入することで、設営時にポール部20の端部の位置を確定することができる。また、同時にポール部20を曲げ、フロア13の面に対して起立させた形となる。言い換えれば、ポール部20先端をテント1のフロア13の隅部14に位置する固定部15に固定することで、ポール部20を起立させることになる。
【0039】
抜止部26は、本発明の要部であり、居住部10の天幕部12とポール部20とを係合する係合部11の抜け、ずれを防止するためのものであり、ポール部20に少なくとも1つ以上備えられている。また、複数あるロッド21のうち、ポール部20の端部を構成するロッド21に配置されるので、ポール部20の両端部近傍に抜止部26を配置していることになる。抜止部26は、リング構造であり、外径は、ポール部20の外径よりも大きい。
【0040】
抜止部26は、ポール部20の端部のロッド21と隣り合うロッド21の間であるジョイント部22に配置される。より詳しくは、隣り合うロッド21をジョイント部22で接続する際、一方のジョイントオス部23に抜止部26を通し、他方のロッド21のジョイントメス部24を一方のジョイントオス部23に被せる形をとる。抜止部26の内径は、ジョイントオス部23の外径程度であり、抜止部26は、2つのロッド21に挟まれる形状となる(図3(a)、図3(b))。
【0041】
抜止部26の外径は、ポール部20の外径よりも大きいことから、抜止部26は、ポール部20の周方向に突出した構造と言える。突出量は、係合部11のフック部が乗り上げない程度の高さである。抜止部26付近に係合部11を架けた際、係合部11は、抜止部26により、ポール部20上の位置が固定される(図3(c)、図1(a))。
【0042】
ショックコード27は、ポール部20の各部材がバラバラになることを防ぐケーブルである。各部材の中心付近を通り、伸縮性、弾性がある。ショックコード27を用いることで、抜止部26を確実に、ポール部20の端部のロッド21と隣り合うロッド21の間に配置することができる。また、比較的小さな部材である抜止部26の紛失を防止する作用効果も奏する(図3(a)、図4(b))。
【0043】
図2に沿って、テント1の設営工程を説明する。
まず、居住部10をフロア13を下にして地面に広げる。複数のロッド21から成るポール部20を組み立て、2つのポール部20を作る。フロア13の対向する頂点に位置する固定部15に、ポール部20の端部であるロッドエンドプラグ25を挿入する。固定部15は、フロア13の隅部14近傍にある。
フロア13の対向する頂点間の距離よりもポール部20の長さが長いので、ポール部20は曲がる。調整することで、2つのポール部20は、地面に対して垂直に起立し、テント1の中央部分で交差する形とすることができる(図2(a))。
【0044】
次に、居住部10の天幕部12に固定された係合部11の1つをポール部20に架ける。テント1のフロア13の隅部14近傍に位置する係合部11を、ポール部20に架ける際、抜止部26に隣接し、且つ、抜止部26の上部に位置するように架ける。このように架けることによって、係合部11が居住部10の重さ等によって、下にずれそうになっても、抜止部26によって止まり、係合部11のずれ落ちを防ぐことができる(図2(b)、図1(a))。
そして、他の係合部11をすべてポール部20に架けることで、居住部10とポール部20の設営が完了する(図2(c))。
【0045】
図6に沿って、ロッド21と抜止部26の構造及び、抜止部26のバリエーションについて説明する。
図6(a)は、本実施形態におけるロッド21と抜止部26の軸方向での断面図である。ロッド21同士は、ジョイント部22で重なり、接続されている。ジョイントメス部24に対して、ジョイントオス部23が挿入される形である。抜止部26は、ジョイントオス部23の基端部分に固定される。抜止部26の外径は、ロッド21の外径よりも大きいことから、突起構造となっている。
図6(b)は、ロッド21自体に突起がある場合である。この例では、ジョイントオス部23の基端に近い位置に突起を設けている。ロッド21自体に突起を設けることで、抜止部26の紛失を避けることができる。
図6(c)は、(b)と同じくロッド21自体に突起がある場合であるが、ジョイントメス部24の端部に突起を形成している点が異なる。比較的加工のしやすいジョイントメス部24の端部を突起とすることで、突起の形成が容易となる。
図6(d)は、ロッド21自体に突起を形成する例であるが、円環状ではなく、複数の小さな突起から成る。突起を2つ以上設けることで、係合部11の架け方によらず、係合部11のずれを防ぐことができる。
【0046】
図7に沿って、抜止部26をポール部20の端部付近に複数設ける場合を説明する。
全高に対して10%から50%の位置に抜止部26を設けることによって、ポール部20を安定させることができるが、テント1の形状や、風などの影響を軽減するために、より安定させる必要がある場合は、抜止部26をポール部20の端部付近に複数設けることで、安定度を向上させることができる。
【0047】
このように、本発明に係るテント及びポール並びに設営方法によれば、テントの設営中に、ポールに架けた係合部のずれ落ちを防止することができ、係合部がポールを固定する作用をもたらし、ポールが倒れることなく安定させることが可能となって、テント設営作業の効率化に優れている。
【実施例0048】
図5に示されるようなドーム型のテント(上から見た場合に2本のポールがX字状に交差するタイプ)を製造し、抜止部の位置を変えて、ポールの倒れやすさ及び設営の容易さを確認した。本実施例に係る抜止部は、ゴムからなるリング状の部材であり、これを各ポールに2つずつ、合計で4つ備え付けた。抜止部はゴム状のリングであり、テントの天幕部から伸びたフックを抜止部の近くでポールに架けた場合、フックがずれ落ちるのを抜止部によって防ぐことができるものであった。
まず、比較対象として、抜止部を備えないテントを設営した。ポールを固定部に固定し、その後、固定したポールに天幕部のフックを架けようとしたが、ポールが起立状態で安定せずに、全てのフックを架ける前にポールが倒れてしまい、設営がしにくかった。
次に、抜止部を備えたテントを設営した。4つの抜止部の地面からの高さLを10cm、15cm、20cm、30cm、40cm、50cmと変えて設営を行った。
テント1の全高Tは、フライシートをつけていない状態で、地面からテント1の最も高い部分である天頂部30までの距離である。本実施例のテントは、全高は140cmであった。
Lが10cm(約7%)では、抜止部が無い状態よりはポールが安定したものの、ポールが倒れるのを抑える力が弱かった。15cm(約10%)では、Lが10cmのときよりもポールが安定し、多少倒れることがあったが、手で補助すれば安定して起立した。20cm(約14%)では、最初は手で補助が必要であったが、ポールの起立後は安定した。30cm(約21%)、40(約28%)cmでは、係合部11を架けた状態で、手を離しても倒れず、さらに手で押してポールを倒そうとしても抵抗が出て倒れにくかった。Lを70cm(約50%)としても、30cmや40cmの場合と同様の効果があった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、あらゆる形態・方式の吊り下げ式テントに採用することが可能であり、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0050】
1 テント
10 居住部
11 係合部
12 天幕部
13 フロア
14 隅部
15 固定部
16 出入口
17 窓
20 ポール部
21 ロッド
22 ジョイント部
23 ジョイントオス部
24 ジョイントメス部
25 ロッドエンドプラグ
26 抜止部
27 ショックコード
30 天頂部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7