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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144472
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】光加熱装置、加熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20231003BHJP
   F27D 11/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01L21/26 J
H01L21/26 T
F27D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051454
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知識
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆博
【テーマコード(参考)】
4K063
【Fターム(参考)】
4K063AA05
4K063BA12
4K063CA03
4K063FA13
(57)【要約】
【課題】被処理基板の主面上における照度分布を、より精細に調整可能な光加熱装置及び加熱処理方法を提供する。
【解決手段】被処理基板を支持する支持部材と、第一主面にLED素子群が搭載された複数のLED基板を含む光源ユニットとを備え、支持部材に被処理基板が支持された状態の下で、第一主面と被処理基板の第二主面とがなす角度をθ、LED基板上に搭載された、第二主面の法線方向に関して第二主面から最も近くに位置する第一LED素子と被処理基板との離間距離をD1、LED基板上に搭載された、法線方向に関して第二主面から最も遠くに位置する第二LED素子と第一LED素子との離間距離をD2としたときに、複数の光源ユニットのうちの少なくとも一つが所定の関係式を満たすように配置されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に光を照射することで加熱する光加熱装置であって、
前記被処理基板を支持する支持部材と、
第一主面にLED素子群が搭載されたLED基板を含む複数の光源ユニットとを備え、
前記支持部材に前記被処理基板が支持された状態の下で、前記第一主面と前記被処理基板の第二主面とがなす角度をθ、前記LED基板上に搭載された、前記第二主面の法線方向に関して前記第二主面から最も近くに位置する第一LED素子と前記被処理基板との離間距離をD1、前記LED基板上に搭載された、前記法線方向に関して前記第二主面から最も遠くに位置する第二LED素子と前記第一LED素子との離間距離をD2としたときに、前記光源ユニットのうちの少なくとも一つが、下記(1)式を満たすように配置されていることを特徴とする光加熱装置。

2tan2θ/cosθ≧D2/D1 (1)
【請求項2】
前記複数の光源ユニットは、
前記支持部材に前記被処理基板が支持された状態の下で、前記光源ユニットから前記被処理基板に向かう前記第一主面の法線が、前記被処理基板の中央部側に向くように前記LED基板が傾けられた第一光源ユニットと、
前記光源ユニットから前記被処理基板に向かう前記第一主面の法線が、前記被処理基板の周端部側に向くように前記LED基板が傾けられた第二光源ユニットとを含むことを特徴とする請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項3】
前記LED基板の位置を変化させて前記角度θを調整する角度調整機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項4】
前記離間距離D1、及び前記離間距離D2に基づいて、前記角度θの値を決定し、決定した前記角度θの値に基づいて、前記角度調整機構を駆動する制御部を備えることを特徴する請求項3に記載の光加熱装置。
【請求項5】
前記第一主面と前記第二主面がなす角度θを計測するための角度センサを備えることを特徴とする請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項6】
前記支持部材は、前記被処理基板を、前記第二主面に直交し、前記第二主面の中心を通過する軸を回転軸として回転させる回転機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項7】
前記LED基板に搭載される前記LED素子群は、出射する光のピーク波長が300nm以上1000nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の光加熱装置。
【請求項8】
前記LED基板に搭載される前記LED素子群は、出射する光のピーク波長が800nm以上900nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項7に記載の光加熱装置。
【請求項9】
支持部材に載置された被処理基板の第一主面にLED素子群が搭載されたLED基板を含む複数の光源ユニットから出射される光を照射することで加熱する加熱処理方法であって、
前記支持部材に前記被処理基板が支持された状態の下で、前記第一主面と前記被処理基板の第二主面とがなす角度をθ、前記LED基板上に搭載された、前記第二主面の法線方向に関して前記第二主面の最も近くに位置する第一LED素子と前記被処理基板との離間距離をD1、前記LED基板上に搭載された、前記法線方向に関して前記第二主面の最も遠くに位置する第二LED素子と前記第一LED素子との離間距離をD2としたときに、下記(1)式を満たすように配置された光源ユニットから出射される光を含む加熱光を、前記被処理基板に照射することを特徴とする加熱処理方法。

2tan2θ/cosθ≧D2/D1 (1)
【請求項10】
前記離間距離D1、及び前記離間距離D2に基づいて、前記角度θの値を決定し、決定した前記角度θの値に基づいて、前記LED基板の位置を変化させることを特徴とする請求項9に記載の加熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光加熱装置及び加熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、半導体ウェハ等の被処理基板に対して、成膜処理、酸化拡散処理、改質処理、アニール処理といった様々な熱処理が行われる。これらの処理は、非接触での処理が可能な光照射による加熱処理方法が多く採用されている。
【0003】
被処理基板を加熱処理するための装置としては、ハロゲンランプ等のランプや、LED等の固体光源を搭載し、被処理基板に対して加熱用の光(以下、「加熱光」という場合がある。)を照射する装置が知られている。例えば、下記特許文献1には、複数のLEDを搭載した加熱装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-009927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、半導体製造プロセスの微細化といった技術の発展に伴い、より均質な加熱処理ができる加熱装置が求められている。そこで、本発明者は、被処理基板をより均質な温度分布で加熱処理できる加熱装置について鋭意検討していたところ、以下のような課題が存在することを見い出した。
【0006】
上記特許文献1に記載の加熱装置のように、加熱光を出射する光源としてLED等の固体光源が複数搭載された加熱装置は、従来、支持部材に載置された被処理基板の主面に対して平行な平面上に複数の固体光源が配置されている。このような構成が一般的に採用される理由としては、被処理基板の主面と、それぞれの固体光源との離間距離を揃えることで、被処理基板の主面上の照度分布を予測・検討しやすいこと、また、被処理基板の主面上の照度分布を制御しやすいこと等が考えられる。
【0007】
しかしながら、複数の固体光源は、固体光源が搭載される基板の主面上にはんだ付け等によって固定してしまうと、その後に位置を変更することが難しい。したがって、支持部材に載置された被処理基板の主面に平行な平面上に複数の固体光源を搭載することを前提とした従来の加熱装置では、被処理基板の主面上における照度分布を微調整しようとすると、固体光源が固定された基板を平行移動させることが一般的であった。
【0008】
ところが、固体光源が固定された基板の平行移動では、複数の固体光源の配置は変化しない。このため、当該基板の移動先において、固体光源の配置が適さない場合があった。また、被処理基板の主面と直交する方向に平行移動させる場合、固体光源と被処理基板とを近づけすぎると、固体光源から出射される光が十分に拡がる前に被処理基板に照射されてしまい、かえって照度ムラが発生する。
【0009】
また、固体光源と被処理基板とを遠ざけすぎると、照度不足により十分な照度で光を照射できないといった課題が発生してしまう。つまり、従来の加熱装置は、各被処理基板に応じて、被処理基板に照射される光の照度分布を微調整することが難しかった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、被処理基板の主面上における照度分布を、より精細に調整可能な光加熱装置及び加熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光加熱装置は、
被処理基板に光を照射することで加熱する光加熱装置であって、
前記被処理基板を支持する支持部材と、
第一主面にLED素子群が搭載されたLED基板を含む複数の光源ユニットとを備え、
前記支持部材に前記被処理基板が支持された状態の下で、前記第一主面と前記被処理基板の第二主面とがなす角度をθ、前記LED基板上に搭載された、前記第二主面の法線方向に関して前記第二主面から最も近くに位置する第一LED素子と前記被処理基板との離間距離をD1、前記LED基板上に搭載された、前記法線方向に関して前記第二主面から最も遠くに位置する第二LED素子と前記第一LED素子との離間距離をD2としたときに、前記光源ユニットのうちの少なくとも一つが、下記(1)式を満たすように配置されていることを特徴とする。

2tan2θ/cosθ≧D2/D1 (1)
【0012】
本明細書において、光源ユニットのLED素子と被処理基板との離間距離D1は、LED素子の光出射面における中心と、被処理基板との離間距離で定義される。また、LED素子の光出射面における中心とは、LED基板の第一主面の法線方向から第一主面を見たときに、LED素子が占有する領域の外縁の内接円の中心としてよい。
【0013】
LED基板の第一主面と、支持部材に支持された被処理基板の第二主面とがなす角度θは、LED基板の位置を調整することで連続的に調整することができる。また、LED基板の第一主面を、被処理基板の第二主面に対して傾斜させる場合において、LED基板を回転させる際の回転軸や、LED基板を傾かせる方向は任意である。
【0014】
なお、本明細書において、第一LED素子と第二LED素子との離間距離は、LED基板の第一主面に直交する方向から見たときの、各LED素子の中心間距離で定義される。一つの光源ユニットにおいて、第一LED素子に該当するLED素子と、第二LED素子に該当するLED素子とが、それぞれ複数存在する場合、離間距離D2は、第一LED素子と第二LED素子とのそれぞれの組み合わせにおける離間距離のうちの最短の距離が対応する。
【0015】
上記構成とすることで、光加熱装置は、LED基板の第一主面上におけるLED素子の並べ方による調整に加え、LED基板の傾斜角度θ、及びLED基板を傾斜方向の調整によって、被処理基板の主面上における照度分布を連続的に調整することができる。つまり、上記構成の光加熱装置は、従来構成よりも精細に被処理基板の第二主面における照度分布を調整することができる。
【0016】
また、上記構成とすることで、光源ユニットに搭載されているLED素子のうち、少なくとも第一LED素子よりも第二LED素子の近くに配置されたLED素子から出射された光の主光線は、被処理基板の第二主面で反射されると、光源ユニットのLED基板上のLED素子が配置されている領域の外、又は光源ユニットの外側に向かって進行する。
【0017】
したがって、光源ユニットのLED素子から出射された後、被処理基板の第二主面で反射されて、再びLED素子、又はその近傍に戻ってくる光の量が低減される。このようにして、光源ユニットに搭載されているLED素子は、被処理基板の第二主面で反射された光によって加熱されることが抑制される。なお、「主光線」とは、光源から出射された光のうちの、最も高い強度を示す光線をいう。
【0018】
なお、上記(1)式の導出と上記構成の効果との関係性については、「発明を実施するための形態」の項目において、図面等を参照しながら詳述される。
【0019】
上記光加熱装置において、
前記複数の光源ユニットは、
前記支持部材に前記被処理基板が支持された状態の下で、前記光源ユニットから前記被処理基板に向かう前記第一主面の法線が、前記被処理基板の中央部側に向くように前記LED基板が傾けられた第一光源ユニットと、
前記光源ユニットから前記被処理基板に向かう前記第一主面の法線が、前記被処理基板の周端部側に向くように前記LED基板が傾けられた第二光源ユニットとを含んでいても構わない。
【0020】
上記光加熱装置は、
前記LED基板の位置を変化させて前記角度θを調整する角度調整機構を備えていても構わない。
【0021】
さらに、上記光加熱装置は、
前記離間距離D1、及び前記離間距離D2に基づいて、前記角度θの値を決定し、決定した前記角度θの値に基づいて、前記角度調整機構を駆動する制御部を備えていても構わない。
【0022】
上記構成とすることで、被処理基板の形状や、被処理基板の加熱処理における離間距離D1の設定に応じて、角度θを適宜調整することができる。
【0023】
また、上記構成とすることで、上記光加熱装置は、例えば、予め決まっている離間距離D1や離間距離D2の値に基づいて、制御部が上記(1)式の条件を満たす角度θを決定し、LED基板の位置を自動的に最適位置に調整するような構成とすることができる。
【0024】
角度θを決定する方法としては、例えば、予め離間距離D1と離間距離D2との組み合わせに対して、最適な角度θの値を算出して作成したテーブルを格納しておき、離間距離D1と離間距離D2が入力されると、テーブル上から該当する角度θの値を選択するという方法が挙げられる。
【0025】
上記光加熱装置は、
前記第一主面と前記第二主面がなす角度θを計測するための角度センサを備えていても構わない。
【0026】
上記構成とすることで、光加熱装置は、光源ユニットの配置位置が上記(1)式の条件を満たしているかどうかを確認しながら光源ユニットの位置等を調整することができる。
【0027】
また、上記構成とすることで、光加熱装置1が大きな衝撃を受けてしまい、光源ユニットの位置がずれてしまったような場合において、上記(1)式の条件を満たさなくなってしまった状態を検知することができる。
【0028】
上記光加熱装置において、
前記支持部材は、前記被処理基板を、前記第二主面に直交し、前記第二主面の中心を通過する軸を回転軸として回転させる回転機構を備えていても構わない。
【0029】
上記構成とすることで、光加熱装置は、支持部材に載置された被処理基板を回転させながら、光源ユニットから出射される加熱光を被処理基板に照射することができる。被処理基板を回転させながら加熱光を照射することで、被処理基板の第二主面に照射される光の量が、当該第二主面における周方向において均質化される。したがって、被処理基板の加熱ムラが抑制される。
【0030】
上記光加熱装置において、
前記LED基板に搭載される前記複数のLED素子は、出射する光のピーク波長が300nm以上1000nm以下の範囲内であっても構わない。
【0031】
特に、シリコン(Si)からなる半導体ウェハ(以下、「シリコンウェハ」という。)は、紫外光から可視光の波長帯域の光に対して吸収率が高いが、波長が1100nmよりも長くなると急激に吸収率が低くなるという特徴がある。「発明を実施するための形態」の説明において参照される図4に示すように、波長が1100nm以上の光がシリコンウェハに照射されると、吸収率が約50%以下となっている。
【0032】
上述したように、ほとんどの物体は、照射される光の全てを吸収せず、当該光の一部を吸収すると共に、他の一部を透過、反射する性質を有する。つまり、図4に示すグラフによれば、シリコンウェハは、波長が1100nmの光が照射されると、照射された光のうちの50%以上の光を吸収せず透過、又は反射してしまう。
【0033】
被処理基板の光に対する反射率が高いと、被処理基板の第二主面によって反射されてしまう光の量が多くなってしまう。このため、LED素子から出射される光のピーク波長は、シリコンウェハの吸収率が50%以上である、1000nm以下であることが好ましい。
【0034】
また、シリコンウェハは、波長300nm未満の光に対する吸収率が、約10%程度であり、波長1000nm程度の光に対する吸収率と比較すると大幅に低下する。このため、少なくとも25%以上の吸率を確保するためには、LED素子から出射される光のピーク波長は、300nm以上であることが好ましい。
【0035】
そこで、光源ユニットに搭載するLED素子について、上記波長範囲にピーク波長を有する素子を採用することで、光源ユニットから出射されて被処理基板に照射された光のうちの、被処理基板の第二主面で反射される光量の割合が減少する。したがって、光源ユニットに搭載されたLED素子に対し、LED素子から出射されて被処理基板で反射された加熱光が照射されてしまうことを抑制することができる。
【0036】
さらに、上記光加熱装置において、
前記LED基板に搭載される前記複数のLED素子は、出射する光のピーク波長が800nm以上900nm以下の範囲内であっても構わない。
【0037】
図4に示すように、シリコン(Si)は、波長が800nm以上900nm以下の範囲の光に対して、波長の変動に対する吸収率の変化が小さい。このため、当該波長範囲とすることで、シリコンウェハの照射領域ごとに照射される光の波長が多少ずれていたとしても、加熱ムラが生じにくくなる。
【0038】
したがって、上記構成とすることで、シリコンウェハの加熱処理において、LED素子が出射する光のピーク波長のバラつきの影響が小さい光加熱装置を構成することができる。
【0039】
本発明の加熱処理方法は、
支持部材に載置された被処理基板の第一主面にLED素子群が搭載されたLED基板を含む複数の光源ユニットから出射される光を照射することで加熱する加熱処理方法であって、
前記支持部材に前記被処理基板が支持された状態の下で、前記第一主面と前記被処理基板の第二主面とがなす角度をθ、前記LED基板上に搭載された、前記第二主面の法線方向に関して前記第二主面の最も近くに位置する第一LED素子と前記被処理基板との離間距離をD1、前記LED基板上に搭載された、前記法線方向に関して前記第二主面の最も遠くに位置する第二LED素子と前記第一LED素子との離間距離をD2としたときに、下記(1)式を満たすように配置された光源ユニットから出射される光を含む加熱光を、前記被処理基板に照射することを特徴とする。

2tan2θ/cosθ≧D2/D1 (1)
【0040】
上記加熱処理方法は、
前記離間距離D1、及び前記離間距離D2に基づいて、前記角度θの値を決定し、決定した前記角度θの値に基づいて、前記LED基板の位置を変化させることを含んでいても構わない。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、被処理基板の主面上における照度分布を、より精細に調整可能な光加熱装置及び加熱処理方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】光加熱装置の一実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。
図2図1のフレームを-Z側から見たときの図面である。
図3図1のチャンバを+Z側から見たときの図面である。
図4】シリコン(Si)の温度が543Kのときの光の波長と吸収率の関係を示すグラフである。
図5】光源ユニットの構成、及び光源ユニットと被処理基板との配置関係について説明するための模式的な図面である。
図6】光加熱装置の一実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。
図7】光加熱装置の一実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。
図8】光加熱装置の一実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。
図9】光加熱装置の別実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の光加熱装置、加熱処理方法について、図面を参照して説明する。なお、光加熱装置に関する以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0044】
図1は、光加熱装置1の第一実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。図2は、図1のフレーム11を-Z側から見たときの図面であり、図3は、図1のチャンバ2を+Z側から見たときの図面である。図1に示すように、光加熱装置1は、チャンバ2と、光源ユニット10と、フレーム11とを備える。なお、図3においては、チャンバ2内の構造が視認できるように、後述される透光窓2aにはハッチングが施されていない。
【0045】
以下の説明においては、図1及び図3に示すように、チャンバ2内に収容された加熱処理対象である被処理基板W1の第二主面W1aと平行な平面をXY平面とし、XY平面と直交する方向をZ方向とする。
【0046】
また、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0047】
また、第一実施形態の説明においては、被処理基板W1がシリコンウェハであることを前提として説明するが、本発明の光加熱装置1は、シリコンウェハ以外の被処理基板W1(例えば、ガラス基板等)の加熱処理に利用することも想定される。
【0048】
チャンバ2は、図1に示すように、内側に被処理基板W1を載置するための支持部材3と、光源ユニット10から出射された光を内側へと導くための透光窓2aを備える。
【0049】
支持部材3は、図1及び図3に示すように、台座3aに複数の突起3bが設けられた構成であり、被処理基板W1は、複数の突起3bの先端に載置されて支持される。
【0050】
本実施形態の支持部材3は、図1に示すように、複数のローラ3cによる回転機構が設けられており、回転自在に構成されている。加熱処理が行われる際には、ローラ3cが回転することで、図3に示すように、支持部材3の中心をZ方向に通過する軸z1を回転軸として、被処理基板W1をXY平面上で回転させることができる。なお、支持部材3は、光源ユニット10が、被処理基板W1の第二主面W1aにおける周方向に均質に光を照射するように構成されている場合、被処理基板W1を回転させる構成でなくてもよい。また、支持部材3は、例えば、被処理基板W1の周縁部を引掛けて被処理基板W1を支持するような構成であっても構わない。
【0051】
光源ユニット10は、図1に示すように、加熱光を出射する複数のLED素子10aと、複数のLED素子10aが載置されるLED基板10bとを備える。図1は、LED素子10aから出射される光のうちの主光線L1のみが模式的に図示されている。
【0052】
本実施形態の光源ユニット10が備えるLED素子10aは、ピーク波長が850nmの赤外光を出射する。それぞれのLED素子10aは、LED基板10bの第一主面10p上に配置されている。図1に示す例では、光源ユニット10は、第一主面10pがXY平面に平行な領域と、第一主面10pがXY平面に傾斜する領域とを含む。複数のLED素子10aは、第一主面10pがXY平面と平行な領域において、XY平面に平行な方向に配列されている。なお、LED素子10aがLED基板10bの各辺に平行に配列されていてもよく、この場合は、第一主面10pがXY平面と平行な領域において、複数のLED素子10aはX方向及びY方向に配列される。
【0053】
なお、本実施形態では、図2に示すように、LED基板10bの第一主面10pが四角形状を呈するように構成されているが、LED基板10bの形状は任意である。また、LED基板10b上のLED素子10aの配置は、想定される被処理基板W1の加熱処理時の温度分布に応じて適宜調整されても構わない。
【0054】
図4は、シリコン(Si)の温度が543Kのときの光の波長と吸収率の関係を示すグラフである。543Kという値は、シリコンウェハを加熱する際の目標温度周辺、又は昇温途中の温度である場合が多いことから選択された値である。LED素子10aが出射する光のピーク波長は任意に設定しても構わないが、図4に示すように、吸収率が少なくとも25%以上、すなわち、反射率が少なくとも75%以下であるという点から、ピーク波長が300nm以上1000nm以下であることが好ましく、350nm以上950nm以下であることがより好ましい。
【0055】
さらに、図4に示すように、シリコン(Si)は、波長が800nm以上900nm以下の範囲の光に対しては、波長によらず吸収率がほぼ一定の値を示す。このため、加熱ムラを抑制する観点から、光源ユニット10に搭載されるLED素子10aが出射する光は、ピーク波長が800nm以上900nm以下であることがさらに好ましく、820nm以上880nm以下であることが特に好ましい。
【0056】
本実施形態におけるフレーム11は、図1に示すように、LED素子10aから出射される光の出射方向を変化させるように、光源ユニット10の傾きの角度θを調整するため、角度調整機構としての調整ネジ11aを備えている。また、フレーム11は、光源ユニット10の傾きを調整した際に、位置がずれることを防止するための、支持壁11bが設けられている。
【0057】
本実施形態におけるフレーム11は、図1に示すように、調整ネジ11aによって中央部側に配置された光源ユニット10のLED基板10bの第一主面10pが、被処理基板W1の第二主面W1a(XY平面)に対して平行となるように調整されている。また、フレーム11は、調整ネジ11aによって周端部側に配置された光源ユニット10のLED基板10bの第一主面10pが,被処理基板W1の第二主面W1a(XY平面)に対して角度θだけ傾くように調整されている。
【0058】
以下、角度θの条件について説明する。
【0059】
図5は、光源ユニット10の構成、及び光源ユニット10と被処理基板W1との配置関係について説明するための模式的な図面である。図5に示す構成では、説明の都合上、第一主面10pと第二主面W1aとの角度θ、光源ユニット10に搭載されているLED素子10aの数、光源ユニット10と被処理基板W1のサイズ比が、図1とは異ならせて図示されている。
【0060】
図5において、第一LED素子10a1は、LED基板10b上に載置された複数のLED素子10aのうち、Z方向に関して、第二主面W1aに対して最も近くに位置するLED素子である。また、第二LED素子10a2は、LED基板10bに載置された複数のLED素子10aのうち、Z方向に関して、第二主面W1aに対して最も遠くに位置するLED素子である。光源ユニット10は、被処理基板W1との離間距離をD1とし、第二LED素子10a2と第一LED素子10a1との離間距離をD2としたときに、傾斜角度θが、上記(1)式を満たすように配置される。念の為に、上記(1)式を再掲する。

2tan2θ/cosθ≧D2/D1 (1)
【0061】
本実施形態における光源ユニット10は、具体的には、θが20.6°、D2が16mm、D1が40mmとなるように構成されている。
【0062】
以下、上記(1)式の導出過程が説明される。なお、以下説明では、主光線L1が被処理基板W1の第二主面W1aにおいて吸収されることなく、正反射されると仮定して説明される。
【0063】
まず、図5に示すように、第一LED素子10a1から出射された光の主光線L1が、被処理基板W1の第二主面W1aで反射された後、LED素子10aの光出射面10cを拡張した面A1と交差する点をP1とする。そして、第一LED素子10a1の光出射面10cの中心と点P1との、LED基板10bの主面に平行な方向に関する離間距離をRとし、Z方向における光出射面10cの中心と点P1の離間距離をEとする。さらに、Z方向における第一LED素子10a1と第二LED素子10a2との離間距離をBとする。
【0064】
第一LED素子10a1から出射された光の主光線L1は、図5に示すように、被処理基板W1側(-Z側)に向かって進行し、その後第二主面W1aに到達する。ここで、第一LED素子10a1から出射されて被処理基板W1の第二主面W1aに到達するまでに、主光線L1が進行した距離をSとする。
【0065】
主光線L1は、第二主面W1aに対して入射角θで入射し、反射角θで反射される。その後、主光線L1は、光源ユニット10側(+Z側)に向かって進行し、やがて点P1に到達する。
【0066】
なお、主光線L1の進行距離Sに関していえば、第一LED素子10a1から出射される主光線L1の進行距離が最も短い。そして、第二LED素子10a2に近いLED素子10aほど、LED素子10aから出射される主光線L1の進行距離が長くなる。つまり、X方向に関して見ると、第二LED素子10a2に近いLED素子10aほど、LED素子10aから出射し、第二主面W1aで反射して面A1に到達するまでに+X方向に進行した距離が長くなる。
【0067】
以上の関係性から、主光線L1の到達点である点P1が、第一LED素子10a1と第二LED素子10a2の中間点C1よりも、第二LED素子10a2側となれば、上述したように、第二LED素子10a2により近いLED素子10aから出射される光の主光線L1は、少なくともLED基板10b上のLED素子10aが配置されていない領域に到達することになる。すなわち、LED素子10aから放射され、第二主面W1aからLED基板10b側に反射される光の半分以上をLED基板10bの外側に反射させることができ、結果としてLED素子10aは、第二主面W1aで反射された光によって加熱されることが抑制される。
【0068】
点P1が、第一LED素子10a1と第二LED素子10a2の中間点C1よりも、第二LED素子10a2側となる条件は、下記(2)式となる。

2E≧B (2)
【0069】
図5に示すように、距離Eと、距離R及び角度θとの関係は、E=R×sinθで表される。同様に、距離Bと、離間距離D2及び角度θとの関係は、B=D2×sinθで表される。上記(2)式は、これらの関係式が代入されて整理されると、下記(3)式となる。

2R≧D2 (3)
【0070】
さらに、図5に示すように、距離Rと、進行距離S及び角度θとの関係は、R=S×tan2θで表される。上記(3)式は、当該関係式が代入されると、下記(4)式となる。

2(S×tan2θ)≧D2 (4)
【0071】
最後に、図5に示すように、進行距離Sと、離間距離D1及び角度θとの関係が、S=D1/cosθと表されることから、上記(4)式は、当該関係式が代入されて整理されると、上記(1)式となる。
【0072】
上記構成とすることで、光源ユニット10に搭載されているLED素子10aのうち、少なくとも第一LED素子10a1よりも第二LED素子10a2の近くに配置されたLED素子10aから出射された光の主光線L1は、被処理基板W1の第二主面W1aで反射されると、光源ユニット10のLED基板10b上のLED素子10aが配置されている領域の外、又は光源ユニット10の外側に向かって進行することになる。
【0073】
したがって、光源ユニット10のLED素子10aから出射された後、被処理基板W1の第二主面W1aで反射されて、再びLED素子10aに戻ってくる光の量が低減される。このため、光源ユニット10に搭載されているLED素子10aは、被処理基板W1の第二主面W1aで反射された光によって加熱されることが抑制される。
【0074】
光加熱装置1の角度θは、水準器を用いて被処理基板W1の第二主面W1aの傾きとLED基板10bの第一主面10pの傾きを測定し、両者を比較することによって算出される。また、光加熱装置1の角度θは、第一LED素子10a1と被処理基板W1の第二主面W1aまでの距離と、第二LED素子10a2と被処理基板W1の第二主面W1aまでの距離と、第一LED素子10a1と第二LED素子10a2までの距離を測定して算出することもできる。
【0075】
なお、本実施形態のフレーム11は、図1に示すように、調整ネジ11aと支持壁11bとを備えているが、調整ネジ11aと支持壁11bとを備えることなく、光源ユニット10を所定の角度θで固定するように構成されていても構わない。また、角度調整機構としては、例えば、ピエゾアクチュエータ、又はエンコーダ付きのマイクロメータヘッドといった機構を採用しても構わない。
【0076】
図6図8は、図1に示す光加熱装置1とは別の実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。本実施形態におけるフレーム11は、図6図8に示すように、調整ネジ11aと支持壁11bとを備えることなく、光源ユニット10を所定の角度θで固定するように構成されていても構わない。
【0077】
図1及び図6を参照して説明した各実施形態においては、第一主面10pの法線n1が、支持部材3に載置された状態の被処理基板W1の中央部側に向かうように光源ユニット10が傾けられているが、図7に示すように、法線n1が被処理基板W1の周端部側に向かうように光源ユニット10が傾けられていても構わない。
【0078】
また、図8に示すように、光加熱装置1は、法線n1が被処理基板W1の中央部側に向かうように傾けられた光源ユニット10(第一光源ユニット)と、法線n2が被処理基板W1の周端部側に向かうように傾けられた光源ユニット10(第二光源ユニット)とが混在していても構わない。図8に示す光加熱装置1の構成によれば、放熱されやすい被処理基板W1の周端部付近に向けて、集中的に光を照射することができ、被処理基板W1全体における加熱ムラを抑制することができる。
【0079】
なお、図8に示す構成において、フレーム11の中央部側に配置された光源ユニット10は、周端部側に配置された光源ユニット10よりも、LED素子10aの数が少なくなるように調整されている。これは、被処理基板W1の中央部側は、周端部側に比べて放熱量が少なく、加熱処理に要する光強度が比較的小さいことによる。
【0080】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0081】
〈1〉 図9は、光加熱装置1の別実施形態をY方向に見たときの模式的な断面図である。図9に示すように、光加熱装置1の別実施形態は、制御部60と、制御部60より出力される駆動信号d2に基づいてLED基板10bの位置を変化させる角度調整機構である駆動機構11cとを備える。そして、本実施形態における制御部60は、入力部60aと、記憶部60bと、判定部60cと、出力部60dとを備える。
【0082】
入力部60aは、離間距離D1と離間距離D2の値の情報を含むデータd1の入力を受け付ける。記憶部60bは、離間距離D1と離間距離D2との組み合わせに対応する、上記(1)式を満たす角度θの値のテーブルが格納されている。判定部60cは、入力部60aに入力されたそれぞれの離間距離(D1,D2)の値と、記憶部60bに格納されているテーブルに基づいて、角度θの値を決定する。出力部60dは、LED基板10bの第一主面10pと被処理基板W1の第二主面W1aとのなす角度θが、判定部60cが決定した角度θの値になるように、駆動機構11cに対して駆動信号d2を出力する。
【0083】
上記構成とすることで、光加熱装置1は、予め決まっている離間距離D1や離間距離D2の値に基づいて、制御部60が上記(1)式の条件を満たす角度θを決定し、LED基板10bの位置を自動的に最適な位置となるように調整する。
【0084】
なお、上述した各実施形態においては、LED基板10bの第一主面10pが、被処理基板W1の第二主面W1aと平行となるように配置された光源ユニット10を含んでいるが、図9に示すように、全ての光源ユニット10において、LED基板10bの第一主面10pが、被処理基板W1の第二主面W1aに対して傾いていても構わない。さらに、光加熱装置1は、被処理基板W1の周端部側をより効率的に加熱するために、各LED素子10aに対応したコリメートレンズや、集光レンズなどの光学系等が追加的に設けられていても構わない。
【0085】
〈2〉 光加熱装置1は、第一主面10pと第二主面W1aがなす角度θを計測するための角度センサを備えていても構わない。このような角度センサを備えることで、光加熱装置1は、光源ユニット10の配置位置が上記(1)式の条件を満たしているかどうかを確認しながら光源ユニット10の配置位置を調整することができる。
【0086】
また、本実施形態の光加熱装置1は、大きな衝撃を受けて光源ユニット10の位置がずれてしまった場合等に、上記(1)式の条件を満たさなくなってしまった状態を検知し、アラートを発するように構成することができる。
【0087】
なお、本実施形態の光加熱装置1の角度センサとしては、例えば、ロータリーポテンショメータ、又はロータリーエンコーダを採用し得る。
【0088】
〈3〉 上述した光加熱装置1が備える構成は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。
【符号の説明】
【0089】
1 : 光加熱装置
2 : チャンバ
2a : 透光窓
3 : 支持部材
3a : 台座
3b : 突起
3c : ローラ
10 : 光源ユニット
10a : LED素子
10a1 : 第一LED素子
10a2 : 第二LED素子
10b : LED基板
10c : 光出射面
10p : 第一主面
11 : フレーム
11a : 調整ネジ
11b : 支持壁
11c : 駆動機構
60 : 制御部
60a : 入力部
60b : 記憶部
60c : 判定部
60d : 出力部
L1 : 主光線
W1 : 被処理基板
W1a : 第二主面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9