(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144655
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】フレッシュコンクリートおよびフレッシュコンクリートの打設分け工法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20231003BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C04B28/04
E04G21/02 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051745
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 尚子
【テーマコード(参考)】
2E172
4G112
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172AA17
2E172DE00
2E172HA03
4G112PE01
(57)【要約】
【課題】互いに特性が異なるポルトランドセメントの混合によって乾燥収縮ひずみが小さくされたフレッシュコンクリートおよびフレッシュコンクリートの打設分け工法を提供する。
【解決手段】このフレッシュコンクリートは、普通ポルトランドセメントと早強ポルトランドセメントとを含有しており、上記普通ポルトランドセメントと上記早強ポルトランドセメントの混合における上記早強ポルトランドセメントの配合割合Rが40%≦R≦90%である。また、フレッシュコンクリートの打設領域分け工法は、上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを打設工区1の一部領域に打設し、打設工区の他の領域には、上記配合割合Rが40%未満のフレッシュコンクリートを打設する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
普通ポルトランドセメントと早強ポルトランドセメントとを含有しており、上記普通ポルトランドセメントと上記早強ポルトランドセメントの混合における上記早強ポルトランドセメントの配合割合Rが40%≦R≦90%であることを特徴とするフレッシュコンクリート。
【請求項2】
請求項1に記載の上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを、打設工区の一部領域に打設し、打設工区の他の領域には、上記配合割合Rが40%未満あるいは90%超のフレッシュコンクリートを打設することを特徴とするフレッシュコンクリートの打設領域分け工法。
【請求項3】
請求項2に記載のフレッシュコンクリートの打設領域分け工法において、打設工区のなかでコンクリート表面が露呈される打設工区または当該打設工区およびその周囲領域に、上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを打設し、打設工区のなかでコンクリート表面が露呈されない打設工区には、上記配合割合Rが40%未満あるいは90%超のフレッシュコンクリートを打設することを特徴とするフレッシュコンクリートの打設領域分け工法。
【請求項4】
請求項2に記載のフレッシュコンクリートの打設領域分け工法において、打設工区のなかで日射が届く打設工区、風に曝される打設工区または当該打設工区およびその周囲領域に、上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを打設し、打設工区のなかで日射が届かない打設工区、または風に曝されない打設工区には、上記配合割合Rが40%未満あるいは90%超のフレッシュコンクリートを打設することを特徴とするフレッシュコンクリートの打設領域分け工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乾燥収縮ひずみが生じ難いフレッシュコンクリートおよびフレッシュコンクリートの打設分け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
土間コンクリート等の作製には、普通ポルトランドセメントを配合したコンクリートが用いられている。また、普通ポルトランドセメントよりも早期に強度を発現できる早強ポルトランドセメントが使用されることもある。
【0003】
なお、特許文献1には、普通セメントと早強セメントとを配合したセメントを主成分とする配合材料に水を加えて混練する第一工程と、混練後の配合材料を賦型してグリーンシートを成形する第二工程と、グリーンシートを養生硬化する第三工程とを有するセメント成形品の製造方法であって、グリーンシートの温度が低くなると、第一工程の配合材料において、普通セメントに対して早強セメントの配合割合を多くし、グリーンシートの温度が高くなると、普通セメントに対して早強セメントの配合割合を少なくするセメント成形品の製造方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、セメントと軽量骨材と水とが混練されてなり、上記セメントが普通ポルトランドセメントと早強ポルトランドセメントとから構成されるセメント混練物が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントが、質量比で7:3乃至3:7である高流動高強度グラウト材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-58684号公報
【特許文献2】特許第6579444号
【特許文献3】特開2011-102222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記いずれの特許文献も、互いに特性が異なるポルトランドセメントを混合することによって乾燥収縮ひずみを小さくしたフレッシュコンクリートを生成することを開示しない。
【0008】
この発明は、互いに特性が異なるポルトランドセメントの混合によって乾燥収縮ひずみを小さくできるフレッシュコンクリートおよびフレッシュコンクリートの打設分け工法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のフレッシュコンクリートは、普通ポルトランドセメントと早強ポルトランドセメントとを含有しており、上記普通ポルトランドセメントと上記早強ポルトランドセメントの混合における上記早強ポルトランドセメントの配合割合Rが40%≦R≦90%であることを特徴とする。
【0010】
上記のフレッシュコンクリートであれば、早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを基準とする乾燥収縮減少量として約15~30×10-6を得ることができる。すなわち、早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートよりも乾燥収縮ひずみを少なくできる。また、上記配合割合Rを40%未満とする場合、低額な普通ポルトランドセメントの割合が増えて価格を低減できるが、普通ポルトランドセメントの割合を多くする場合も乾燥収縮ひずみが大きくなる。よって、ある程度高額になるものの、上記配合割合Rを40%≦R≦90%とすることで、乾燥収縮ひずみが小さく、水和熱が早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートあるいは配合割合Rが90%超のフレッシュコンクリートよりも小さく、コンクリート断面内の温度勾配が緩やかになり、ひび割れが抑制されるフレッシュコンクリートを提供することができる。
【0011】
この発明のフレッシュコンクリートの打設領域分け工法は、上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを、打設工区の一部領域に打設し、打設工区の他の領域には、上記配合割合Rが40%未満あるいは90%超のフレッシュコンクリートを打設することを特徴とする。
【0012】
上記の打設方法であれば、打設工区全体に上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを打設するのに比べて、打設工区の一部領域においてコンクリートひび割れを抑制することができる。
【0013】
上記の打設方法において、打設工区のなかでコンクリート表面が露呈される打設工区または当該打設工区およびその周囲領域に、上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを打設し、打設工区のなかでコンクリート表面が露呈されない打設工区には、上記配合割合Rが40%未満のフレッシュコンクリートを打設してもよい。かかる打設方法であれば、打設工区全体に上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを打設するのに比べて、材料コストを低減しつつ、コンクリートひび割れの発生を避けたい打設工区においてコンクリートひび割れを抑制することができる。打設工区のなかでコンクリート表面が露呈されない打設工区に、上記配合割合Rが90%超のフレッシュコンクリートを打設してもよい。打設工区全体に早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを打設するのに比べて材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0014】
上記の打設方法において、打設工区のなかで日射が届く打設工区、風に曝される打設工区または当該打設工区およびその周囲領域に、上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを打設し、打設工区のなかで日射が届かない打設工区、または風に曝されない打設工区には、上記配合割合Rが40%未満のフレッシュコンクリートを打設してもよい。かかる打設方法であれば、打設工区全体に上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを打設するのに比べて、材料コストを低減しつつ、コンクリートひび割れが発生し易い日射領域でのコンクリートひび割れを抑制することができる。打設工区のなかで日射が届かない打設工区、または風に曝されない打設工区には、上記配合割合Rが90%超のフレッシュコンクリートを打設してもよい。打設工区全体に早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを打設するのに比べて材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明であれば、互いに特性が異なるポルトランドセメントの混合によって、乾燥収縮ひずみが小さく、ひび割れが抑制されるフレッシュコンクリートおよびフレッシュコンクリートの打設領域分け工法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に関連するフレッシュコンクリートの普通ポルトランドセメントと早強ポルトランドセメントの混合における上記早強ポルトランドセメントの配合割合に対する乾燥収縮ひずみの減少量の変化を示したグラフである。
【
図2】実施形態のフレッシュコンクリートの打設領域分け工法を示す説明図である。
【
図3】他の実施形態のフレッシュコンクリートの打設領域分け工法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
下記に示す表1は、普通ポルトランドセメント(N)と、早強ポルトランドセメント(H)との混合比(質量比)N:Hを、0:10、3:7、5:5、7:3、10:0とした複数種のフレッシュコンクリートをそれぞれ固化させたときのコンクリートの乾燥収縮ひずみ(×10
-6)の測定結果、および100%早強ポルトランドセメントを基準とした乾燥収縮ひずみの減少量を示している。コンクリートの材齢は26週である。なお、コンクリートの乾燥収縮ひずみに対する骨材の影響については、社団法人 日本コンクリート工学協会:コンクリートの収縮問題検討委員会報告書(2010.3)に詳しい記載がある。細骨材の物性等がコンクリートの乾燥収縮に及ぼす影響は、現時点では必ずしも明確でない(上記報告書の6.3.2参照)。また、粗骨材については、石灰石を使用すると乾燥収縮率が小さくなり、砂岩、安山岩、砂利を使用すると乾燥収縮率が大きくなる傾向がある(上記報告書の6.3.3、図-6.3参照)。また、乾燥収縮率800(×10
-6)が標準的な値(建築工事標準仕様書・同解説JASS5に示される計画供用期間が長期あるいは超長期におけるコンクリートの乾燥収縮率の上限値)となる。一般に、良質の骨材で混錬されるコンクリートの乾燥収縮率が小さいとされるが、今後、良質の骨材の枯渇にともない、これらの骨材を入手できないようなことになると、乾燥収縮率が大きくなるおそれが有る。
【表1】
【0018】
この表1に示されるように、乾燥収縮ひずみは、早強ポルトランドセメントが100%(N:H=0:10)の場合は、524×10-6であり、早強ポルトランドセメントが70%(N:H=3:7)の場合は、491×10-6であり、早強ポルトランドセメントが50%(N:H=5:5)の場合は、513×10-6であり、早強ポルトランドセメントが30%(N:H=7:3)の場合は、509×10-6であり、早強ポルトランドセメントが0%(N:H=10:0)の場合は、510×10-6であった。
【0019】
また、上記表1において、各コンクリートの上記乾燥収縮ひずみの減少量は、早強ポルトランドセメントが100%(N:H=0:10)である場合の測定結果である524×10-6との差分(H基準)であり、早強ポルトランドセメントが70%(N:H=3:7)の場合は、33×10-6となり、早強ポルトランドセメントが50%(N:H=5:5)の場合は、11×10-6となり、早強ポルトランドセメントが30%(N:H=7:3)の場合は、15×10-6となり、早強ポルトランドセメントが0%(N:H=10:0)の場合は、14×10-6となる。
【0020】
図1は、上記表1の測定結果に基づいて作成された相関グラフである。この相関グラフの横軸は、上記普通ポルトランドセメントと上記早強ポルトランドセメントの混合における上記早強ポルトランドセメントの配合割合(質量割合)Rである。また、この相関グラフの縦軸は、上述した乾燥収縮ひずみの減少量である。
【0021】
上記相関グラフの相関関数は、y=-0.0003x3+0.0371x2-1.0444x+14.896であり、決定係数は、R2=0.7298であった。
【0022】
この実施形態のフレッシュコンクリートは、普通ポルトランドセメントと早強ポルトランドセメントとを含有しており、上記普通ポルトランドセメントと上記早強ポルトランドセメントの混合における上記早強ポルトランドセメントの上記配合割合Rが、40%≦R≦90%である。
【0023】
上記のフレッシュコンクリートであれば、早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを基準とする上記乾燥収縮ひずみの減少量として約15~30×10
-6を得ることができる(
図1参照)。すなわち、早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートよりも乾燥収縮ひずみを小さくできる。また、上記配合割合Rを40%未満とする場合、低額な普通ポルトランドセメントの割合が増えて価格を低減できるが、普通ポルトランドセメントの割合を多くする場合も乾燥収縮ひずみが大きくなる。よって、ある程度高額になるものの、上記配合割合Rを40%≦R≦90%とすることで、乾燥収縮ひずみが小さく、ひび割れが抑制されるフレッシュコンクリートを提供することができる。なお、上記配合割合Rを所定範囲内とすることは、早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを工区全体に打設することとの比較では、材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制できることになる。
【0024】
好ましくは、上記普通ポルトランドセメントと上記早強ポルトランドセメントの混合における上記早強ポルトランドセメントの配合割合Rが50%≦R≦86%であるのがよい。これによれば、早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを基準とする上記乾燥収縮ひずみの減少量として約20~30×10
-6を得ることができる(
図1参照)。
【0025】
より好ましくは、上記普通ポルトランドセメントと上記早強ポルトランドセメントの混合における上記早強ポルトランドセメントの配合割合Rが55%≦R≦83%であるのがよい。これによれば、早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを基準とする上記乾燥収縮ひずみの減少量として約23~30×10
-6を得ることができる(
図1参照)。
【0026】
さらに好ましくは、上記普通ポルトランドセメントと上記早強ポルトランドセメントの混合における上記早強ポルトランドセメントの配合割合Rが60%≦R≦80%であるのがよい。これによれば、早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを基準とする上記乾燥収縮ひずみの減少量として約25~30×10
-6を得ることができる(
図1参照)。
【0027】
次に、実施形態のフレッシュコンクリートの打設領域分け工法について説明していく。この打設領域分け工法は、
図2に示すように、例えば、上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートFC1を、打設工区1のなかでコンクリート表面が露呈される打設工区11または当該打設工区11およびその周囲領域に打設し、打設工区1のなかでコンクリート表面が露呈されない打設工区12には、上記配合割合Rが40%未満のフレッシュコンクリートFC2を打設する。フレッシュコンクリートFC2は、早強ポルトランドセメントを含有しないフレッシュコンクリートを含む。
【0028】
なお、コンクリート表面が露呈される打設工区11は、例えば、物流倉庫における車両等の走行する区画や荷物積載区画である。また、コンクリート表面が露呈されない打設工区12は、例えば、物流倉庫における事務所区画のOAフロア等である。
【0029】
上記の打設方法であれば、打設工区1の全体に上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを打設するのに比べて、材料コストを低減しつつ、コンクリートひび割れの発生を特に避けたい打設工区11においてコンクリートひび割れを抑制することができる。なお、上記配合割合Rが40%未満のフレッシュコンクリートFC2に代えて、上記配合割合Rが90%超のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。この代替打設例におけるフレッシュコンクリートFC2は、普通ポルトランドセメントを含有しないフレッシュコンクリートを含む。以下の代替打設例でも同様である。この打設方法であれば、打設工区全体に早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを打設するのに比べて材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0030】
なお、上記の打設方法において、早強ポルトランドセメントの含有量が少ないフレッシュコンクリートを先に打設し、その後に早強ポルトランドセメントの含有量が多いフレッシュコンクリートを打設することで、打設工区全体のコンクリート仕上がりタイミングを極力同じにすることが可能となる。
【0031】
上記の例に限らず、上記配合割合Rが50%≦R≦86%であるフレッシュコンクリートFC1を、打設工区1のなかでコンクリート表面が露呈される打設工区11または当該打設工区11およびその周囲領域に打設し、打設工区1のなかでコンクリート表面が露呈されない打設工区12には、上記配合割合Rが50%未満のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。なお、代替打設例として、上記配合割合Rが50%未満のフレッシュコンクリートFC2に代えて、上記配合割合Rが86%超のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。この打設方法であれば、打設工区全体に早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを打設するのに比べて材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0032】
あるいは、上記配合割合Rが55%≦R≦83%であるフレッシュコンクリートFC1を、打設工区1のなかでコンクリート表面が露呈される打設工区11または当該打設工区11およびその周囲領域に打設し、打設工区1のなかでコンクリート表面が露呈されない打設工区12には、上記配合割合Rが55%未満のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。なお、代替打設例として、上記配合割合Rが55%未満のフレッシュコンクリートFC2に代えて、上記配合割合Rが83%超のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。この打設方法であれば、打設工区全体に早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを打設するのに比べて材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0033】
あるいは、上記配合割合Rが60%≦R≦80%であるフレッシュコンクリートFC1を、打設工区1のなかでコンクリート表面が露呈される打設工区11または当該打設工区11およびその周囲領域に打設し、打設工区1のなかでコンクリート表面が露呈されない打設工区12には、上記配合割合Rが60%未満のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。なお、代替打設例として、上記配合割合Rが60%未満のフレッシュコンクリートFC2に代えて、上記配合割合Rが80%超のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。この打設方法であれば、打設工区全体に早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを打設するのに比べて材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0034】
次に、他の実施形態のフレッシュコンクリートの打設領域分け工法について説明していく。この打設領域分け工法は、
図3に示すように、例えば、上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートFC1を、打設工区2のなかで日射が届く打設工区21または当該打設工区21およびその周囲領域に打設し、打設工区2のなかで日射が届かない打設工区22には、上記配合割合Rが40%未満のフレッシュコンクリートFC2を打設する。フレッシュコンクリートFC2は、早強ポルトランドセメントを含有しないフレッシュコンクリートを含む。
【0035】
なお、日射が届かない打設工区22は、例えば、一部に屋根3が施工されているために日中において少なくとも一定時間(例えば、正午をはさんで4時間等)陰ができる範囲とされる。また、打設工区22の周囲の一部において外壁が施工済であるような場合にも、日射が届かない打設工区22が生じる。なお、上記打設方法において、日射が届く打設工区21に代えて、風に曝される打設工区21とし、日射が届かない打設工区22に代えて、風に曝されない打設工区22としてもよい。風に曝される打設工区とは、建物の周囲の外壁が未施工であるかあるいは一部のみ施工されているために、風の通り道ができる打設工区とされる。
【0036】
上記の打設方法であれば、打設工区全体に上記配合割合Rが40%≦R≦90%であるフレッシュコンクリートを打設するのに比べて、材料コストを低減しつつ、コンクリートひび割れが発生し易い日射領域でのコンクリートひび割れを抑制することができる。なお、上記配合割合Rが40%未満のフレッシュコンクリートFC2に代えて、上記配合割合Rが90%超のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。この代替打設例におけるフレッシュコンクリートFC2は、普通ポルトランドセメントを含有しないフレッシュコンクリートを含む。以下の代替打設例でも同様である。この打設方法であれば、打設工区全体に早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを打設するのに比べて材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0037】
上記の例に限らず、上記配合割合Rが50%≦R≦86%であるフレッシュコンクリートFC1を、打設工区2のなかで日射が届く打設工区21または当該打設工区21およびその周囲領域に打設し、打設工区2のなかで日射が届かない打設工区22には、上記配合割合Rが50%未満のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。なお、代替打設例として、上記配合割合Rが50%未満のフレッシュコンクリートFC2に代えて、上記配合割合Rが86%超のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。この打設方法であれば、打設工区全体に早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを打設するのに比べて材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0038】
あるいは、上記配合割合Rが55%≦R≦83%であるフレッシュコンクリートFC1を、打設工区2のなかで日射が届く打設工区21または当該打設工区21およびその周囲領域に打設し、打設工区2のなかで日射が届かない打設工区22には、上記配合割合Rが55%未満のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。なお、代替打設例として、上記配合割合Rが55%未満のフレッシュコンクリートFC2に代えて、上記配合割合Rが83%超のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。この打設方法であれば、打設工区全体に早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを打設するのに比べて材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0039】
あるいは、上記配合割合Rが60%≦R≦80%であるフレッシュコンクリートFC1を、打設工区2のなかで日射が届く打設工区21または当該打設工区21およびその周囲領域に打設し、打設工区2のなかで日射が届かない打設工区22には、上記配合割合Rが60%未満のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。なお、代替打設例として、上記配合割合Rが60%未満のフレッシュコンクリートFC2に代えて、上記配合割合Rが80%超のフレッシュコンクリートFC2を打設してもよい。この打設方法であれば、打設工区全体に早強ポルトランドセメントのみを含有するフレッシュコンクリートを打設するのに比べて材料コストを低減しつつ、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0040】
なお、上記の打設方法において、早強ポルトランドセメントの含有量が少ないフレッシュコンクリートを先に打設し、その後に早強ポルトランドセメントの含有量が多いフレッシュコンクリートを打設することで、打設工区全体のコンクリート仕上がりタイミングを極力同じにすることが可能となる。
【0041】
なお、上記フレッシュコンクリートには、適宜、混和材料(例えば、水和熱抑制型膨張材)が添加されてもよい。また、早強ポルトランドセメント(H)には、早強ポルトランドセメント(低アルカリ形)(HL)、超早強ポルトランドセメント(UH)および超早強ポルトランドセメント(低アルカリ形)(UHL)が含まれる。
【0042】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 :打設工区
2 :打設工区
3 :屋根
11 :打設工区
12 :打設工区
21 :打設工区
22 :打設工区
FC1 :フレッシュコンクリート
FC2 :フレッシュコンクリート