(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144629
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】昆虫交尾促進装置及び昆虫交尾促進方法
(51)【国際特許分類】
A01K 67/00 20060101AFI20231003BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20231003BHJP
F21V 7/22 20180101ALI20231003BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231003BHJP
【FI】
A01K67/00
F21S2/00 600
F21V7/22
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051704
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】512224729
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 智博
(72)【発明者】
【氏名】大福 高史
(72)【発明者】
【氏名】笠井 浩司
(57)【要約】
【課題】人工光のみを用いた場合でも双翅目昆虫の交尾を確実に促進して繁殖効率を向上できる、昆虫交尾促進装置を、提供すること。
【解決手段】ケージ1に収容された双翅目昆虫の交尾を促進する昆虫交尾促進装置10であって、ケージ1内に可視光を含む光を照射する照射光源2と、照射光源2から照射された光の内の緑色~赤色の波長の光をケージ1内に向けて反射する反射部材3と、を備えている、ことを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケージに収容された双翅目昆虫の交尾を促進する昆虫交尾促進装置であって、
前記ケージ内に可視光を含む光を照射する照射光源と、
前記照射光源から照射された光の内の緑色~赤色の波長の光を前記ケージ内に向けて反射する反射部材、又は、緑色~赤色の波長の光を前記ケージ内に向けて発する発光部材と、
を備えている、
ことを特徴とする昆虫交尾促進装置。
【請求項2】
前記反射部材は、緑色又は赤色を呈する部材である、
請求項1記載の昆虫交尾促進装置。
【請求項3】
前記反射部材は、前記ケージの、内部又は内壁面又は外壁面又は外部に、配置されている、
請求項1又は2に記載の昆虫交尾促進装置。
【請求項4】
前記反射部材は、前記ケージの壁体自体で構成されている、
請求項1又は2に記載の昆虫交尾促進装置。
【請求項5】
前記反射部材は、緑色又は赤色を呈する、紙又は板であり、前記ケージの外壁面に設けられている、
請求項1記載の昆虫交尾促進装置。
【請求項6】
前記発光部材は、緑色又は赤色の光を発する発光体である、
請求項1記載の昆虫交尾促進装置。
【請求項7】
前記発光部材は、前記ケージの、内部又は内壁面又は外壁面又は外部に、配置されている、
請求項1又は5に記載の昆虫交尾促進装置。
【請求項8】
前記発光部材は、前記ケージの壁体自体で構成されている、
請求項1又は5に記載の昆虫交尾促進装置。
【請求項9】
前記発光部材は、緑色又は赤色の光を発する照明であり、前記ケージの外部に設けられている、
請求項1記載の昆虫交尾促進装置。
【請求項10】
前記双翅目昆虫は、アメリカミズアブである、
請求項1記載の昆虫交尾促進装置。
【請求項11】
ケージに収容された双翅目昆虫の交尾を促進する昆虫交尾促進方法であって、
前記ケージ内に可視光を含む光を照射する照射工程と、
照射された光の内の緑色~赤色の波長の光を前記ケージ内に向けて反射する反射工程、又は、緑色~赤色の波長の光を前記ケージ内に向けて発する発光工程と、
を含んでいる、
ことを特徴とする昆虫交尾促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双翅目昆虫の交尾を促進する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
双翅目昆虫、特にアメリカミズアブは、将来のタンパク質危機を回避する可能性を有する昆虫であり、それ故、世界各地においては、その大量生産技術の開発が進んでいる。従来から、アメリカミズアブの成虫の交尾促進には、光が必要であること、及び、光源として太陽光が適していることが、知られている。例えば、下記の非特許文献1には、人工光に太陽光を併用した場合が、人工光のみの場合に比して、産卵数及び受精卵数が増加することが、示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Small-scale rearing of the black soldier fly, Hermetia illucens (Diptera: Stratiomyidae), in the laboratory: low-cost and year-round rearing, November 2015 Applied Entomology and Zoology 51(1), DOI:10.1007/s13355-015-0376-1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしなから、アメリカミズアブを人工環境で通年繁殖させる場合において、太陽光に依存した交尾促進方法では、季節や天候の変化に因る日照量の変化によって、採卵量が大きく変化する恐れがある。それ故、人工光のみを用いた交尾促進方法が、望まれている。
【0005】
本発明は、人工光のみを用いた場合でも双翅目昆虫の交尾を確実に促進して繁殖効率を向上できる、装置及び方法を、提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、ケージに収容された双翅目昆虫の交尾を促進する昆虫交尾促進装置であって、
前記ケージ内に可視光を含む光を照射する照射光源と、
前記照射光源から照射された光の内の緑色~赤色の波長の光を前記ケージ内に向けて反射する反射部材、又は、緑色~赤色の波長の光を前記ケージ内に向けて発する発光部材と、
を備えている、
ことを特徴としている。
【0007】
本発明の第2態様は、ケージに収容された双翅目昆虫の交尾を促進する昆虫交尾促進方法であって、
前記ケージ内に可視光を含む光を照射する照射工程と、
照射された光の内の緑色~赤色の波長の光を前記ケージ内に向けて反射する反射工程、又は、緑色~赤色の波長の光を前記ケージ内に向けて発する発光工程と、
を含んでいる、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、人工光のみを用いた場合でも双翅目昆虫の交尾を確実に促進して繁殖効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【
図3】第1実施形態の第1変形例の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【
図4】第1実施形態の第2変形例の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【
図5】第1実施形態の第3変形例の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【
図6】第1実施形態の第4変形例の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【
図7】第1実施形態の第5変形例の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【
図8】第1実施形態の第6変形例の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【
図9】第1実施形態の第7変形例の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【
図10】第1実施形態の第8変形例の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【
図11】第1実施形態の第9変形例の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【
図12】本発明の第2実施形態の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。本実施形態の昆虫交尾促進装置10は、ケージ1に収容された双翅目昆虫の交尾を促進する装置であり、ケージ1内に可視光を含む光を照射する照射光源2と、照射光源2から照射された光の内の赤色の波長の光をケージ1内に向けて反射する反射部材3と、を備えている。ここで、赤色の波長とは、590~780nmである。また、本実施形態における双翅目昆虫は、アメリカミズアブである。
【0011】
ケージ1は、6個の壁体で構成された直方体の形態を有している。各壁体は、
図2に示されるように、矩形のフレーム11に薄いメッシュ体12が張り渡されて構成されている。メッシュ体12の周縁部は、フレーム11に対して、ビス等の締結具又は接着剤によって、固定されている。フレーム11は、樹脂、木材、又は金属等でできている。メッシュ板12は、天然繊維、合成繊維、又は金属繊維等でできている。メッシュ板12は、空気及び光を透過させるが、昆虫は通過させないように、構成されている。
【0012】
照射光源2は、人工光を照射する光源であり、可視光を含む光を照射する光源である。照射光源2は、可視光だけでなく紫外光も含む光を照射してもよい。照射光源2としては、既存の照明を使用できる。照射光源2から照射される光の波長は、紫外光を含む場合は300~780nmであり、可視光のみを含む場合は380~780nmである。
【0013】
反射部材3は、赤色を呈する部材であり、具体的には、赤色を呈する紙(すなわち赤色紙)である。なお、紙の代わりに板(すなわち赤色板)を使用してもよい。
【0014】
本実施形態では、
図1に示されるように、照射光源2は、ケージ1の左壁体131に対向しており、左壁体131を通してケージ1内に水平方向から光を照射するように、設けられている。また、反射部材3である赤色紙は、ケージ1の右壁体132の外壁面の全面を覆うように設けられている。したがって、本実施形態では、照射光源2と反射部材3とが対向している。なお、
図1では、反射部材3は、右壁体132の外壁面から離れているように示されているが、これは、理解を容易にするために示したにすぎず、実際は、反射部材3は、右壁体132の外壁面に密着している。反射部材3である赤色紙は、周縁部をフレーム11に固着することによって右壁体132に取り付けられるのが、好ましい。
【0015】
本実施形態の装置10によれば、ケージ1に収容されたアメリカミズアブに対して、照射光源2からの可視光を含む光が照射されるとともに、その照射された光が反射部材3によってケージ1内に向けて反射されることによって赤色の波長の光も更に照射される。すなわち、上記構成の装置10によれば、アメリカミズアブに対して、赤色の波長の光を、照射光源2から照射された光のみの場合に比して、多量に照射できる。その結果、反射部材3を備えていない場合すなわち照射光源2から照射された光が反射されない場合に比して、アメリカミズアブの交尾を促進できる。
【0016】
すなわち、本実施形態の装置10は、ケージ1内に可視光を含む光を照射する照射工程と、照射された光の内の赤色の波長の光をケージ1内に向けて反射する反射工程と、を含んでいる、昆虫交尾促進方法を、実施している。
【0017】
そして、本実施形態の装置10は、照射光源2という人工光のみを使用しているので、ケージ1内に光を安定して照射できる。それ故、本実施形態の装置10によれば、アメリカミズアブの交尾を確実に促進できる。
【0018】
[第1実施形態の変形構成]
第1実施形態の装置10は、以下の変形構成を任意に一つ以上採用してもよく、それによっても、上記と同等又はそれ以上の効果を発揮できる。
【0019】
(1)反射部材3として、赤色の波長の光を反射する部材に代えて、緑色の波長の光を反射する部材を使用してもよい。具体的には、緑色を呈する紙又は板(すなわち緑色紙又は緑色板)を使用してもよい。ここで、緑色の波長とは、500~570nmである。
【0020】
(2)反射部材3は、1個の壁体の外壁面の「全面」を覆うように設けられる代わりに、外壁面の「一部」のみを覆うように設けられてもよい。ここで、「一部」とは、外壁面の25%以上100%未満である。もちろん、100%すなわち「全面」が最も好ましい。
【0021】
(3)反射部材3は、右壁体132以外の他の壁体に設けられてもよい。すなわち、照射光源2と反射部材3との位置関係は、
図1のように正対していなくてもよい。例えば、
図3の装置10では、反射部材3は、上壁体133に設けられている。なお、反射部材3は、下壁体134、前壁体135、又は後壁体136に、設けられてもよい。
【0022】
(4)反射部材3は、壁体の外壁面ではなく、壁体の外部に設けられてもよい。例えば、
図4の装置10では、反射部材3は、ケージ1の外部において照射光源2に対して斜めに位置している。
【0023】
(5)照射光源2は、ケージ1内に、鉛直方向又は斜め方向から光を照射するように、設けられてもよい。例えば、
図5の装置10では、照射光源2は、ケージ1内に鉛直方向から光を照射するように、設けられている。なお、
図5では、反射部材3は、下壁体134に設けられているが、他の壁体に設けられてもよい。
【0024】
(6)反射部材3は、複数個の壁体の外壁面に設けられてもよい。例えば、
図6の装置10では、反射部材3は、5個の壁体132、133、134、135、136に設けられている。
【0025】
(7)反射部材3としては、赤色の波長の光を反射する部材と、緑色の波長の光を反射する部材とを、併用してもよい。例えば、反射部材3を1個の壁体のみに設ける場合には、壁体の外壁面を赤色紙と緑色紙とで分けて覆ってもよい。又は、反射部材3を複数の壁体に設ける場合には、壁体毎に、赤色紙と緑色紙とを使い分けてもよい。
【0026】
(8)反射部材3は、ケージ1の壁体の「外壁面」ではなく「内壁面」に設けられてもよい。例えば、
図7の装置10では、反射部材3は、右壁体132の内壁面に、設けられている。
【0027】
(9)反射部材3は、ケージ1の壁体自体で構成されてもよい。例えば、
図8の装置10では、右壁体132自体が反射部材3を構成している。具体的には、右壁体132のメッシュ体12が、例えば、赤色塗料でコーティングされた金属繊維からなっている。
【0028】
(10)反射部材3は、ケージ1の「外壁面」、「内壁面」、及び「外部」ではなく、ケージ1の「内部」に、設けられてもよい。例えば、
図9の装置10では、ケージ1内に、4個の円柱体からなる反射部材3が設けられている。なお、
図9では、ケージ1を透視して反射部材3を示している。反射部材3は、下壁体134上に固定されることによって、又は、上壁体133から吊り下げられることによって、又は、その他の方法によって、「内部」に設けられている。この円柱体は、例えば、表面に赤色又は緑色の塗料が塗布されることによって、又は、表面に赤色又は緑色を呈する紙又は板が貼り付けられることによって、表面が赤色又は緑色を呈している。反射部材3は、1個以上であれば、4個に限らない。また、反射部材3は、円柱体に限らず、表面が赤色又は緑色を呈していれば、立方体、三角錐などの任意の形態でもよい。
【0029】
(11)ケージ1は、直方体の形態に限らず、他の形態を有していてもよい。例えば、
図10の装置10では、ケージ1は、円筒体の形態を有している。そして、この装置10では、反射部材3は、ケージ1の右壁体132の外壁面の全面を覆うように設けられている。なお、反射部材3は、
図11に示されるように、ケージ1の円筒壁体101の外壁面を覆うように、設けられてもよい。又は、反射部材3は、ケージ1の「外壁面」ではなく、ケージ1の「内壁面」又は「外部」又は「内部」に、設けられてもよい。なお、
図11では、反射部材3を透視してケージ1を示している。
【0030】
(12)照射光源2は、人工光だけでなく太陽光も併せて照射してもよい。
【0031】
[第2実施形態]
図12は、本発明の第2実施形態の昆虫交尾促進装置の斜視略図である。本実施形態の昆虫交尾促進装置10は、ケージ1に収容された双翅目昆虫の交尾を促進する装置であり、ケージ1内に可視光を含む光を照射する照射光源2と、赤色の波長の光をケージ1内に向けて発する発光部材4と、を備えている。ここで、赤色の波長とは、590~780nmである。また、本実施形態における双翅目昆虫は、アメリカミズアブである。
【0032】
ケージ1及び照射光源2は、第1実施形態と同じであり、採用できる変形構成も、第1実施形態と同じである。
【0033】
発光部材4は、赤色の光を発する発光体であり、具体的には赤色照明であり、より具体的には赤色LEDである。
【0034】
本実施形態では、
図12に示されるように、照射光源2は、ケージ1の左壁体131に対向しており、左壁体131を通してケージ1内に水平方向から光を照射するように、設けられている。また、発光部材4である赤色LEDは、ケージ1の外部に、光拡散板41を介して右壁体132に対向するように、設けられている。すなわち、ここでは、照射光源2と発光部材4との位置関係は、正対している。なお、光拡散板41は無くてもよいが、有るのが好ましい。
【0035】
本実施形態の装置10によれば、ケージ1に収容されたアメリカミズアブに対して、照射光源2からの可視光を含む光が照射されるとともに、発光部材4からケージ1内に向けて赤色の波長の光も、照射される。すなわち、上記構成の装置10によれば、アメリカミズアブに対して、赤色の波長の光を、照射光源2から照射された光のみの場合に比して、多量に照射できる。その結果、発光部材4を備えていない場合すなわち照射光源2から照射された光のみの場合に比して、アメリカミズアブの交尾を促進できる。
【0036】
すなわち、本実施形態の装置10は、ケージ1内に可視光を含む光を照射する照射工程と、赤色の波長の光をケージ1内に向けて発する発光工程と、を含んでいる、昆虫交尾促進方法を、実施している。
【0037】
そして、本実施形態の装置10は、照射光源2及び発光部材4という人工光のみを使用しているので、ケージ1内に光を安定して照射できる。それ故、本実施形態の装置10によれば、アメリカミズアブの交尾を確実に促進できる。
【0038】
[第2実施形態の変形構成]
第2実施形態の装置10は、以下の変形構成を任意に一つ以上採用してもよく、それによっても、上記と同等又はそれ以上の効果を発揮できる。
【0039】
(1)発光部材4として、赤色の波長の光を発光する部材に代えて、緑色の波長の光を発光する部材を使用してもよい。具体的には緑色照明、より具体的には緑色LEDを、使用してもよい。ここで、緑色の波長とは、500~570nmである。
【0040】
(2)照射光源2と発光部材4との位置関係は、
図12のように正対していなくてもよい。すなわち、発光部材4は、右壁体132ではなく、下壁体134、前壁体135、又は後壁体136に、対向するように、設けられてもよい。
【0041】
(3)発光部材4は、1個の壁体に対向して複数個設けられてもよい。
【0042】
(4)発光部材4は、複数個の壁体の「外部」に、すなわち、複数個、設けられてもよい。例えば、発光部材4は、5個の壁体132、133、134、135、136に、それぞれ対向して、設けられてもよい。
【0043】
(5)発光部材4としては、赤色の波長の光を発光する部材と、緑色の波長の光を発光する部材とを、併用してもよい。例えば、発光部材4を1個の壁体のみに設ける場合には、1個の壁体に対向するように赤色LEDと緑色LEDとを配置してもよい。又は、発光部材4を複数の壁体に対向して設ける場合には、壁体毎に、赤色LEDと緑色LEDとを使い分けてもよい。
【0044】
(6)発光部材4は、壁体の「外部」に限らず、「外壁面」、「内壁面」、又は「内部」に、設けられてもよい。
【0045】
(7)発光部材4は、ケージ1の壁体自体で構成されてもよい。例えば、右壁体132自体が発光部材4を構成してもよい。具体的には、右壁体132のメッシュ体12が、例えば、赤色又は緑色の波長の光を発光する光ファイバーからなっている。
【0046】
[他の実施形態]
第1及び第2実施形態では、アメリカミズアブを対象としているが、本発明は、双翅目昆虫であれば、アメリカミズアブ以外の昆虫、例えば、イエバエ科、ミギワバエ科、ミバエ科、ハナアブ科等の昆虫にも、同様に、適用できる。
【0047】
[実施例1、2及び比較例1、2]
図1の装置10を使用して、下記条件の下で下記試験方法を実行した。反射部材3として、赤色紙を使用した場合を実施例1とし、緑色紙を使用した場合を実施例2とし、青色紙を使用した場合を比較例1とし、黒色紙を使用した場合を比較例2とした。
【0048】
(条件)
・照射光源2
・人工太陽照明(セリック株式会社製、XC-500BF)
放射波長域300~780nm
・照射光の光量子束密度
・ケージ1内の前部:302μmol・m-2・s-1
・ケージ1内の後部:212μmol・m-2・s-1
・ケージ1
・縦×横×高さ:30×30×30cm
【0049】
(試験方法)
ケージ1内に、アメリカミズアブの成虫(性比不明)を100頭収容し、照射光源2から光を照射し、照射から5分後の交尾数を数えた。これを2回行って、交尾数の平均値を求めた。
【0050】
(結果)
結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
表1から明らかなように、実施例1、2によれば、比較例1、2に比して、交尾数を増大できる。なお、比較例2では、照射光源2から照射された光は、黒色紙に吸収されるので、ケージ1内で反射されることはなく、したがって、照射光源2から照射された光のみがアメリカミズアブに照射されることとなる。すなわち、比較例2は、照射光源2から照射される光のみの場合を示している。
【0053】
[実施例3及び比較例3、4]
図6の装置10を使用して、下記条件の下で下記試験方法を実行した。反射部材3として、緑色紙を使用した場合を実施例3とし、青色紙を使用した場合を比較例3とし、黒色紙を使用した場合を比較例4とした。
【0054】
(条件)
・照射光源2
・人工太陽照明(セリック株式会社製、XC-100BF)
放射波長域300~780nm
・ケージ1
・縦×横×高さ:30×30×30cm
【0055】
(試験方法)
ケージ1内に、アメリカミズアブの雄成虫50頭及び雌成虫50頭を収容し、照射光源2から光を照射し、照射から15分後の交尾数を数えた。これを3回行って、交尾数の平均値を求めた。
【0056】
(結果)
結果を表2に示す。
【0057】
【0058】
表2から明らかなように、実施例3によれば、比較例3、4に比して、交尾数を増大できる。なお、比較例4は、比較例2と同様の場合を示していると理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の昆虫交尾促進装置は、人工光のみを用いた場合でも双翅目昆虫の交尾を確実に促進して繁殖効率を向上できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0060】
1 ケージ
2 照射光源
3 反射部材
4 発光部材
10 昆虫交尾促進装置
131~136 壁体