(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144520
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】磁性体コア、電子部品および電源装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20231003BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20231003BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20231003BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01F27/24 Z
H01F17/04 F
H01F27/24 K
H01F30/10 A
H01F37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051532
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】氏家 徹
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB03
5E070BA08
(57)【要約】
【課題】駆動時に発生する音鳴りを抑制した磁性体コアと、磁性体コアを用いた電子部品と、電子部品を用いた電源装置を提供すること。
【解決手段】第1軸方向に延在するベース部30と、ベース部30から第1軸と垂直な第2軸に沿って突出している一対の外脚部10,10と、一対の外脚部10,10の間に配置され第2軸に沿って突出している中脚部20とを有する磁性体コア1である。ベース部30の第2軸方向の厚さの値Li(mm)と、一対の外脚部10,10のうち第2軸方向の高さが短い方の第2軸方向の高さの値Lf(mm)との関係が、Li/Lf≧0.8の関係を満たすことを特徴とする。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に延在するベース部と、前記ベース部から前記第1軸方向と垂直な第2軸方向に突出している一対の外脚部と、一対の前記外脚部の間に配置され前記ベース部から前記第2軸方向に突出している中脚部とを有する磁性体コアであって、
前記ベース部の前記第2軸方向の厚さの値Li(mm)と、一対の前記外脚部のうち前記第2軸方向の高さが低い方の前記第2軸方向の高さの値Lf(mm)との関係が、Li/Lf≧0.8の関係を満たすことを特徴とする磁性体コア。
【請求項2】
第1軸方向に延在するベース部と、前記ベース部から前記第1軸方向と垂直な第2軸方向に突出している一対の外脚部と、一対の前記外脚部の間に配置され前記ベース部から前記第2軸方向に突出している中脚部とを有する磁性体コアであって、
前記ベース部の前記第2軸方向の厚さの値Li(mm)、一対の前記外脚部のうち前記第2軸方向の高さが低い方の前記第2軸方向の高さの値Lf(mm)、前記磁性体コアの密度の値Ds(g/cm3)、前記ベース部の前記第1軸方向の幅の値La(mm)に関し、
X=1000×Ds×Li/(La+2×Lf)2で表される数式において、Xの値が7.9以上であることを特徴とする磁性体コア。
【請求項3】
前記ベース部の前記第2軸方向の厚さの値Li(mm)と、一対の前記外脚部のうち前記第2軸方向の高さが低い方の前記第2軸方向の高さの値Lf(mm)との関係が、Li/Lf≧0.8の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の磁性体コア。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の磁性体コアと
前記磁性体コアに巻回してあるコイルと、を有する電子部品。
【請求項5】
前記磁性体コアの前記外脚部と突き合わされる別コアを有する請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電子部品と、
前記電子部品に電気的に接続するスイッチング回路と、を有する電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体コア、電子部品および電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体コアは、磁性体内の磁束密度分布が均一になるような形状で設計することが多く使用されてきた。このような形状では、磁性体コアを励磁することにより、磁性体コアから音鳴りが発生することがある。
【0003】
特許文献1では、時間に対する磁歪変化が異なる電磁鋼板を張り合わせることで音鳴りを抑止しようとしている。また、特許文献2では、磁性体コアとは別に非磁性の補強部材を用いて音鳴りを抑止しようとしている。また、特許文献3では、装置の駆動により発生した騒音の周波数を検出し、騒音が発生しないキャリア周波数に調整することで音鳴りを抑止しようとしている。
【0004】
しかしながら、これらの従来技術の手段によると、複雑な構成が必要となっていた。そこで、より簡便な方法により、装置の駆動時における音鳴りを抑止することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-102692号公報
【特許文献2】特開2018-195786号公報
【特許文献3】特開2018-186663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の実情を鑑みてなされ、その目的は、駆動時に発生する音鳴りを抑制した磁性体コア等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の観点による本発明に係る磁性体コアは、
第1軸方向に延在するベース部と、前記ベース部から前記第1軸方向と垂直な第2軸方向に突出している一対の外脚部と、一対の前記外脚部の間に配置され前記ベース部から前記第2軸方向に突出している中脚部とを有する磁性体コアであって、
前記ベース部の前記第2軸方向の厚さの値Li(mm)と、一対の前記外脚部のうち前記第2軸方向の高さが低い方の前記第2軸方向の高さの値Lf(mm)との関係が、Li/Lf≧0.8の関係を満たすことを特徴とする。
【0008】
また、上記目的を達成するために、第2の観点による本発明に係る磁性体コアは、
第1軸方向に延在するベース部と、前記ベース部から前記第1軸方向と垂直な第2軸方向に突出している一対の外脚部と、一対の前記外脚部の間に配置され前記ベース部から前記第2軸方向に突出している中脚部とを有する磁性体コアであって、
前記ベース部の前記第2軸方向の厚さの値Li(mm)、一対の前記外脚部のうち前記第2軸方向の高さが低い方の前記第2軸方向の高さの値Lf(mm)、前記磁性体コアの密度の値Ds(g/cm3)、前記ベース部の前記第1軸方向の幅の値La(mm)に関し、
X=1000×Ds×Li/(La+2×Lf)2で表される数式において、Xの値が7.9以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明者らの研究によれば、E字型の磁性体コアにおいて、磁性体コア自体の各部分の大きさが所定の関係にある場合に、駆動時に発生する音鳴きを抑制することを見出した。すなわち、Li/Lf≧0.8の関係を満たす磁性体コアでは、発生する音を十分に低下させることを可能にした。
【0010】
本発明者らの研究によれば、E字型の磁性体コアにおいて、磁性体コア自体の各部分の大きさと磁性体コアの密度が所定の関係にある場合に、駆動時に発生する音鳴きを抑制することを見出した。すなわち、X=1000×Ds×Li/(La+2×Lf)2で表される数式において、Xの値が7.9以上である場合に磁性体コアでは、発生する音を十分に低下させることを可能にした。
【0011】
したがって、このような磁性体コアによれば、複雑な構成を必要とせず、各部分の大きさや磁性体コアの密度をこれらの関係になるように設計するだけで、環境基準に適応する程度に音鳴きを抑制できるため、製造コストの低減、装置が小型化を容易に実現することができる。
【0012】
本発明に係る電子部品は、前記磁性体コアと前記磁性体コアに巻回してあるコイルと、を有する。このような磁性体コアを有する電子部品では、発生する騒音を大いに低下させることができる。このような電子部品は、トランスなどとして電源装置などに好適に用いることが可能となる。
【0013】
好ましくは、前記磁性体コアの前記外脚部と突き合わされる別コアを有する。このように構成することで、電子部品は、閉磁路を形成し、磁気的損失が低減する。
【0014】
本発明に係る電源装置は、前記電子部品と、前記電子部品に電気的に接続するスイッチング回路と、を有する。前記電子部品を有する電源装置は、コアの磁歪や、コア同士の引き付けあいなどによる音鳴きを、良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】
図1Aは本発明の一実施形態に係る磁性体コアの構成の概略を示す一方向から見た平面図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施形態に係る電子部品の一部分の構成を示す正面図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施形態に係る電子部品の構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0017】
図1Aに示すように、一実施形態に係る磁性体コア1は、いわゆるE字型コアであり、磁性体コア1は、X軸に延在するベース部30と、ベース部30からZ軸に沿って突出している一対の外脚部10,10と、一対の外脚部10,10の間に配置されZ軸に沿って突出している中脚部20を有する。なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に略垂直である。本実施形態では、X軸が第1軸に対応し、Z軸が第2軸に対応する。本明細書では、磁性体コア1において、X軸方向の中心線Cに近い方向を内側と称し、磁性体コア1のX軸の中心から遠い方向を外側と称することがある。
【0018】
図1Aに示すように、本実施形態では、磁性体コア1は、X軸方向に長さLaの幅を有し、Z軸方向に長さLbの高さを有し、Y軸方向に長さLcの奥行(
図1B)を有し、X軸方向の中心線Cを対称軸とする対称な形状を有する。磁性体コア1の全体の大きさは特に限定されないが、たとえば、Laは30~110mm、Lbは8~50mm、Lcは5~30mmである。
【0019】
磁性体コア1は、磁性材料から形成される。磁性体材料としては、たとえば、比較的透磁率の高い磁性材料、たとえばMn系フェライトや、Ni系フェライト、あるいは金属磁性体などが例示され、これらの磁性材料の粉体を、成型および焼結することにより、磁性体コア1が形成される。なお、磁性体コア1は、磁性材料と樹脂などを混合して形成してあってもよい。
【0020】
図1Aに示すように、一対の外脚部10,10は、それぞれ、略直方体形状を有する。外脚部10は、ベース第1面31を基端として、Z軸に沿って突出した外脚端面11を有する。外脚端面11は、外脚部10のZ軸に対して垂直な側面を構成している。外脚部10は、Z軸方向にLf(mm)の高さを有する。Lfは、ベース第1面31から外脚端面11までのZ軸に沿った距離を表している。
【0021】
図1Aに示すように、外脚部10は、外脚外面12と、外脚内面13とを有する。外脚外面12は、X軸に沿って中脚部20に遠い外側の側面を構成しており、外脚内面13は、X軸に沿って中脚部20に近い内側の側面を構成している。外脚外面12および外脚内面13は、それぞれ外脚部10のZ軸に対して垂直である。外脚部10は、X軸方向にLh(mm)の幅を有する。Lhは、外脚外面12から外脚内面13までのX軸に沿った距離を表している。
【0022】
外脚部10,10は、それぞれ、X軸方向にLe(mm)の離間距離で配置されている。Leは、一方の外脚部10の外脚内面13と、他方の外脚部10の外脚内面13とのX軸に沿った距離を表している。
【0023】
図1Cに示すように、外脚部10は、外脚第1正面14aと、外脚第2正面14bとを有する。外脚第1正面14aは、外脚部10のY軸に対して垂直な側面のうちの一方側の側面を構成している。外脚第2正面14bは、外脚第1正面14aとY軸に沿って対向しており、外脚部10のY軸に対して垂直な側面のうちの他方側の側面を構成している。
【0024】
図1Aに示すように、中脚部20は、略直方体形状を有する。中脚部20は、ベース第1面31を基端として、Z軸に沿って突出した中脚端面21を有する。中脚端面21は、Z軸に対して垂直な側面を構成している。中脚部20では、ベース第1面31から中脚端面21までのZ軸に沿った距離は、外脚部10の高さLfと同じである。
【0025】
図1Aに示すように、中脚部20は、一対の中脚側面22,22を有する。中脚側面22は、中脚部20のX軸に対して垂直な側面を構成している。中脚部20は、X軸方向にLd(mm)の幅を有する。Ldは、中脚側面22,22同士のX軸に沿った距離を表している。
【0026】
図1Cに示すように、中脚部20は、中脚第1正面24aと、中脚第2正面24bとを有する。中脚第1正面24aは、中脚部20のY軸に対して垂直な側面のうちの一方側の側面を構成している。中脚第1正面24bは、内脚第1正面24aとY軸に沿って対向しており、中脚部20のY軸に対して垂直な側面のうちの他方側の側面を構成している。
【0027】
図1Aに示すように、ベース部30は、略直方体形状を有する。ベース部30は、Z軸対して垂直な側面を構成するベース第1面31と、ベース第1面31に対向する側面を構成するベース第2面33とを有する。ベース部30は、Z軸方向にLi(mm)の厚さを有する。Liは、ベース第1面31からベース第2面33までのZ軸に沿った距離を表している。
【0028】
図1Aに示すように、ベース第1面31は、一対の外脚部10,10および中脚部20の基端となっている。ベース第1面31のX軸方向の外側は、外脚内面13と繋がっている。ベース第1面31のX軸方向の内側は、中脚側面22と繋がっている。
【0029】
図1Aに示すように、ベース部30は、一対のベース外面32,32を有する。ベース外面32は、ベース部30のX軸に対して垂直な側面を構成している。ベース外面32は、外脚外面12と同一平面に配置されており、外脚外面12と繋がっている。ベース部30は、X軸方向にLa(mm)の幅を有する。Laは、ベース外面32,32同士のX軸に沿った距離を表している。本実施形態では、一方の外脚部10の外脚外面12と、他方の外脚部10の外脚外面12とのX軸に沿った距離は、Laに一致している。
【0030】
図1Cに示すように、ベース部30は、ベース第1正面34aと、ベース第2正面34bとを有する。ベース第1正面34aは、ベース部30のY軸に対して垂直な側面のうちの一方側の側面を構成している。ベース第1正面34aは、外脚第1正面14a,14aおよび中脚第1正面24aと同一平面に配置されており、外脚第1正面14a,14aおよび中脚第1正面24aと繋がっている。
【0031】
図1Cに示すように、ベース第2正面34bは、ベース第1正面34aとY軸に沿って対向しており、ベース部30のY軸に対して垂直な側面のうちの他方側の側面を構成している。ベース第2正面34bは、外脚第2正面14b,14bおよび中脚第2正面24bと同一平面に配置されており、外脚第2正面14b,14bおよび中脚第2正面24bと繋がっている。
【0032】
図1Aに示すように、本実施形態では、磁性体コア1は、Z軸方向にLb(mm)の高さを有する。Lbは、ベース第2面32から外脚端面11までのZ軸に沿った距離を表しており、本実施形態では、LiとLfの合計と一致している。
【0033】
図1Bに示すように、本実施形態では、ベース部30は、Y軸方向にLc(mm)の奥行を有する。Lcは、ベース第1正面34aからベース第2正面34bまでのY軸に沿った距離を表している。外脚部10および中脚部20のY軸方向の奥行は、Lcに一致している。
【0034】
本実施形態では、磁性体コア1の全体の大きさに関わらず、
図1Aに示すベース部30のZ軸方向の厚さの値Li(mm)と、一対の外脚部10,10のうちZ軸方向の高さが短い方のZ軸方向の高さの値Lf(mm)との関係が、Li/Lf≧0.8の関係を満たす。なお、本実施形態では、いずれの外脚部もX軸を挟んで対称な形状を有しており、いずれも同一の高さの値Lfを有する。
【0035】
本実施形態では、磁性体コア1の全体の大きさに関わらず、
図1Aに示すベース部30のZ軸方向の厚さの値Li(mm)、一対の外脚部10,10のうちZ軸方向の高さが短い方のZ軸方向の高さの値Lf(mm)、磁性体コア1の密度の値Ds(g/cm
3)、ベース部30のX軸方向の幅の値La(mm)に関し、X=1000×Ds×Li/(La+2×Lf)
2で表される数式において、Xの値が7.9以上である。
【0036】
本実施形態の磁性体コア1では、ベース部30、外脚部10,10および中脚部20は、それぞれ直方体形状であり、同じ奥行を有する標準的なE字型コアであるが、これに限定されない。たとえば、磁性体コアは、中脚部20を円柱形とし、外脚部10の外脚内面13を中脚部20側面の形状に沿うように曲面に形成してあるPQコアであってもよい。PQコアでは、たとえば中脚部にコイルを巻回する場合に、太い電線や平角線などでも容易に巻回して密着性の良いコイルを形成することができる。また、磁性体コアは、中脚部20の奥行を外脚部10,10の奥行よりも短くし、Y軸方向に薄くした形状であるEPCコアであってもよい。
【0037】
図1Aに示すように、本実施形態では、それぞれの外脚部10,10および中脚部20の高さLfは同じであり、一方の外脚部10の外脚端面11、他方の外脚部10の外脚端面11および中脚部20の中脚端面21は、同一平面上に配置されているが、これに限定されない。たとえば、中脚部20を外脚部10,10よりも短くし、中脚端面21を、外脚端面11よりもZ軸に沿ってベース第1面31の近くに配置してもよい。
【0038】
また、本実施形態では、外脚部10,10は、X軸方向に対称な形状を有しているが、非対称であってもよい。たとえば、一方の外脚部10が、他方の外脚部10よりも長くし、一方の外脚部10の外脚端面11を、他方の外脚部10の外脚端面11よりもZ軸に沿ってベース第1面31の近くに配置してもよい。
【0039】
本実施形態では、E字型の磁性体コア1において、ベース部30の厚さの値Liと、外脚部10の高さLfの関係が、Li/Lf≧0.8の関係にある。また、X=1000×Ds×Li/(La+2×Lf)2で表される数式において、Xの値が7.9以上である。
【0040】
このような関係において、磁性体コア1は、全体の大きさに関わらず、駆動時に発生する音を十分に低減させることができる。そのため、本実施形態の磁性体コア1では、ベース部30と外脚部10のサイズをこの関係を満たすようにして設計するだけで、音鳴きを抑制することが可能になる。また、LiとLfとの関係は、好ましくはLi/Lf≧0.9であり、より好ましくはLi/Lf≧1.0である。また、数式Xの値8.8以上であることがより好ましい。
【0041】
したがって、このような磁性体コアによれば、複雑な構成を必要とせず、各部分の大きさや磁性体コアの密度をこれらの関係になるように設計するだけで環境基準に適応する程度に音鳴きを抑制できるため、製造コストの低減、装置が小型化を容易に実現することができる。
【0042】
図2に示すように、一実施形態に係る電子部品100は、磁性体コア1と、磁性体コア1とは別に、磁性体コア1の一対の外脚部10,10と付き合わされる別コア2を有する。本実施形態では、別コア2は、磁性体コア1と同じ材料を用いて、磁性体コア1と同じ形状、同じ大きさに形成されている。
【0043】
図3に示すように、磁性体コア1の中脚部20には、コイル110が巻回してある。コイル110としては、たとえば、銅(Cu)などの良導体からなる芯材を、イミド変成ポリウレタンなどからなる絶縁材で覆い、さらに最表面をポリエステルなどの薄い樹脂膜で覆ったものを用いることができる。
【0044】
図2に示すように、本実施形態では、電子部品100は、磁性体コア1の外脚部10,10と、別コア2の一対の外脚部が突き合わされている。また、磁性体コア1の中脚部20と別コア2の中脚部が突き合わされている。磁性体コア1の一方の外脚部10、ベース部30、中脚部20、および別コア2によって閉磁路が形成される。また、磁性体コア1の他方の外脚部10、ベース部30、中脚部20、および別コア2によって閉磁路が形成される。
【0045】
たとえば、
図3に示すコイル110に電流を流すことにより、
図2に示す磁性体コア1の一方の外脚部10、ベース部30、中脚部20、および別コア2によって囲まれた領域に、D1の向きの磁束が発生する。また、磁性体コア1の他方の外脚部10、ベース部30、中脚部20、および別コア2によって囲まれた領域に、D2の向きの磁束が発生する。本実施形態では、閉磁路が形成されるため、磁気的損失を低減することができる。
【0046】
本実施形態では、磁性体コア1の中脚部20が、別コア2の中脚部と接触しているが、いずれかの中脚部の高さを短くして、磁性体コア1の中脚部20と別コア2の中脚部との間に所定幅のギャップを形成してあってもよい。
【0047】
本実施形態では、別コア2は、磁性体コア1と同じ材料を用いて、磁性体コア1と同じ形状、同じ大きさに形成されているが、磁性体コア1とは異なる材料を用いてもよく、形状および大きさが磁性体コア1と異なっていてもよい。たとえば、別コア2は、外脚部および中脚部を有しないI字型コアであってもよい。この場合であっても、閉磁路を形成することができる。
【0048】
図3に示すように、本実施形態の電子部品100では、コイル110は、磁性体コア1の中脚部20に巻回してあるが、コイル110は、外脚部10やベース部30に巻回してあってもよい。また、本実施形態では、電子部品100には、1つのコイル110が巻回してあるが、同じ部分に複数巻回してあってもよい。本実施形態の電子部品100は、磁性体コア1にコイル110が巻回されたコイル装置とすることによって、インダクタやトランス、リアクトルとして好適に用いられる。
【0049】
なお、コイルを形成するワイヤとしては、たとえば、銅(Cu)などの良導体からなる芯材を、イミド変成ポリウレタンなどからなる絶縁材で覆い、さらに最表面をポリエステルなどの薄い樹脂膜で覆ったものを用いることができる。
【0050】
また、電子部品100は、磁性体コア1にコイルが巻回されていない実施形態であってもよい。たとえば、電子部品100は、
図2に示す磁性体コア1と別コア2との間に、コイルが埋め込まれた基板等を挟み込むことで、インダクタやトランス、リアクトルなどとして好適に用いられる。
【0051】
一本実施形態に係る電源装置は、
図3に示す電子部品100を有する。電源装置では、スイッチング素子などのON/OFFによってつくられる高周波のパルスによる影響で、コアの磁歪や、コア同士の引き付けあいなどを生じ得ることが知られている。本実施形態に係る電子部品100を有する電源装置では、このように構成された電源装置は、コアの磁歪や、コア同士の引き付けあいなどによる音鳴きを良好に防止することが可能になる。なお、電源装置では、
図1Aに示す磁性体コアを有する電子部品が用いられていればよい。
【0052】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0053】
図1Aに示すE字型の磁性体コアの各部分の値La~Li(mm)および磁性体コアの密度の値Ds(g/cm
3)を変更した実施例および比較例となる磁性体コアを作製した。各実施例および比較例に係る磁性体コアの各部分の値La~Li(mm)と、磁性体コアの密度の値Ds(g/cm
3)を表1に示す。
【0054】
作製した実施例および比較例となる磁性体コアを有する
図3に示す電子部品について、DCDCコンバータに実装し、音鳴き測定試験を行った。音鳴き測定試験は、電子部品を簡易無響箱内に設置して行った。測定は磁性体コアと騒音計のマイク先端部を30mm離れた位置に設置して音圧レベルを測定した。音圧レベルは小野測器製の騒音計(LA-5570)を用いて測定した。音鳴き測定試験の結果を表1に示す。データはA特性変換後のオーバーオール値(OA値)を示す。A特性は、人間の聴感に基づいた音圧レベルを表す量として周波数の重みをつけた値である。OA値は、周波数分析された各音圧レベルの合計である。また、表1には、Li/Lfの値と、X=1000×Ds×Li/(La+2×Lf)
2で表される数式Xの値を示してある。
【0055】
【0056】
Li/Lfの値が0.8以上の場合には、音鳴き測定のデータが最大でも58dBであった。また、Li/Lfの値が0.9以上の場合には、音鳴き測定のデータが最大でも54dBであった。Li/Lfの値が1.0以上の場合には、音鳴き測定のデータが最大でも51dBであった。また、Xの値が7.9以上の場合には、音鳴き測定のデータが最大でも59dBであった。また、Xの値が8.8以上の場合には、音鳴き測定のデータが最大でも47dBであった。
【0057】
Li/Lfの値が0.8以上である磁性体コアまたはXの値が7.9以上である磁性体コアでは、相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域の昼間に係る日本における環境基準に抑制できていた。また、Li/Lfの値が0.8以上である磁性体コアでは、専ら住居の用に供される地域および主として住居の用に供される地域の昼間に係る日本における環境基準に抑制できていた。Li/Lfの値が1.0以上では、療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域の昼間に係る日本における環境基準に近接する程度の音鳴きに抑制でき、Xの値が8.8以上である磁性体コアでは、療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域の昼間に係る日本における環境基準に抑制できていた。