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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144651
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】アンテナパターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20231003BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20231003BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20231003BHJP
   H01Q 9/24 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01P11/00
G06K19/077 280
G06K19/077 148
G06K19/077 144
H01Q9/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051740
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 剛
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA09
5J046AB07
5J046PA04
(57)【要約】
【課題】微細なアンテナの加工を可能とすること。
【解決手段】アンテナパターンの製造方法は、金属シートを仮基材に減圧により吸着させる吸着工程と、金属シートをレーザ光により所定形状に切断する切断工程と、所定形状に切断された金属シートを仮基材から本基材に転写する転写工程と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFID媒体に組み込まれるアンテナパターンの製造方法であって、
金属シートを仮基材に減圧により吸着させる吸着工程と、
前記金属シートをレーザ光により所定形状に切断する切断工程と、
前記所定形状に切断された前記金属シートを前記仮基材から本基材に転写する転写工程と、を備えた、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナパターンの製造方法であって、
前記本基材に粘着剤層が配置されており、
前記転写工程では、前記粘着剤層に前記所定形状に切断された前記金属シートを貼り付けて、前記仮基材から前記本基材に転写する、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナパターンの製造方法であって、
前記仮基材が多孔構造の材料から形成された、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のアンテナパターンの製造方法であって、
前記仮基材が多孔質セラミックス材料から形成された、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のアンテナパターンの製造方法であって、
前記仮基材が多孔質高分子材料から形成された、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のアンテナパターンの製造方法であって、
前記所定形状は、所定幅のラインで形成されるループ形状及び/又はメアンダ形状を有し、
前記仮基材は、複数の貫通孔を有する多孔構造体であり、前記ループ形状及び/又は前記メアンダ形状における最小幅よりも、前記貫通孔の孔径が小さい、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のアンテナパターンの製造方法であって、
前記金属シートは、銅又はアルミニウムからなる、
アンテナパターンの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のアンテナパターンの製造方法であって、
前記本基材は、紙又は樹脂シートである、
アンテナパターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の製造、管理、流通等の分野では、製品に関する情報が視認可能に印字されて製品に取り付けられるタグや、製品に関する情報が視認可能に印字されて製品等に貼付されるラベルが用いられている。近年では、識別情報が書き込まれたICチップから非接触通信によって情報を送受するRFID(Radio Frequency Identification)技術が種々の分野に適用されるようになっており、当該分野においても浸透しつつある。
【0003】
RFID仕様のICチップとアンテナが組み込まれたタグ、ラベル、リストバンド等(以下、RFID媒体という)には、取り付けられる対象物、貼付される対象物、又は装着者(以下、これらを含めて被着体という)に関する情報が視認可能に印字される。また、RFID媒体に組み込まれたICチップに、被着体に関する様々な情報を記憶することができる。
【0004】
従来、RFID仕様のICチップとアンテナとを備えるRFIDインレイの製造工程において、基材にアンテナを形成する方法として、基材に配置した金属材料をダイカット加工してRFIDインレイを成形する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-146149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、RFID媒体の適用領域は多様化しており、基材上に形成されるアンテナの形状(アンテナパターン)にも小型化や微細化の要求が高まっている。このため、アンテナパターンの製造において、更なる改善の必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、アンテナパターンの製造方法において、微細なアンテナの加工を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、RFID媒体に組み込まれるアンテナパターンの製造方法であって、金属シートを仮基材に減圧により吸着させる吸着工程と、前記金属シートをレーザ光により所定形状に切断する切断工程と、前記所定形状に切断された前記金属シートを前記仮基材から本基材に転写する転写工程と、を備えた、アンテナパターンの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のある態様によれば、仮基材に減圧により吸着させた金属シートをレーザ光により所定形状に切断し、切断された金属シートを仮基材から本基材に転写することにより、RFID媒体に組み込まれるアンテナを形成できる。これにより、仮基材に吸着させた金属シートにレーザ光による切断が行えるため、微細なアンテナの加工が可能になる。また、レーザ光による金属シートの切断は、仮基材上で行われ、金属シートは所定形状に切断された後、本基材に転写されるため、レーザ光による本基材の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係るRFIDインレイの平面図である。
図2図2は、図1のII-II線における断面図である。
図3図3は、本実施形態に係るアンテナパターンの製造方法における吸着工程を説明する模式図である。
図4図4は、アンテナパターンの製造方法における切断工程を説明する模式図である。
図5図5は、アンテナパターンの製造方法における転写工程の第一ステップを説明する模式図である。
図6図6は、アンテナパターンの製造方法における転写工程の第二ステップを説明する模式図である。
図7図7は、RFIDインレイの製造工程において、異方導電性材料を配置する工程を説明する模式図である。
図8図8は、RFIDインレイの製造工程において、ICチップを接合する工程を説明する模式図である。
図9図9は、アンテナパターンの製造方法に適用される吸引機構の変形例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[アンテナパターン及びRFIDインレイ]
本実施形態に係るアンテナパターンの製造方法の説明に先立って、当該アンテナパターンの製造方法を用いて製造されるアンテナ及びRFIDインレイについて説明する。
【0012】
本実施形態において、RFID媒体とは、非接触通信によって情報を送受するRFID(Radio Frequency Identification)技術に対応したRFIDインレイが組み込まれた媒体である。
【0013】
また、本実施形態において、RFIDインレイとは、基材にアンテナ及びICチップが配置されたものである。また、基材に金属材料からなる所定形状のアンテナが形成され、ICチップを実装する前段階の形態のものをアンテナパターンと記す。
【0014】
図1は、本実施形態に係るアンテナパターンの製造方法を用いて製造されるRFIDインレイ1を説明する外観図であり、図2は、図1のII-II線における断面図である。
【0015】
RFIDインレイ1は、基材10と、基材10の一方の面に所定のパターンとして形成されたアンテナ11と、アンテナ11に接続されたICチップ12とを備える。
【0016】
本実施形態においては、アンテナ11とICチップ12とは、紫外線により硬化する異方導電性材料13により接続されている。アンテナ11は、粘着剤層Aにより基材10に貼り付けられている。なお、図1及び図2に示されたX方向を「ラベル幅方向」と記す。
【0017】
基材10として適用可能な材料としては、厚紙、上質紙、中質紙、又はこれらに塗工層を形成したコート紙等の紙基材を用いることができる。
【0018】
本実施形態においては、上記紙基材のほか、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート等の樹脂単体からなる単層の樹脂シート、又はこれら単層シートを複数積層してなる多層の樹脂シートを使用することができる。上記基材10の材料及び厚さは、用途に応じて、上記範囲において適宜選択可能である。
【0019】
アンテナ11は、図1及び図2に示されたX方向に亘って、基材10に形成されている。アンテナ11は、導電性材料が含まれた導電性シートによって形成することができる。導電性シートとしては、金属箔を用いることができ、特に、アルミニウム又は銅を用いることができる。
【0020】
アンテナ11を形成することのできる金属箔の厚さは、RFIDインレイ1の厚さ、及び製造コスト等を考慮して設定することができる。製造コストを抑える観点から、一例として、アルミニウム箔を用いることが好ましい。後述するアンテナパターンの製造方法においては、金属箔は、金属シートMとして用意される。
【0021】
アンテナ11は、所定幅のラインで形成されたループ部21と、ICチップ12がマウントされるICチップ接続部22と、ループ部21からラベルの幅方向(X方向)に左右対称に延びるメアンダ23,24と、メアンダ23,24の端部に接続されるキャパシタハット25,26とを備える。
【0022】
本実施形態では、アンテナ11は、一例として、UHF帯(300MHz~3GHz、特に860MHz~960MHz)に対応したアンテナ長さ及びアンテナ線幅になるように設計されたUHF帯RFIDアンテナである。
【0023】
アンテナ11は、このほか、RFIDの仕様に応じて、マイクロ波(1~30GHz、特に2.4GHz近傍)、及びHF帯(3MHz~30MHz、特に13.56MHz近傍)等の特定の周波数帯に対応したパターンに設計されてもよい。
【0024】
粘着剤層Aを形成可能な粘着剤としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤や接着剤からなるラミネート用粘着剤層が適用可能である。
【0025】
ICチップ12は、読取装置(図示されていない)又は読取装置を備えたプリンタとの間で通信可能に設計された半導体パッケージである。
【0026】
ICチップ12は、アンテナ11のループ部21の一部に設けられたICチップ接続部22に、紫外線により硬化する異方導電性材料13によって電気的及び機械的に接続されている。
【0027】
以上の構成を有するRFIDインレイ1に所定の加工が施されることにより、ラベルのほか、タグ、リストバンド、チケット、カード等のRFID媒体を形成することができる。
【0028】
[アンテナパターンの製造方法]
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係るアンテナパターンの製造方法について説明する。
【0029】
図3は、本実施形態に係るアンテナパターンの製造方法における吸着工程を説明する模式図である。図4は、アンテナパターンの製造方法における金属シートの切断工程及び金属シートの除去工程を説明する模式図である。図5は、アンテナパターンの製造方法における転写工程の第一ステップを説明する模式図であり、図6は、転写工程の第二ステップを説明する模式図である。
【0030】
アンテナパターンの製造方法は、金属シートMを仮基材としての多孔構造チャック31に減圧により吸着させる吸着工程(図3)と、金属シートMをレーザ光により所定形状に切断する切断工程と、金属シートMの不要部分を除去する除去工程(図4)と、所定形状に切断された金属シートMを多孔構造チャック31から本基材としての基材10に転写する転写工程(図5及び図6)と、を備える。
【0031】
図3に示す吸着工程において、金属シートMを多孔構造チャック31に吸着させて、金属シートMを多孔構造チャック31に保持する。
【0032】
金属シートMは、アンテナ11を形成するものである。上述のように、導電性シートであればよく、本実施形態では、アルミニウム箔を用いることができる。
【0033】
多孔構造チャック31は、図示しない減圧装置に接続されており、当該減圧装置とともに吸引機構を構成する。多孔構造チャック31は、金属シートMを吸着できるように、複数の貫通孔を有する多孔構造体から形成されている。減圧装置によって、多孔構造チャック31に吸引力が生じ、金属シートMを吸引保持することができる。
【0034】
多孔構造を有する材料の一例として、多孔質体が適用可能である。多孔質体としては、アルミナ等の多孔質セラミックス材料が適用可能である。多孔構造の材料は、ナノメートルオーダの孔径を備えたナノポーラス材料が好ましく、特に、ナノ異方性ポーラス構造を有するものが好ましい。
【0035】
また、多孔構造チャック31の表面は、金属シートMを吸着可能に平滑に形成されている。
【0036】
図5に示すように、多孔構造チャック31の孔径Dは、アンテナ11の幅よりも小さくなるように設定されている。本実施形態では、多孔構造チャック31の孔径Dは、アンテナ11における最小幅(最も細い部分の幅)Wよりも小さくなるように設定されている。すなわち、D<Wである。本実施形態においては、アンテナ11のICチップ接続部22及びメアンダ23,24における最小幅Wよりも小さい。
【0037】
また、多孔構造チャック31の孔の密度は、アンテナ11における最小幅のなかに複数の孔が存在するような密度であることが望ましい。
【0038】
図4において、多孔構造チャック31に吸着された金属シートMをレーザ光源Lからのレーザ光によってアンテナ11の形状に切断する。本実施形態では、アンテナ11の形状の輪郭をレーザ光によりトレースし、切断する。
【0039】
本実施形態において、レーザ光は、アンテナ11に要求されるライン幅に適合させることが可能であることや、照射光の直径を比較的小さく設定できる観点から、UVレーザを用いることが望ましい。
【0040】
金属シートMの不要部分を除去する除去工程では、切断によってアンテナの形状を構成しなくなった金属シートMの不要部分を端部から持ち上げて、多孔構造チャック31から物理的に剥離し、金属シートMの不要部分を除去する。
【0041】
除去工程の後、図5及び図6に示すように、アンテナ11の形状に切断された金属シートMを多孔構造チャック31から本基材に転写する。本実施形態において、本基材は、図1に示す基材10に対応する。
【0042】
転写工程では、粘着剤層Aが配置された基材10を、粘着剤層A側をアンテナ11の形状に切断された金属シートMに対向させ、多孔構造チャック31に吸着されているアンテナ11に粘着剤層Aを接触させて、ゴムローラ等を用いて、金属シートMを多孔構造チャック31に押圧する。
【0043】
これにより、図6に示すように、アンテナ11が粘着剤層Aに貼り付いて、アンテナ11を多孔構造チャック31から基材10に移すことができる。
【0044】
本実施形態では、多孔構造チャック31における金属シートMの吸着は、切断工程の実行中も行われ、所定形状に切断された金属シートMの基材10への転写が完了するまで継続して実行される。
【0045】
転写工程では、粘着剤層Aが配置された基材10をアンテナ11に接合させた後、減圧装置からの多孔構造チャック31に生じる吸引力をオフにしてもよい。また、粘着剤層Aの粘着力を金属シートMの多孔構造チャック31への吸着力よりも強く設定してもよい。換言すれば、粘着力を、金属シートMを多孔構造チャックから引き剥がすのに必要な力よりも強く設定してもよい。
【0046】
本実施形態においては、粘着剤層Aは基材10の金属シートMに対向する面の全面に配置されている。また、粘着剤層Aは、基材10に、アンテナ11の形状に対応するパターンで形成されていてもよい。
【0047】
粘着剤層Aの粘着力は、製造上における取り扱い性の観点から、いわゆる弱粘着性に設定することが好ましい。粘着力が不足する場合には、熱や圧力等を付与することで粘着力を向上させることが可能な粘着剤を適用する。
【0048】
多孔構造チャック31は、粘着剤層Aが貼り付き難い材質であることが好ましい。或いは、多孔構造チャック31の表面に、予め、粘着剤層Aが貼り付き難い表面処理をすることが好ましい。
【0049】
以上の工程により、基材10に所定形状のアンテナ11を形成することができる。
【0050】
次に、基材10にアンテナ11が形成されたアンテナパターンに、ICチップ12を搭載することにより、RFIDインレイを作製することができる。
【0051】
図7は、RFIDインレイの製造工程において、異方導電性材料13を配置する工程を説明する模式図である。図8は、RFIDインレイの製造工程において、ICチップ12を接合する工程を説明する模式図である。
【0052】
図7に示すように、基材10に形成されたアンテナ11のICチップ接続部22に異方導電性材料13を配置する。
【0053】
続いて、図8に示すように、ICチップ接続部22に配置された異方導電性材料13を介してICチップ12を接合する。以上の工程により、RFIDインレイ1を形成することができる。
【0054】
以上のようにして作製されたRFIDインレイ1において、例えば、基材10のアンテナ11が形成された面に、被着体に貼り付けるための粘着剤層を積層し、基材10のアンテナ11が形成された面の反対面に印字面を有する表面基材を積層することにより、物品に貼り付けて用いられるRFIDラベルを形成することができる。
【0055】
また、例えば、基材10のアンテナ11が形成された面を別の表面基材で覆ったり、RFIDインレイ1の両面を外装基材で封止したりすることにより、物品に取り付けて使用されるRFIDタグを形成することができる。なお、RFIDラベル及びRFIDタグの層構造は、上記の形態に限定されない。
【0056】
RFIDインレイ1は、これらのほか、例えば、カード、リストバンド等の形態に加工することができる。
【0057】
[効果]
本実施形態に係るRFIDインレイ1に適用されるアンテナパターンの製造方法によれば、仮基材としての多孔構造チャック31に、減圧により金属シートMを吸着させて保持することができる。これにより、切断工程において、レーザ光を用いて金属シートMの切断を安定して行うことができる。また、転写工程において基材10へ転写する際のアンテナ11の位置ずれを防止することができる。
【0058】
また、UVレーザを使用することにより、20~30μm程度の加工精度が得られる。このため、例えば、メアンダ23,24のような微細な形状の加工を精度良く行うことができる。
【0059】
また、本実施形態においては、金属シートMを多孔構造チャック31においてアンテナ11の形状に切断した後、金属シートMの不要部分を除去し、基材10の粘着剤層Aが形成された面を多孔構造チャック31に吸着されている切断後のアンテナ11に接触させて、アンテナ11を多孔構造チャック31から基材10に移し取っている(転写工程)。
【0060】
通常、レーザ光を用いて金属シートをアンテナパターンに切断する場合、先に、基材に粘着剤層を用いて金属シートを貼り付けた後で、レーザ光を用いて所定のアンテナパターンに切断する方法がある。しかし、この方法では、金属シートを切断可能な強度を有するレーザ光により、金属シートと基材との間に配置されている粘着剤層が部分的に溶融したり、消失したり、基材が損傷を受けたりすることがあり、切断後のRFIDインレイの品質を良好に保てない場合があった。
【0061】
これに対して、本実施形態に係るアンテナパターン製造方法によれば、レーザ光により所定の形状に切断された後のアンテナ11を基材10に移すため、レーザ光による基材の損傷や、粘着剤層の溶融や消失の問題がなく、微細なアンテナパターンの加工が可能となる。
【0062】
[変形例]
次に、アンテナパターンの製造方法に適用される吸引機構の変形例について説明する。図9は、アンテナパターンの製造方法に適用される吸引機構の変形例を説明する模式図である。
【0063】
図9に示す変形例では、仮基材が多孔構造チャック31と多孔構造を有する樹脂シート32から構成されている。すなわち、変形例においては、金属シートMは、樹脂シート32を介して多孔構造チャック31に吸着される。
【0064】
樹脂シート32は、一例として、多孔質高分子材料をシート状に成形したものである。樹脂シート32に形成された孔径は、アンテナ11のライン幅よりも小さいものを適用することができる。樹脂シート32の一例として、平均孔径0.2μm程度のポリテトラフルオロエチレンを適用することが好適である。
【0065】
樹脂シート32を備えることによって、多孔構造チャック31が樹脂シート32で覆われるため、レーザ光による切断工程において、多孔構造チャック31のレーザ光によるダメージを防止できる。樹脂シート32は、レーザ光によるダメージが許容程度を越えた場合であっても、多孔構造チャック31に比べて低コストで取り替え可能である。
【0066】
また、樹脂シート32を備える場合には、樹脂シート32により吸引孔径を調整することができるため、多孔構造チャック31の孔径をアンテナ11のライン幅よりも小に厳密に設定する必要がない。これにより、吸引機構の設計の自由度が向上する。
【0067】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0068】
RFIDインレイ1において、例えば、基材10のアンテナ11が形成された面の反対面に、熱により発色する感熱発色層が形成されてもよい、感熱発色層は、基材10側から順に、アンダーコート層、感熱層、オーバーコート層等を備え、いわゆるダイレクトサーマル方式の印字ヘッドを備えたプリンタにより印字可能な印字面を形成する。これにより、RFIDインレイ1を、印字面を有するラベルとして使用することができる。
【0069】
図4において、金属シートMをレーザ光で切断する前に、金属シートMに粘着剤層Aを形成してもよい。この場合には、切断工程において、レーザ光により粘着剤層Aを形成する粘着剤が消失するとともに金属シートMを切断することができる。
【0070】
本実施形態では、レーザ光としてUVレーザを例示したが、近赤外レーザ、グリーンレーザ、ファイバレーザ等、金属シートMの切断に適した汎用の加工用レーザであれば、切断加工に適用することができる。
【0071】
粘着剤層Aは、例えば、ホットメルト剤のように、加熱により接着性が高められるような材料であってもよい。この場合には、転写工程において、アンテナ11が基材10に移し取られたときには仮接着の状態であるが、転写工程の後、アンテナ11を加熱することで接着強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 RFIDインレイ
10 基材
11 アンテナ
12 ICチップ
13 異方導電性材料
21 ループ部
22 ICチップ接続部
23,24 メアンダ
25,26 キャパシタハット
31 多孔構造チャック
32 樹脂シート
A 粘着剤層
L レーザ光源
M 金属シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9