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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144660
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】車椅子アタッチメント
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/04 20130101AFI20231003BHJP
   A61G 5/02 20060101ALI20231003BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A61G5/04 711
A61G5/02 701
A61G5/10 703
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051753
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】永田 正伸
(57)【要約】
【課題】既存の手動式の車椅子に後付け装着可能にして同車椅子を電動式仕様にして走行利便性を図ることは勿論、装着対応できる車椅子の種類を拡張して汎用性を高めた車椅子アタッチメントを提供する。
【解決手段】上面の左右部で車椅子の一対の後輪を載置する車輪載置部を有した平板状の基体プレートと、一対の車輪載置部同士の間の中心部分で車輪載置部と平行に伸延する仮想中心線上の前後部で駆動回転可能に保持される2つの球体輪と、仮想中心線に直交する仮想直交線上で回転可能に保持されると共に2つの球体輪よりも左右外側に配置され、2つの球体輪よりも小さい2つの補助球体輪と、によりなることとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面の左右部で車椅子の一対の後輪を載置する車輪載置部を有した平板状の基体プレートと、
前記基体プレートの平面視において、
一対の前記車輪載置部同士の間の中心部分で各前記車輪載置部と平行に伸延する仮想中心線上の前後部で駆動回転可能に保持される2つの球体輪と、
前記仮想中心線に直交する仮想直交線上で回転可能に保持されると共に2つの前記球体輪よりも左右外側に配置され、2つの前記球体輪よりも小さい2つの補助球体輪と、により構成され、
2つの前記球体輪の球中心を一対の前記車輪載置部の高さ位置より上方配置したことを特徴とする車椅子アタッチメント。
【請求項2】
2つの前記球体輪はそれぞれ前記仮想直交線に線対称で配置されると共に2つの前記補助球体輪はそれぞれ前記仮想中心線に線対称で配置され、一対の前記車輪載置部に一対の前記後輪を載置した際に前記基体プレートに掛かる前記車椅子重量の重心が前記仮想中心線と前記仮想直交線の交差部分又はその近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車椅子アタッチメント。
【請求項3】
2つの前記補助球体輪は、それぞれサスペンションを介して前記保持がされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車椅子アタッチメント。
【請求項4】
一対の前記車輪載置部に載置される一対の前記後輪の後側面部に当接して移動を規制する後退ストッパを備えることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車椅子アタッチメント。
【請求項5】
一対の前記後輪の前側面部に当接して一対の前記後退ストッパとともに前記後輪を挟持する前進ストッパを備え、一対の前記前進ストッパは、前記基体プレート上における左右位置を調節可能に構成したことを特徴とする請求項4に記載の車椅子アタッチメント。
【請求項6】
前記基体プレートにおける一対の前記車輪載置部は、前方から後方へかけて下方傾斜する傾斜面部に形成したことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の車椅子アタッチメント。
【請求項7】
一対の前記球体輪はそれぞれ、前記基体プレート上で立設した内部中空の一対の方形筐体の内側で保持されるものであって、
前記方形筐体は、内部で前記球体輪の球面に当接して前記球体輪を支持するボールキャスタを複数備え、前記基体プレート上における突設高さを前記車椅子に干渉しない高さにしたことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の車椅子アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動式の車椅子に後付け装着して同車椅子を電動式仕様にすることができる車椅子アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手動式の車椅子は、搭乗者が左右一対の後輪外側でそれぞれ連結したハンドリムを手で回転操作したり、又は介助者が手押しハンドルを押し操作したりすることにより、人力で前後左右へ移動できるように構成している。
【0003】
かかる手動式の車椅子は、例えば、坂道を移動したり進行方向の切り返しをしたりする場合や、搭乗者や介助者などの車椅子利用者が非力であったりする場合には、自由な移動が制限されて走行利便性が低下する問題があった。
【0004】
このような問題に対し、既存の手動式の車椅子に後付けして同車椅子を電動式仕様にし、駆動輪の駆動力で移動させる車椅子アタッチメントが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
例えば、特許文献1には、上面に車椅子の一対の後輪を車輪載置部を有した方形箱型状の筐体と、筐体内の四隅に配置され、筐体底部で球面を露出させ、それぞれ全方位回転駆動する4つの球体輪と、で構成した車椅子アタッチメントが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、上面に一対の車輪載置部を有した略平板状の基体プレートと、基体プレートの左右外側に設けた左右一対の駆動輪と、で構成した車椅子アタッチメントが開示されている。
【0007】
これらの車椅子アタッチメントによれば、後輪を載置固定した車椅子を任意の方向へスムーズに転換すると共に電力駆動させて車椅子の走行利便性を向上させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-173570号公報
【特許文献2】特開2011-87728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の車椅子タッチメントは、いずれもその構造上、車椅子への装着時の作業性に乏しかったり、種々のサイズの車椅子に適応できず汎用性に乏しいなどの問題があった。
【0010】
すなわち、特許文献1の車椅子アタッチメントによれば、筐体内部に4つの球体輪を配置する構造上、地上面からの筐体上面までの高さ、すなわち、車輪載置部までの高さが必然的に高くなってしまう。
【0011】
このため、アタッチメント装着時には車椅子の後輪の車輪載置部への乗り上げが困難となって車椅子利用者の作業性が悪化するばかりか、アタッチメント装着後には車椅子の車高を不用意に高くしてしまい走行姿勢を不安定にして搭乗者の安全性に問題があった。
【0012】
また、基本的に、手動式の車椅子には、身体の大きさや障害程度など、搭乗者の身体的特徴に合わせて大、中、小のサイズがある。すなわち、車椅子は、これら種々のサイズごとに車幅、すなわち一対の後輪同士の離間距離が異なるものが多々存在する。
【0013】
特許文献2に係る車椅子アタッチメントによれば、車椅子の後輪をすくい上げるように地上面から低い位置で車輪載置部を形成しているため車椅子の乗り上げ作業を容易に行うことができるが、基体プレートの左右外側に設けた一対の駆動輪によりその内側の一対の車輪載置部同士の間隔幅が自ずと限定されることとなる。
【0014】
すなわち、一対の駆動輪を基体プレートの左右外側に設ける構造上、載置可能な車椅子の車幅の種類が一対の駆動輪の離間幅により決定されることとなり、各車輪載置部のスペースの自由度が少なくなって装着対応できる車椅子の種類が必然的に限定されてしまって汎用性に乏しいという問題があった。
【0015】
仮に載置される車椅子について想定される最大車幅に合わせて車輪載置部を形成すべく一対の駆動輪同士の離間幅を拡張すると装置の全体幅が大型化してしまい、アタッチメント自体が車椅子の導線に干渉するなどの問題が生じる虞がある。特に、この理は、駆動輪を全方位回転駆動する球体輪にした場合には顕著となる。
【0016】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、既存の手動式の車椅子に後付け装着可能にして同車椅子を電動式仕様にして走行利便性を図ることは勿論、種々の車幅を有した車椅子に装着対応して汎用性を高めた車椅子アタッチメントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来の課題を解決するために、本発明では、(1)上面の左右部で車椅子の一対の後輪を載置する車輪載置部を有した平板状の基体プレートと、前記基体プレートの平面視において、一対の前記車輪載置部同士の間の中心部分で各前記車輪載置部と平行に伸延する仮想中心線上の前後部で駆動回転可能に保持される2つの球体輪と、前記仮想中心線に直交する仮想直交線上で回転可能に保持されると共に2つの前記球体輪よりも左右外側に配置され、2つの前記球体輪よりも小さい2つの補助球体輪と、により構成され、2つの前記球体輪の球中心を一対の前記車輪載置部の高さ位置より上方配置したことを特徴とする車椅子アタッチメント。
【0018】
また、本発明に係る車椅子アタッチメントは、以下(2)~(6)の点で特徴を有する。
(2)2つの前記球体輪はそれぞれ前記仮想直交線に線対称で配置されると共に2つの前記補助球体輪はそれぞれ前記仮想中心線に線対称で配置され、一対の前記車輪載置部に一対の前記後輪を載置した際に前記基体プレートに掛かる前記車椅子重量の重心が前記仮想中心線と前記仮想直交線の交差部分又はその近傍に配置されること。
(3)2つの前記補助球体輪は、それぞれサスペンションを介して前記保持がされること。
(4)一対の前記車輪載置部に載置される一対の前記後輪の後側面部に当接して移動を規制する後退ストッパを備えること。
(5)一対の前記後輪の前側面部に当接して一対の前記後退ストッパとともに前記後輪を挟持する前進ストッパを備え、一対の前記前進ストッパは、前記基体プレート上における左右位置を調節可能に構成したこと。
(6)前記基体プレートにおける一対の前記車輪載置部は、前方から後方へかけて下方傾斜する傾斜面部に形成したこと。
(7)一対の前記球体輪はそれぞれ、前記基体プレート上で立設した内部中空の一対の方形筐体の内側で保持されるものであって、前記方形筐体は、内部で前記球体輪の球面に当接して前記球体輪を支持するボールキャスタを複数備え、前記基体プレート上における突設高さを前記車椅子に干渉しない高さにしたこと。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る車椅子アタッチメントによれば、上面の左右部で車椅子の一対の後輪を載置する車輪載置部を有した平板状の基体プレートと、前記基体プレートの平面視において、一対の前記車輪載置部同士の間の中心部分で各前記車輪載置部と平行に伸延する仮想中心線上の前後部で駆動回転可能に保持される2つの球体輪と、前記仮想中心線に直交する仮想直交線上で回転可能に保持されると共に2つの前記球体輪よりも左右外側に配置され、2つの前記球体輪よりも小さい2つの補助球体輪と、により構成され、2つの前記球体輪の球中心を一対の前記車輪載置部の高さ位置より上方配置したこととしたため、既存の手動式の車椅子に後付け装着可能にして同車椅子を電動式仕様にでき、平面視で全方向に走行駆動させて走行利便性を向上することができ、種々の車幅を有した車椅子に装着対応して汎用性を高めることができる効果がある。
【0020】
すなわち、基盤上の限られたスペースを有効活用して、2つの球体輪を基体プレートで前後に配置する構成としたためその分左右側に形成される車輪載置部を可及的幅広いスペースで形成でき、アタッチメントの装着可能な車椅子の種類を広げることができる。しかも、アタッチメントそのものをコンパクト化することができ、装着後の車椅子が走行する際にアタッチメントが導線に干渉することを可及的防止することができる効果がある。
【0021】
また、2つの球体輪が、それぞれの球中心を一対の車輪載置部より上方配置した構成としているため、2つの球体輪の安定した駆動力の実現を図りつつ、車輪載置部を可及的に地上面に近接させた低い位置に保持させて車椅子の後輪の乗り上げを行いやすくできる。
【0022】
さらに、アタッチメントの車椅子への装着後には、駆動回転する2つの球体輪と2つの補助球体輪との合計4つの球体輪を支点にして、車椅子の下方を4点支持するため、車椅子の重量負荷を各球体輪を支点として分散させつつ、平面視で全方位へ走行することができ、走行安定性を向上させることができる効果がある。
【0023】
また、請求項2に係る発明によれば、2つの前記球体輪はそれぞれ前記仮想直交線に線対称で配置されると共に2つの前記補助球体輪はそれぞれ前記仮想中心線に線対称で配置され、一対の前記車輪載置部に一対の前記後輪を載置した際に前記基体プレートに掛かる前記車椅子重量の重心が前記仮想中心線と前記仮想直交線の交差部分又はその近傍に配置されることとしたため、地上面における各球体輪を支点とした4点支持によるアタッチメントの姿勢を安定化させつつ、車椅子の重量負荷を各球体輪へ略均等に分散させることができ、走行安定性をより向上させることができる効果がある。
【0024】
また、請求項3に係る発明によれば、2つの前記補助球体輪は、それぞれサスペンションを介して前記保持がされることとしたため、走行する地上面に不陸や傾きがあっても、駆動回転する2つの球体輪と共にサスペンションを介して2つの補助球体輪を常時接地させた状態にすることができる。
【0025】
したがって、4つの球体輪の全てを常時接地させた4点支持状態を安定して実現し、走行時のガタツキを防止して安定した走行姿勢を保持でき、走行安定性をより向上させることができる効果がある。
【0026】
また、請求項4に係る発明によれば、一対の前記車輪載置部に載置される一対の前記後輪の後側面部に当接して移動を規制する後退ストッパを備えることとしたため、車輪載置部に載置された後輪にブレーキをかけて基体プレート上に固定して制動することができ、車椅子の装着姿勢を安定化することができる効果がある。
【0027】
また、請求項5に係る発明によれば、一対の前記後輪の前側面部に当接して一対の前記後退ストッパとともに前記後輪を挟持する前進ストッパを備え、一対の前記前進ストッパは、前記基体プレート上における左右位置を調節可能に構成したため、後退ストッパと前進ストッパとの間で車輪載置部に載置された後輪の載置固定状態をより堅実とすることができる効果がある。
【0028】
また、装着する車椅子の大きさ、すなわち、車幅に合わせて前進ストッパの後輪への当接位置を調節できるため、車椅子の車幅にあわせて後輪の載置固定状態を堅実にすることができる効果がある。
【0029】
また、請求項6に係る発明によれば、前記基体プレートにおける一対の前記車輪載置部は、前方から後方へかけて下方傾斜する傾斜面部に形成したため、車輪載置部へ車椅子を乗り上げた際には、後輪が車輪載置部の前方から後方へ向かって自然と後転することとなるため、乗り上げ作業をアシストできる効果がある。
【0030】
さらに、後退ストッパを設けた態様においては、車輪載置部で後転する後輪が後退ストッパに突き当たり係合して規制停止するため、車輪載置部における後輪の位置決めを容易に行うことができる効果がある。
【0031】
また、請求項7に係る発明によれば、一対の前記球体輪はそれぞれ、前記基体プレート上で立設した内部中空の一対の方形筐体の内側で保持されるものであって、前記方形筐体は、内部で前記球体輪の球面に当接して前記球体輪を支持するボールキャスタを複数備え、前記基体プレート上における突設高さを前記車椅子に干渉しない高さにしたため、装着時の車椅子の乗り上げ操作を速やかに行うことができる効果がある。また、球体輪をそれぞれに対応した方形筐体で保持する構成としているため、構造をシンプル化して部材コスト等を可及的低減化することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る車椅子アタッチメントを装着した状態の車椅子を示す斜視図である。
図2】本発明に係る車椅子アタッチメントの構成を示す上方斜視図である。
図3】本発明に係る車椅子アタッチメントの構成を示す平面図である。
図4】本発明に係る車椅子アタッチメントの構成を示す模式的側面図である。
図5】本発明に係る車椅子アタッチメントの前進ストッパの左右調節態様を示す模式的平面図である。
図6】本発明に係る車椅子アタッチメントの球体輪、補助球体輪、車輪載置部の相対的位置関係を示す模式的平面図である。
図7】本発明に係る車椅子アタッチメントの球体輪の構成を示す説明図である。
図8】本発明に係る車椅子アタッチメントの球体輪の構成を示す説明図である。
図9】本発明に係る車椅子アタッチメントの電気的構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の要旨は、上面の左右部で車椅子の一対の後輪を載置する車輪載置部を有した平板状の基体プレートと、前記基体プレートの平面視において、一対の前記車輪載置部同士の間の中心部分で各前記車輪載置部と平行に伸延する仮想中心線上の前後部で駆動回転可能に保持される2つの球体輪と、前記仮想中心線に直交する仮想直交線上で回転可能に保持されると共に2つの前記球体輪よりも左右外側に配置され、2つの前記球体輪よりも小さい2つの補助球体輪と、により構成され、2つの前記球体輪の球中心を一対の前記車輪載置部の高さ位置より上方配置したことを特徴とする車椅子アタッチメントを提供することにある。
【0034】
2つの前記球体輪はそれぞれ前記仮想直交線に線対称で配置されると共に2つの前記補助球体輪はそれぞれ前記仮想中心線に線対称で配置され、一対の前記車輪載置部に一対の前記後輪を載置した際に前記基体プレートに掛かる前記車椅子重量の重心が前記仮想中心線と前記仮想直交線の交差部分又はその近傍に配置されることに特徴を有する。
【0035】
また、2つの前記補助球体輪は、それぞれサスペンションを介して前記保持がされることに特徴を有する。
【0036】
また、一対の前記車輪載置部に載置される一対の前記後輪の後側面部に当接して移動を規制する後退ストッパを備えることに特徴を有する。
【0037】
また、一対の前記後輪の前側面部に当接して一対の前記後退ストッパとともに前記後輪を挟持する前進ストッパを備え、一対の前記前進ストッパは、前記基体プレート上における左右位置を調節可能に構成したことに特徴を有する。
【0038】
また、前記基体プレートにおける一対の前記車輪載置部は、前方から後方へかけて下方傾斜する傾斜面部に形成したことに特徴を有する。
【0039】
また、一対の前記球体輪はそれぞれ、前記基体プレート上で立設した内部中空の一対の方形筐体の内側で保持されるものであって、前記方形筐体は、内部で前記球体輪の球面に当接して前記球体輪を支持するボールキャスタを複数備え、前記基体プレート上における突設高さを前記車椅子に干渉しない高さにしたことに特徴を有する。
【0040】
以下、本発明に係る車椅子アタッチメントの実施例について説明する。図1は車椅子アタッチメントを装着した状態の車椅子を示す斜視図、図2椅子アタッチメントの構成を示す上方斜視図、図3は車椅子アタッチメントの構成を示す平面図、図4は車椅子アタッチメントの構成を示す模式的側面図、図5(a)及び図5(b)は車椅子アタッチメントの前進ストッパの左右調節態様を示す模式的平面図、図6(a)及び図6(b)は車椅子アタッチメントの球体輪、補助球体輪、車輪載置部の相対的位置関係を示す模式的平面図、図7(a)~図8(b)は車椅子アタッチメントの球体輪の構成を示す説明図、図9は車椅子アタッチメントの電気的構成を示す説明図である。なお、以下において、特に方向視を定めない限り、車椅子アタッチメントの進行方向を基準に前側(符号F)、後側(符号B)、左側(符号L)、右側(符号R)として説明する。
【0041】
[1.車椅子アタッチメントの概略的説明]
本実施例に係る車椅子アタッチメントAは、概略的には、図1に示すように、上面の左右部で車椅子Wの一対の後輪W1L、W1Rを載置する車輪載置部2L、2Rを有した平板状の基体プレート1と、基体プレート1において左右一対の車輪載置部2L、2R同士の間の中央前後部で駆動回転可能に保持した前後一対の球体輪3F、3Bと、基体プレート1において左右一対の車輪載置部2L、2Rよりも左右外側部でそれぞれ回転可能に保持した左右一対の補助球体輪4L、4Rと、を備えて構成している。
【0042】
本アタッチメントAは、図2に示すように全体外観凸状の駆動台車とし、図3に示すように凸状の中央突出部に相当する基体プレート1の幅方向中央部を球体輪3F、3Bなどの動力源を密集配置した動力源配置領域11にする共に、凸状の左右フランジ部に相当する基体プレート1の幅方向左右部を可及的広くした車輪載置部2L、2Rを形成する車輪積載領域10L、10Rにして構成している。
【0043】
本アタッチメントAが装着される手動式の車椅子Wは、例えば道路などの屋外や建築物などの屋内やなど車椅子Wの利用場所での搭乗者の利便性を配慮した搭乗者の上半身の可動範囲を確保する人間工学的寸法や車椅子Wの前後進や方向転換などの基本動作寸法で設計されたものである。
【0044】
このような車椅子Wは、例えばJIS規格(JIS T9201)や国際標準化機構(ISO 7193、7176/5)などの規格標準で定められた寸法に則り作製されたものや、それ以外の特殊仕様の寸法で作製されたものも含む。
【0045】
すなわち、本アタッチメントAは、こうした人間工学的寸法や基本動作寸法により作製された車椅子Wが有する本来的な搭乗者の利便性を損なうことなく、車椅子Wについて種々ある車幅のうち少なくとも最大幅以上の幅、且つ装着後に各施設での導線に干渉しない幅で構成している。
【0046】
本アタッチメントAを装着した車椅子Wは、中央の動力源配置領域11を跨いだ状態で左右側の車輪載置部2L、2Rにそれぞれ後輪W1L、W1Rを載置固定すると共に、前輪W2L、W2Rを地上面に接地させ、前後一対の球体輪3F、3Bと左右一対の補助球体輪4L、4Rにより下方支持されながら電動で走行する。
【0047】
なお、詳細については後述するが、球体輪3F、3Bは、球体輪3F、3Bの球面に圧接されると共に同球体輪3F、3Bを中心に直角に配置された2つの駆動ローラ30、31により駆動回転する。
【0048】
すなわち、アタッチメントAの車椅子Wへの装着後には、2つの球体輪3F、3Bと2つの補助球体輪4L、4Rとの合計4つの球体輪を支点にして、車椅子Wを下方から4点支持するため、車椅子Wの重量負荷を各球体輪3F~4Rを支点として分散させつつ、平面視で全方位へ走行することができ、走行安定性を図ることができる。
【0049】
このように本発明の車椅子アタッチメントAは、既存の手動式の車椅子Wに後付け対応して同車椅子Wを電動式仕様へ簡易に変更できるだけでなく、適応できる車幅を拡張して車椅子Wへの汎用性と車椅子利用者の利便性を向上でき、方向転換操作をすることなく平面視で任意の方向、すなわち全方位へ走行できる画期的発明である。
【0050】
[2.車椅子アタッチメントの具体的構成]
以下、本アタッチメントAの具体的構成について説明する。基体プレート1は、平面視矩形の扁平薄板状であって、例えば金属や硬質樹脂などの剛性素材で形成している。基体プレート1は少なくとも車椅子Wの車幅以上となる幅で形成しており、その寸法は例えば横幅760mm~800mm、前後長さ460~500mmである。
【0051】
基体プレート1の所定位置には、図3に示すように、球体輪3F、3Bや補助球体輪4L、4Rをそれぞれ回転可能に挿入配置するための球体輪配置孔が複数貫通して形成されている。なお、基体プレート1の角部はR面取りされている。
【0052】
基体プレート1において、一対の車輪載置部2L、2Rの各左右幅(車輪積載領域10L、10Rの各幅)は、図3に示すように、一対の球体輪3F、3Bが配置される動力源配置領域11の左右幅と略同じかそれ以下となるようにしている。
【0053】
これにより、基体プレート1上における各車輪載置部2L、2Rの左右幅を可及的拡張化して車椅子Wの車幅に可及的広く対応することができ、アタッチメントをさらにコンパクト化できる。
【0054】
また、図2及び図3に示すように、基体プレート1の車輪積載領域10L、10Rの長手方向の後部、すなわち車輪載置部2L、2Rの後方位置にはそれぞれ、給電用のバッテリー9と、球体輪3F、3Bの回転駆動を制御する制御部6と、が配設されている。
【0055】
具体的には、車輪積載領域10L、10Rの長手において、前方側から約2/3領域部分に車輪載置部2L、2Rを形成し、後方側から約1/3領域部分に重量物である制御部6及びバッテリー9を設けている。なお、図3中、符号13はアタッチメント持ち運び用の逆U字状の取っ手である。
【0056】
一対の車輪載置部2L、2Rは、図2に示すように、平面視で基体プレート1上面で互いに左右対称にそれぞれ前後方向に長尺伸延する長方形領域部分として形成している。かかる車輪載置部2L、2Rの前端部、すなわち基体プレート1の前端の上側角部は面取りして、車椅子Wの後輪W1L、W1Rを乗り入れ易くしている。
【0057】
また、各車輪載置部2L、2Rは、図4に示すように、前方から後方へかけて下方傾斜する傾斜面部に形成している。基体プレート1に保持した前後一対の球体輪3F、3Bのうち、基体プレート1を基準に、後方球体輪3Bを前方球体輪3Fよりも高い位置で支持することにより、側面視で基体プレート1全体を下方傾斜させて車輪載置部2L、2Rを傾斜面部に形成している。
【0058】
具体的には、後方球体輪3Bは、図4に示すように、基体プレート1上面において、所定厚みを有した板状の嵩上スペーサー12を後述する後方側の方形筐体5Bと基体プレート1との間に介在させて同方形筐体5Bに保持されることにより、球中心SBを前方球体輪3Fの球中心SFよりも高い位置に保持している。
【0059】
これにより、球体輪3F底面から露出する後方球体輪3Bの支持部分が前方球体輪3Fの支持部分よりも短くなって基体プレート1の前後端同士の間で高低差(水平地上面からの高さの差)を形成し、結果、アタッチメントA全体の車高が前端部から後端部に行く程低くなり、基体プレート1の姿勢が前方から後方に向かって傾斜する。
【0060】
なお、水平地上面を基準に、図4に示すように、基体プレート1の前端高さh1は9~11mm、基体プレート1の後端高さh2は6~9mmとし、傾斜角度は0.3~0.6°(好ましくは0.4~0.5°)としている。また、このような車輪載置部2L、2Rの傾斜は、他の態様として例えば基体プレート1上で漸次傾斜する薄板を載置固定するなどして形成することもできる。
【0061】
これにより、車輪載置部2L、2Rへ車椅子Wを乗り上げた際には、後輪W1L、W1Rが車輪載置部2L、2Rの前方から後方へ向かって自然と後転することとなるため、乗り上げ作業をアシストすることができる。
【0062】
このような、車輪載置部2L、2Rの四側方には、図3に示すように、同車輪載置部2L、2Rに乗り上げ載置された後輪W1L、W1Rの動きを規制する後輪規制部材が設けられている。
【0063】
すなわち、複数の後輪規制部材は、図3図5(a)及び図5(b)に示すように、基体プレート1において、車輪載置部2L、2R後端で立設する後退ストッパ20L、20Rと、車輪載置部2L、2R前端で立設する前進ストッパ21L、21Rと、車輪載置部2L、2R左右両端で対面して立設する内外側ガイド22L、22R、23L、23Rと、により構成し、それぞれ車輪載置部2L、2Rの四側壁部をなしている。
【0064】
後退ストッパ20L、20Rは、帯板状のL字アングルであって、図3図5(b)に示すように、基体プレート1の後部でL字垂直部を車輪載置部2L、2Rの幅方向に沿って立上げ伸延している。
【0065】
これにより、後退ストッパ20L、20RのL字垂直部の上端部が車輪載置部2L、2Rに載置される車椅子Wの後輪W1L、W1Rの後側面部に当接して後退することを規制可能としている。また、車椅子Wの後輪W1L、W1Rを車輪載置部2L、2Rに載置した際に、車椅子Wの前後中心(車軸)を車椅子アタッチメントAの前後中心に位置合わせすることができる。
【0066】
また、内外側ガイド22L、22R、23L、23Rは、図3図5(b)に示すように、平面視へ字状に折り曲げた帯板部材であって、車輪載置部2L、2R前端の後輪W1L、W1Rが乗り上げるための進入口2aL、2aRを前方拡開させるようにそれぞれ車輪載置部2L、2Rの前後方向に沿って伸延して基体プレート1の左右部に配設している。
【0067】
具体的には、内外側ガイド22L、22R、23L、23Rは、図3図5(b)に示すように、平面視において、へ字状長辺部同士を対面させると共に、へ字状短辺部を前方へ向かって互いに外方傾斜するように配置している。
【0068】
なお、外側ガイド23L、23Rの高さは、車輪載置部2L、2Rに載置された車椅子Wの後輪W1L、W1Rの外側に付設したハンドリムに干渉しない高さとし、例えば20mmとしている。
【0069】
これにより、車椅子Wの後輪W1L、W1Rを進入口2aL、2aRから車輪載置部2L、2Rへ受け入れやすくし、車輪載置部2L、2Rに乗り上げ載置された後輪W1L、W1Rの内外側面にへ字状長辺部を対面させ、車椅子アタッチメントAの走行時における後輪W1L、W1Rの左右方向への不用意な移動を規制することができる。
【0070】
基本的に、車輪載置部2L、2R上における後輪W1L、W1Rの左右方向への移動規制は、左右一対の内側ガイド22L、22Rのみで行う。
【0071】
この左右一対の内側ガイド22L、22Rはそれぞれ、図5(a)及び図5(b)に示すように、後輪W1L、W1Rの内側面に近接面対向するように、本アタッチメントAが装着される車椅子Wの車幅、すなわち、後輪W1L、W1R同士の内幅に合わせて、基体プレート1上で左右方向に立設位置を調節可能に構成している。つまり、車輪載置部2L、2Rの幅は、後輪W1L、W1R同士の内幅に合わせた内側ガイド22L、22Rの立設位置の調節に伴って拡幅縮小する。
【0072】
これにより、車椅子Wの後輪W1L、W1Rを車輪載置部2L、2Rに載置する際に車椅子Wの車幅中心を車椅子アタッチメントAの左右中心に位置合わせすることができ、載置後には車椅子Wの左右方向の不用意な位置ズレを防止できる。
【0073】
なお、符号22aL、22aRは、基体プレート1上面で内側ガイド22L、22Rをボルトを介して立設固定するために左右方向に一定間隔で複数貫通形成したガイド位置調節孔である。
【0074】
これらの内側ガイド22L、22Rの下端部には、ガイド位置調節孔22aL、22aRに挿入した状態で基体プレート1に吸着する磁性体(磁石)が付設されており、内側ガイド22L、22Rを基体プレート1上でより安定して立設固定できるようしている。
【0075】
また、左右一対の外側ガイド23L、23Rはそれぞれ、車幅(外幅)を最大幅とする車椅子に適合する離間距離を保持して基体プレート1上に設けられる。かかる左右一対の外側ガイド23L、23R同士の離間距離は、例えば600mm~700である。
【0076】
前進ストッパ21L、21Rは、図5(a)及び図5(b)に示すように、基体プレート1の前端部で立設する枢軸21aL、21aRと、同枢軸21aL、21aRを中心にレバー21bL、21bRを介して回転すると共に、車輪載置部2L、2R前端の進入口2aL、2aRを開閉させる矩形板状の係合プレート21cL、21cRと、により構成している。
【0077】
係合プレート21cL、21cRは、レバー21bL、21bRのロック操作により枢軸21aL、21aRを中心に回転して車輪載置部2L、2R前端の進入口2aL、2aRを塞ぐように車輪載置部2L、2Rの幅方向に平行となる。
【0078】
このように、車椅子Wの車椅子アタッチメントAの装着時には、枢軸21aL、21aRを中心にレバー21bL、21bRを開放操作して係合プレート21cL、21cRを開放変位させ、車輪載置部2L、2R前端の進入口2aL、2aRを開放する。
【0079】
また、車輪載置部2L、2Rに後輪W1L、W1Rが乗り上げた後は、枢軸21aL、21aRを中心レバー21bL、21bRをにロック操作して係合プレート21cL、21cRを閉塞変位させ、係合プレート21cL、21cRで車輪載置部2L、2R前端の進入口2aL、2aRを閉塞すると共に係合プレート21cL、21cRの上端部を車輪載置部2L、2R内の後輪W1L、W1Rの前側面部に圧接係合する。
【0080】
すなわち、車輪載置部2L、2Rに載置された後輪W1L、W1Rは、図4図5(a)及び図5(b)に示すように、前進ストッパ21L、21Rと後退スッパ20L、20Rとの間において、後側面部(後輪W1L、W1Rの下方後側面部)を後退ストッパ20L、20Rに圧接係合させると共に前側面部(後輪W1L、W1Rの下方前側面部)を前進ストッパ21L、21Rに圧接係合させた状態で、両ストッパ21L、21R、20L、20Rにより前後両側から挟持固定される。
【0081】
これにより、車椅子アタッチメントAの走行時における後輪W1L、W1Rの前後方向への不用意な移動を規制して制動し、車椅子Wのアタッチメント装着姿勢を安定化させることができる。
【0082】
また、前進ストッパ21L、21Rは、前述の内側ガイド22L、22Rと同様、基体プレート1上における左右位置を調節可能に構成している。
【0083】
すなわち、前進ストッパ21L、21Rは、図5(a)及び図5(b)に示すように、車椅子Wの後輪W1L、W1R同士の離間幅に合わせ、基体プレート1上でロック状態の係合プレート21cL、21cRが後輪W1L、W1Rの前側面部に対面して位置するように、枢軸21aL、21aRの立設位置を左右方向に調節可能に構成している。
【0084】
なお、図5(a)及び図5(b)中、符号21dL、21dRは、基体プレート1上面の前端で前進ストッパ21L、21Rをボルトを介して立設固定するために左右方向に一定間隔で複数貫通形成したストッパ位置調節孔である。
【0085】
ここで、本発明に特筆すべき点は、上述のように左右側で車輪載置部2L、2Rを形成した基体プレート1において、走行駆動源となる2つの球体輪3F、3Bと、2つの球体輪よりも小さい2つの補助球体輪4L、4Rと、の相対的位置関係にある。
【0086】
すなわち、図1図3に示すように、基体プレート1の平面視において、2つの球体輪3F、3Bは、一対の車輪載置部2L、2R同士の間の中心を通ると共に各車輪載置部2L、2Rに平行に伸延する仮想中心線C1(図3中、破線鎖線で示す。)上の前後部で駆動回転可能に保持され、2つの補助球体輪4L、4Rは仮想中心線C1に直交する仮想直交線C2(図3中、一点鎖線で示す。)上で回転可能に保持されると共に2つの球体輪3F、3Bよりも左右外側に配置されている。
【0087】
特に、2つの球体輪3F、3Bはそれぞれ仮想直交線C2に線対称で配置されると共に2つの補助球体輪4L、4Rはそれぞれ仮想中心線C1に線対称で配置されている。
【0088】
また、各車輪載置部2L、2Rにそれぞれ後輪W1L、W1Rを載置した際に基体プレート1に掛かる車椅子W重量の重心が仮想中心線C1と仮想直交線C2の交差部分I又はその近傍に配置される。仮想中心線C1と仮想直交線C2の交差部分Iは、図3に示すように、平面視で基体プレート1の中心10Cよりも前方寄りに偏心して配置している。
【0089】
特に、車輪載置部2L、2Rに載置された車椅子Wの後輪W1L、W1Rの車軸は、仮想直交線C2上、又は仮想直交線C2に平行な軸に沿って配置されることとなる。
【0090】
このようにして、車椅子Wを載置固定した本アタッチメントAの地上面での姿勢を、各球体輪3F~4Rを支点とした4点支持で安定化させ、車椅子Wの重量負荷を各球体輪3F~4Rへ略均等に分散して走行安定性を向上させている。
【0091】
なお、前後一対の球体輪3F、3B同士の離間距離(球中心SF、SB同士の間の距離)と左右一対の補助球体輪4L、4R同士の離間距離(球中心SL、SR同士の間の距離)は、基体プレート1上に載置固定された車椅子Wを安定して走行できる距離であれば特に限定されない。例えば、球体輪3F、3B同士の離間距離は270~290mm、補助球体輪4L、4R同士の離間距離は710mm~730mmとすることが好ましい。
【0092】
すなわち、図5(a)に示すように、仮想中心線C1に沿って配置される2つの球体輪3F、3B同士の離間距離d1(図中、縦破線矢印で示す。)と仮想直交線C2に沿って配置される2つの補助球体輪4L、4R同士の離間距離d2(図中、横破線矢印で示す。)の関係は、d1:d2=1.0:2.0~3.0、より好ましくはd1:d2=1.0:2.4~2.8とすることで、車椅子アタッチメントAを装着した車椅子Wの姿勢が安定する。
【0093】
また、2つの球体輪3F、3Bと2つの補助球体輪4L、4Rとは、それぞれの地上面との接地支点同士を通る仮想平面を形成するように基体プレート1底面から下方突出によって、基体プレート1を地上面から一定高さに支持するように構成している。
【0094】
また、2つの球体輪3F、3Bは、図4に示すように、それぞれの球中心SF、SBを一対の車輪載置部2L、2R(基体プレート1)の高さ位置(上面)より上方に配置して基体プレート1に保持されている。
【0095】
また、2つの補助球体輪4L、4Rは、図4に示すように、後述するサスペンション40L、40Rを介して、それぞれの球中心SL、SRを一対の車輪載置部2L、2R(基体プレート1)の高さ位置又は下方に配置して保持されている。
【0096】
これにより、2つの球体輪3F、3Bの安定した駆動力の実現する駆動部材を連設させつつも、車輪載置部2L、2Rを可及的に地上面に近接させた低い位置に保持させることができ、車椅子Wの後輪W1L、W1Rの乗り上げを行い易くしている。
【0097】
球体輪3F、3Bはそれぞれ、図2図4に示すように、基体プレート1上の前後で立設した内部中空の一対の方形筐体5F、5Bの内側で保持されている。かかる球体輪3F、3Bは、同径同大であって、例えばポリカーボネイトやウレタンゴムなどの樹脂製の真球体で構成している。
【0098】
なお、球体輪3F、3Bのサイズは、図4に示すように、各球体輪3F、3Bを基体プレート1に装着した際に基体プレート1上での設置面積が広くなりすぎないように例えば100mm以下とし、可及的省スペース化を図っている。
【0099】
方形筐体5F、5Bの周囲には、図2及び図3に示すように、方形筐体5F、5B内部の球体輪3F、3Bを中心に、同球体輪3F、3Bを保持する保持部材や駆動させる駆動部材が整然と近接密集して配設されている。
【0100】
各方形筐体5F、5Bはそれぞれ、図3及び図6(a)に示すように、略立方体の箱型部材であって、内側空間で球体輪3F、3Bの球面に当接して球体輪3F、3Bの姿勢を支持するボールキャスタ50を複数備えている。
【0101】
各ボールキャスタ50は、球体輪3F、3Bに対し、平面視で球中心SF、SBに周方向で一定間隔を隔てて3つ配置すると共に側面視で球体輪3F、3Bの上半球面部に当接して球体輪3F、3Bを方形筐体5F、5B内部に保持している。
【0102】
方形筐体5F、5Bは、図7(a)、図7(b)、及び図8(b)に示すように、平面視で正方形の四隅に配置され、基体プレート1上で立設する4本の支柱51と、同4本の支柱51の上端を覆う正方形板状の天板52と、天板52の底面からブラケット53を介して回転可能に垂設支持された複数のボールキャスタ50と、を備えて構成している。
【0103】
方形筐体5F、5Bの基体プレート1上における突設高さは、その左右側の車輪載置部2L、2Rに後輪W1L、W1Rが載置された状態で、車椅子Wの車軸などに干渉しない高さとしている。
【0104】
複数のブラケット53は、図8(a)及び図8(b)に示すように、側面視へ字状に折り曲げた薄板部材であって、へ字長辺部の基端部で天板52に垂設されると共にへ字短辺部の先端部にボールキャスタ50を回転可能に連設している。
【0105】
すなわち、3つのブラケット53が、図6に示すように基端部で天板52の底面に固定すると共に、先端部を平面視で球体輪3F、3Bの球中心SF、SBに向けて放射状に配置されている。なお、各ブラケット53先端のボールキャスタ50は方形状のホルダ部材50aにより回転可能に保持されている。
【0106】
これにより、球体輪3F、3Bが地上面として凹凸面を走行した際には、各ブラケット53をサスペンションとして機能させて、各ブラケット53が弾性変形して不陸対応し、球体輪3F、3Bを常時地上面に接地状態にすることができる。なお、なお、各ブラケット53は、地上面の凹面に対応するべく球体輪3F、3Bを常時下方付勢するように配置してもよい。
【0107】
また、球体輪3F、3Bは、球中心SF、SBに向けて互いに直角方向から球面に圧接して縦回転する2つの駆動ローラ30F、31F、30B、31Bにより、前後左右へ回転するように構成している。
【0108】
駆動ローラ30F、31F、30B、31Bは、仮想中心線C1上に配置されると共に球体輪3F、3B前後一側のいずれかに圧接する前後進駆動ローラ30F、30Bと、仮想直交線C2と平行な軸に沿って配置される共に球体輪3F、3B左右一側のいずかに圧接する左右進駆動ローラ31F、31Bと、で構成している。
【0109】
各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bは、図6(a)、図6(b)、及び図8(b)に示すように、方形筐体5F、5Bにおいて、隣接する支柱51、51同士の間から方形筐体5F、5B内部に配置した球体輪3F、3Bに向けて内方突出している。
【0110】
なお、図2図3図6(a)~図7(b)の各図中、符号34F、35F、34B、35Bはそれぞれ各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bに回転軸で接続して同ローラを一体回転させる駆動モータである。
【0111】
すなわち、駆動モータは、前後進駆動ローラ30F、30Bを前後転動させる前後進駆動モータ34F、34Bと、左右進駆動ローラ31F、31Bを前後転動させる左右進駆動モータ35F、35Bと、で構成している。
【0112】
かかる構成の各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bはそれぞれ、図3図6(a)及び図6(b)に示すように、圧着付勢機構8により各球体輪3F、3Bの球中心SF、SBに向けて常時押圧付勢されることで、ローラ面を球体輪3F、3Bの球面に常時圧接している。
【0113】
圧着付勢機構8は、図7(b)及び図8(b)に示すように、方形筐体5F、5Bの側面部に対向して配設され、上面で駆動ローラ30F、31F、30B、31Bを球体輪3F、3Bに向けて滑動させるブラケットレール80と、ブラケットレール80上の駆動ローラ30F、31F、30B、31Bを球体輪3F、3Bに向けて押圧付勢する付勢バネ81と、で構成している。
【0114】
ブラケットレール80は、図7(b)に示すように、L字帯板状部材であって、駆動ローラ30F、31F、30B、31Bを連設した駆動モータ34F、35F、34B、35Bを球体輪3F、3Bの方向へ案内する水平レール溝部80aと、水平レール溝部80aの基端で立ち上げ形成した垂直壁部80bと、を有している。
【0115】
また、付勢バネ81は、図7(b)及び図8(b)に示すように、ブラケットレール80において、水平レール溝部80a上の駆動モータ34F、35F、34B、35Bと垂直壁部80bとの間に介設されている。
【0116】
これにより、付勢バネ81が、ブラケットレール80の水平レール溝部80a上で駆動モータ34F、35F、34B、35Bごと各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bを各球体輪3F、3Bに向けて常時押圧付勢し、各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bのローラ面が球体輪3F、3Bの球面に常時圧接することを可能としている。
【0117】
また、駆動ローラ30F、31F、30B、31Bと共に球体輪3F、3Bを間に介在して各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bに対向する位置には、図3図5(a)~図8(b)に示すように、球体輪3F、3Bに当接して球体輪3F、3Bを回転するを受ける球体受32F、33F、32B、33Bが配設されている。
【0118】
なお、各球体受32F、33F、32B、33Bは、ホルダ部材32aF、33aF、32aB、33aBに回転可能に保持されたボールキャスタ32bF、33bF、32bB、33bBで構成しているが、球体輪3F、3Bに接触した状態で同球体輪3F、3Bを保持して滑動できるものであれば特に限定されることはない。
【0119】
また、各球体受32F、33F、32B、33Bは、図7(a)及び図7(b)に示すように、方形筐体5F、5Bの隣接する支柱51、51同士の間に架設した帯板32cF、33cF、32cB、33cBにより、方形筐体5F、5B内部で突出支持される。
【0120】
すなわち、図7(b)及び図8(b)に示すように、各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bと球体受32F、33F、32B、33Bとは、球中心SF、SBを通り仮想中心線C1と仮想直交線C2に平行な球体輪3F、3Bの水平直径C3、C4(図7(b)及び図8(b)中、それぞれ点線で示す。)上にそれぞれ配置されると共に球体輪3F、3Bの球面部に当接して、間に球体輪3F、3Bを保持する。
【0121】
換言すれば、各球体輪3F、3Bは、図7(b)及び図8(b)に示すように、球中心SF、SBに直角方向で配置した2つの駆動ローラ30F、31F、30B、31Bと、各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bに対してそれぞれ球中心SF、SBに点対称で配置した2つの球体受32F、33F、32B、33Bと、により左右方向、及び前後方向の四方から4点接触状態で挟圧支持されるように構成している。
【0122】
このように、基体プレート1上で前後一対の球体輪3F、3Bを保持する構造として、全体を覆うハウジング構造ではなく、4つの支柱51と天板52とからなる建屋構造を採用したことで、基体プレート1上における支持部材の設置スペースを可及的省スペース化している。
【0123】
その結果、基体プレート1上において、幅方向中央の動力源配置領域11で前後方向に駆動ローラ30F、31F、30B、31Bや駆動モータ34F、35F、34B、35Bなどの駆動部材を密集して配設することができると共に、車輪載置部2L、2Rを拡幅化でき、アタッチメント全体をコンパクト化できる。
【0124】
また、左右一対の補助球体輪4L、4Rは、図2図3図5(a)~図6(b)に示すように、基体プレート1において、車輪載置部2L、2Rよりも外側の左右端部にそれぞれ配設している。
【0125】
かかる左右一対の補助球体輪4L、4Rはそれぞれ、図4に示すように、内部中空の方形状のホルダ部材4aL、4aRに回転可能に保持されると共に、サスペンション40L、40Rを介して球面を下方に向けて基体プレート1に保持されている。
【0126】
サスペンション40L、40Rは、図4に示すように、基体プレート1上で突設した方形台座41L、41Rと、方形台座41L、41Rの上面に基端を固定して水平方向に伸延すると共に自由先端で補助球体輪4L、4Rを垂設した方形帯板状の支持プレート42L、42Rと、で構成している。
【0127】
すなわち、補助球体輪4L、4Rは、前後の球体輪3F、3Bと同様、水平地上面に接地するように基端を方形台座41L、41Rに固定した支持プレート42L、42Rの自由端で片持ち支持されて基体プレート1の下方に露出して基体プレート1を下方支持されている。
【0128】
これにより、4つの球体輪の全てを常時接地させた4点支持状態を安定して実現し、走行時のガタツキを防止して安定した走行姿勢を保持できる。
【0129】
すなわち、地上面が水平面でなく凹凸面であった場合には、サスペンション40L、40Rが弾性変形して不陸対応することができる。なお、サスペンション40L、40Rは、前述の球体輪3F、3Bと同様、凹面に対応するべく補助球体輪4L、4Rをやや常時下方付勢するように構成してもよい。
【0130】
また、一対の補助球体輪4L、4Rは、図6(a)及び図6(b)に示すように、仮想中心線C1に平行な軸に沿って基体プレート1における前後位置を調節可能に構成している。具体的には、各補助球体輪4L、4Rは、基体プレート1上で、それぞれサスペンション40L、40Rごと仮想中心線C1に平行な軸に沿って前後位置を調節可能にすることにより、仮想直交線C2の前後位置を変位させるように構成している。
【0131】
なお、基体プレート1に貫通形成した補助球体輪4L、4R用の球体輪配置孔43L、43Rは図6(a)及び図6(b)に示すように平面視で長手を仮想中心線C1と平行に伸延形成した細長孔とし、同細長孔内で各補助球体輪4L、4Rの前後位置の調節に対応可能としている。
【0132】
これにより、装着される車椅子Wの車軸位置、すなわち、後輪W1L、W1Rの車輪径に応じて仮想直交線C2の位置を変更でき、車椅子Wの本アタッチメントAの装着姿勢を安定化することができる。
【0133】
[3.車椅子アタッチメントの電気的構成]
次に、制御部6における本アタッチメントAの走行移動制御を行うための電気的構成について説明する。
【0134】
制御部6は、図9に示すように、前後一対の球体輪3F、3Bをそれぞれ駆動回転させる前後進駆動ローラ30F、30B及び左右進駆動ローラ31F、31Bの各駆動モータ34F、34B、35F、35Bと、給電用のバッテリー9と、進行方向や走行スピード、電源ON・OFFなどの走行に必要な走行指示情報を入力するための入力端末7とに、電気的に接続している。
【0135】
制御部6は、CPU(中央演算装置)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、で構成している。
【0136】
ROMには各球体輪3F、3Bの回転方向や駆動力(トルク)の調整を行うための稼働制御情報が格納されており、RAMは入力端末7から入力された走行指示情報を一時的に格納する記憶領域として機能する。
【0137】
CPUには、ROMに格納された稼働制御情報とRAMに格納された走行指示情報とを参照しつつ、各球体輪3F、3Bを同期連動させて本アタッチメントAを任意の方向へ移動・停止走行するためのプログラムが格納されている。
【0138】
入力端末7は、車椅子Wの搭乗者や介助者が操作可能であれば、例えばジョイステックや操作専用のアプリケーションがインストールされたスマートフォンであってもよい。また、入力端末7と制御部6との接続方式は、例えばコードなどを用いた有線方式や電波を用いた無線方式の別を問わない。
【0139】
また、制御部6は、図9に示すように、前後進駆動モータ34F、34Bの制御を介して、前後進駆動ローラ30F、30Bを同一スピード、同一回転量及び同期連動させることにより、前後方の球体輪3F、3Bをそれぞれ同一スピード、同一回転量、前後同一方向で同期連動させる。
【0140】
また、制御部6は、図9に示すように、左右進駆動モータ35F、35Bの制御を介して、左右進駆動ローラ31F、31Bを同スピード及び同回転量で同期連動させることにより、前後方の球体輪3F、3Bをそれぞれ同一スピード、同一回転量、左右同一方向で同期連動させる。
【0141】
すなわち、前後方の球体輪3F、3Bは、制御部6により、左右前後斜めなどの全方位動作を同期して行うように制御される。
【0142】
このような構成の制御部6は、車椅子利用者が操作する入力端末7からの前後進や方向転換などの走行指示情報を受け取ると、走行指示情報に応じて球体輪3F、3Bの回転方向及び回転スピードを算出する。
【0143】
次に、制御部6は、算出した回転方向等に対応して駆動モータ34F、35F、34B、35Bを選択して各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bの回転を制御する。この際、状況に応じて駆動モータ34F、35F、34B、35Bのトルク制御を行う。
【0144】
また、制御部6は、球体輪3F、3Bの回転と車椅子W及び本アタッチメントAの運動との間の関係を予め算出し、車椅子利用者により指示された移動速度を目標値とするPID制御を行うこともできる。
【0145】
[4.車椅子アタッチメントの車椅子への装着及び走行移動制御]
次に、車椅子アタッチメントの車椅子への装着及び走行移動制御について説明する。まず、搭乗者又は介助者などの車椅子利用者は、車椅子アタッチメントAに載置する車椅子Wの後輪W1L、W1Rの同士の車幅(内幅)に合わせて、図5(a)及び図5(b)に示したように、内側ガイド22L、22Rと前進ストッパ21L、21Rの左右位置を調節しておく。
【0146】
次いで、車椅子アタッチメントAを地上面に接地させて、ブレーキ状態とする。この車椅子アタッチメントAのブレーキ状態は、入力端末7を介して電源ONにして制御部6で各球体輪3F、3Bのスピードをゼロに設定することにより実現する。
【0147】
具体的には、図9で示したように、制御部6により駆動モータ34F、35F、34B、35Bの回転を停止制御し、電磁力を利用して各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bの回転軸を固定した電磁ブレーキにより、各球体輪3F、3Bに制動摩擦力を付与して車椅子アタッチメントAのブレーキ状態を実現する。
【0148】
これにより、球体輪3F、3Bに直接摺動させるブレーキシューなどの物理的なブレーキ機構を搭載する必要がなくなり、基体プレート1を省スペース化して車椅子アタッチメントAをコンパクト化することができる。
【0149】
なお、バッテリー9からの各駆動モータ34F、35F、34B、35Bへの給電を停止させて制御OFF状態した場合であっても、球体輪3F、3Bと各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bとの間のギア比を大きくすることで、球体輪3F、3B側から各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bへの回転負荷を大きくして制動することも可能である。
【0150】
このようにして入力端末7を介してブレーキ状態とした車椅子アタッチメントAに、車椅子利用者は、車椅子Wを後退させて各後輪W1L、W1Rを地上面から基体プレート1上の各車輪載置部2L、2Rへ乗り上げ、後輪W1L、W1Rを前進ストッパ21L、21Rと後退ストッパ20L、20Rとの間に固定するアタッチメント装着作業を行う。
【0151】
具体的には、左右調節した内側ガイド22L、22Rの位置を目安に、車椅子Wの後輪W1L、W1Rを左右位置を合わせつつ、後輪W1L、W1Rの後側面部が後退ストッパ20L、20Rの上端部に突き当たるまで後退させる。
【0152】
かかる状態で、車椅子Wの車軸WSを仮想直交線C2又はその近傍の平行な軸に沿って配置される。すなわち、一対の車輪載置部2L、2Rに一対の後輪W1L、W1Rを載置した際には、基体プレート1に掛かる車椅子重量の重心が仮想中心線C1と仮想直交線C2の交差部分又はその近傍に配置される。
【0153】
このようにして、車輪載置部2L、2Rへの後輪W1L、W1Rの適切な位置への位置決めを行ったあと、最終的に車椅子Wにブレーキをかけて後輪W1L、W1Rを不動状態とし、図1に示したように後輪W1L、W1Rの車輪載置部2L、2Rへの載置固定を行った車椅子Wへの車椅子アタッチメントAの装着が完了する。
【0154】
なお、より安定した載置固定状態を実現するべく、レバー21bL、21bRのロック操作により前進ストッパ21L、21Rで車輪載置部2L、2R前端の進入口2aL、2aRを開放状態から閉塞状態とし、図4図5(b)に示したように、後退ストッパ20L、20Rと前進ストッパ21L、21Rの間で後輪W1L、W1Rを前後側から挟持固定することとしてもよい。
【0155】
具体的には、レバー21bL、21bRをロック操作して枢軸21aL、21aRを中心に係合プレート21cL、21cRで閉塞変位させ、車輪載置部2L、2R前端の進入口2aL、2aRを閉塞しつつ同係合プレート21cL、21cRの上端部を後輪W1L、W1Rの前側面部に圧接係合させる。
【0156】
次いで、車椅子利用者が、入力端末7で所望とする進行方向及び走行スピードの指示操作を行い、この走行情報を受けた制御部6が球体輪3F、3Bを駆動回転させて車椅子Wごと車椅子アタッチメントAを所望の進行方向とスピードで走行させる。
【0157】
例えば、車椅子Wを前進させる場合には、アタッチメントAにおいて、入力端末7からの前進走行情報を受信した制御部6が、各球体輪3F、3Bをそれぞれ同期連動して前方回転させるように、左右進駆動ローラ31F、31Bを停止させると共に前後進駆動ローラ30F、30Bを同期連動して相対的に後方回転させる。
【0158】
また、車椅子Wを右斜め後退させる場合には、本アタッチメントAにおいて、入力端末7からの右斜後退走行情報を受信した制御部6が、各球体輪3F、3Bをそれぞれ同期連動して右斜め後転させるように、左右進駆動31F、31Bを相対的に左回転させると共に前後進駆動ローラ30F、30Bを相対的に前回転させる。
【0159】
すなわち、球体輪3F、3Bは、それぞれ同期回転駆動する各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bの駆動回転力をそれぞれベクトル加算した方向に駆動回転される。
【0160】
その結果、球体輪3F、3Bの回転方向は、斜めの回転軸に沿う方向になる。このような球体輪3F、3Bの回転により、アタッチメントAには右斜め後退方向への推力が加えられることとなる。
【0161】
なお、本アタッチメントAは、従動輪である車椅子Wの前輪W2L、W2Rと地上面との間の摩擦力の影響を受け、本アタッチメントA及び車椅子Wが同前輪W2L、W2Rを中心に不用意に旋回することを回避するトルク制御を行う。
【0162】
すなわち、各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bをそれぞれ回転駆動する駆動モータ34F、35F、34B、35Bのトルク制御を行い、球体輪3F、3Bを駆動回転させることにより前輪W2L、W2Rと地上面との間の摩擦力を打ち消した本アタッチメントAの走行を可能としている。
【0163】
このように、制御部6により、車椅子Wの移動方向に応じた球体輪3F、3Bの速度制御を行うことで、全方向駆動を可能としている。また、制御部6は、軌道のズレに応じて各駆動ローラ30F、31F、30B、31Bをそれぞれ回転駆動する駆動モータ34F、35F、34B、35Bのトルク制御を行う。なお、トルク制御は速度制御のマイナーループに含まれ、速度制御を行うことで自動的にトルクが調整される。
【0164】
すなわち、本アタッチメントAは、各球体輪3F、3Bの回転方向及び回転速度を、制御部6により各球体輪3F、3Bに直角方向で圧着する前後進駆動ローラ30F、30B及び左右進駆動ローラ31F、31Bの相対的な回転方向と回転速度を駆動制御することにより、車椅子利用者が所望とする車椅子Wの進行方向や走行スピードを実現する。
【0165】
このように本車椅子アタッチメントAは、車椅子Wに装着されて制御部6により駆動制御され、車椅子Wの姿勢を安定させながら同車椅子Wを平面視で全方位に走行移動させることができる。
【0166】
以上説明してきたように、本発明によれば、上面の左右部で車椅子の一対の後輪を載置する車輪載置部を有した平板状の基体プレートと、前記基体プレートの平面視において、一対の前記車輪載置部同士の間の中心部分で各前記車輪載置部と平行に伸延する仮想中心線上の前後部で駆動回転可能に保持される2つの球体輪と、前記仮想中心線に直交する仮想直交線上で回転可能に保持されると共に2つの前記球体輪よりも左右外側に配置され、2つの前記球体輪よりも小さい2つの補助球体輪と、により構成され、2つの前記球体輪の球中心を一対の前記車輪載置部の高さ位置より上方配置したこととしたため、既存の手動式の車椅子に後付け装着可能にして同車椅子を電動式仕様にでき、平面視で全方向に走行駆動させて走行利便性を向上することができ、種々の車幅を有した車椅子に装着対応して汎用性を高めることができる効果がある。
【0167】
すなわち、基盤上の限られたスペースを有効活用して、2つの球体輪を基体プレートで前後に配置する構成としたためその分左右側に形成される車輪載置部を可及的幅広いスペースで形成でき、アタッチメントの装着可能な車椅子の種類を広げることができる。しかも、アタッチメントそのものをコンパクト化することができ、装着後の車椅子が走行する際にアタッチメントが導線に干渉することを可及的防止することができる効果がある。
【0168】
また、2つの球体輪が、それぞれの球中心を一対の車輪載置部より上方配置した構成としているため、2つの球体輪の安定した駆動力の実現を図りつつ、車輪載置部を可及的に地上面に近接させた低い位置に保持させて車椅子の後輪の乗り上げを行いやすくできる効果がある。
【0169】
さらに、アタッチメントの車椅子への装着後には、駆動回転する2つの球体輪と2つの補助球体輪との合計4つの球体輪を支点にして、車椅子の下方を4点支持するため、車椅子の重量負荷を各球体輪を支点として分散させつつ、平面視で全方位へ走行することができ、走行安定性を向上させることができる効果がある。
【0170】
また、2つの前記球体輪はそれぞれ前記仮想直交線に線対称で配置されると共に2つの前記補助球体輪はそれぞれ前記仮想中心線に線対称で配置され、一対の前記車輪載置部に一対の前記後輪を載置した際に前記基体プレートに掛かる前記車椅子重量の重心が前記仮想中心線と前記仮想直交線の交差部分又はその近傍に配置されることとしたため、地上面における各球体輪を支点とした4点支持によるアタッチメントの姿勢を安定化させつつ、車椅子の重量負荷を各球体輪へ略均等に分散させることができ、走行安定性をより向上させることができる効果がある。
【0171】
また、2つの前記補助球体輪は、それぞれサスペンションを介して前記保持がされることとしたため、走行する地上面に不陸や傾きがあっても、駆動回転する2つの球体輪と共にサスペンションを介して2つの補助球体輪を常時接地させた状態にすることができる。
【0172】
したがって、4つの球体輪の全てを常時接地させた4点支持状態を安定して実現し、走行時のガタツキを防止して安定した走行姿勢を保持でき、走行安定性をより向上させることができる効果がある。
【0173】
また、一対の前記車輪載置部に載置される一対の前記後輪の後側面部に当接して移動を規制する後退ストッパを備えることとしたため、車輪載置部に載置された後輪にブレーキをかけて基体プレート上に固定して制動することができ、車椅子の装着姿勢を安定化することができる効果がある。
【0174】
また、一対の前記後輪の前側面部に当接して一対の前記後退ストッパとともに前記後輪を挟持する前進ストッパを備え、一対の前記前進ストッパは、前記基体プレート上における左右位置を調節可能に構成したため、後退ストッパと前進ストッパとの間で車輪載置部に載置された後輪の載置固定状態をより堅実にすることができる効果がある。
【0175】
また、装着する車椅子の大きさ、すなわち、車幅に合わせて前進ストッパの後輪への当接位置を調節できるため、車椅子の車幅にあわせて後輪の載置固定状態を堅実にすることができる効果がある。
【0176】
また、前記基体プレートにおける一対の前記車輪載置部は、前方から後方へかけて下方傾斜する傾斜面部で形成したため、車輪載置部へ車椅子を乗り上げた際には、後輪が車輪載置部の前方から後方へ向かって自然と後転することとなるため、乗り上げ作業をアシストできる効果がある。
【0177】
さらに、後退ストッパを設けた態様においては、車輪載置部で後転する後輪が後退ストッパに突き当たり係合して規制停止するため、車輪載置部における後輪の位置決めを容易に行うことができる効果がある。
【0178】
また、一対の前記球体輪はそれぞれ、前記基体プレート上で立設した内部中空の一対の方形筐体の内側で保持されるものであって、前記方形筐体は、内部で前記球体輪の球面に当接して前記球体輪を支持するボールキャスタを複数備え、前記基体プレート上における突設高さを前記車椅子に干渉しない高さにしたため、装着時の車椅子の乗り上げ操作を速やかに行うことができる効果がある。また、球体輪をそれぞれに対応した方形筐体で保持する構成としているため、構造をシンプル化して部材コスト等を可及的低減化することができる効果がある。
【0179】
すなわち、本発明によれば、既存の手動式の車椅子に後付け装着可能にして同車椅子を電動式仕様にして走行利便性を図ることは勿論、装着対応できる車椅子の種類を拡張して汎用性を高めた車椅子アタッチメントを提供することができる。
【符号の説明】
【0180】
A 車椅子アタッチメント、C1 仮想中心線、C2 仮想直交線、SF(SB) 球中心、SL(SR) 球中心、1 基体プレート、10L(10R)車輪積載領域、11 動力源配置領域、12 嵩上スペーサー、2L(2R) 車輪載置部、20L(20R) 後退ストッパ、21L(21R) 前進ストッパ、22L(22R) 内側ガイド、23L(23R) 外側ガイド、3F(3B) 球体輪、30F(30B) 前後進駆動ローラ、31F(31B) 左右進駆動ローラ、32F(32B) 球体受、33F(33B) 球体受、34F(34B) 前後進駆動モータ、35F(35B) 左右進駆動モータ、4L(4R) 補助球体輪、40L(40R) サスペンション、41L(41R) 方形台座、42L(42R) 支持プレート、5F(5B) 方形筐体、50 ボールキャスタ、51 支柱、52 天板、53 ブラケット、6 制御部、7 入力端末、8 圧着付勢機構、80 ブラケットレール、80a 水平レール溝部、80b 垂直壁部、81 付勢バネ、9 バッテリー
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9