(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144511
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】配管用カバー
(51)【国際特許分類】
E03F 3/06 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
E03F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051519
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】高井 裕都
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA02
2D063BA15
2D063BA16
2D063BA32
(57)【要約】
【課題】外気に対して開放された所定形状の2つの配管を連結する連結部において、配管内を流れる液体の飛沫が連結部分から周囲に飛散することを防ぐことができる配管用カバーを提供する。
【解決手段】上方向に開口する上部開口部を備えた鉛直方向に延びる第1配管を配置し、前記上部開口部と略同一高さの略水平方向に配置された第2配管の下流末端に下方に屈曲する屈曲部を設け、該屈曲部の先端を前記第1配管の上部開口部に上方から挿入して連結した連結部に取り付けるための配管用カバー1であって、底面に第1配管と連通する底面開口部1aと、側面に前記第2配管の水平部分を挿通する側面開口部1bと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる流路を有する第1配管と、水平方向に延びる流路を有する第2配管と、を有する排水経路において、前記第1配管と前記第2配管とが外気に対して開放された状態で連結される連結部に配置される配管用カバーであって、
前記第1配管は上部開口部を備え、
前記第2配管は下流末端に屈曲部を備え、
前記配管用カバーは、側面開口部と、底面開口部と、を備える配管用カバー。
【請求項2】
上下に開口する筒状体の側面に前記側面開口部を備える請求項1記載の配管用カバー。
【請求項3】
前記側面開口部の中心軸と前記筒状体の中心軸を含む仮想平面の位置で分割可能とした請求項2記載の配管用カバー。
【請求項4】
前記排水経路に塩素濃度計を設置した請求項1乃至3のいずれかに記載の配管用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の連結部分に取り付け、配管を流れる液体の飛沫が連結部分から周囲に飛散することを防ぐための配管用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力および火力発電所では、冷却水として海水を利用している。海から海水を取り入れて復水器に供給する取水路の内部や、復水器を通った海水を海へ放出するための放水路の内部に、フジツボ類やイガイ類をはじめとする貝などの海中生物が付着し易い。海中生物の付着量が多くなると、海水の流路が塞がれて冷却性能が低下するなどの不具合を招くおそれがある。
【0003】
このような海中生物の付着による弊害への対策として、海水には次亜塩素酸ナトリウムや二酸化塩素などの塩素系薬剤を注入するが、塩素注入量の調整は、一般的に放水口残留塩素濃度で決定するため、放水口でのサンプリングにより塩素濃度を計測し環境への放出量を監視している。そして、サンプリングされた海水は、計測後に排水経路を通して放水するための放水路に戻すが、排水経路内の圧力は、排水経路に繋がる経路内に配置された塩素濃度計による塩素濃度の計測に影響しないよう大気圧とする必要がある。
【0004】
このため排水経路には、鉛直方向に延びる第1配管の上部開口部に、水平方向に延びる第2配管の末端に設けた屈曲部の先端を上方から挿入した構造の連結部を設け、第2配管から第1配管へ海水を流すとともに、かかる連結部を外気に対して開放し排水経路内の圧力を大気圧に保持している。
【0005】
しかしながら、排水する海水量が多くなると、第2配管から第1配管に流れ込む海水の勢いが強まり、第1配管の上部開口部から海水の飛沫が周囲へ飛散することとなる。そして、このような海水の飛沫は、周囲に配置する種々の設備を汚し正常な稼働を阻害する。また、海水の飛沫が乾燥すると、塩が析出して第1配管の上部開口部を塞ぎ、空気の取り入れを困難とするため、排水経路内の圧力に変動が生じ、塩素濃度の計測に弊害が生じる恐れもある。
【0006】
このため、第1配管と第2配管を連結する連結部に取り付け、配管内を流れる海水の飛沫が連結部分から周囲に飛散することを防ぐことができる配管用カバーの開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、外気に対して開放されている所定形状の2つの配管を連結する連結部において、配管内を流れる液体の飛沫が連結部分から周囲に飛散することを防ぐことができる配管用カバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者が検討を行った結果、上方向に開口する上部開口部を備えた鉛直方向に延びる第1配管を配置し、前記上部開口部と略同一高さの略水平方向に配置された第2配管の下流末端に下方に屈曲する屈曲部を設け、かかる屈曲部の先端を前記第1配管の上部開口部に上方から挿入して連結した連結部に、底面に第1配管と連通する底面開口部を設け、側面に前記第2配管の水平部分を挿通する側面開口部を設けた配管用カバーを設置することにより、海水の飛沫が飛散することを効果的に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、鉛直方向に延びる流路を有する第1配管と、水平方向に延びる流路を有する第2配管と、を有する排水経路において、前記第1配管と前記第2配管とが外気に対して開放された状態で連結される連結部に配置される配管用カバーであって、
前記第1配管は上部開口部を備え、
前記第2配管は下流末端に屈曲部を備え、
前記配管用カバーは、側面開口部と、底面開口部と、を備える配管用カバーである。
【0011】
さらに本発明は、上下に開口する筒状体の側面に側面開口部を備えた配管用カバーである。
【0012】
さらに本発明は、前記側面開口部の中心軸と前記筒状体の中心軸を含む仮想平面の位置で分割可能とした配管用カバーである。
【0013】
さらに本発明は、前記排水経路に塩素濃度計を設置した配管用カバーである。
【発明の効果】
【0014】
外気に対して開放された所定形状の2つの配管を連結した連結部に、本発明の配管用カバー取り付けると、外気に対して開放されていながら配管内を流れる液体の飛沫が連結部から周囲に飛散することを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】連結部に設置した配管用カバーの状態を示す図である。
【
図3】連結部に設置した配管用カバーの状態を示す図(
図2を異なる角度から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の配管用カバーについて説明する。ただし、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0017】
配管用カバー(1)は、鉛直方向に延びる第1配管(2)の上端に設けられた上方向に開口する上部開口部(2a)に、当該上部開口部と略同一高さの略水平方向に配置された第2配管(3)の下流末端に設けた下方に屈曲する屈曲部(3a)の先端(3c)を挿入することにより形成された連結部(4)に取り付けられる(
図2)。
【0018】
原子力および火力発電所において、第1配管と第2配管は、塩素濃度の計測のためサンプリングした海水を放水路に戻すための排水経路として使用することができる。海水は、第2配管から第1配管に流れる。第2配管(3)の屈曲部(3a)の先端(3c)を第1配管(2)の上部開口部(2a)に挿入する構造により、外気に対して開放され、第1配管と第2配管の内部は大気圧となり、第2配管につづく経路内に配置された塩素濃度計(5)による残留塩素濃度の計測を正確に行うことができる。
【0019】
第1配管(2)の上部開口部(2a)は、例えば、一時的に海水を溜める大径のドレンポットのような構造を備えてもよい。上部開口部にドレンポットのような構造を備える場合には、第2配管から流れ込む海水の飛沫が発生し易くなるため、配管用カバーを取り付けることによる効果がより顕著となる。
【0020】
配管用カバー(1)は、底面に第1配管と連通する底面開口部(1a)と、側面に第2配管の水平部分を挿通する側面開口部(1b)と、を備えている(
図1)。配管用カバーは、底面開口部(1a)を第1配管の上部開口部(2a)に接続するように配置することにより第1配管と連通することができる。配管用カバーの底面開口部(1a)の内径と第1配管の上部開口部(2a)の内径が略同一の場合には、配管用カバーを上部開口部(2a)の周縁上に載置することができる。
【0021】
配管用カバー(1)と上部開口部(2a)の間にはシリコン樹脂やエポキシ樹脂を成分とする充填剤を充填することが好ましい。充填剤を用いることにより、配管用カバーを連結部(4)に固定するとともに、配管用カバー(1)と上部開口部(2a)との隙間から液体の飛沫が散乱することを確実に防ぐことが可能となる。
【0022】
配管用カバーの材質は、特に限定されるものではないが、液体あるいは液体に含まれる成分、特に、海水に含まれる塩分による腐食を避けるため、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどの合成樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
底面開口部(1a)の内径と上部開口部(2a)の内径が異なる場合には、内径差から生じる隙間から液体の飛沫が散乱する危険性があるため、このような隙間は、充填剤などを用いて閉塞することが好ましい。また、内径差がある場合、例えば、配管用カバー(1)の外径が、上部開口部(2a)の内径と同一であるか、あるいは若干小さい場合には、配管用カバーの下端を上部開口部(2a)に挿入して取り付けることができ、逆に、上部開口部(2a)の外径が、底面開口部(1a)の内径と同一であるか、あるいは若干小さい場合には、上部開口部(2a)を底面開口部(1a)に挿入して取り付けることができる。この場合にも、隙間があれば、充填剤を用いて隙間を埋めることが好ましい。
【0024】
配管用カバー(1)には、側面に前記第2配管の水平部分を挿通する側面開口部(1b)を備えており、かかる側面開口部に第2配管の水平部分が挿通される。第2配管の下流末端に設けられた屈曲部(3a)は、配管用カバーの内部を下方に延び、その先端(3c)が第1配管(2)の上部開口部(2a)に挿入される。なお、第2配管の屈曲部は、第2配管と一体的に形成することができるが、第2配管の下流末端に略L字状の配管、所謂エルボ管を取り付けることにより形成することもできる。エルボ管を用いる場合には、第2配管の水平部分と連続するエルボ管の水平部分も第2配管の水平部分として見ることができる。
【0025】
配管用カバーの側面開口部(1b)の内径は、第2配管との間に生じる隙間を小さくするよう第2配管の外径と同一か、やや大きくすることが好適であるが、ここに隙間が生じる場合には、充填剤を充填し、穴埋めすることが好ましい。
【0026】
図1には、天面に天面開口部(1c)を設けた態様の配管用カバー(1)を示す。このような天面開口部(1c)を設けることにより、上方を外気に開放し、配管内の気圧を大気圧に維持することが可能となる。また天面開口部(1c)には、第2配管とは別の配管を挿入することができ、第1配管に連結すべき配管を適宜追加することができる。
【0027】
このような配管用カバー(1)は、上下に開口する筒状体とし、かかる筒状体の側面に、第2配管(3)の水平部分を挿通する側面開口部(1b)を備えた形態とすることができる(
図1)。筒状体は、特に限定されるものではないが、円筒状にすると強度にすぐれるため好ましい。
【0028】
ただし、天面開口部(1c)は、その代用として配管用カバーの側面などに開口部を追加して設けることも可能であるため、配管用カバーにおいて天面開口部は必ずしも設ける必要はない。
【0029】
配管用カバー(1)は、側面開口部の中心軸と筒状体の中心軸を含む仮想平面の位置で2分割できる構造としてもよい。このように2分割できる配管用カバーは、第1配管と第2配管の連結部(4)に取り付ける際、第2配管(3)の水平部分が側面開口部(1b)に収まるように左右から挟むようにして取り付けることができる(
図2)。
【0030】
このように連結部に取り付けた2分割可能な配管用カバーは、取り付け後に分割し脱落することが無いよう紐や結束バンドなどの締結部材で周囲を締め付け固定することが好ましい(図示していない)。
【0031】
また、このような2分割可能な配管用カバー(1)は、連結部(4)から簡単に取り外すことができるため、連結部の清掃が容易となる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 配管用カバー
1a 底面開口部
1b 側面開口部
1c 天面開口部
2 第1配管
2a 上部開口部
3 第2配管
3a 屈曲部
3c 先端
4 連結部
5 塩素濃度計