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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144518
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】はんだおよび電子部品
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/14 20060101AFI20231003BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20231003BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20231003BHJP
   C22C 13/02 20060101ALN20231003BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20231003BHJP
   C22C 38/40 20060101ALN20231003BHJP
   C22C 9/02 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
B23K35/14 Z
B23K35/26 310A
C22C13/00
C22C13/02
C22C38/00 302Z
C22C38/40
C22C9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051530
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井口 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】安藤 ▲徳▼久
(57)【要約】      (修正有)
【課題】合金の組成を大きく変化させずに線膨張係数を低下させたはんだを提供する。
【解決手段】Sn合金相および粒子を含み、粒子のヤング率がSn合金相のヤング率よりも高く、粒子の線膨張係数がSn合金相の線膨張係数よりも小さいはんだである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sn合金相および粒子を含み、
前記粒子のヤング率が前記Sn合金相のヤング率よりも高く、
前記粒子の線膨張係数が前記Sn合金相の線膨張係数よりも小さいはんだ。
【請求項2】
前記粒子がC、NおよびOから選択される1種以上を含む請求項1に記載のはんだ。
【請求項3】
前記粒子がCを含む請求項1または2に記載のはんだ。
【請求項4】
前記粒子がSiCを主成分として含む請求項1~3のいずれかに記載のはんだ。
【請求項5】
前記粒子の含有割合が15体積%以上40体積%以下である請求項1~4のいずれかに記載のはんだ。
【請求項6】
前記粒子の線膨張係数が10ppm/℃以下である請求項1~5のいずれかに記載のはんだ。
【請求項7】
前記粒子のヤング率が60GPa以上である請求項1~6のいずれかに記載のはんだ。
【請求項8】
Pbを実質的に含まない請求項1~7のいずれかに記載のはんだ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のはんだにより接合された金属端子を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだおよび電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
はんだを用いて積層セラミックコンデンサなどの電子部品を基板に実装させる方法としては、リフローはんだ工程により基板に表面実装させる方法や、特許文献1に示すように積層セラミックコンデンサの端子電極に実装用の金属端子をはんだで接合させて基板に実装させる方法などが挙げられる。いずれの方法でもはんだが用いられる。特に後者の方法は、積層セラミックコンデンサの振動が基板に伝わって基板から音が発生することを抑制しやすい点で有利である。
【0003】
通常、はんだの線膨張係数は接合させる各材料の線膨張係数よりも高くなる。これは、はんだの融点が各材料の融点よりも低いため、および、一般的に、融点が低いほど線膨張係数が大きい傾向があるためである。
【0004】
線膨張係数が異なる2つの部材がはんだにより接合している場合には、はんだの線膨張係数が2つの部材の線膨張係数の間になると熱衝撃による熱応力が特に緩和される。一般的にはんだの線膨張係数は大きいことから、はんだの線膨張係数が2つの部材の線膨張係数の間になるようにするために、はんだの線膨張係数を低下させる方法が求められている。
【0005】
ただし、はんだを構成する合金の組成を変化させて線膨張係数を低下させる場合には、はんだの融点が高くなるなど、はんだ自体の特性が大きく変化してしまう場合がある。
【0006】
したがって、合金の組成を大きく変化させずに線膨張係数を低下させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-182888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、合金の組成を大きく変化させずに線膨張係数を低下させたはんだを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係るはんだは、
Sn合金相および粒子を含み、
前記粒子のヤング率が前記Sn合金相のヤング率よりも高く、
前記粒子の線膨張係数が前記Sn合金相の線膨張係数よりも小さい。
【0010】
前記粒子がC、NおよびOから選択される1種以上を含んでもよい。
【0011】
前記粒子がCを含んでもよい。
【0012】
前記粒子がSiCを主成分として含んでもよい。
【0013】
前記粒子の含有割合が15体積%以上40体積%以下であってもよい。
【0014】
前記粒子の線膨張係数が10ppm/℃以下であってもよい。
【0015】
前記粒子のヤング率が60GPa以上であってもよい。
【0016】
前記はんだがPbを実質的に含まなくてもよい。
【0017】
本発明に係る電子部品は、上記のはんだにより接合された金属端子を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態に係るはんだは、Sn合金相および粒子を含む。そして、粒子のヤング率がSn合金相のヤング率よりも高く、粒子の線膨張係数がSn合金相の線膨張係数よりも小さい。
【0020】
本実施形態に係るはんだは、Sn合金相のみからなり粒子が含まれないはんだと比較して線膨張係数が低下する。その結果、Sn合金相の組成を大きく変化させることなく、はんだの線膨張係数をはんだにより接合させる部材の線膨張係数に近づけることができる。特に、はんだの線膨張係数を一般的に用いられる金属端子の線膨張係数と電子部品の線膨張係数との間にすることができる。
【0021】
粒子のヤング率がSn合金相のヤング率以下である場合には、粒子の線膨張係数がSn合金相の線膨張係数よりも小さくても、Sn合金相および粒子を含むはんだの線膨張係数が変化しにくい。はんだの使用時においてはんだの変形に伴いヤング率の小さい粒子がひずんでしまうためである。
【0022】
粒子のヤング率には特に制限はない。例えば60GPa以上であってもよい。100GPa以上であることが好ましく、300GPa以上であることがより好ましい。粒子の線膨張係数には特に制限はない、例えば10.0ppm/℃以下であってもよい。7.0ppm/℃以下であることが好ましい。
【0023】
ヤング率が異なる複数種類の粒子を含む場合には、各粒子の体積比に応じて各粒子のヤング率を加重平均して得られた値を上記の粒子のヤング率としてもよい。
【0024】
線膨張係数が異なる複数種類の粒子を含む場合には、各粒子の体積比に応じて各粒子の線膨張係数を加重平均して得られた値を上記の粒子の線膨張係数としてもよい。
【0025】
はんだに含まれるSn合金相のヤング率、ポアソン比および線膨張係数の測定方法には特に制限はない。例えば、はんだに含まれるSn合金相と同一の組成である合金のヤング率、ポアソン比および線膨張係数を周知の方法で測定すればよい。
【0026】
はんだに含まれる粒子のヤング率、ポアソン比および線膨張係数の測定方法には特に制限はない。以下、粒子のヤング率、ポアソン比および線膨張係数の測定方法の一例を説明する。
【0027】
はんだに含まれる粒子と同一の組成であり、互いに向かい合う2つの面が略平行である円柱を準備する。当該円柱のヤング率、ポアソン比および線膨張係数を周知の方法で測定する。測定により得られる当該円柱のヤング率、ポアソン比および線膨張係数をはんだに含まれる粒子のヤング率、ポアソン比および線膨張係数とみなすことができる。
【0028】
Sn合金相の組成には特に制限はなく、一般的にはんだとして用いられるSn合金の組成であればよい。例えば、JIS Z 3282:2017には、鉛含有はんだの組成として、Sn-Pb系、Sn-Pb-Bi系、Sn-Pb-Ag系の組成が記載されている。さらに、鉛フリーはんだの組成として、Sn-Sb系、Sn-Cu系、Sn-Cu-Ni系、Sn-Ag-Cu-In系、Sn-Ag系、Sn-Cu-Ag-P-Ga系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-Cu-Ni-Ge系、Sn-Bi-Cu-In系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Cu-Ni-P-Ga系、Sn-Ag-Bi-Cu系、Sn-Bi-Ag-Cu-In系、Sn-Bi-Ag-Cu系、Sn-In-Ag-Bi系、Sn-Zn系、Sn-Zn-Bi系、Bi-Sn系、Sn-In系の組成が記載されている。例えば、Sn-Sb系、または、Sn-Ag-Cu系の組成であってもよい。
【0029】
環境面を考慮すれば、はんだがPbを実質的に含まないことが好ましい。これは、Pbの含有量が0.10質量%以下であるという意味である。
【0030】
粒子の種類には特に制限はない。例えば、C、NおよびOから選択される1種以上を含んでもよく、Cを含んでいてもよい。いいかえれば、粒子が炭化物、窒化物および酸化物から選択される1種以上の化合物を含んでいてもよく、炭化物を含んでいてもよい。粒子が金属粒子である場合と比較して強度が高くなりやすくなる。これは、粒子が金属粒子である場合には金属粒子がSn合金と反応して金属間化合物が生じる場合があり、その場合にはんだの強度が低下しやすくなるためである。また、特に粒子がCを含む場合、すなわち炭化物を含む場合は、炭化物のヤング率が窒化物や酸化物のヤング率と比較して大きく、炭化物の線膨張係数が窒化物や酸化物の線膨張係数と比較して小さいため好ましい。
【0031】
粒子が主成分としてSiC、AlN、Al23および/またはBaTiO3を含んでいてもよく、SiCを含んでいてもよい。例えば、主成分としてSiCを含むとは、全粒子におけるSiCの含有割合が50質量%以上であることを指す。
【0032】
はんだにおける粒子の含有割合には特に制限はない。6体積%以上であってもよく、10体積%以上であってもよく、15体積%以上であってもよい。また、40体積%以下であってもよく、35体積%以下であってもよい。はんだにおける粒子の含有割合の測定方法には特に制限はない。例えば、まず、はんだの構成元素の質量比を測定する。はんだの構成元素の質量比は、Sn合金相および粒子を含むはんだの断面に対して電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)などを用いることにより測定することができる。そして、はんだの密度および粒子の密度からはんだにおける粒子の含有割合を体積比で算出することができる。なお、はんだにおける粒子の含有割合を変化させてもはんだの融点は大きく変化しない。
【0033】
はんだにおける粒子の平均粒径には特に制限はない。例えば0.3μm以上20μm以下であってもよい。はんだにおける粒子の平均粒径の測定方法には特に制限はない。例えば、まず、走査電子顕微鏡等を用いてはんだの断面を撮影する。このときにはんだにおける各粒子の円面積相当径を測定できる倍率ではんだの断面を撮影する。そして、撮影により得られた画像に対して画像解析ソフト等を用いることによりはんだにおける各粒子の円面積相当径を解析する。50個以上の粒子について円面積相当径を算出し、平均することにより、はんだにおける粒子の平均粒径を測定することができる。
【0034】
本実施形態に係る電子部品の種類および形状には特に制限はない。例えば積層セラミックコンデンサなどが挙げられる。
【0035】
積層セラミックコンデンサは一般的に、素子本体と一対の外部電極とを有する。そして、素子本体は、誘電体層と内部電極層とが、積層方向に沿って交互に積層してある構造を有する。
【0036】
一般的に、積層セラミックコンデンサで最も体積比率が大きいのは誘電体である。そのため、積層セラミックコンデンサの線膨張係数は誘電体の線膨張係数に近い値を示しやすい。積層セラミックコンデンサに最もよく使用される誘電体の主成分はBaTiO3である。BaTiO3の線膨張係数は9.4ppm/℃である。したがって、積層セラミックコンデンサの線膨張係数は9.4ppm/℃に近い値を示しやすい。
【0037】
積層セラミックコンデンサを基板に実装する方法としては、積層セラミックコンデンサを直接、基板に表面実装する方法がある。また、積層セラミックコンデンサの外部電極に実装用の端子電極を接合させ、端子電極を有する積層セラミックコンデンサを基板に実装する方法がある。
【0038】
積層セラミックコンデンサを直接、基板に表面実装する場合には、リフローはんだ工程により実装させる方法がある。また、積層セラミックコンデンサの外部電極に実装用の端子電極を接合させる場合には、外部電極と端子電極との接合にはんだを用いる方法がある。いずれの場合であっても、上記のはんだを用いることができる。
【0039】
外部電極と端子電極との接合に上記のはんだを用いる場合において、外部電極の材質には特に制限はない。例えば、樹脂電極等が挙げられる。金属端子の材質には特に制限はない。例えば、Feを主成分とする金属(例えばステンレス等)やCuを主成分とする金属(例えばリン青銅等)が挙げられる。また、はんだの厚みにも特に制限はない。例えば1μm以上20μm以下であってもよい。
【0040】
本実施形態に係るはんだの作製方法には特に制限はない。例えば、Sn合金のはんだボールと粒子とを混合することで作製することができる。
【0041】
まず、Sn合金のはんだボール、フラックスおよび粒子を準備し、目的の組成となるように秤量する。次に、Sn合金のはんだボール、フラックスおよび粒子を混合してクリームはんだを得る。そして、クリームはんだを溶解させることにより、本実施形態に係るはんだを作製することができる。フラックスの種類には特に制限はなく、周知のフラックスを用いることができる。
【実施例0042】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
【0043】
(Sn合金の物性)
表1に示すSn合金A、Bのはんだボールを準備した。
【0044】
Sn合金A、Bのヤング率、ポアソン比、線膨張係数および融点を測定した。Sn合金A、Bのはんだボールを溶解した後に鋳造することで、ヤング率測定用兼ポアソン比測定用の円柱状サンプルと、線膨張係数測定用の円柱状サンプルとを作製した。ヤング率およびポアソン比は超音波法を用いて測定した。線膨張係数は熱機械分析装置(TMA)を用いて測定した。結果を表1に示す。また、Sn合金A、Bの融点は、Sn合金A、Bのはんだボールを準備し、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定した。Sn合金Aの融点は245℃、Sn合金Bの融点は217℃であった。
【0045】
(粒子の物性)
表1に示す粒子A~粒子Dを準備した。粒子A~Dの平均粒径はいずれも3μmとした。
【0046】
粒子A~Dのヤング率、ポアソン比および線膨張係数を測定した。まず、各粒子と同じ組成であり、互いに向かい合う2面が略平行である円柱(以下、単に円柱状サンプルと記載する場合がある)を準備した。
【0047】
具体的には、組成ごとに、ヤング率測定用兼ポアソン比測定用の円柱状サンプルと、線膨張係数測定用の円柱状サンプルとを準備した。そして、Sn合金A、Bと同様の方法でヤング率、ポアソン比および線膨張係数を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
(金属端子の物性)
表1に示す金属端子A、Bを準備した。金属端子A、Bのヤング率、ポアソン比および線膨張係数を測定した。まず、金属端子A、Bと同材質であるヤング率測定用兼ポアソン比測定用の円柱状サンプルと、線膨張係数測定用の円柱状サンプルとを準備した。そして、Sn合金A、Bと同様の方法でヤング率、ポアソン比および線膨張係数を測定した。結果を表1に示す。なお、金属端子Aの材質はリン青銅(C5212)であり、金属端子Bの材質はステンレス(SUS304)である。
【0049】
(ガラスコンポジット基板の物性)
ガラスコンポジット基板としてCEM-3を準備した。そして、熱機械分析装置(TMA)を用いてガラスコンポジット基板の線膨張係数を測定した。なお、後述する実験例2では、線膨張係数の測定方向と積層セラミックコンデンサの長手方向とが同一となるようにした。結果を表1に示す。
【0050】
ガラスコンポジット基板のヤング率は引張試験法で測定した。ガラスコンポジット基板のポアソン比は、ガラスコンポジット基板の中央に直交ひずみゲージを添付して引張試験を行い、引張試験により得られた直交ひずみゲージの値から算出した。結果を表1に示す。
【0051】
なお、Sn合金の組成および金属端子の組成において、数字が記載されていない元素の含有割合は実質的な残部である。
【0052】
【表1】
【0053】
(実験例1)
表2に示すSn合金に対して表2に示す粒子を添加することで各試料のはんだを作製した。以下、具体的な手順を示す。
【0054】
表1に示す組成の粒子A~粒子Dを準備した。
【0055】
Sn合金A、Bの作製と粒子A~粒子Dの添加とを同時に行った。具体的には、表1に示す組成のSn合金A、Bのはんだボールを準備した。その後、Sn合金A、Bのはんだボール、フラックスおよび粒子A~粒子Dを適宜添加して混合し、クリームはんだを作製した。粒子A~粒子Dの添加量は、クリームはんだを溶解したときに得られるはんだにおける粒子の含有割合が表2に示す値となる添加量とした。フラックスの種類はロジンとした。フラックスの添加量はクリームはんだを溶解したときに得られるはんだにおけるフラックスの含有割合が5質量%となる添加量とした。なお、試料番号10では、粒子Aと粒子Bと粒子Cとの体積比が1:0.5:0.5となるようにした。
【0056】
得られた各試料のはんだの線膨張係数は熱機械分析装置(TMA)を用いてSn合金A、Bの線膨張係数と同様の方法で測定した。結果を表2に示す。はんだの線膨張係数は20.0ppm/℃以下を良好とし、18.2ppm/℃以下をさらに良好とした。
【0057】
得られた各試料のはんだの融点は熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いてSn合金A、Bの融点と同様の方法で測定した。全ての試料において、粒子を添加しない表1の各Sn合金から融点が変化していないことを確認した。
【0058】
次に熱衝撃試験および引張強度試験を行った。
【0059】
まず、サイズが5.7mm×5.0mm×2.0mmであり、誘電体の主成分がBaTiO3である積層セラミックコンデンサを準備した。次に、表2に示す各試料のはんだを用いて表2に示す種類の金属端子を2個、積層セラミックコンデンサの外部電極である樹脂電極に固定した。
【0060】
2個の金属端子を固定した積層セラミックコンデンサをセラミック板に乗せて熱衝撃試験を行った。熱衝撃試験の条件は温度を-55℃~125℃とし、サイクル数を200とした。
【0061】
熱衝撃試験後の積層セラミックコンデンサに対して引張強度試験を行った。引張強度試験は万能材料試験機を用いて行った。具体的には、熱衝撃試験後の積層セラミックコンデンサに固定された2個の金属端子のそれぞれに治具を固定した。そして治具を引っ張ったときに破断する強度を測定した。結果を表2に示す。引張強度が29.0N以上である場合を良好とし、30.0N以上である場合をさらに良好とし、32.0N以上である場合を特に良好とした。
【0062】
【表2】
【0063】
表2より、Sn合金に所定の粒子を添加させて線膨張係数を低下させた各実施例のはんだを用いる場合には、熱衝撃試験後の引張強度が向上した。はんだの線膨張係数が金属端子の線膨張係数よりも低い試料番号4~12は、熱衝撃試験後の引張強度が特に向上した。試料番号4~12のはんだの線膨張係数が、積層セラミックコンデンサに使用された誘電体の線膨張係数と、金属端子の線膨張係数と、の間の値になり、熱衝撃時に積層セラミックコンデンサと金属端子との間に生じる応力が緩和されたためであると考えられる。
【0064】
(実験例2)
実験例1と同様の方法で表3に示す各試料のはんだを作製した。
【0065】
次に熱衝撃試験および固着強度試験を行った。
【0066】
まず、サイズが3.2mm×1.6mm×1.6mmであり、誘電体の主成分がBaTiO3である積層セラミックコンデンサ、および、表3に示す種類の基板を準備した。そして、表3に示す各試料のはんだを用いたリフローはんだ工程により、積層セラミックコンデンサの外部電極である樹脂電極を基板に固定し実装した。なお、基板の線膨張係数の測定方向と積層セラミックコンデンサの長手方向とが同一となるようにした。
【0067】
次に、基板に固定し実装した積層セラミックコンデンサに対して熱衝撃試験を行った。熱衝撃試験の条件は温度を-55℃~125℃とし、サイクル数を200とした。
【0068】
熱衝撃試験後の積層セラミックコンデンサに対して固着強度試験を行った。固着強度試験は万能材料試験機を用いて行った。具体的には、基板に実装された積層セラミックコンデンサの側面に治具を当てて押したときに剥離する強度を測定した。結果を表3に示す。固着強度が110N以上である場合を良好とした。
【0069】
【表3】
【0070】
表3より、Sn合金に所定の粒子を添加させて線膨張係数を低下させたはんだを用いる場合には、熱衝撃試験後の固着強度が向上した。各実施例のはんだの線膨張係数が、積層セラミックコンデンサに使用された誘電体の線膨張係数と、基板の線膨張係数と、の間の値になり、熱衝撃時に積層セラミックコンデンサと基板との間に生じる応力が緩和されたためであると考えられる。