(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144634
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】カウル取付構造
(51)【国際特許分類】
B62J 23/00 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B62J23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051712
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【弁理士】
【氏名又は名称】池見 智治
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】柏原 健
(57)【要約】
【課題】カウルとヘッドランプとの取付け誤差を低減することを目的とする。
【解決手段】カウル取付構造30は、乗物本体11へのカウル60の取付構造であって、前記乗物本体11に固定されるステー32と、前記ステー32に対して角度調整可能に支持されるランプ支持体40と、前記ランプ支持体40に支持されるヘッドランプ50と、前記ランプ支持体40に固定され、前記ヘッドランプ50の外周を覆うカウル60と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物本体へのカウル取付構造であって、
前記乗物本体に固定されるステーと、
前記ステーに対して角度調整可能に支持されるランプ支持体と、
前記ランプ支持体に支持されるヘッドランプと、
前記ランプ支持体に固定され、前記ヘッドランプの外周を覆うカウルと、
を備える、カウル取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のカウル取付構造であって、
前記ランプ支持体が、前記ステーに対して前記乗物本体に予め定める第1方向に延びる第1エーミング軸周りに角度調整可能に支持され、
前記ランプ支持体は、前記第1方向に間隔をあけて配置される一対の揺動支持部分と、前記第1エーミング軸周りの揺動量を設定する設定部分とを含み、
前記カウルは、少なくとも前記揺動支持部分を前記第1方向に沿った外側から覆う、カウル取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載のカウル取付構造であって、
前記ランプ支持体は、前記ヘッドランプを前記第1方向と異なる第2方向に延びる第2エーミング軸周りに角度調整可能に支持するランプ接続部分をさらに含み、
前記第1方向は前記乗物本体の幅方向に延びる、カウル取付構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカウル取付構造であって、
前記ランプ支持体は、前記ヘッドランプの外周を覆う環状部分を含み、
前記カウルは、前記環状部分を前方から覆うカバー部分を含む、カウル取付構造。
【請求項5】
請求項4に記載のカウル取付構造であって、
前記環状部分は前記カウルよりも肉厚な部分を含む、カウル取付構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のカウル取付構造であって、
前記カウルは、前記ランプ支持体とは別部品であり、
前記ランプ支持体は、前記カウルを固定する固定部を含む、カウル取付構造。
【請求項7】
請求項6に記載のカウル取付構造であって、
前記ランプ支持体は、前記ヘッドランプの外周を覆う環状部分を含み、
前記環状部分は、周方向に間隔をあけた複数個所に前記固定部を有する、カウル取付構造。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のカウル取付構造であって、
前記ランプ支持体は、前記ヘッドランプの外周を覆う環状部分を含み、
前記カウルと前記環状部分とは、径方向に互いに重なるラップ部分を有する、カウル取付構造。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のカウル取付構造であって、
前記カウルとは別部品であり、少なくとも1個所において前記固定部に固定されているウインドシールドをさらに備える、カウル取付構造。
【請求項10】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のカウル取付構造であって、
前記ランプ支持体は、前記ステーに角度調整可能に支持される第1支持部品と、前記第1支持部品とは別部品であり、前記第1支持部品の前方に固定されると共に前記ヘッドランプを支持する第2支持部品とを含み、
前記カウルと前記第2支持部品とが1つの樹脂部品である、カウル取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、カウル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自動二輪車のヘッドランプ取付構造を開示している。ヘッドランプは、光軸調整を可能とするために、車体に対して相対変位するように支持される。特許文献1において、ヘッドランプの周囲を囲むようにカウルが配置されている。カウルは、車体に固定されている。このため、ヘッドランプは、カウルに対して相対変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、車体に対してカウル及びヘッドランプが別々に取付けられるため、取付位置のばらつきが大きくなる恐れがある。取付位置のばらつきが大きくなると、意匠性に影響を与える恐れがある。
【0005】
そこで本開示は、カウルとヘッドランプとの取付け誤差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、カウル取付構造は、乗物本体へのカウル取付構造であって、前記乗物本体に固定されるステーと、前記ステーに対して角度調整可能に支持されるランプ支持体と、前記ランプ支持体に支持されるヘッドランプと、前記ランプ支持体に固定され、前記ヘッドランプの外周を覆うカウルと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
このカウル取付構造によると、ランプ支持体に、ヘッドランプとカウルとの両方が支持されることで、ヘッドランプとカウルとの相対的な位置ずれを防ぐことができる。これによってカウルとヘッドランプとの取付け誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るカウル取付構造及びこれを備える自動二輪車を示す側面図である。
【
図3】ヘッドランプ及びランプ支持体を示す正面図である。
【
図4】ヘッドランプが乗り物本体に角度調整可能に支持される様子を示す断面図である。
【
図5】ヘッドランプが乗り物本体に角度調整可能に支持される様子を示す断面図である。
【
図6】ランプ支持体及びカウルを示す断面図である。
【
図7】変形例に係るカウル取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係るカウル取付構造について説明する。カウル取付構造は乗物に適用される。乗物は例えば、自動二輪車などの運転者がシートに跨って運転操作される鞍乗型乗物である。
【0010】
<自動二輪車について>
カウル取付構造を備える自動二輪車の一例について説明する。
図1は、実施形態に係るカウル取付構造30及びこれを備える自動二輪車10を示す概略側面図である。自動二輪車10は、乗物本体11と、前輪14と、後輪16と、ハンドル装置18と、カウル取付構造30とを備える。以下の説明において、上下、前後及び左右について言及する場合、各方向は、次のように定義される。まず、自動二輪車10の前輪14及び後輪16が路面に接地する側が下であり、下とは反対側が上である。また、自動二輪車10が走行する際の走行方向が前であり、前とは反対側が後ろである。さらに、運転者が自動二輪車10に搭乗した状態で、当該運転者を基準とする左右が自動二輪車10の左右である。本実施形態では左右方向を車幅方向(乗物本体11の幅方向)として説明することがある。
【0011】
乗物本体11は、フレーム12とステアリングシャフト13aとアッパーブラケット13bとアンダーブラケット13cとフロントフォーク13dとを備える。フレーム12は、ヘッドパイプ12aと、メインフレーム12bを備える。ヘッドパイプ12aは、フレーム12のうちの前に位置する。メインフレーム12bは、ヘッドパイプ12aから左右に分れつつ後方に延在している。ステアリングシャフト13aはヘッドパイプ12aに回転可能に挿通されている。アッパーブラケット13b及びアンダーブラケット13cはステアリングシャフト13aに固定されている。フロントフォーク13dの上部は、アッパーブラケット13b及びアンダーブラケット13cに固定されている。フロントフォーク13dの下部は、アンダーブラケット13cよりも下方に向けて延在する。
【0012】
前輪14は、フロントフォーク13dの下端に回転可能に支持されている。通常、フロントフォーク13dには、フロントサスペンション13eが付いている。フロントサスペンション13eは、ショックアブソーバーとコイルスプリングとを含んでおり、前輪14の振動や衝撃を抑制する役割を果す部材である。後輪16は、スイングアームなどを介してフレーム12に回転可能に支持されている。本開示において、固定との語は、角変位を許容しないで連結する構造を含むものであり、一体部品などの場合も含む。また支持との語は、角変位を許容して連結する構造を含む。
【0013】
ハンドル装置18は、アッパーブラケット13b又はフロントフォーク13dによって支持されている。このハンドル装置18を操作することで、ステアリングシャフト13a、アッパーブラケット13b、アンダーブラケット13c、フロントフォーク13d及び前輪14がフレーム12に対して操舵回転する。ステアリングシャフト13a及びハンドル装置18の近傍に、計器類19a及び方向指示器19bが配置される。計器類19aは例えば、アンダーブラケット13cの上方に支持される。また方向指示器19bは、車幅方向に沿って両側に延びる。
【0014】
カウル取付構造30は、フロントフォーク13dの前方に配置される。カウル取付構造30は、ハンドル装置18による操舵回転時に、フロントフォーク13dと一体的に動くように乗物本体11に取付けられる。
【0015】
このほか、自動二輪車10は、自動二輪車10を走行させるための駆動力を発生させる動力機関20、動力機関20が発生した回転駆動力を回転速度を変えて伝達する変速機21、変速機21の回転出力を駆動輪に伝達する動力伝達機構22、乗員が着座可能なシート23、計器類19a及び方向指示器19bなどの電装品に供給される電力を蓄えるバッテリ24などを備えていてもよい。動力機関20は、特に限定されるものではなく、例えば、内燃機関である場合、電気モータである場合又はその両方である場合などが考えられる。動力伝達機構22は、特に限定されるものではなく、例えば、変速機21から突出する出力シャフトに設けられた歯車と後輪16に設けられた歯車とに巻掛けられたチェーンである場合、歯付ベルト等の環状ベルトである場合、又はドライブシャフト及びベベルギヤ等を備えるシャフトドライブ機構である場合などが考えられる。また、自動二輪車10は、動力機関の種類に応じて、内燃機関用の燃料を保管する燃料タンクを備えていてもよいし、電気モータ用の電力を蓄電する駆動用バッテリを備えていてもよい。
【0016】
<カウル取付構造>
カウル取付構造についてより具体的に説明する。
図2は、カウル取付構造30を示す分解斜視図である。
図3は、ヘッドランプ50及びランプ支持体40を示す正面図である。
図4は、ヘッドランプ50が乗り物本体に角度調整可能に支持される様子を示す断面図である。
図5は、ヘッドランプ50が乗り物本体に角度調整可能に支持される様子を示す断面図である。
図6は、ランプ支持体40及びカウル60を示す断面図である。
図4の断面図は、
図3のIV-IV線に沿った位置における断面図である。
図5及び
図6の断面図は、
図3のV-V線に沿った位置における断面図である。
【0017】
カウル取付構造30は、乗物本体11へカウル60を取付けるための構造である。カウル取付構造30は、ステー32と、ランプ支持体40と、ヘッドランプ50と、カウル60と、ウインドシールド70とを備える。本実施形態では、カウル60は、ランプ支持体40とは別部品である。
【0018】
ステー32は、乗物本体11に固定される。ステー32は、フロントフォーク13dと一体的に動くように設けられている。ステー32は、フロントフォークとともに操舵回転する部分に固定されている。ステー32は、ハンドル装置18による操舵回転時に、フレーム12に対して回転する。例えば、ステー32は、アッパーブラケット13bに沿って延びるアッパー部分32aと、アンダーブラケット13cに沿って延びるロア部分32bと、アッパー部分32a及びロア部分32bをつなぐ連結部分32cとを含む。例えば、アッパー部分32aがアッパーブラケット13bにネジ又はリベットなどの締結部材によって固定されると共に、ロア部分32bがアンダーブラケット13cにネジ又はリベットなどの締結部材によって固定される。アッパー部分32a及びロア部分32bは車幅方向に延びる。連結部分32cは、フロントフォーク13dに沿って上下方向に延びる。連結部分32cは、アッパー部分32a及びロア部分32bの車幅方向における一端部同士を連結すると共に他端部同士を連結する。連結部分32cにランプ支持体40を支持する第1軸受部32dが設けられている。例えば、それぞれ曲げ加工された金属パイプ及び金属板が溶接加工されるなどして一体化されて、ステー32が形成される。例えば、金属板の部分に貫通孔が形成されて、第1軸受部32dとされる。
【0019】
ランプ支持体40は、ステー32に対して第1方向に延びる第1エーミング軸周りに角度調整可能に支持される。ランプ支持体40は、ヘッドランプ50を第2方向に延びる第2エーミング軸周りに角度調整可能に支持する。これにより、ヘッドランプ50は乗物本体11に固定されるステー32に対して、第1エーミング軸及び第2エーミング軸の2軸周りに角度調整可能である。第1エーミング軸周りの角度調整は、第1エーミングボルトB1が操作されることによって行われる。第2エーミング軸周りの角度調整は、第2エーミングボルトB2が操作されることによって行われる。第1方向及び第2方向は互いに異なる方向であり、乗物本体11に予め定める方向である。ここでは第1方向は、一対のフロントフォークが並ぶ方向である。第1方向は、乗物が直進状態においては乗物本体11の幅方向に相当する。第2方向は、ランプ支持体の角度によって変化する。第2方向は、第1方向に直交する方向である。第2方向は、ヘッドランプの光軸が水平に延びるようにランプ支持体が角変位された場合には、上下方向となる。第1エーミング軸は、ヘッドランプ50が上下に首振りする軸であり、第2エーミング軸はヘッドランプ50が左右に首振りする軸である。本実施形態では、ランプ支持体40は、第1支持部品42と第2支持部品44と固定ブラケット45とを含む。本実施形態では、第1支持部品42と第2支持部品44と固定ブラケット45とは、相互に別部品である。
【0020】
第1支持部品42は、ステー32に対して角度調整可能に支持される。第1支持部品42は第1支持部品本体42aと第1揺動支持部分42bと第1ボルト締結部42cと第2支持部品固定部42dとを有する。
【0021】
第1支持部品本体42aは、本実施形態では筒形状に形成され、前方開口42a1及び後方開口42a2を有する。前方開口42a1からヘッドランプ50の前部が前方に露出する。後方開口42a2からヘッドランプ50の配線Wが引出される。例えば、第1支持部品本体42aは、ヘッドランプ50に応じた形状に形成される。ここではヘッドランプ50が正面視円形状を有するため、第1支持部品本体42aは円筒状に形成される。またここでは後方開口42a2が前方開口42a1よりも小さい。従って、本実施形態では、第1支持部品本体42aは、前後に開口を有する円錐台筒形状に形成される。もっとも、第1支持部品本体42aは、前後に開口を有する円錐台筒形状に形成される必要はなく、任意の形状に形成可能である。例えば、第1支持部品本体は、一様な形状が軸方向に連続する筒形状に形成されてもよいし、径方向に貫通孔がある籠形状に形成されてもよい。
【0022】
第1揺動支持部分42bは、ステー32に対して第1エーミング軸回りに揺動可能に支持される部分である。第1揺動支持部分42bは一対設けられる。一対の第1揺動支持部分42bは、第1支持部品本体42aに第1方向に間隔をあけて配置される。ステー32は、一対の第1揺動支持部分42bのそれぞれに対応するように第1軸受部32dを一対含む。左方の連結部分32c及び右方の連結部分32cにそれぞれ第1軸受部32dが設けられて、一対の第1軸受部32dとされる。対応する第1軸受部32d及び第1揺動支持部分42bが第1回動ピンP1によって連結されることによって、第1揺動支持部分42bが第1軸受部32dに揺動可能に支持される。例えば、第1軸受部32dは、ステー32に形成された貫通孔を有する。また、第1揺動支持部分42bは、第1支持部品本体42aに形成された貫通孔と、当該貫通孔に嵌め込まれたグロメットとを有する。グロメットは、ゴム製の筒体と、筒体内にはめ込まれた金属製パイプとを有する。第1支持部品本体42aの貫通孔の軸方向、筒体の軸方向及び金属製パイプの軸方向が一致する。金属製パイプの一端にナットが固着されている。金属製パイプの他端にステー32が位置する。ステー32の外側から第1回動ピンP1としてのボルトが金属製パイプ内に挿入され、ナットに螺合する。
【0023】
第1ボルト締結部42cは、第1エーミングボルトB1の先端部が締結される部分である。第1ボルト締結部42cは、第1支持部品本体42aの周方向において、一対の第1揺動支持部分42bの間に位置する。ここでは、第1ボルト締結部42cは、第1支持部品本体42aの外周から径方向外側に向けて突出する。ここでは、第1ボルト締結部42cは、第1支持部品本体42aの前後方向に沿った中間部であって、上下方向に沿った下端部から下方に突出する。第1エーミングボルトB1は第1ボルト締結部42cから前方に向けて延びる。
【0024】
第2支持部品固定部42dは、第2支持部品44と固定される部分である。第2支持部品固定部42dは、第1支持部品本体42aの周方向において間隔をあけて複数設けられる。ここでは、第2支持部品固定部42dは、第1支持部品本体42aの周方向において間隔をあけて4つ設けられる。2つの第2支持部品固定部42dは、第1支持部品本体42aの中心よりも上方の位置で、幅方向に対称な位置に位置する。2つの第2支持部品固定部42dは、第1支持部品本体42aの中心よりも下方の位置で、幅方向に対称な位置に位置する。
【0025】
第2支持部品44は、第1支持部品42の前方に固定される。第2支持部品44は、ヘッドランプ50を第2エーミング軸周りに角度調整可能に支持する。第2支持部品44は、環状部分44aと第1支持部品固定部44bとカウル固定部44cと第2ヘッド支持部44dと第2軸受部44eと窓部44a2とラップ片44fとを有する。
【0026】
環状部分44aは、ヘッドランプ50の周囲を覆う。具体的には、ヘッドランプ50の径方向外側に離れて、ヘッドランプ外周を周方向に一周する。ヘッドランプ50のうち前端部分は、第1支持部品42の前方開口42a1よりも前方に突出する。当該突出部分の少なくとも一部が環状部分44aに覆われる。ここでは、当該突出部分の前端部分(レンズ53の前端部分)は、環状部分44aよりも前方に突出する。環状部分44aは後方から前方に向けて延びた後に、内向きかつ後方向きに延びるように曲がっている。環状部分44aの内縁部44a1は、レンズ53よりも大きい。内縁部44a1とレンズ53との間に隙間が生じている。環状部分44aの後端と第1支持部品本体42aの前端とは径方向にラップしている。
【0027】
第1支持部品固定部44bは、4つの第2支持部品固定部42dに対応するように4つ設けられる。4つの第1支持部品固定部44bは、環状部分44aのうち4つの第2支持部品固定部42dに対応する部分に位置する。ここではヘッドランプ50の中心よりも下方の2組の第2支持部品固定部42d及び第1支持部品固定部44bは、ネジ又はリベットによって固定される。また、ヘッドランプ50の中心よりも上方の2組の第2支持部品固定部42d及び第1支持部品固定部44bは、係止構造によって固定される。係止構造は、係止爪と係止受部とを有する。係止爪と係止受部とのうちいずれか一方が第1支持部品42に設けられ、いずれか他方が第2支持部品44に設けられる。
【0028】
カウル固定部44cは、カウル60が固定される部分である。環状部分44aのうち周方向に間隔をあけた複数個所にカウル固定部44cが設けられている。カウル固定部44cは、環状部分44aの外面から径方向外側に突出する。ここでは、4つのカウル固定部44cが設けられている。4つのカウル固定部44cのうち2つのカウル固定部44cは、環状部分44aの中心よりも左方に位置し、他の2つのカウル固定部44cは、環状部分44aの中心よりも右方に位置する。左方の2つのカウル固定部44cと、右方の2つのカウル固定部44cとは、環状部分44aの中心を通り上下に延びる線に沿って対称である。4つのカウル固定部44cのうち2つのカウル固定部44c1は、環状部分44aの中心よりも上方に位置し、他の2つのカウル固定部44c2は、環状部分44aの中心よりも下方に位置する。4つのカウル固定部44cは、環状部分44aの周方向において、4つの第1支持部品固定部44bと同様の位置に設けられている。
【0029】
第2ヘッド支持部44dは、第2エーミングボルトB2のヘッドB2aを支持する部分である。第2ヘッド支持部44dとして、環状部分44aに貫通孔が形成されている。当該貫通孔は、第2エーミングボルトB2のボルト部分と同じかそれよりも大きく、第2エーミングボルトB2のヘッドB2aよりも小さい。第2エーミングボルトB2は第2ヘッド支持部44dの前方から貫通孔に挿入される。第2ヘッド支持部44dは、環状部分44aのうち左方の2つのカウル固定部44cの間に位置する。
【0030】
第2軸受部44eは、ヘッドランプ50を支持する。第2軸受部44eは、環状部分44aの内面から後方に向けて突出する。第2軸受部44eは一対設けられる。一対の第2軸受部44eは、上下方向に離れて配置されている。一対の第2軸受部44eのうち上方の第2軸受部44eは、環状部分44aの周方向に沿って上方の2つのカウル固定部44cの間であって、狭い方の間に位置する。一対の第2軸受部44eのうち下方の第2軸受部44eは、環状部分44aの周方向に沿って下方の2つのカウル固定部44cの間であって、狭い方の間に位置する。
【0031】
窓部44a2は、環状部分44aの内縁部44a1の一部が凹んでいる部分である。窓部44a2は、ヘッドランプ50のフレーム固定部55cを前方に露出させる。
【0032】
ラップ片44fは、環状部分44aの曲部から前方に突出する。ラップ片44fは、環状部分44aと同様にヘッドランプ50の周りに環状に延びる。
図5に示すように、ここではラップ片44fのうち上方の部分の突出量が、下方部分の突出量よりも大きい。
【0033】
固定ブラケット45は、第1ヘッド支持部45aとステー固定部45bとを有する。
【0034】
第1ヘッド支持部45aは、第1エーミングボルトB1のヘッドB1aを支持する。第1ヘッド支持部45aとして固定ブラケット45を貫通する貫通孔が形成されている。当該貫通孔は、第1エーミングボルトB1のボルト部分と同じかそれよりも大きく、第1エーミングボルトB1のヘッドB1aよりも小さい。第1エーミングボルトB1は第1ヘッド支持部45aの前方から貫通孔に挿入される。第1ヘッド支持部45aは、第1ボルト締結部42cの前方かつ下方に位置する。
【0035】
ステー固定部45bは、ステー32に固定される部分である。ステー固定部45bは、第1ヘッド支持部45aから下方に延びる。ステー固定部45bは、ステー32のロア部分32bにネジ又はリベットなどによって固定される。ステー固定部45bは、複数設けられていてもよい。これにより、固定ブラケット45の回転が抑制される。例えば、ステー固定部45b及びステー32は、アンダーブラケット13cにまとめて固定されてもよい。固定ブラケット45を介さずにステー32のロア部分32bとアンダーブラケット13cとが固定された部分がステー固定部45bの両側に位置する。
【0036】
ランプ支持体40とステー32とは、第1エーミングボルトB1及び第1コイルばねS1を介して連結されている。第1ボルト締結部42cと第1ヘッド支持部45aは、ステー32に対するランプ支持体40の第1エーミング軸周りにおける揺動量を設定する第1設定部分として機能する。
【0037】
具体的には、第1エーミングボルトB1のボルト部分の先端部が第1ボルト締結部42cに締結され、第1エーミングボルトB1のヘッドB1aが第1ヘッド支持部45aに支持されている。第1ボルト締結部42cはランプ支持体40と一体的に動き、第1ヘッド支持部45aはステー32と一体的に動く。第1方向と交差する方向に延びる第1エーミングボルトB1が操作されて第1ボルト締結部42cにおける第1エーミングボルトB1の締結位置が変更されることによって、第1ボルト締結部42cと第1ヘッド支持部45aとの距離が変わり、ランプ支持体40がステー32に対して第1エーミング軸回りに揺動する。また、第1エーミングボルトB1のボルト部分のうち、第1ボルト締結部42cと第1ヘッド支持部45aとの間の部分が第1コイルばねS1に通されている。第1コイルばねS1の一端部は、第1ボルト締結部42cに支持され、他端部は第1ヘッド支持部45aに支持されている。第1コイルばねS1は、第1ボルト締結部42c及び第1ヘッド支持部45aを第1エーミングボルトB1の軸方向に沿って互いに逆向きに付勢している。第1エーミングボルトB1が操作されていないときに、第1ボルト締結部42cにおける第1エーミングボルトB1の締結位置の変更を第1コイルばねS1が抑制する。
【0038】
ヘッドランプ50は、ランプ支持体40に支持される。ヘッドランプ50は、光源51とリフレクタ52とレンズ53と環状フレーム55とを含む。ヘッドランプ50としては、特に限定されるものではなく、周知のヘッドランプを用いることができる。例えば、ここではヘッドランプ50が光源51からの出射光を、リフレクタ52で反射させて前方に照射するリフレクタ型のヘッドランプであるものとして説明されるが、ヘッドランプとして光源51からの出射光を、レンズで集光させて前方に照射するプロジェクタ型のヘッドランプが用いられてもよい。
【0039】
光源51は例えばLED(発光ダイオード)である。LEDに電力を供給する配線Wがヘッドランプ50から外に延びる。当該配線Wは、第1支持部品42の後方開口42a2から第1支持部品42の外に延び出て、バッテリ24などの電源に接続される。光源51はLEDである必要はなく、ハロゲンランプなどが用いられてもよい。
【0040】
リフレクタ52は光源51の光を前方に反射する。レンズ53は、光源51の前方に位置する。レンズ53は、光源51から前方に発する光及びリフレクタ52によって前方に反射された光を透過させる。リフレクタ52とレンズ53とは、前後方向に分かれて配置される。リフレクタ52とレンズ53とは例えば、係止部を介して係止してもよい。ここではヘッドランプ50において、リフレクタ52とレンズ53との係止部を含む部分が、径方向外側において環状に延びるフランジ54となっている。
【0041】
環状フレーム55は、リフレクタ52及びレンズ53の係止部を含むフランジ54を前後方向から挟持している。環状フレーム55は前後方向に分かれた2つの部材55a、55bを含む。2つの部材55a、55bはフレーム固定部55cによって固定されている。環状フレーム55は、第2揺動支持部分55d及び第2ボルト締結部55eを有する。
【0042】
フレーム固定部55cは、環状フレーム55の周方向に沿って間隔をあけて複数形成されている。フレーム固定部55cに締結されたボルト又はリベット等によって、環状フレーム55をなす2つの部材55a、55bが固定されている。
【0043】
第2揺動支持部分55dは、ランプ支持体40に対して第2エーミング軸回りに揺動可能に支持される部分である。第2揺動支持部分55dは一対設けられる。一対の第2揺動支持部分55dは、環状フレーム55に第2方向(上下方向)に間隔をあけて配置される。ランプ支持体40は、一対の第2揺動支持部分55dのそれぞれに対応するように第2軸受部44eを一対含む。対応する第2軸受部44e及び第2揺動支持部分55dが第2回動ピンP2によって連結されることによって、第2揺動支持部分55dが第2軸受部44eに揺動可能に支持される。例えば、第2軸受部44eは、環状部分44aから後方に突出する第1突出片と、第1突出片に対して第2方向(上下方向)に間隔をあけて対向する第2突出片とを有する。第1突出片及び第2突出片それぞれの対応する位置に貫通孔が形成されている。また、第2揺動支持部分55dは、環状フレーム55から後方に向けて突出する突出片と、当該突出片に形成された貫通孔と、当該貫通孔に嵌め込まれたグロメットとを有する。グロメットは、ゴム製の筒体と、筒体内にはめ込まれた金属製パイプとを有する。突出片の貫通孔の軸方向、筒体の軸方向及び金属製パイプの軸方向が一致する。第1突出片の外面にナットが固着されている。第1突出片及び第2突出片の間に第2揺動支持部分55dが位置する。第2突出片の外側から第2回動ピンP2としてのボルトが金属製パイプ内に挿入され、ナットに螺合する。
【0044】
第2ボルト締結部55eは、第2エーミングボルトB2の先端部が締結される部分である。第2ボルト締結部55eは、環状フレーム55の周方向において、一対の第2揺動支持部分55dの間に位置する。ここでは、第2ボルト締結部55eは、環状フレーム55から後方に向けて突出する。第2エーミングボルトB2は第2ボルト締結部55eから前方に向けて延びる。
【0045】
第2ヘッド支持部44d及び第2軸受部44eは、ヘッドランプ50を第1方向と異なる第2方向に延びる第2エーミング軸周りに角度調整可能に支持するランプ接続部分として機能する。
【0046】
ヘッドランプ50とランプ支持体40とは、第2エーミングボルトB2及び第2コイルばねS2を介して連結されている。第2ボルト締結部55eと第2ヘッド支持部44dは、ランプ支持体40に対するヘッドランプ50の第2エーミング軸周りにおける揺動量を設定する第2設定部分として機能する。
【0047】
具体的には、第2エーミングボルトB2のボルト部分の先端部が第2ボルト締結部55eに締結され、第2エーミングボルトB2のヘッドB2aが第2ヘッド支持部44dに支持されている。第2ボルト締結部55eはヘッドランプ50と一体的に動き、第2ヘッド支持部44dはランプ支持体40と一体的に動く。第2方向(上下方向)と交差する方向に延びる第2エーミングボルトB2が操作されて第2ボルト締結部55eにおける第2エーミングボルトB2の締結位置が変更されることによって、第2ボルト締結部55eと第2ヘッド支持部44dとの距離が変わり、ランプ支持体40がステー32に対して第2エーミング軸回りに揺動する。また、第2エーミングボルトB2のボルト部分のうち、第2ボルト締結部55eと第2ヘッド支持部44dとの間の部分が第2コイルばねS2に通されている。第2コイルばねS2の一端部は、第2ボルト締結部55eに支持され、他端部は第2ヘッド支持部44dに支持されている。第2コイルばねS2は、第2ボルト締結部55e及び第2ヘッド支持部44dを第2エーミングボルトB2の軸方向に沿って互いに逆向きに付勢している。第2エーミングボルトB2が操作されていないときに、第2ボルト締結部55eにおける第2エーミングボルトB2の締結位置の変更を第2コイルばねS2が抑制する。
【0048】
カウル60は、ランプ支持体40に固定される。カウル60は、ヘッドランプ50の外周を覆う。カウル60は、乗物の外殻を構成する意匠部品であってもよい。カウル60は、カバー部分60aと後方延出部分60bと支持体固定部60cとウインドシールド固定部60dとラップ片60eとを含む。本実施形態では、カウル60は、フロントフォークよりも前方に配置される。またランプ支持体40の少なくとも一部、具体的には、車幅方向外側から覆う。また本実施形態では、カウル60は、ステー32の車幅方向外側から覆う。
【0049】
カバー部分60aは、環状部分44aを前方から覆う。カバー部分60aの内縁部60a1は、環状部分44aの内縁部44a1よりも径方向内側に突出する。
【0050】
後方延出部分60bは、カバー部分60aの外縁から後方に向けて延出する。後方延出部分60bは、ランプ支持体40の外周を覆う。従って、後方延出部分60bは、ランプ支持体40の外側で、ヘッドランプ50の外周を覆っている。後方延出部分60bは、ステー覆い部60b1を有する。ステー覆い部60b1は、ステー32のうちランプ支持体40を第1エーミング軸回りに支持する部分(ここでは第1軸受部32d)を第1方向に沿った外側から覆う。従って、カウル60は、少なくとも第1揺動支持部分42bを第1方向に沿った外側から覆っている。
【0051】
カウル60には、上方に凹部60f、60gが形成されている。当該凹部60f、60gにウインドシールド70が配置される。また、カウル60には、両側方にも凹部60f、60gが形成されている。例えば、車幅方向に延びる方向指示器19bが、当該凹部60f、60gを通じてカウル60よりも外側に突出する。
【0052】
カウル60には、ヘッド露出孔60hが形成されている。ヘッド露出孔60hは、第2エーミングボルトB2の延在方向に沿って第2エーミングボルトB2の前方に位置する。ここではヘッド露出孔60hは、カバー部分60aの内縁部60a1よりも径方向外側に位置する。ヘッド露出孔60hは、カバー部分60aと後方延出部分60bとの交わる部分の辺りに位置する。ヘッド露出孔60hは、第2エーミングボルトB2のヘッドB2aを露出させるための貫通孔である。作業者は、ヘッド露出孔60hに調整用工具を挿し込んで第2エーミングボルトB2のヘッドB2aを操作することによって、第2エーミング軸回りの角度調整を行うことができる。
【0053】
支持体固定部60cは、ランプ支持体40に固定される部分である。支持体固定部60cは、第2支持部品44のカウル固定部44cに固定される。第2支持部品44の4つのカウル固定部44cに対応するように、4つの支持体固定部60cがカウル60に設けられる。4組の対応するカウル固定部44c及び支持体固定部60cは、ネジSC又はリベットなどによって締結されて固定される。4つの支持体固定部60cのうち上方の2つの支持体固定部60c1は、ウインドシールド70と一緒に固定される。4つの支持体固定部60cのうち下方の2つの支持体固定部60c2は、ウインドシールド70と一緒には固定されない。
【0054】
ウインドシールド固定部60dは、ウインドシールド70が固定される部分である。ウインドシールド固定部60dは、ヘッドランプ50の中心よりも上方の2つの支持体固定部60c1に対して後方の位置に設けられる。ここでは、2つの支持体固定部60c1には、ウインドシールド70も固定される。従って、支持体固定部60c1は、ウインドシールド固定部も兼ねる。2つの支持体固定部60c1及び2つのウインドシールド固定部60dは、凹部60fの周縁部に位置する。
【0055】
ラップ片60eは、カバー部分60aの中間部から後方に向けて突出する。カバー部分60aのラップ片60eは、第2支持部品44のラップ片44fと同様にヘッドランプ50の周りに環状に延びる。第2支持部品44のラップ片44fとカウル60のラップ片60eとが、径方向に重なってラップ部分WRをなしている。ここでは、カウル60のラップ片60eが第2支持部品44のラップ片44fよりもヘッドランプ50に近い。これらのラップ片44f、60eによるラップ部分WRがあることによって、ヘッドランプ50の光が第2支持部品44とカウル60との隙間から後方に漏れることが抑制される。
【0056】
より具体的には、これらのラップ片44f、60eは、第2支持部品44とカウル60との隙間に入ろうとするヘッドランプ50の光を遮る。また、ここではこれらのラップ片44f、60eの間に隙間が生じている。しかしながら、ヘッドランプ50の光が第2支持部品44又はカウル60などに反射されて、これらのラップ片44f、60eの隙間に入っても、ラップ部分WRがあることによって、光が後方まで達するためにより多くの反射を必要とする。特に、カウル60のラップ片60eが第2支持部品44のラップ片44fよりもヘッドランプ50に近いため、第2支持部品44のラップ片44fの先端とカウル60との隙間が、カウル60のラップ片60eの先端と第2支持部品44との間の隙間よりも前方、かつ、ヘッドランプ50から径方向に遠い位置に位置する。このため、第2支持部品44のラップ片44fの先端とカウル60との隙間を通過した光は、一旦前方に向かってカウル60のラップ片60eの先端と第2支持部品44との間の隙間を通過してから後方に向かう必要があり、後方に達するまでの間により多くの反射を必要とする。この反射回数の増加分、光の減衰量が大きくなるため、強い光が後方に達しにくい。
【0057】
上記したように、ここではラップ片44fのうちヘッドランプ50より上方部分の突出量が、ヘッドランプ50より下方部分の突出量よりも大きい。これにより、ヘッドランプ50の上側において、ヘッドランプ50の光が後方により漏れにくくなる。これにより、ヘッドランプ50の光が後方に漏れて、運転者の視界に達することがより抑制されやすい。ラップ片60eについても、同様に、ヘッドランプ50より上方部分の突出量が、ヘッドランプ50より下方部分の突出量よりも大きくてもよい。またラップ部分WRについても、同様に、ヘッドランプ50より上方部分における前後方向に沿ったラップ長さが、ヘッドランプ50より下方部分における前後方向に沿ったラップ長さよりも長くてもよい。ラップ片44f、60eは、周方向に沿って一定の突出量で突出していてもよい。
【0058】
ウインドシールド70は、カウル60とは別部品である。ウインドシールド70は自動二輪車10の前方から後方に向かう風を遮る。例えば、ウインドシールド70は、アッパーブラケット13bに支持される計器類19aの前方に配置される。ウインドシールド70は、ウインドシールド本体部70aと、外縁部70bと、カウル固定部70cとを含む。
【0059】
ウインドシールド本体部70aは、カウル60の凹部60fに位置する。ウインドシールド本体部70aにおいて、車幅方向に沿った中央部分が、車幅方向に沿った両側縁部よりも上方に位置する。また、ウインドシールド本体部70aにおいて、前後方向に沿った後方部分が、前後方向に沿った前方部分よりも上方に位置する。
【0060】
外縁部70bは、ウインドシールド本体部70aの外縁から外側に延びる。ここでは外縁部70bは、ウインドシールド本体部70aから前方及び両側方に延びる。外縁部70bは、カウル60における凹部60fの周縁部と重なる。外縁部70bはカウル60における凹部60fの周縁部よりも径方向に沿ってヘッドランプ50に近い。
【0061】
カウル固定部70cは、カウル60に固定される部分である。ここでは、カウル固定部70cは、4つ設けられている。4つのカウル固定部70cは外縁部70bに位置する。本実施形態において、ウインドシールド70は、少なくとも1個所においてランプ支持体40のカウル固定部44cにカウル60と一緒に固定されている。4つのカウル固定部70cは、2つのカウル固定部70c1と、2つのカウル固定部70c2とを有する。2つのカウル固定部70c1は、2つのカウル固定部70c2よりも前方に位置する。カウル固定部70c1は、カウル60の支持体固定部60c1及びランプ支持体40のカウル固定部70cと一緒にネジSC又はリベットによって固定される。2つのカウル固定部70c2は、カウル60のウインドシールド固定部60dに固定される。カウル固定部70c2及びウインドシールド固定部60dは、ランプ支持体40と一緒には固定されていない。
【0062】
環状部分44aはカウル60よりも肉厚な部分を含む。これにより、カウル60の肉厚が比較的薄い場合でも、環状部分44aによって、カウル60を補強できる。これにより、カウル60の肉厚を薄くすることによるカウル60の外観性向上と、環状部分44aよるカウル60の支持強度の向上とを両立できる。樹脂部品の射出成形品は、通常は、肉厚にすると成形の際に美観が低下する要因となりやすい。これに対して、本開示では、肉厚な環状部分44aが前方からカウル60のカバー部分60aによって覆われることで、美観低下の影響を防ぐことができる。同様に、ウインドシールド70は、カウル60よりも肉厚な部分を有する。これにより、カウル60の肉厚が比較的薄い場合でも、ウインドシールド70によって、カウル60を補強できる。例えば、カウル60における凹部60fの周縁部よりも径方向に沿ってヘッドランプ50に近い外縁部70bに肉厚な部分が設けられてもよい。
【0063】
以上のように構成されたカウル取付構造30によると、ヘッドランプ50を支持するランプ支持体40とカウル60とが一体に固定されることで、ヘッドランプ50とカウル60とが異なる部位で支持・固定される場合に比べて、ヘッドランプ50とカウル60との相対的な位置ずれを防ぐことができる。これによってカウル60とヘッドランプ50との取付け誤差を低減することができ、意匠性を向上することができる。またカウル60に対してヘッドランプ50が相対変位する場合に比べて、本実施形態では、上下方向の光軸調整の際には、ヘッドランプ50とカウル60とが一体に変位するため、ヘッドランプ50の光軸調整のための上下方向調整に起因するカウル60とヘッドランプ50との間の干渉を防ぐためのクリアランスを小さくすることができる。また、カウル60がランプ支持体40に固定されていることによって、カウル60を乗物本体11に固定する専用のブラケットを不要とすることができる。また、本開示では、カウル60自体がヘッドランプ50と共に乗物本体11に対して角変位する。この場合でも、カウル60が他部品と干渉することを防ぐために、カウル60とカウル60周辺の他部品であって角度調整時にカウル60と相対移動する部品(例えば、計器類19aの前方のカバー部品、及び、方向指示器19bなど)との間に、当該相対移動を許容する隙間が形成されている。
【0064】
また、本開示では、ランプ支持体40にカウル60及びウインドシールド70が固定されており、ステー32は、カウル60及びウインドシールド70を直接的には支持していない。このため、カウル及びウインドシールドを支持するステーと比べて、ステー32の構造を簡略化できる。
【0065】
また、ステー32が、ランプ支持体40を第1エーミング軸周りに角度調整可能に支持し、ランプ支持体40は、第1方向に間隔をあけて配置される一対の第1揺動支持部分42bと、第1エーミング軸周りの揺動量を設定する設定部分としての第1ボルト締結部42c及び第1ヘッド支持部45aを含む。これにより、ヘッドランプ50及びカウル60が第1エーミング軸周りに一緒に揺動するため、ヘッドランプ50とカウル60との第1方向に沿った隙間を抑えることができる。また、カウル60は、少なくとも第1揺動支持部分42bを第1方向に沿った外側から覆うステー覆い部60b1を有する。これにより、第1揺動支持部分42bがカウル60に隠れるため、意匠性を向上することができる。
【0066】
また、ランプ支持体40は、ヘッドランプ50を第2エーミング軸周りに角度調整可能に支持するランプ接続部分としての第2ヘッド支持部44d及び第2軸受部44eを含む。これにより、ヘッドランプ50が第1エーミング軸及び第2エーミング軸の2つの軸周りに角度調整可能となる。また、第1方向が乗物本体11の幅方向に延びることによって、左右方向よりも大きくなりがちな上下方向の衝撃を、左右の一対の第1揺動支持部分42bで支持することができ、支持剛性を高めやすい。
【0067】
カウル60は、ランプ支持体40の環状部分44aを前方から覆うカバー部分60aを含む。これにより、カバー部分60aが環状部分44aを覆うことで、カウル60とヘッドランプ50とを近接配置させることができ、カウル60とヘッドランプ50との間の隙間を低減できる。
【0068】
また、ランプ支持体40の環状部分44aはカウル60よりも肉厚な部分を含む。これにより、環状部分44aによってカウル60を補強できる。
【0069】
また、カウル60は、ランプ支持体40とは別部品であり、ランプ支持体40は、カウル60を固定するカウル固定部44cを含む。これにより、カウル60とランプ支持体40とが1つの部品である場合と比べて、カウル60及びランプ支持体40のそれぞれが複雑な形状に成形されやすくなる。
【0070】
また、ランプ支持体40の環状部分44aは、周方向に間隔をあけた複数個所にカウル固定部44cを有する。これにより、環状形状の複数個所で、カウル60を支持することができ、カウル60を支持するための剛性を確保しやすい。
【0071】
また、ランプ支持体40の環状部分44aと、カウル60とは、径方向に互いに重なるラップ部分WRを有する。これにより、ヘッドランプ50から照射された光が、カウル60とランプ支持体40との径方向の隙間を通じて後方に漏れにくくなる。
【0072】
また、カウル取付構造30は、カウル60とは別部品であり、少なくとも1個所においてカウル固定部44c1に固定されているウインドシールド70をさらに備える。これにより、ランプ支持体40及びカウル60を固定するカウル固定部44c1及び支持体固定部60c1において、ウインドシールド70も併せて固定されることができ、ランプ支持体40、カウル60及びウインドシールド70を固定するための部材の数を減らすことができる。
【0073】
また、第1支持部品本体42aが筒形状に形成されて、ヘッドランプ50の周面を覆う。これによってヘッドランプ50が露出することをさらに防止することができ、ヘッドランプ50の保護とともに美観を向上することができる。第1支持部品本体42aの上面が後方に進むにつれて下方に傾斜する。また第1支持部品本体42aの下面が後方に進むにつれて上方に傾斜する。これによって第1エーミング軸周りに第1支持部品42が角変位したとしても、ステー32の第1軸受部32d後方空間に配置される周辺部品との干渉を防ぎやすくすることができる。
【0074】
カウル60は、ハンドル装置18の周囲に対して対比した凹所が形成される形状に形成される。これによってカウル60が第1エーミング軸周りに角変位したとしても、ハンドル装置18との干渉を防ぐことができる。また本実施形態では、ハンドル操舵とともにカウル60が角変位する構造に形成されるので、カウル60が第1エーミング軸周りに角変位したとしても、ハンドル装置18の周囲部品との干渉を防ぎやすくすることができる。またカウル60は、車体に対して、第2エーミング軸周りの角変位が防がれる。これによってカウル60とステー32との車幅方向のクリアランスが不要となり、車幅方向に省スペース化したカウル60を実現することができる。
【0075】
<変形例>
図7は変形例に係るカウル取付構造130を示す断面図である。
【0076】
本変形例に係るカウル取付構造130は、上記カウル60及び第2支持部品44に代えて、1つの樹脂部品160が設けられている点で上記カウル取付構造30とは異なる。1つの樹脂部品160は、上記カウル60及び第2支持部品44が一体となった部品である。このカウル取付構造130においても、カウル60及び第2支持部品44が別部品である場合の効果を除き、上記カウル取付構造30と同様の効果が得られる。また、このカウル取付構造130によると、上記カウル60及び第2支持部品44が一体となったような形状を有する樹脂部品160が設けられていることにより、カウル60と第2支持部品44とが別部品の場合と比べて、部品点数増加を抑制できる。
【0077】
樹脂部品160は、上記第2支持部品44及びカウル60の一部の構成を残しつつ、他の一部の構成が省略されている。具体的には、樹脂部品160は、環状部分160aと、カバー部分160bと、後方延出部分160cとを含む。環状部分160aは、上記環状部分44aと同様にヘッドランプ50の外周を覆う。カバー部分160bは、上記カバー部分60aと同様に環状部分160aの前方を覆う。カバー部分160bは、環状部分160aの前端から径方向内側に延びる。後方延出部分160cは、環状部分160aの前端から環状部分160aよりも径方向外側に広がりつつ、後方に延びる。後方延出部分160cは、ステー覆い部60b1を含む。
【0078】
樹脂部品160はラップ片44f、60eによるラップ部分WRを含まない。カバー部分160b及び環状部分160aがつながっているため、樹脂部品160がラップ部分WRを含まなくとも、ヘッドランプ50の光が後方に漏れるような隙間が、樹脂部品160に生じにくい。
【0079】
また、樹脂部品160は、カウル固定部44c及び支持体固定部60cを含まない。樹脂部品160は、上記カウル60及び第2支持部品44が一体となったような形状を有する部品であるため、カウル固定部44c及び支持体固定部60cを含まずとも、カウルとして機能する部分及び第2支持部品として機能する部分が所定の位置関係に保たれる。
【0080】
樹脂部品160は、第2支持部品44に設けられていた第1支持部品固定部44b、第2ヘッド支持部44d、第2軸受部44eなどは含んでいる。樹脂部品160が第2ヘッド支持部44dを含むため、カウル60に設けられていたヘッド露出孔60hが省略される。また樹脂部品160は、カウル60に設けられていたウインドシールド固定部60d、凹部60f、60gなどは含んでいる。なお、支持体固定部60c1がそのままウインドシールド固定部60dとして設けられる。
【0081】
このほか、乗物の例として二輪車の例が説明されたが、乗物はヘッドランプ50の外周をカウル60が覆う乗物であればよく、二輪車以外、三輪車などであってもよい。また、乗物において、ヘッドランプ50を支持する構造以外は、既存の乗物の構造を適用することができる。例えば、乗物におけるフレーム構造や駆動源の種類については、任意に適用することができる。
【0082】
また、2つの部品の固定構造として、ボルト、ネジ又はリベットなどの締結部品を用いた固定構造のほかに、互いに固定される2つの部品に爪構造又は係合構造を形成して固定する構造であってもよいし、熱溶着又は接着材を用いた接合構造であってもよい。
【0083】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0084】
本明細書及び図面は、下記の各態様を開示する。
【0085】
第1の態様は、乗物本体へのカウル取付構造であって、前記乗物本体に固定されるステーと、前記ステーに対して角度調整可能に支持されるランプ支持体と、前記ランプ支持体に支持されるヘッドランプと、前記ランプ支持体に固定され、前記ヘッドランプの外周を覆うカウルと、を備える、カウル取付構造である。
【0086】
第1の態様によると、ランプを支持するランプ支持体とカウルとが一体に固定されることで、カウルとヘッドランプとの取付け誤差を低減することができ、意匠性を向上することができる。またカウルがランプ支持体に固定されていることによって、カウルを車体に固定する専用のブラケットを不要とすることができる。
【0087】
第2の態様は、第1の態様に係るカウル取付構造であって、前記ランプ支持体が、前記ステーに対して前記乗物本体に予め定める第1方向に延びる第1エーミング軸周りに角度調整可能に支持され、前記ランプ支持体は、前記第1方向に間隔をあけて配置される一対の揺動支持部分と、前記第1エーミング軸周りの揺動量を設定する設定部分とを含み、前記カウルは、少なくとも前記揺動支持部分を前記第1方向に沿った外側から覆う。これにより、ヘッドランプ及びカウルが第1エーミング軸周りに一緒に揺動するため、ヘッドランプとカウルとの第1方向に沿った隙間を抑えることができる。また、揺動支持部分がカウルに隠れるため、意匠性を向上することができる。
【0088】
第3の態様は、第2の態様に係るカウル取付構造であって、前記ランプ支持体は、前記ヘッドランプを前記第1方向と異なる第2方向に延びる第2エーミング軸周りに角度調整可能に支持するランプ接続部分をさらに含み、前記第1方向は前記乗物本体の幅方向に延びる。これにより、2軸周りのヘッドランプの角度調整が可能であると共に、左右方向よりも大きくなりがちな上下方向の衝撃を、左右の一対の揺動支持部分で支持することができ、支持剛性を高めやすい。
【0089】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係るカウル取付構造であって、前記ランプ支持体は、前記ヘッドランプの外周を覆う環状部分を含み、前記カウルは、前記環状部分を前方から覆うカバー部分を含む。これにより、カバー部分が環状部分を覆うことで、カウルとヘッドランプとを近接配置させることができ、カウルとヘッドランプとの間の隙間を低減できる。
【0090】
第5の態様は、第4の態様に係るカウル取付構造であって、前記環状部分は前記カウルよりも肉厚な部分を含む。これにより、環状部分によってカウルを補強できる。
【0091】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係るカウル取付構造であって、前記カウルは、前記ランプ支持体とは別部品であり、前記ランプ支持体は、前記カウルを固定する固定部を含む。これにより、カウルとランプ支持体とが1つの部品である場合と比べて、カウル及びランプ支持体のそれぞれが複雑な形状に成形されやすくなる。
【0092】
第7の態様は、第6の態様に係るカウル取付構造であって、前記ランプ支持体は、前記ヘッドランプの外周を覆う環状部分を含み、前記環状部分は、周方向に間隔をあけた複数個所に前記固定部を有する。これにより、環状形状の複数個所で、カウルを支持することで、カウルを支持するための剛性を確保しやすい。
【0093】
第8の態様は、第6又は第7の態様に係るカウル取付構造であって、前記ランプ支持体は、前記ヘッドランプの外周を覆う環状部分を含み、前記カウルと前記環状部分とは、径方向に互いに重なるラップ部分を有する。これにより、ヘッドランプから照射された光が、カウルとランプ支持体との径方向の隙間を通じて後方に漏れにくくなる。
【0094】
第9の態様は、第6から第8のいずれか1つの態様に係るカウル取付構造であって、前記カウルとは別部品であり、少なくとも1個所において前記固定部に固定されているウインドシールドをさらに備える。これにより、ランプ支持体及びカウルを固定する固定部において、ウインドシールドも併せて固定されることができ、ランプ支持体、カウル及びウインドシールドを固定するための部材の数を減らすことができる。
【0095】
第10の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係るカウル取付構造であって前記ランプ支持体は、前記ステーに角度調整可能に支持される第1支持部品と、前記第1支持部品とは別部品であり、前記第1支持部品の前方に固定されると共に前記ヘッドランプを支持する第2支持部品とを含み、前記カウルと前記第2支持部品とが1つの樹脂部品である。これにより、カウルと第2支持部品とが別部品の場合と比べて、部品点数増加を抑制できる。
【0096】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0097】
10 乗物
11 乗物本体
12 フレーム
13a ステアリングシャフト
13b アッパーブラケット
13c アンダーブラケット
13d フロントフォーク
30 カウル取付構造
32 ステー
32d 第1軸受部
40 ランプ支持体
42 第1支持部品
42a 第1支持部品本体
42b 第1揺動支持部分
42c 第1ボルト締結部(第1設定部分)
42d 第2支持部品固定部
44 第2支持部品
44a 環状部分
44b 第1支持部品固定部
44c、44c1、44c2 カウル固定部
44d 第2ヘッド支持部(ランプ接続部分)
44e 第2軸受部(ランプ接続部分)
44f ラップ片
45 固定ブラケット
45a 第1ヘッド支持部(第1設定部分)
45b ステー固定部
50 ヘッドランプ
55d 第2揺動支持部分
55e 第2ボルト締結部
60 カウル
60a カバー部分
60b 後方延出部分
60b1 ステー覆い部
60c、60c1、60c2 支持体固定部
60d ウインドシールド固定部
60e ラップ片
70 ウインドシールド
70a ウインドシールド本体部
70b 外縁部
70c、70c1、70c2 カウル固定部
160 樹脂部品
160a 環状部分
160b カバー部分
160c 後方延出部分
B1 第1エーミングボルト
B2 第2エーミングボルト
P1 第1回動ピン
P2 第2回動ピン
WR ラップ部分