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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144576
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】リニアガイド
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20231003BHJP
   F16C 29/08 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051626
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】森山 瞬
【テーマコード(参考)】
3J104
3J216
【Fターム(参考)】
3J104AA34
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104BA62
3J104BA63
3J104CA24
3J104DA05
3J216AA01
3J216AA16
3J216AB23
3J216BA01
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB04
3J216CB17
3J216CC02
3J216CC14
3J216CC33
3J216DA17
3J216EA07
(57)【要約】
【課題】サイドシールのリップ部の摩耗による潤滑剤保持機能の低下を防止し、シールリップの耐久性の向上を図る直動案内装置を提供できる。
【解決手段】本発明の直動案内装置は、一方向に延びる案内レール10と、案内レール10に複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダ20と、スライダ20の長手方向の両端に転動体の方向転換路を有するエンドキャップ22と、エンドキャップ22の当該長手方向の両端に固定されスライダ20と案内レール10との間をリップ部30aにより密封するサイドシール30とを備え、エンドキャップ22とサイドシール30の間の内少なくとも一方に内部空間領域30aを形成し潤滑剤Gを溜める潤滑剤溜り部ケース40が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる案内レールと、
前記案内レールに複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダと、
前記スライダの長手方向の両端に前記転動体の方向転換路を有するエンドキャップと、
前記エンドキャップの前記長手方向の両端に固定され、前記スライダと前記案内レールとの間をリップ部により密封するサイドシールと、を備える直動案内装置であって、
前記エンドキャップと前記サイドシールの間の内少なくとも一方に内部空間領域を形成し潤滑剤を溜める潤滑剤溜り部ケースを設けられていることを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
前記潤滑剤溜り部ケースは、案内レールとの間に潤滑剤の出入口となる所定の隙間を有していることを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記潤滑剤溜り部ケースの材料は、樹脂または金属であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の直動案内装置。
【請求項4】
一方向に延びる案内レールと、
前記案内レールに複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダと、
前記スライダの長手方向の両端に前記転動体の方向転換路を有するエンドキャップと
前記エンドキャップの前記長手方向の両端に固定され、前記スライダと前記案内レールとの間をリップ部により密封するサイドシールと、を備える直動案内装置であって、
前記スライダの長手方向の両端の内少なくても一方のサイドシールに潤滑剤を溜める内部空間領域を形成していることを特徴とする直動案内装置。
【請求項5】
前記潤滑剤はグリースであることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の直動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用機械等に用いられるリニアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用機械等に用いられるリニアガイドにおいて、外面に転動溝を有する案内レールと、その案内レールを跨いで組み付けられたスライダが備えられるとともに、そのスライダの両端面に転動体の方向転換路に向かう潤滑油路が形成されたエンドキャップおよびスライダの端部を防塵用に密封するサイドシールが備えられている。しかしながら、外部から供給される潤滑油だけでは、時間が経過すれば供給される潤滑剤が少なくなるとサイドシールのリップが摩耗するという問題があった。
【0003】
そこで、時間が経過しても潤滑剤Gが継続的に供給するために、特許文献1では、エンドキャップに嵌入された潤滑部材の端面に接して取り付けられ、かつ軌道レールに付着した潤滑剤をスライダの軌道レール上の相対移動時に回収して潤滑部材に回収した潤滑剤を供給する潤滑剤回収ユニットを備えることとし、その潤滑部には潤滑剤を含浸した多孔質成形体が形成される技術思想が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6034581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1は、油溜まり部で潤滑剤を回収し、回収した潤滑剤を転動体に塗布することで、潤滑剤Gの再利用を可能とするため、負荷域の油膜確保に有益な提案である。しかし、回収した潤滑剤を再利用するため、サイドシールのリップ部へ油が供給されにくい。このことから、従来よりもサイドシールのリップ部が摩耗されやすいことの課題がある。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するためになされてものであり、サイドシールのリップ部の摩耗による潤滑剤保持機能の低下を防止し、リップ部の耐久性の向上を図る直動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するために、一方向に延びる案内レールと、
前記案内レールに複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダと、
前記スライダの長手方向の両端に前記転動体の方向転換路を有するエンドキャップと、
前記エンドキャップの前記長手方向の両端に固定され、前記スライダと前記案内レールとの間をリップ部により密封するサイドシールと、を備える直動案内装置であって、
前記エンドキャップと前記サイドシールの間の内少なくとも一方に内部空間領域を形成し潤滑剤を溜める潤滑剤溜り部ケースを設けられていることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記潤滑剤溜り部ケースは、案内レールとの間に潤滑剤の出入口となる所定の隙間を有していることを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、前記潤滑剤溜り部ケースの材料は、樹脂または金属であることを特徴とする。
第4の発明は、上記の目的を達成するために、一方向に延びる案内レールと、
前記案内レールに複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダと、
前記スライダの長手方向の両端に前記転動体の方向転換路を有するエンドキャップと
前記エンドキャップの前記長手方向の両端に固定され、前記スライダと前記案内レールとの間をリップ部により密封するサイドシールと、を備える直動案内装置であって、
前記スライダの長手方向の両端の内少なくても一方のサイドシールに潤滑剤を溜める内部空間領域を形成していることを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかにおいて、前記潤滑剤はグリースであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サイドシールのリップ部の摩耗による潤滑剤保持機能の低下を防止し、リップ部の耐久性の向上を図る直動案内装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の直動案内装置の側面図である。
図2】実施形態1の直動案内装置の正面図である。
図3】実施形態1の直動案内装置の稼働前の状態を示す断面図である。
図4】実施形態1の直動案内装置の稼働中の状態を示す断面図である。
図5】実施形態2の直動案内装置の側面図である。
図6】実施形態2の直動案内装置の正面図である。
図7】実施形態2の直動案内装置の稼働前の状態を示す断面図である。
図8】実施形態2の直動案内装置の稼働中の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態1]
以下、本発明の実施形態1について、図1から図4を用いて説明する。図1は、直動案内装置1の長手方向からみた側面図で、図2は、直動案内装置1の長手方向端部からみた正面図である。本発明のニアガイド1は、一方向に延びる案内レール10と、当該案内レール10に図示しない複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダ20と、スライダ20の長手方向の両端に転動体の方向転換路を有するエンドキャップ22と、エンドキャップ22の当該長手方向の両端に固定され、スライダ20と案内レール10(上面および両側面)との間をリップ部30aにより密封するサイドシール30とを備え、エンドキャップ22とサイドシール30の間の内少なくとも一方にスライダ20の長手方向に断面視略矩形状の内部空間領域40aを形成し潤滑剤Gを溜める潤滑剤溜り部ケース40を設けている。以下、詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、一方向に延びる案内レール10と、この案内レール10に複数の転動体(図示せず)を介してスライド移動可能に跨設されるスライダ20を備え、スライダ20は、スライダ本体21と、その長手方向両端の前後面に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ22とで構成されている。
【0012】
スライダ本体21は、図2に示すように、案内レール10の長手方向に沿って、案内レール10の移動方向の両端の開口部が略コ字状に形成され、案内レール10上に跨架されている。また、スライダ20には、長手方向に沿った左右両側に袖部(両側面)を有し、その内側面には、スライダ側軌道面(図示せず)が案内レール1の転動体転動面(図示せず)に相対向して長手方向に沿って形成されている。
【0013】
そして、案内レール10の転動体転動面とスライダ20の転動体転動溝との間に転動体(図示せず)が転動自在に装填される。これらの転動体の転動を介してスライダ20が案内レール10上を長手方向に沿って相対移動される。なお、転動体は玉またはころである。
【0014】
エンドキャップ22は、スライダ本体21と同じく開口部が略コ字状に形成され、スライダ本体21と同様に案内レール10へ上面から跨架される。また、スライダ本体21の長手方向の両端に固定するためのねじ穴とねじからなる固定手段を通してスライダ本体21に固定される。そして、スライダ本体21の内形状に沿って案内レール10が移動可能とする溝(図示しない)が相対向して形成されている。
【0015】
エンドキャップ22には、案内レール10のスライドおよび転動体の潤滑を保つために外部からサイドシール30を介して潤滑剤Gが供給される油路(図示しない)が設けられている。
【0016】
また、スライダ20の移動方向の最先端にサイドシール30が配置され、ボルトの固定手段により固定されている。なお、本実施形態では、サイドシール30最先端に位置するとして説明するが、図示しないプロテクター、サイドシール30の順に配置され、ボルトの固定手段により固定されても良い。
なお、サイドシール30は、スライダ20の長手方向の両端の少なくても一方にサイドシール30を設けても良いため、スライダ20の移動方向の最先端部を図示して説明しているが、最後端部にも設けた両端としてもよい。これにより、スライダ20の移動方向の両端からの少異物侵入を防ぐことができる直動案内装置1が提供できる。
【0017】
サイドシール30は、図1および図2に示すように、スライダ20と案内レール10の面10aおよび両側面との間をリップ部30aによりスライダ20内に異物の侵入を阻止や潤滑剤を密封する目的で、スライダ本体21の長手方向のエンドキャップ22の両端に接して固定され、スライダ本体21及びエンドキャップ22と同様に案内レール10に上面から跨架される。また、サイドシール30は、エンドキャップ22の正面形状とほぼ同じ略コの字状の正面形状を有し、サイドシール30およびエンドキャップ22に潤滑剤Gが供給される給油穴(グリースニップル用の取り付け穴)32aが形成されている。この給油穴32aからエンドキャップ22の油路に潤滑剤Gが導入されて、直動案内装置の潤滑が行われる。本実施形態において、潤滑剤はグリースを用いているが、これに限定されず潤滑油でも良い。
【0018】
また、本実施形態においては、図3および図4に、案内レール面10aと当接摺動するサイドシール30には、丸みを帯びた山形状のリップ部30aで示され、案内レール面10aに押し付けら弾性変形されることで、異物の滞留や潤滑剤漏れが防止される。このリップ部30aは、例えば、逆Y字状(二股)に形成され、案内レール面10aに向かって2つに分かれて延びている(図示しない)リップ部であっても本発明の実施範囲内である。
このような逆Y字状(二股)のリップ部は、外部側に向いたリップ(ダストシールリップ)と、エンドキャップ側に向いたリップ(オイルシールリップ)の2つのリップ部が案内レール面10aに押し付けら弾性変形されることで異物の滞留や潤滑剤漏れが防止される。
【0019】
潤滑剤溜り部ケース40は、エンドキャップ22とサイドシール30の間に設けられて固定ねじで貫通して固定され、スライダ本体21と同じく開口部が略コ字状に形成され、スライダ本体21と同様に案内レール10へ上面から跨架される。
【0020】
その潤滑剤溜り部ケース40は、図3に示すように、スライダ20の長手方向で断面視、縦長で下方(底面)が開口した略コの字形状の内部空間領域40aを形成している。また、内部空間領域40aを形成する略コの字形状のサイドシール30側の側面は無く、サイドシール30の側面30bを用いている。すなわち、内部空間領域40aを形成する略コの字形状のうち、サイドシール30側の上面40bとエンドキャップ22側の側面40cとは、所定の厚みを持って逆L字状に形成されている。
【0021】
このように、スライダ20が案内レール10上の移動時に案内レール10に付着した潤滑剤Gを回収する機能を備えて、内部空間領域40aに順次回収される潤滑剤Gは、リップ部30aを含むサイドシール30の側面30bを絶えず接触しながら伝って入ることにより、リップ部30aの摩耗を防ぎサイドシール30を長持ちさせる効果を奏する。
【0022】
また、潤滑剤溜り部ケース40は,案内レール10との間に潤滑剤Gの出入口となる僅かな所定の隙間dを有している。つまり、内部空間領域40aの下方(底面)は開口され、潤滑剤Gの出入口となっている。そのため、潤滑剤溜り部ケース40潤滑剤溜り部ケース40の側面40cの案内レール10に向かう先端部と案内レール面10aとの間に、所定の隙間dを有している。この所定の隙間dは、エンドキャップ22側の底面22cと案内レール10の面10aとの間にも所定の隙間eとほぼ同じ大きさである。図3で分かるように、エンドキャップ22側の側面22bと潤滑剤溜り部ケース40の側面40cを略同じ高さ(長さ)としている。
なお、所定の隙間dの大きさについて、エンドキャップ22の底面22cと案内レール面10aとの間にも所定の隙間eとほぼ同じ大きさとしているが、これに限定されることなく潤滑剤Gの両や直動案内装置1の形態によって決められる。
【0023】
このように、案内レール面10aとの間に所定の僅かな隙間dが設けられ、スライダ20の移動にともないエンドキャップ22および案内レール10との間を通ってくる潤滑剤Gが潤滑剤溜り部ケース40内の内部空間領域40aに順次回収される。回収された潤滑剤Gは,再び案内レール面10aで再利用され供給される潤滑剤Gの量を削減できる。
【0024】
さらに、図4に示すように、回収された潤滑剤Gが潤滑剤溜り部ケース40の内部空間領域40に、充分な容量を持って溜められるように、潤滑剤溜り部ケース40のスライダ長手方向の上面40b幅がサイドシール30の幅よりも厚く形成されている。また、内部空間領域40aを形成する略コの字形状のうち、サイドシール30側の上面40bとエンドキャップ22側の側面40cとで形成されている逆L字状の所定の幅(厚み)は、できるだけ薄くして形成されている。
なお、本実施形態で潤滑剤溜り部ケース40の上面40b幅がサイドシール30の幅よりも厚く形成されていると説明しているが、これに限定されることはなく、潤滑剤Gが溜められる内部空間領域40の形成に係る長さや幅は、潤滑剤Gの供給量や直動案内装置1の規模によっても決められる。
また、図4において、エンドキャップ22側の底面22cと案内レール面10aとの間にも所定の隙間eには潤滑剤Gがほぼ空になるように回収され、内部空間領域40の殆どの領域に潤滑剤Gが溜められていることが分かる。
【0025】
また、潤滑剤溜り部ケース40の材料は、エンドキャップ22とサイドシール30の間に配置されることにより、両方から押されても変形しない強度の樹脂または金属である。
【0026】
次に、本実施形態による潤滑剤溜り部ケース40に潤滑剤Gが溜められる過程について説明する。先ず潤滑剤Gの供給は、サイドシール30に潤滑剤Gが供給される給油穴32aからエンドキャップ22の油路に潤滑剤Gが導入されて、直動案内装置1の潤滑が行われる。なお、図2に示されている給油穴32aの貫通孔は、図3および図4では図示されていない。
【0027】
図3は、潤滑剤溜り部ケース40の内部空間領域40aに潤滑剤Gが溜められていない空の状態を示していて、矢印Aの方向にスライダ20を移動すると、案内レール10とスライダ本体21の隙間bに余分な潤滑剤Gがエンドキャップ22と案内レール10の間から排出される。
この排出された潤滑剤Gは、エンドキャップ22と案内レール10の空間eを通って、さらに内部空間領域40aの開口近傍の隙間dを通り潤滑剤溜り部ケース40内に供給され溜められる(図4参照)。
【0028】
このように、案内レール面10aをスライダ20が移動することにより回収された潤滑剤は、サイドシール30のリップ部30aと絶えず接触するためリップ部30aの摩耗による潤滑剤保持機能の低下を防止し、リップ部30aの耐久性の向上を図ることができる。
【0029】
[実施形態2]
本発明のスライダの長手方向の両端の内少なくても一方のサイドシールに潤滑剤を溜める内部空間領域が形成された潤滑剤溜り部付きサイドシールである実施形態2について図5乃至図8を用いて説明する。図7は、潤滑剤溜り部付きサイドシールを含む直動装置1の他の実施形態2を示す断面図である。本実施形態2において、実施形態1と異なるのは、図5に示すように、潤滑剤溜り部ケース40をエンドキャップ22とサイドシール31の間に別部材として設けないで、図7に示すようにサイドシール31を加工して潤滑剤を溜める内部空間領域31aを形成していることである。図6の正面図と図2の正面図とは特に形態が変わっていないことを示している。
【0030】
実施形態1では潤滑剤溜り部ケース40を別部品で構成していた分だけ長手方向にスペースを必要とされるが、本実施形態2では、サイドシール31に潤滑剤溜り用の内部空間領域31aを形成されることにより、そのようなスペースを設けることを不要としている。これにより部品点数も少なくても実施形態1と同じ作用効果を得ることができる。
なお、図7および図8に付されている符号において、図3および図4と共通する符号はそのまま付しているが、ここでの詳細な説明は実施形態1の記載内容と重複するので略している。
【0031】
本実施形態2の潤滑剤溜り部付きのサイドシール(以下、単にサイドシールという。)31においても、スライダ本体21と同じく開口部が略コ字状に形成され、スライダ本体21と同様に案内レール10へ上面から跨架される。
【0032】
このようなサイドシール31には、図7に示すように、サイドシール31の内部にスライダ20の長手方向に断面視縦長で内部空間領域31aに潤滑剤を溜める潤滑剤溜り部が形成されている。具体的には、この内部空間領域31aは、エンドキャップ22の側面22bと、サイドシール31の側面から奥行Qだけ凹んだ面31bと、側面22bと当接する内部空間領域31aのサイドシール31の上面とリップ部31cの上方近傍とで形成される略矩形状である。
また、リップ部31cの上方近傍から内部空間領域31aを形成しているのは、リップ部31cの機能を損なうことがないようにリップ形状(本実施形態での説明では案内レール面10a方向に突出する山形形状)を残すためである。
なお、内部空間領域31aは略矩形状に限定されることなく他の形状であって、本発明の実施範囲内である。
【0033】
この奥行Qは、サイドシール31の長手方向幅のほぼ半分とし、エンドキャップ22と案内レール10との隙間eとほぼ同じ高さで連通路を形成している。このような潤滑剤溜り部付きのサイドシール31は、サイドシール31内に内部空間領域31aを形成することから実施形態1の内部空間領域30aよりも潤滑剤Gが蓄えられる容量が少なくなる。したがって、潤滑剤Gは、内部空間領域31aに溜められるとともにエンドキャップ22と案内レール10との隙間eにも残る(図8参照)。
なお、奥行Qをサイドシール31の長手方向幅のほぼ半分としているのは、サイドシール31の強度を保持するためであるが、これに限定されることなく、サイドシール31の素材や直動案内装置1の規模によって決められる。
【0034】
また、サイドシール31は、図7に示すように、リップ部31cの上方近傍とエンドキャップ22の側面22b下端との間に潤滑剤Gの出入口となる所定の隙間Sを有している。このように、所定の隙間Sが設けられることにより、エンドキャップ22および案内レール10との隙間eを通ってくる潤滑剤Gが内部空間領域31aに回収される。
【0035】
次に、本実施形態による潤滑剤Gの供給過程について説明する。潤滑剤Gの供給は、サイドシール31に潤滑剤Gが供給される給油穴32aからエンドキャップ22の油路に潤滑剤Gが導入されて、直動案内装置1への潤滑が行われる。
図7は、潤滑剤溜り部付きのサイドシール31の内部空間領域31aに潤滑剤Gが供給されず溜められていない空の状態で、スライダ20と案内レール面10aとの隙間bには潤滑剤Gがまだある状態を示している。
そして、矢印Aの方向にスライダ20を移動すると隙間bにある余分な潤滑剤Gがエンドキャップ22と案内レール10の隙間eへと排出される。この排出された潤滑剤Gが当該隙間eを通り、さらに内部空間領域31aの開口近傍の潤滑剤Gの出入口となる所定の隙間Sを通りサイドシール31に形成されている内部空間領域31aに供給(回収)される。
【0036】
回収された潤滑剤は、サイドシール31のリップ部31cと接触するため、サイドシール31と案内レール10の接触面に潤滑剤Gが供給される。このように、案内レール面10aを摺動する際の接触面に流れ込むことで、サイドシール31のリップ部31cの摩耗による潤滑剤保持機能の低下を防止し、リップ部31cの耐久性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 直動案内装置
10 案内レール
10a 案内レール面
20 スライダ
21 スライダ本体
22 エンドキャップ
30 サイドシール
30a リップ部
31 滑剤溜り部付きサイドシール
31a 内部空間領域
31c リップ部
32a 給油穴
40 潤滑剤溜り部ケース
40a 内部空間領域
G 潤滑剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8