(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144528
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B23B27/16 B
B23B27/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051543
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 翔太
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 純
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046EE01
3C046EE12
3C046EE14
3C046EE17
(57)【要約】
【課題】切削インサートをコンパクト化してコスト削減しつつ、切削インサートおよびサポーターを安定して固定できること。
【解決手段】切削インサート2と、切削インサート2の外周面23を保持する板状のサポーター3と、を備え、サポーター3は、サポーター3の前方端部から後方に窪む凹状をなし、切削インサート2が配置されるポケット33と、ポケット33の左右方向の寸法を狭めるように弾性変形可能な把持アーム32と、サポーター3の外周面3cに配置され、インサート取付座の側壁に接触する複数の凸部37と、を有し、複数の凸部37は、把持アーム32に配置される第1凸部37Aと、第1凸部37Aと間隔をあけて配置される第2凸部37Bと、を含み、第1凸部37Aがサポーター3の外周面3cから突出する突出量が、第2凸部37Bがサポーター3の外周面3cから突出する突出量よりも大きい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートのクランプ構造であって、
柱状をなし、少なくとも前方端部に切刃が配置される切削インサートと、
前記切削インサートの外周面を保持する板状のサポーターと、を備え、
前記サポーターは、
前記サポーターの前方端部から後方に窪む凹状をなし、前記切削インサートが配置されるポケットと、
前記ポケットの左右方向の寸法を狭めるように弾性変形可能な把持アームと、
前記サポーターの外周面に配置され、前記インサート取付座の側壁に接触する複数の凸部と、を有し、
前記複数の凸部は、
前記把持アームに配置される第1凸部と、
前記第1凸部と間隔をあけて配置される第2凸部と、を含み、
前記第1凸部が前記サポーターの外周面から突出する突出量が、前記第2凸部が前記サポーターの外周面から突出する突出量よりも大きい、
切削インサートのクランプ構造。
【請求項2】
前記第1凸部および前記第2凸部は、上下方向から見て、それぞれ凸曲線状をなし、前記第1凸部の曲率半径が、前記第2凸部の曲率半径よりも大きい、
請求項1に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項3】
前記第1凸部の周方向の寸法が、前記第2凸部の周方向の寸法よりも大きい、
請求項1または2に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項4】
前記第2凸部は、前記第1凸部よりも後方に位置する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項5】
前記切削インサートは、前記切削インサートの外周面から窪み、上下方向に延びる係止溝を有し、
前記ポケットは、前記係止溝に係止される係止リブを有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項6】
前記係止溝は、
第1溝壁面と、
前記第1溝壁面よりも後方に配置される第2溝壁面と、を有し、
前記係止リブは、
前記第1溝壁面と接触する第1リブ壁面と、
前記第1リブ壁面よりも後方に配置され、前記第2溝壁面と接触する第2リブ壁面と、を有し、
前記第1溝壁面および前記第1リブ壁面は、上下方向から見て、後方へ向かうに従い左右方向において前記サポーターの内側に向けて延び、
前記第2溝壁面および前記第2リブ壁面は、上下方向から見て、後方へ向かうに従い左右方向において前記サポーターの外側に向けて延びる、
請求項5に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項7】
前記係止溝は、前後方向に並んで複数設けられ、
複数の前記係止溝は、前側係止溝と、後側係止溝と、を含み、
前記前側係止溝の前記第1溝壁面と、前記後側係止溝の前記第1溝壁面とは、上下方向から見て、前記サポーターの中心軸を通り前後方向に延びる基準線に対する傾斜角が互いに異なり、
前記前側係止溝の前記第2溝壁面と、前記後側係止溝の前記第2溝壁面とは、上下方向から見て、前記基準線に対する傾斜角が互いに異なる、
請求項6に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項8】
前記係止リブは、前後方向に並んで複数設けられ、
複数の前記係止リブは、前側係止リブと、後側係止リブと、を含み、
前記前側係止リブの前記第1リブ壁面と、前記後側係止リブの前記第1リブ壁面とは、上下方向から見て、前記サポーターの中心軸を通り前後方向に延びる基準線に対する傾斜角が互いに異なり、
前記前側係止リブの前記第2リブ壁面と、前記後側係止リブの前記第2リブ壁面とは、上下方向から見て、前記基準線に対する傾斜角が互いに異なる、
請求項6または7に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項9】
前記サポーターは、前記サポーターを上下方向に貫通するスリットを有し、
前記把持アームは、前記スリットの幅寸法を狭めるように弾性変形する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項10】
前記サポーターは、左右方向において、前記ポケットを介して前記把持アームと対向する固定アームを有し、
前記把持アームが弾性変形しつつ前記固定アームに接近することで、前記ポケットの左右方向の寸法が狭められる、
請求項1から9のいずれか1項に記載の切削インサートのクランプ構造。
【請求項11】
クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる板状のサポーターであって、
前記サポーターの前方端部から後方に窪む凹状をなし、切刃を有する切削インサートを保持するポケットと、
前記ポケットの左右方向の寸法を狭めるように弾性変形可能な把持アームと、
前記サポーターの外周面に配置され、前記インサート取付座の側壁に接触する複数の凸部と、を有し、
前記複数の凸部は、
前記把持アームに配置される第1凸部と、
前記第1凸部と間隔をあけて配置される第2凸部と、を含み、
前記第1凸部が前記サポーターの外周面から突出する突出量が、前記第2凸部が前記サポーターの外周面から突出する突出量よりも大きい、
サポーター。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の切削インサートのクランプ構造と、
前記インサート取付座を有する前記工具本体と、
前記インサート取付座に前記切削インサートのクランプ構造を固定する前記クランプ部材と、を備える、
刃先交換式切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の刃先交換式切削工具が知られている。この刃先交換式切削工具は、インサート取付座を有する工具本体と、硬質材料からなる切削インサートと、切削インサートを保持するキャリア本体(サポーター)と、切削インサートおよびキャリア本体をインサート取付座に固定するクランプ部材と、を備える。特許文献1では、キャリア本体を用いることで高価な切削インサートの外形を小型化でき、コスト削減の効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の刃先交換式切削工具では、上述のように小型化した切削インサートをサポーターによって安定して固定し、かつ、サポーターをインサート取付座に安定して固定する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、切削インサートをコンパクト化してコスト削減しつつ、切削インサートおよびサポーターを安定して固定できる切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートのクランプ構造であって、柱状をなし、少なくとも前方端部に切刃が配置される切削インサートと、前記切削インサートの外周面を保持する板状のサポーターと、を備え、前記サポーターは、前記サポーターの前方端部から後方に窪む凹状をなし、前記切削インサートが配置されるポケットと、前記ポケットの左右方向の寸法を狭めるように弾性変形可能な把持アームと、前記サポーターの外周面に配置され、前記インサート取付座の側壁に接触する複数の凸部と、を有し、前記複数の凸部は、前記把持アームに配置される第1凸部と、前記第1凸部と間隔をあけて配置される第2凸部と、を含み、前記第1凸部が前記サポーターの外周面から突出する突出量が、前記第2凸部が前記サポーターの外周面から突出する突出量よりも大きい。
また、本発明の一つの態様は、クランプ部材により工具本体のインサート取付座に着脱可能に取り付けられる板状のサポーターであって、前記サポーターの前方端部から後方に窪む凹状をなし、切刃を有する切削インサートを保持するポケットと、前記ポケットの左右方向の寸法を狭めるように弾性変形可能な把持アームと、前記サポーターの外周面に配置され、前記インサート取付座の側壁に接触する複数の凸部と、を有し、前記複数の凸部は、前記把持アームに配置される第1凸部と、前記第1凸部と間隔をあけて配置される第2凸部と、を含み、前記第1凸部が前記サポーターの外周面から突出する突出量が、前記第2凸部が前記サポーターの外周面から突出する突出量よりも大きい。
また、本発明の刃先交換式切削工具の一つの態様は、上述の切削インサートのクランプ構造と、前記インサート取付座を有する前記工具本体と、前記インサート取付座に前記切削インサートのクランプ構造を固定する前記クランプ部材と、を備える。
【0007】
本発明の切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具では、サポーターが切削インサートを保持することにより、例えば超硬合金などの高価な硬質材料からなる切削インサートの外形を小さく抑えることができる。このため、工具コストを削減できる。
【0008】
本発明では、切削インサートのクランプ構造、すなわち切削インサートおよびサポーターを、クランプ部材によってインサート取付座に取り付けるクランプ時において、把持アームが弾性変形する。具体的には、クランプ部材をサポーターに係止し、例えばこのクランプ部材に後方への引き込み力を付与することにより、把持アームをインサート取付座の側壁に押し付けて弾性変形させる。把持アームが弾性変形することで、ポケットの左右方向の寸法(幅寸法)が減少して、切削インサートがポケットに固定される。
【0009】
詳しくは、サポーターの外周面には、第1凸部と第2凸部が設けられており、第1凸部の突出量は、第2凸部の突出量よりも大きい。このため、クランプ部材でサポーターを後方に引き込んだときに、まず突出量の大きい第1凸部が、インサート取付座の側壁に押圧される。これにより、把持アームが安定して弾性変形させられ、切削インサートがポケットにクランプされる。突出量の小さい第2凸部については、例えば、把持アームが一定以上に弾性変形させられた時点で、インサート取付座の側壁に押圧される。または、第2凸部は、把持アームが弾性変形させられる前から、インサート取付座の側壁に接触していてもよい。
【0010】
本発明によれば、第1凸部によって把持アームの弾性変形量を大きく確保できるため、切削インサートを強固にクランプでき、切削インサートの固定状態が安定する。また、インサート取付座の側壁に対して、複数の凸部(第1凸部および第2凸部)を積極的に接触させることで、インサート取付座に対するサポーターの固定状態も安定する。
【0011】
詳しくは、例えば本発明と異なり、サポーターの外周面のうち、インサート取付座の側壁に接触する部分が単なる平面であると、この平面のうちどの箇所がインサート取付座の側壁に強く押し当てられるかは、製品の個体差などによってばらつくおそれがある。このため、サポーターの固定状態(クランプ力)にもばらつきが生じるおそれがある。
一方、本発明によれば、サポーターの外周面のうち、所定の箇所(第1凸部および第2凸部)をインサート取付座の側壁に強く押し当てることができるため、上述のようなばらつきが抑制される。
【0012】
以上より本発明によれば、切削インサートをコンパクト化してコスト削減しつつ、切削インサートおよびサポーターを安定して固定できる。また、サポーターの外周面に複数の凸部を設けるというシンプルな構成によって、上述の優れた作用効果が奏功される。
【0013】
前記切削インサートのクランプ構造において、前記第1凸部および前記第2凸部は、上下方向から見て、それぞれ凸曲線状をなし、前記第1凸部の曲率半径が、前記第2凸部の曲率半径よりも大きいことが好ましい。
【0014】
前記切削インサートのクランプ構造において、前記第1凸部の周方向の寸法が、前記第2凸部の周方向の寸法よりも大きいことが好ましい。
【0015】
上下方向から見て、第1凸部の曲率半径が第2凸部の曲率半径よりも大きくされていたり、第1凸部の周方向の寸法が第2凸部の周方向の寸法よりも大きくされていたりすることで、下記の作用効果が得られる。
すなわち、上記構成によれば、クランプ部材でサポーターを引き込むときに、インサート取付座の側壁への第1凸部の当たり方が緩やかとなり、徐々に押圧力が高められていく。このため、把持アームが安定して弾性変形し、切削インサートのクランプ状態がより安定する。また、インサート取付座に対するサポーターの固定状態も安定する。
【0016】
前記切削インサートのクランプ構造において、前記第2凸部は、前記第1凸部よりも後方に位置することが好ましい。
【0017】
この場合、第1凸部が第2凸部よりも前方に配置されるため、クランプ時に、第1凸部により強い押圧力を安定して付与しやすい。またクランプ時に、第1凸部よりも後に(遅れて)、第2凸部に押圧力が付与されるようにすることが容易である。第1凸部の押圧による把持アームの弾性変形量が、より安定して確保される。
【0018】
前記切削インサートのクランプ構造において、前記切削インサートは、前記切削インサートの外周面から窪み、上下方向に延びる係止溝を有し、前記ポケットは、前記係止溝に係止される係止リブを有することが好ましい。
【0019】
この場合、係止溝と係止リブとが係止されることにより、切削インサートとポケットとの接触面積が大きく確保され、かつ、切削インサートとポケットとの上下方向以外の方向(前後方向など)への相対移動が規制される。したがって、切削インサートがポケットにより安定して固定される。
【0020】
前記切削インサートのクランプ構造において、前記係止溝は、第1溝壁面と、前記第1溝壁面よりも後方に配置される第2溝壁面と、を有し、前記係止リブは、前記第1溝壁面と接触する第1リブ壁面と、前記第1リブ壁面よりも後方に配置され、前記第2溝壁面と接触する第2リブ壁面と、を有し、前記第1溝壁面および前記第1リブ壁面は、上下方向から見て、後方へ向かうに従い左右方向において前記サポーターの内側に向けて延び、前記第2溝壁面および前記第2リブ壁面は、上下方向から見て、後方へ向かうに従い左右方向において前記サポーターの外側に向けて延びることが好ましい。
【0021】
この場合、上下方向から見て、第1溝壁面および第1リブ壁面の組が傾斜する向きと、第2溝壁面および第2リブ壁面の組が傾斜する向きとが、互いに異なる。これにより、切削時に様々な方向から切削インサートに作用する切削負荷に対する安定性が増し、切削インサートをポケットにより安定してクランプできる。
【0022】
前記切削インサートのクランプ構造において、前記係止溝は、前後方向に並んで複数設けられ、複数の前記係止溝は、前側係止溝と、後側係止溝と、を含み、前記前側係止溝の前記第1溝壁面と、前記後側係止溝の前記第1溝壁面とは、上下方向から見て、前記サポーターの中心軸を通り前後方向に延びる基準線に対する傾斜角が互いに異なり、前記前側係止溝の前記第2溝壁面と、前記後側係止溝の前記第2溝壁面とは、上下方向から見て、前記基準線に対する傾斜角が互いに異なることが好ましい。
【0023】
前記切削インサートのクランプ構造において、前記係止リブは、前後方向に並んで複数設けられ、複数の前記係止リブは、前側係止リブと、後側係止リブと、を含み、前記前側係止リブの前記第1リブ壁面と、前記後側係止リブの前記第1リブ壁面とは、上下方向から見て、前記サポーターの中心軸を通り前後方向に延びる基準線に対する傾斜角が互いに異なり、前記前側係止リブの前記第2リブ壁面と、前記後側係止リブの前記第2リブ壁面とは、上下方向から見て、前記基準線に対する傾斜角が互いに異なることが好ましい。
【0024】
この場合、上下方向から見て、前側係止溝の第1溝壁面および前側係止リブの第1リブ壁面の組が、基準線に対して傾斜する傾斜角と、後側係止溝の第1溝壁面および後側係止リブの第1リブ壁面の組が、基準線に対して傾斜する傾斜角とが、互いに異なる。また、上下方向から見て、前側係止溝の第2溝壁面および前側係止リブの第2リブ壁面の組が、基準線に対して傾斜する傾斜角と、後側係止溝の第2溝壁面および後側係止リブの第2リブ壁面の組が、基準線に対して傾斜する傾斜角とが、互いに異なる。
このため、切削インサートが受ける切削負荷の向き等に応じて、各傾斜角を好適に設定することが可能となり、様々な切削条件等に適宜対応できる。
【0025】
前記切削インサートのクランプ構造において、前記サポーターは、前記サポーターを上下方向に貫通するスリットを有し、前記把持アームは、前記スリットの幅寸法を狭めるように弾性変形することが好ましい。
【0026】
この場合、スリットによって把持アームが弾性変形しやすくなる。また、スリットによって把持アームの弾性変形の自由度(弾性変形量や変形方向などの自由度)が増すため、切削インサートがより安定してポケットに密着する。このため、切削インサートのクランプ状態がより安定する。
【0027】
前記切削インサートのクランプ構造において、前記サポーターは、左右方向において、前記ポケットを介して前記把持アームと対向する固定アームを有し、前記把持アームが弾性変形しつつ前記固定アームに接近することで、前記ポケットの左右方向の寸法が狭められることが好ましい。
【0028】
この場合、把持アームが固定アームに接近することにより、切削インサートがポケットにクランプされる。切削インサートの固定状態が良好に維持され、切削インサートのクランプ状態をより安定させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の前記態様の切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具によれば、切削インサートをコンパクト化してコスト削減しつつ、切削インサートおよびサポーターを安定して固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具の一部を示す上面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具の一部を示す側面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具を示す正面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す上面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す側面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の切削インサートを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の切削インサートを示す上面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態のサポーターを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具の一部を示す上面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具の一部を示す側面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具を示す正面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す上面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す側面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態の切削インサートを示す斜視図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態の切削インサートを示す上面図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態のサポーターを示す斜視図である。
【
図19】
図19は、第3実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具の一部を示す上面図である。
【
図20】
図20は、第3実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具の一部を示す側面図である。
【
図21】
図21は、第3実施形態の切削インサートのクランプ構造、サポーター、および刃先交換式切削工具を示す正面図である。
【
図22】
図22は、第3実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す斜視図である。
【
図23】
図23は、第3実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す上面図である。
【
図24】
図24は、第3実施形態の切削インサートのクランプ構造を示す側面図である。
【
図25】
図25は、第3実施形態の切削インサートを示す斜視図である。
【
図26】
図26は、第3実施形態の切削インサートを示す上面図である。
【
図27】
図27は、第3実施形態のサポーターを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態の切削インサートのクランプ構造10、サポーター3および刃先交換式切削工具1について、
図1~
図9を参照して説明する。本実施形態の刃先交換式切削工具1は、旋削加工(ターニング)に用いられる刃先交換式バイトであり、図示しない旋盤などの工作機械の刃物台等に着脱可能に装着される。なお本実施形態では、刃先交換式切削工具1を、単に切削工具または工具などと呼ぶ場合がある。
【0032】
図1~
図3に示すように、刃先交換式切削工具1は、切削インサートのクランプ構造10と、インサート取付座5を有する工具本体4と、インサート取付座5に切削インサートのクランプ構造10を固定するクランプ部材6と、を備える。
切削インサートのクランプ構造10は、クランプ部材6により工具本体4のインサート取付座5に着脱可能に取り付けられる。切削インサートのクランプ構造10は、柱状をなす切削インサート2と、切削インサート2の外周面を保持する板状のサポーター3と、を備える。
【0033】
図4~
図6に示すように、本実施形態ではサポーター3が、中心軸C1を中心とする四角形板状であり、具体的には菱形板状である。サポーター3は、中心軸C1が延びる方向つまり中心軸C1の軸方向において、互いに反対方向を向く一対の板面3a,3bを有する。一対の板面3a,3bのうち一方の板面3aは、表面3aであり、他方の板面3bは、裏面3bである。またサポーター3は、サポーター3の複数(本実施形態では4つ)の角部のうち1つの角部に配置される凹状のポケット33を有する。ポケット33には、切削インサート2が配置される。
【0034】
〔方向の定義〕
本実施形態では、サポーター3の一対の板面3a,3bが向く方向を、上下方向と呼ぶ。各図に示すXYZ直交座標系において、上下方向は、Z軸方向に相当する。上下方向のうち、裏面3bから表面3aへ向かう方向(+Z側)を上側と呼び、表面3aから裏面3bへ向かう方向(-Z側)を下側と呼ぶ。なお上下方向は、サポーター3の中心軸C1の軸方向に相当する。このため上下方向は、軸方向と言い換えてもよい。また上下方向は、サポーター3の板の厚さ方向に相当する。このため上下方向は、板厚方向と言い換えてもよい。
【0035】
上下方向と直交する方向のうち、サポーター3のポケット33が配置される一の角部と、サポーター3の中心軸C1とを通る所定方向を、前後方向と呼ぶ。本実施形態において前後方向は、一の角部と、一の角部の対角に位置する他の角部とを通る方向でもある。各図において前後方向は、X軸方向に相当する。前後方向のうち、中心軸C1から一の角部(ポケット33)へ向かう方向(-X側)を前方と呼び、一の角部から中心軸C1へ向かう方向(+X側)を後方と呼ぶ。
【0036】
上下方向および前後方向と直交する方向を、左右方向と呼ぶ。各図において左右方向は、Y軸方向に相当する。左右方向のうち一方側(+Y側)を左側と呼び、他方側(-Y側)を右側と呼ぶ。+Y側は、切削インサートのクランプ構造10を前方から見たときの左側に相当し、-Y側は、切削インサートのクランプ構造10を前方から見たときの右側に相当する。
【0037】
なお本実施形態において、上側、下側、前方、後方、左側および右側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0038】
また、サポーター3の中心軸C1と直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸C1に近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸C1から離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
また、サポーター3の中心軸C1回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。
なお中心軸C1は、サポーター中心軸C1と言い換えてもよく、軸方向は、サポーター軸方向と言い換えてもよい。また径方向は、サポーター径方向と言い換えてもよい。周方向は、サポーター周方向と言い換えてもよい。
【0039】
また、切削インサート2の中心軸であるインサート中心軸C2が延びる方向を、インサート軸方向と呼ぶ。切削インサート2のインサート中心軸C2は、サポーター3の中心軸C1よりも前方に位置し、中心軸C1と平行に延びる。すなわち、インサート軸方向は、上下方向、サポーター軸方向および板厚方向に相当する。
【0040】
インサート中心軸C2と直交する方向をインサート径方向と呼ぶ。インサート径方向のうち、インサート中心軸C2に近づく方向をインサート径方向の内側と呼び、インサート中心軸C2から離れる方向をインサート径方向の外側と呼ぶ。
インサート中心軸C2回りに周回する方向をインサート周方向と呼ぶ。
【0041】
〔工具本体〕
工具本体4は、例えば鋼材等の金属製である。
図1~
図3に示すように、工具本体4は、略角柱状であり、図示しない工具中心軸に沿って延びる。インサート取付座5は、工具本体4の両端部(第1端部4aおよび図示しない第2端部)のうち、第1端部4aに配置される。なお本実施形態において、工具中心軸が延びる方向を工具軸方向と呼んでもよい。また、工具軸方向のうち、第2端部から第1端部4aへ向かう方向を先端側と呼び、第1端部4aから第2端部へ向かう方向を後端側と呼んでもよい。
【0042】
工具本体4は、互いに反対方向を向く頂面41および底面42、互いに反対方向を向く一対の横面43,44、ならびに、第1端部4aの端面に位置する先端面45を有する。一対の横面43,44は、一方の横面43と、他方の横面44と、を含む。
【0043】
工具本体4の外面のうち、頂面41は、上側を向く。頂面41のうち工具本体4の第1端部4aつまり先端部に位置する部分は、第1端部4a以外の部分よりも、上側に突出する。また工具本体4は、傾斜面41aを有する。傾斜面41aは、頂面41のうち第1端部4aに位置する部分に配置される。傾斜面41aは、後方に向かうに従い下側に位置する傾斜した平面状である。
工具本体4の外面のうち、底面42は、下側を向く。
【0044】
工具本体4の外面のうち、一方の横面43は、左側を向く。
工具本体4の外面のうち、他方の横面44は、右側を向く。他方の横面44のうち工具本体4の第1端部4aに位置する部分は、第1端部4a以外の部分よりも、右側に突出する。
【0045】
工具本体4は、切削インサート2およびサポーター3が着脱可能に装着されるインサート取付座5と、クランプ部材6の後述するクランプネジ6bが螺着される図示しないネジ穴と、を有する。ネジ穴は、頂面41のうちインサート取付座5と傾斜面41aとの間に位置する部分に開口し、略上下方向に沿って延びる。
【0046】
インサート取付座5は、板状のシート部材51を有する。シート部材51は、インサート取付座5の一部(底面)を構成する。シート部材51は、シート部材51を上下方向に貫通するシート孔(図示省略)を有する。シート部材51は、シート孔に挿通される図示しないシート固定ネジにより、第1端部4aに固定される。本実施形態ではシート部材51が、四角形板状であり、具体的には菱形板状である。シート部材51は、例えば超硬合金製等である。
【0047】
インサート取付座5は、工具本体4の第1端部4aつまり先端部において、頂面41、他方の横面44および先端面45に開口する。インサート取付座5は、工具本体4の頂面41、他方の横面44および先端面45から窪む凹状である。インサート取付座5は、切削インサートのクランプ構造10、すなわち切削インサート2およびサポーター3を受け入れ可能な凹所である。本実施形態ではインサート取付座5が、略四角形凹状であり、具体的には略菱形凹状である。
【0048】
インサート取付座5は、切削インサート2の裏面22およびサポーター3の裏面3bと接触する底壁5aと、サポーター3の外周面3cと接触する側壁5bと、を有する。
底壁5aは、シート部材51の一対の板面のうち、上側を向く一方の板面(上面)により構成される。側壁5bは、複数設けられる。本実施形態ではインサート取付座5が、一対の側壁5bを有する。本実施形態では、上下方向から見て、一対の側壁5b間に形成される角度が、例えば、35°である。
【0049】
〔切削インサート〕
切削インサート2は、例えば、超硬合金製、PCD(多結晶ダイヤモンド)製、cBN(立方晶窒化ホウ素)製、サーメット製、セラミック製等である。切削インサート2は、工具本体4よりも硬度が高い硬質焼結体である。
【0050】
図4~
図6に示すように、切削インサート2は、サポーター3のポケット33に着脱可能に取り付けられる。切削インサート2は、サポーター3にクランプされることにより、ポケット33に固定される。
【0051】
図7および
図8に示すように、本実施形態の切削インサート2は、インサート中心軸C2を中心とする略多角形柱状である。切削インサート2の前後方向の寸法は、切削インサート2の左右方向の寸法よりも大きい。すなわち切削インサート2は、前後方向に延びる。切削インサート2の左右方向の寸法つまり幅寸法は、例えば、3mm以上6mm以下である。
【0052】
切削インサート2は、上下方向を向く表面21および裏面22と、表面21と裏面22とに接続される外周面23と、少なくとも表面21と外周面23とが接続される稜線部に配置される切刃24と、を有する。
【0053】
表面21は、前後方向に長い略多角形状である。表面21は、上側を向く。表面21は、すくい面26を有する。すくい面26は、表面21のうち前後方向の端部に配置される。すくい面26は、表面21のうち切刃24と隣接する部分に配置される。すくい面26は、切刃24と接続される。
【0054】
裏面22は、前後方向に長い略多角形状である。裏面22は、下側を向く。裏面22は、着座面27を有する。着座面27は、インサート中心軸C2と垂直な方向に拡がる平面状である。着座面27は、インサート取付座5の底壁5aと接触する。
【0055】
外周面23は、インサート径方向の外側を向き、インサート周方向に延びる。外周面23は、逃げ面28を有する。逃げ面28は、外周面23のうちインサート軸方向の端部に配置される。逃げ面28は、外周面23のうち切刃24と隣接する部分に配置される。逃げ面28は、切刃24と接続される。
【0056】
外周面23は、前方を向く前側壁23aと、後方を向く後側壁23bと、前側壁23aと後側壁23bとの間に位置し、左右方向を向く横側壁23cと、を有する。
【0057】
前側壁23aは、外周面23のうち前方の端部に配置される。前側壁23aは、外周面23のうち前方を向き、かつ左右方向を向く部分に配置される。前側壁23aは、一対設けられる。一対の前側壁23aは、インサート周方向に並んで配置される。本実施形態では一対の前側壁23a間に、前方に向けて凸となる凸曲面部が配置される。
【0058】
後側壁23bは、外周面23のうち後方の端部に配置される。後側壁23bは、外周面23のうち後方を向き、かつ左右方向を向く部分に配置される。後側壁23bは、一対設けられる。一対の後側壁23bは、インサート周方向に並んで配置される。本実施形態では一対の後側壁23b間に、後方に向けて凸となる凸曲面部が配置される。
【0059】
横側壁23cは、外周面23のうち前端部と後端部との間の中間部分に配置される。横側壁23cは、一対設けられる。一対の横側壁23cは、左右方向において互いに反対方向を向く。一対の横側壁23cのうち、一方の横側壁23cは左側を向き、他方の横側壁23cは右側を向く。
【0060】
また外周面23は、横押圧面23dと、後押圧面23eと、係止溝29と、を有する。すなわち、切削インサート2は、横押圧面23dと、後押圧面23eと、係止溝29と、を有する。
【0061】
横押圧面23dは、平面状である。横押圧面23dは、外周面23に一対設けられる。一対の横押圧面23dは、一対の横側壁23cに配置される。すなわち、横押圧面23dは、外周面23のうち左右方向を向く部分に配置される。本実施形態では、横押圧面23dが、左右方向と垂直な方向に拡がる。
図8に示すように、切削インサート2をインサート軸方向から見た上面視で、横押圧面23dは、インサート中心軸C2を通り前後方向に延びる直線である基準線Rと平行に延びる。なお、
図5に示すように、基準線Rは、上下方向から見て、サポーター3の中心軸C1を通り前後方向に延びる直線でもある。
【0062】
図7および
図8に示すように、後押圧面23eは、平面状である。後押圧面23eは、外周面23に一対設けられる。一対の後押圧面23eは、一対の後側壁23bに配置される。すなわち、後押圧面23eは、外周面23のうち後方を向く部分に配置される。本実施形態では後押圧面23eが、上下方向から見て、左右方向および前後方向と傾斜する方向に拡がる。
図8に示すインサート上面視で、後押圧面23eは、後方へ向かうに従い、左右方向において切削インサート2の内側(インサート中心軸C2側)に向けて延びる。すなわちこの上面視で、後押圧面23eは、後方へ向かうに従い基準線Rに近づくように延びる。
【0063】
図7および
図8に示すように、係止溝29は、切削インサート2の外周面23から窪み、上下方向に延びる。係止溝29は、上下方向と垂直な断面の形状が、凹V字状である。本実施形態では係止溝29が、横側壁23cに配置される。
【0064】
係止溝29は、第1溝壁面29aと、第1溝壁面29aよりも後方に配置される第2溝壁面29bと、を有する。
【0065】
第1溝壁面29aは、係止溝29のうち後方を向く壁面部分であり、本実施形態では平面状である。第1溝壁面29aは、
図8に示すように上下方向から見て、後方へ向かうに従い、左右方向において切削インサート2の内側(基準線Rに近づく方向)に向けて延びる。言い換えると、第1溝壁面29aは、
図5に示すように切削インサートのクランプ構造10を上下方向から見て、後方へ向かうに従い、左右方向においてサポーター3の内側(基準線Rに近づく方向)に向けて延びる。
【0066】
第2溝壁面29bは、係止溝29のうち前方を向く壁面部分であり、本実施形態では平面状である。第2溝壁面29bは、
図8に示すように上下方向から見て、後方へ向かうに従い、左右方向において切削インサート2の外側(基準線Rから離れる方向)に向けて延びる。言い換えると、第2溝壁面29bは、
図5に示すように切削インサートのクランプ構造10を上下方向から見て、後方へ向かうに従い、左右方向においてサポーター3の外側(基準線Rから離れる方向)に向けて延びる。
【0067】
図8に示すように、係止溝29は、複数設けられる。複数の係止溝29は、インサート周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では係止溝29が、一対の横側壁23cにそれぞれ設けられる。具体的に、係止溝29は、左側を向く一方の横側壁23cに、前後方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)設けられる。また係止溝29は、右側を向く他方の横側壁23cに、前後方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)設けられる。すなわち、係止溝29は、前後方向に並んで複数設けられる。
【0068】
複数の係止溝29は、前側係止溝29Aと、前側係止溝29Aよりも後方に配置される後側係止溝29Bと、を含む。
前側係止溝29Aの第1溝壁面29aと、後側係止溝29Bの第1溝壁面29aとは、上下方向から見て、基準線Rに対する傾斜角が互いに異なる。本実施形態では上下方向から見て、前側係止溝29Aの第1溝壁面29aが基準線Rに対して傾斜する傾斜角が、後側係止溝29Bの第1溝壁面29aが基準線Rに対して傾斜する傾斜角よりも大きい。
【0069】
前側係止溝29Aの第2溝壁面29bと、後側係止溝29Bの第2溝壁面29bとは、上下方向から見て、基準線Rに対する傾斜角が互いに異なる。本実施形態では上下方向から見て、前側係止溝29Aの第2溝壁面29bが基準線Rに対して傾斜する傾斜角が、後側係止溝29Bの第2溝壁面29bが基準線Rに対して傾斜する傾斜角よりも小さい。
【0070】
図7に示すように、切刃24は、切削インサート2のうち少なくとも前方端部に配置される。切刃24は、すくい面26と逃げ面28とが接続される稜線部に配置される。切刃24は、前方に向けて突出する凸V字状である。切刃24は、コーナ刃部24aと、直線刃部24bと、を有する。
【0071】
コーナ刃部24aは、前方に向けて膨らむ凸曲線状である。直線刃部24bは、コーナ刃部24aの端部と接続され、直線状に延びる。直線刃部24bの刃長は、コーナ刃部24aの刃長よりも長い。本実施形態では、コーナ刃部24aが延びる刃長方向の両端部に、一対の直線刃部24bが接続される。すなわち直線刃部24bは、切刃24に一対設けられる。本実施形態では、
図8に示すようにインサート軸方向(上下方向)から見て、一対の直線刃部24b間に形成される角度が、例えば、35°である。
【0072】
本実施形態では切削インサート2が、インサート軸方向つまり上下方向において、表裏反転対称形状である。また切削インサート2は、前後方向において前後反転対称形状である。すなわち、切削インサート2は、インサート中心軸C2を中心として180°回転対称形状である。
また、切削インサート2は、上下方向から見て、基準線Rを対称軸とする左右対称(線対称)形状である。また、切削インサート2は、上下方向から見て、インサート中心軸C2を通り基準線Rと直交する仮想線Vを対称軸とする前後対称(線対称)形状である。
【0073】
このため切刃24は、切削インサート2に複数設けられる。具体的に、切刃24は、表面21における前後方向の両端部に2つと、裏面22における前後方向の両端部に2つの、計4つ設けられる。
【0074】
図4~
図6に示すように、切削インサート2がサポーター3に保持された状態で、切削インサート2の前方端部に位置する切刃24は、サポーター3よりも前方に突出して配置される。また切削インサート2の後方端部は、サポーター3の中心軸C1よりも前方に位置する。
【0075】
〔サポーター〕
サポーター3は、例えば鋼材等の金属製である。サポーター3は、切削インサート2よりも硬度が低く、靭性が高く、廉価な材料により構成される。
図1~
図3に示すように、サポーター3は、クランプ部材6により工具本体4のインサート取付座5に着脱可能に取り付けられる。サポーター3は、切削インサート2の外周面23を、左右方向および後方から保持する。本実施形態ではサポーター3が、表裏反転対称形状である。
【0076】
図4~
図6および
図9に示すように、サポーター3は、一対の板面3a,3bと、外周面3cと、を有する。一対の板面3a,3bは、上下方向を向く。一対の板面3a,3bのうち、一方の板面(表面)3aは、上側を向く。一方の板面3aは、中心軸C1と垂直な方向に拡がる平面状である。一対の板面3a,3bのうち、他方の板面(裏面)3bは、下側を向く。他方の板面3bは、中心軸C1と垂直な方向に拡がる平面状である。
【0077】
本実施形態では、切削インサート2の表面21が、上下方向において一方の板面3aと同じ位置、つまりサポーター3の表面3aと面一に配置される。また、切削インサート2の裏面22は、上下方向において他方の板面3bと同じ位置、つまりサポーター3の裏面3bと面一に配置される。具体的には、切削インサート2の着座面27とサポーター3の裏面3bとが、互いに面一に配置される。
図2および
図3に示すように、着座面27および裏面3bは、インサート取付座5の底壁5aすなわちシート部材51の上面と接触する。
【0078】
図4~
図6および
図9に示すように、外周面3cは、上下方向の両端部が一対の板面3a,3bと接続される。外周面3cは、周方向(サポーター周方向)に並ぶ4つの側面3d,3eを有する。4つの側面3d,3eは、上下方向から見て略四角形状(本実施形態では略菱形形状)をなすサポーター3の4つの辺部に配置される。具体的に、外周面3cは、前方を向く一対の前側面3dと、後方を向く一対の後側面3eと、を有する。
【0079】
前側面3dは、外周面3cのうち前方を向き、かつ左右方向を向く部分に配置される。前側面3dは、平面状である。一対の前側面3dは、周方向に並んで配置される。一対の前側面3d間には、ポケット33が開口する。本実施形態では、
図5に示すように上下方向から見て、一対の前側面3d間に形成される角度が、例えば、35°である。
【0080】
後側面3eは、外周面3cのうち後方を向き、かつ左右方向を向く部分に配置される。後側面3eのうち、後述する凸部37が配置される部分以外の部分は、平面状である。一対の後側面3eは、周方向に並んで配置される。一対の後側面3e間には、後方に向けて凸となる凸曲面部が配置される。本実施形態では、
図5に示すように上下方向から見て、一対の後側面3e間に形成される角度が、例えば、35°である。すなわち、上下方向から見て、一対の後側面3e間に形成される角度は、インサート取付座5の一対の側壁5b間に形成される角度と、同じである。
【0081】
サポーター3の前側面3d、および、後側面3eのうち凸部37以外の部分は、一般的なISO規格に準ずる四角形板状の切削インサート(菱形インサート)と、同一の外形形状を有する。
図5において、ISO規格に準ずる菱形インサートの外形形状を、符号I(2点鎖線)により表す。
【0082】
また
図4~
図6および
図9に示すように、サポーター3は、貫通孔31と、把持アーム32と、ポケット33と、複数の凸部37と、を有する。
【0083】
貫通孔31は、サポーター3を上下方向に貫通する。貫通孔31は、略円孔状であり、上下方向に延びて一対の板面3a,3bに開口する。貫通孔31は、サポーター3の中心軸C1上に位置する。具体的に、貫通孔31の中心軸は、サポーター3の中心軸C1と同軸に配置される。サポーター3の貫通孔31は、一般的なISO規格に準ずる四角形板状の切削インサート(菱形インサート)の貫通孔と、同一の内径寸法を有する。
【0084】
本実施形態では、貫通孔31の前方端部と、ポケット33の後方端部とが、互いに接続される。貫通孔31とポケット33とは、前後方向において互いに繋がる。すなわち、貫通孔31とポケット33とは、互いに連通する。
【0085】
貫通孔31には、貫通孔31の上側から、クランプ部材6の後述するクランプ駒6aの図示しない突起部が挿入されて、係止される(
図3を参照)。すなわち貫通孔31には、クランプ部材6の一部が挿入されて係止される。
【0086】
図4~
図6および
図9に示すように、本実施形態では把持アーム32が、サポーター3に一対設けられる。一対の把持アーム32は、基準線Rの左側に配置される一方の把持アーム32と、基準線Rの右側に配置される他方の把持アーム32と、を含む。
【0087】
把持アーム32のうち、貫通孔31と左右方向に隣り合って配置される部分は、サポーター周方向に沿うように湾曲して延びる。把持アーム32のうち、ポケット33と左右方向に隣り合って配置される部分は、前後方向に延びる。把持アーム32のうちポケット33と左右方向に隣り合って配置される部分は、前方へ向かうに従い、左右方向の寸法が小さくなる。
図5に示すように、一対の把持アーム32は、貫通孔31よりも後方に配置される部分(後端部)同士が、基準線R上で互いに接続される。
【0088】
把持アーム32は、ポケット33の左右方向の寸法を狭めるように弾性変形可能である。具体的に、サポーター3の左側部分に位置する一方の把持アーム32は、後端部よりも前方に位置する部分が、右側に向けて弾性変形可能である。サポーター3の右側部分に位置する他方の把持アーム32は、後端部よりも前方に位置する部分が、左側に向けて弾性変形可能である。
【0089】
図4~
図6および
図9に示すように、ポケット33は、サポーター3の前方端部から後方に窪む凹状である。ポケット33は、サポーター3の前方を向く壁部に開口し、前後方向に延びる。またポケット33は、サポーター3を上下方向に貫通し、一対の板面3a,3bに開口する。ポケット33は、一対の把持アーム32間に配置される。ポケット33は、切削インサート2を保持する。ポケット33は、切削インサート2の一部(前端部以外の部分)を収容する。
【0090】
ポケット33は、横拘束面33aと、後拘束面33bと、係止リブ38と、を有する。すなわち、サポーター3は、横拘束面33aと、後拘束面33bと、係止リブ38と、を有する。
【0091】
横拘束面33aは、切削インサート2の横押圧面23dと接触する。横拘束面33aは、ポケット33に一対設けられる。一対の横拘束面33aは、一対の把持アーム32に配置される。具体的に、横拘束面33aは、把持アーム32の前端部に配置される。一対の横拘束面33aは、左右方向において、互いに間隔をあけて対向する。
【0092】
横拘束面33aは、平面状である。横拘束面33aは、左右方向と垂直な方向に拡がる。
図5に示すように、サポーター3を上下方向から見て、横拘束面33aは、基準線Rと平行に延びる。
【0093】
後拘束面33bは、切削インサート2の後押圧面23eと接触する。後拘束面33bは、ポケット33に一対設けられる。一対の後拘束面33bは、一対の把持アーム32に配置される。具体的に、後拘束面33bは、把持アーム32の前端部に配置され、横拘束面33aよりも後方に位置する。一対の後拘束面33bは、左右方向において、互いに間隔をあけて対向する。
【0094】
後拘束面33bは、平面状である。後拘束面33bは、上下方向から見て、左右方向および前後方向と傾斜する方向に拡がる。
図5に示すサポーター上面視で、後拘束面33bは、後方へ向かうに従い、左右方向においてサポーター3の内側(サポーター中心軸C1側)に向けて延びる。すなわちこの上面視で、後拘束面33bは、後方へ向かうに従い基準線Rに近づくように延びる。
【0095】
図4~
図6および
図9に示すように、係止リブ38は、切削インサート2の係止溝29に係止される。係止リブ38は、把持アーム32の前端部において左右方向を向く壁面から突出し、上下方向に延びる。係止リブ38は、上下方向と垂直な断面の形状が、凸V字状である。
【0096】
係止リブ38は、第1溝壁面29aと接触する第1リブ壁面38aと、第1リブ壁面38aよりも後方に配置され、第2溝壁面29bと接触する第2リブ壁面38bと、を有する。
【0097】
第1リブ壁面38aは、係止リブ38のうち前方を向く壁面部分であり、本実施形態では平面状である。第1リブ壁面38aは、
図5に示すように切削インサートのクランプ構造10を上下方向から見て、後方へ向かうに従い、左右方向においてサポーター3の内側(基準線Rに近づく方向)に向けて延びる。
【0098】
第2リブ壁面38bは、係止リブ38のうち後方を向く壁面部分であり、本実施形態では平面状である。第2リブ壁面38bは、
図5に示すように上下方向から見て、後方へ向かうに従い、左右方向においてサポーター3の外側(基準線Rから離れる方向)に向けて延びる。
【0099】
係止リブ38は、複数設けられる。本実施形態では係止リブ38が、一対の把持アーム32にそれぞれ設けられる。具体的に、係止リブ38は、左側の一方の把持アーム32に、前後方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)設けられる。また係止リブ38は、右側の他方の把持アーム32に、前後方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)設けられる。すなわち、係止リブ38は、前後方向に並んで複数設けられる。
【0100】
複数の係止リブ38は、前側係止リブ38Aと、前側係止リブ38Aよりも後方に配置される後側係止リブ38Bと、を含む。
前側係止リブ38Aの第1リブ壁面38aと、後側係止リブ38Bの第1リブ壁面38aとは、上下方向から見て、基準線Rに対する傾斜角が互いに異なる。本実施形態では上下方向から見て、前側係止リブ38Aの第1リブ壁面38aが基準線Rに対して傾斜する傾斜角が、後側係止リブ38Bの第1リブ壁面38aが基準線Rに対して傾斜する傾斜角よりも大きい。
【0101】
前側係止リブ38Aの第2リブ壁面38bと、後側係止リブ38Bの第2リブ壁面38bとは、上下方向から見て、基準線Rに対する傾斜角が互いに異なる。本実施形態では上下方向から見て、前側係止リブ38Aの第2リブ壁面38bが基準線Rに対して傾斜する傾斜角が、後側係止リブ38Bの第2リブ壁面38bが基準線Rに対して傾斜する傾斜角よりも小さい。
【0102】
複数の凸部37は、サポーター3の外周面3cに配置され、インサート取付座5の側壁5bに接触する。
図4~
図6および
図9に示すように、複数の凸部37は、把持アーム32に配置される第1凸部37Aと、第1凸部37Aと間隔をあけて配置される第2凸部37Bと、を含む。
【0103】
第1凸部37Aは、サポーター3の後側面3eの前端部に配置される。第1凸部37Aは、後側面3eのうち凸部37以外の部分よりもサポーター径方向の外側に突出する。すなわち、第1凸部37Aは、サポーター3の外周面3cから突出する。より詳しくは、第1凸部37Aは、
図5に示すISO規格に準ずる菱形インサートの外形形状Iよりも、サポーター径方向の外側に突出する。第1凸部37Aは、上下方向から見て、凸曲線状をなす。
【0104】
第1凸部37Aは、サポーター3に一対設けられる。一対の第1凸部37Aは、一対の把持アーム32に配置される。本実施形態では、サポーター3の4つの角部が、一対の鋭角の角部と、一対の鈍角の角部とを含んでおり、一対の第1凸部37Aは、一対の鈍角の角部に配置される。
【0105】
本実施形態では第2凸部37Bが、把持アーム32に配置される。第2凸部37Bは、第1凸部37Aよりも後方に位置する。第2凸部37Bは、サポーター3の後側面3eのうち前端部と後端部との間の中間部分に配置される。第2凸部37Bは、後側面3eのうち凸部37以外の部分よりもサポーター径方向の外側に突出する。すなわち、第2凸部37Bは、サポーター3の外周面3cから突出する。より詳しくは、第2凸部37Bは、
図5に示すISO規格に準ずる菱形インサートの外形形状Iよりも、サポーター径方向の外側に突出する。第2凸部37Bは、上下方向から見て、凸曲線状をなす。
【0106】
第2凸部37Bは、サポーター3に一対設けられる。一対の第2凸部37Bは、一対の把持アーム32に配置される。一対の第2凸部37Bは、サポーター3の一対の鈍角の角部と、サポーター3の後端部に位置する1つの鋭角の角部と、の間に配置される。
【0107】
第1凸部37Aがサポーター3の外周面3cから突出する突出量は、第2凸部37Bが外周面3cから突出する突出量よりも大きい。
図5に示すように上下方向から見て、第1凸部37Aの曲率半径は、第2凸部37Bの曲率半径よりも大きい。第1凸部37Aの周方向の寸法は、第2凸部37Bの周方向の寸法よりも大きい。
【0108】
〔クランプ部材〕
図1~
図3に示すように、クランプ部材6は、インサート取付座5に、切削インサートのクランプ構造10のうち少なくともサポーター3を固定する。クランプ部材6は、クランプ駒6aと、クランプネジ6bと、を有する。
【0109】
クランプ駒6aは、工具本体4の頂面41のうち第1端部4aに位置する部分の上側に配置される。クランプ駒6aは、前後方向に延びる。クランプ駒6aの前方端部は、インサート取付座5の上側に位置する。クランプ駒6aは、ネジ挿通孔6cと、スライド面6dと、突起部(図示省略)と、を有する。
【0110】
ネジ挿通孔6cは、クランプ駒6aを上下方向に貫通する。ネジ挿通孔6cは、クランプ駒6aのうち前後方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。
スライド面6dは、クランプ駒6aの後方端部に配置され、下側を向く。スライド面6dは、後方に向かうに従い下側に位置する傾斜した平面状である。スライド面6dは、工具本体4の傾斜面41aと摺動可能に接触する。
【0111】
特に図示しないが、突起部は、クランプ駒6aの前方端部に配置され、クランプ駒6aの下面から下側に突出する。突起部は、上下方向に延びる柱状である。突起部は、サポーター3の貫通孔31に上側から挿入される。突起部の外周面のうち後方を向く部分は、貫通孔31の内周面と接触する。
【0112】
クランプネジ6bは、ネジ挿通孔6cに上側から挿入され、工具本体4の頂面41に開口するネジ穴に螺着される。クランプネジ6bをネジ穴にねじ込んでいく際、スライド面6dが傾斜面41a上を摺動し、クランプ駒6aは、下側へ移動しつつ後方へ引き込まれる。これにより、クランプ駒6aの突起部が貫通孔31の内周面を介して、サポーター3を後方へ引き込む。また、クランプ駒6aの前方端部の下面のうち、突起部の周囲に位置する部分が、サポーター3の表面3aの一部に上側から接触し、サポーター3を下側へ押さえる。このようにして、サポーター3にクランプ部材6が係止される。
【0113】
また、クランプ部材6によってサポーター3が後方に引き込まれることで、一対の第1凸部37Aが、インサート取付座5の一対の側壁5bに押圧されて、把持アーム32は弾性変形させられる。これにより、
図4に示すように、ポケット33の一対の横拘束面33aが、切削インサート2の一対の横押圧面23dを左右方向から押圧する。また、ポケット33の一対の後拘束面33bが、切削インサート2の一対の後押圧面23eを後方かつ左右方向から押圧する。また、ポケット33の複数の係止リブ38が、切削インサート2の複数の係止溝29に係止される。このようにして、切削インサート2がポケット33に固定される。
【0114】
また、一対の把持アーム32が弾性変形させられていく過程において、一対の第2凸部37Bが、インサート取付座5の一対の側壁5bに押圧される。なお、第2凸部37Bは、把持アーム32が弾性変形させられるよりも前に、インサート取付座5の側壁5bに接触していてもよい。
【0115】
このように、一対の第1凸部37Aおよび一対の第2凸部37Bが側壁5bに押し当てられ、かつ裏面3bが底壁5aに押し付けられることにより、サポーター3がインサート取付座5に固定される。
【0116】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の切削インサートのクランプ構造10、サポーター3および刃先交換式切削工具1では、サポーター3が切削インサート2を保持することにより、例えば超硬合金などの高価な硬質材料からなる切削インサート2の外形を小さく抑えることができる。このため、工具コストを削減できる。
【0117】
本実施形態では、切削インサートのクランプ構造10、すなわち切削インサート2およびサポーター3を、クランプ部材6によってインサート取付座5に取り付けるクランプ時において、把持アーム32が弾性変形する。具体的には、クランプ部材6をサポーター3に係止し、このクランプ部材6に後方への引き込み力を付与することにより、把持アーム32をインサート取付座5の側壁5bに押し付けて弾性変形させる。把持アーム32が弾性変形することで、ポケット33の左右方向の寸法(幅寸法)が減少して、切削インサート2がポケット33に固定される。
【0118】
詳しくは、サポーター3の外周面3cには、第1凸部37Aと第2凸部37Bが設けられており、第1凸部37Aの突出量は、第2凸部37Bの突出量よりも大きい。このため、クランプ部材6でサポーター3を後方に引き込んだときに、まず突出量の大きい第1凸部37Aが、インサート取付座5の側壁5bに押圧される。これにより、把持アーム32が安定して弾性変形させられ、切削インサート2がポケット33にクランプされる。突出量の小さい第2凸部37Bについては、例えば、把持アーム32が一定以上に弾性変形させられた時点で、インサート取付座5の側壁5bに押圧される。または、第2凸部37Bは、把持アーム32が弾性変形させられる前から、インサート取付座5の側壁5bに接触していてもよい。
【0119】
本実施形態によれば、第1凸部37Aによって把持アーム32の弾性変形量を大きく確保できるため、切削インサート2を強固にクランプでき、切削インサート2の固定状態が安定する。また、インサート取付座5の側壁5bに対して、複数の凸部37(第1凸部37Aおよび第2凸部37B)を積極的に接触させることで、インサート取付座5に対するサポーター3の固定状態も安定する。
【0120】
詳しくは、例えば本実施形態と異なり、サポーター3の外周面3cのうち、インサート取付座5の側壁5bに接触する部分(後側面3e全体)が単なる平面であると、この平面のうちどの箇所がインサート取付座5の側壁5bに強く押し当てられるかは、製品の個体差などによってばらつくおそれがある。このため、サポーター3の固定状態(クランプ力)にもばらつきが生じるおそれがある。
一方、本実施形態によれば、サポーター3の外周面3cのうち、所定の箇所(第1凸部37Aおよび第2凸部37B)をインサート取付座5の側壁5bに強く押し当てることができるため、上述のようなばらつきが抑制される。
【0121】
以上より本実施形態によれば、切削インサート2をコンパクト化してコスト削減しつつ、切削インサート2およびサポーター3を安定して固定できる。また、サポーター3の外周面3cに複数の凸部37を設けるというシンプルな構成によって、上述の優れた作用効果が奏功される。
【0122】
また本実施形態では、第1凸部37Aおよび第2凸部37Bが、上下方向から見て、それぞれ凸曲線状をなしており、第1凸部37Aの曲率半径が、第2凸部37Bの曲率半径よりも大きい。また、第1凸部37Aの周方向の寸法が、第2凸部37Bの周方向の寸法よりも大きい。
このような構成により、クランプ部材6でサポーター3を引き込むときに、インサート取付座5の側壁5bへの第1凸部37Aの当たり方が緩やかとなり、徐々に押圧力が高められていく。このため、把持アーム32が安定して弾性変形し、切削インサート2のクランプ状態がより安定する。また、インサート取付座5に対するサポーター3の固定状態も安定する。
【0123】
また本実施形態では、第2凸部37Bが、第1凸部37Aよりも後方に配置される。
この場合、第1凸部37Aが第2凸部37Bよりも前方に配置されるため、クランプ時に、第1凸部37Aにより強い押圧力を安定して付与しやすい。またクランプ時に、第1凸部37Aよりも後に(遅れて)、第2凸部37Bに押圧力が付与されるようにすることが容易である。第1凸部37Aの押圧による把持アーム32の弾性変形量が、より安定して確保される。
【0124】
また本実施形態では、切削インサート2が係止溝29を有し、ポケット33が、係止溝29に係止される係止リブ38を有する。
この場合、係止溝29と係止リブ38とが係止されることにより、切削インサート2とポケット33との接触面積が大きく確保され、かつ、切削インサート2とポケット33との上下方向以外の方向(前後方向など)への相対移動が規制される。したがって、切削インサート2がポケット33により安定して固定される。
【0125】
また本実施形態では、第1溝壁面29aおよび第1リブ壁面38aが、上下方向から見て、後方へ向かうに従い左右方向においてサポーター3の内側(中央側)に向けて延び、第2溝壁面29bおよび第2リブ壁面38bは、上下方向から見て、後方へ向かうに従い左右方向においてサポーター3の外側に向けて延びる。
この場合、上下方向から見て、第1溝壁面29aおよび第1リブ壁面38aの組が傾斜する向きと、第2溝壁面29bおよび第2リブ壁面38bの組が傾斜する向きとが、互いに異なる。これにより、切削時に様々な方向から切削インサート2に作用する切削負荷に対する安定性が増し、切削インサート2をポケット33により安定してクランプできる。
【0126】
また本実施形態において、前側係止溝29Aの第1溝壁面29aと、後側係止溝29Bの第1溝壁面29aとは、上下方向から見て、基準線Rに対する傾斜角が互いに異なり、前側係止溝29Aの第2溝壁面29bと、後側係止溝29Bの第2溝壁面29bとは、上下方向から見て、基準線Rに対する傾斜角が互いに異なる。また、前側係止リブ38Aの第1リブ壁面38aと、後側係止リブ38Bの第1リブ壁面38aとは、上下方向から見て、基準線Rに対する傾斜角が互いに異なり、前側係止リブ38Aの第2リブ壁面38bと、後側係止リブ38Bの第2リブ壁面38bとは、上下方向から見て、基準線Rに対する傾斜角が互いに異なる。
言い換えると、上下方向から見て、前側係止溝29Aの第1溝壁面29aおよび前側係止リブ38Aの第1リブ壁面38aの組が、基準線Rに対して傾斜する傾斜角と、後側係止溝29Bの第1溝壁面29aおよび後側係止リブ38Bの第1リブ壁面38aの組が、基準線Rに対して傾斜する傾斜角とが、互いに異なる。また、上下方向から見て、前側係止溝29Aの第2溝壁面29bおよび前側係止リブ38Aの第2リブ壁面38bの組が、基準線Rに対して傾斜する傾斜角と、後側係止溝29Bの第2溝壁面29bおよび後側係止リブ38Bの第2リブ壁面38bの組が、基準線Rに対して傾斜する傾斜角とが、互いに異なる。
このため、切削インサート2が受ける切削負荷の向き等に応じて、各傾斜角を好適に設定することが可能となり、様々な切削条件等に適宜対応できる。
【0127】
また本実施形態では、切削インサート2が、上下方向において表裏反転対称形状であり、かつ前後方向において前後反転対称形状である。
この場合、1つの切削インサート2に切刃24が少なくとも4つ配置されるため、切削インサート2の工具寿命を延ばすことができる。
【0128】
また本実施形態では、切削インサート2の横押圧面23dは、外周面23のうち横側壁23cに配置され、後押圧面23eは、外周面23のうち後側壁23bに配置される。
この場合、サポーター3のポケット33によって、切削インサート2の外周面23のうち横側壁23cおよび後側壁23bを保持できる。サポーター3による切削インサート2の保持状態がより安定する。
【0129】
また本実施形態では、サポーター3の貫通孔31に、クランプ部材6の一部(突起部)が挿入されて係止される。
この場合、簡素な構造により、クランプ部材6をサポーター3に係止させることができる。
【0130】
また本実施形態では、サポーター3が四角形板状であり、貫通孔31の中心軸は、サポーター3の中心軸C1と同軸に配置される。また切削インサート2の後方端部が、中心軸C1よりも前方に位置するので、切削インサート2と、クランプ駒6aの突起部との干渉を抑えることができる。
この場合、例えば、一般的なISO規格に準ずる四角形板状の切削インサート(菱形インサート)がインサート取付座に装着される、既存の刃先交換式切削工具に対して、本実施形態の切削インサートのクランプ構造10を適用可能である。すなわち、従来品の工具本体のインサート取付座に本発明品を搭載することができ、汎用性が高められる。
【0131】
また本実施形態では、把持アーム32が一対設けられており、ポケット33は、一対の把持アーム32間に配置される。
この場合、一対の把持アーム32がそれぞれ弾性変形することにより、一対の把持アーム32同士の相対的な変位量が大きく確保される。このため、ポケット33への切削インサート2の着脱作業が容易となる。特に、本実施形態のように切削インサート2が小型化されていると、サポーター3への着脱時に切削インサート2が意図せず落下したり紛失したりすることが考えられるが、上記構成によれば着脱性が高められるため、このような落下や紛失が抑制される。
【0132】
また本実施形態では、ポケット33と貫通孔31とが互いに連通する。
この場合、把持アーム32の弾性変形量をより大きく確保することができる。したがって、切削インサート2のクランプ状態がより安定する。
【0133】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の切削インサートのクランプ構造20、サポーター3および刃先交換式切削工具11について、
図10~
図18を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の第1実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。
【0134】
図10~
図12に示すように、本実施形態では工具本体4が、雌ネジ孔46と、レバー収容部(図示省略)と、を有する。
雌ネジ孔46は、工具本体4の第1端部4aに配置される。雌ネジ孔46は、インサート取付座5よりも後端側に位置し、インサート取付座5と隣り合って配置される。雌ネジ孔46は、略上下方向に延びており、具体的には、サポーター3の中心軸C1と略平行に延びる。雌ネジ孔46の両端部は、工具本体4の頂面41と底面42とに開口する。雌ネジ孔46は、内周面に雌ネジ部を有する。
【0135】
特に図示しないが、レバー収容部は、工具本体4の第1端部4aの内部に配置される凹部または孔である。レバー収容部は、クランプ部材6の後述するクランプレバー61の一部を収容する。レバー収容部は、サポーター径方向に延びる。具体的に、レバー収容部は、略工具軸方向に延びる。
【0136】
レバー収容部の先端側の端部は、上下方向から見て、シート部材51のシート孔およびサポーター3の貫通孔31と重なる。レバー収容部の先端部は、シート部材51のシート孔を通して、サポーター3の貫通孔31と連通する。
レバー収容部の後端側の端部は、雌ネジ孔46と接続される。レバー収容部の後端部は、雌ネジ孔46と連通する。
【0137】
また本実施形態では、インサート取付座5が、略四角形凹状であり、具体的には略正方形凹状である。
図10に示すように上下方向から見て、インサート取付座5の一対の側壁5b間に形成される角度は、例えば、90°である。
【0138】
図13~
図15および
図18に示すように、サポーター3は、中心軸C1を中心とする四角形板状であり、具体的には正方形板状である。
図14に示すように上下方向から見て、一対の前側面3d間に形成される角度は、例えば、90°である。上下方向から見て、一対の後側面3e間に形成される角度は、例えば、90°である。
【0139】
図16および
図17に示すように、本実施形態の切削インサート2は、前述の第1実施形態で説明した切削インサート2と略同じ構成要素を備える。
図17に示すように、本実施形態では上下方向から見て、切削インサート2の切刃24の一対の直線刃部24b間に形成される角度が、例えば、90°である。
【0140】
図13~
図15および
図18に示すように、サポーター3は、貫通孔31と、スリット34と、把持アーム32と、固定アーム35と、ポケット33と、複数の凸部37と、を有する。
【0141】
貫通孔31には、クランプ部材6の一部(後述するクランプレバー61の一部)が下側から挿入される(
図10を参照)。
【0142】
スリット34は、サポーター3を上下方向に貫通し、一対の板面3a,3bに開口する。スリット34は、貫通孔31に接続される第1スリット部34aと、第1スリット部34aに接続される第2スリット部34bと、を有する。
【0143】
第1スリット部34aは、貫通孔31の後方に配置され、前後方向に延びる。第1スリット部34aの前端部は、貫通孔31の後端部と接続される。
図14に示すように上下方向から見て、第1スリット部34aは、基準線R上に位置する。
【0144】
第2スリット部34bは、貫通孔31のサポーター径方向の外側に配置される。第2スリット部34bは、サポーター周方向に延びる。第2スリット部34bは、上下方向から見て、サポーター中心軸C1を中心とする円弧状である。第2スリット部34bは、基準線Rの右側に配置される。第2スリット部34bの左右方向の内側(基準線R側)の端部(つまり左端部)かつ後端部は、第1スリット部34aの前端部と後端部との間の中間部分に接続される。
【0145】
把持アーム32は、サポーター3に1つ設けられる。本実施形態では把持アーム32が、基準線Rの右側に配置される。切削インサートのクランプ構造20をインサート取付座5に取り付けるときに、把持アーム32は、スリット34の幅寸法を狭めるように弾性変形する。具体的に、把持アーム32は、第1スリット部34aの幅寸法および第2スリット部34bの幅寸法をそれぞれ狭めるように、弾性変形する。
【0146】
固定アーム35は、サポーター3に1つ設けられる。本実施形態では固定アーム35が、基準線Rの左側に配置される。固定アーム35は、左右方向において、ポケット33、貫通孔31および第1スリット部34aを介して、把持アーム32と対向する。固定アーム35のうち、貫通孔31と左右方向に隣り合って配置される部分は、サポーター周方向に沿うように湾曲して延びる。固定アーム35のうち、ポケット33と左右方向に隣り合って配置される部分は、前後方向に延びる。固定アーム35のうちポケット33と左右方向に隣り合って配置される部分は、前方へ向かうに従い、左右方向の寸法が小さくなる。
【0147】
固定アーム35の後端部と、把持アーム32の後端部とは、基準線R上で互いに接続される。本実施形態では、固定アーム35のうち第1スリット部34aよりも後方に位置する部分と、把持アーム32のうち第1スリット部34aよりも後方に位置する部分とが、互いに接続する。
【0148】
本実施形態では、ポケット33が、把持アーム32と固定アーム35との間に配置される。具体的に、ポケット33は、把持アーム32のうち貫通孔31よりも前方に位置する部分(前端部)と、固定アーム35のうち貫通孔31よりも前方に位置する部分(前端部)と、の間に配置される。
把持アーム32が弾性変形しつつ固定アーム35に接近することで、ポケット33の左右方向の寸法が狭められる。すなわち、把持アーム32が固定アーム35に対して進退することにより、ポケット33の左右方向の寸法が変化する。
【0149】
図13、
図14および
図18に示すように、ポケット33は、一対の横拘束面33aと、一対の後拘束面33bと、複数の係止リブ38と、を有する。
一対の横拘束面33aのうち、左側の一方の横拘束面33aは、固定アーム35の前端部に配置される。一対の横拘束面33aのうち、右側の他方の横拘束面33aは、把持アーム32の前端部に配置される。
【0150】
一対の後拘束面33bのうち、左側の一方の後拘束面33bは、固定アーム35の前端部に配置され、一方の横拘束面33aよりも後方に位置する。一対の後拘束面33bのうち、右側の他方の後拘束面33bは、把持アーム32の前端部に配置され、他方の横拘束面33aよりも後方に位置する。
【0151】
係止リブ38は、固定アーム35および把持アーム32にそれぞれ設けられる。具体的に係止リブ38は、固定アーム35に、前後方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)設けられる。また係止リブ38は、把持アーム32に、前後方向に互いに間隔をあけて複数(本実施形態では2つ)設けられる。
【0152】
固定アーム35に設けられる複数の係止リブ38は、前側係止リブ38Aと、前側係止リブ38Aよりも後方に配置される後側係止リブ38Bと、を含む。また、把持アーム32に設けられる複数の係止リブ38は、前側係止リブ38Aと、前側係止リブ38Aよりも後方に配置される後側係止リブ38Bと、を含む。
【0153】
複数の凸部37は、把持アーム32に配置される第1凸部37Aと、第1凸部37Aと間隔をあけて配置される第2凸部37Bと、を含む。本実施形態においても、第2凸部37Bは、把持アーム32に配置される。
【0154】
本実施形態では、第1凸部37Aが、サポーター3に1つ設けられる。また第2凸部37Bが、サポーター3に1つ設けられる。第1凸部37Aおよび第2凸部37Bは、
図14に示すISO規格に準ずる切削インサート(四角インサート、正方形インサート)の外形形状Iよりも、サポーター径方向の外側に突出する。
【0155】
図10~
図12に示すように、本実施形態のクランプ部材6は、レバーロック機構を有する。クランプ部材6は、クランプレバー61と、締結ネジ62と、を有する。クランプレバー61および締結ネジ62は、工具本体4の第1端部4aに配置される。
【0156】
クランプレバー61は、L字状に屈曲する部材である。クランプレバー61は、サポーター径方向に延びる第1延伸部(図示省略)と、略上下方向に延びる第2延伸部61aと、を有する。
【0157】
特に図示しないが、第1延伸部は、レバー収容部に配置される。第1延伸部は、略工具軸方向に延びる。第1延伸部の後端部は、雌ネジ孔46内に突出する。
第2延伸部61aの下端部は、第1延伸部の先端部と接続される。第2延伸部61aは、レバー収容部の先端部、シート部材51のシート孔、およびサポーター3の貫通孔31にわたって配置される。
【0158】
締結ネジ62は、略上下方向に延びる。締結ネジ62は、雌ネジ孔46の雌ネジ部に螺着する雄ネジ部を有する。
締結ネジ62を雌ネジ孔46にねじ込んで、下側へ移動させることにより、締結ネジ62の一部が、第1延伸部の後端部に上側から接触する。さらに締結ネジ62をねじ込むことで、梃子の原理によりクランプレバー61は回動させられ、第2延伸部61aの上端部が、貫通孔31の内周面を後方に向けて押圧する。
【0159】
クランプレバー61の押圧により、サポーター3が後方に引き込まれることで、第1凸部37Aが、インサート取付座5の側壁5bに押圧されて、把持アーム32は弾性変形させられる。これにより、把持アーム32の前端部と固定アーム35の前端部との間の左右方向の距離が狭まる。このため、ポケット33の一対の横拘束面33aが、切削インサート2の一対の横押圧面23dを左右方向から押圧する。また、ポケット33の一対の後拘束面33bが、切削インサート2の一対の後押圧面23eを後方かつ左右方向から押圧する。また、ポケット33の複数の係止リブ38が、切削インサート2の複数の係止溝29に係止される。このようにして、切削インサート2がポケット33に固定される。
【0160】
また、把持アーム32が弾性変形させられていく過程において、第2凸部37Bが、インサート取付座5の側壁5bに押圧される。なお、第2凸部37Bは、把持アーム32が弾性変形させられるよりも前に、インサート取付座5の側壁5bに接触していてもよい。
【0161】
このように、第1凸部37Aおよび第2凸部37Bが側壁5bに押し当てられ、また、固定アーム35に位置する後側面3eが上記側壁5bとは別の側壁5bに押し当てられることで、サポーター3はインサート取付座5に固定される。
【0162】
また、締結ネジ62の雌ネジ孔46に対するねじ込みを緩めて、締結ネジ62を上側へ移動させることにより、締結ネジ62の一部が、第1延伸部の後端部に下側から接触する。さらに締結ネジ62のねじ込みを緩めていくことで、梃子の原理によりクランプレバー61は回動させられ、第2延伸部61aの上端部による貫通孔31の内周面に対する押圧が解除される。
【0163】
クランプレバー61の押圧が解除されることで、ポケット33による切削インサート2の押圧も解除される。これにより、切削インサート2をポケット33から取り出すことが可能となる。
【0164】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の切削インサートのクランプ構造20、サポーター3および刃先交換式切削工具11によれば、前述の第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0165】
また本実施形態では、把持アーム32が、スリット34の幅寸法を狭めるように弾性変形する。
この場合、スリット34によって把持アーム32が弾性変形しやすくなる。また、スリット34によって把持アーム32の弾性変形の自由度(弾性変形量や変形方向などの自由度)が増すため、切削インサート2がより安定してポケット33に密着する。このため、切削インサート2のクランプ状態がより安定する。
【0166】
また本実施形態では、把持アーム32が弾性変形しつつ固定アーム35に接近することで、ポケット33の左右方向の寸法が狭められ、切削インサート2がポケット33にクランプされる。切削インサート2の固定状態が良好に維持され、切削インサート2のクランプ状態をより安定させることができる。
【0167】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態の切削インサートのクランプ構造30、サポーター3および刃先交換式切削工具12について、
図19~
図27を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の第1、第2実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。
【0168】
図19~
図21に示すように、本実施形態では、インサート取付座5が、略三角形凹状であり、具体的には略正三角形凹状である。
図19に示すように上下方向から見て、インサート取付座5の一対の側壁5b間に形成される角度は、例えば、60°である。
【0169】
図22~
図24および
図27に示すように、サポーター3は、中心軸C1を中心とする三角形板状であり、具体的には正三角形板状である。サポーター3の外周面3cは、前方を向く一対の前側面3dと、後方を向く1つの後側面3eと、を有する。
本実施形態では、
図23に示すように上下方向から見て、一対の前側面3d間に形成される角度が、例えば、60°である。また上下方向から見て、各前側面3dと後側面3eとの間に形成される角度が、例えば、60°である。
【0170】
図25および
図26に示すように、本実施形態の切削インサート2は、前述の第1、第2実施形態で説明した切削インサート2と略同じ構成要素を備える。
図26に示すように、本実施形態では上下方向から見て、切削インサート2の切刃24の一対の直線刃部24b間に形成される角度が、例えば、60°である。
【0171】
図22~
図24および
図27に示すように、サポーター3は、貫通孔31と、スリット34と、把持アーム32と、固定アーム35と、ポケット33と、複数の凸部37と、を有する。
【0172】
スリット34は、貫通孔31に接続される第1スリット部34aと、第1スリット部34aに接続される第2スリット部34bと、を有する。
本実施形態では第2スリット部34bが、上下方向から見て、後方に向けて凸となる円弧状である。第2スリット部34bは、基準線Rの左側に配置される。第2スリット部34bの左右方向の内側(基準線R側)の端部(つまり右端部)は、第1スリット部34aの後端部に接続される。
【0173】
把持アーム32は、サポーター3に1つ設けられる。本実施形態では把持アーム32が、基準線Rの左側に配置される。切削インサートのクランプ構造30をインサート取付座5に取り付けるときに、把持アーム32は、スリット34の幅寸法を狭めるように弾性変形する。
【0174】
固定アーム35は、サポーター3に1つ設けられる。本実施形態では固定アーム35が、基準線Rの右側に配置される。
固定アーム35の後端部と、把持アーム32の後端部とは、基準線R上で互いに接続される。本実施形態では、固定アーム35のうち第1スリット部34aの後方に位置する部分と、把持アーム32のうち第1スリット部34aの後方に位置する部分とが、互いに接続する。
【0175】
本実施形態では、ポケット33が、把持アーム32と固定アーム35との間に配置される。
図22、
図23および
図27に示すように、ポケット33は、一対の横拘束面33aと、一対の後拘束面33bと、複数の係止リブ38と、を有する。
一対の横拘束面33aのうち、左側の一方の横拘束面33aは、把持アーム32の前端部に配置される。一対の横拘束面33aのうち、右側の他方の横拘束面33aは、固定アーム35の前端部に配置される。
【0176】
一対の後拘束面33bのうち、左側の一方の後拘束面33bは、把持アーム32の前端部に配置され、一方の横拘束面33aよりも後方に位置する。一対の後拘束面33bのうち、右側の他方の後拘束面33bは、固定アーム35の前端部に配置され、他方の横拘束面33aよりも後方に位置する。
【0177】
複数の凸部37は、把持アーム32に配置される第1凸部37Aと、第1凸部37Aと間隔をあけて配置される第2凸部37Bと、を含む。
図23に示すように、第1凸部37Aは、後側面3eの左端部に配置される。第2凸部37Bは、後側面3eのうち右端部と基準線Rとの間に位置する部分に配置される。本実施形態では、第2凸部37Bが、固定アーム35に配置される。
【0178】
本実施形態では、第1凸部37Aが、サポーター3に1つ設けられる。また第2凸部37Bが、サポーター3に1つ設けられる。第1凸部37Aおよび第2凸部37Bは、
図23に示すISO規格に準ずる切削インサート(三角インサート、正三角形インサート)の外形形状Iよりも、サポーター径方向の外側に突出する。
【0179】
図19~
図21に示すように、本実施形態のクランプ部材6は、レバーロック機構を有する。クランプ部材6は、クランプレバー61と、締結ネジ62と、を有する。
締結ネジ62を雌ネジ孔46にねじ込んで、下側へ移動させることにより、締結ネジ62の一部が、クランプレバー61の第1延伸部の後端部に上側から接触する。さらに締結ネジ62をねじ込むことで、梃子の原理によりクランプレバー61は回動させられ、第2延伸部61aの上端部が、貫通孔31の内周面を後方に向けて押圧する。
【0180】
クランプレバー61の押圧により、サポーター3が後方に引き込まれることで、第1凸部37Aが、インサート取付座5の側壁5bに押圧されて、把持アーム32は弾性変形させられる。これにより、把持アーム32の前端部と固定アーム35の前端部との間の左右方向の距離が狭まり、切削インサート2がポケット33にクランプされた状態となる。
【0181】
また、把持アーム32が弾性変形させられていく過程において、第2凸部37Bが、インサート取付座5の側壁5bに押圧される。なお、第2凸部37Bは、把持アーム32が弾性変形させられるよりも前に、インサート取付座5の側壁5bに接触していてもよい。
【0182】
このように、第1凸部37Aおよび第2凸部37Bが側壁5bに押し当てられ、また、固定アーム35に位置する前側面3dが上記側壁5bとは別の側壁5bに押し当てられることで、サポーター3はインサート取付座5に固定される。
【0183】
また、締結ネジ62の雌ネジ孔46に対するねじ込みを緩めて、締結ネジ62を上側へ移動させることにより、締結ネジ62の一部が、クランプレバー61の第1延伸部の後端部に下側から接触する。さらに締結ネジ62のねじ込みを緩めていくことで、梃子の原理によりクランプレバー61は回動させられ、第2延伸部61aの上端部による貫通孔31の内周面に対する押圧が解除される。これにより、ポケット33による切削インサート2のクランプ状態が解除される。
【0184】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の切削インサートのクランプ構造30、サポーター3および刃先交換式切削工具12によれば、前述の第1、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0185】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
本発明は前述の第1、第2実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0186】
前述の第1~第3実施形態では、上下方向から見て、切削インサート2の切刃24の一対の直線刃部24b間に形成される角度、サポーター3の一対の前側面3d間に形成される角度、および、インサート取付座5の一対の側壁5b間に形成される角度が、それぞれ35°、90°、60°である例を挙げたが、これらに限定されない。特に図示しないが、上記の各角度は、例えば、80°、55°などであってもよい。この場合においても、前述の実施形態と同様に、ISO規格に準ずる各種の切削インサートを備えた既存の刃先交換式切削工具に対して、本発明品を適用可能である。
【0187】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の切削インサートのクランプ構造、サポーターおよび刃先交換式切削工具によれば、切削インサートをコンパクト化してコスト削減しつつ、切削インサートおよびサポーターを安定して固定できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0189】
1,11,12…刃先交換式切削工具
2…切削インサート
3…サポーター
3c…サポーターの外周面
4…工具本体
5…インサート取付座
5b…側壁
6…クランプ部材
10,20,30…切削インサートのクランプ構造
23…切削インサートの外周面
24…切刃
29…係止溝
29a…第1溝壁面
29b…第2溝壁面
29A…前側係止溝
29B…後側係止溝
32…把持アーム
33…ポケット
34…スリット
37…凸部
37A…第1凸部
37B…第2凸部
38…係止リブ
38a…第1リブ壁面
38b…第2リブ壁面
38A…前側係止リブ
38B…後側係止リブ
C1…中心軸
R…基準線