(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144610
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】リード制御装置
(51)【国際特許分類】
A01K 27/00 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
A01K27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051677
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】風越 真一
(72)【発明者】
【氏名】唯岡 丈人
(72)【発明者】
【氏名】轡 明子
(72)【発明者】
【氏名】大川 英範
(72)【発明者】
【氏名】森川 里佳
(57)【要約】
【課題】ユーザと動物との間の距離に応じて、リード部材の弛みを適切に調整する。
【解決手段】ユーザUとペットPとをつなぐリード部材5の弛みを調整するリード調整部7を制御するリード制御装置10であって、リード部材5の状態に関する物理量の情報である物理量情報を取得する物理量情報取得部12と、ユーザUとペットPとの間の距離の情報である距離情報を取得する距離情報取得部13と、リード調整部7を制御するリード制御部16と、を備え、リード制御部16は、物理量情報と距離情報とに基づいて、リード部材5の弛みを所定の弛みに維持するリード維持制御を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザと動物とをつなぐリード部材の弛みを調整するリード調整部を制御するリード制御装置であって、
前記リード部材の状態に関する物理量の情報である物理量情報を取得する物理量情報取得部と、
前記ユーザと前記動物との間の距離の情報である距離情報を取得する距離情報取得部と、
前記リード調整部を制御するリード制御部と、を備え、
前記リード制御部は、前記物理量情報と前記距離情報とに基づいて、前記リード部材の弛みを所定の弛みに維持するリード維持制御を実行するリード制御装置。
【請求項2】
前記距離情報取得部は、
前記リード部材の前記ユーザ側または前記動物側の一方側に設けられるマイクと、
前記リード部材の前記ユーザ側または前記動物側の他方側に設けられるスピーカと、を有し、
前記スピーカから前記マイクへの音の伝搬時間に基づいて、前記ユーザと前記動物との間の距離を算出する請求項1に記載のリード制御装置。
【請求項3】
ユーザによる前記リード制御装置の利用状態に関する情報である利用情報を取得する利用情報取得部を、さらに備え、
前記リード制御部は、取得した前記利用情報に応じて設定される前記リード部材の物理量となるように前記リード維持制御を実行する請求項1または2に記載のリード制御装置。
【請求項4】
前記物理量情報取得部は、前記物理量として、前記リード調整部から送り出された前記リード部材の単位時間当たりの引出長さを取得し、
前記リード制御部は、単位時間当たりの前記引出長さの変化と、前記距離の変化に基づいて、通常の送り出しの制御とは異なる第二の送り出しの制御により前記リード部材を前記リード調整部から送り出すリード送り制御を実行する請求項1から3のいずれか1項に記載のリード制御装置。
【請求項5】
前記リード調整部からの前記リード部材の送り出しを停止するために操作される停止操作部を、さらに備え、
前記リード制御部は、前記停止操作部の操作を検出すると、前記リード部材の長さを固定するリード固定制御を実行し、前記リード固定制御の実行後、所定の時間経過後においても、前記停止操作部の操作が検出される場合、前記リード調整部により前記リード部材を引き戻すリード引戻し制御を実行する請求項1から4のいずれか1項に記載のリード制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リード制御装置として、ペットの状況や周囲状況をもとに、ロボットとペットとをつなぐリードの張力及び長さを調整するリード調整手段を備えたペット誘導ロボットが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飼い主となるユーザがリード部材を用いてペット等の動物を誘導する場合、リード部材が弛(たる)み過ぎないように調整する必要がある。引用文献1では、リード部材の張力及び長さを調整するものの、ユーザと動物との距離を認識できないことから、ユーザと動物との距離に対応する適切なリード部材の弛みを調整することが困難である。このため、例えば、動物との距離に対してリード部材が長すぎることによって、リード部材にユーザや動物の脚が絡まったり、走り出した動物を制止できなかったり、リード部材に物が引っ掛かることにより動物に対してリード部材を強く急激に引いてしまったりする。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ユーザと動物との間の距離に応じて、リード部材の弛みを適切に調整することができるリード制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリード制御装置は、ユーザと動物とをつなぐリード部材の弛みを調整するリード調整部を制御するリード制御装置であって、前記リード部材の状態に関する物理量の情報である物理量情報を取得する物理量情報取得部と、前記ユーザと前記動物との間の距離の情報である距離情報を取得する距離情報取得部と、前記リード調整部を制御するリード制御部と、を備え、前記リード制御部は、前記物理量情報と前記距離情報とに基づいて、前記リード部材の弛みを所定の弛みに維持するリード維持制御を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザと動物との間の距離に応じて、リード部材の弛みを適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態のリード制御装置を備えるリード装置を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のリード制御装置を備えるリード装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のリード制御の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施形態のリード制御の初期設定に関する処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施形態のリード制御のリード固定制御に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本実施形態のリード制御のリード送り制御に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態のリード制御のリード維持制御に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本実施形態のリード制御の設定変更に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかるリード制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[本実施形態]
図1は、本実施形態のリード制御装置を備えるリード装置を示す図である。
図2は、本実施形態のリード制御装置を備えるリード装置の一例を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のリード制御装置10は、リード制御装置10の別体部分である別体部10aと共に、リード部材5が一体となったリード装置1に設けられている。つまり、リード装置1は、リード部材5と、リード制御装置10とを備え、リード制御装置10は、別体部10aを有する構成となっている。本実施形態では、リード装置1に一体となったものとして説明するが、この構成に特に限定されない。例えば、リード装置1を構成する要素の一部が、別の端末装置の機能により実現されていてもよい。
【0012】
リード制御装置10の別体部10aは、例えば、ペットP(犬や猫等の動物)の首輪などに装着される。リード制御装置10は、ユーザU(飼い主等)によって保持される。リード装置1は、リード制御装置10と別体部10aにより、リード部材5の長さを調整するリード制御を実行することで、リード部材5の弛みを適切な弛みとなるように調整している。
【0013】
リード部材5は、ユーザUとペットPとをつなぐひも状の部材である。リード部材5は、その一端側がユーザUのリード制御装置10に保持され、その他端側がペットPに装着された別体部10aに保持される。リード部材5は、その長さが調整されることで、弛みが調整される。
【0014】
リード制御装置10は、リード調整部7と、停止スイッチ11と、物理量情報取得部12と、距離情報取得部13と、利用情報取得部14と、記憶部15と、リード制御部16とを備えている。また、リード制御装置10の別体部10aは、スピーカ21と、スピーカ制御部20とを備えている。
【0015】
リード調整部7は、リード部材5を送り出したり、引き戻したりすることで、リード部材5の長さを調整する。本実施形態において、リード調整部7は、ユーザU側に設けられているが、リード調整部7は、ペットP側に設けられてもよいし、ユーザU側とペットP側の両方に設けられてもよい。リード調整部7は、例えば、リード部材5の巻取り機構である。リード調整部7は、図示しない1または複数のモータやローラー等などにより構成された駆動源を有しており、巻取り機構を介して、リード部材5の送り出し動作及び引き戻し動作を駆動している。リード調整部7は、リード制御部16に接続されており、リード制御部16による駆動源の制御により、リード部材5のリードの長さを調整する。リード調整部7は、リード制御部16による駆動源の動作速度を可変させる複数(通常・高速など)の動作モード制御を受け、通常の動作速度より高速なリード部材5の送り出し及び引き戻し動作を行える。リード調整部7は、リード制御部16によるモータの逆相ブレーキ制御など、さらに細かい駆動源の制御により、リード部材5の送り出し動作及び引き戻し動作の開始直後や終了時を滑らかにする駆動を受け付けてもよい。
【0016】
また、リード調整部7は、リード部材5を切り離す切り離し機構を有している。リード調整部7の切り離し機構は、リード部材5の引出長さが最大となり、且つリード部材5の張力が所定の張力を超えると、リード調整部7からリード部材5を切り離している。
【0017】
停止スイッチ11は、リード調整部7からのリード部材5の送り出しを停止するために操作されるスイッチである。停止スイッチ11は、リード制御部16に接続されており、停止操作信号をリード制御部16へ向けて出力する。リード制御装置10は、これ以外にもユーザUが任意にリード部材の送り出し/引き戻しを行う操作スイッチ(不図示)を備えていてもよい。
【0018】
物理量情報取得部12は、リード部材5の状態に関する物理量の情報を物理量情報として取得する。物理量としては、例えば、リード部材5の引出長さ及びリード部材5に付与される張力等である。物理量情報取得部12は、例えば、リード調整部7に設けられた長さ検出センサ及び張力検出センサで検出された信号を取得することで、リード部材5の引出長さ及び張力を取得する。物理量情報取得部12は、リード制御部16に接続されており、取得した物理量情報をリード制御部16へ向けて出力する。また、物理量情報取得部12で取得された物理量情報は、記憶部15に記憶される。
【0019】
距離情報取得部13は、ユーザUとペットPとの間の距離の情報を距離情報として取得する。本実施形態では、一例として、距離情報取得部13は、マイク22を有し、スピーカ21からの音波の伝搬時間から距離を計測している。
【0020】
スピーカ21は、リード部材5を介したペットP側の別体部10aに設けられる。スピーカ21は、ペットPの首輪に設けてもよい。スピーカ21は、スピーカ制御部20の制御により距離を計測するための音波を出力する。音波は、例えば、ユーザU及びペットPにとって可聴領域外の周波数となる超音波を用いて一定周期で出力される信号音である。スピーカ制御部20は、リード制御部16の制御と連携しており、スピーカ21からの音波の出力タイミングの制御を行っている。距離情報取得部13は、リード制御部16と接続されており、スピーカ21から音波を出力したタイミング情報として正確な出力時刻を認識している。
【0021】
マイク22は、リード部材5を介したユーザU側のリード制御装置10に設けられる。マイク22は、スピーカ21から出力された音波を取得する。距離情報取得部13は、マイク22から入力される音波の入力制御を行っている。距離情報取得部13は、入力制御として、マイク22から入力された音波の入力時刻を取得する。
【0022】
距離情報取得部13は、出力時刻と入力時刻との差分から音波の伝搬時間を取得し、取得した伝搬時間に基づいて、ユーザUとペットPとの間の距離を算出することで、距離情報を取得する。距離情報取得部13は、リード制御部16に接続されており、取得した距離情報をリード制御部16へ向けて出力する。また、距離情報取得部13で取得された距離情報は、記憶部15に記憶される。
【0023】
なお、距離情報取得部13は、ユーザUとペットPとの間の距離情報を取得可能な構成であれば、上記に特に限定されない。距離情報取得部13は、例えば、レーザー距離計測器を利用してもよいし、ペットP側に電波ビーコン発信機を設け、ユーザU側の距離情報取得部13に設けた電波受信部の小型アンテナアレイなどにより電波レベルや電波の到来方向を検出して距離情報を取得してもよい。また、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)、カメラを用いた公知の計測方法などにより距離情報を取得してもよい。GPSを用いた計測方法としては、リード部材5のユーザU側とペットP側にGPS受信処理部をそれぞれ配置し、2つのGPSの位置情報の差異から距離を計測する。また、カメラを用いた計測方法としては、リード部材5のユーザU側からペットP側に向けて撮像し、取得した画像に基づく画像認識によってペットPの画像内におけるサイズに基づき距離を計測する。
【0024】
利用情報取得部14は、ユーザUの利用状態に関する情報を利用情報として取得する。利用情報取得部14は、例えば、入力ボタンまたはタッチパネル等の入力デバイスであり、ユーザUにより利用情報が入力されることで、利用情報を取得する。利用情報はユーザUが所持しているスマートフォンや腕時計などのウェアラブル端末、ペットPに装着された活動量計などの端末と連携し、図示しない無線通信を介して入力された情報であってもよい。利用情報としては、例えば、ユーザU及びペットPの年齢、ユーザU及びペットPのバイタルデータであり、また、例えば、公園や住宅街、歩道など散歩の予定経路や、リード制御装置10を一時的に係留した場所などの周辺情報に応じたリード部材5の制限距離など、ユーザUによるリード装置1の使用状況等がある。利用情報取得部14は、リード制御部16に接続されており、取得した利用情報をリード制御部16へ向けて出力する。また、利用情報取得部14で取得された利用情報は、記憶部15に記憶される。
【0025】
記憶部15は、物理量情報、距離情報及び利用情報を記憶する。また、記憶部15は、リード装置1を制御するためのプログラムDを記憶する。記憶部15は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子などの記憶装置である。また、記憶部15は、無線または有線で接続される外部記憶装置などであってもよい。
【0026】
リード制御部16は、リード装置1を構成する各部を制御する。具体的に、リード制御部16は、記憶部15に記憶されているプログラムDを展開して実行することによって、リード装置1を構成する各部を制御する。リード制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の集積回路である。リード制御部16は、
図3から
図8に示すリード制御を実行している。本実施形態において、スピーカ制御部20及び距離情報取得部13なども同様に、集積回路などにより構成可能である。
【0027】
図3は、本実施形態のリード制御の一例を示すフローチャートである。
図4は、本実施形態のリード制御の初期設定に関する処理を示すフローチャートである。
図5は、本実施形態のリード制御のリード固定制御に関する処理の一例を示すフローチャートである。
図6は、本実施形態のリード制御のリード送り制御に関する処理の一例を示すフローチャートである。
図7は、本実施形態のリード制御のリード維持制御に関する処理の一例を示すフローチャートである。
図8は、本実施形態のリード制御の設定変更に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【0028】
先ず、
図3を参照して、リード装置1の全体的なリード制御のフローについて説明する。
図3に示すように、リード制御部16は、リード装置1を用いた散歩が開始されたか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1において、リード制御部16は、例えば、図示しない散歩開始ボタンが操作されたか否かに基づいて、散歩の開始を判定する。リード制御部16は、散歩が開始されていない(ステップS1:No)と判定すると、散歩の開始が判定されるまで、ステップS1を繰り返し実行する。一方で、リード制御部16は、ステップS1において、散歩が開始された(ステップS1:Yes)と判定すると、
図4に示す初期設定処理を実行する(ステップS10)。
【0029】
リード制御部16は、ステップS10の実行後、
図5に示すリード固定制御に関する処理を実行する(ステップS20)。リード制御部16は、ステップS20の実行後、
図6に示すリード送り制御に関する処理を実行する(ステップS30)。リード制御部16は、ステップS30の実行後、
図7に示すリード維持制御に関する処理を実行する(ステップS40)。この後、リード制御部16は、リード装置1を用いた散歩が終了したか否かを判定する(ステップS50)。ステップS50において、リード制御部16は、例えば、図示しない散歩終了ボタンが操作されたか否かに基づいて、散歩の終了を判定する。リード制御部16は、散歩が終了していない(ステップS50:No)と判定すると、散歩の終了が判定されるまで、ステップS20からステップS50を繰り返し実行する。一方で、リード制御部16は、ステップS50において、散歩が終了した(ステップS50:Yes)と判定すると、リード装置1を終了状態に戻す処理を実行する(ステップS51)。
【0030】
リード制御部16は、ステップS51において、リード装置1を終了状態に戻す処理として、リード部材5の引出長さを利用終了時の状態に戻す処理を実行する。例えば、リード制御部16は、物理量情報取得部12により取得したリード部材5の引出長さが最短となるまで、リード調整部7によりリード部材5を引き戻すリード制御を実行する。終了時の長さは、例えば、リードの利用を終了する際にペットを引き寄せるのに適した0.5mといった長さであってもよいし、ユーザUが予め長さを設定できてもよい。リード制御部16は、ステップS51の実行後、一連のリード制御を終了する。
【0031】
次に、
図4を参照して、ステップS10の初期設定処理について説明する。初期設定処理において、リード制御部16は、先ず、制限距離の設定を実行する(ステップS11)。制限距離は、散歩時において制限されるリード部材5の引出長さである。ステップS11において、リード制御部16は、ユーザUによる設定操作により制限距離となる引出長さを取得し、取得した引出長さを制限距離として設定する。リード制御部16は、ステップS11の実行後、リード部材5の引出長さが制限距離に基づいて最適であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0032】
リード制御部16は、リード部材5の引出長さが最適であると判定すると(ステップS12:Yes)、距離情報取得部13によりユーザUとペットPとの間の距離の取得を開始する(ステップS13)。リード制御部16は、ステップS13の実行後、初期設定処理を終了し、ステップS20へ移行する。一方で、リード制御部16は、リード部材5の引出長さが最適でないと判定すると(ステップS12:No)、リード調整部7をリード制御して、リード部材5の送り出しまたは引き戻しを実行する(ステップS14)。リード制御部16は、ステップS14の実行後、再びステップS12に進み、リード部材の長さが最適となるまで、ステップS12及びステップS14を繰り返し実行する。なお、ステップS12及びステップS14は、ユーザUによる任意のリード部材5の長さ調整によって最適な長さとしてもよい。
【0033】
次に、
図5を参照して、ステップS20のリード固定制御に関する処理について説明する。リード固定制御は、例えば、ペットPが走り出して、リード部材5が引き出されそうになった場合に、ユーザUが停止スイッチ11を操作することで実行される制御である。リード制御部16は、ステップS20へ移行後、停止スイッチ11が操作されたか否かを判定する(ステップS21)。リード制御部16は、停止スイッチ11が操作されていないと判定すると(ステップS21:No)、リード固定制御に関する処理を終了し、ステップS30へ移行する。
【0034】
一方で、リード制御部16は、停止スイッチ11が操作されていると判定すると(ステップS21:Yes)、リード部材5の長さを固定するリード固定制御を実行する(ステップS22)。リード固定制御では、リード制御部16がリード調整部7を制御して、リード調整部7からのリード部材5の送り出しを停止させる。リード制御部16は、ステップS22の実行後、規定時間を経過したか否かを判定する(ステップS23)。規定時間は、リード固定制御の実行時からカウントされる時間となっている。また、規定時間は、後述するリード引戻し制御に移行するまでの時間であり、例えば、5秒となっている。
【0035】
リード制御部16は、規定時間を経過していないと判定すると(ステップS23:No)、再びステップS21に進み、継続して停止スイッチ11が操作されているか否かを判定する。一方で、リード制御部16は、規定時間を経過していると判定すると(ステップS23:Yes)、リード調整部7によりリード部材5を引き戻すリード引戻し制御を実行する(ステップS24)。リード引戻し制御では、リード制御部16がリード調整部7を制御して、リード調整部7によりリード部材5の引き戻しを実行する。リード制御部16は、ステップS24の実行後、リード固定制御に関する処理を終了し、ステップS30へ移行する。
【0036】
次に、
図6を参照して、ステップS30のリード送り制御に関する処理について説明する。リード送り制御は、例えば、リード部材5に人または物が引っ掛かって、リード部材5が急激に引かれた場合に実行される制御である。リード制御部16は、ステップS30へ移行後、リード部材5の急激な引っ張りがあったか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31において、リード制御部16は、物理量情報取得部12により取得した引出長さに基づいて、単位時間当たりの引出長さの変化を算出し、この変化に対して距離情報取得部13から入力されたユーザUとペットPとの間の距離の変化が少ないことに基づいて、リード部材5の急激な引っ張りを検出する。具体的に、変化が少ないとは、例えば、0.2秒といった短時間の間に50cmのリード部材5の引出長さの変化があった場合において、ユーザUとペットPとの間の距離の変化が数cm未満であったような場合であり、ユーザUまたはペットPの移動に関係なく、リード部材5が何かに引っ掛かるなどして強く急激に引かれている状態が想定される。ここで、数値は例示であり、リード制御装置の利用状態に応じて適時設定された数値でよい。なお、ステップS31において、リード制御部16は、上記以外にも、物理量情報取得部12により取得した張力に基づいて、単位時間当たりの張力の変化を算出し、この張力の変化の情報または、引出長さの変化に対するユーザUとペットPの間の距離の変化の時間的な遅れなどの情報に基づき、あるいはこれらの情報を任意に組み合わせ総合的に判断することで、リード部材5の急激な引っ張りを検出してもよい。リード制御部16は、リード部材5の急激な引っ張りがないと判定すると(ステップS31:No)、リード送り制御に関する処理を終了し、ステップS40へ移行する。
【0037】
一方で、リード制御部16は、リード部材5の急激な引っ張りがあると判定すると(ステップS31:Yes)、リード部材5をリード調整部7から送り出すリード送り制御を実行する(ステップS32)。リード送り制御では、リード制御部16がリード調整部7を制御して、リード調整部7からのリード部材5の送り出しを実行する。急激な引っ張りであることを鑑み、リード部材5を通常の動作速度とは異なる第二の送り出し制御として、例えば、高速な送り出しの制御を実行すると好適である。リード制御部16は、ステップS32の実行後、リード送り制御に関する処理を終了し、ステップS40へ移行する。なお、リード送り制御では、切り離し機構によるリード部材5のリード調整部7からの切り離しをさらに実行してもよい。例えば、リード送り制御によりリード部材5の引出長さが巻取り機構の限界である最長となった状態においても張力がペットPによると思われる張力を大幅に超えているような場合、リード制御部16は、リード部材5のリード調整部7からの切り離しを実行してもよい。
【0038】
次に、
図7を参照して、ステップS40のリード維持制御に関する処理について説明する。リード維持制御は、ユーザUとペットPとの間の距離に応じて、リード部材5の弛みを所定の弛みに維持する制御である。リード制御部16は、ステップS40へ移行後、ユーザUとペットPとの間の距離に対応するリード部材5の引出長さが適切であるか否かを判定する(ステップS41)。ステップS41において、リード制御部16は、物理量情報取得部12により取得したリード部材5の引出長さと、距離情報取得部13により取得した距離情報とを比較することで、引出長さが適切であるか否かを判定している。つまり、リード部材5の引出長さと距離情報に対応する長さの差分がリード部材5の弛み分となる。弛み分が所定値より長い場合、リード制御部16は、リード部材5が弛みすぎであり適切でないと判定する(ステップS41:No)。一方で、弛み分が所定値以内の場合、リード制御部16は、リード部材5の引出長さが適切であると判定する(ステップS41:Yes)。ここで、制限距離となる引出長さを含めてリード部材5の引出長さの判定を行うことで、後述するリード維持制御により、散歩時におけるリード部材5の引出長さと弛みの制御を同時に行える。例えば、制限距離以上にリード部材5が引き出されている場合は引出長さが長すぎるので適切でないと判定する。
【0039】
リード制御部16は、ステップS41において、ユーザUとペットPとの間の距離に対応するリード部材5の引出長さが適切であると判定すると(ステップS41:Yes)、リード維持制御に関する処理を終了し、ステップS50へ移行する。
【0040】
一方で、リード制御部16は、ユーザUとペットPとの間の距離に対応するリード部材5の引出長さが適切でないと判定すると(ステップS41:No)、リード部材5の弛みを所定の弛みに維持するリード維持制御を実行する(ステップS42)。リード維持制御では、リード制御部16がリード調整部7を制御して、リード調整部7からのリード部材5の引出長さの調整を実行する。具体的に、リード維持制御では、物理量情報取得部12により取得した引出長さと、距離情報取得部13により取得した距離情報に対応する長さとの差分が、所定値以内になるように、リード調整部7からのリード部材5の引出長さを調整する。ステップS41において、制限距離以上にリード部材5が引き出されている場合は、制限距離の範囲に収まるようにリード部材5の引出長さを調整する。リード制御部16は、ステップS42の実行後、リード維持制御に関する処理を終了し、ステップS50へ移行する。
【0041】
次に、
図8を参照して、リード制御の設定変更に関する処理について説明する。
図8に示す処理は、
図3のステップS1からステップS50の間において、何れのタイミングで実行されてもよい。例えば、
図8に示す処理は、ステップS10の初期設定処理において実行されてもよいし、ステップS20,S30,S40の間に割り込む割り込み処理として実行されてもよい。
図8に示す処理は、利用情報に基づいてリード制御の設定を変更する処理である。
【0042】
リード制御部16は、ユーザUの利用状態の変更があるか否かを判定する(ステップS61)。ステップS61において、リード制御部16は、利用情報取得部14において取得した利用情報と記憶部15に記憶された利用情報との比較を行うことで、ユーザUの利用状態の変更があるか否かを判定する。リード制御部16は、利用状態に変更がある場合(ステップS61:Yes)、利用情報に応じたリード部材5の設定とする(ステップS62)。具体的に、リード部材5の設定としては、例えば、
図4のステップS11において設定された制限距離であり、リード制御部16は、利用情報に対応付けられた制限距離に変更する。なお、本実施形態では、リード部材5の制限距離を変更したが、この構成に特に限定されず、リード部材5の張力を変更してもよい。
【0043】
リード制御部16は、ステップS61において、ユーザUの利用状態の変更がないと判定すると(ステップS61:No)、
図8に示す処理を終了する。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、リード制御部16は、物理量情報と距離情報とに基づいて、リード部材5の弛みを所定の弛みに維持するリード維持制御を実行することができる。このため、ユーザUとペットPとの間の距離に応じた適切なリード部材5の弛みに調整することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、スピーカ21からマイク22への音の伝搬時間に基づいて、ユーザUとペットPとの間の距離を算出することができる。このため、距離の計測を簡易で低コストにすることができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、リード制御部16は、取得した利用情報に応じて設定されるリード部材5の物理量となるようにリード維持制御を実行することができる。このため、ユーザU及びペットPの利用状態に応じた、適切なリード部材の弛みとすることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、リード制御部16は、リード部材5をリード調整部7から送り出すリード送り制御を実行することができる。リード制御部16は、リード部材5の引出長さの変化と、ユーザUとペットPとの間の距離の変化に基づいて、ユーザUやペットPの移動に関係しない、リード部材5の急激な引っ張りを適切に検出できる。このため、リード部材5に人または物が引っ掛かって、リード部材5が強く急激に引かれた場合であっても、リード部材5を積極的に送り出すことができ、ユーザU及びペットPがリード部材5に引きずられてしまうような事故を回避し安全を確保することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、リード制御部16は、リード部材5の長さを固定するリード固定制御を実行することができ、また、リード固定制御から、リード部材5を引き戻すリード引戻し制御へ移行することができる。このため、ペットPが走り出して、リード部材5が引き出された場合であっても、ユーザUがリード部材5を固定することにより、ペットPを制止することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 リード装置
5 リード部材
7 リード調整部
10 リード制御装置
10a 別体部(リード制御装置)
11 停止スイッチ
12 物理量情報取得部
13 距離情報取得部
14 利用情報取得部
15 記憶部
16 リード制御部
20 スピーカ制御部
21 スピーカ
22 マイク
U ユーザ
P ペット