(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144514
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】攪拌方法及び攪拌装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/96 20220101AFI20231003BHJP
B01F 27/072 20220101ALI20231003BHJP
B01F 27/81 20220101ALI20231003BHJP
B01F 23/43 20220101ALI20231003BHJP
B01F 35/222 20220101ALI20231003BHJP
B01F 23/47 20220101ALI20231003BHJP
B01F 35/42 20220101ALI20231003BHJP
【FI】
B01F27/96
B01F27/072
B01F27/81
B01F23/43
B01F35/222
B01F23/47
B01F35/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051525
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 靖直
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G035AB38
4G035AB41
4G035AE01
4G037DA21
4G037EA04
4G078AA02
4G078BA05
4G078BA09
4G078CA10
4G078DB10
4G078DC06
(57)【要約】
【課題】攪拌槽内の液体を十分に攪拌する。
【解決手段】本開示は、攪拌槽1内の所定の液面高さHの液体を攪拌する攪拌方法であって、下側の攪拌体13は、下側へ開口する吸込口18と、径方向の外側へ開口する吐出口19と、吸込口18と吐出口19とを連通する流通路とを有し、上側の攪拌体12は、上側へ開口する吸込口26と、径方向の外側へ開口する吐出口27と、吸込口26と吐出口27とを連通する流通路とを有し、当該攪拌方法は、下側の攪拌体13の吸込口18を攪拌槽1の底1aから上方へ離間させ、攪拌槽1の底1aから吐出口19の上下方向の中心までの第1高さh1を液面高さHの3/24以上とし、上側の攪拌体12の吸込口26を液面Lから下方へ離間させ、攪拌槽1の底1aから吐出口27の上下方向の中心までの第2高さh2を液面高さHの16.5/24以下とした状態で、上下の攪拌体12,13を回転させて攪拌槽1内の液体を攪拌する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌装置によって攪拌槽内の所定の液面高さの液体を攪拌する攪拌方法であって、
前記攪拌装置は、
上下方向に延びる回転軸と、
前記回転軸に支持される少なくとも上下2つの攪拌体と、を備え、
前記上下の攪拌体のうち下側の攪拌体は、下側へ開口する第1吸込口と、前記回転軸を中心とした径方向の外側へ向かって開口する第1吐出口と、前記第1吸込口と前記第1吐出口とを連通する第1流通路とを有し、前記回転軸の下端部に支持され、
前記上下の攪拌体のうち上側の攪拌体は、上側へ開口する第2吸込口と、前記径方向の外側へ向かって開口する第2吐出口と、前記第2吸込口と前記第2吐出口とを連通する第2流通路とを有し、前記回転軸に支持され、
当該攪拌方法は、
前記下側の攪拌体の前記第1吸込口を前記攪拌槽の底から上方へ離間させ、前記攪拌槽の底から前記第1吐出口の上下方向の中心までの第1高さを前記液面高さの3/24以上とし、前記上側の攪拌体の前記第2吸込口を液面から下方へ離間させ、前記攪拌槽の底から前記第2吐出口の上下方向の中心までの第2高さを前記液面高さの16.5/24以下とした状態で、前記回転軸を介して前記上下の攪拌体を回転させて前記攪拌槽内の液体を攪拌する
ことを特徴とする攪拌方法。
【請求項2】
前記第1高さを前記液面高さの7.5/24以下とする
ことを特徴とする請求項1に記載の攪拌方法。
【請求項3】
前記第2高さを前記液面高さの12/24以上とする
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の攪拌方法。
【請求項4】
所定方向に延びる回転軸と、
前記回転軸に支持される少なくとも2つの攪拌体と、を備え、
前記2つの攪拌体のうち前記所定方向の一側の攪拌体は、前記一側へ開口する第1吸込口と、前記回転軸を中心とした径方向の外側へ向かって開口する第1吐出口と、前記第1吸込口と前記第1吐出口とを連通する第1流通路とを有し、前記回転軸の前記一側の端部に支持され、
前記2つの攪拌体のうち前記所定方向の他側の攪拌体は、前記他側へ開口する第2吸込口と、前記径方向の外側へ向かって開口する第2吐出口と、前記第2吸込口と前記第2吐出口とを連通する第2流通路とを有し、前記回転軸に対する前記所定方向の設置位置を調節可能に、前記回転軸に支持される
ことを特徴とする攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘性流体等の各種流体を攪拌し、混合、溶解、分散等の処理を行う攪拌方法及び攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの攪拌用回転体を一体的に連結した攪拌装置が記載されている。この攪拌装置の攪拌用回転体は、略半球状の本体と、本体の表面に設けられた複数の吸入口と、本体の表面に設けられた複数の吐出口と、吸入口と吐出口を繋ぐように本体の内部に形成された流通路から構成されている。吸入口は、駆動装置の駆動軸側、及び駆動軸が接続される本体の接続部の反対側の底面に設けられている。吐出口は、本体の側面に設けられている。流体中に攪拌用回転体を浸漬して回転させると、流通路内の流体が吐出口から噴出すると共に、外部の流体が吸入口から流通路内に吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の攪拌装置では、2つの攪拌用回転体を一体的に連結しているので、容器(攪拌槽)内の液体に対して各攪拌用回転体を適切な高さ位置に配置することが難しい。このため、攪拌槽内の液面の高さによっては、液体の底部側又は液面側の液体の流動が生じ難くなってしまい、液体を十分に混合するための混合時間が長期化し、あるいは液体を十分に混合できない可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、混合時間の短縮と攪拌槽内の液体の十分な攪拌とを両立することが可能な攪拌方法及び攪拌装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、攪拌装置によって攪拌槽内の所定の液面高さの液体を攪拌する攪拌方法であって、前記攪拌装置は、上下方向に延びる回転軸と、前記回転軸に支持される少なくとも上下2つの攪拌体と、を備え、前記上下の攪拌体のうち下側の攪拌体は、下側へ開口する第1吸込口と、前記回転軸を中心とした径方向の外側へ向かって開口する第1吐出口と、前記第1吸込口と前記第1吐出口とを連通する第1流通路とを有し、前記回転軸の下端部に支持され、前記上下の攪拌体のうち上側の攪拌体は、上側へ開口する第2吸込口と、前記径方向の外側へ向かって開口する第2吐出口と、前記第2吸込口と前記第2吐出口とを連通する第2流通路とを有し、前記回転軸に支持され、当該攪拌方法は、前記下側の攪拌体の前記第1吸込口を前記攪拌槽の底から上方へ離間させ、前記攪拌槽の底から前記第1吐出口の上下方向の中心までの第1高さを前記液面高さの3/24以上とし、前記上側の攪拌体の前記第2吸込口を液面から下方へ離間させ、前記攪拌槽の底から前記第2吐出口の上下方向の中心までの第2高さを前記液面高さの16.5/24以下とした状態で、前記回転軸を介して前記上下の攪拌体を回転させて前記攪拌槽内の液体を攪拌する。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の攪拌方法であって、前記第1高さを前記液面高さの7.5/24以下とする。
【0008】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様の攪拌方法であって、前記第2高さを前記液面高さの12/24以上とする。
【0009】
本発明の第4の態様は、攪拌装置であって、所定方向に延びる回転軸と、前記回転軸に支持される少なくとも2つの攪拌体と、を備え、前記2つの攪拌体のうち前記所定方向の一側の攪拌体は、前記一側へ開口する第1吸込口と、前記回転軸を中心とした径方向の外側へ向かって開口する第1吐出口と、前記第1吸込口と前記第1吐出口とを連通する第1流通路とを有し、前記回転軸の前記一側の端部に支持され、前記2つの攪拌体のうち前記所定方向の他側の攪拌体は、前記他側へ開口する第2吸込口と、前記径方向の外側へ向かって開口する第2吐出口と、前記第2吸込口と前記第2吐出口とを連通する第2流通路とを有し、前記回転軸に対する前記所定方向の設置位置を調節可能に、前記回転軸に支持される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、混合時間の短縮と攪拌槽内の液体の十分な攪拌とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る攪拌方法及び攪拌装置を使用している状態を示す説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る攪拌方法の説明図である。
【
図7】攪拌装置及び攪拌方法の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、UPは上方を、INは径方向の内側をそれぞれ示す。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る攪拌方法及び攪拌装置10を使用している状態を示す説明図である。
図2は、下側の攪拌体13の斜視図である。
図3は、下側の攪拌体13の底面図である。
図4は、
図3のIV-IV矢視断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る攪拌装置10は、攪拌槽1内の液体(流体)の攪拌に使用される。攪拌装置10は、所定方向に延びる回転軸11と、回転軸11に支持される上下2つの攪拌体(遠心攪拌体)12,13と、を備える。
【0015】
回転軸11は、上下の攪拌体12,13を回転させるためのシャフトであって、所定方向に直線状に延びる。
図1には、攪拌装置10を使用している状態(以下、「使用状態」という。)が図示されており、使用状態では回転軸11は上下方向(所定方向)に延びる。回転軸11は、上部側に設けられた駆動装置14によって回転可能となっている。回転軸11の材料、断面形状、及び長さは、特に限定されるものではない。
【0016】
上下の攪拌体12,13は、攪拌槽1内の液体を攪拌するための部材であって、回転軸11に支持され、回転軸11と共に回転する。
【0017】
図2~
図4に示すように、下側(所定方向の一側)の攪拌体(一側の攪拌体)13は、回転軸11の軸方向と交叉する方向の断面の外形が円形状に形成された下側の太径部13aと、太径部13aよりも小径の円形状に形成された上側の細径部13bとを一体的に有する。太径部13aと細径部13bとは互いに同軸に配置される。太径部13a及び細径部13bの中心部には、上下方向に貫通する軸挿通孔15が形成される。
【0018】
下側の攪拌体13の細径部13bには、径方向に沿って延びて軸挿通孔15と外部とを連通するネジ挿通孔16が形成される。ネジ挿通孔16の内周面には、雌ネジ(図示省略)が形成されている。下側の攪拌体13の軸挿通孔15には、回転軸11の下端部(一側の端部)11aが挿入される。下側の攪拌体13は、ネジ挿通孔16に挿入されたイモネジ17の締め付けによって、回転軸11の下端部11aに固定される。イモネジ17を緩めると、下側の攪拌体13を回転軸11から取り外すことができる。すなわち、本実施形態では、下側の攪拌体13は、回転軸11に対して着脱可能に支持されている。
【0019】
なお、本実施形態では、下側の攪拌体13を回転軸11に対して着脱可能としたが、これに限定されるものではなく、下側の攪拌体13を回転軸11に対して、例えば溶接等によって着脱不能に固定してもよい。また、本実施形態では、下側の攪拌体13をイモネジ17によって回転軸11に固定したが、これに限定されるものではない。例えば、回転軸11の下端部11a及び下側の攪拌体13の軸挿通孔15を下方へ先細りするテーパ状に形成し、下側の攪拌体13を回転軸11に対して上方へ押し付けるように、ボルト又はナット等によって下方から固定してもよい。あるいは、フリクションジョイント等によって、回転軸11と下側の攪拌体13とを相対回転不能に固定してもよい。また、回転軸11の外周面及び下側の攪拌体13の軸挿通孔15の内周面の一方に軸方向に延びる凸部を設け、他方に軸方向に延びる凹部を設け、凸部と凹部とを互いに係止することによって、回転軸11に対する下側の攪拌体13の回転を規制してもよい。
【0020】
下側の攪拌体13の太径部13aは、下側へ開口する吸込口(第1吸込口)18と、径方向の外側へ開口する複数(本実施形態では6つ)の吐出口(第1吐出口)19と、吸込口18と各吐出口19とを連通する流通路(第1流通路)20とを有する。太径部13aは、太径部13aの外周縁部から下方へ延びる複数(本実施形態では6つ)の足部131aを有する。本実施形態の足部131aは、中心に向かう角部を有する断面略三角形状に形成され、太径部13aの周方向に等間隔で配置され、上下方向に延びる。吸込口18は、複数の足部131aの径方向の内側に位置し、下側の攪拌体13の下面21(太径部13aの下面)の中央部に配置される。すなわち、下側の攪拌体13の下面21のうち複数の足部131aに囲まれる領域(
図3の二点鎖線の内側の領域。)が吸込口18となる。吸込口18の上方には、吸込口18から連続して上方へ延びる中央空間22が形成される。軸挿通孔15の下端は、中央空間22へ連通している。複数の吐出口19は、それぞれ略同じ形状であって、径方向の外側から視た状態で上下に長い矩形状に形成される。本実施形態の吐出口19の上下長さは、18mmに設定される。複数の吐出口19は、足部131a間の領域であって、太径部13aの外周面に周方向に等間隔で配置される。吐出口19の下端側は、下方へ開放されている。すなわち、本実施形態の吐出口19は、下側の攪拌体13の下面21側から上方へ切欠状に形成される。吐出口19の径方向の内側には、吐出口19と中央空間22とを連通する外側空間23が設けられる。外側空間23は、中央空間22から径方向の外側へ向かって放射状に延びている。中央空間22及び外側空間23は、吸込口18と各吐出口19とを連通する流通路20として機能する。本実施形態の外側空間23は、下方へ開放されている。なお、吐出口19を設ける数は、6つに限定されるものではない。
【0021】
図1に示すように、上側(所定方向の他側)の攪拌体(他側の攪拌体)12は、下側の攪拌体13よりも上方に配置され、下側の攪拌体13とは上下対称的に設けられる。
【0022】
上側の攪拌体12は、上側の太径部12aと、下側の細径部12bとを一体的に有する。太径部12a及び細径部12bの中心部には、上下方向に貫通する軸挿通孔24が形成される。
【0023】
上側の攪拌体12の細径部12bには、径方向に沿って延びて軸挿通孔24と外部とを連通するネジ挿通孔25が形成される。上側の攪拌体12の軸挿通孔24には、回転軸11が挿通している。上側の攪拌体12は、ネジ挿通孔25に挿入されたイモネジ(図示省略)の締め付けによって、回転軸11に固定される。イモネジを緩めると、上側の攪拌体12の設置位置を上下に移動させることができる。すなわち、上側の攪拌体12は、回転軸11に対する上下方向の設置位置を調節可能に、回転軸11に支持される。
【0024】
なお、上側の攪拌体12を回転軸11に対して取り付ける手段は、上記イモネジに限定されるものではなく、回転軸11に対する上側の攪拌体12の設置位置を上下に調節可能であれば、他の手段(例えば、フリクションジョイント等)であってもよい。また、回転軸11の外周面及び上側の攪拌体12の軸挿通孔24の内周面の一方に軸方向に延びる凸部を設け、他方に軸方向に延びる凹部を設け、凸部と凹部とを互いに係止することによって、回転軸11に対する上側の攪拌体12の回転を規制してもよい。
【0025】
上側の攪拌体12の太径部12aは、上側へ開口する吸込口(第2吸込口)26と、径方向の外側へ開口する複数(本実施形態では6つ)の吐出口(第2吐出口)27と、吸込口26と各吐出口27とを連通する流通路(第2流通路)28とを有する。吸込口26は、上側の攪拌体12の上面29(太径部12aの上面)の中央部に配置される。なお、上側の攪拌体12の吸込口26、吐出口27、及び流通路28は、下側の攪拌体13の吸込口18、吐出口19、及び流通路20と同様の構成を有するため、その説明を省略する。
【0026】
次に、本実施形態に係る攪拌方法を、
図5に基づいて説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る攪拌方法の説明図である。
【0027】
本実施形態に係る攪拌方法は、攪拌槽1内の所定の液面高さHの液体を攪拌するための攪拌方法である。本実施形態では、上記攪拌装置10を使用して、攪拌槽1内の所定の液面高さHの液体を攪拌する。本実施形態の攪拌槽1は、有底円筒状の攪拌槽1である。攪拌装置10の上下の攪拌体12,13の太径部12a,13aの直径(外径)rは、攪拌槽1の直径(内径)Rに応じて設定される。
【0028】
攪拌槽1内の所定の液面高さHの液体を攪拌する際には、先ず、回転軸11に対する上側の攪拌体12の上下方向の設置位置を、調節して適切な位置に設定する。この位置調節は、上下の攪拌体12,13を液体に入れる前に行ってもよいし、上下の攪拌体12,13を液体に入れて位置確認してから、液体から出して行ってもよい。回転軸11に対する上側の攪拌体12の上下方向の設置位置は、下側の攪拌体13を攪拌槽1内の所定の下部領域に配置した際に、上側の攪拌体12が攪拌槽1内の所定の上部領域に配置されるように設定される。下側の攪拌体13を配置する上記所定の下部領域は、下側の攪拌体13の吸込口18が攪拌槽1の底1aから上方へ離間し、かつ攪拌槽1の底1aから下側の攪拌体13の吐出口19の上下方向の中心a(
図4参照)までの第1高さh1が液面高さHの3/24以上となる領域である。上側の攪拌体12を配置する上記所定の上部領域は、上側の攪拌体12の吸込口26が液面Lから下方へ離間し、かつ攪拌槽1の底1aから上側の攪拌体12の吐出口27の上下方向の中心aまでの第2高さh2が液面高さHの16.5/24以下となる領域である。
【0029】
下側の攪拌体13を配置する上記所定の下部領域は、第1高さh1が液面高さHの3/24以上7.5/24以下となる領域であることが好ましい。また、上記所定の下部領域は、下側の攪拌体13の吸込口18が攪拌槽1の底1aから上方へ少なくとも19mm以上離間する領域であることが好ましい。本実施形態では、下側の攪拌体13を上記所定の下部領域の最も低い高さ位置(第1高さh1が液面高さHの3/24となる高さ位置)に配置した状態で、下側の攪拌体13の吸込口18が攪拌槽1の底1aから上方へ19mm離間する。
【0030】
上側の攪拌体12を配置する上記所定の上部領域は、第2高さh2が液面高さHの12/24以上16.5/24以下となる領域であることが好ましい。また、上記所定の上部領域は、上側の攪拌体12の吸込口26が液面Lから下方へ少なくとも47mm以上離間する領域であることが好ましい。本実施形態では、上側の攪拌体12を上記所定の上部領域の最も高い高さ位置(第2高さh1が液面高さHの16.5/24となる高さ位置)に配置した状態で、上側の攪拌体12の吸込口26が液面Lから下方へ47mm離間する。
【0031】
次に、下側の攪拌体13を上記所定の下部領域に配置し、かつ上側の攪拌体12を上記所定の上部領域に配置した状態で、回転軸11を介して上下の攪拌体12,13を回転させて攪拌槽1内の液体を攪拌する。具体的には、駆動装置14を駆動して回転軸11を回転させて、上下の攪拌体12,13を回転させる。これにより、攪拌槽1内の所定の液面高さHの液体を攪拌することができる。
【0032】
上記のように構成された攪拌装置10では、上下の攪拌体12,13の吐出口27,19が径方向の外側へ向かって開口しているので、上下の攪拌体12,13を回転させると、流通路28,20内の液体が遠心力によって吐出口27,19から径方向の外側へ吐き出される(
図5の矢印参照)。流通路28,20内の液体が吐出口27,19から径方向の外側へ吐き出されると、流通路28,20の中央空間22に負圧が発生する。下側の攪拌体13の吸込口18が下方へ開口しているので、流通路20の中央空間22に負圧が発生すると、下側の攪拌体13の吸込口18の下方に上方への渦流が発生し、吸込口18の下方の液体が吸込口18から流通路20内へ吸い込まれる(
図5の矢印参照)。また、上側の攪拌体12の吸込口26が上方へ開口しているので、流通路28の中央空間に負圧が発生すると、上側の攪拌体12の吸込口26の上方に下方への渦流が発生し、吸込口26の上方の液体が吸込口26から流通路28内へ吸い込まれる。上下の攪拌体12,13の吐出口27,19から吐き出された液体は、攪拌槽1の内周面に当たり、上下に循環する。これにより、攪拌槽1内の液体が攪拌される。
【0033】
また、下側の攪拌体13の吸込口18が下方へ開口しているので、攪拌槽1の底1a側の液体を攪拌することができる。また、上側の攪拌体12の吸込口26が上方へ開口しているので、液面L側の液体を攪拌することができる。このように、下側の攪拌体13の吸込口18が下方へ開口し、上側の攪拌体12の吸込口26が上方へ開口しているので、攪拌槽1の底1a側及び液面L側の双方を効果的に攪拌することができる。
【0034】
また、上側の攪拌体12は、回転軸11に対する上下方向の設置位置を調節可能であるので、上側の攪拌体12を、攪拌槽1内の液体の液面高さHに応じて適切な高さ位置に配置することができる。このため、上側の攪拌体12の設置位置を適切な高さ位置に設定し、混合時間の短縮と攪拌槽1内の液体の十分な攪拌とを両立することができる。
【0035】
また、上記攪拌方法では、下側の攪拌体13を、吸込口18が攪拌槽1の底1aから上方へ離間する上記所定の下部領域に配置する。このように、下側の攪拌体13の吸込口18を攪拌槽1の底1aから上方へ離間させるので、吸込口18から液体を確実に吸い込むことができる。また、下側の攪拌体13の吸込口18を攪拌槽1の底1aから上方へ少なくとも19mm以上離間させることによって、液体を吸込口18から更に効率よく吸い込むことができる。
【0036】
また、下側の攪拌体13を、攪拌槽1の底1aから吐出口19の上下方向の中心aまでの第1高さh1が液面高さHの3/24以上となる上記所定の下部領域に配置する。このように、下側の攪拌体13の吐出口19の上下方向の中心aを、攪拌槽1の底1aから液面高さHの3/24以上離間させるので、吐出口19から吐き出された液体を、攪拌槽1の内周面に当てて、バランスよく上下へ循環させることができる。また、下側の攪拌体13を、第1高さh1が液面高さHの3/24以上7.5/24以下となる上記所定の下部領域に配置することによって、吐出口19から吐き出された液体を、更にバランスよく上下へ循環させることができる。
【0037】
また、上側の攪拌体12を、吸込口26が液面Lから下方へ離間する上記所定の上部領域に配置する。このように、上側の攪拌体12の吸込口26を液面Lから下方へ離間させるので、吸込口26から液体を確実に吸い込むことができる。また、上側の攪拌体12の吸込口26を液面Lから下方へ少なくとも47mm以上離間させることによって、液体を吸込口26から更に効率よく吸い込むことができる。
【0038】
また、上側の攪拌体12を、攪拌槽1の底1aから吐出口27の上下方向の中心aまでの第2高さh2が液面高さHの16.5/24以下となる上記所定の上部領域に配置する。すなわち、上側の攪拌体12の吐出口27の上下方向の中心aを、液面Lから下方へ所定の距離(液面高さHの7.5/24の距離)離間させるので、吐出口27から吐き出された液体を、攪拌槽1の内周面に当てて、バランスよく上下へ循環させることができる。また、上側の攪拌体12を、第2高さh2が液面高さHの12/24以上16.5/24以下となる上記所定の上部領域に配置することによって、吐出口27から吐き出された液体を、更にバランスよく上下へ循環させることができる。
【0039】
したがって、本実施形態によれば、混合時間の短縮と攪拌槽1内の液体の十分な攪拌とを両立することができる。
【0040】
なお、上下の攪拌体12,13の形状は、上記の形状に限定されるものではなく、様々な形状を適用することができる。
【0041】
図6は、攪拌体の変形例を示す断面図である。なお、
図6には、下側の攪拌体13の変形例が図示されている。
【0042】
本実施形態では、上下の攪拌体12,13を、太径部12a,13aと細径部12b,13bとを有する形状としたが、これに限定されるものではなく、例えば、
図6に示すように、攪拌体13は、太径部及び細径部を有しない形状であってもよい。
【0043】
また、本実施形態では、上下の攪拌体12,13に1つの吸込口26,18を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、
図6に示すように、複数の吐出口19に対応する複数の吸込口18を設けてもよい。この場合、複数の吐出口19及び吸込口18に対応する複数の流通路20を設けてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、上下の攪拌体12,13の吐出口27,19を切欠状に形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、
図6に示すように、吐出口19を全周域が区画された形状としてもよい。
【0045】
図7は、攪拌方法及び攪拌装置10の変形例を示す説明図である。
【0046】
本実施形態では、攪拌装置10に上下2つの攪拌体12,13を設けたが、少なくとも上下2つの攪拌体12,13を設けていればよく、例えば、
図7に示すように、上下の攪拌体12,13の間に1つ又は複数の他の攪拌体30を設けてもよい。この場合、最下部の攪拌体13を上記所定の下部領域に配置し、最上部の攪拌体12を上記所定の上部領域に配置する。なお、
図7には、上下の攪拌体12,13の間に1つの他の攪拌体30を設けた状態を図示しているが、複数の他の攪拌体30を設けてもよい。また、
図7には、下方へ開口する吸込口31を有する他の攪拌体30を図示しているが、上下の攪拌体12,13の間に上方へ開口する吸込口を有する他の攪拌体30を設けてもよい。
【0047】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【実施例0048】
実施例1から実施例8、比較例1から比較例7の攪拌方法によって攪拌槽内の液体を攪拌し、攪拌能力を評価した。
【0049】
攪拌槽は、直径(内径)Rが153mmの有底円筒状のガラス製の攪拌槽とした。攪拌槽内にヨウ化カリウム水溶液で着色した水飴水溶液を入れ、チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加した。このときの攪拌槽の底から液面までの高さを、液面高さHとした。攪拌装置の上下の攪拌体は、直径(外径)rが48mmの攪拌体とした。そして、攪拌時の脱色反応の様子から攪拌槽内の流動状態を目視で観察し、液全体で脱色が完了した時間(均一混合が完了するまでの時間)を混合完了時間として測定し、混合完了時間に基づいて攪拌能力を評価した。
【0050】
「混合時間からの評価(攪拌能力の評価)」は、混合完了時間(sec)に基づいて4段階にて評価した。評価基準は以下のとおりである。なお、評価は、4が最も高い評価であり、数が小さくなるにつれて低い評価となり、1が最も低い評価である。
4 :混合完了時間が、120sec以内のとき
3 :混合完了時間が、120secよりも長く、200sec以下のとき
2 :混合完了時間が、200secよりも長く、300sec以下のとき
1 :混合完了時間が、300secよりも長いとき、又は均一混合できないとき
【0051】
得られた結果を表1及び表2に示す。なお、「設置位置(上)」の欄は、攪拌槽の底から上側の攪拌体の吐出口の上下方向の中心までの第2高さh2を意味し、「設置位置(下)」の欄は、攪拌槽の底から下側の攪拌体の吐出口の上下方向の中心までの第1高さh1を意味する。また、「均一混合可否」の欄は、「○」が均一混合できたことを、「×」が均一混合できなかったことをそれぞれ示す。
【0052】
【0053】
【0054】
以上より、本開示に係る攪拌方法によれば、混合時間の短縮と攪拌槽内の液体の十分な攪拌との両立が可能であることが確認された。