(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144552
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】顆粒状賦形剤用結合剤、それを用いた賦形剤および錠剤、ならびに崩壊性を上昇させる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/26 20060101AFI20231003BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K47/26
A61K9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051585
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(74)【代理人】
【識別番号】100141575
【弁理士】
【氏名又は名称】慶田 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】大橋 且明
(72)【発明者】
【氏名】大木 詩帆
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076DD67
4C076EE38
4C076FF05
4C076FF33
4C076GG12
(57)【要約】
【課題】ヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として造粒した賦形剤から製造した錠剤よりも、高い硬度と崩壊性を有する錠剤を製造することができる顆粒状賦形剤用の結合剤を提供することを目的とする。
【解決手段】単糖類、二糖類、三糖類の含有量が50質量%以下である、DEが41以下である澱粉加水分解物またはその水素化物の水溶液を含有する顆粒状賦形剤用結合剤を用いて賦形剤を造粒することにより、水に対する崩壊性の高い顆粒状賦形剤を得、これを打錠したところ、得られた錠剤は高い硬度と崩壊性を有していた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DEが41以下である澱粉加水分解物またはその水素化物を含有する顆粒状賦形剤用結合剤。
【請求項2】
単糖類、二糖類、三糖類の含有量が50質量%以下である澱粉加水分解物またはその水素化物を含有する、請求項1に記載の顆粒状賦形剤用結合剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の顆粒状賦形剤用結合剤を用いて製造した顆粒状賦形剤。
【請求項4】
賦形剤が糖質である、請求項3に記載の顆粒状賦形剤。
【請求項5】
請求項3または4に記載の顆粒状賦形剤を用いて製造した錠剤。
【請求項6】
請求項1または2に記載の顆粒状賦形剤用結合剤を用い、顆粒状賦形剤の崩壊性を上昇させる方法。
【請求項7】
請求項3または4に記載の顆粒状賦形剤を用いて錠剤を製造し、錠剤の硬度および崩壊性を上昇させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒状賦形剤用結合剤、それを用いた顆粒状賦形剤および錠剤、ならびに顆粒状賦形剤の崩壊性および錠剤の硬度と崩壊性を上昇させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、健康食品の分野では剤型として錠剤が広く用いられる。錠剤の製造の際、打錠時の作業性向上、硬度の高い錠剤を得るため、賦形剤粒子などを造粒してから打錠することが多いが、硬度が高くなると摂取後体内での崩壊性が低下することがあり、長時間剤型を保持したまま体内に滞留することにより、錠剤からの有効成分の溶出が遅延する。
【0003】
例えば、造粒の際、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースが用いられ、硬度の高い錠剤が得られているが、崩壊性は十分とは言えない。賦形剤粒子を造粒した例としては例えば、特開2014-156435号公報などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、硬度の高い錠剤は崩壊性が十分ではなかった。本発明は硬度、崩壊性が高い錠剤、当該錠剤を得るための溶解性、崩壊性が高い顆粒状の賦形剤、および当該顆粒状賦形剤を得るための結合剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題の解決のため検討した結果、特定の成分組成を有する澱粉加水分解物またはその水素化物である還元澱粉糖化物を結合剤として賦形剤粒子などを造粒することにより、崩壊性の良い顆粒状賦形剤を製造し、これを打錠することにより、錠剤として十分な硬度を有し、体内での崩壊性の良い錠剤を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は第一に、DEが41以下である澱粉加水分解物またはその水素化物を含有する顆粒状賦形剤用結合剤である。
第二に、単糖類、二糖類、三糖類の含有量が50質量%以下である澱粉加水分解物またはその水素化物を含有する、上記第一に記載の顆粒状賦形剤用結合剤である。
第三に、上記第一または第二に記載の顆粒状賦形剤用結合剤を用いて製造した顆粒状賦形剤である。
第四に、賦形剤が糖質である、上記第三に記載の顆粒状賦形剤である。
第五に、上記第三または第四に記載の顆粒状賦形剤を用いて製造した錠剤である。
第六に、上記第一または第二に記載の顆粒状賦形剤用結合剤を用い、顆粒状賦形剤の崩壊性を上昇させる方法である。
第七に、上記第三または第四に記載の顆粒状賦形剤を用いて錠剤を製造し、錠剤の硬度および崩壊性を上昇させる方法である。
【0008】
本発明で用いる賦形剤は、通常食用、医薬品用で用いることのできるものは特に制限なく用いることが可能であるが、糖質を用いることが好ましい。本発明において、糖質とは単糖類またはその誘導体、およびそれらが重合した物質の総称すなわち炭水化物をいう。単糖類の誘導体としては、デオキシ糖、硫酸糖、アミノ糖、ウロン酸、アルドン酸、アルダン酸、糖アルコールなどが挙げられる。
【0009】
本発明において、賦形剤粉末としては例えば、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、還元イソマルツロース、マルトトリイトール、還元澱粉糖化物などの糖アルコール類、グルコース、マルトース、マルトトリオース、澱粉加水分解物、澱粉、結晶セルロース、トレハロースなどのグルコースの重合体、異なる単糖類が結合した乳糖、スクロース、ニストース、ケストース、ラフィノースなどが挙げられる。
【0010】
賦形剤は単独または複数の種類を組み合わせて賦形剤混合物として用いることもできる。また、賦形剤に添加剤、各種有効成分粉末も併せて用いることができる。これらは賦形剤と合わせて結合剤とともに造粒してもよいし、造粒された顆粒状賦形剤と混合してもよい。顆粒状とした賦形剤は水に対し高い崩壊性を有しており、そのまま使用することも可能である。一方、このような性質を有する顆粒状の賦形剤を打錠することにより、高い硬度と高い崩壊性を有する錠剤を得ることができる。
【0011】
本発明で用いる添加剤としては、例えば、フュームドシリカ、リン酸水素カリウム、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポビドン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、及びポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、及び軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0012】
本発明で用いる有効成分としては、栄養補助食品等と呼ばれる食品サプリメントの活性成分や、特定保健用食品、栄養機能食品等の保健機能食品の活性成分などであれば特に制限されず、例えば、アスコルビン酸、葉酸、カルニチン、ヘスペリジン等の各種ビタミン類、グルタミン、オルニチン、5-アミノレブリン酸等の各種アミノ酸類、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン等の各種アミノ糖類、コラーゲン、エラスチン等の各種タンパク質、コンドロイチン等のムコ多糖類、DNA等の各種核酸類、ミネラル類、カテキン、ポリフェノール等の各種フラボノイド類、アスタキサンチン、リコピン、リコペン等の各種カロテノイド類、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン等の各種リン脂質類、EPA、DHA等の各種脂肪酸類、コエンザイムQ10等のユビキノン類、各種酵素類、食物繊維類、ハーブ類、果実・植物体およびその抽出物、魚油、乳酸菌等のプロバイオティックス菌類、システインペプチド含有酵母エキス等の酵母エキス類などを挙げることができる。
【0013】
また、本発明で用いる有効成分としての医薬成分についても、特に制限なく用いることができ、例えば滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善剤、脳循環改善剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、抗アレルギー薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、抗リウマチ薬、骨格筋弛緩薬、鎮けい剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療薬、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤、アルツハイマー病治療薬などから選ばれた1種または2種以上の成分が用いられ、特に滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、中枢神経作用薬、胃腸薬、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、抗アレルギー薬、抗不整脈薬、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、抗高脂血症剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、骨格筋弛緩薬、鎮うん剤などが好適に用いられる。
【0014】
本発明において、結合剤として、特定の成分組成を有する水溶性の澱粉加水分解物またはその水素化物である還元澱粉糖化物が用いられる。澱粉加水分解物は澱粉を化学的、酵素的に部分加水分解し低分子化した物質であり、様々な重合度を有する物質を成分として含有する。この澱粉加水分解物のホルミル基が水素化された構造を有する物質は還元澱粉糖化物、還元水飴などと呼ばれる。錠剤の保存安定性の観点から、本発明において好ましくは還元澱粉糖化物が結合剤として用いられる。なお、糖質のホルミル基またはカルボニル基が水素化された構造を有する物質は糖アルコール、ポリオールなどと呼ばれる。本発明において還元澱粉糖化物は市販品を用いてもよく、公知の方法によって澱粉加水分解物から製造してもよい。また、異なる糖組成を有する還元澱粉糖化物を混合し、任意の糖組成を有する組成物としてもよい。
【0015】
本発明において、糖組成とは、糖質の総質量に対する各糖質の質量の割合を百分率で示すものをいう。糖組成は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で確認することができる。糖質の水溶液を試料としてHPLCを行いクロマトグラムを得る。得られたクロマトグラムのピーク面積の全体の和が糖質の総質量に相当し、各ピーク面積がそれぞれの糖質の質量に相当し、それぞれの糖質の質量の割合を求めることができる。HPLCの条件は適宜設定ができる。
【0016】
本発明においては、澱粉加水分解物またはその水素化物の成分としての単糖類、二糖類、三糖類の含有量が、澱粉加水分解物またはその水素化物100質量部に対し50質量部以下、好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下であり、さらに好ましくは、前記の組成に加え、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類の含有量が50質量部以下である澱粉加水分解物またはその水素化物を結合剤として用いることができる。
【0017】
デキストロース当量(Dextrose Equivalent,DE)とは、澱粉加水分解物の平均分子量に関する指標すなわち、澱粉加水分解物における加水分解の程度の指標であり、D-グルコースの還元力を100とした場合の相対的な尺度である。値が0に近いものほど加水分解の程度が低く、平均分子量が大きく、100に近いものほど加水分解の程度が高く、平均分子量が小さい。本発明ではDE41以下、好ましくはDE39以下の澱粉加水分解物またはその水素化物を結合剤として用いることができる。なお、造粒時の取り扱い易さなどの観点から、澱粉加水分解物のDEは5以上であることが好ましく、より好ましくは10以上である。結合剤は、顆粒状賦形剤の他の成分100質量部に対し、1~10質量部、好ましくは1~5質量部、より好ましくは2~4質量部用いて造粒を行う。
【0018】
本発明において、造粒とは、結合剤などを用いて、単一もしくは多成分からなる賦形剤などの粒子をより大きな顆粒に加工する操作である。本発明は造粒の方法にかかわらず用いることができるが、造粒時に水、または結合剤溶液を賦形剤粉末に滴下、または噴霧し湿潤させ、その水分を乾燥させる操作で造粒する湿式造粒に用いることが好ましい。湿式造粒における水、または結合剤溶液の添加方法についても特に制限はなく、例えば、賦形剤粉末を撹拌しながら溶液などを滴下し造粒する攪拌造粒、流動層の中で賦形剤粉末を流動させながら溶液などを噴霧して造粒する流動層造粒を用いることができるが、本発明では操作性の観点から流動層造粒を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の顆粒状賦形剤から錠剤を製造する方法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、使用する混合機や打錠機などは一般的に用いられるものを使用することができる。
【0020】
本発明において硬度が上昇するとは、一定の条件下での錠剤硬度が本発明の結合剤を用いない系と比べて高いことをいう。錠剤硬度とは錠剤を円形の直径方向に2枚の加圧板に挟み、一方の加圧板を一定速度で動かして錠剤が破壊される直前の力をいう。測定には市販の測定装置を用いることができる。
【0021】
本発明において崩壊性が上昇するとは、一定の条件下での錠剤の崩壊時間が本発明の結合剤を用いない系と比べて短いことをいう。崩壊時間は、第十七改正日本薬局方に記載の崩壊試験法記載の装置を用いて測定するほか、補助的に実際にヒトの口腔内で崩壊する時間を測定してもよい。また、本発明おいて、錠剤とする前の顆粒状賦形剤においては、溶解性を崩壊性の指標とする。顆粒状賦形剤の溶解性(崩壊性)が上昇するとは一定の条件下での溶解時間が本発明の結合剤を用いない系と比べて短いことをいう。溶解時間とは純水100mLを200mL容ビーカーにとり、25℃に保持し、攪拌子を用い400rpmで攪拌しながら顆粒状賦形剤5gを投入し、投入から溶解までに要した時間をいう。
【発明の効果】
【0022】
本発明の構成をとることにより、溶解性、崩壊性の良い顆粒状賦形剤を得ることができ、さらにこれを打錠することにより錠剤として十分な硬度を有するとともに、高い崩壊性を有する錠剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】結晶マルチトールから製造した顆粒の成形荷重と錠剤の硬度の関係を表す。
【
図2】結晶マルチトールから製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(局方)の関係を表す。
【
図3】結晶マルチトールから製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(口腔内)の関係を表す。
【
図4】粉末マルチトールから製造した顆粒の成形荷重と錠剤の硬度の関係を表す。
【
図5】粉末マルチトールから製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(局方)の関係を表す。
【
図6】粉末マルチトールから製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(口腔内)の関係を表す。
【
図7】エリスリトールから製造した顆粒の成形荷重と錠剤の硬度の関係を表す。
【
図8】エリスリトールから製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(局方)の関係を表す。
【
図9】エリスリトールから製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(口腔内)の関係を表す。
【
図10】トレハロースから製造した顆粒の成形荷重と錠剤の硬度の関係を表す。
【
図11】トレハロースから製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(局方)の関係を表す。
【
図12】トレハロースから製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(口腔内)の関係を表す。
【
図13】乳糖から製造した顆粒の成形荷重と錠剤の硬度の関係を表す。
【
図14】乳糖から製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(局方)の関係を表す。
【
図15】乳糖から製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(口腔内)の関係を表す。
【
図16】キシリトールから製造した顆粒の成形荷重と錠剤の硬度の関係を表す。
【
図17】キシリトールから製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(局方)の関係を表す。
【
図18】キシリトールから製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(口腔内)の関係を表す。
【
図19】澱粉から製造した顆粒の成形荷重と錠剤の硬度の関係を表す。
【
図20】澱粉から製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(局方)の関係を表す。
【
図21】澱粉から製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(口腔内)の関係を表す。
【
図22】結晶マルチトールと澱粉の混合粉末から製造した顆粒の成形荷重と錠剤の硬度の関係を表す。
【
図23】結晶マルチトールと澱粉の混合粉末から製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(局方)の関係を表す。
【
図24】結晶マルチトールと澱粉の混合粉末から製造した顆粒の錠剤硬度と崩壊時間(口腔内)の関係を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
(結合剤)
結合剤としては表1に示すものを用いた。単糖類、二糖類、三糖類、四糖類の数値は結合剤としての糖質総質量を100質量部としたときの質量部を表す。なお対照結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL,日本曹達社製)を用いた。
【0026】
【0027】
(賦形剤粉末)
賦形剤粉末は以下に示すものを用いた。
結晶マルチトール(レシス微粉、三菱商事ライフサイエンス社製)
粉末マルチトール(アマルティMR―50,三菱商事ライフサイエンス社製)
トレハロース(トレハ微粉、林原社製)
エリスリトール(エリスリトールT微粉、三菱ケミカル社製)
乳糖(Pharmatose 200M,DFE Pharma社製)
キシリトール(キシリット微粉、三菱商事ライフサイエンス社製)
結晶セルロース(セオラスPH-101,旭化成社製)
澱粉(コーンスターチW、日本食品化工社製)
【0028】
<顆粒状賦形剤の製造>
本発明に係る実施例、比較例、対照例で用いる顆粒状賦形剤は以下の方法で製造した。賦形剤粉末または賦形剤粉末混合物495g、親水性フュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)5gを造粒装置(FD-MP-01:株式会社パウレック製)に仕込み、結合剤の10%水溶液を150g噴霧し造粒した。造粒は製品温度40℃で行い、製品温度60℃で10分乾燥、室温で一晩放置、目開き850μmのふるいで篩過し、顆粒状賦形剤を得た。
【0029】
<顆粒状賦形剤の評価>
顆粒状賦形剤の崩壊性の指標として、溶解時間の測定を行った。純水100mLを200mL容ビーカーにとり、25℃に保持し、攪拌子を用い400rpmで攪拌しながら顆粒状賦形剤5gを投入し、投入から溶解までに要した時間を測定した。
【0030】
結晶マルチトール、粉末マルチトールに対し、糖組成、DEの異なる還元澱粉糖化物を結合剤として用い、顆粒状賦形剤を製造し、評価を行った。結果を表2~3に示す。
【0031】
【0032】
【0033】
本発明に係る還元澱粉糖化物1、2を結合剤として造粒した顆粒状賦形剤(実施品)はヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として造粒した顆粒状賦形剤(対照品)よりも短い溶解時間を示し、顆粒状賦形剤の崩壊性の上昇が確認された。
【0034】
<錠剤の製造>
それぞれの造粒品100質量部とステアリン酸マグネシウム1質量部を均一になるまで混合し、φ8mm平の形状で質量180mgとなるよう単発式打錠機(NS-T100:ナノシーズ社製)を用い、以下の表に示す成形荷重で打錠した。
【0035】
<錠剤の評価>
造粒物から得られた錠剤の硬度は、打錠して得られた錠剤から5錠について硬度計(TH-303MP:富山産業社製)を用いて測定し、平均値を採用した。崩壊時間は第17改正日本薬局方記載の方法に準拠し3錠について崩壊度試験機(NT-2H:富山産業社製)を用いて測定し、平均値を採用した。口腔内による崩壊度試験は、口腔内で錠剤を構成する造粒物が崩壊する時間を測定した。
【0036】
(結合剤の評価)
結晶マルチトールに対し、糖組成、DEの異なる還元澱粉糖化物を結合剤として用い、前記の方法で造粒を行った。得られた顆粒状の造粒物を、成形荷重8kN、12kNで打錠を行った。成形荷重と錠剤の硬度を表4、
図1に、錠剤硬度と崩壊時間(局方、口腔内)の関係を
図2、3に示す。
【0037】
【0038】
還元澱粉糖化物1、2、3、澱粉加水分解物1を結合剤として造粒した顆粒を打錠して得られた錠剤においては、対照例の顆粒から得られた錠剤よりも硬度が高く、崩壊時間が短い錠剤、すなわち硬度および崩壊性が上昇した錠剤を得ることができた。また打錠時の作業性も良好であった。一方、還元麦芽糖水飴を結合剤として造粒した顆粒を打錠して得られた錠剤は、実施例、対照例の顆粒から得られた錠剤よりも硬度が低い結果となった。
【0039】
(各種賦形剤粉末の造粒)
各種賦形剤粉末に対し、還元澱粉糖化物1、2、還元麦芽糖水飴、ヒドロキシプロピルセルロースを用い、前記の方法で造粒を行った。得られた顆粒状の造粒物を、成形荷重8kN、12kNで打錠を行った。
【0040】
賦形剤粉末が粉末マルチトールである場合の成形荷重と錠剤の硬度を表5、
図4に、錠剤硬度と崩壊時間(局方、口腔内)の関係を
図5、6に示す。
【0041】
【0042】
賦形剤粉末がエリスリトールである場合の成形荷重と錠剤の硬度を表6、
図7に、錠剤硬度と崩壊時間(局方、口腔内)の関係を
図8、9に示す。
【0043】
【0044】
賦形剤粉末がトレハロースである場合の成形荷重と錠剤の硬度を表7、
図10に、錠剤硬度と崩壊時間(局方、口腔内)の関係を
図11、12に示す。
【0045】
【0046】
賦形剤粉末が乳糖である場合の成形荷重と錠剤の硬度を表8、
図13に、錠剤硬度と崩壊時間(局方、口腔内)の関係を
図14、15に示す。
【0047】
【0048】
賦形剤粉末がキシリトールである場合の成形荷重と錠剤の硬度を表9、
図16に、錠剤硬度と崩壊時間(局方、口腔内)の関係を
図17、18に示す。
【0049】
【0050】
賦形剤粉末が澱粉である場合の成形荷重と錠剤の硬度を表10、
図19に、錠剤硬度と崩壊時間(局方、口腔内)の関係を
図20、21に示す。
【0051】
【0052】
賦形剤粉末混合物が結晶マルチトール/澱粉=7/3である場合の成形荷重と錠剤の硬度を表11、
図22に、錠剤硬度と崩壊時間(局方、口腔内)の関係を
図23、24に示す。
【0053】
【0054】
還元澱粉糖化物1、2を用いた系ではいずれの糖質賦形剤粉末を用いた場合においても対照例よりも硬度が高く、崩壊時間が短い錠剤、すなわち硬度および崩壊性が上昇した錠剤を得ることができた。また打錠時の作業性も良好であった。