特開 2023-144591 射出成形方法及び射出成形機

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023144591

(43)【公開日】2023-10-11

(54)【発明の名称】射出成形方法及び射出成形機

(51)【国際特許分類】

   B29C 45/22 20060101AFI20231003BHJP

   B29C 45/26 20060101ALI20231003BHJP

【ＦＩ】

B29C45/22

B29C45/26

【審査請求】未請求

【請求項の数】2

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022051647

(22)【出願日】2022-03-28

(71)【出願人】

【識別番号】000002967

【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100107423

【弁理士】

【氏名又は名称】城村 邦彦

(74)【代理人】

【識別番号】100120949

【弁理士】

【氏名又は名称】熊野 剛

(74)【代理人】

【識別番号】100155457

【弁理士】

【氏名又は名称】野口 祐輔

(72)【発明者】

【氏名】東 拓郎

(72)【発明者】

【氏名】讃岐 年晃

【テーマコード（参考）】

4F202

4F206

【Ｆターム（参考）】

4F202AF10

4F202AH17

4F202AH25

4F202CA11

4F202CB01

4F202CR10

4F202CS02

4F206AF10

4F206AH17

4F206AH25

4F206JA07

4F206JB28

4F206JF01

4F206JL04

4F206JM03

4F206JN12

4F206JQ54

4F206JQ55

4F206JQ81

(57)【要約】

【課題】複数のスクリュ（射出ユニット）を有する射出成型機を用いた射出成形の生産性を高める。
【解決手段】第１スクリュ３１からキャビティ４３に樹脂を射出して樹脂成形品（バンパ）を成形している間に、第２スクリュ３２から射出した樹脂を、キャビティ４３外に設けた回収箱５２に排出する。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

第１射出ユニット及び第２射出ユニットと、キャビティを形成するための金型とを備えた射出成型機による射出成形方法において、
第１射出ユニットから前記キャビティに樹脂を射出して樹脂成形品を成形している間に、第２射出ユニットから射出した樹脂を、前記キャビティ外に設けた回収部に排出する射出成形方法。

【請求項2】

第１射出ユニット及び第２射出ユニットと、キャビティを形成するための金型とを備えた射出成型機であって、
前記金型が、前記第２射出ユニットから射出された樹脂を回収する樹脂回収機構を有し、
前記樹脂回収機構は、前記第２射出ユニットのノズルが当接するノズル受け部と、前記キャビティ外に設けられた回収部と、前記ノズル受け部と前記回収部とを連通する樹脂排出路とを有する射出成形機。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、射出成形方法及び射出成形機に関する。

【背景技術】

【0002】

例えば下記の特許文献１には、複数のスクリュを有する射出成型機が示されている。この射出成形機では、各スクリュから異なる色の樹脂をキャビティに供給することで、成形品に複数の色付けを行う多色成形を実施している。

【0003】

また、スクリュ内の樹脂の色を替えることにより、同じ射出成型機で異なるカラーバリエーションの成形品を生産することができる（例えば、下記の特許文献２の図４参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特開２０１１－７３１７８号公報

【特許文献2】特開２００３－３００２２４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

スクリュ内の樹脂の色を切り替える際には、スクリュ内に残った前色樹脂を完全に排出し、後色樹脂のみが射出される状態にする必要がある。しかし、このような樹脂の色替え作業は、生産を停止して行う必要があるため、生産性が低下する。特に、濃色樹脂から淡色樹脂に切り替える場合、色が完全に切り替わるまでに時間がかかるため、生産性が大幅に低下する。

【0006】

また、複数のスクリュを有する射出成型機で射出成形を行う際には、製品の大きさ等によっては、全てのスクリュを用いるのではなく、一部のスクリュのみを用いて射出成形を行うことがある。この場合、使用しないスクリュの内部には樹脂が滞留した状態となるため、この樹脂の一部（特に、ノズル付近の樹脂）が劣化してしまう。その後、このスクリュの使用を再開すると、再開した直後は劣化した樹脂が射出される。そのため、スクリュの使用を再開する場合は、劣化した樹脂を排出してから、製品の射出成形を行う必要がある。このように劣化した樹脂を排出する間、生産を停止する必要があるため、生産性が低下する。

【0007】

そこで、本発明は、複数のスクリュ（射出ユニット）を有する射出成型機を用いた射出成形の生産性を高めることを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

前記課題を解決するために、本発明は、第１射出ユニット及び第２射出ユニットと、キャビティを形成するための金型とを備えた射出成型機による射出成形方法において、
第１射出ユニットから前記キャビティに樹脂を射出して樹脂成形品を成形している間に、第２射出ユニットから射出した樹脂を、前記キャビティ外に設けた回収部に排出することを特徴とする。

【0009】

このように、本発明では、第１射出ユニットのみを用いて成形している間の時間を利用して、第２射出ユニットから射出した樹脂を回収部に排出するようにした。このときに、第２射出ユニットの色替えを行うことで、生産を停止することなく色替えを行うことができる。あるいは、色替えを行わない場合でも、第２射出ユニットから樹脂を回収部に排出することで、第２射出ユニット内の樹脂の劣化を防止できるため、その後、第２射出ユニットによる射出成形をすぐに再開することができる。

【0010】

上記の射出成形方法は、第１射出ユニット及び第２射出ユニットと、キャビティを形成するための金型とを備えた射出成型機であって、前記金型が、前記第２射出ユニットから射出された樹脂を回収する樹脂回収機構を有し、前記樹脂回収機構は、前記第２射出ユニットのノズルが当接するノズル受け部と、前記キャビティ外に設けられた回収部と、前記ノズル受け部と前記回収部とを連通する樹脂排出路とを有する射出成形機を用いて実現することができる。

【発明の効果】

【0011】

以上のように、本発明によれば、複数の射出ユニットを有する射出成型機を用いた射出成形の生産性を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】色が異なる複数種の製品を順に射出成形する手順を示す図である。

【図2】本発明の一実施形態に係る射出成型機の一部断面平面図である。

【図3】色替えを行う金型を取り付けた上記射出成型機の一部断面平面図である。

【図4】上記射出成型機の金型に設けられた樹脂回収機構の図３のＭ－Ｍ線における断面図である。

【図5】色が同じ複数種の製品を順に射出成形する手順を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。

【0014】

本実施形態では、図１に示すように、インストルメントパネルＸ、バンパ、及びインストルメントパネルＹを順に所定個数ずつ樹脂で射出成形する場合を示す。インストルメントパネルＸは、色Ａの樹脂、色Ｂの樹脂、及び色Ｃの樹脂で多色成形により形成される。バンパは、色Ａの樹脂のみで成形され、その間に、成形に使用しないスクリュ（第２スクリュ及び第３スクリュ）の樹脂の色替えが行われる。インストルメントパネルＹは、色Ａの樹脂、色Ｄの樹脂、及び色Ｅの樹脂で多色成形により形成される。

【0015】

インストルメントパネルＸは、図２に示す射出成型機を用いて成形される。この射出成型機は、金型１０と、駆動装置２０と、第１射出ユニットとしての第１スクリュ３１、第２射出ユニットとしての第２スクリュ３２、及び第３射出ユニットとしての第３スクリュ３３とを有する。

【0016】

駆動装置２０は、固定プラテン２１と、可動プラテン２２と、駆動部としてシリンダ２３（油圧シリンダあるいは電動シリンダ）とを有する。

【0017】

金型１０は、固定型１１と可動型１２とを有する。固定型１１は固定プラテン２１に固定され、可動型１２は可動プラテン２２に固定される。シリンダ２３を駆動することで、可動プラテン２２及び可動型１２が水平方向（図１の上下方向）で一体にスライドし、これにより固定型１１及び可動型１２の型締め及び型開きが行われる。固定型１１及び可動型１２を型締めすることで、インストルメントパネルＸを成形するためのキャビティ１３が形成される。固定型１１には、第１スクリュ３１、第２スクリュ３２、及び第３スクリュ３３のノズルが当接するノズル受け部１４と、ノズル受け部１４とキャビティ１３とを連通するランナ１５とが設けられる。

【0018】

固定型１１及び可動型１２を型締めした後、各スクリュ３１～３３の先端に設けられたノズルを固定型１１のノズル受け部１４に押し付けた状態で、各スクリュ３１～３３のノズルから各色の樹脂を押し出すことで、各色樹脂がそれぞれキャビティ１３に射出される。本実施形態では、第１スクリュ３１から色Ａの樹脂が射出され、第２スクリュ３２から色Ｂの樹脂が射出され、第３スクリュ３３から色Ｃの樹脂が射出される（図１参照）。これにより、色Ａの部位、色Ｂの部位、色Ｃの部位を有するインストルメントパネルＸが多色成形により形成される。尚、多色成形の具体的な方法は、上記特許文献１に示されたコアバック式等、公知の手法を採用することができる。

【0019】

インストルメントパネルＸを所定個数成形した後、金型１０を、バンパを成形するための金型４０に交換する。この金型４０は、図３に示すように、固定型４１と、可動型４２とを有する。固定型４１は固定プラテン２１に固定され、可動型４２は可動プラテン２２に固定される。固定型４１と可動型４２とで、バンパを成形するためのキャビティ４３が形成される。固定型４１には、第１スクリュ３１のノズルが当接するノズル受け部４４と、ノズル受け部４４とキャビティ４３とを連通するランナ４５とが設けられる。

【0020】

金型４０には、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３から射出した樹脂を回収するための樹脂回収機構５０が設けられる。図示例では、スクリュ３２，３３ごとに、樹脂回収機構５０が設けられる。各樹脂回収機構５０は、図４に示すように、第２スクリュ３２あるいは第３スクリュ３３のノズルが当接するノズル受け部５１と、樹脂を貯留する回収部としての回収箱５２と、ノズル受け部５１と回収箱５２とを連通する樹脂排出路５３とを有する。樹脂排出路５３には、樹脂を冷却する冷却手段としてエア供給口５４が設けられる。

【0021】

ノズル受け部５１は、金型１０に設けられたノズル受け部１４と同じ場所に設けられる。回収箱５２は、金型４０に着脱可能に設けられる。図示例では、回収箱５２が、固定型１１に対して、水平方向（図３の矢印Ｐ方向）にスライド可能な状態で取り付けられる。

【0022】

固定型４１及び可動型４２を型締めした後、第１スクリュ３１のノズルを固定型１１のノズル受け部１４に押し付けた状態で、第１スクリュ３１のノズルから色Ａの樹脂を押し出す。これにより、キャビティ４３に色Ａの樹脂が射出され、バンパが成形される。

【0023】

こうして第１スクリュ３１から射出した樹脂でバンパを成形している間に、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３内の樹脂の色替えを行う。本実施形態では、第２スクリュ３２内の樹脂を色Ｂから色Ｄに切り替えると共に、第３スクリュ３３内の樹脂を色Ｃから色Ｅに切り替える（図１参照）。具体的には、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３内に後色（色Ｄ，Ｅ）の樹脂を供給した後、図４に示すように、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３のノズルを樹脂回収機構５０のノズル受け部５１に押し付けた状態で、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３のノズルから樹脂を押し出す。これにより、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３から前色（色Ｂ，Ｃ）と後色（色Ｄ，Ｅ）とが混じった混色樹脂が押し出され、樹脂排出路５３を介して回収箱５２に回収される。そして、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３から射出される樹脂が完全に後色（色Ｄ，Ｅ）になるまで、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３によるショットを繰り返し、混色樹脂を回収箱５２に排出する。

【0024】

このとき、第１スクリュ３１でバンパを成形する度に、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３から樹脂を射出することが好ましい。尚、制御に問題がなければ、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３から、上記と異なるタイミングで樹脂を射出してもよく、例えば、バンパを複数個成形する度に樹脂を射出してもよい。あるいは、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３から連続的に樹脂を射出し続けてもよい。

【0025】

第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３の１ショット当たりに樹脂の排出量は、この工程内（すなわち、所定個数のバンパを成形する間）に色替えが完了するように設定される。ただし、早期に色替えが完了すると、その後に射出される後色（色Ｄ，Ｅ）の樹脂が無駄になる。そのため、材料コスト低減の観点から、この工程の終期に、理想的には最後のバンパの成形時に、後色の樹脂に完全に切り替わるようにすることが好ましい。

【0026】

第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３から射出された直後の樹脂は非常に高温である。本実施形態では、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３から射出された樹脂が樹脂排出路５３を通る際に、この樹脂にエア供給口５４からエアを吹き付けて冷却する。これにより、樹脂がある程度冷却された状態で回収箱５２に回収される。尚、樹脂を積極的に冷却する必要がない場合、例えば、エアを吹き付けなくても樹脂が十分に冷却される場合や、回収箱５２の樹脂の廃棄を装置が自動で行う場合には、エア供給口５４を省略してもよい。

【0027】

バンパを所定個数成形した後、金型４０を、インストルメントパネルＹを成形するための金型に交換する。この金型は、製品の形状を除いて図２に示すインストルメントパネルＸを成形するための金型１０と同様であるため、図１の符号を援用して説明する。

【0028】

固定型１１及び可動型１２を型締めした後、各スクリュ３１～３３の先端に設けられたノズルを固定型１１のノズル受け部１４に押し付けた状態で、各スクリュ３１～３３のノズルから各色の樹脂を押し出すことで、各色樹脂がそれぞれキャビティ１３に射出される。本実施形態では、第１スクリュ３１から色Ａの樹脂が射出され、第２スクリュ３２から色Ｄの樹脂が射出され、第３スクリュ３３から色Ｅの樹脂が射出される（図１参照）。これにより、色Ａの部位、色Ｄの部位、色Ｅの部位を有するインストルメントパネルＹが成形される。

【0029】

本実施形態では、バンパを成形している間に、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３内の樹脂の色替えを完了させているため、金型４０を金型１０に取り換えた後、すぐにインストルメントパネルＹの成形を開始することができる。これにより、色替えのために生産を停止する必要がないため、生産性が高められる。

【0030】

本実施形態では、金型４０に樹脂回収機構５０を一体的に設けているため、射出成形機の金型４０を次の製品（インストルメントパネルＹ）の金型１０に入れ替えることにより、金型４０と共に、回収箱５２に回収された樹脂を射出成型機から分離することができる。その後、金型４０から回収箱５２を図３の矢印Ｐ方向に引き出して、回収箱５２に回収された樹脂を処分（廃棄あるいは再利用）する。この場合、回収箱５２の樹脂を処分するために、作業者が射出成型機内に立ち入る必要がないため、作業効率及び安全性が高められる。特に、本実施形態では、回収箱５２に回収された樹脂が、樹脂排出路５３を通るときにエア供給口５４から吹き付けられたエアで冷却されているため、作業者の安全性や作業効率がさらに高められる。また、射出成型機から取り外した金型１０に回収箱５２を設けることで、射出成形機の金型１０で次の製品（インストルメントパネルＹ）の成形を行っている間に、回収箱５２に回収された樹脂の処分を行うことができるため、回収箱５２の樹脂を処分するために生産を停止する必要がない。

【0031】

本発明は、上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については重複説明を省略する。

【0032】

例えば、本発明は、上記のように樹脂の色替えを行う場合に限らず、スクリュ内の樹脂の材質（例えば、ベース樹脂及び充填剤の種類や配合比）を切り替える場合にも適用することができる。

【0033】

また、上記の射出成型方法は、樹脂の色や材質を切り替えない場合でも有効である。具体的に、図５に示すように、インストルメントパネルＹが、インストルメントパネルＸと全く同じ樹脂で形成される場合、第１スクリュ３１で色Ａのバンパを成形する際に、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３から色Ｂ及び色Ｃの樹脂を回収箱５２に排出してもよい。これにより、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３内の樹脂の劣化を防止できるため、インストルメントパネルＹを成形する際に、金型取り換え後の成形再開直後から、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３から良好な樹脂を射出することができる。この場合、劣化した樹脂を排出するために生産を停止する必要が無いため、生産性が高められる。

【0034】

また、以上の実施形態では、第１スクリュ３１でバンパを成形している間に、第２スクリュ３２及び第３スクリュ３３の色替えあるいは材料切換を行う場合を示したが、これに限らず、これらの一方のみの色替えを行ってもよい。例えば、第１スクリュ３１でバンパを成形している間に、第２スクリュ３２のみの樹脂の色替えあるいは材料切換を行ってもよい。この場合、第３スクリュ３３は停止してもよいし、あるいは、劣化防止のために樹脂を射出してもよい。

【0035】

また、射出成型機に設けられるスクリュの数は３本に限らず、２本、あるいは４本以上であってもよい。

【0036】

本発明の射出成形方法を適用可能な製品は上記に限らず、複数のスクリュの一部（第２射出ユニット）を使用せずに他のスクリュ（第１射出ユニット）で成形する製品と、複数のスクリュ（第１射出ユニット及び第２射出ユニット）を用いて成形する製品とを順に成形する場合に、本発明の射出成形方法を適用することができる。

【符号の説明】

【0037】

１０，４０ 金型
１１，４１ 固定型
１２，４２ 可動型
１３，４３ キャビティ
１４，４４ ノズル受け部
１５，４５ ランナ
２０ 駆動装置
２１ 固定プラテン
２２ 可動プラテン
２３ シリンダ
３１ 第１スクリュ（第１射出ユニット）
３２ 第２スクリュ（第２射出ユニット）
３３ 第３スクリュ（第３射出ユニット）
５０ 樹脂回収機構
５１ ノズル受け部
５２ 回収箱（回収部）
５３ 樹脂排出路
５４ エア供給口

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】