IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ロータおよび回転電機 図1
  • 特開-ロータおよび回転電機 図2
  • 特開-ロータおよび回転電機 図3
  • 特開-ロータおよび回転電機 図4A
  • 特開-ロータおよび回転電機 図4B
  • 特開-ロータおよび回転電機 図5
  • 特開-ロータおよび回転電機 図6
  • 特開-ロータおよび回転電機 図7
  • 特開-ロータおよび回転電機 図8
  • 特開-ロータおよび回転電機 図9
  • 特開-ロータおよび回転電機 図10
  • 特開-ロータおよび回転電機 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144485
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ロータおよび回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20231003BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20231003BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H02K1/22 A
H02K1/276
H02K21/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051475
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】楊 ▲寛▼
(72)【発明者】
【氏名】羅 大殷
(72)【発明者】
【氏名】施 佩均
(72)【発明者】
【氏名】顔 國智
(72)【発明者】
【氏名】顔 聖展
(72)【発明者】
【氏名】劉 承宗
【テーマコード(参考)】
5H601
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601GA24
5H601GA28
5H601GA29
5H601GA34
5H621HH10
5H622CB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回転電機において通常回転時の効率およびトルクを向上できる構造を有するロータおよび回転電機を提供する。
【解決手段】ロータは、ロータコア20とロータコアの軸方向両側にそれぞれ配置された環状導電部とを備える。ロータコア20には、周方向に間隔を空けて配置された複数のフラックスバリア部群130が設けられる。各フラックスバリア部群130の複数のフラックスバリア部30のうち、少なくとも一つのフラックスバリア部30の内部には、環状導電部と電気的に接続された導電体40が配置される。軸方向から見て、ロータコア20の外径の半分をRor、環状導電部の外径の半分をRoer、中心軸線から、内部に導電体40が配置されたフラックスバリア部30のうち径方向において最も外側に配置されたフラックスバリア部30までの最短距離をRocbとする時、Rocb<Roer<Rorを満たす。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線回りに回転可能なロータであって、
ロータコアと、
前記ロータコアの軸方向両側にそれぞれ配置された環状導電部と、
を備え、
前記ロータコアには、周方向に間隔を空けて配置された複数のフラックスバリア部群が設けられ、
前記複数のフラックスバリア部群は、径方向に並んで配置された複数のフラックスバリア部をそれぞれ有し、
前記複数のフラックスバリア部は、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状であり、
各前記フラックスバリア部群の前記複数のフラックスバリア部のうち、少なくとも一つのフラックスバリア部の内部には、前記環状導電部と電気的に接続された導電体が配置され、
軸方向から見て、
前記ロータコアの外径の半分をRor、
前記環状導電部の外径の半分をRoer、
前記中心軸線から、内部に前記導電体が配置された前記フラックスバリア部のうち径方向において最も外側に配置されたフラックスバリア部までの最短距離をRocb、とする時、
Rocb<Roer<Rorを満たす、ロータ。
【請求項2】
前記ロータコアは、前記ロータコアを軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔には、前記中心軸線が通り、
軸方向から見て、
前記環状導電部の内径の半分をRierとし、
前記貫通孔の内径の半分をRsとする時、
Rs≦Rier<Rocbを満たす、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記フラックスバリア部内に位置するマグネットを備え、
軸方向から見て、前記マグネットは前記環状導電部と異なる位置に配置されている、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
軸方向から見て、前記マグネットは前記環状導電部よりも径方向外側に配置されている、請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記フラックスバリア部群において、最も径方向外側に位置する前記フラックスバリア部を除く前記フラックスバリア部の少なくとも1つには、前記フラックスバリア部の径方向内側の第1縁部と径方向外側の第2縁部とを繋ぐブリッジ部が設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項6】
内部に前記導電体が配置された前記フラックスバリア部は、前記フラックスバリア部群において、最も径方向外側に位置する前記フラックスバリア部よりも径方向内側に配置された前記フラックスバリア部である、請求項1から5のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項7】
軸方向から見て、前記導電体は、前記導電体が配置された前記フラックスバリア部の延伸方向の両端部から離れて配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のロータと、
前記ロータの径方向外側に位置するステータと、
を備える、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータおよび回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の孔を有するロータコアと、ロータコアの軸方向両側にそれぞれ配置されたエンドリングと、を備えるロータを有する回転電機が知られている。例えば、特許文献1のロータは、ロータコアの軸方向に貫通する複数の孔を有し、孔内には、導電体およびマグネットが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第202134978号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸方向に見て、特許文献1のエンドリングの外径はロータコアの外径と同等であり、エンドリングの径方向内側には矩形形状の開口が設けられている。このような構成では、エンドリングにより電気的に接続された導電体同士を短絡させる際の抵抗が大きくなり、回転電機の通常回転時の効率が十分に向上できない場合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、回転電機において通常回転時の効率およびトルクを向上できる構造を有するロータおよび回転電機を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータコアの一つの態様は、中心軸線回りに回転可能なロータであって、ロータコアと、前記ロータコアの軸方向両側にそれぞれ配置された環状導電部と、を備える。前記ロータコアには、周方向に間隔を空けて配置された複数のフラックスバリア部群が設けられ、前記複数のフラックスバリア部群は、径方向に並んで配置された複数のフラックスバリア部をそれぞれ有し、前記複数のフラックスバリア部は、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状である。各前記フラックスバリア部群の前記複数のフラックスバリア部のうち、少なくとも一つのフラックスバリア部の内部には、前記環状導電部と電気的に接続された導電体が配置される。軸方向から見て、前記ロータコアの外径の半分をRor、前記環状導電部の外径の半分をRoer、前記中心軸線から、内部に前記導電体が配置された前記フラックスバリア部のうち径方向において最も外側に配置されたフラックスバリア部までの最短距離をRocb、とする時、Rocb<Roer<Rorを満たす。
【0007】
本発明の回転電機の一つの態様は、上記のロータと、前記ロータの径方向外側に位置するステータと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、回転電機において通常回転時の効率およびトルクを向上できる構造を有するロータおよび回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の回転電機の模式図を示す断面図である。
図2図2は、第1実施形態のロータを示す上面図であって、図1におけるII-II矢視図である。
図3図3は、第1実施形態のロータを示す断面図であって、図1におけるIII-III断面図である。
図4A図4Aは、第1実施形態のロータを示す上面図であり、ロータの各構成の寸法を説明するための図である。
図4B図4Bは、第1実施形態のロータを示す断面図であり、ロータの各構成の寸法を説明するための図である。
図5図5は、第1実施形態のロータの変形例を示す断面図である。
図6図6は、第2実施形態のロータを示す断面図である。
図7図7は、第3実施形態のロータを示す断面図である。
図8図8は、第4実施形態のロータを示す断面図である。
図9図9は、第1~第4実施形態のロータの変形例を示す断面図である。
図10図10は、第1~第4実施形態のロータのその他の変形例を示す断面図である。
図11図11は、比較例1のロータを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
各図に適宜示すZ軸方向は、正の側を「上側」とし、負の側を「下側」とする上下方向である。各図に適宜示す中心軸線Jは、Z軸方向と平行であり、上下方向に延びる仮想線である。以下の説明においては、中心軸線Jの軸方向、すなわち上下方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向の上側から見て、周方向で時計回りに進む方向を+θ側と呼び、反時計回りに進む方向を-θ側と呼ぶ。
【0011】
なお、上下方向、上側、および下側とは、単に各部の配置関係等を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0012】
図1に示す本実施形態の回転電機1は、インナーロータ型のモータである。図1に示すように、本実施形態の回転電機1は、ハウジング2と、ロータ10と、ステータ3と、ベアリングホルダ4と、ベアリング5a,5bと、を備える。ハウジング2は、ロータ10、ステータ3、ベアリングホルダ4、およびベアリング5a,5bを内部に収容している。ハウジング2の底部は、ベアリング5bを保持している。ベアリングホルダ4は、ベアリング5aを保持している。ベアリング5a,5bは、例えば、ボールベアリングである。
【0013】
ステータ3は、ロータ10の径方向外側に位置する。図1に示すように、ステータ3は、ステータコア3aと、インシュレータ3dと、複数のコイル3eと、を有する。ステータコア3aは、コアバック3bと、複数のティース3cと、を有する。コアバック3bは、中心軸線Jを中心とする円環状である。複数のティース3cは、コアバック3bから径方向内側に延びている。複数のティース3cは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。複数のコイル3eは、インシュレータ3dを介してステータコア3aに装着されている。
【0014】
ロータ10は、中心軸線Jを中心として回転可能である。図1図2および図3に示すように、ロータ10は、シャフト11と、ロータコア20と、導電体40と、環状導電部50と、マグネット60と、を備える。シャフト11は、中心軸線Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。図1に示すように、シャフト11は、ベアリング5a,5bによって中心軸線J回りに回転可能に支持されている。
【0015】
ロータコア20は、磁性体である。ロータコア20の材質は、例えば、鉄と炭素との合金よりも透磁率の高く電気伝導率の低いケイ素鋼である。ロータコア20は、シャフト11の外周面に固定されている。ロータコア20は、ロータコア20を軸方向に貫通する貫通孔20aを有する。図2に示すように、貫通孔20aは、軸方向に見て、中心軸線Jを中心とする円形状である。貫通孔20aには、シャフト11が通されている。シャフト11は、例えば圧入等により、貫通孔20a内に固定されている。図示は省略するが、ロータコア20は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成されている。
【0016】
図1に示すように、環状導電部50は、ロータコア20の軸方向両端にそれぞれ配置されている。環状導電部50は中心軸線Jを中心とする円環状である。環状導電部50を構成する材料は、電気伝導率の高い材料である。環状導電部50を構成する材料としては、例えばアルミニウム、銅、およびアルミニウムと銅との合金等が挙げられる。
【0017】
図2および図3に示すように、ロータコア20は、複数のフラックスバリア部30を有する。本実施形態において各フラックスバリア部30はロータコア20に設けられた孔によって構成されている。フラックスバリア部30は、例えば、ロータコア20を軸方向に貫通している。図3に示すように、各フラックスバリア部30は、軸方向と直交する平面に沿って延びており、軸方向に見て径方向内側に凸となる形状となっている。ロータコア20には、2つ以上のフラックスバリア部30を含む組が複数組設けられている。1組のフラックスバリア部30をフラックスバリア部群130とも呼ぶ。各フラックスバリア部群130は、複数のフラックスバリア部30を含む。
【0018】
本実施形態では、4組のフラックスバリア部群130が設けられている。4組のフラックスバリア部群130について、以降それぞれを第1フラックスバリア部群130A、第2フラックスバリア部群130B、第3フラックスバリア部群130C、および第4フラックスバリア部群130Dとも呼ぶ。軸方向に見て、第1フラックスバリア部群130A、第2フラックスバリア部群130B、第3フラックスバリア部群130C、および第4フラックスバリア部群130Dはこの順で+θ方向に向かって配置されている。
【0019】
このようにフラックスバリア部30が設けられたロータコア20は、磁気突極構造を有するシンクロナスリラクタンスモータのロータコアとなる。より詳しくは、フラックスバリア部30は磁束を通しにくく、軸方向から見て、隣り合う2組のフラックスバリア部群130同士の間は磁束が通りやすい突極方向となり、1組のフラックスバリア部群130の周方向における中央部には磁束が通りにくい方向が設けられる。なお、以下の説明では、上記の磁束が通りやすい突極方向を「d軸方向」と呼び、上記の磁束が通りにくい方向を「q軸方向」と呼ぶ。ロータコア20はq軸方向およびd軸方向において磁気的な異方性を有するため、ステータ3により磁界が発生した際にリラクタンストルクが発生し、ロータ10を回転させることが可能となる。
【0020】
また、d軸方向はロータコア20の磁極部Pの周方向の中心を通る径方向であり、q軸方向は周方向で隣り合う磁極部P同士の間における周方向中心を通る径方向である。周方向で隣り合う磁極部P同士の間に位置する部分を、以降、磁極中間部Mと呼ぶ。q軸は磁極中間部Mを通る。
このように、ロータ10には、周方向に沿って設けられた複数の磁極部Pと、周方向に隣り合う磁極部P同士の間にそれぞれ位置する複数の磁極中間部Mと、が設けられる。磁極中間部Mは、フラックスバリア部群130をそれぞれ有する。
【0021】
本実施形態では、フラックスバリア部30内には導電体40およびマグネット60が配置されている。
各フラックスバリア部群130の複数のフラックスバリア部30のうち、少なくとも一つのフラックスバリア部30の内部には、導電体40が配置されている。導電体40を構成する材料は、電気伝導率の高い材料である。導電体40を構成する材料は、環状導電部50を構成する材料と同じであり、例えばアルミニウム、銅、およびアルミニウムと銅との合金等が挙げられる。導電体40を構成する材料は、フラックスバリア部30により構成された磁気突極構造に影響を与えないよう、強磁性体でない金属である。
【0022】
各フラックスバリア部30内に配置された導電体40は、それぞれ、環状導電部50と電気的に接続されている。このため、各フラックスバリア部30内の導電体40同士は環状導電部50を介して電気的に接続されており、環状導電部50は各フラックスバリア部30内の導電体40同士を電気短絡させている。
フラックスバリア部30内の導電体40は、導電体40となる金属を加熱してフラックスバリア部30内に流し込むことで作られている。
【0023】
本実施形態において、導電体40および環状導電部50は、同一の単一部材の一部である。例えば、ロータコア20の軸方向両側にそれぞれ環状導電部50の金型を配置し、導電体40および環状導電部50となる金属を加熱してフラックスバリア部30および金型内に流し込むことで導電体40および環状導電部50は作られている。この際、導電体40を配置しないフラックスバリア部30の空隙部に加熱した金属が流れ込まないようにするため、加熱した金属の進入を防止する部材をフラックスバリア部30内の一部に配置した状態で金属を流し込む。
なお、導電体40および環状導電部50は、別部材であってもよいし、異なる構成材料であってもよい。
【0024】
各フラックスバリア部群130の複数のフラックスバリア部30のうち、少なくとも一つのフラックスバリア部30の内部には、マグネット60が配置されている。マグネット60は、軸方向に見て矩形状である。図示は省略するが、マグネット60は、例えば、直方体状である。
本実施形態では、軸方向に見て、内部に導電体40が配置されたフラックスバリア部30の延伸方向の両端部30fにマグネット60が配置されている。マグネット60は、フェライト磁石である。マグネットの種類は、特に限定されず、マグネットは、ネオジム磁石であってもよい。
【0025】
シンクロナスリラクタンスモータのフラックスバリア部30内に導電体40が配置された場合、回転する磁界の中に導体が配置されることになる。このため、ステータ3により発生した磁界が回転した際に、電磁誘導により導電体40に誘導電流が流れ、誘導電流のローレンツ力によりロータ10に回転力を発生させることが可能となる。特に、静止したロータ10の回転を開始する時にローレンツ力によるトルクを得ることができるため、起動時の性能を高めることができる。このように、起動時の特性を向上させたシンクロナスリラクタンスモータは、特にDOL SynRM(Direct-On-Line Synchronous Reluctance Motor)とも呼ばれる。
さらに、フラックスバリア部30内に配置されたマグネットの磁力により、回転電機1の出力を向上できる。このため、フラックスバリア部30にマグネットがさらに配置されたDOL SynRMは、DOL-PMa SynRM(Direct-On-Line Permanent Magnet assisted Synchronous Reluctance Motor)とも呼ばれる。
【0026】
以下、図2図3図4Aおよび図4Bを用い、本実施形態のフラックスバリア部30の構成についてより詳細に説明する。さらに、フラックスバリア部30内に配置された導電体40およびマグネット60と、環状導電部50と、の配置関係についても説明する。
【0027】
(フラックスバリア部30)
本実施形態のロータ10は、第1フラックスバリア部31と、第2フラックスバリア部32と、第3フラックスバリア部33と、第4フラックスバリア部34とを含む4つのフラックスバリア部30をそれぞれ備える4組のフラックスバリア部群130を有する。第1フラックスバリア部31と、第2フラックスバリア部32と、第3フラックスバリア部33と、第4フラックスバリア部34と、は径方向外側から径方向内側に向かって、この順に配置されている。本実施形態のフラックスバリア部群130では、複数のフラックスバリア部30のうち、最も径方向外側に位置するフラックスバリア部は第1フラックスバリア部31であり、最も径方向内側に位置するフラックスバリア部は第4フラックスバリア部34である。
【0028】
本実施形態では4つのフラックスバリア部30が、1組のフラックスバリア部群130に配置されている。1組のフラックスバリア部群130におけるフラックスバリア部30の数は4つに限られず、2つ以上のフラックスバリア部30が配置されていればよい。フラックスバリア部30の数は、ロータコア20の大きさにより適宜変更されてもよい。
以降、第1フラックスバリア部31、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33、および第4フラックスバリア部34のいずれかを指す場合は、単にフラックスバリア部30とも呼ぶ。
【0029】
4組のフラックスバリア部群130はロータ10の周方向に沿って等間隔に並べられている。
フラックスバリア部群130の各組は、それぞれ周方向に90°回転した姿勢で配置されている点を除いて、同様の構成である。以下の各フラックスバリア部30の説明においては、4組のフラックスバリア部群130のうち代表して1つの組に含まれるフラックスバリア部30について説明する。
【0030】
フラックスバリア部群130に含まれる、第1フラックスバリア部31と、第2フラックスバリア部32と、第3フラックスバリア部33と、第4フラックスバリア部34と、はそれぞれ接触しておらず、径方向において離れて位置している。ロータコア20のうち、第1フラックスバリア部31の径方向外側の領域と、径方向に隣り合う2つのフラックスバリア部30同士の間の領域と、フラックスバリア部群130の径方向内側の領域と、は、ステータ3により生じる磁束の流れる磁路MPとなる。
【0031】
各フラックスバリア部30は、軸方向に見て複数の線分からなる折れ線状のスリットであり、径方向内側に凸となっている。本実施形態では、各フラックスバリア部30は3つの直線からなる折れ線で構成されているが、3未満または3よりも多い直線からなる折れ線で構成されていてもよい。
本実施形態においてフラックスバリア部30は、それぞれ、軸方向に見て、磁極中間部Mの周方向中心を対称軸とする線対称な形状である。本実施形態では、磁極中間部Mの周方向中心はq軸と重なる位置に設けられる。
【0032】
図3に示すように、軸方向から見て、各フラックスバリア部30は、q軸に直交する直線部30aと、直線部30aの-θ側の端部から径方向外側に屈曲して延びる第1屈曲部30bと、直線部30aの+θ側の端部から径方向外側に屈曲して延びる第2屈曲部30cと、を有する。
【0033】
第1フラックスバリア部31、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33、および第4フラックスバリア部34の直線部を、それぞれ、直線部31a、直線部32a、直線部33a、および直線部34aと符号を付して呼ぶ。
以降、フラックスバリア部30のいずれかの直線部を指す場合は、単に直線部30aとも呼ぶ。
直線部31a、直線部32a、直線部33a、および直線部34aは、軸方向に見て、q軸と直交する方向に延びている。すなわち、軸方向に見て、直線部30aは互いに平行に延びている。
【0034】
第1フラックスバリア部31、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33、および第4フラックスバリア部34の-θ側の第1屈曲部を、それぞれ、第1屈曲部31b、第1屈曲部32b、第1屈曲部33b、および第1屈曲部34bと符号を付して呼ぶ。
以降、フラックスバリア部30のいずれかの第1屈曲部を指す場合は、単に第1屈曲部30bとも呼ぶ。
【0035】
第1フラックスバリア部31、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33、および第4フラックスバリア部34の+θ側の第2屈曲部を、それぞれ、第2屈曲部31c、第2屈曲部32c、第2屈曲部33c、および第2屈曲部34cと符号を付して呼ぶ。
以降、フラックスバリア部30のいずれかの第2屈曲部を指す場合は、単に第2屈曲部30cとも呼ぶ。
【0036】
直線部30a、第1屈曲部30b、および第2屈曲部30cは、軸方向に見て、例えば、それぞれ、矩形状である。
軸方向に見て、q軸と直交する方向に延びる直線部30aの両端部のそれぞれに、ロータ10の外周面に向かって延びる第1屈曲部30bおよび第2屈曲部30cが折れ線状に配置されることで、フラックスバリア部30は構成される。第1屈曲部30bおよび第2屈曲部30cを含む一対の屈曲部は、軸方向に見て、径方向外側に向かうに従って互いに離れる向きに直線状に延びている。
【0037】
<フラックスバリア部30の屈曲角度>
各フラックスバリア部30において、直線部30aと第1屈曲部30bとがなす角度は、直線部30aと第2屈曲部30cとがなす角度と同等である。以降、直線部30aと第1屈曲部30bとがなす角度、および直線部30aと第2屈曲部30cとがなす角度を「屈曲角度」と呼ぶ。
本実施形態では、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33、および第4フラックスバリア部34における屈曲角度は、それぞれ同等である。このため、第1屈曲部32b、第1屈曲部33b、および第1屈曲部34bは、軸方向に見て、互いに平行に延びている。第2屈曲部32c、第2屈曲部33c、および第2屈曲部34cは、軸方向に見て、互いに平行に延びている。
フラックスバリア部群130において、第1フラックスバリア部31の屈曲角度は、その他のフラックスバリア部30よりも大きい。
なお、屈曲角度はすべてのフラックスバリア部30において同等になっていてもよい。径方向外側に位置するフラックスバリア部30ほど、屈曲角度が大きくなっていてもよいし、小さくなっていてもよい。
【0038】
<フラックスバリア部30の延伸方向の長さ>
以下の説明においては、軸方向に見てフラックスバリア部30が折れ線状に延びる方向を「延伸方向」と呼ぶ。軸方向に見て第1フラックスバリア部31、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33、および第4フラックスバリア部34が折れ線状に延びる方向をそれぞれ「第1延伸方向」、「第2延伸方向」、「第3延伸方向」、および「第4延伸方向」と呼ぶ。
【0039】
軸方向に見て、径方向外側に位置するフラックスバリア部30ほど、フラックスバリア部30の延伸方向の寸法が短い。すなわち、第1フラックスバリア部31の第1延伸方向の寸法は第2フラックスバリア部32の第2延伸方向の寸法よりも短い。第2フラックスバリア部32の第2延伸方向の寸法は第3フラックスバリア部33の第3延伸方向の寸法よりも短い。第3フラックスバリア部33の第3延伸方向の寸法は第4フラックスバリア部34の第4延伸方向の寸法よりも短い。
【0040】
軸方向に見て、フラックスバリア部30の周方向中心は、直線部30aの周方向中心となる。
本実施形態では、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33、および第4フラックスバリア部34における直線部30aの延伸方向の寸法は、それぞれ同等である。すなわち、直線部32a、直線部33a、および直線部34aの延伸方向の寸法はそれぞれ同等である。フラックスバリア部群130において、第1フラックスバリア部31の直線部31aの延伸方向の寸法は、第1フラックスバリア部31を除くフラックスバリア部30の直線部30aの延伸方向の寸法よりも短い。
なお、直線部30aの延伸方向の寸法はすべてのフラックスバリア部30において同等になっていてもよい。また、径方向外側に位置するフラックスバリア部30ほど、直線部30aの延伸方向の寸法が短くなっていてもよい。径方向外側に位置するフラックスバリア部30ほど、直線部30aの延伸方向の寸法が長くなっていてもよい。
【0041】
軸方向に見て、径方向外側に位置する第1屈曲部30bほど、第1屈曲部30bの延伸方向の寸法が短い。
軸方向に見て、径方向外側に位置する第2屈曲部30cほど、第2屈曲部30cの延伸方向の寸法が短い。
なお、第1屈曲部30bおよび第2屈曲部30cの延伸方向の寸法はすべてのフラックスバリア部30において同等になっていてもよい。また、径方向外側に位置するフラックスバリア部30ほど、第1屈曲部30bおよび第2屈曲部30cの延伸方向の寸法が、長くなっていてもよい。
【0042】
<フラックスバリア部30の幅>
以下の説明においては、軸方向に見てフラックスバリア部30の延伸方向と直交する方向をフラックスバリア部30の「幅方向」と呼ぶ。フラックスバリア部30の幅方向の寸法を単に幅と呼ぶ。直線部30aでは、フラックスバリア部30の幅はq軸方向の寸法である。
フラックスバリア部30の幅は、それぞれ、延伸方向において均一になっている。これにより、径方向で隣り合う2つのフラックスバリア部30同士の間の磁路MPが、それぞれ、狭くなりすぎることを抑制できる。
【0043】
<フラックスバリア部30の延伸方向の端部30f>
フラックスバリア部30はそれぞれ、延伸方向外側の端部30fを有する。端部30fは、-θ側の端部である第1端部30f1と、+θ側の端部である第2端部30f2と、を含む。フラックスバリア部30の第1端部30f1、および第2端部30f2はロータコア20の径方向外周縁部に位置する。第1端部30f1、および第2端部30f2の径方向の位置は、それぞれ同等の位置となっている。
【0044】
<フラックスバリア部30のブリッジ部30g>
フラックスバリア部群130において、最も径方向外側に位置する第1フラックスバリア部31を除くフラックスバリア部30の少なくとも1つには、フラックスバリア部30の径方向内側の第1縁部30e1と径方向外側の第2縁部30e2とを繋ぐブリッジ部30gが設けられている。
本実施形態では、図3に示すように、延伸方向の寸法が最も短い第1フラックスバリア部31にはブリッジ部30gが設けられておらず、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33および第4フラックスバリア部34において、q軸と重なる位置にブリッジ部30gがそれぞれ配置されている。これより、ロータ10の機械的な強度を好適に保つことができる。
【0045】
なお、本明細書において「或るパラメータ同士が互いに同じである」とは、或るパラメータ同士が厳密に互いに同じである場合に加えて、或るパラメータ同士が互いに略同じである場合も含む。「或るパラメータ同士が互いに略同じである」とは、例えば、公差の範囲内で、或るパラメータ同士が僅かにずれていることを含む。
【0046】
(導電体40)
本実施形態では、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33および第4フラックスバリア部34の内側の一部に導電体40が配置されている。第1フラックスバリア部31には導電体40が配置されていない。
このように、内部に導電体40が配置されたフラックスバリア部30は、フラックスバリア部群130において、最も径方向外側に位置する第1フラックスバリア部31よりも径方向内側に配置された第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33および第4フラックスバリア部34である。
【0047】
軸方向から見て、導電体40は、導電体40が配置されたフラックスバリア部30の延伸方向の両端部30fから離れて配置されている。
本実施形態では、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33および第4フラックスバリア部34の第1端部30f1および第2端部30f2には、導電体40の配置されていない領域Rがそれぞれ設けられている。領域Rは、第1端部30f1側に配置された第1領域R1と、第2端部30f2側に配置された第2領域R2と、を含む。第1領域R1は第1屈曲部30bに設けられ、第2領域R2は第2屈曲部30cに設けられる。
第1領域R1は、延伸方向においてフラックスバリア部30の第1端部30f1の端面から第1屈曲部30bに沿って延びている。第2領域R2は、延伸方向においてフラックスバリア部30の第2端部30f2の端面から第2屈曲部30cに沿って延びている。
【0048】
各フラックスバリア部30において、第1領域R1および第2領域R2の延伸方向の寸法は互いに同等である。第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33および第4フラックスバリア部34において、領域Rの延伸方向の寸法は同等である。
なお、第1領域R1および第2領域R2の延伸方向の寸法が互いに異なっていてもよい。また、各フラックスバリア部30の径方向外側に位置するフラックスバリア部30ほど、第1領域R1および第2領域R2の延伸方向の寸法が短くなっていてもよいし、長くなっていてもよい。
【0049】
(環状導電部50)
軸方向に見て、環状導電部50は、フラックスバリア部30内の各導電体40と少なくとも一部において重なっている。
より詳しくは、図4Aおよび図4Bに示すように、軸方向から見て、ロータコア20の外径の半分をRor、環状導電部50の外径の半分をRoer、中心軸線Jから、内部に導電体40が配置されたフラックスバリア部30のうち径方向において最も外側に配置された第2フラックスバリア部32までの最短距離をRocb、とする時、Rocb<Roer<Rorを満たす。
Rocb<Roerを満たすため、環状導電部50によりフラックスバリア部30内に配置された導電体40の全てが電気的に接続される。すなわち、導電体40同士を電気的に短絡させることができる。
ここで、導電体40同士を電気的に短絡させる際の環状導電部50における銅損が小さいほどロータ10を回転させたときの回転電機1の効率が向上する。例えば、図11に示す従来のロータ100では、ロータコア200と環状導電部500の外径が同等になっている。図11に示すロータ100と比較し、本実施形態ではRoer<Rorを満たすため、環状導電部50の外周の長さを短くすることができる。このため、環状導電部50により各導電体40同士を接続する周方向の距離が短くなり、銅損を低減することができる。
【0050】
また、本実施形態では、第1フラックスバリア部31内に導電体40が配置されていない。このため、中心軸線Jから、フラックスバリア部30のうち径方向において最も内側に配置された内部に導電体40が配置されていない第1フラックスバリア部31までの最短距離をReとする時、Rocb<Roer≦Reを満たす。
これにより、環状導電部50の外周の長さを短くすることができるため、環状導電部50により各導電体40同士を接続する周方向の距離が短くなり、銅損を低減することができる。
【0051】
環状導電部50には、中心軸線Jを中心として環状導電部50を軸方向に貫通する内孔51が設けられている。内孔は軸方向から見て円形形状である。内孔51の直径が環状導電部50の内径となる。
軸方向から見て、環状導電部50の内径の半分をRierとし、貫通孔20aの内径の半分をRsとする時、Rs≦Rier<Rocbを満たす。
これにより、環状導電部50の径方向の幅Wを確保することができるため、環状導電部50の銅損を低減できる。また、環状導電部50の内孔51は、軸方向から見て円形形状であるため、周方向において径方向の幅Wが均一となる。例えば図11に示すロータ100では、軸方向から見てフラックスバリア部30の直線部30aに配置されたマグネット60が環状導電部500の開口501から露出している。このため、周方向において、マグネット60が配置された箇所では環状導電部500の径方向の幅が細くなり、当該範囲では電気抵抗が高くなる。これに対して、本実施形態では、周方向において環状導電部50の径方向の幅Wは均一であり、導電体40同士を接続する際の電気抵抗を抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態では、軸方向から見て、中心軸線Jから、内部に導電体40が配置されたフラックスバリア部30の径方向において最も内側に配置された第4フラックスバリア部34までの最短距離をRicbとする時、Rier≦Ricb≦Rocbを満たす。
これにより、環状導電部50の径方向の幅Wを確保することができるため、環状導電部50の銅損を低減できる。
【0053】
図2、および図3に示すように、軸方向から見て、環状導電部50は領域Rと異なる位置に配置されている。軸方向から見て、環状導電部50は領域Rよりも径方向内側に配置されている。
このため、環状導電部50により各導電体40同士を接続する周方向の距離が短くなり、ロータ10の銅損を低減することができる。
【0054】
中心軸線Jから、領域Rのうち径方向において最も内側に配置された領域Rまでの最短距離をRirとする。本実施形態では、Rirは、中心軸線Jから、第4フラックスバリア部34の領域Rまでの最短距離となる。本実施形態では、環状導電部50の外径の半分であるRoerが、最短距離Rirの同等以上となっている。すなわち、Roer≦Rirを満たす。これにより、軸方向から見て、領域Rと環状導電部50とが重ならず、かつ、各導電体40を環状導電部50に電気的に接続することができる。
【0055】
中心軸線Jから、領域Rまでの最も遠い距離をRofrとする。本実施形態では、領域Rの径方向の外側の端部の径方向の位置は、それぞれ同等の位置となっているため、中心軸線Jから、フラックスバリア部30の延伸方向の端部30fまでの最も遠い距離とも言える。環状導電部50の外径の半分であるRoerは、距離Rofrよりも小さい。すなわち、Roer<Rofrを満たす。これにより、領域Rの少なくとも一部が環状導電部50と重ならないようにしつつ、かつ、各導電体40を環状導電部50に電気的に接続することができる。
【0056】
なお、図5に示すような環状導電部50を採用してもよい。図5に示す環状導電部50は、軸方向に見て、内孔51は、フラックスバリア部30に交差する位置に設けられている。すなわち、軸方向から見て、フラックスバリア部30の一部が内孔51よりも径方向内側に設けられており、Ricb≦Rierを満たす。この場合においても、周方向において環状導電部50の径方向の幅Wを均一にすることができるため、導電体40同士を接続する際の電気抵抗を抑えることができる。
【0057】
(マグネット60)
図3に示すように、マグネット60は、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33および第4フラックスバリア部34の第1端部30f1および第2端部30f2に配置される。より詳しくは、マグネット60は導電体40が配置されていない第1領域R1および第2領域R2に配置される。第1フラックスバリア部31にはマグネット60は配置されない。
【0058】
軸方向に見て、マグネット60は領域Rの延伸方向に沿って延びる矩形形状である。領域Rは延伸方向に向かって直線状に延びているため、矩形形状のマグネット60を容易に配置することができる。
マグネット60の延伸方向の寸法は、領域Rの延伸方向の寸法と同等以下あり、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33および第4フラックスバリア部34に配置されたマグネット60は、それぞれ延伸方向の寸法が同じである。なお、マグネット60の延伸方向の寸法は、径方向外側に位置するフラックスバリア部30に配置されるマグネット60ほど、短くなっていてもよいし、長くなっていてもよい。
マグネット60の幅方向の両側面は、フラックスバリア部30の第1縁部30e1および第2縁部30e2とそれぞれ接触している。
【0059】
マグネット60のq軸に近い側の延伸方向端部は、導電体40に接触している。
マグネット60のq軸から遠い側の延伸方向端部の一部は、フラックスバリア部30の延伸方向の端面に接触しているか、または、フラックスバリア部30の延伸方向の端面から離れて設けられている。すなわち、延伸方向において、マグネット60のq軸から遠い側の延伸方向端部と、フラックスバリア部30の延伸方向の端面との間には空隙部が設けられる。
より詳しくは、軸方向に見て、フラックスバリア部30の延伸方向の端面はロータ10の外周面に沿って延びており、フラックスバリア部30の延伸方向と直交していない。このため、フラックスバリア部30の延伸方向の端面と、矩形形状のマグネット60との一部が接触している場合には、軸方向に見て三角形状の空隙部が設けられる。また、フラックスバリア部30の延伸方向の端面と、矩形形状のマグネット60とが離れて設けられている場合は、軸方向に見て台形形状の空隙部が設けられる。
【0060】
なお、軸方向から見て、マグネット60の形状が領域Rと同様の形状となっていてもよい。または、フラックスバリア部30の延伸方向の端面がフラックスバリア部30の延伸方向に直交してもよい。この場合、軸方向から見てマグネット60が領域Rの内周面の全周にわたって接触する。
【0061】
軸方向から見て、マグネット60は環状導電部50と異なる位置に配置されている。これにより、環状導電部50の外径を小さくできるので、ロータ10における銅損を低減しつつ効率よく導電体40同士を短絡させることができる。また、軸方向から見て、マグネット60が環状導電部50で覆われていないので、例えば、マグネット60は導電体40および環状導電部50が作られた後に領域Rに挿入できる。この場合、加熱された導電体40となる金属の熱によるマグネット60の減磁を防止することができる。
【0062】
<マグネット60の磁極の方向>
マグネット60の磁極は、周方向に沿って配置されている。
第1フラックスバリア部群130A、第3フラックスバリア部群130Cにおいて、第1領域R1に設けられたマグネット60を第1マグネット61bとし、第2領域R2に設けられたマグネット60を第2マグネット61cと呼ぶ。
径方向に隣り合う磁極中間部Mと磁極部Pとの間に配置された第1マグネット61bおよび第2マグネット61cでは、それぞれ、周方向において、磁極部P側はN極になっており、磁極中間部M側はS極になっている。図3では、フラックスバリア部群130A、130Cにおいて、周方向に間隔を空けて配置された3つの第1マグネット61b、および3つの第2マグネット61cの磁極の向きをそれぞれ矢印B11、および矢印B12にて示す。
【0063】
第2フラックスバリア部群130B、第4フラックスバリア部群130Dにおいて、第1領域R1に設けられたマグネット60を第1マグネット62bとし、第2領域R2に設けられたマグネット60を第2マグネット62cと呼ぶ。
径方向に隣り合う磁極部Pと磁極中間部Mとの間に配置された第1マグネット62bおよび第2マグネット62cでは、それぞれ、周方向において、磁極部P側はS極になっており、磁極中間部M側はN極になっている。図3では、フラックスバリア部群130B、130Dにおいて、周方向に間隔を空けて配置された3つの第1マグネット62b、および3つの第2マグネット62cの磁極の向きをそれぞれ矢印B21、および矢印B22にて示している。
【0064】
このように、周方向で隣り合うフラックスバリア部群130では、マグネット60の磁極の向きが互いに逆になっている。
【0065】
図3に示すように、第4フラックスバリア部群130Dと第1フラックスバリア部群130Aとの間の磁極部Pを挟んで、-θ側には3つの第2マグネット62cが配置され、+θ側には3つの第1マグネット61bが配置される。当該6つのマグネット62c、61bは、ロータ10の外周縁部に周方向に間隔を空けて配置される。6つのマグネット60のうち、第2マグネット62cの磁極の向きB22と、第1マグネット61bの磁極の向きB11とが互いに同じになっている。
第2フラックスバリア部群130Bと第3フラックスバリア部群130Cとの間の磁極部Pを挟んで配置されている6つのマグネット62c、61bの磁極の向きについてもそれぞれ同様に磁極の向きB22、B11が互いに同じになっている。
【0066】
また、第1フラックスバリア部群130Aと第2フラックスバリア部群130Bとの間の磁極部Pを挟んで、-θ側には3つの第2マグネット61cが配置され、+θ側には3つの第1マグネット62bが配置される。当該6つのマグネット61c、62bは、ロータ10の外周縁部に周方向に間隔を空けて配置される。6つのマグネット60のうち、第2マグネット61cの磁極の向きB12と、第1マグネット62bの磁極の向きB21とが互いに同じになっている。
第3フラックスバリア部群130Cと第4フラックスバリア部群130Dとの間の磁極部Pを挟んで配置されている6つのマグネット61c、62bの磁極の向きについてもそれぞれ同様に磁極の向きB12、B21が互いに同じになっている。
【0067】
このように、周方向において隣り合う第1フラックスバリア部31の間に配置された6つのマグネット60の磁極の向きは同じになっている。かつ、周方向で隣り合う当該6つのマグネット60同士の磁極の向きは周方向に反転している。
【0068】
<マグネットトルクによる回転電機1のトルクの向上>
本実施形態では、リラクタンストルクを生じさせるフラックスバリア部30内にマグネット60が上述のように配置される。これにより、ロータ10の磁気的な異方性により生じるリラクタンストルクと、マグネット60の磁力によってロータ10に生じるマグネットトルクと、の両方を好適に利用できるため、回転電機1のトルクを向上できる。
例えば図11に示す従来のロータ100では、フラックスバリア部30の直線部30a内にマグネット60が配置されている。また、図11に矢印C1で示すように、マグネット60により生じた磁束は直線部30aの延伸方向を直交する方向に流れている。この場合、シンクロナスリラクタンスモータの磁束が通りやすいd軸と異なる方向に、マグネット60の磁束が通る矢印C1が延びることになる。また、図11に示すロータ100の構成では、回転電機の負荷角と、リラクタンストルクおよびマグネットトルクと、の関係において、リラクタンストルクが最小となる負荷角とマグネットトルクが最小となる負荷角とが異なる角度となる。このため、リラクタンストルクとマグネットトルクとの合成トルクが十分に向上できない場合があった。
【0069】
これに対して、本実施形態のロータ10では、シンクロナスリラクタンスモータの磁束が通りやすいd軸を挟んで、周方向に並んで配置された複数のマグネット60が配置されている。また、複数のマグネット60の磁極は、周方向に沿って配置されている。この構成により、回転電機1の負荷角と、リラクタンストルクおよびマグネットトルクと、の関係において、リラクタンストルクが最小となる負荷角とマグネットトルクが最小となる負荷角とを一致させることができる。また、リラクタンストルクが最大となる負荷角とマグネットトルクが最大となる負荷角とを一致させることもできる。
このように、本実施形態のロータ10では、リラクタンストルクとマグネットトルクとの合成トルクを好適に向上させることができるため、回転電機1のトルクを好適に向上できる。
【0070】
また、軸方向から見て、マグネット60は環状導電部50よりも径方向外側に配置されている。これにより、マグネット60をロータコア20の周方向外周縁部に配置できるため、上述のようにリラクタンストルクとマグネットトルクとの合成トルクを好適に向上させることができるとともに、環状導電部50の外径を小さくすることで銅損を減らすことができる。
また、複数のマグネット60は周方向に間隔を空けて配置されているため、マグネット60同士の間にロータコア20の磁路MPを確保することができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態のロータ10は、中心軸線J回りに回転可能なロータ10であって、ロータコア20と、ロータコア20の軸方向両側にそれぞれ配置された環状導電部50と、を備え、ロータコア20には、周方向に間隔を空けて配置された複数のフラックスバリア部群130が設けられ、複数のフラックスバリア部群130は、径方向に並んで配置された複数のフラックスバリア部30をそれぞれ有し、複数のフラックスバリア部30は、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状であり、各フラックスバリア部群130の複数のフラックスバリア部30のうち、少なくとも一つのフラックスバリア部30の内部には、環状導電部50と電気的に接続された導電体40が配置され、軸方向から見て、ロータコア20の外径の半分をRor、環状導電部50の外径の半分をRoer、中心軸線Jから、内部に導電体40が配置されたフラックスバリア部30のうち径方向において最も外側に配置されたフラックスバリア部30までの最短距離をRocb、とする時、Rocb<Roer<Rorを満たす。
【0072】
これにより、環状導電部50の外径をロータコア20の外径よりも小さくすることができ、ロータ10の銅損を低減できる。そのため、ロータ10が定格速度で回転する通常回転時において効率およびトルクの向上が可能となる。
また、環状導電部50の軸方向の厚さを大きくすることなく、ロータ10の銅損を低減できるため、回転電機1の軸方向の寸法をコンパクトにすることができる。
また、図11に示すような環状導電部500を有する従来のロータ100と同様の製造プロセスで本実施形態のロータ10を製造することが可能であるため、製造コストを抑えつつ、上述のような格別な効果を有するロータ10を得ることが可能となる。
【0073】
また、内部に導電体40が配置されたフラックスバリア部30は、フラックスバリア部群130において、最も径方向外側に位置する第1フラックスバリア部31よりも径方向内側に配置されたフラックスバリア部30である。これにより、環状導電部50の外径を小さくできるため、環状導電部50における銅損をより低減させることができる。
【0074】
また、軸方向から見て、導電体40は、導電体40が配置されたフラックスバリア部30の延伸方向の両端部30fから離れて配置されている。これにより、例えば、導電体40の配置されていない領域Rに、マグネット60を配置することができる。また、領域Rにはマグネット60を配置せず空隙部としてもよいし、マグネット以外のその他の構成を配置することも可能となる。このように、導電体40が端部30fから離れて配置されることで、種々のデザインに対応可能なロータ10を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態の回転電機1は、上述のロータ10と、ロータ10の径方向外側に位置するステータ3と、を備える。
これにより、ロータ10が定格速度で回転する通常回転時において、効率およびトルクの向上が可能な回転電機1を得ることが可能となる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図6に示すように、第1実施形態と比較し、本実施形態のロータ10は、第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33および第4フラックスバリア部34の第2端部30f2に導電体40が配置されており、第2領域R2が設けられていない。また、第2端部30f2にマグネット60が設けられていない。
本実施形態のロータ10では、第1領域R1の延伸方向の寸法が第1実施形態よりも長くなっており、第1領域R1内に配置されたマグネット60の延伸方向の寸法も第1実施形態よりも長くなっている。
【0077】
本実施形態では、フラックスバリア部群130において、q軸よりも-θ側でマグネットトルクを好適に利用できる。そのため、-θ方向にロータ10を回転させた際の効率およびトルクを向上することができる。また、定格速度でロータ10が-θ方向に回転する通常運転時のステータ3の電流を低くすることができる。
また、第1実施形態と比較し、ステータ3により生じる磁束の向きとマグネット60の磁束の向きとの関係により、ロータ10内に配置されたマグネット60の減磁が起こりにくくなる。
【0078】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7に示すように、第1実施形態と比較し、本実施形態のロータ10では、4つのフラックスバリア部群130の第1マグネット61b、62bの磁極の向きが周方向において反転している。
すなわち、第4フラックスバリア部群130Dと第1フラックスバリア部群130Aとの間の磁極部Pを挟んで配置される6つのマグネット60のうち、第2マグネット62cの磁極の向きB22と、第1マグネット61bの磁極の向きB11とが周方向に互いに対向する方向を向いている。
第2フラックスバリア部群130Bと第3フラックスバリア部群130Cとの間の磁極部Pを挟んで配置されている6つのマグネット62c、61bの磁極の向きについてもそれぞれ同様に磁極の向きB22、B11が周方向に互いに対向する方向を向いている。
【0079】
また、第1フラックスバリア部群130Aと第2フラックスバリア部群130Bとの間の磁極部Pを挟んで配置される6つのマグネット60のうち、第2マグネット61cの磁極の向きB12と、第1マグネット62bの磁極の向きB21とが周方向に互いに対向する方向を向いている。
第3フラックスバリア部群130Cと第4フラックスバリア部群130Dとの間の磁極部Pを挟んで配置されている6つのマグネット61c、62bの磁極の向きについてもそれぞれ同様に磁極の向きB12、B21が周方向に互いに対向する方向を向いている。
【0080】
これにより、ロータ10を回転させた際の効率およびトルクを向上することができる。また、定格速度でロータ10が回転する通常運転時のステータ3の電流を低くすることができる。
また、第1実施形態と比較し、ステータ3により生じる磁束の向きとマグネット60の磁束の向きとの関係により、ロータ10内に配置されたマグネット60の減磁が起こりにくくなる。
【0081】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態について説明するが、第1実施形態および第2実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図8に示すように、第2実施形態と比較し、ロータコア20において、第1フラックスバリア部31よりも径方向外側の磁路MP設けられていない。すなわち、第1フラックスバリア部31はロータコア20の外周面に開口している。
これにより、ロータ10を回転させた際の効率およびトルクを向上させることができる。また、定格速度でロータ10が回転する通常運転時のステータ3の電流を低くすることができる。
また、第1実施形態と比較し、ステータ3により生じる磁束の向きとマグネット60の磁束の向きとの関係により、ロータ10内に配置されたマグネット60の減磁が起こりにくくなる。
【実施例0082】
以下、具体的な実施例を用いて、上記実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0083】
マグネット60の配置、およびフラックスバリア部30の形状を異ならせたロータを有する回転電機において、ロータにおける銅損、ロータの通常回転時におけるステータの動作電流、ロータの同期回転可能な最大トルク、およびロータの起動時のトルクを比較した。
以下の説明において、実施例1のロータは図5に示す第1実施形態のロータ10であり、実施例2のロータは図6に示す第2実施形態のロータ10であり、実施例3のロータは図7に示す第3実施形態のロータ10であり、実施例4のロータは図8に示す第4実施形態のロータ10であり、比較例1のロータは図11に示されるロータ100である。なお、実施例1~4の環状導電部50のRoerおよびRierは互いに同等である。
【0084】
<ロータの銅損>
比較例1と比較し、実施例1~4のロータ10の銅損は低くなっていた。これは、比較例1の環状導電部500よりも、実施例1~4の環状導電部50の外径が小さくなったためである。例えば、実施例1のロータの銅損は比較例1の約半分となった。
実施例1~4のうち、実施例2では、実施例1、3および4と比較しロータ10の銅損が大きかった。実施例2の銅損が実施例1および4よりも大きい理由は、実施例2では第2端部30f2に導電体40が配置されているためと考えられる。実施例2では、ロータ10の外周縁部まで導電体40が配置されており、ステータ3により生じた磁束が導電体40に効果的に流れた。このため、実施例2では、ロータ10の外周縁部に配置された導電体40における電磁誘導により、実施例1、および3よりも大きな誘導電流が生じ、銅損が大きくなっていた。
【0085】
実施例4では、実施例2と同様に、ロータ10の外周縁部に導電体40が配置されているが、実施例4のロータ10の銅損は、実施例1、2および3よりも小さかった。これは、実施例4では第1フラックスバリア部31が開口しており、リラクタンスの異方性がより高まり、電磁誘導により生じる誘導電流が少なくなったためと考えられる。
なお、実施例2のロータの銅損は、実施例1、3、および4よりも大きくなっているが、比較例1よりも低かった。これは、比較例2の環状導電部50の外径が比較例1よりも小さいことによる効果であると考えられる。
【0086】
<定格動作電流>
実施例1~4では、比較例1と比較し、ロータの通常回転時におけるステータの動作電流である定格動作電流は同等以下となった。特に、実施例2、3および4では、比較例1と比較し、好適にロータ10の通常回転時におけるステータの動作電流が低減された。
これは、マグネット60をロータコア20の外周縁部に配置させることにより、リラクタンストルクとマグネットトルクとの合成トルクを好適に向上させることができたためである。これにより、実施例1~4では回転電機1の効率を向上できることがわかる。
【0087】
<ロータの最大同期トルク>
実施例1~4では、比較例1と比較し、ロータの同期回転可能な最大トルクが同等以上となった。特に、実施例2、3および4では最大動機トルクの大きな向上があった。これは、上述のように、実施例1~4で合成トルクを好適に向上できたためであると考えられる。
【0088】
<ロータの起動時の性能>
実施例1~4では起動時の性能が比較例1よりも劣る場合があった。これは、実施例1~4では、ロータ10の外周縁部に配置された導電体40の量が比較例1よりも少ないため、起動時に生じるローレンツ力が小さくなるためであると考えられる。
ここで、ロータの起動時の性能は、公知の起動時のロータの回転を制御する構成を用いることで高めることができる。起動時のロータの回転を制御する構成としては、VFドライブ(Variable-Frequency drive)等が挙げられる。例えば、実施例1~4では、VFドライブを用いることで、ロータ10の起動時の性能を高めつつ、定格速度となる通常回転時には、比較例1と比較し格別に効率を高めることもできる。
【0089】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成を採用することもできる。
【0090】
例えば、図6に示すロータ10では、第1端部30f1に配置された第1領域R1のみにマグネット60が配置されていたが、この例に限られない。
例えば、第2端部30f2に配置された第2領域R2のみにマグネット60が配置され、第1端部30f1にマグネット60が配置されていなくてもよい。これにより、+θ側へ回転する際の効率を高めることができる。
【0091】
また、各フラックスバリア部群130が有するフラックスバリア部30の数は、4つに限られず、2つのフラックスバリア部30を有していればよい。例えば、各フラックスバリア部群130が有するフラックスバリア部30の数は、2つ、3つ、または4つ以上であってもよい。
例えば、図9に示すロータコア20では、各フラックスバリア部群130の有するフラックスバリア部30の数は、3つである。
【0092】
また、図3に示すロータ10では、フラックスバリア部群130のうち、導電体40が配置されていないフラックスバリア部30の数は1つのみであったが、2つ以上であってもよい。また、導電体40が配置されていないフラックスバリア部30が設けられていなくてもよい。
例えば、図9に示すように、径方向で最も外側の第1フラックスバリア部31に導電体40が配置されていてもよい。図9に示すロータ10では、すべてのフラックスバリア部30内の少なくとも一部に導電体40が配置され、導電体40同士は、Rocb<Roer<Rorを満たす寸法の環状導電部50により電気的に接続される。なお、内部に導電体40が配置されたフラックスバリア部30のうち径方向において最も外側に配置されたフラックスバリア部は第1フラックスバリア部31となるため、最短距離Rocbは中心軸線Jから第1フラックスバリア部31までの最短距離となる。
これにより、フラックスバリア部30に配置される導電体40の量が多くなるため、より大きなローレンツ力を得ることができ、起動時の性能を向上させることができる。
【0093】
さらに、図9に示すロータ10のように、導電体40が配置された第1フラックスバリア部31の両端部30fに領域Rが設けられ、マグネット60が配置されていてもよい。
なお、図9に示すロータ10において、第1フラックスバリア部31に領域Rおよびマグネット60は配置されず、第1フラックスバリア部31内は空隙なく導電体40が充填されていてもよい。
【0094】
また、ロータコア20の磁極部Pの数は4極に限られず、4極よりも少なくてもよいし、4極より多くてもよい。ロータ10の磁極部Pの数は、例えば、2極、6極、または8極であってもよい。
図9に、6極構造のロータ10を示す。6組のフラックスバリア部群130はロータ10の周方向に沿って等間隔に並べられている。周方向で隣り合うフラックスバリア部群130同士の間に、磁極部Pが設けられるため、図5に示すロータ10では6極の磁極部Pが設けられている。
【0095】
また、図3に示すロータ10では、フラックスバリア部群130において、第1フラックスバリア部31にブリッジ部30gが設けられておらず、その他のフラックスバリア部30にそれぞれ1つのブリッジ部30gが設けられているが、この例に限られない。
例えば、第1フラックスバリア部31にブリッジ部30gが設けられていてもよい。第2フラックスバリア部32、第3フラックスバリア部33および第4フラックスバリア部34のうち、いずれか1つのみにブリッジ部30gが設けられていてもよい。各フラックスバリア部30に設けられるブリッジ部30gの数は1つに限られず2つ以上であってもよい。また、q軸上以外の位置にブリッジ部30gが配置されていてもよい。
なお、各フラックスバリア部30において、ブリッジ部30gにより分断された導電体40同士は環状導電部50にそれぞれ電気的に接続されるよう環状導電部50の寸法を調整することが好ましい。
【0096】
また、図9に示すように、フラックスバリア部30にブリッジ部30gが設けられていなくてもよい。
例えば、導電体40がブリッジ部30gにより電気的に分断された場合、ロータ10に発生するローレンツ力が好適に得られない場合がある。ブリッジ部30gを設けないことで、ローレンツ力を好適に得ることが可能になる。特に、フラックスバリア部群130において、径方向外側に位置するフラックスバリア部30にブリッジ部30gを設けないことで、より好適にローレンツ力を得ることが可能になる。
【0097】
また、図3に示されるロータ10では、複数のフラックスバリア部30の形状は、軸方向に見て径方向内側に凸となる折れ線状となっているが、この例に限られず、軸方向に見て円径方向内側に凸となる円弧状となっていてもよい。また、1組のフラックスバリア部群130において、円弧状のフラックスバリア部30と折れ線状のフラックスバリア部30との両方が含まれていてもよい。また、少なくともマグネット60を配置する部分のみ、フラックスバリア部30が延伸方向に向かって直線状に延びていてもよい。
【0098】
また、ロータ10は、フラックスバリア部30内に位置するマグネット60を備えていなくてもよい。例えば、領域Rにはマグネット60が配置されず、空隙部となっていてもよい。
【0099】
また、マグネット60の配置される位置は、フラックスバリア部30の端部30fに限られない。例えば図10に示すように、第1フラックスバリア部31以外のフラックスバリア部30の直線部30a内に、マグネット60が設けられていてもよい。図10に示すロータ10では、q軸と重なる位置に設けられたブリッジ部30gを挟んで2つのマグネット60が配置されている。マグネット60の磁極の向きは径方向または延伸方向を向いている。
この場合においても、マグネットの磁力により、ロータ10のトルクを向上させつつ、環状導電部50の外径が小さくなることで、ロータ10の銅損を低減することができる。
【0100】
図3に示すロータ10では、軸方向に見て、マグネット60の幅方向の両側面は、フラックスバリア部30の第1縁部30e1および第2縁部30e2とそれぞれ接触しているが、この例に限られない。マグネット60の幅方向の側面とフラックスバリア部30の縁部30e1、30e2との間に導電体40が配置されていてもよい。
例えば、フラックスバリア部30内にマグネット60を配置した後に溶融した導電体40がフラックスバリア部30内に充填されることでマグネット60の位置が固定されてもよい。
【0101】
また、フラックスバリア部30は、ロータコア20を軸方向に貫通しなくてもよい。フラックスバリア部30は、ロータコア20の軸方向の端面に開口していてもよい。
【0102】
フラックスバリア部30は、磁束の流れを抑制できるならば、特に限定されない。上述した実施形態においてフラックスバリア部30内の領域R以外の位置に導電体40を配置した構成としたが、導電体40が配置されたフラックスバリア部30内の一部を空隙部としてもよい。また、空隙部に樹脂等の非磁性体が埋め込まれることで、フラックスバリア部30が構成されてもよい。
【0103】
本発明が適用される回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、例えば、車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。以上、本明細書において説明した構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0104】
1…回転電機、3…ステータ、10…ロータ、20…ロータコア、20a…貫通孔、30…フラックスバリア部、30e1…第1縁部、30e2…第2縁部、30f…フラックスバリア部の延伸方向の端部、30g…ブリッジ部、40…導電体、50…環状導電部、60…マグネット、130…フラックスバリア部群、J…中心軸線
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11