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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014453
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】蒸気タービン及び蒸気弁装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/00 20060101AFI20230124BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20230124BHJP
   F16T 1/00 20060101ALI20230124BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20230124BHJP
   F01D 25/32 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
F01D25/00 G
F01D25/24 T
F01D25/24 Z
F16T1/00 E
F16K51/00 C
F01D25/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118382
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【弁理士】
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】進藤 蔵
(72)【発明者】
【氏名】二森 都
(72)【発明者】
【氏名】堀井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】竹丸 竜平
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066AA01
3H066BA14
3H066BA15
(57)【要約】
【課題】シェルマウント型構造の蒸気弁装置及びそれを備えた蒸気タービンであって、弁口径を大型化しつつ高温・高圧の作動流体を利用でき、蒸気タービンケーシングの下部側の蒸気弁装置のチャンパ室内にドレンが溜まらない蒸気タービン及び蒸気弁装置を提供することである。
【解決手段】実施形態のシェルマウント型構造の蒸気弁装置は、蒸気タービンケーシングの上部側は、第1弁体とこれを囲う第1スリーブとから構成される第1チャンバ室と第1弁体の下流側とを連通する第1孔を設け、蒸気タービンケーシングの下部側は、第2弁体とこれを囲う第2スリーブとから構成される第2チャンバ室と第2弁体の下流側とを連通する第2孔を設けると共に、第2チャンバ室と蒸気タービンケーシング内部の主流路とを連通するドレン孔、または第2チャンバ室と蒸気タービンケーシングの外部とを連通するドレン孔のいずれかを設け、第2チャンパ室内のドレンを排出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンケーシングと、前記蒸気タービンケーシングに直接設けられるシェルマウント型蒸気弁装置とを備える蒸気タービンであって、
前記蒸気弁装置は、
前記蒸気タービンケーシングの上部に直接取り付けられ、蒸気を前記蒸気タービンケーシングの内部に導く第1主流路を形成する第1弁ケーシングと、
前記第1主流路内に設置された第1弁座と、
前記第1弁座に対して上下方向に進退可能に前記第1弁ケーシング内に収納された第1弁体と、
前記第1弁ケーシングに取り付けられ、前記第1弁体を囲う第1スリーブを備えた第1スタンドと、
前記第1スリーブと前記第1弁体とから形成された第1チャンバ室と、
前記第1主流路における前記第1弁体の上流側と前記第1チャンバ室とを連通する第1バイパス流路と、
前記第1チャンバ室と前記第1主流路における前記第1弁体の下流側とを連通するための前記第1弁体に設けられた第1孔と、
前記蒸気タービンケーシングの下部に直接取り付けられ、前記蒸気を前記蒸気タービンケーシングの内部に導く第2主流路を形成する第2弁ケーシングと、
前記第2主流路内に設置された第2弁座と、
前記第2弁座に対して上下方向に進退可能に前記第2弁ケーシング内に収納された第2弁体と、
前記第2弁ケーシングに取り付けられ、前記第2弁体を囲う第2スリーブを備えた第2スタンドと、
前記第2スリーブと前記第2弁体とから形成された第2チャンバ室と、
前記第2主流路における前記第2弁体の上流側と前記第2チャンバ室とを連通する第2バイパス流路と、
前記第2チャンバ室と前記第2主流路における前記第2弁体の下流側とを連通するための前記第2弁体に設けられた第2孔と、
前記第2スリーブの壁面に設けられ、前記第2チャンバ室に溜まるドレンを排出するドレン孔と、
を有する蒸気タービン。
【請求項2】
前記ドレン孔は、前記第2チャンバ室と前記第2主流路とを連通する請求項1に記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記ドレン孔は、前記第2スタンドの内部を貫通して設けられ、前記第2チャンバ室と前記蒸気タービンケーシングの外部とを直接連通する請求項1に記載の蒸気タービン。
【請求項4】
蒸気タービンケーシングと、前記蒸気タービンケーシングに直接設けられるシェルマウント型蒸気弁装置とを備える蒸気タービンであって、
前記蒸気弁装置は、
前記蒸気タービンケーシングの下部に直接取り付けられ、前記蒸気を前記蒸気タービンケーシングの内部に導く主流路を形成する弁ケーシングと、
前記主流路内に設置された弁座と、
前記弁座に対して上下方向に進退可能に前記弁ケーシング内に収納された弁体と、
前記弁ケーシングに取り付けられ、前記弁体を囲うスリーブを備えたスタンドと、
前記スリーブと前記弁体とから形成されたチャンバ室と、
前記主流路における前記弁体の上流側と前記チャンバ室とを連通するバイパス流路と、
前記チャンバ室と前記主流路における前記弁体の下流側とを連通するための前記弁体に設けられた孔と、
前記第2スリーブの壁面に設けられ、前記第2チャンバ室に溜まるドレンを排出するドレン孔と、
を有する蒸気タービン。
【請求項5】
前記ドレン孔は、前記第2チャンバ室と前記第2主流路とを連通する請求項4に記載の蒸気タービン。
【請求項6】
前記ドレン孔は、前記第2スタンドの内部を貫通して設けられ、前記第2チャンバ室と前記蒸気タービンケーシングの外部とを直接連通する請求項4に記載の蒸気タービン。
【請求項7】
蒸気タービンケーシングに直接設けられるシェルマウント型蒸気弁装置であって、
前記蒸気タービンケーシングの上部に直接取り付けられ、蒸気を前記蒸気タービンケーシングの内部に導く主流路を形成する弁ケーシングと、
前記主流路内に設置された弁座と、
前記弁座に対して上下方向に進退可能に前記弁ケーシング内に収納された弁体と、
前記弁ケーシングに取り付けられ、前記弁体を囲うスリーブを備えたスタンドと、
前記弁体を囲うスリーブと前記弁体とから形成されたチャンバ室と、
前記主流路における前記弁体の上流側と前記チャンバ室とを連通するバイパス流路と、
前記チャンバ室と前記主流路における前記弁体の下流側とを連通するための前記弁体に設けられた孔と、
を有する蒸気弁装置。
【請求項8】
蒸気タービンケーシングに直接設けられるシェルマウント型蒸気弁装置であって、
前記蒸気弁装置は、
前記蒸気タービンケーシングの下部に直接取り付けられ、前記蒸気を前記蒸気タービンケーシングの内部に導く主流路を形成する弁ケーシングと、
前記主流路内に設置された弁座と、
前記弁座に対して上下方向に進退可能に前記弁ケーシング内に収納された弁体と、
前記弁ケーシングに取り付けられ、前記弁体を囲うスリーブを備えたスタンドと、
前記弁体を囲うスリーブと前記弁体とから形成されたチャンバ室と、
前記主流路における前記弁体の上流側と前記チャンバ室とを連通するバイパス流路と、
前記チャンバ室と前記主流路における前記弁体の下流側とを連通するための前記弁体に設けられた孔と、
前記第スリーブの壁面に設けられ、前記チャンバ室に溜まるドレンを排出するドレン孔と、
を有する蒸気弁装置。
【請求項9】
前記ドレン孔は、前記第2チャンバ室と前記第2主流路とを連通する請求項8に記載の蒸気弁装置。
【請求項10】
前記ドレン孔は、前記第2スタンドの内部を貫通して設けられ、前記第2チャンバ室と前記蒸気タービンケーシングの外部とを直接連通する請求項8に記載の蒸気弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気タービン及び蒸気弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電設備の高効率化・低コスト化が求められており、蒸気タービンだけでなく、その付属機器である蒸気弁装置についても高効率化・低コスト化が必要となっている。
【0003】
火力発電設備等の蒸気タービン車室に供給される蒸気流量を調節する蒸気弁装置としては、蒸気タービン車室の上下に弁装置を直接取り付けたシェルマウント型構造のものがある。このタイプの弁装置としては、例えば、蒸気タービン車室の鉛直上側及び鉛直下側にそれぞれ弁ケーシングを取り付け、当該各弁ケーシングに2つの蒸気弁を内蔵することで、合計4つの弁で蒸気弁装置を構成したものがある。
【0004】
蒸気タービンから離れた場所に据付けられる別置型構造とシェルマウント型構造を比較すると、蒸気弁装置から蒸気タービン車室までを接続するリード管を持たないシェルマウント型構造の方が部品点数も少なく製造コストが安いというメリットがある。さらに、シェルマウント型構造の方がリード管に由来する圧力損失が皆無なので高効率化も望める。
【0005】
しかし、近年では、蒸気タービンの作動流体として高温・高圧蒸気が利用されることや蒸気タービンの高出力化要求もあり、このような蒸気が蒸気弁装置に導入される点についても考慮する必要がある。
【0006】
なお、火力発電設備に設置される主な蒸気弁装置には、主蒸気止め弁、蒸気加減弁、再熱蒸気止め弁、インターセプト弁などがあるが、これらのなかで蒸気流量の調節機能を有する蒸気弁装置は蒸気加減弁及びインターセプト弁である。
【0007】
関連技術に係る蒸気タービンと蒸気弁装置について、図5乃至図8を用いて説明する。図5は蒸気タービンと蒸気弁装置の構造例を示した図である。この図に示す蒸気タービンの蒸気弁装置は、シェルマウント型構造で形成されており、第1弁ケーシング11と、第1弁座12と、第1弁体13と、第2弁ケーシング21と、第2弁座22と、第2弁体23とを備えている。
【0008】
第1弁ケーシング11は、車室1を形成する蒸気タービンケーシング30の上部に直接取り付けられており、車室1に接続された蒸気出口と、ボイラ等の蒸気発生手段(図示せず)に接続された蒸気入口とを連通する第1主流路17をその内部に形成している。蒸気タービンケーシング30は、蒸気タービンの軸方向に2分割されており、上ケーシング31と下ケーシング32から成っている。上ケーシング31と下ケーシング32は、それぞれの略水平方向の両端に設置されたフランジ部33を介して締結されている。
【0009】
第1弁座12は、環状に形成されており、第1弁ケーシング11における第1主流路17内に設置されている。第1弁体13は、上下方向に移動することで第1弁座12に着座又は離間して車室1に供給される蒸気流量を調節するもの(蒸気加減弁)で、第1弁座12に対して上下方向に進退可能に第1弁ケーシング11内に同じ2組が収納されている。
【0010】
図6図5における第1弁ケーシング11付近の構造例を示した図である。図6において、スタンド50に一体化されたスリーブ41は第1弁体13の周囲を取り囲むようにした円筒状の部材であり、第1弁体13はスリーブ41内を摺動する。スリーブ41の内部には、子弁体15と一体となった第1弁棒43が通されている。第1弁棒43は駆動装置(図示せず)によって上下方向に適宜駆動される。
【0011】
第1弁体13の内部には子弁体15及び弁棒43が通される孔44が設けられており、孔44は第1弁体13における第1弁座12に臨む面(図2における下端面)に設けられた開口部45を介して外部に表出している。開口部45は、孔44から第1弁体13とスリーブ41との隙間(バイパス流路)を介して、第1主流路17における第1弁体13の上流側(すなわち、スリーブ41の外側)と連通しており、これらにより第1主流路17を車室1に接続するチャンバ室46が形成されている。
【0012】
子弁体15は、その弁座となる開口部45の内側に着座又は離間することでチャンバ室46を開閉するもので、開口部45に対して進退可能に第1弁体13内に収納されている。また、第1弁棒43の外周部と第1弁体13の内周部にはそれぞれ突出部47、48が設けられている。例えば、子弁体15を開口部45に着座させた状態から第1弁棒43によって引き上げると、まず、チャンバ室46が開いて車室1と連通する。その後、さらに第1弁棒43を引き上げると、第1弁棒43の突出部47が第1弁体13の突出部48と係止して第1弁体13が引き上げられ、第1流路17が車室1と連通する。
【0013】
このように第1弁体13内に子弁体15を設けると、第1弁体13が開弁する前に子弁体15が開弁してチャンバ室46の内部圧力を減圧する。これにより第1弁体13を開弁するための駆動装置(図示せず)の駆動力が大幅に低減でき、第1弁体13の弁口径を大型化し易い。そのため、例えば高出力のタービンへの適用が容易になる。
【0014】
また、第1弁ケーシング11には、ドレン管18が接続されている。ドレン管18にはドレン弁19が取り付けられている。タービン起動時には第1弁ケーシング11に発生する熱応力を緩和する目的で第1弁ケーシング11の暖機運転を行う。この暖機運転は、第1弁体13を第1弁座12に着座させた状態でドレン弁19を開け、第1弁ケーシング11内の蒸気を排出して行うものである。これにより、第1弁ケーシング11内で発生したドレンは、ドレン管18を介して蒸気タービンケーシング30の外部に排出されるので、蒸気タービン起動時に車室1内にドレンが流入することを防止できる。
【0015】
図5に戻り、第2弁ケーシング21は、車室1を形成する蒸気タービンケーシング30 の下部に直接取り付けられており、車室1に接続された蒸気出口とボイラ等の蒸気発生手段(図示せず)に接続された蒸気入口とを連通する第2主流路27をその内部に形成している。
【0016】
第2弁座22は、環状に形成されており、第2弁ケーシング21における第2主流路27内に設置されている。第2弁体23は、上下方向に移動することで第2弁座22に着座又は離間して車室1に供給される蒸気流量を調節するもの(蒸気加減弁)で、第2弁座22に対して上下方向に進退可能に第2弁ケーシング21内に同じ2組が収納されている。
【0017】
図7図5における第2弁ケーシング21付近の構造例を示した図である。この図に示すように第2弁体23は、第1弁体13と異なりその内部に子弁体を有しないタイプの弁である。第2弁体23の下端には、スタンド51を貫通するように第2弁棒26が取り付けられている。弁棒26は駆動装置(図示せず)によって上下方向に適宜駆動され、これにより第2弁体23が上下方向に移動される。
【0018】
第2弁ケーシング21には、ドレン管28が接続されている。ドレン管28にはドレン弁29が取り付けられている。第1弁ケーシング11と同様に、タービン起動時には、第2弁体23を第2弁座22に着座させた状態でドレン弁29を開けることで、第2弁ケーシング21内の蒸気を排出して第2弁ケーシング21の暖機を行う。第2弁ケーシング21内で発生したドレンは、ドレン管28を介して蒸気タービンケーシング30の外部に排出されるので、蒸気タービン起動時に車室1内にドレンが流入することを防止できる。
【0019】
ここで、駆動力を低減して第2弁体23の弁口径を大型化するために、たとえば第1弁体13と同様に子弁体15を第2弁体23に内蔵した構造を採用した場合について説明する。図8は子弁体15Aを内蔵した場合における第2弁体13Aの構造例を示した図である。この図に示す第2弁体13Aは子弁体15Aを有している。この第2弁体13Aの各構成要素は、第1弁体13の各構成要素を上下逆転させたものに相当し、第1弁体13の各構成要素と区別するために添字Aを付している。
【0020】
第2弁体13Aに対して開弁方向と同じ方向(すなわち、鉛直下方向)に重力が作用することになる。そのため、第2弁体13Aの上流側(第2弁ケーシング21内の圧力)と下流側(車室1内の圧力)の差圧が第2弁体13Aの自重より小さい場合には、弁棒43Aを引き下げて子弁体15Aを開口部45Aから離間させると、これに追従して第2弁体13Aが意図せずに下方向に落下してしまうことがある。
【0021】
これでは、弁棒43Aの制御に関係無く第2弁体13Aが移動する場合が生じるので、第2弁体13Aの上流側と下流側の圧力差に応じて第2弁体13Aの制御特性が変化することになる。すなわち、圧力に関係無く第2弁体13Aの開度を自在に制御することができなくなるので、制御の観点からはこのような構造を採用することは難しい。
【0022】
上記のように、蒸気タービンケーシング30の下側に設置される蒸気弁装置では、圧力に関係無く第2弁体23の開度を自在に制御する観点から、第2弁体23には子弁体は内蔵していない。また、駆動装置の駆動力不足(弁開力不足とも言える)により蒸気タービン起動時に作用する蒸気圧力にて開けることが可能な小さな弁口径を選択しなければならなかったことから、弁口径を大型化することが出来なかった。そのため、例えば蒸気タービン車室の上下に弁装置を直接取り付けたシェルマウント型構造は、高出力の蒸気タービンへの適用が制限されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2012-41823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明が解決しようとする課題は、シェルマウント型構造の蒸気弁装置及びこれを備えた蒸気タービンであって、弁口径を大型化しつつ高温・高圧の作動流体を利用できる蒸気タービン及び蒸気弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、実施形態のシェルマウント型構造の蒸気弁装置は、上部側は、第1弁体とこれを囲う第1スリーブとから構成される第1チャンバ室と蒸気タービン内部とを連通する第1孔を設け、下部側は、第2弁体とこれを囲う第2スリーブとから構成される第2チャンバ室と蒸気タービン内部とを連通する第2孔を設けるとともに、第2チャンパ室内のドレンを排出するドレン孔を設ける。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態における蒸気タービンと蒸気弁装置の構造例を示した図。
図2】第1実施形態における蒸気弁装置の第1弁付近の構造例を示した図。
図3】第1実施形態における蒸気弁装置の第2弁付近の構造例を示した図。
図4】第2実施形態における蒸気弁装置の第2弁付近の構造例を示した図。
図5】従来における蒸気タービンと蒸気弁装置の構造例を示した図。
図6】従来における蒸気弁装置の第1弁付近の構造例を示した図。
図7】従来における蒸気弁装置の第2弁付近の構造例を示した図。
図8】従来における子弁体15Aを内蔵した場合の第2弁付近の構造例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、従来と同一部品には同一の符号を付しており、ここでの説明は省略する。
【0029】
図1は、第1の実施形態における蒸気タービンと蒸気弁装置の構造例を示した図である。図1に示す蒸気タービンの蒸気弁装置は、シェルマウント型構造で形成されており、第1弁ケーシング11と、第1弁座12と、第1弁体113と、第2弁ケーシング21と、第2弁座22と、第2弁体123を備えている。
【0030】
第1弁体113は、上下方向に移動することで第1弁座12に着座又は離間して車室1に供給される蒸気流量を調節するもので、第1弁座12に対して上下方向に進退可能に蒸気タービンケーシング30の上部に直接取り付けられた第1弁ケーシング11内に収納されている。
【0031】
第2弁体123は、上下方向に移動することで第2弁座22に着座又は離間して車室1に供給される蒸気流量を調節するもので、第2弁座22に対して上下方向に進退可能に蒸気タービンケーシング30の下部に直接取り付けられた第2弁ケーシング22内に収納されている。
【0032】
図2図1における第1弁ケーシング11付近の構造例を示した図である。図2において、スタンド60に一体化されたスリーブ141は第1弁体113の周囲を取り囲むようにした円筒状の部材であり、第1弁体113はスリーブ141内を摺動する。
【0033】
スリーブ141の内部には、弁棒143と一体となった第1弁体113が通されている。第1弁棒143は駆動装置(図示せず)によって上下方向に適宜駆動される。第1弁体113の内部には軸方向に孔114が貫通している。孔114は、第1弁体113とスリーブ141との隙間(バイパス流路)を介して、第1主流路17における第1弁体113の上流側(すなわち、スリーブ141の外側)と連通しており、これらにより第1主流路17を車室1に接続するチャンバ室146が形成されている。
【0034】
チャンバ室146の内部圧力は、第1弁体113とスリーブ141との隙間(バイパス流路)を介してチャンバ室146に流入する蒸気量と、孔114を介してチャンバ室146から車室1側へ流出する蒸気量とのバランスにより決定される。つまり、孔114の直径寸法(断面積)によってチャンバ室146の内部圧力は左右され、孔114の直径寸法(断面積)が大きいほどチャンバ室146の内部圧力を減圧することが出来る。
【0035】
このように第1弁体113の軸方向に貫通する孔114を設けると、第1弁体113が開弁する以前から連続してチャンバ室146の内部圧力を減圧していることになる。したがって、第1弁体113を開弁するための駆動装置(図示せず)の駆動力が大幅に低減できるため、第1弁体113の弁口径を大型化し易い。また、従来の子弁を有する蒸気弁装置に比べ構成部品が大幅に削減されるため構造の簡素化が図れ、部品管理の簡易化や摩耗に対する耐久性向上につながる。
【0036】
なお、第1弁棒143と第1弁体113とを一体化するために、弁棒143を第1弁体113にねじ込む等その他の方法によっても良い。孔114は第1弁体113の軸方向に貫通していなくてもよく、例えば、軸方向と平行でなく斜めに向かう方向などに設けられていてもよい。また例えば、弁体の中心に対して反対側にもう1つ孔があるような、複数の孔がある構造でも良い。
【0037】
図3図1における第2弁ケーシング21付近の構造例を示した図である。図3において、スタンド61に一体化されたスリーブ142は第2弁体123の周囲を取り囲むようにした円筒状の部材であり、第2弁体123はスリーブ142内を摺動する。スリーブ142の内部には、第2弁棒126と一体となった第2弁体123が通されている。
【0038】
第2弁棒126は駆動装置(図示せず)によって上下方向に適宜駆動される。第2弁体123の内部には軸方向に孔124が貫通している。孔124は、第2弁体123とスリーブ142との隙間(バイパス流路)を介して、第2主流路27における第2弁体123の上流側(すなわち、スリーブ142の外側)と連通しており、これらにより第2主流路27を車室1に接続するチャンバ室147が形成されている。
【0039】
チャンバ室147の内部圧力は、第2弁体123とスリーブ142との隙間(バイパス流路)を介してチャンバ室147に流入する蒸気量と、孔124を介してチャンバ室147から車室1側へ流出する蒸気量とのバランスにより決定される。つまり、孔124の直径寸法(断面積)によってチャンバ室147の内部圧力は左右され、孔124の直径寸法(断面積)が大きいほどチャンバ室147の内部圧力を減圧することが出来る。
【0040】
このように第2弁体123の軸方向に貫通する孔124を設けると、第2弁体123が開弁する以前から連続してチャンバ室147の内部圧力を減圧していることになる。したがって、第2弁体123を開弁するための駆動装置(図示せず)の駆動力が大幅に低減できるため、第2弁体123の弁口径を従来の第2弁体23より大幅に大型化し易い。
【0041】
なお、第2弁棒126と第2弁体123とを一体化するために、第2弁棒126を第2弁体123にねじ込む等その他の方法によっても良い。孔124は第1弁体123の軸方向に貫通していなくてもよく、例えば、軸方向と平行でなく斜めに向かう方向などに設けられていてもよい。また例えば、弁体の中心に対して反対側にもう1つ孔があるような、複数の孔がある構造でも良い。
【0042】
ここまで説明の図3の構造は、図2に示す蒸気タービンケーシング30の上部に直接取り付けられた第1弁体113と同一である。
【0043】
ここで、第2弁体123はスリーブ142内を車室1側に向かって摺動することから、スリーブ142の開口部が上向きとなり、長期停止時にチャンバ室147内に滞留した残留蒸気がドレンとなり、また第2主流路27や車室1からのドレンもチャンバ室147内に流入して蓄積する構造となる。チャンバ室147内にドレンが蓄積すると、タービン起動時の暖機運転後に第2弁体123を開いた際、チャンバ室147内から溢れだし、一気に車室1側へドレンが飛散することになる。また、長期停止や長期保管を実施する際には、この蓄積したドレンによりチャンバ室147内に位置する第2弁体123やスリーブ142に錆あるいは腐食が発生する恐れがあった。
【0044】
このチャンバ室147内のドレンの蓄積を防止するため、チャンバ室147の最下部に相当するスリーブ142の壁面に、第2弁体123の上流側すなわち第2主流路27とチャンバ室147を連通するドレン孔125を備えた。このドレン孔125は、第2弁体123の孔124の特性に対して、チャンバ室147の内部圧力に影響を与えない直径寸法(断面積)であり、ドレン孔125の数量は1個またはそれ以上でもよい。
【0045】
ドレン孔125を設けたことにより、タービン起動の前に、チャンバ室147に蓄積したドレンは高低落差の作用でドレン孔125を通過して第2主流路27側に流れ出し、やがて第2弁ケーシング21のドレン管28を経由して蒸気タービンケーシング30の外部に排出される。このように、構成を簡単にしてチャンバ室147内におけるドレンを連続して事前に充分排出することができるので、チャンバ室147内に位置する第2弁体123やスリーブ142に錆の発生や腐食が発生することがない。結果として、第2弁体123がスリーブ142内を摺動する時、第2弁体123が動作不良を引き起こす恐れが皆無となる。
【0046】
第1の本実施形態によれば、第1弁体113及び第2弁体123の周囲を取り囲むようにした円筒状のスリーブ141及びスリーブ142をそれぞれ設けると共に、第1弁体113及び第2弁体123の内部に孔を設けることにより、チャンバ室146及びチャンバ室147の内部圧力が減圧され、開弁の駆動力を低減できるので、弁口径の大型化による蒸気タービンの高出力化が可能である。また、構造を簡素化して部品点数を削減することにより、部品管理の簡略化や摩耗に対する耐久性向上が可能である。さらに、スリーブ142の壁面にドレン孔125を設けることによりドレンを排出し、チャンバ室147内に位置する第2弁体123やスリーブ142の錆や腐食を防ぐことができるので、第2弁体123がスリーブ142内を摺動する時、第2弁体123が動作不良を引き起こす恐れがない。
【0047】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、図4を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一部品には同一の符号を付しており、ここでの説明は省略する。なお、第2の実施形態と前述の第1の実施形態との相違点は、ドレン孔225の構成である。
【0048】
図4は、図1における第2弁ケーシング21付近の構造例を示した図である。なお、図3ではスリーブ142の外表面であって、そこに開口したドレン孔125を備えているが、蒸気タービンの運転中は第2主流路27の内部に位置するスリーブ142の周辺を蒸気が複雑に流れるため、ドレン孔125からピー等の笛吹音の発生が苦慮される。
【0049】
ここで、図4に戻り、第2弁体123はスリーブ142内を車室1側に向かって摺動することから、スリーブ142の開口部が上向きとなるため、長期停止時や長期保管時にチャンバ室147内に滞留した残留蒸気がドレンとなり、また第2主流路27や車室1からのドレンもチャンバ室147内に流入して蓄積する構造となる。このチャンバ室147内に蓄積したドレンを排出するため、蒸気が複雑に流れる第2主流路27内部に向かって開口しないように、スタンド61の内部を貫通するドレン孔225を備え、スタンド61の内部でスタンドの外部(外面)に向かってドレンを排出するように方向を変換している。
【0050】
このドレン孔225は、第2弁体123の孔124の特性に対して、チャンバ室147の内部圧力に影響を与えない直径寸法(断面積)であり、その数量は1個またはそれ以上でもよい。
【0051】
ドレン孔225を設けたことにより、タービン起動の前に、チャンバ室147の蓄積したドレンはドレン孔225を落下して通過し、フランジ230を介してスタンド61の外部に排出される。一方第2主流路27のドレンは、第2弁ケーシング21のドレン管28を経由し、フランジ230からのドレンとエルボ231で合流して排出される。なお、スタンド61の配置によっては、ドレン孔225とドレン管28とは合流するまでもなくそれぞれが単独であっても良く、またドレン弁29の設置場所や数量等については図4に示す形態に限らない。これらドレンはやがて蒸気タービンケーシング30の外部に排出される。
【0052】
このように、チャンバ室147内の蓄積したドレンを排出するばかりか、ドレン孔225は蒸気が複雑に流れる第2主流路27内部に開口することがないため、笛吹音等の騒音が発生することがない。
【0053】
第2の本実施形態によれば、第2弁体123の周囲を取り囲むようにした円筒状のスリーブ142を設けると共に、第2弁体123に孔を設けることでチャンバ室147の内部圧力が減圧され開弁の駆動力を低減できるので、弁口径の大型化による蒸気タービンの高出力化が可能である。さらに、スタンド61の内部にドレン孔225を設けることにより笛吹音の騒音を発生させずにドレンを排出し、チャンバ室142内に位置する第2弁体123やスリーブ142の錆や腐食を防ぐことができるので、第2弁体123がスリーブ142内を摺動する時、第2弁体123が動作不良を引き起こす恐れがない。
【0054】
以上説明した2つの実施形態によれば、従来構造の蒸気タービンケーシングの上部に直接取り付けられた蒸気弁装置では子弁体を備えることで、弁体にかかる蒸気圧力を低減して駆動力低減が実現できるが、蒸気タービンケーシングの下部に直接取り付けられた蒸気弁装置では弁体の自重の影響で、弁体の制御が不正確になるため、子弁体を備える構造は蒸気タービンケーシングの下部に直接取り付けられた蒸気弁装置には不向きだった。
【0055】
本実施形態では、子弁体を設ける代わりに、弁体の周囲を取り囲むようにした円筒状のスリーブを設けると共に、弁体に孔を設けることにより、蒸気タービンケーシングの上部および下部の蒸気弁装置がともに開弁の駆動力を低減できる。蒸気タービンケーシングの下部に直接取り付けられた蒸気弁装置においても子弁体がなくなるために弁体の自重問題がなくなり、蒸気タービンケーシングの上部および下部の蒸気弁装置とも弁口径の大型化が実現できて、蒸気タービンの高出力化が可能である。
【0056】
また、蒸気タービンケーシングの上部および下部のいずれの蒸気弁装置も、子弁体をもたない構造となるため、構造を簡素化して部品点数を削減することにより、部品管理の簡略化や摩耗に対する耐久性向上が可能である。さらに、蒸気タービンケーシングの下部に直接取り付けられた蒸気弁装置では、チャンバ室に連通したドレン孔を設けることによりチャンバ室内のドレンを排出し、チャンバ室内に位置する弁体やスリーブの錆や腐食を防ぐことができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1… 車室、11… 第1弁ケーシング、12… 第1弁座、17… 第1主流路、
21… 第2弁ケーシング、22… 第2弁座、27… 第2主流路、
30… 蒸気タービンケーシング、
60… スタンド、61… スタンド、
113… 第1弁体、114… 孔、
123… 第2弁体、124… 孔、125… ドレン孔、126… 第2弁棒
141… スリーブ、142… スリーブ、143… 第1弁棒、146… チャンバ室、147… チャンバ室、225… ドレン孔、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8