(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144625
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】静電場スクリーン用棒状部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01M 1/22 20060101AFI20231003BHJP
B03C 3/00 20060101ALI20231003BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20231003BHJP
B03C 3/41 20060101ALI20231003BHJP
B03C 3/64 20060101ALI20231003BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A01M1/22 Z
B03C3/00 C
B03C3/40 A
B03C3/41 B
B03C3/64 A
A61L9/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051700
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 貴文
【テーマコード(参考)】
2B121
4C180
4D054
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121AA20
2B121BA35
2B121DA01
2B121EA12
2B121FA01
4C180AA07
4C180AA18
4C180AA19
4C180DD20
4C180HH02
4D054AA20
4D054BA01
4D054BA06
4D054BA20
4D054BB02
4D054BB09
4D054BB14
4D054BC09
4D054BC22
4D054BC31
(57)【要約】
【課題】取り扱い性に優れた静電場スクリーン用棒状部材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明では、通電可能な導電部と、前記導電部の外周を覆う誘電体部と、を有し、前記導電部は、導電素材と、該導電素材よりも軽い素材との組み合わせからなる、又は導電素材による軽量化された構造からなる、静電場スクリーン用棒状部材を提供する。また、本発明では、前記静電場スクリーン用棒状部材の製造方法であって、前記誘電体部を形成する材料を、前記導電部の外周に押し出す押出工程を有する、静電場スクリーン用棒状部材の製造方法も提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電可能な導電部と、
前記導電部の外周を覆う誘電体部と、
を有し、
前記導電部は、導電素材と、該導電素材よりも軽い素材との組み合わせからなる、又は導電素材による軽量化された構造からなる、静電場スクリーン用棒状部材。
【請求項2】
前記導電部の導電素材と、前記誘電体部とが、近接するように構成された、請求項1に記載の静電場スクリーン用棒状部材。
【請求項3】
前記導電部は、導電繊維と樹脂とを組み合わせた繊維強化樹脂からなる、請求項1又は2に記載の静電場スクリーン用棒状部材。
【請求項4】
前記導電部中の導電繊維の体積比率が80vol%以下である、請求項3に記載の静電場スクリーン用棒状部材。
【請求項5】
前記誘電体部の電気表面抵抗値は、108~1011Ωである、請求項1から4のいずれか一項に記載の静電場スクリーン用棒状部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の静電場スクリーン用棒状部材を用いた、静電場スクリーン発生装置。
【請求項7】
通電可能な導電部と、前記導電部の外周を覆う誘電体部と、を有し、前記導電部は、導電素材と、該導電素材よりも軽い素材との組み合わせからなる、又は導電素材による軽量化された構造からなる、静電場スクリーン用棒状部材の製造方法であって、
前記誘電体部を形成する材料を、前記導電部の外周に押し出す押出工程を有する、静電場スクリーン用棒状部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電場スクリーン用棒状部材及びその製造方法に関する。より詳しくは、取り扱い性に優れた静電場スクリーン用棒状部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農園芸植物の栽培においては、病害や虫害等の発生を防止する目的で、多くの殺菌剤や殺虫剤が使用されている。農園芸植物の施設栽培において、一旦施設内に病原菌や害虫等が侵入すると、施設全体に病害や虫害等が蔓延する可能性が高い。このため、病害や虫害等が蔓延する前に薬剤を散布することにより、このリスクを回避することが考えられる。しかしながら、特に施設栽培においては、近年、病原菌の薬剤耐性獲得や、害虫の薬剤抵抗性獲得が問題となってきており、薬剤の散布のみで病原菌や害虫等の蔓延を抑制することは、困難である。また、薬剤を散布した場合、農園芸植物に残留する薬剤についても問題視されている。
【0003】
ここで、カビ(真菌)の主な伝染源は胞子であり、多くの種類が風により飛散するため、植物病原菌(主に、カビ由来)による病害の多くが風媒感染によって発生する。そのため、薬剤を用いずにこれらを抑制すべく、空気中の細菌、胞子、花粉等を除去するものとして空気清浄機を用い、フィルターによるものや、電気集塵式により細菌、胞子、花粉等を除去するものなどが知られている。しかしながら、フィルターによるものは、除去するものよりも細かい穴を有していないと効力がなく、また、目詰まりを起こすために長期間の稼動が困難であるといった問題があった。また、施設農園芸では、農園芸用ハウスの褄面や側面に防虫ネットを取り付け、物理的に害虫の侵入を防ぐことで、薬剤の使用を抑制する努力がなされている。しかしながら、防虫ネットの目が粗いと害虫の侵入を許してしまい、逆に細かいと、換気が十分になされず作物の生育環境を調整することができない。
【0004】
上述した問題を解決する手段として、特許文献1には、正極端子に接続して形成した正極導電体について少なくともその一部の表面を絶縁体で被覆した第一の誘電被覆体を複数個備え、各々の前記第一の誘電被覆体が所定間隔にて略平行に配置されている第一の誘電被覆体群と、負極端子に接続して形成した負極導電体について少なくともその一部の表面を絶縁体で被覆した第二の誘電被覆体を複数個備え、各々の前記第二の誘電被覆体を前記所定間隔にて略平行に配置されている第二の誘電被覆体群と、さらに、前記正極端子に正電位を与える正電圧印加手段と前記負極端子に負電位を与える負電圧印加手段とを備え、前記第一の誘電体被覆群と前記第二の誘電体被覆群を離隔対向させつつ、相互に前記略平行の並びの方向にずらして配置し、空間に屈曲を繰り返して連続した電場のスクリーンを形成せしめた静電場スクリーン発生装置が開示されている。この静電場スクリーン発生装置を使用することにより、病原菌や害虫等を、形成された静電場で捕捉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の静電場スクリーン発生装置で用いられている誘電被覆体は、金属のロッドや板に、樹脂を被覆したものが用いられており、重量があるため取り扱い性に優れず、そのため、適応箇所が限られたり、その他展開が難しかったりといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明では、このような実情に鑑み、取り扱い性に優れた静電場スクリーン用棒状部材及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者が鋭意実験検討を行った結果、導電部の素材に着目することで、取り扱い性に優れた静電場スクリーン用棒状部材及びその製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明では、まず、通電可能な導電部と、前記導電部の外周を覆う誘電体部と、を有し、前記導電部は、導電素材と、該導電素材よりも軽い素材との組み合わせからなる、又は導電素材による軽量化された構造からなる、静電場スクリーン用棒状部材を提供する。
本発明では、前記導電部の導電素材と、前記誘電体部とが、近接するように構成されていてよい。
本発明では、前記導電部は、導電繊維と樹脂とを組み合わせた繊維強化樹脂からなっていてよい。この場合、前記導電部中の導電繊維の体積比率が80vol%以下であってよい。
本発明では、前記誘電体部の電気表面抵抗値は、108~1011Ωであってもよい。
また、本発明に係る静電場スクリーン用棒状部材を用いた、静電場スクリーン発生装置も提供する。
【0010】
本発明では、また、通電可能な導電部と、前記導電部の外周を覆う誘電体部と、を有し、前記導電部は、導電素材と、該導電素材よりも軽い素材との組み合わせからなる、又は導電素材による軽量化された構造からなる、静電場スクリーン用棒状部材の製造方法であって、前記誘電体部を形成する材料を、前記導電部の外周に押し出す押出工程を有する、静電場スクリーン用棒状部材の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、取り扱い性に優れた静電場スクリーン用棒状部材及びその製造方法を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る棒状部材1を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
1.静電場スクリーン用棒状部材1
本発明に係る静電場スクリーン用棒状部材1(以下、単に「本発明に係る棒状部材1」とも称する。)は、通電可能な導電部(11、11´)と、前記導電部(11、11´)の外周を覆う誘電体部12と、を有しており、前記導電部(11、11´)は、導電素材と、該導電素材よりも軽い素材との組み合わせからなる、又は導電素材による軽量化された構造からなることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る棒状部材1は、上記特徴を有することにより、軽量化されており、取り扱い性に優れる。これにより、従来技術と比較して、適応箇所が限られることなく、その他展開も容易であるため、幅広く活用できることが期待される。
【0016】
図1は、本発明に係る棒状部材1を模式的に示す図である。本発明では、
図1に示すように、導電部(11、11´)と誘電体部12とが近接していることが好ましい。これは、例えば、後述する製造方法で作製することができ、これにより、誘電体部12を導電部11の周りにピンホールなどの欠陥を出すことなく、連続的に生産することができ、コストも抑えることができる。
【0017】
(導電部(11、11´))
導電部(11、11´)は、印加時に通電可能な電気伝導性を有している。本発明において、導電部(11、11´)は、導電素材と、該導電素材よりも軽い素材からなる導電部11、又は導電素材による軽量化された構造からなる導電部11´のいずれかである。
【0018】
(導電部11)
導電部11は、導電素材と、該導電素材よりも軽い素材で構成されていれば特に限定されないが、例えば、導電繊維と樹脂とを組み合わせた繊維強化樹脂からなる。導電部11に用いられる導電繊維としては、例えば、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、炭化タングステン繊維、ボロン繊維、バサルト繊維、合成繊維、金属繊維(例えば、ステンレス鋼繊維、鉄繊維等)等の強化繊維、或いは当該強化繊維とともに導電剤を添加することで、導電性を付与してもよい。
【0019】
本発明では、導電繊維として、これらの中でも特に、炭素繊維、及び/又は、金属繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これら強化繊維を用いた繊維強化樹脂としては、具体的には、熱硬化性樹脂マトリックス炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、熱可塑性樹脂マトリックス炭素繊維強化プラスチック(CFRTP)、金属繊維強化プラスチック(MFRP)等が知られている。
【0020】
繊維強化樹脂におけるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0021】
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂(テレフタル酸系又はイソフタル酸系)、ビニルエステル樹脂(例えば、エポキシアクリレート樹脂等)、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0022】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等)、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、熱可塑性ポリアミド系樹脂等が挙げられる。
【0023】
本発明では、繊維強化樹脂におけるマトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。また、前記導電部中の前記強化繊維の体積比率が80vol%以下であることが好ましく、70vol%以下であることがより好ましい。これにより、より軽量化を図ることができる。体積比率の下限値は特に限定されないが、電気伝導性の観点から、30vol%以上であることが好ましく、40vol%以上であることがより好ましい。
【0024】
マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化性樹脂を含有する組成物に強化繊維を含浸し、熱硬化性樹脂を加熱硬化することにより導電部11を得ることができる。マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合、溶融状態の熱可塑性樹脂を強化繊維の外周に周知のダイスを用いて押し出した後、冷却することにより導電部11を得ることができる。
【0025】
(導電部11´)
導電部11´は、導電素材による軽量化された構造からなる。導電部11´に用いられる導電素材としては、導電性を有する素材であれば特に限定されないが、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄等の単一金属や、銅合金、ステンレス等の複数の金属を複合した合金などが挙げられる。
【0026】
導電部11´の具体的な構造は、例えば、素線構造からなるより線や、中空部を有する構造とすることができる。これにより、導電部11´を全て前記導電素材で形成した場合と比較して、軽量化を図ることができる。
【0027】
(誘電体部12)
誘電体部12は、前記導電部(11、11´)の外周を覆っている。誘電体部12は、導電部(11、11´)の通電時に、通電されない程度の電気伝導性を有しており、導電部(11、11´)の印加により誘電し、静電気を帯びることができる材料で形成されていることが好ましい。
【0028】
誘電体部12を形成する材料としては、例えば、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂については、上述したものと同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0029】
本発明では、誘電体部12を形成する材料として、上述した繊維強化樹脂のマトリックス樹脂として用いた樹脂とは異なる種類の樹脂から構成されることが好ましい。具体的には、マトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合、前記材料は、マトリックス樹脂とは異なる種類の熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂から構成される。本発明では、誘電体部12を形成する材料として、これらの中でも特に、熱可塑性樹脂が好ましく、加工性においては、熱可塑性樹脂の中でも特に、ポリエチレン樹脂が好ましい。ただし、コストパフォーマンスを鑑みると、導電剤添加によるコストアップを抑制するために、樹脂素材単独でも108~1011Ωに近い表面抵抗値を有することが好ましく、その観点では、塩化ビニル樹脂が挙げられる。
【0030】
また、誘電体部12の電気表面抵抗値は、108~1011Ωであることが好ましい。これにより、誘電によって害虫等を捕捉するのに十分な静電気を帯びることができる。なお、本発明では、表面電気抵抗値を調整するために、導電剤(例えば、導電ポリマー、カーボンブラック等)を添加することもできる。
【0031】
更に、本発明では、屋外での設置も鑑み、誘電体部12に十分な耐候性があることが望ましいため、耐候剤(例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、カーボンブラック等)を添加してもよい。
【0032】
(静電場スクリーン発生装置)
本発明に係る静電場スクリーン発生装置は、本発明に係る静電場スクリーン用棒状部材1を用いていれば、その構成は特に限定されない。具体的には、例えば、特開2017-63655号公報に記載の静電場スクリーン発生装置などが挙げられるが、これに限定されない。
【0033】
2.静電場スクリーン用棒状部材1の製造方法
本発明に係る製造方法は、通電可能な導電部(11、11´)と、前記導電部(11、11´)の外周を覆う誘電体部12と、を有し、前記導電部(11、11´)は、導電素材と、該導電素材よりも軽い素材との組み合わせからなる、又は導電素材による軽量化された構造からなる、静電場スクリーン用棒状部材の製造方法であって、前記誘電体部12を形成する材料を、前記導電部(11、11´)の外周に押し出す押出工程を有することを特徴とする。以下、本発明に係る製造方法について具体的に説明するが、本発明に係る製造方法は前記押出工程を有していれば、これに限定されない。
【0034】
強化繊維を束にして引き出し、マトリックス樹脂となる未硬化樹脂組成物に含浸することで、未硬化状態の繊維強化樹脂を含む線状体を得た。この線状体をノズルに通過させることで、所望の外径に整径して導電部(11、11´)とし、クロスヘッドダイを用いて、前記誘電体部12を形成する材料を前記導電部(11、11´)の外周に押し出して冷却することにより、誘電体部12を形成した。次に、導電部(11、11´)中の未硬化樹脂を加熱硬化することで、所望の外径を有する導電部を形成し、静電場スクリーン用棒状部材を作製した。
【0035】
なお、本発明では、線状体を得る代わりに、より線(曲げることが可能な鋼線)や、中空部を有する構造(例えば、中空パイプ等)を得て、その後の工程で用いてもよい。
【実施例0036】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0037】
1.棒状部材の作製
以下に記載の方法で、各棒状部材を作製した。
【0038】
<実施例1>
太さ2mmのCFRPロッドに、ロッド外径が3.95mmになるように、ポリマー系導電剤入りLLDPEを被覆した。コンポーズ法を用いて、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸し、絞りによって、外径が2mmとなるように成形したCFRPからなる導電部に、樹脂の押出被覆を行い、蒸気硬化槽(120℃)で熱硬化性樹脂の硬化処理を行い、カットして、長さ300mmの静電場スクリーン用棒状部材を作製した。炭素繊維と熱硬化性樹脂の体積比率は、55vol%/45vol%とした。
【0039】
<実施例2>
ポリマー系導電剤入りLLDPEの代わりに、ポリマー系導電剤、及び光安定剤入りLLDPEを被覆した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0040】
<実施例2´>
ポリマー系導電剤入りLLDPEの代わりに、ポリマー系導電剤、光安定剤、及びカーボンブラック入りLLDPEを被覆した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0041】
<実施例3>
炭素繊維と熱硬化性樹脂の体積比率を、70vol%/30vol%とした以外は、実施例1と同様に作製した。
【0042】
<実施例3´>
炭素繊維と熱硬化性樹脂の体積比率を、70vol%/30vol%とし、ポリマー系導電剤入りLLDPEの代わりに、ポリマー系導電剤、光安定剤、及びカーボンブラック入りLLDPEを被覆した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0043】
<実施例4>
太さ2mm、素線構造7×7のステンレスワイヤー(より線)に、ロッド外径が3.95mmになるように、ポリマー系導電剤入りLLDPEを被覆した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0044】
<実施例4´>
太さ2mm、素線構造7×7のステンレスワイヤー(より線)に、ロッド外径が3.95mmになるように、ポリマー系導電剤、光安定剤、及びカーボンブラック入りLLDPEを被覆した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0045】
<実施例5>
太さ2mm、厚み0.3mmのステンレスパイプに、ロッド外径が3.95mmになるように、ポリマー系導電剤入りLLDPEを被覆した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0046】
<実施例5´>
太さ2mm、厚み0.3mmのステンレスパイプに、ロッド外径が3.95mmになるように、ポリマー系導電剤、光安定剤、及びカーボンブラック入りLLDPEを被覆した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0047】
<実施例6>
CFRPの代わりにCFRTPを用い、ポリマー系導電剤入りLLDPEの代わりに、ポリマー系導電剤、光安定剤、及びカーボンブラック入りLLDPEを被覆した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0048】
<実施例7>
CFRPの代わりに未硬化CFRPから二次加工後硬化させたCFRPを用い、ポリマー系導電剤入りLLDPEの代わりに、ポリマー系導電剤、光安定剤、及びカーボンブラック入りLLDPEを被覆した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0049】
<比較例1>
太さ2mmの鉄芯に、ロッド外径が3.95mmになるように、ポリマー系導電剤入りLLDPEを被覆し、棒状部材とした。
【0050】
<比較例2>
太さ2mmの銅芯に、ロッド外径が3.95mmになるように、ポリマー系導電剤入りLLDPEを被覆し、棒状部材とした。
【0051】
<比較例3>
太さ2mmのステンレス芯に、ロッド外径が3.95mmになるように、ポリマー系導電剤入りLLDPEを被覆し、棒状部材とした。
【0052】
<比較例4>
CFRPの代わりにGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を用い、ポリマー系導電剤入りLLDPEの代わりに、ポリマー系導電剤、光安定剤、及びカーボンブラック入りLLDPEを被覆した以外は、実施例1と同様に作製した。
【0053】
2.評価
作製した各棒状部材について、表面抵抗値、重量、二次加工性、耐候性、通電性、及び捕捉性能について、以下の評価基準に基づき評価した。
【0054】
[表面抵抗値]
サトテックデジタル表面抵抗計SR-496(立紳有限公司製)を用いて誘電体部の表面抵抗値の測定を行った。
[重量]
導電部断面径が2mmφ、被覆体断面径が4(3.95)mmφの構成における1mあたりの単重を測定した。
◎:15g/m未満であった。
〇:30g/m未満であった。
×:30g/m以上であった。
[二次加工性]
二次加工性を考慮し、どの程度の力で曲げることができるかを測定した。
◎:固定部材へそのまま曲げて取り付けができ、破損もしなかった
〇:固定部材へ、加熱などの処理により曲げて取り付けができ、破損もしなかった。
×:固定部材へ曲げて取り付けできず、破損してしまった。
[耐候性]
サンシャインウェザーメーターS300(乃至S80)を用いて、耐候試験を行い、被覆部の表面状態を観察した。
◎:SWM3,000h以上でも被覆部にクラック発生無し。
〇:SWM500h以上3,000h未満で被覆部にクラック発生。
×:SWM500h未満で被覆部にクラック発生。
[通電性]
カードハイテスタ(日置電機製)で、通電確認を行った。
◎:通電を確認した。
×:通電が確認できなかった。
[捕捉性能]
図2に示すように、5mmの間隙で、棒状部材を設置し、交互に正負の印加(3~7kV)を行い、ショウジョウバエを通過させたときの捕捉を確認した。
◎:ショウジョウバエを捕捉でき、風を当ててもショウジョウバエが飛ばされない。
〇:ショウジョウバエを捕捉できた。
×:ショウジョウバエを捕捉できなかった。
【0055】
3.結果
各評価結果を下記表1に示す。
【0056】
【0057】
4.考察
実施例1~7の静電場スクリーン用棒状部材は、比較例1~3の棒状部材と比較して、軽量であり、取り扱い性に優れていた。また、実施例1~7は、比較例1~3の棒状部材と比較しても、通電性や捕獲性能に劣ることはなかった。なお、比較例4は軽量であるものの、通電不可能であるため、静電場スクリーンに用いることはできなかった。
【0058】
また、二次加工性まで考慮すると、実施例4、4´、6及び7が優れていた。更に、耐候性の観点からは、実施例2、2´、3´、4´、及び5´~7が優れていた。
本発明によれば、軽量で、取り扱い性に優れた静電場スクリーン用棒状部材及びその製造方法を提供することができる。したがって、従来技術と比較して、適応箇所が限られることなく、その他展開も容易であるため、幅広く活用できることが期待される。