(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144570
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物およびフレキシブルプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20231003BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231003BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20231003BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08G59/40
H05K3/28 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051619
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】有馬 克哉
(72)【発明者】
【氏名】堀 敦史
(72)【発明者】
【氏名】奥村 凌也
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
5E314
【Fターム(参考)】
4J002CD021
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD141
4J002DE146
4J002DG046
4J002DJ016
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002EU026
4J002FD017
4J002FD146
4J002GQ01
4J036AD08
4J036AD20
4J036AF05
4J036AF06
4J036AF27
4J036AJ08
4J036AJ18
4J036DC40
4J036DC42
4J036EA06
4J036HA12
4J036JA07
4J036JA08
5E314AA32
5E314AA42
5E314BB06
5E314CC02
5E314CC07
5E314CC15
5E314DD06
5E314EE01
5E314EE02
5E314EE03
5E314FF06
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】高周波における低誘電特性に優れる熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)マレイミド化合物、(B)エポキシ化合物、(C)無機フィラー、および(D)硬化触媒を含有し、前記(B)成分は、(B1)エポキシ当量が220g/eq以上であるノボラック型エポキシ化合物、および(B2)エポキシ当量が200g/eq以上である3官能エポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)マレイミド化合物、(B)エポキシ化合物、(C)無機フィラー、および(D)硬化触媒を含有し、
前記(B)成分は、(B1)エポキシ当量が220g/eq以上であるノボラック型エポキシ化合物、および(B2)エポキシ当量が200g/eq以上である3官能エポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、
熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記(A)成分が、ダイマー酸に由来する炭化水素基を有するマレイミド化合物である、
熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物において、
前記(A)成分が、下記構造式(A1)で表されるマレイミド化合物である、
熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物からなるソルダーレジスト膜を備える、
フレキシブルプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物およびフレキシブルプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブル配線基板の絶縁被膜は、フレキシブル配線基板に、接着層を備えたカバーレイを被覆するものであった。しかしながら、場合により、この絶縁被膜にもパターン形成が求められることから、熱硬化性樹脂組成物であるソルダーレジストが用いられる場合がある。また、この絶縁被膜には、信号の高周波化に伴い、高周波において低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)を示すことも要求されている。
【0003】
高周波における低誘電特性を向上させる技術として、例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂と、カルボジイミド樹脂と、多官能エポキシ樹脂と、フィラーとを含み、ポリオレフィン系樹脂が酸変性ポリオレフィン樹脂である熱硬化性接着剤組成物が記載されている。
しかしながら、この特許文献1に記載の熱硬化性接着剤層においては、周波数1MHzでの誘電率の目標値を3未満とし、誘電正接の目標値を0.01未満としており、高周波における低誘電特性の点で不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高周波(例えば、10GHz)における低誘電特性に優れる熱硬化性樹脂組成物、並びに、これを用いたフレキシブルプリント配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、(A)マレイミド化合物、(B)エポキシ化合物、(C)無機フィラー、および(D)硬化触媒を含有し、前記(B)成分は、(B1)エポキシ当量が220g/eq以上であるノボラック型エポキシ化合物、および(B2)エポキシ当量が200g/eq以上である3官能エポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、熱硬化性樹脂組成物が提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る熱硬化性樹脂組成物からなるソルダーレジスト膜を備える、フレキシブルプリント配線基板が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高周波における低誘電特性に優れる熱硬化性樹脂組成物、並びに、これを用いたフレキシブルプリント配線基板を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、以下説明する(A)マレイミド化合物、(B)エポキシ化合物、(C)無機フィラー、および(D)硬化触媒を含有するものである。また、この(B)成分は、(B1)エポキシ当量が220g/eq以上であるノボラック型エポキシ化合物、および(B2)エポキシ当量が200g/eq以上である3官能エポキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含有するものである。
【0010】
本実施形態によれば、高周波における低誘電特性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、(B)エポキシ化合物は、はんだ耐熱性などの諸物性に優れる。しかしながら、エポキシ基と、カルボキシル基またはアミノ基との硬化反応により、高分子中に水酸基を発生し、この水酸基により、高周波における低誘電特性が悪化してしまう。これに対し、本実施形態においては、(A)マレイミド化合物と(B)エポキシ化合物とを併用している。そして、このような場合、下記に示す反応機構のように、(B)成分により、(A)成分が自己反応していき、硬化反応を行うものと本発明者らは推察する。一方で、本実施形態においては、(B)成分のエポキシ基と、カルボキシル基またはアミノ基との硬化反応は、少ないため、高分子中の水酸基が低減され、高周波における低誘電特性を向上できる。また、(A)成分の自己反応による硬化反応と、通常の(B)成分の硬化反応を併用しているため、通常の(B)成分の硬化反応が少なくても、十分な硬化反応を行うことができる。なお、(B)成分は、十分に反応性が高く、かつ低誘電特性への悪影響が少ないエポキシ化合物((B1)成分および(B2)成分のうちの少なくとも1つ)である。これにより、低誘電特性を維持しつつ、はんだ耐熱性などの諸特性を向上できる。以上のようにして、上記本発明の効果が達成されるものと本発明者らは推察する。
【0011】
【0012】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高周波における低誘電特性に優れることが好ましい。具体的には、この硬化物の比誘電率および誘電正接が、以下のとおりであることが好ましい。
周波数10GHzにおける比誘電率は、2.8以下であることが好ましく、2.75以下であることがより好ましく、2.7以下であることが特に好ましい。
周波数10GHzにおける誘電正接は、0.015以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましく、0.005以下であることが特に好ましい。
比誘電率および誘電正接は、例えば、Keysight Technologeis社製のネットワークアナライザー「E5063A」を用い、測定温度25℃、周波数10GHzの条件にて測定できる。
【0013】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)マレイミド化合物は、1分子中に、マレイミド骨格を有する化合物である。これらのマレイミド化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(A)成分としては、反応性の観点から、1分子中に、2つ以上のマレイミド骨格を有する化合物を用いることが好ましい。
また、(A)成分としては、低誘電特性の観点から、ダイマー酸に由来する炭化水素基を有するマレイミド化合物を用いることが好ましい。このような(A)成分としては、例えば、下記構造式(A1)で表されるマレイミド化合物が挙げられる。
これらの化合物の市販品としては、BMI-1500(Designer Molecules Inc社製)、およびSLK-1500(信越化学工業社製)などが挙げられる。なお、BMI-1500においては、下記構造式(A1)中のnの平均は1.3である。
【0014】
【0015】
(A)成分は、熱硬化性樹脂組成物の主成分(樹脂分中の主成分)となる成分である。(A)成分の配合量は、熱硬化性樹脂組成物100質量%に対して、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。(A)成分の配合量が前記下限以上であれば、(C)無機フィラーなどの充填成分を熱硬化性樹脂組成物中に分散させることができる。
【0016】
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)エポキシ化合物は、(B1)エポキシ当量が220g/eq以上であるノボラック型エポキシ化合物、および(B2)エポキシ当量が200g/eq以上である3官能エポキシ化合物(ただし、ノボラック型エポキシ化合物を除く)からなる群から選択される少なくとも1つを含有する。
(B1)成分は、ノボラック型エポキシ化合物であり、多官能のエポキシ化合物であるため、反応性が高い。また、(B1)成分のエポキシ当量は、低誘電特性の観点から、230g/eq以上であることが好ましい。
(B1)成分の市販品としては、YL-9057(三菱ケミカル社製)などが挙げられる。
【0017】
(B2)成分は、3官能エポキシ化合物であるため、反応性が高い。また、(B2)成分のエポキシ当量は、低誘電特性の観点から、205g/eq以上であることが好ましい。
(B2)成分としては、例えば、下記構造式(B2)で表されるエポキシ化合物が挙げられる。
【0018】
【0019】
(B1)成分または(B2)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、5質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上55質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上40質量部以下であることが特に好ましい。この配合量が前記下限以上であれば、熱硬化性樹脂組成物の熱硬化性をさらに向上できる。他方、この配合量が前記上限以下であれば、熱硬化性樹脂組成物の低誘電特性をさらに向上できる。
【0020】
(B)成分は、(B1)成分および(B2)成分以外のエポキシ樹脂(以下、(B3)成分ともいう)を含有していてもよい。ただし、低誘電特性の観点からは、(B1)成分および(B2)成分の合計配合量が、(B)成分100質量%に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
(B3)成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、(B1)成分以外のノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、およびo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)、ビスフェノールF型またはビスフェノールS型のエポキシ樹脂(ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたエポキシ樹脂など)、脂環式エポキシ樹脂(シクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、およびシクロペンテンオキシド基などを有するエポキシ樹脂など)、トリグリシジルイソシアヌレート(トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなど)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、およびアダマンタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
(B)成分の配合量は、硬化性の観点から、(A)成分100質量部に対して、5質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上55質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上40質量部以下であることが特に好ましい。
【0022】
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)無機フィラーとしては、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、タルク、およびマイカなどが挙げられる。これらの中でも、低誘電特性や、はんだ耐熱性などの諸物性の観点から、シリカを用いることが好ましく、溶融シリカを用いることがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
(C)成分の配合量は、はんだ耐熱性などの諸物性の観点から、(A)成分100質量部に対して、20質量部以上250質量部以下であることが好ましく、50質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上150質量部以下であることが特に好ましい。
【0024】
[(D)成分]
本実施形態に用いる(D)硬化触媒は、(B)成分を硬化させるために使用する成分である。(D)成分としては、例えば、メラミン化合物、ジシアンジアミド化合物、イミダゾール化合物、およびフェノール化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
(D)成分の配合量は、(B)成分の硬化性の観点から、(A)成分100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上25質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上20質量部以下であることが特に好ましい。
【0026】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、さらに溶剤を含有していてもよい。この溶剤としては、ケトン類(メチルエチルケトン、およびシクロヘキサノンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、およびキシレンなど)、アルコール類(メタノール、イソプロパノール、およびシクロヘキサノールなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン、およびメチルシクロヘキサンなど)、石油系溶剤類(石油エーテル、および石油ナフサなど)、セロソルブ類(例えば、セロソルブ、ブチルセロソルブ)、(例えば、カルビトール、ブチルカルビトールなど)、および、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、およびジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなど)などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
溶剤の配合量は、粘度を調整するという観点から、(A)成分100質量部に対して、20質量部以上150質量部以下であることが好ましく、40質量部以上120質量部以下であることがより好ましく、60質量部以上90質量部以下であることが特に好ましい。
【0027】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、上記した(A)成分~(D)成分および溶剤の他に、必要に応じて、種々の添加成分、例えば、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、およびカップリング剤などを、適宜配合してもよい。
【0028】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されない。例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミルなどの混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサーなどの攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0029】
[フレキシブルプリント配線基板]
次に、本実施形態のフレキシブルプリント配線基板について説明する。
本実施形態のフレキシブルプリント配線基板は、前述した本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物からなるソルダーレジスト膜を備えるものである。そして、本実施形態のフレキシブルプリント配線基板は、前述した本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト膜を形成することによって作製できる。なお、前述した本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、はんだ耐熱性および柔軟性にも優れるので、フレキシブルプリント配線基板のソルダーレジスト膜として好適である。
【0030】
具体的には、先ず、フレキシブルプリント配線基板に、フレキシブルプリント配線基板上の本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を塗布して、塗膜を形成する。
ここで、塗膜の塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコータ法、アプリケータ法、ブレードコータ法、ナイフコータ法、ロールコータ法、グラビアコータ法、およびスプレーコータ法などが挙げられる。
なお、スクリーン印刷法による場合には、パターン形成可能な印刷マスクを用いてもよい。この印刷マスクにより、塗膜に開口部などを設けることができる。
塗膜の厚み(DRY膜厚)は、特に限定されないが、通常、5μm以上100μm以下であり、好ましくは、10μm以上50μm以下である。
【0031】
なお、塗膜を形成する際に、ドライフィルムを用いてもよい。ドライフィルムは、支持フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルム)と、この支持フィルムに塗工された熱硬化性樹脂組成物層と、この熱硬化性樹脂組成物層を保護するカバーフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルムなどの熱可塑性樹脂フィルム)と、を有する積層構造となっている。そして、ドライフィルムのカバーフィルムを剥がしながら熱硬化性樹脂組成物層とフレキシブルプリント配線基板をはり合わせることで、フレキシブルプリント配線基板上に塗膜を形成できる。
【0032】
次に、塗膜を設けたフレキシブルプリント配線基板に熱処理(以下場合により、ポストキュアともいう)を行う。これにより、フレキシブルプリント配線基板上に絶縁被膜(ソルダーレジスト膜)を形成させることができる。
熱処理条件としては、感光性樹脂組成物の種類に応じて異なり、特に限定されない。例えば、熱処理炉としては、熱風循環式の乾燥機、および遠赤外線炉などを採用できる。また、熱風循環式の乾燥機を用いる場合、熱処理温度は、130℃以上170℃以下であることが好ましく、熱処理時間は、30分間以上120分間以下であることが好ましい。さらに、遠赤外線炉を用いる場合、熱処理温度は、200℃以上250℃以下であることが好ましく、熱処理時間は、3分間以上10分間以下であることが好ましい。
【実施例0033】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0034】
((A)成分)
マレイミド化合物:構造式(A1)で表されるマレイミド化合物、Mw4643、Mn2622、Mw/Mn1.77、商品名「SLK-1500」、信越化学工業社製
(他の成分)
カルボキシル基含有エポキシアクリレート:ウレタン変性カルボキシル基含有エポキシアクリレート、商品名「FLX-2089」、日本化薬社製
((B1)成分)
エポキシ化合物A:エポキシ化合物(エポキシ当量458g/eq)、Mw2627.Mn1460、Mw/Mn1.79、商品名「YL-9057」、三菱ケミカル社製
((B2)成分)
エポキシ化合物B:構造式(B2)で表されるエポキシ化合物、商品名「VG-3101L」、プリンテック社製
((C)成分)
無機フィラーA:シリカ、商品名「DM-20S」、トクヤマ社製
無機フィラーB:シリカ、商品名「シルバーボンド925」、ジベルコ社製
無機フィラーC:溶融シリカ、商品名「GT130MC」、デンカ社製
((D)成分)
硬化触媒:2-エチル-4-メチルイミダゾール、商品名「2E4MZ」、四国化成工業社製
(他の成分)
溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、商品名「EDGAC」、三洋化成品社製
着色剤:顔料分散液、商品名「8711 BLACK」、トクシキ社製
難燃剤:リン酸エステル、商品名「エクソリット OP-935」、クラリアントジャパン社製
【0035】
[実施例1]
マレイミド化合物100質量部、無機フィラーA10質量部、無機フィラーC120質量部、エポキシ化合物A33質量部、難燃剤20質量部、着色剤7質量部、硬化触媒20質量部、および溶剤75質量部を容器に投入し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールを用いて室温にて混合し分散させて熱硬化性樹脂組成物を得た。
そして、基板(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、フィルム厚:125μm)を、イソプロピルアルコールにより表面処理後、スクリーン印刷法にて、得られた熱硬化性樹脂組成物を、DRY膜厚が20~23μmとなるように塗布した。塗布後、BOX炉にて150℃で60分間のポストキュアを行い、基板上に硬化塗膜(ソルダーレジスト膜)を形成して、評価用基板を作製した。
【0036】
[実施例2~4]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物および評価用基板を得た。
[比較例1]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物および評価用基板を得た。
【0037】
<熱硬化性樹脂組成物の評価>
熱硬化性樹脂組成物の評価(誘電率、誘電正接、はんだ耐熱性、耐折性)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)誘電率、および(2)誘電正接
Keysight Technologeis社製のネットワークアナライザー「E5063A」を用い、熱硬化性樹脂組成物の硬化物(塗布膜厚:200μm、硬化条件:150℃1時間、厚み:30~150μm、長さ:50mm、幅:2mm)を試料として、測定温度25℃、周波数10GHzの条件にて測定を行い、周波数10GHzにおける比誘電率および誘電正接を測定した。
(3)はんだ耐熱性
はんだ耐熱性は、評価用基板の硬化塗膜を、JIS C-6481の試験方法に従って、評価した。すなわち、評価用基板の硬化塗膜を、260℃のはんだ槽に30秒間浸せき後、セロハンテープによるピーリング試験を1サイクルとし、これを1~3回繰り返した。その後、評価用基板の硬化塗膜の状態を目視により観察し、以下の基準に従って、はんだ耐熱性を評価した。
◎:3サイクル繰り返し後も硬化塗膜に変化が認められない。
○:3サイクル繰り返し後の硬化塗膜にほんの僅か変化が認められる。
△:2サイクル繰り返し後の硬化塗膜に変化が認められる。
×:1サイクル繰り返し後の硬化塗膜に剥離が認められる。
(4)耐折性
評価用基板を、ハゼ折りにより、180°折り曲げ(25mm幅で折り、その後500g荷重をかける)を繰り返して行い、その際のクラックの発生の有無を、目視および200倍の光学顕微鏡で観察した。
なお、折り曲げは10回行い、10回目の折り曲げの後でも、クラックが発生しなかった場合には、「10回OK」とした。また、n回目の折り曲げの後にクラックが発生した場合には、「n-1回OK」とした。
【0038】
【0039】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた場合(実施例1~4)には、誘電率、誘電正接、はんだ耐熱性、および耐折性の全ての結果が良好であることが確認された。そのため、本発明によれば、高周波における低誘電特性に優れる熱硬化性樹脂組成物が得られることが確認された。