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  • 特開-ヒータ線、及び発熱体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014457
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ヒータ線、及び発熱体
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/56 20060101AFI20230124BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
H05B3/56 B
H05B3/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118390
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003414
【氏名又は名称】東京特殊電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】中山 毅安
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP05
3K092PP15
3K092QA03
3K092QB02
3K092QB26
3K092RE03
(57)【要約】
【課題】高い屈曲耐久性を有して細径化に対応しつつ、局所的に異常な高温になることが防止できる新規な構造を採用することで、低コスト化を図ることができるヒータ線を提供する。
【解決手段】ヒータ線1は、繊維芯2の外周に発熱線が螺旋状に巻き付けられた発熱部と、前記発熱部の外周に配されたシース7とを備え、前記発熱線は、第1金属素線4aからなる第1発熱線4と、第2金属素線5aの外周に絶縁膜5bが設けられた第2発熱線5とが交互に巻き付けられている構成である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維芯の外周に発熱線が螺旋状に巻き付けられた発熱部と、前記発熱部の外周に配されたシースとを備え、前記発熱線は、第1金属素線からなる第1発熱線と、第2金属素線の外周に絶縁膜が設けられた第2発熱線とが交互に巻き付けられていること
を特徴とするヒータ線。
【請求項2】
前記第1発熱線と前記第2発熱線とはそれぞれ1本又は複数本配されており、前記第1発熱線が複数本の場合は互いに間隔をあけて巻き付けられており、かつ、前記第1発熱線と前記第2発熱線とが互いに接している集合部を有すること
を特徴とする請求項1記載のヒータ線。
【請求項3】
前記発熱線の導体径は0.03~0.15mmであり、前記発熱線の数は2~10本であること
を特徴とする請求項1または2記載のヒータ線。
【請求項4】
前記絶縁膜は、ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドのいずれか一種以上からなること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のヒータ線。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載のヒータ線を配設した発熱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲性に優れたヒータ線、及び当該ヒータ線を配設した発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒータ線は、一例として、車両用暖房部材の発熱源や、一般暖房製品の発熱源などに用いられている。従来、繊維芯の外周に複数本の発熱線を螺旋状に巻き付けてシースを設けた構成が提案されている(特許文献1:特開昭61-047087号公報)。また、屈曲性の向上を目的として、フッ素樹脂からなる絶縁膜により被覆された複数本の導体素線を用いた構成が提案されている(特許文献2:特開2013-020951号公報)。
【0003】
特許文献1と特許文献2に記載のように、従来構造においては、各発熱線はいずれも導体素線が絶縁被覆されていなければならない、ということが技術常識になっていた。つまり、各発熱線が裸導体である場合、一本が断線すると、全体の抵抗値の変化は小さい反面、断線箇所は局所的に高抵抗になってしまうので当該断線箇所の発熱量が上昇して局所的に異常な高温になってしまうという問題がある。これに対して、各発熱線が絶縁被覆されている場合、一本が断線すると、その分だけ全体の抵抗値が高くなって全体的に発熱量が下がるので断線個所が局所的に異常な高温になることが防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-047087号公報
【特許文献2】特開2013-020951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車の座席などに用いられるヒータ線は、高い屈曲耐久性が要求されることに加えて、速やかに暖まる機能(速暖機能)が求められており、それに対応するために狭ピッチでの配線が要請され、それゆえ細径化が要求されている。他方、各発熱線が絶縁膜を有している構造は材料費や工数がかかることから、高い屈曲耐久性、細径化、及び低コスト化のすべての要求に応えることが難しいのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、高い屈曲耐久性を有して細径化に対応しつつ、局所的に異常な高温になることが防止できる新規な構造を採用することで、低コスト化を図ることができるヒータ線を提供することを目的とする。
【0007】
一実施形態として、以下に開示する解決策により、前記課題を解決する。
【0008】
本発明に係るヒータ線は、繊維芯の外周に発熱線が螺旋状に巻き付けられた発熱部と、前記発熱部の外周に配されたシースとを備え、前記発熱線は、第1金属素線からなる第1発熱線と、第2金属素線の外周に絶縁膜が設けられた第2発熱線とが交互に巻き付けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、絶縁膜を有しない第1発熱線と、絶縁膜を有する第2発熱線とを繊維芯の外周に交互に螺旋状に巻き付ける構造にしたことで、第1発熱線と第2発熱線との絶縁が維持できるので局所的に異常な高温になることが防止でき、高い屈曲耐久性を有して細径化に対応しつつ、低コスト化を図ることができる。
【0010】
本発明に係るヒータ線は、前記第1発熱線と前記第2発熱線とはそれぞれ1本又は複数本配されており、前記第1発熱線が複数本の場合は互いに間隔をあけて巻き付けられており、かつ、前記第1発熱線と前記第2発熱線とが互いに接している集合部を有することが好ましい。この構成によれば、第1発熱線が1本の場合は絶縁性が維持されるとともに、集合部によって速やかに暖めることができ、狭ピッチでの配線に容易に対応できる。また、第1発熱線が複数本の場合は互いに間隔をあけて絶縁を維持しつつ、集合部によって速やかに暖めることができて、狭ピッチでの配線に容易に対応できる。
【0011】
本発明に係るヒータ線は、前記発熱線の導体径は0.03~0.15mmであり、前記発熱線の数は2~10本であることが好ましい。この構成によれば、細径化の要求に十分に対応しつつ、集合部によって速やかに暖めることができて、狭ピッチでの配線に容易に対応できる。
【0012】
本発明に係るヒータ線における前記絶縁膜は、ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドのいずれか一種以上からなることが好ましい。一例として、前記絶縁膜は多層構造にする場合があり、この場合は、ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリイミド、又は、ポリアミドイミドのいずれか一種以上からなる下層と、滑性ナイロン、又は、滑性ポリアミドイミドからなる上層とを有する。
【0013】
本発明に係る発熱体は、上述の本発明に係るヒータ線が配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、絶縁膜を有しない第1発熱線と、絶縁膜を有する第2発熱線とを繊維芯の外周に交互に螺旋状に巻き付ける構造にしたことで、第1発熱線と第2発熱線との絶縁が維持できるので局所的に異常な高温になることが防止でき、高い屈曲耐久性を有して細径化に対応しつつ、低コスト化を図ったヒータ線が実現できる。また本発明に係るヒータ線を用いることで、断線による局所的な異常高温が防止でき屈曲耐久性に優れた構成の発熱体が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の実施形態に係るヒータ線の第1例を示す概略の構造図である。
図2図2Aは本実施形態に係るヒータ線の第2例を示す概略の横断面図であり、図2Bは本実施形態に係るヒータ線の第3例を示す概略の横断面図であり、図2Cは本実施形態に係るヒータ線の第4例を示す概略の横断面図である。
図3図3Aは本実施形態に係る第1発熱線の例を示す概略の横断面図であり、図3Bは本実施形態に係る第2発熱線の第1例を示す概略の横断面図であり、図3Cは本実施形態に係る第2発熱線の第2例を示す概略の横断面図である。
図4図4はヒータ線の屈曲試験を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[ヒータ線]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。本実施形態のヒータ線1は、図1図2A図2C、及び図3A図3Cに示すように、繊維芯2の外周に発熱線が螺旋状に巻き付けられた発熱部と、前記発熱部の外周に配されたシース7とを備え、前記発熱線は、第1金属素線4aからなる第1発熱線4と、第2金属素線5aの外周に絶縁膜5bが設けられた第2発熱線5とが交互に巻き付けられている構成である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
第1例は、図1に示すように、繊維芯2の外周に、第1発熱線4と第2発熱線5とが交互に巻き付けられており、第1発熱線4と第2発熱線5とはそれぞれ3本ずつ配されており、第1発熱線4と第1発熱線4とは間隔をあけて巻き付けられており、第2発熱線5と第2発熱線5とは間隔をあけて巻き付けられており、第1発熱線4と第2発熱線5とが互いに接している集合部6が所定ピッチで配設されている。
【0018】
第2例は、図2Aに示すように、繊維芯2の外周に、第1発熱線4と第2発熱線5とが交互に巻き付けられており、第1発熱線4と第2発熱線5とはそれぞれ1本ずつ配されており、第1発熱線4と第1発熱線4とは間隔をあけて巻き付けられており、第2発熱線5と第2発熱線5とは間隔をあけて巻き付けられており、第1発熱線4と第2発熱線5とが互いに接している集合部6が所定ピッチで配設されている。
【0019】
第3例は、図2Bに示すように、繊維芯2の外周に、第1発熱線4と第2発熱線5とが交互に巻き付けられており、第1発熱線4は2本であり、第2発熱線5は1本であり、第1発熱線4と第1発熱線4とは間隔をあけて巻き付けられており、第2発熱線5と第2発熱線5とは間隔をあけて巻き付けられており、第1発熱線4と第2発熱線5とが互いに接している集合部6が所定ピッチで配設されている。なお、上記以外に、第1発熱線4を1本にして、第2発熱線5を2本にすることもできる。
【0020】
第4例は、図2Cに示すように、繊維芯2の外周に、第1発熱線4と第2発熱線5とが交互に巻き付けられており、第1発熱線4と第2発熱線5とはそれぞれ2本ずつ配されており、第1発熱線4と第1発熱線4とは間隔をあけて巻き付けられており、第2発熱線5と第2発熱線5とは間隔をあけて巻き付けられており、第1発熱線4と第2発熱線5とが互いに接している集合部6が所定ピッチで配設されている。
【0021】
第1発熱線4と第2発熱線5とを螺旋状に巻き付けたときの所定ピッチは、繊維芯2の径やこれら発熱線の本数及び直径に応じたピッチになる。一例として、螺旋状に巻き付けたときのピッチは0.2~2.5mmになる。
【0022】
一例として、第1金属素線4aと第2金属素線5aは、同一材質かつ同一導体径にする。また一例として、第1金属素線4aと第2金属素線5aは、材質を異ならせる場合があり、導体径を異ならせる場合がある。第1金属素線4aと第2金属素線5aは、銅線または銅合金線が好ましい。銅合金線としては、Cu-Ag合金、Cu-Sn合金、Cu-Ni合金等を挙げることができる。これら金属素線の表面に、はんだめっき、錫めっき、金めっき、銀めっき、ニッケルめっき等のめっきを施す場合がある。
【0023】
第1発熱線4と第2発熱線5の実用的な合計数は、2~10本である。これにより、集合部6の軸方向長さを一定範囲として良好な屈曲性が維持できる。より好ましくは、第1発熱線4と第2発熱線5の合計数は、2~7本である。第1発熱線4と第2発熱線5の導体径は、直径が0.03~0.2mmである。より好ましくは、直径が0.03~0.15mmである。これにより、細径化の要求に十分に対応しつつ、集合部によって速やかに暖めることができ、狭ピッチでの配線に容易に対応できる。
【0024】
図3Aに示すように、第1発熱線4は、第1金属素線4aからなり、絶縁膜を有していない。ここで、本明細書においては、絶縁膜は高分子化合物などの非金属膜であり、金属酸化膜は適用除外である。
【0025】
図3B図3Cに示すように、第2発熱線5は、第2金属素線5aの外周に絶縁膜5bが設けられている。絶縁膜5bは、耐熱性材料が用いられ、ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリイミド、滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドのいずれか一種以上からなる。
【0026】
絶縁膜5bがポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリイミド、又はポリアミドイミドのいずれか一種以上からなる場合は、絶縁膜5bの厚みは、日本工業規格(JIS C 3202:2014)における1種、2種、3種に該当する程度であり、用途やサイズに応じて適宜、厚みを選択する。前記絶縁膜5bは、焼き付け工程により所望の厚みに成膜される。
【0027】
絶縁膜5bがポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリイミド、又はポリアミドイミドを下層とし、滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドを上層として設ける多層構造にする場合は、焼き付け装置によってポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリイミド、又はポリアミドイミドを焼き付け処理して、引き続き、例えばワンパス(1回塗布した後に加熱処理)して、滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドをオーバーコートする。このときの、滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドの厚みは、0.1~3μmの範囲にすることが好ましい。滑性ナイロンとしては、例えば、ナイロン66等を挙げることができる。滑性ポリアミドイミドとしては、ポリアミドイミドに添加物質(例えばポリエチレン等)を添加して滑性を向上させたものを挙げることができる。こうした滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドは第2発熱線5の表面に滑性を生じさせ、製造時(例えば複数の滑車を通過する際に加わる応力、巻き線時に発熱線が重なることに基づいた応力集中等)、配線時(曲げて配置する際に加わる応力等)及び装着時(座席用ヒータ線として用いる場合の着座時の繰り返し応力等)にそれぞれ負荷が加わって屈曲が繰り返されても断線しにくく、コストアップを抑制できる。滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドは、流動パラフィン等の揮発性が小さいので、揮発の問題も生じない。なお、滑性ナイロンや滑性ポリアミドイミドに代えて、シリコーンオイルをオーバーコートすることも可能である。
【0028】
絶縁膜5bが滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドからなる場合は、前記絶縁膜5bの厚みは、一例として、0.1~3μmの範囲にする。滑性ナイロンとしては、例えば、ナイロン66等を挙げることができる。滑性ポリアミドイミドとしては、ポリアミドイミドに添加物質(例えばポリエチレン等)を添加して滑性を向上させたものを挙げることができる。こうした滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドは第2発熱線5の表面に滑性を生じさせ、製造時(例えば複数の滑車を通過する際に加わる応力、巻き線時に発熱線が重なることに基づいた応力集中等)、配線時(曲げて配置する際に加わる応力等)及び装着時(座席用ヒータ線として用いる場合の着座時の繰り返し応力等)にそれぞれ負荷が加わって屈曲が繰り返されても断線しにくく、コストアップを抑制できる。なお、滑性ナイロン又は滑性ポリアミドイミドは、流動パラフィン等の揮発性が小さいので、揮発の問題も生じない。
【0029】
第2発熱線5における第1例は、第2金属素線5aの外周に第1絶縁膜5b1が形成されており、さらに第1絶縁膜5b1の外周に、第1絶縁膜5b1とは異なる材質の第2絶縁膜5b2が形成されている。第2発熱線5における第2例は、第2金属素線5aの外周に単層の絶縁膜5bが形成されている。一例として、絶縁膜5bの厚みは、0.1~15μmである。絶縁膜5bの厚みを0.1μm以上にすることで絶縁性が確保できる。また、絶縁膜5bの厚みを15μm以下にすることで膜強度を維持しつつ第1発熱線4と第2発熱線5との寸法差を小さくしてより均一な構造にすることが容易にできる。なお、絶縁膜5bは用途に応じて三層以上にする場合もある。
【0030】
繊維芯2は、巻芯としての機能を有しており、高張力体であることが好ましい。繊維芯2は、一例として、複数の繊維を束ねた繊維糸である。前記繊維糸を構成する繊維としては、ヒータ線1として必要な強度および耐熱性を有することが好ましい。前記繊維糸を構成する繊維は、一例として、テトロン(登録商標)等のポリエステル繊維、ケブラ(登録商標)等の全芳香族ポリアミド繊維、ベクトラン(登録商標)等のポリアリレート繊維、またはガラス繊維等を挙げることができる。また、繊維芯2は、異なる材質の繊維や、外径の異なる繊維糸を複合させた複合繊維とすることができる。
【0031】
繊維芯2は、前記繊維糸を集合線、撚り線又は編み込み線にして同心円状(真円形)又は略同心円状の断面になっている。繊維芯2を同心円状又は略同心円状の断面にするためには、繊維糸を撚り線とすることがより好ましい。一例として、繊維芯2の外径は、0.1~1.0mmである。これにより、良好な屈曲性が維持でき、細径化の要求に十分に対応できる。より好ましくは、繊維芯2の外径は、0.1~0.4mmである。繊維糸からなる繊維芯2は柔軟で変形し易いことから、繊維芯2の外径は、繊維芯2が真円形である場合はその外径とし、繊維芯2が扁平形である場合はその断面積から真円形の断面積に換算した外径として評価する。
【0032】
繊維芯2は、一般に、繊維糸を重量換算で示す繊度(dtex)で規定する。1dtexは、長さ10000mで1gである。繊維芯2のdtexの範囲は、110~2000dtexであることが好ましい。こうした繊維芯2は、単一の繊維糸からなるものを用いてもよいし、2種以上の繊維糸からなるものを用いてもよい。2種以上の繊維糸からなるもので繊維芯2を構成した場合は、合計のdtexを上記範囲内とすればよい。110dtex以上で、必要な耐久性が確保できる。2000dtex以下で、作業性や加工性に特段支障がない。
【0033】
シース7は、第1発熱線4および第2発熱線5を覆う絶縁外被である。例えば、第1発熱線4および第2発熱線5を配設し、その後、これら発熱線の外周を覆うように樹脂押出等で形成することができる。シース7の構成材料としては、絶縁性があり、耐熱性のある樹脂材料である。シース7は、PVC(ポリ塩化ビニル)、ナイロン、ポリエステルエラストマー、ETFE、FEP、PFAのフッ素系樹脂が好ましい。または、シース7は、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが、適用可能である。シース7の厚みは、発熱部の外径寸法や最終的なヒータ線1の外径によっても異なるが、0.05~1.0mm程度とすることが好ましく、0.10~0.30mmであることがより好ましい。一例として、ヒータ線1の外径は、直径が0.5~2.0mmである。より好ましくは、ヒータ線1の外径は、直径が0.5~1.5mmである。
【0034】
シース7は樹脂押出で形成されることが好ましい。押出形成した後のシース7は、一定の厚みになりやすく、その表面の凹凸を小さくすることができる。こうした押出形成したシース7を最外層として設けることにより、狭ピッチでの配線のために細径化した場合であっても局部的な屈曲が起きにくいという効果を兼ねることができる。その結果、着座時に違和感がない程度の細径化を実現して発熱体とする場合の狭ピッチ配線を行うことができるとともに、屈曲耐久性を高めることができる。
【0035】
続いて、上述のヒータ線1を配設した発熱体について、以下に説明する。
【0036】
[発熱体]
本実施形態の発熱体は、一例として、シートヒータであり、ヒータ線1が配設されている。ヒータ線1は高い柔軟性を有しているので、発熱体を構成するシート基材等のシート体へのヒータ線1の縫い付けによって所望の配線を行うことが容易にできる。
【0037】
本実施形態の発熱体は、一例として、電気カーペット、電気毛布等の暖房製品や、シートヒータ、ステアリングヒータ等の車両用暖房部材に適用できる。好ましくは自動車用のシートに装着することができる。自動車用暖房部材としての発熱体の場合、ヒータ線1はシート基材等の対象物に縫い込んで配設されている。
【0038】
シート基材へのヒータ線1の縫い付けは、揮発ガスの影響によってヒータ線1の外観が損なわれることがなく、第1発熱線4および第2発熱線5とシース7との間に摩擦が生じ難いので、配線性よく縫い込むことができる。ヒータ線1を配線して縫い込む際に、ヒータ線1に加わる応力に対する耐性が高い構造になっているので、着座時に違和感がない程度の細径化を実現し、さらに、発熱体とする場合の狭ピッチ配線が可能になる。
【0039】
続いて、本実施形態に係るヒータ線1の各実施例、参考例及び比較例について、以下に説明する。
【0040】
[実施例1]
繊維芯2は、ポリエステル糸を束ねて外径を0.25mmにしたものを用いた。第1発熱線4は、銅錫合金線(錫を0.3質量%含有するもの)を伸線加工して外径を0.09mmにした第1金属素線4aを用いた。第2発熱線5は、銅錫合金線を伸線加工して外径を0.09mmにした第2金属素線5aの外周に、第1絶縁膜5b1を形成して、第1絶縁膜5b1の外周に、第2絶縁膜5b2を形成したものを用いた。第1絶縁膜5b1は、ポリエステルイミドを厚みが10μmになるように焼き付けコーティングしたものである。第2絶縁膜5b2は滑性ポリアミドを厚みが2μmになるように塗布形成したものである。この繊維芯2上に、6本の発熱線を6本同時に単層になるようにピッチ1.5mmで螺旋状に横巻きした。前記発熱線は、第1発熱線4と第2発熱線5とを交互に巻き付けた。シース7は、ヒータ線1における外径が1.0mmとなるようにポリエステルを溶融押出して形成した。こうしてヒータ線1を作製した。
【0041】
[実施例2]
第2発熱線5は、銅錫合金線を伸線加工して外径を0.09mmにした第2金属素線5aの外周に、絶縁膜5bを形成したものを用いた。絶縁膜5bは滑性ポリアミドを厚みが2μmになるように塗布形成したものである。それ以外は実施例1と同様である。
【0042】
[参考例]
第1発熱線は、銅錫合金線を伸線加工して外径を0.09mmにした第1金属素線の外周に、第1絶縁膜を形成して、第1絶縁膜の外周に、第2絶縁膜を形成したものを用いた。第1絶縁膜は、ポリエステルイミドを厚みが10μmになるように焼き付けコーティングしたものである。第2絶縁膜は滑性ポリアミドを厚みが2μmになるように塗布形成したものである。それ以外は実施例1と同様である。
【0043】
[比較例]
第1発熱線は、銅錫合金線を伸線加工し外径を0.09mmにした第1金属素線を用いた。第2発熱線は、銅錫合金線を伸線加工し外径を0.09mmにした第2金属素線を用いた。それ以外は実施例1と同様である。
【0044】
[特性評価]
屈曲耐久性試験は、図4に示すように、半径5mmのマンドレル42,42の間に各実施例と比較例で作製した長さ1000mmのヒータ線を挟み、当該ヒータ線の下方端部に荷重41を取り付け、マンドレル42と垂直方向に毎分30回の速度で両側90度ずつの屈曲を1回として屈曲回数を測定した。屈曲性の評価は、第1金属素線および第2金属素線が全数断線するまでの回数とした。
【0045】
各試料の評価結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示すように、実施例1~2のヒータ線1は、いずれも屈曲回数37,000回以上であった。一方、比較例は、屈曲回数が35,000回に留まった。特に、実施例1は、参考例と同等の屈曲回数40,000回に達した。参考例は、発熱線の全本数がエナメル線であるため、生産リードタイムが掛かり、材料費などコストアップになる。比較例は、発熱線の全本数が裸導体線であるため、局部発熱対策が未実施であるため、動作耐久性が劣る。
【0048】
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 ヒータ線
2 繊維芯
4 第1発熱線、4a 第1金属素線
5 第2発熱線、5a 第2金属素線、5b 絶縁膜
6 集合部
7 シース
図1
図2
図3
図4