(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144482
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
B43K 23/08 20060101AFI20231003BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20231003BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20231003BHJP
B05C 17/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B43K23/08
A45D34/00 510A
A45D34/04 525Z
B05C17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051472
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青沼 論
(72)【発明者】
【氏名】安池 清徳
(72)【発明者】
【氏名】的場 春佳
【テーマコード(参考)】
4F042
【Fターム(参考)】
4F042FA22
4F042FA24
4F042FA30
4F042FA42
4F042FA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特許文献に開示されている塗布具では、塗布具のデザイン性や塗布具の把持の方向性的に制限されてしまうという問題があった。本発明は、キャップ離脱時にも塗布具を載置面上に静置させることができる塗布具用のキャップを提供することを目的とする。
【解決手段】キャップの外壁面に、長手方向両端側から中腹に向かって外径が小さくなる傾斜面が設けられたキャップを有する塗布具を要旨とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも塗布部を備えた塗布具本体に着脱可能なキャップの外壁面に、長手方向両端側から中腹に向かって外径が小さくなる傾斜面が設けられた塗布具。
【請求項2】
前記傾斜面に対して周方向反対側に、安全載置手段が設けられた請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記塗布具本体が円柱状であり、前記傾斜面が少なくともキャップ長手方向に沿った曲面であり、当該曲面の曲率半径が、前記塗布具本体外壁面の曲率半径の40.0倍以上60.0倍以下である、請求項1又は請求項2に記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペン、シャープペン、筆ペン、マーキングペンなどの筆記具や、アイライナー、アイブロウなどの化粧用具などの塗布具であって、特にキャップ式の塗布具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な塗布具が開示されており、特に塗布部を備えた塗布具本体を机上などの載置面に載置しようとした際に、塗布具本体が所望の位置で静置せず転がってしまうのを防止する手段を備えた塗布具が開示されている。例えば特許文献1には、円筒状の塗布具本体外壁面に転がり抑制部としての突起を備えた塗布具が開示されている。また、特許文献2には、キャップ外壁面に転がり防止用突起を備えた塗布具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-202946号公報
【特許文献2】特開2015-164788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている塗布具のように軸筒に転がり抑制部としての突起を設けたり、特許文献2に開示されている塗布具のようにキャップのみに転がり防止用突起を設けたりすると、塗布具のデザイン性や塗布具の把持の方向性的に制限されてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、キャップ離脱時にも塗布具を載置面上に静置させることができる塗布具用のキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも塗布部を備えた塗布具本体に着脱可能なキャップの外壁面に、長手方向両端側から中腹に向かって外径が小さくなる傾斜面が設けられた塗布具を第1の要旨とする。
また、前記傾斜面に対して周方向反対側に、安全載置手段が設けられた塗布具を第2の要旨とする。
さらに、前記塗布具本体が円柱状であり、前記傾斜面が少なくともキャップ長手方向に沿った曲面であり、当該曲面の曲率半径が、前記塗布具本体外壁面の曲率半径の40.0倍以上60.0倍以下である塗布具を第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗布具は、キャップの長手方向両端側から中腹に向かい外径が小さくなっているため、キャップを載置面に置き、その上から塗布具本体の一部を重ねるように置くと、塗布具本体はキャップ外壁の傾斜面に沿って転がり、キャップの外径が最も小さくなる位置で停止するため、塗布具を載置面上で静置させることができる。引いては、キャップ自体を塗布具本体の載置台をすることができるため、塗布具使用時にその都度キャップを装着せずとも塗布具本体を一時的に載置でき、筆記などの塗布作業が簡便となる。
また第2の要旨にあっては、安全載置手段により、キャップを載置面に対する転がりや、キャップが塗布具本体から受ける載置面に対して水平方向の力による滑りなどを防いでキャップを静置できるため、引いては塗布具を載置面上でより容易に静置させることができる。
さらに第3の要旨にあっては、キャップ長手方向に沿った曲面の曲率半径が、塗布具本体外壁面の曲率半径の40.0倍以上60.0倍以下と、円柱状の塗布具本体外壁面よりも適度になだらかな曲面であるため、塗布具本体の、キャップの曲面に沿った一時的な転がりが穏やかになり、塗布具を載置面上でより容易に静置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)キャップ1の外観斜視図、(b)(a)のキャップ1を90°軸回転させた図
【
図5】(a)キャップ3の外観斜視図、(b)b)(a)のキャップ3を90°軸回転させた図
【
図7】(a)塗布具5の外観側面視図、(b)塗布具5のA-A´線断面矢視図
【
図8】(a)キャップ12の外観側面図、(b)
図8(a)のB-B´線断面矢視図、(c)
図8(a)のC-C´線断面矢視図
【
図9】(a)キャップ12の外観側面斜視図、(b)
図8(a)のD-D´線断面矢視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の塗布具は、少なくとも塗布部を備えた塗布具本体を有している。塗布部とは、塗布具本体内部又は外部より供給された塗布液を被塗布面へと吐出、塗布するための部材である。塗布部は塗布具の種類に応じて任意に決定され、例えばボールペン用のチップ部材、シャープペンシル用の先金部材、マーキングペン用のフェルト芯、筆ペンやアイライナーなどの毛材を束ねた筆穂などを適宜選択することができる。
【0010】
塗布具本体は、使用者が把持することができ、先述の塗布部、塗布液、尾栓、グリップなどの他の部材を配置することができる部材である。塗布具本体の外観形状は種々選択可能であり、例えば四角柱状や円柱状などを適宜選択することができる。いずれの形状であっても、塗布具本体の長手方向に対して直交する方向の断面形状(横断面形状)が、塗布具本体の長手方向の一端から他端にかけて常に一定の形状であるもののみならず、設計の都合に合わせて横断面形状自体や軸心位置が変化してもよい。
【0011】
塗布具本体の材質は、成形性や強度などを考慮して、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、またはこれらの樹脂を含む複合材、真鍮、ステンレスなどの金属材、木材、石材などを適宜選択することができる。また、塗布具本体の内部に塗布液を貯蔵する場合の塗布液に対する反応性や、保存環境に対する耐候性などを考慮して、軸筒の内壁面及び/又は外壁面に、各種のコーティングや印刷などを施すこともできる。
【0012】
キャップの着脱可能な配置とは、キャップの塗布具本体への装着状態において重力による自然落下や不意の外力による落下などが生じず、使用者が意図的に離脱させようとして加える外力によって離脱可能な程度の関係で、塗布具本体に配置されることをいう。キャップを塗布具本体に着脱可能に配置する方法は種々選択可能であり、例えば塗布具本体端部近傍の外周面に設けた周状突起を、キャップ開口端部近傍の内周面に設けた突起が乗り越えることで嵌合する方法や、キャップの内径及び/又は塗布具本体の外径を適宜設定し互いに圧入関係とする方法などを適宜選択することができる。
【0013】
図1及び
図2を参照し、本発明の一実施形態であるキャップ1及び塗布具本体2からなる塗布具について説明する。
図1(a)はキャップ1の外観斜視図、
図1(b)は(a)のキャップ1を90°軸回転させた図である。外観形状が略四角柱状のキャップ1の外壁面には、長手方向両端側から中腹に向かって外径が小さくなる傾斜面1aが設けられている。傾斜面1aはキャップ1の長手方向両端側から中腹に向かって外径が一定の割合で小さくなる平面である。これにより、
図2の塗布具本体載置例図の通り、キャップ1を載置面に置き、その上から塗布具本体2の一部を重ねるように置くと、円筒状の塗布具本体2は当該傾斜面1aに沿って転がり、キャップ1の外径が最も小さくなる位置で停止するため、塗布具を載置面上で静置させることができる。キャップ1の外壁面における長手方向両端側とは、キャップ1の長手方向における両端部のみを示すものではなく、当該両端部から他端側に多少ずれた位置から傾斜面1aを設け始めてもよい。また、キャップ1の外壁面における長手方向両端側から中腹とは、傾斜面1aの両始点を結ぶ線分を二等分した際の中点に当たる厳密な位置でなくともよく、当該位置の近傍程度の範囲を含むものである。また、傾斜面1aの、キャップ1の長手方向に直交する方向の幅も、キャップ1の長手方向の一端側から他端側にかけて一定であるもののみならず、傾斜面1aの両始点から中腹に向かって徐々に幅を狭くしたり、逆に中腹から両始点に向かって徐々に幅を狭くしたりしてもよい。さらに、傾斜面1aはキャップ1の外壁面に複数設けてもよい。
【0014】
傾斜面1aは、様々な形態を選択することができる。
図3に示すキャップ1の変形例1のように、傾斜面1aを、キャップ1の長手方向両端から中腹に向かって、載置面に対して水平方向の平面と、垂直方向の平面が交互に連続する階段状に設けてもよい。塗布具本体2の外径に対して階段を構成する各平面の面積が十分に小さければよく、キャップ1の外径が最も小さくなる位置から塗布具本体2を傾斜面1aに置いた位置に対して反対側に転がりにくくなるため好ましい。
【0015】
また、
図4に示すキャップ1の変形例2のように、傾斜面1aを、キャップ1の長手方向両端から中腹に向かって、キャップ1の径方向内側に凹んだ曲面としてもよい。傾斜面1aを当該曲面とすることで、塗布具本体2が傾斜面1aを揺れ動きながらも徐々に減速して停止するため、停止時の衝撃で例えば塗布先などから塗布液が漏れたり、塗布具本体2表面が傷ついたりすることがなく好ましい。
【0016】
図5及び
図6を参照し、本発明の一実施形態であるキャップ3及び塗布具本体4からなる塗布具について説明する。
図5(a)はキャップ3の外観斜視図、
図5(b)は(a)のキャップ1を90°軸回転させた図であり、
図1(b)とは反対側に軸回転させている。略円筒状のキャップ3の外壁面には、長手方向両端側から中腹に向かって外径が小さくなる傾斜面3aと、当該傾斜面3aに対して周方向反対側に、安全載置手段としての平面3bが設けられている。安全載置手段とは、キャップ3を載置面に置く際に載置面と接触する部分であって、キャップ3の載置面に対する転がりや滑りを防止可能な手段をいう。本実施形態のような平面の他に、1か所又は複数個所に突起を設けるなどの手段も選択することができる。傾斜面3aに対して周方向反対側とは、キャップ3の軸方向視で傾斜面3aと軸心と平面3bとが同一直線上にあるもののみならず、キャップ3を、平面3bを下にして載置面に置いた際に、塗布具本体4を傾斜面3a上に置ける程度に傾斜面3aが上向きに位置すればよく、多少周方向に幅のある範囲を含むものである。傾斜面3aはキャップ3の長手方向両端側から中腹に向かってキャップ1の外径が一定の割合で小さくなる平面であり、平面3bはキャップ3の長手方向の一端から他端にかけて一定の幅の平面である。
図6の塗布具本体載置例図の通り、キャップ3を、平面3bを下にして載置面に置き、その上から塗布具本体4の一部を重ねるように置こうとすると、キャップ3は塗布具本体4から載置面に対して水平方向の力を受けるところ、安全載置手段としての平面3bと載置面との摩擦力が大きくなるため、キャップ3を静置させることができ、塗布具も容易に静置させることができる。平面3bは、キャップ3が塗布具本体4から受ける載置面に対して水平方向の力によってキャップ3が滑ってしまわない程度の摩擦力を生じる態様であればよく、例えば、面積、形状、表面粗さなどを適宜設定することができる。特にキャップ3の長手方向に沿った形状であると、塗布具本体4をキャップ3に対して直交するように置こうとしない場合や、傾斜面3aの始点付近から置こうとするような場合など幅広い置き方に対して摩擦力を大きくすることができ好ましい。
【0017】
傾斜面3aと平面3bは、キャップ3の外壁面にそれぞれ複数設けてもよい。それぞれを複数設ける場合、傾斜面3aと平面3bが周方向に交互に存在するよう設けても、各々が連続するよう設けてもよい。さらに、傾斜面3aと平面3bの何れかのみで外壁面を構成してもよい。
【0018】
本発明に係る塗布具本体を円柱状とし、また、傾斜面を少なくともキャップの長手方向に沿った曲面とし、当該曲面の曲率半径が、塗布具本体外壁面の曲率半径の40.0倍以上60.0倍以下であると、円柱状の塗布具本体外壁面よりも適度になだらかな曲面であるため、塗布具本体の、キャップの傾斜面である曲面に沿った一時的な転がりが穏やかになり、塗布具を載置面上でより容易に静置させることができる。円筒状の塗布具本体外壁面の曲率半径は、塗布具本体の長手方向の一端側から他端側にかけて一定であるだけでなくともよく、少なくとも、載置面に置いたキャップの上に、塗布部側が上向きになるよう傾けて、その一部を重ねるように置く際に、キャップの傾斜面である曲面に接触する範囲における曲率半径が、キャップの曲面の曲率半径との上記関係を満たしていればよい。つまり、塗布具本体における当該キャップの傾斜面である曲面に接触する範囲内における曲率半径も、上記関係を満たしていれば、当該範囲内の一端から他端にかけて一定でなくともよい。さらに、当該傾斜面である曲面の曲率半径が、塗布具本体外壁面の曲率半径の43.0倍以上49.0倍以下であると、塗布具本体の、キャップの傾斜面である曲面に沿った一時的な転がりがより穏やかになり、かつ、キャップの曲面が使用者の指に引っ掛かりやすくなるため、キャップを塗布具本体から着脱する際にキャップに対して軸方向の力を加えやすくなり好ましい。
【0019】
キャップの材質は、成形性や強度などを考慮して、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、またはこれらの樹脂を含む複合材、真鍮、ステンレスなどの金属材、木材、石材などを適宜選択することができる。また、キャップ内壁面に塗布先から付着し得る塗布液に対する反応性や、保存環境に対する耐候性などを考慮して、キャップの内壁面及び/又は外壁面に、各種のコーティングや印刷などを施すこともできる。
【実施例0020】
以降、
図7から
図10を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
図7(a)は本発明の1実施例である塗布具5の外観側面視図であり、
図7(b)は塗布具5のA-A´線断面矢視図である。塗布具5は所謂筆ペンであり、塗布具5は、ポリプロピレン樹脂製の塗布具本体6に、各部品が配置され構成されている。
【0021】
塗布具本体6は円柱状の部材である。塗布具本体6の内部には、塗布液が含浸されたアクリル繊維の収束体である塗布液吸蔵体7が収納されている。塗布液吸蔵体7の端面からはポリエチレンテレフタレート樹脂製の中継芯8の一端が挿入され、中継芯8の他端は塗布部としての穂先9の端面に挿入されており、塗布液吸蔵体7から穂先9まで塗布液を供給可能となっている。穂先9はナイロン繊維とポリエステル繊維を束ねた部材であり、ポリプロピレン樹脂製の固定管10を介して塗布具本体6の開口端部に配置されている。
【0022】
塗布具本体6の、穂先9が配置されている端部にはポリプロピレン樹脂製の尾栓11が配置されている。尾栓11は外筒11aと内筒11bが軸方向中腹で結合した重筒構造であり、当該結合部分から穂先9側は単筒である。当該単筒部分の外壁面には環状の突起が3周設けてある。塗布具本体6の開口端部近傍内壁面には同じく環状の突起が4周設けられており、開口端部側から3周分の突起を尾栓11の各突起が乗り越えることで嵌合及び所謂エアタイトがなされ取り付けが可能となっている。塗布具本体6の突起のうち最も穂先9側の突起が、尾栓11の最も穂先9側の突起より穂先9側の外壁面に圧接することでエアタイトが確実になされている。尾栓11を上記単筒側から、塗布具本体6の開口端部に挿入していくと、外筒11aの外壁面に環状に突出した鍔部が塗布具本体6の開口端面と接触し取り付けが完了する。尾栓11の上記単筒と反対側の端部からは内筒11bが視認可能に開口している。当該内筒11bは、後述するキャップ12の内筒12b内に圧入関係で挿入可能となっており、塗布具5の使用状態でキャップ12を尾栓11に取り付けることが可能となっている。
【0023】
図8(a)はキャップ12の外観側面図、
図8(b)は
図8(a)のB-B´線断面矢視図、
図8(c)は
図8(a)のC-C´線断面矢視図である。ポリプロピレン樹脂製のキャップ12は、外筒12aと内筒12bとが結合した重筒構造で構成されている。キャップ12の開口部に対して長手方向反対側の天面には、成形時に樹脂の流入口であるゲート12baが位置する。内筒12bの内壁面には、エアタイト用のリブ12bcが設けられている。リブ12bcは周状の突起であり、キャップ12を塗布具本体6に取り付けた状態において、塗布具本体6の外壁面と密接し、穂先9が収容される空間を気密に保つことができる。リブ12bcから開口部側には、内筒12bと外筒12aとの結合部12cが形成されている。結合部12cはキャップ12の長手方向に沿った複数のリブで構成されている。各リブ間には、キャップ12の内外に貫通した孔が設けられており、使用者等がキャップ12を誤飲してしまった際に気道を確保でき呼吸を維持することがきる。また、当該孔を設けることで、結合部12cの周方向のいわゆる肉盗みにもなるため、径方向の厚みが大きくなる結合部12cの外壁(キャップ12の外壁)にいわゆるヒケが生じにくくなるため好ましい。
【0024】
図9(a)はキャップ12の外観側面斜視図、
図9(b)は
図8(a)のD-D´線断面矢視図である。キャップ12の長手方向両端部における横断面形状は、五角形に近似した形状(略五角形)となっている。また、キャップ12の開口端部近傍内壁面には、周方向等間隔に並んだ突起12dが5点設けられており、塗布具本体6の穂先9側近傍外壁面に設けられた環状の突起が乗り越えることで嵌合がなされ着脱可能となっている。突起12dは、キャップ12の、略五角形の頂点に相当する部分間(辺に相当する部分)に形成されている。キャップ12の径方向の厚みが比較的小さくなる部分に突起12dを設けることで、キャップ12の外壁にいわゆるヒケが生じにくくなるため好ましい。
【0025】
図10は塗布具5の載置例図である。キャップ12の外壁面には、長手方向両端部における略五角形の頂点に相当する部分を始点として、長手方向中腹に向かいキャップ12の外径が小さくなる傾斜面12eが形成されている。これにより、キャップ12を載置面に置き、その上から塗布具本体6の一部を重ねるように置くと、円柱状の塗布具本体6は傾斜面12eに沿って転がり、キャップ12の外径が最も小さくなる位置で停止するため、塗布具5を載置面上で静置させることができる。傾斜面12eの幅は、キャップ12の長手方向中腹から両始点に向かって徐々に狭くなっている。換言すれば、塗布具本体6の静置位置であるキャップ12の外径が最も小さくなる長手方向中腹部分において、傾斜面12eの幅が最も大きくなるため、塗布具本体6をより安定させることができる。本実施例のように塗布部が穂先9のような、塗布液が穂先9を構成する繊維間を流動する塗布具の場合、塗布具5を、穂先9を上向きに立てて載置可能な、所謂筆立てを用いて載置すると、塗布液が塗布液本体6側に下がり過ぎてしまい、塗布跡に濃淡が発生してしまう懸念があるが、本実施例のように塗布具本体6をほぼ横向きに載置可能とすることで、塗布跡の濃淡発生を極力抑制でき好ましい。
【0026】
キャップ12の外壁面には、キャップ12の長手方向両端部における略五角形の辺に相当する部分を始点として、キャップ12の長手方向の一端から他端にかけて連なる安全載置手段としての平面12fが形成されている。平面12fを下にして載置面に置き、その上から塗布具本体6の一部を重ねるように置こうとすると、キャップ12は塗布具本体6から載置面に対して水平方向の力を受けるところ、滑り防止手段としての平面12fと載置面との摩擦力が大きくなるため、キャップ12を静置させることができ、塗布具5も容易に静置させることができる。平面12fはキャップ12の長手方向に沿った形状のため、塗布具本体6をキャップ12に対して直交するように置こうとしない場合や、傾斜面12eの始点付近から置こうとするような場合など幅広い置き方に対して摩擦力を大きくすることができ好ましい。
【0027】
キャップ12の外壁面は、傾斜面12eと平面12fのみがキャップ12の周方向に交互に存在するように設けられている。これにより、キャップ12を載置面に置く際に傾斜面12eが下になっても、最小の転がりで、当該傾斜面12eに対して周方向に隣り合う平面12dの何れかが下になるため、容易にキャップ12を載置面に静置させることができ、引いてはより容易に塗布具5を載置面に静置させることができる。また、キャップ12の長手方向両端部における横断面形状である略五角形のうち、各頂点間に傾斜面12eが、各辺間に平面12fが設けられているため、常に傾斜面12eの周方向反対側には対応する平面12fが位置することとなるため、特にキャップ12の角度を気にしなくても傾斜面12eが上に位置するため、より容易に塗布具5を載置面に静置させることができる。さらに、先述の通り傾斜面12eの幅は、キャップ12の長手方向中腹から両端部に向かって徐々に狭くなっているため、傾斜面12eの周方向に隣り合う平面12fの幅は、キャップ12の長手方向両端部から中腹に向かって徐々に狭くなっている。これにより、キャップ12が連続していない長手方法端部近傍においても塗布具本体6から受ける載置面に対して水平方向の力に十分抵抗できる程度の摩擦力を生じさせることができる。
【0028】
キャップ12の長手方向に沿った曲面である傾斜面12eの曲率半径は223.26mmであり、円柱状の塗布具本体6外壁面の曲率半径(塗布具本体6外壁面におけるキャップ12の傾斜面12eである曲面に接触する範囲内における曲率半径)4.95mmの45.1倍と、塗布具本体6外壁面よりも適度になだらかな曲面であるため、塗布具本体6の、キャップ12の傾斜面12eである曲面に沿った一時的な転がりが穏やかになり、塗布具5を載置面上でより容易に静置させることができ、かつ、キャップ12の曲面が使用者の指に引っ掛かりやすくなるため、キャップ12を塗布具本体6から着脱する際にキャップ12に対して軸方向の力を加えやすくなり好ましい。
【0029】
傾斜面12eは、キャップ12の長手方向に直交する方向には、周方向に隣り合う平面12fとの境界までは径方向外側に突出した曲面となっている。これにより、塗布具本体6を傾斜面12eである曲面に接触させた際に、キャップ12の長手方向だけでなく、キャップ12の周方向にも角張った部分が少なくなるため、塗布具本体6の一時的な転がりがより滑らかにすることができる。