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特開2023-144675地下水処理支援装置及び地下水処理支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144675
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】地下水処理支援装置及び地下水処理支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20231003BHJP
   E02D 1/02 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
E02D3/10
E02D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051775
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 歩
(72)【発明者】
【氏名】林 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 崇
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 陽平
(72)【発明者】
【氏名】水野 皓太
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA05
2D043AA07
2D043DA10
(57)【要約】
【課題】不透水層に起因する地下水の対策に寄与することができる地下水処理支援装置及び地下水処理支援プログラムを得る。
【解決手段】地下水処理支援装置10は、対象とする領域の複数の地点における地盤調査によって得られた不透水層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得する取得部11Aと、取得した複数の地点に対応する深さ情報及び2次元位置情報を用いて、対象とする領域における不透水層の3次元位置を示す3次元位置情報を導出する導出部11Bと、導出した3次元位置情報を用いて、対象とする領域における地下水の処理に関する支援情報を提示する提示部11Cと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする領域の複数の地点における地盤調査によって得られた不透水層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得する取得部と、
取得した前記複数の地点に対応する前記深さ情報及び前記2次元位置情報を用いて、前記対象とする領域における前記不透水層の3次元位置を示す3次元位置情報を導出する導出部と、
導出した前記3次元位置情報を用いて、前記対象とする領域における地下水の処理に関する支援情報を提示する提示部と、
を備えた地下水処理支援装置。
【請求項2】
前記支援情報は、前記地下水の排水の可否に関する情報、及び前記地下水の処理に関する情報の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の地下水処理支援装置。
【請求項3】
前記地下水の処理に関する情報は、前記地下水の排水経路を示す情報を含む、
請求項2に記載の地下水処理支援装置。
【請求項4】
前記3次元位置情報を用いて、当該3次元位置情報の精度の向上に寄与する、前記複数の地点とは異なる地盤調査の地点を特定する特定部を更に備え、
前記提示部は、特定した地盤調査の地点を更に提示する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の地下水処理支援装置。
【請求項5】
対象とする領域の複数の地点における地盤調査によって得られた不透水層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得し、
取得した前記複数の地点に対応する前記深さ情報及び前記2次元位置情報を用いて、前記対象とする領域における前記不透水層の3次元位置を示す3次元位置情報を導出し、
導出した前記3次元位置情報を用いて、前記対象とする領域における地下水の処理に関する支援情報を提示する、
処理をコンピュータに実行させるための地下水処理支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水処理支援装置及び地下水処理支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
過去に採石等が行われた土地では、その埋め戻しが適切に行われていないことがある。また、造成の基準等に準拠する必要がないケースもある。
【0003】
一方で、採石できるような強固な地盤は水を透し難いため、排水計画が適切に策定されない場合、地下水が溜まってしまう場合がある。この場合、埋め戻しが不十分なことも相まって、地震時の液状化の原因となることがある。特に、その場所が山の斜面のような場所であった場合、土砂崩れの原因となることも考えられる。
【0004】
従来、地下水の排水計画を効果的に策定するために適用することのできる技術として次の技術があった。
【0005】
特許文献1には、少ないボーリング本数で三次元的な地下水等の解析を行うことができるようにすることを目的とした地下水処理方法が開示されている。
【0006】
この地下水処理方法では、調査範囲内の地盤を、曲線ボーリングを用いて削孔し、該削孔内の任意点で水圧、流速、流向または土質等の調査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-321991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、不透水層を検出することができないため、不透水層に起因する地下水の対策に寄与することができない、という問題点があった。
【0009】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、不透水層に起因する地下水の対策に寄与することができる地下水処理支援装置及び地下水処理支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明に係る地下水処理支援装置は、対象とする領域の複数の地点における地盤調査によって得られた不透水層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得する取得部と、取得した前記複数の地点に対応する前記深さ情報及び前記2次元位置情報を用いて、前記対象とする領域における前記不透水層の3次元位置を示す3次元位置情報を導出する導出部と、導出した前記3次元位置情報を用いて、前記対象とする領域における地下水の処理に関する支援情報を提示する提示部と、を備えている。
【0011】
請求項1に記載の本発明に係る地下水処理支援装置によれば、対象とする領域の複数の地点における地盤調査によって得られた不透水層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得し、取得した複数の地点に対応する深さ情報及び2次元位置情報を用いて、対象とする領域における不透水層の3次元位置を示す3次元位置情報を導出し、導出した3次元位置情報を用いて、対象とする領域における地下水の処理に関する支援情報を提示することで、不透水層に起因する地下水の対策に寄与することができる。
【0012】
請求項2に記載の本発明に係る地下水処理支援装置は、請求項1に記載の地下水処理支援装置であって、前記支援情報が、前記地下水の排水の可否に関する情報、及び前記地下水の処理に関する情報の少なくとも一方を含むものである。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る地下水処理支援装置によれば、支援情報を、地下水の排水の可否に関する情報、及び地下水の処理に関する情報の少なくとも一方を含むものとすることで、適用した情報に応じた、不透水層に起因する地下水の対策を講じることができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明に係る地下水処理支援装置は、請求項2に記載の地下水処理支援装置であって、前記地下水の処理に関する情報が、前記地下水の排水経路を示す情報を含むものである。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る地下水処理支援装置によれば、地下水の処理に関する情報を、地下水の排水経路を示す情報を含むものとすることで、当該排水経路を利用した、不透水層に起因する地下水の対策を講じることができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係る地下水処理支援装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の地下水処理支援装置であって、前記3次元位置情報を用いて、当該3次元位置情報の精度の向上に寄与する、前記複数の地点とは異なる地盤調査の地点を特定する特定部を更に備え、前記提示部が、特定した地盤調査の地点を更に提示するものである。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る地下水処理支援装置によれば、3次元位置情報を用いて、当該3次元位置情報の精度の向上に寄与する、上記複数の地点とは異なる地盤調査の地点を特定して提示することで、より高精度に3次元位置情報を導出することができる結果、より的確に、不透水層に起因する地下水の対策を講じることができる。
【0018】
請求項5に記載の本発明に係る地下水処理支援プログラムは、対象とする領域の複数の地点における地盤調査によって得られた不透水層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得し、取得した前記複数の地点に対応する前記深さ情報及び前記2次元位置情報を用いて、前記対象とする領域における前記不透水層の3次元位置を示す3次元位置情報を導出し、導出した前記3次元位置情報を用いて、前記対象とする領域における地下水の処理に関する支援情報を提示する、処理をコンピュータに実行させる。
【0019】
請求項5に記載の本発明に係る地下水処理支援プログラムによれば、対象とする領域の複数の地点における地盤調査によって得られた不透水層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得し、取得した複数の地点に対応する深さ情報及び2次元位置情報を用いて、対象とする領域における不透水層の3次元位置を示す3次元位置情報を導出し、導出した3次元位置情報を用いて、対象とする領域における地下水の処理に関する支援情報を提示することで、不透水層に起因する地下水の対策に寄与することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、不透水層に起因する地下水の対策に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る地下水処理支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る地下水処理支援装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る地下水処理支援装置で適用されるANAGO(登録商標)の説明に供する時系列順の断面図である。
図4】実施形態に係る追加ボーリング地点の決定方法の説明に供する平面図である。
図5】実施形態に係るボーリング情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図6】実施形態に係る3次元位置情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図7】実施形態に係る対象領域におけるボーリング位置の一例を示す平面図である。
図8】実施形態に係る地下水処理支援処理の一例を示すフローチャートである。
図9】実施形態に係るボーリング地点提示画面の一例を示す正面図である。
図10】実施形態に係る支援画面の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明の地盤調査としてボーリング調査を適用した場合について説明するが、これに限るものではない。例えば、液状化調査、土質調査、現況敷地調査等の他の地盤調査を本発明の地盤調査として適用する形態としてもよい。
【0023】
まず、図1図2を参照して、本実施形態に係る地下水処理支援装置10の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る地下水処理支援装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。また、図2は、本実施形態に係る地下水処理支援装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。なお、地下水処理支援装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の情報処理装置が挙げられる。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る地下水処理支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16、及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16、及び通信I/F部18はバスBを介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0025】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、地下水処理支援プログラム13Aが記憶されている。地下水処理支援プログラム13Aは、当該プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの当該プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶(インストール)される。CPU11は、地下水処理支援プログラム13Aを記憶部13から適宜読み出してメモリ12に展開し、地下水処理支援プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0026】
また、記憶部13には、ボーリング情報データベース13B及び3次元位置情報データベース13Cが記憶される。ボーリング情報データベース13B及び3次元位置情報データベース13Cについては、詳細を後述する。
【0027】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る地下水処理支援装置10の機能的な構成について説明する。
【0028】
図2に示すように、本実施形態に係る地下水処理支援装置10は、取得部11A、導出部11B、提示部11C、及び特定部11Dを含む。地下水処理支援装置10のCPU11が地下水処理支援プログラム13Aを実行することで、取得部11A、導出部11B、提示部11C、及び特定部11Dとして機能する。
【0029】
本実施形態に係る取得部11Aは、対象とする領域(以下、「対象領域」という。)の複数の地点における地盤調査(本実施形態ではボーリング調査であるが、以下、「地盤調査」ともいう。)によって得られた不透水層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得する。なお、本実施形態では、これらの深さ情報及び2次元位置情報を、記憶部13に予め記憶されたボーリング情報データベース13Bから読み出すことによって取得しているが、これに限るものではない。例えば、入力部14を介して入力されたか、又は通信I/F部18を介して受信された深さ情報及び2次元位置情報を取得することで、当該深さ情報及び2次元位置情報を取得する形態としてもよい。以下では、取得部11Aによって取得された深さ情報及び2次元位置情報を得る際に行ったボーリング調査を「初期ボーリング調査」ともいう。
【0030】
また、本実施形態に係る導出部11Bは、取得部11Aによって取得された複数の地点に対応する深さ情報及び2次元位置情報を用いて、対象領域における不透水層の3次元位置を示す3次元位置情報を導出する。なお、本実施形態に係る地下水処理支援装置10では、この3次元位置情報の導出を、株式会社竹中工務店によって開発されたシステムであるANAGO(登録商標)(ANAlysis for Geologic Optimum)を利用して行っている。ANAGO(登録商標)は、直接見ることができない地中の支持層を3次元モデル化することで、必要な杭の長さを可視化する設計・施工管理システムである。図3には、本実施形態に係る地下水処理支援装置10で適用されるANAGO(登録商標)の説明に供する時系列順の断面図が示されている。
【0031】
図3に示すように、ANAGO(登録商標)は、ボーリングデータと杭の施工結果から判明した支持層の深さや傾斜を日々追加される最新データを基に補正し、3次元で可視化するとともに、今後打設する杭の支持層までの長さを自動的に判定するシステムである。なお、図3における上段の左端の図及び上段の中央の図が設計段階の状況を示す図であり、残りの図が施工段階の状況を示す図である。ANAGO(登録商標)は従来既知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0032】
本実施形態に係る導出部11Bは、ANAGO(登録商標)による処理の過程で得られる支持層の3次元モデルを用いて、当該支持層の上面の3次元位置を、不透水層の上面の3次元位置として導出する。このように、本実施形態に係る地下水処理支援装置10では、本出願人によるANAGO(登録商標)を用いて3次元位置情報を導出しているが、これに限るものではない。例えば、従来既知のBIM(Building Information Modeling)モデルや、3次元CAD(Computer Aided Design)システムを用いて3次元位置情報を導出する形態としてもよい。
【0033】
そして、本実施形態に係る提示部11Cは、導出部11Bによって導出された3次元位置情報を用いて、対象領域における地下水の処理に関する支援情報を提示する。なお、本実施形態に係る提示部11Cでは、各種情報の提示として、表示部15を用いた表示による提示を適用しているが、これに限るものではない。例えば、マイクロフォン等の音声再生装置を用いた音声による提示や、プリンタ等の画像形成装置を用いた印刷による提示を、提示部11Cによる各種情報の提示として適用する形態としてもよい。
【0034】
本実施形態に係る地下水処理支援装置10では、支援情報として、地下水の排水の可否に関する情報、及び地下水の処理に関する情報の双方を含む情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、地下水の排水の可否に関する情報、及び地下水の処理に関する情報の何れか一方のみを支援情報として適用する形態としてもよい。
【0035】
また、本実施形態に係る地下水処理支援装置10では、地下水の処理に関する情報として、地下水の排水経路を示す情報を含む情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、地下水の処理に関する各種アドバイスを示す情報を、地下水の処理に関する情報として適用する形態としてもよい。この形態におけるアドバイスを示す情報としては、地中に雨水等の抜け道があるかどうかを示す情報、抜け道がない場合は、どのような排水ルートを設けるのが最適かを示す情報(例えば、調整池に向けた排水経路の候補を示す情報)、TOFT工法(耐震固化工法)(登録商標)や、サンドコンパクション等の液状化対策工事の実施を提案する情報等を例示することができる。
【0036】
また、本実施形態では、地下水の排水経路を示す情報として、対象領域のコンター図及び断面図の双方を適用しているが、これに限るものではない。例えば、対象領域のコンター図及び断面図の何れか一方のみを、地下水の排水経路を示す情報として適用する形態としてもよい。
【0037】
一方、本実施形態に係る特定部11Dは、上述した3次元位置情報を用いて、当該3次元位置情報の精度の向上に寄与する、上述した複数の地点とは異なる地盤調査(以下、「追加ボーリング調査」という。)の地点を特定する。そして、本実施形態に係る提示部11Cは、特定部11Dによって特定された追加ボーリング調査の地点を更に提示する。
【0038】
特に、本実施形態に係る特定部11Dでは、3次元位置情報により示される不透水層の上面の凹凸の度合い(以下、「凹凸度」という。)が高い区分領域ほど、多くの地点を追加ボーリング調査の地点として特定する。
【0039】
また、本実施形態に係る特定部11Dでは、3次元位置情報により示される不透水層の上面の傾斜度が高い区分領域ほど、多くの地点を追加ボーリング調査の地点として特定する。
【0040】
即ち、本実施形態では、一例として図4に示すように、対象領域50の複数の初期ボーリング地点52において初期ボーリング調査を実施する。そして、本実施形態に係る地下水処理支援装置10では、初期ボーリング調査によって得られた深さ情報及び2次元位置情報を取得部11Aにより取得し、取得した情報を用いて、導出部11B及び特定部11Dにより追加ボーリング地点54を決定し、決定した追加ボーリング地点54を提示部11Cによって提示する。なお、図4は、本実施形態に係る追加ボーリング地点の決定方法の説明に供する平面図である。
【0041】
次に、図5を参照して、本実施形態に係るボーリング情報データベース13Bについて説明する。図5は、本実施形態に係るボーリング情報データベース13Bの構成の一例を示す模式図である。
【0042】
図5に示すように、本実施形態に係るボーリング情報データベース13Bは、対象領域ID(Identification)、初期情報、及び追加情報の各情報が関連付けられて記憶されるものである。
【0043】
上記対象領域IDは、対象領域を個別に識別するために、対象領域毎に異なるものとして予め付与された情報である。
【0044】
また、上記初期情報は、上述した初期ボーリング調査に関する情報であり、ボーリング位置及び深さの各情報が含まれている。ここで、上記ボーリング位置は、初期ボーリング調査を行った地点の2次元位置を示す情報であり、上述した2次元位置情報に相当する。なお、本実施形態では、ボーリング位置を示す情報として、緯度及び経度の各情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、対象領域毎に予め定めた基準位置を原点とした2次元座標位置を、ボーリング位置を示す情報として適用する形態としてもよい。また、上記深さは、対応する初期ボーリング調査で得られた不透水層の上面の位置を示す情報であり、上述した深さ情報に相当する。なお、本実施形態では、深さを示す情報として、地表面からの深さを示す情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、不透水層の上面の海抜を示す情報を、深さを示す情報として適用する形態としてもよい。
【0045】
更に、上記追加情報は、上述した追加ボーリング調査に関する情報であり、ボーリング位置及び深さの各情報が含まれている。ここで、上記ボーリング位置は、追加ボーリング調査を行った地点の2次元位置を示す情報であり、上述した初期情報のボーリング位置と同様の情報である。また、上記深さは、対応する追加ボーリング調査で得られた不透水層の上面の位置を示す情報であり、上述した初期情報の深さを示す情報と同様の情報である。
【0046】
次に、図6を参照して、本実施形態に係る3次元位置情報データベース13Cについて説明する。図6は、本実施形態に係る3次元位置情報データベース13Cの構成の一例を示す模式図である。
【0047】
図6に示すように、本実施形態に係る3次元位置情報データベース13Cは、対象領域ID及3次元位置情報の各情報が関連付けられて記憶されるものである。
【0048】
上記対象領域IDは、ボーリング情報データベース13Bの対象領域IDと同一の情報であり、3次元位置情報は、対応する初期情報を用いて導出された、上述した3次元位置情報である。
【0049】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る対象領域の具体例について説明する。図7は、本実施形態に係る対象領域におけるボーリング位置の一例を示す平面図である。
【0050】
図7に示すように、本実施形態に係る地下水処理支援装置10では、対象領域として、建物が建設される、平面視矩形状の領域(以下、「建物領域」という。)62を含む敷地である対象領域60を含む。対象領域60の建物領域62の西側には、建物領域62よりも低地とされ、調整池を造成する予定とされている調整池予定領域64がある。
【0051】
一例として図7に示すように、本実施形態に係る対象領域60においては、初期ボーリング地点として、建物領域62の4角点に位置する地点C、地点D、地点G、及び地点Hの4地点(以下、「初期4地点」という。)が予め決定されている。また、本実施形態に係る対象領域60では、後述する地下水処理支援処理(図8も参照。)により、追加ボーリング地点として、初期4地点よりも建物領域62の外側の領域に位置する地点A、地点B、地点E、及び地点Fの4地点(以下、「追加4地点」という。)が決定される。
【0052】
次に、図8図10を参照して、本実施形態に係る地下水処理支援装置10の作用を説明する。地下水処理支援装置10のユーザ(以下、単に「ユーザ」という。)によって地下水処理支援処理の実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に、地下水処理支援装置10のCPU11が地下水処理支援プログラム13Aを実行することにより、図8に示す地下水処理支援処理が実行される。図8は、本実施形態に係る地下水処理支援処理の一例を示すフローチャートである。なお、錯綜を回避するために、ここでは、ボーリング情報データベース13Bの対象領域ID、及び一例として上述した初期4地点に関する情報を含む初期情報が予め登録されている場合について説明する。更に、錯綜を回避するために、ここでは、処理対象とする対象領域が予め指定されている場合について説明する。
【0053】
図8のステップ100で、CPU11は、予め指定されている対象領域に対応する初期情報をボーリング情報データベース13Bから読み出す。ステップ102で、CPU11は、読み出した初期情報を用いて、対象領域における不透水層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を上述したように導出する。そして、CPU11は、導出した3次元位置情報を、対応する対象領域に対応する対象領域IDと共に3次元位置情報データベース13Cに記憶する。
【0054】
ステップ104で、CPU11は、導出した3次元位置情報を用いて、追加ボーリング調査が不要か否かを判定し、否定判定となった場合はステップ106に移行する。なお、本実施形態では、追加ボーリング調査が不要か否かの判定を、それまでのボーリング調査で、建物領域62から調整池予定領域64に至る不透水層の状態を十分に把握することができるか否かを判定することにより行っているが、これに限るものでないことは言うまでもない。
【0055】
ステップ106で、CPU11は、導出した3次元位置情報が示す不透水層の上面の状態を用いて、追加ボーリング地点を上述したように決定する。
【0056】
ステップ108で、CPU11は、決定した追加ボーリング地点を用いて、予め定められた構成とされたボーリング地点提示画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ110で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0057】
図9には、一例として図7に示した対象領域60が処理対象とする対象領域として指定されている場合における、本実施形態に係るボーリング地点提示画面の一例が示されている。図9に示すように、本実施形態に係るボーリング地点提示画面では、表示されている追加ボーリング地点でボーリング調査を実施する旨、及び当該ボーリング調査によって得られた不透水層の上面の位置(深さ情報)の入力を促す旨を示すメッセージが表示される。また、本実施形態に係るボーリング地点提示画面では、初期ボーリング地点及び追加ボーリング地点の位置を示す平面図が表示される。更に、本実施形態に係るボーリング地点提示画面では、追加ボーリング地点に対するボーリング調査によって得られた不透水層の上面の位置を示す深さ情報を入力するための入力領域15Aが表示される。
【0058】
一例として図9に示すボーリング地点提示画面が表示部15に表示されると、ユーザは、何れかの追加ボーリング地点に対するボーリング調査を実施し、入力部14を介して、当該調査によって得られた深さ情報を対応する入力領域15Aに入力する。これに応じて、ステップ110が肯定判定となってステップ112に移行する。
【0059】
ステップ112で、CPU11は、ボーリング地点提示画面を介して入力された深さ情報と、対応する追加ボーリング地点の位置を示す2次元位置情報と、を関連付けて、追加情報としてボーリング情報データベース13Bの対応する対象領域の記憶領域に記憶する。
【0060】
ステップ114で、CPU11は、ステップ108~ステップ112の処理が、追加ボーリング地点の全てについて終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ108に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ102に戻る。本実施形態では、ユーザが、全ての追加ボーリング地点についてのボーリング調査が終了して、各調査によって得られた深さ情報の入力が終了すると、ボーリング地点提示画面における終了ボタン15Bを指定する。従って、CPU11は、終了ボタン15Bが指定されたか否かを判定することで、ステップ108~ステップ112の処理が、追加ボーリング地点の全てについて終了したか否かを判定することができる。なお、ステップ102~ステップ114の処理を繰り返し実行する際に、CPU11は、ステップ102において、それまでにボーリング情報データベース13Bに記憶された全ての初期情報及び追加情報を用いて3次元位置情報を導出し、3次元位置情報データベース13Cに記憶(上書き)する。
【0061】
一方、ステップ104において肯定判定となった場合、即ち、追加ボーリング調査が不要となった場合はステップ116に移行する。
【0062】
ステップ116で、CPU11は、以上の処理により、ステップ102の処理によって最終的に得られた3次元位置情報(以下、「最終3次元位置情報」という。)を用いて、予め定められた構成とされた支援画面を示す支援画面提示情報を作成する。ステップ118で、CPU11は、作成した支援画面提示情報を用いて支援画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ120で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0063】
図10には、一例として図7に示した対象領域60が処理対象とする対象領域として指定されている場合における、本実施形態に係る支援画面の一例が示されている。図10に示すように、本実施形態に係る支援画面では、最終3次元位置情報によって得られるコンター図及び断面図が表示される。なお、本実施形態では、断面図として、コンター図における等高線が示す最下点Lを通り、かつ、東西方向に平行な切断面Jにおける断面図を自動的に作成して表示しているが、これに限るものではない。例えば、ユーザに対し、コンター図に対して所望の切断面を指定させ、指定された切断面で切断した場合の断面図を作成して表示する形態としてもよい。
【0064】
また、本実施形態に係る支援画面では、現状では地下水の排水が困難である旨を示す情報、推奨排水経路を示す情報、及び対策を示す情報(図10に示す例では、液状化対策工事の実施を促す情報)が表示される。
【0065】
従って、ユーザは、支援画面を参照することで、以上の情報を把握することができる結果、地下水に関する今後の対応を的確、かつ、迅速に策定することができる。
【0066】
一例として図10に示す支援画面が表示部15に表示されると、地下水処理支援装置10のユーザは、表示内容を把握した後、入力部14を用いて終了ボタン15Bを指定する。これに応じて、ステップ120が肯定判定となって本地下水処理支援処理が終了する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、対象とする領域の複数の地点における地盤調査によって得られた不透水層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得し、取得した複数の地点に対応する深さ情報及び2次元位置情報を用いて、対象とする領域における不透水層の3次元位置を示す3次元位置情報を導出し、導出した3次元位置情報を用いて、対象とする領域における地下水の処理に関する支援情報を提示している。従って、不透水層に起因する地下水の対策に寄与することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、支援情報を、地下水の排水の可否に関する情報、及び地下水の処理に関する情報の少なくとも一方を含むものとしている。従って、これらの情報に応じた、不透水層に起因する地下水の対策を講じることができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、地下水の処理に関する情報を、地下水の排水経路を示す情報を含むものとしている。従って、当該排水経路を利用した、不透水層に起因する地下水の対策を講じることができる。
【0070】
更に、本実施形態によれば、3次元位置情報を用いて、当該3次元位置情報の精度の向上に寄与する、更なる地盤調査の地点を特定して提示している。従って、より的確に、不透水層に起因する地下水の対策を講じることができる。
【0071】
なお、上記実施形態では、初期ボーリング地点を対象領域内の地点のみとした場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、対象領域の周辺領域における複数の地点を初期ボーリング地点として適用する形態としてもよい。
【0072】
この場合、既にボーリング調査済みの地点における情報を適用することができる結果、本実施形態に係る地下水処理支援装置10に比較して、より低コストに、追加で地盤調査を行う地点を得ることができる。
【0073】
更に、この形態の変形例として、対象領域の内部及び周辺領域の双方の地点を初期ボーリング地点として適用する形態としてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、ANAGO(登録商標)による処理の過程で得られる不透水層の3次元モデルを用いて追加ボーリング地点を決定する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、学習済みモデルを用いて追加ボーリング地点を決定する形態としてもよい。
【0075】
この形態に係る学習済みモデルとしては、上述した3次元位置情報と、当該3次元位置情報を導出するために用いた、上述した2次元位置情報と、が入力情報とされ、結果的に3次元位置情報の導出精度を高くすることができた、対応する地盤調査の地点が出力情報とされて機械学習されたモデルを例示することができる。
【0076】
この場合、過去にボーリング情報データベース13Bに登録された情報で、地盤に関する条件が処理対象とする領域に類似する対象領域に対応する情報であり、結果的に3次元位置情報の導出精度を高くすることができた初期情報及び追加情報と、対応する3次元位置情報とを用いて、学習済みモデルの学習を行う。
【0077】
この形態に係る学習済みモデルとしては、学習済みのCNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)を用いたAI(Artificial Intelligence、人工知能)によるモデルの他、CNN以外のAI等の他の機械学習モデルを適用することができる。
【0078】
この形態によれば、過去の実績に基づき、より高精度に、追加で地盤調査を行う地点を得ることができる。
【0079】
また、上記実施形態で適用した各種データベースの構成は一例であり、例示したものに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0080】
また、上記実施形態で適用した地下水処理支援処理の流れは一例であり、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることも言うまでもない。
【0081】
また、上記実施形態において、例えば、取得部11A、導出部11B、提示部11C、及び特定部11Dの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0082】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0083】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0084】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0085】
10 地下水処理支援装置
11 CPU
11A 取得部
11B 導出部
11C 提示部
11D 特定部
12 メモリ
13 記憶部
13A 地下水処理支援プログラム
13B ボーリング情報データベース
13C 3次元位置情報データベース
14 入力部
15 表示部
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
50 対象領域
52 初期ボーリング地点
54 追加ボーリング地点
60 対象領域
62 建物領域
64 調整池予定領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10