(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144680
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】脱臭材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/014 20060101AFI20231003BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20231003BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A61L9/014
B01J20/22 A
B01J20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051782
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】尾林 卓
【テーマコード(参考)】
4C180
4G066
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB02
4C180BB04
4C180BB05
4C180BB06
4C180BB07
4C180BB08
4C180BB09
4C180CC04
4C180EA13Y
4C180EA14X
4C180EA22Y
4C180EA26X
4C180EA28Y
4C180EA29Y
4C180EB15X
4C180EB30Y
4C180EC01
4C180FF07
4G066AA05B
4G066AA22C
4G066AA61B
4G066AB10B
4G066AC02C
4G066AC02D
4G066AC14D
4G066AC17D
4G066BA07
4G066BA16
4G066BA36
4G066CA02
4G066CA52
4G066DA03
4G066FA12
4G066FA21
4G066FA37
(57)【要約】
【課題】多くの臭気ガス成分に効果があるもののアルデヒド類除去効果を奏しない活性炭と、アルデヒド類の除去効果を有する酸ヒドラジドの効果を共に活かした脱臭材とその製造方法を提供する。
【解決手段】支持体10と、支持体10に順次固着した第1脱臭剤層21と第2脱臭剤層22とを備え、第1脱臭剤層21は、活性炭及びバインダーを含有し、第2脱臭剤層22は、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材、酸ヒドラジド、及びバインダーを含有することを特徴とする、脱臭材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体に順次固着した第1脱臭剤層と第2脱臭剤層とを備え、
前記第1脱臭剤層は、活性炭及びバインダーを含有し、
前記第2脱臭剤層は、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材、酸ヒドラジド、及びバインダーを含有することを特徴とする、脱臭材。
【請求項2】
前記支持体を構成する材料の内、最も大きい質量割合を占める材料が無機繊維である、請求項1に記載の脱臭材。
【請求項3】
前記支持体が、コルゲート形状である請求項1又は2に記載の脱臭材。
【請求項4】
支持体に、活性炭及びバインダーを含有する第1スラリーを塗布・含浸する工程、
前記第1スラリーが塗布・含浸された支持体を乾燥する第1乾燥工程、
第1乾燥工程後の支持体に、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材、酸ヒドラジド、及びバインダーを含有する第2スラリーを塗布・含浸する工程、
前記第2スラリーが塗布・含浸された支持体を乾燥する第2乾燥工程
を備えることを特徴とする、脱臭材の製造方法。
【請求項5】
前記第1スラリー及び前記第2スラリーが、さらに増粘剤を含む、請求項4に記載の脱臭材の製造方法。
【請求項6】
前記第2スラリーが、さらに前記機能材に対して0.5~10質量%の活性炭を含有する、請求項4又は5に記載の脱臭材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の変化や健康志向の高まり等により、住居、オフィス、工場、自動車等さまざまな生活空間において、エアコン、空気清浄機、加湿機、除湿機等の空調機器が広く使われている。これらの空調機器では、浄化された空気を得るために種々のエアーフィルターが用いられている。
【0003】
エアーフィルターには、住居、オフィス、工場、自動車等の生活空間で存在する悪臭ガスを除去する機能が求められる。悪臭ガスの成分としては、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドをはじめとする低級アルデヒド類、アンモニア、トリメチルアミンをはじめとするアミン類、酢酸やイソ吉草酸をはじめとする低級脂肪酸類、メチルメルカプタンをはじめとするメルカプタン類、SO2、NO2、トルエンやキシレンをはじめとする芳香族炭化水素類などがある。
中でもアセトアルデヒドは、悪臭防止法で指定されている22種類の特定悪臭物質と厚生労働省が濃度指針値を定める13種類の揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds、VOC)の両方に該当する。
【0004】
一般的に脱臭用薬剤として使用されている活性炭は多くの臭気ガス成分に効果があるが、アルデヒド類の吸着は困難である(特許文献1)。
アルデヒド類の除去には、酸ヒドラジドが有効であることが知られている(特許文献2)。しかし、酸ヒドラジドはアルデヒド類以外の臭気ガスには効果が殆どない。
【0005】
そこで、活性炭と酸ヒドラジドとを併用することが考えられるが、併用した場合、活性炭が触媒となって酸ヒドラジドの官能基(アミン基)が酸化されてしまいアルデヒド類に対する性能が低下してしまうことが知られている(非特許文献1)。
脱臭材は、支持体に脱臭用薬剤を含有するスラリーを塗布して乾燥することにより得られる。脱臭用薬剤としての活性炭は、内部の水が充分除去されるように乾燥することが必要であるところ、製造効率を考慮して高温で乾燥すると、共存する酸ヒドラジドの性能低下がより顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-58075号公報
【特許文献2】国際公開第2009/122975号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】化学工学論文集、2006年、第32巻、第1号、P72-P78
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、多くの臭気ガス成分に効果があるもののアルデヒド類除去効果を奏しない活性炭と、アルデヒド類の除去効果を有する酸ヒドラジドの効果を共に活かした脱臭材とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を採用した。
[1]支持体と、前記支持体に順次固着した第1脱臭剤層と第2脱臭剤層とを備え、
前記第1脱臭剤層は、活性炭及びバインダーを含有し、
前記第2脱臭剤層は、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材、酸ヒドラジド、及びバインダーを含有することを特徴とする、脱臭材。
[2]前記支持体を構成する材料の内、最も大きい質量割合を占める材料が無機繊維である、[1]に記載の脱臭材。
[3]前記支持体が、コルゲート形状である[1]又は[2]に記載の脱臭材。
[4]支持体に、活性炭及びバインダーを含有する第1スラリーを塗布・含浸する工程、
前記第1スラリーが塗布・含浸された支持体を乾燥する第1乾燥工程、
第1乾燥工程後の支持体に、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材、酸ヒドラジド、及びバインダーを含有する第2スラリーを塗布・含浸する工程、
前記第2スラリーが塗布・含浸された支持体を乾燥する第2乾燥工程
を備えることを特徴とする、脱臭材の製造方法。
[5]前記第1スラリー及び前記第2スラリーが、さらに増粘剤を含む、[4]に記載の脱臭材の製造方法。
[6]前記第2スラリーが、さらに前記機能材に対して0.5~10質量%の活性炭を含有する、[4]又は[5]に記載の脱臭材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の脱臭材は、多くの臭気ガス成分に効果があるもののアルデヒド類除去効果を奏しない活性炭と、アルデヒド類の除去効果を有する酸ヒドラジドの効果を共に活かすことができる。
また、本発明の脱臭材の製造方法によれば、多くの臭気ガス成分に効果があるもののアルデヒド類除去効果を奏しない活性炭と、アルデヒド類の除去効果を有する酸ヒドラジドの効果を共に活かしつつ両者を併用した脱臭材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の1実施形態に係る脱臭材の模式的部分断面図である。
【
図2】本発明の脱臭材を構成する支持体の一態様を示す平面図である。
【
図3】本発明の脱臭材を構成する支持体の他の態様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
<脱臭材>
図1は、本発明の1実施形態に係る脱臭材1の模式的部分断面図である。本実施形態の脱臭材1は、支持体10と支持体10の両面に各々固着した脱臭剤層20とを備えている。
脱臭剤層20は、各々支持体10側から第1脱臭剤層21と第2脱臭剤層22とが順次固着して構成されている。
なお、
図1は模式的なものであり、第1脱臭剤層21と第2脱臭剤層22との界面は、図示したように明確に存在するものではない。
【0014】
[支持体]
支持体10を構成する材料は、脱臭剤層20を構成する材料を固着でき、形状を維持できるものであれば特に限定はなく、無機材料、有機材料、あるいはこれらの組み合わせで構成することができる。
【0015】
また、支持体10を構成する材料は、不織布や織布としやすく、毛細管現象で吸液し薬液を保持しやすいことから、繊維状であることが好ましい。特に不織布は、湿式抄紙により容易に形成することができる。
無機繊維としては、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維等が挙げられる。中でもガラス繊維は、人体に対する安全面やコストの点で好ましい。有機繊維としては、パルプ、樹脂繊維等が挙げられる。
【0016】
支持体10は、無機繊維を30質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。無機繊維を含有することにより、高耐熱性、高断熱性、不燃性等を備えることができる。
支持体10を構成する材料の内、最も大きい質量割合を占める材料は無機繊維であることが好ましい。
また、支持体10を、無機繊維と有機繊維を併用して構成することも好ましい。無機繊維に加えて有機繊維を含むことにより、成形性が向上する。
【0017】
支持体10の坪量には特に限定はないが、不織布とする場合、10~100g/m2とすることが好ましく、15~60g/m2とすることがより好ましい。坪量が好ましい範囲の下限値以上であれば、不織布および該不織布から得られるコルゲート形状等に成形した支持体10の強度が充分に得られる。坪量が好ましい範囲の上限値以下であれば、厚みが抑えられ圧力損失も抑制できる。
【0018】
支持体10の形状に特に限定はなく、不織布等をシート状のまま用いてもよい。シート状の場合、エアーフィルターの用途の他に、室内や車内の脱臭シートや壁紙などに使用できる。
脱臭材1をエアフィターとして使用する場合は、エアとの接触面積を大きくしやすく、かつ、安定した形状を保ち安いことから、段ボールの断面のようなコルゲート形状や、ジグザク状に折り畳んだプリーツ形状とすることが好ましい。
【0019】
中でも、コルゲート形状は、圧力損失が小さいエアーフィルターとできるだけでなく、脱臭剤層20を構成するためのスラリーの塗布・含浸、及びその乾燥が容易であって、高い生産性で脱臭材1を得られるので好ましい。
コルゲート形状としては、例えば
図2の第1シート11、
図3の第2シート12に示すように、ライナー部材15とコルゲート部材16とが積層したものを使用することができる。
【0020】
エアーフィルターとして使用する場合、コルゲート部材16のピッチは、2~8mmが好ましく、4~6mmがより好ましい。また、コルゲート部材16の高さは1~5mmが好ましく、2~4mmがより好ましい。
コルゲート部材16のピッチと高さは、均一である必要はなく、例えば、各段に異なる高さやピッチのコルゲート部材16を用いてもよい。また、各段に同一の高さやピッチのコルゲート部材16を用いた場合、その位相は同一でも異なっていてもよい。
【0021】
エアーフィルターとして使用する場合、脱臭材1の支持体10は、例えば
図2の第1シート11、
図3の第2シート12を、交互に2層以上重ねたものであってもよい。その場合、第1シート11のライナー部材15と第2シート12のライナー部材15とが交差する方向に重ねることが、臭気ガスとの接触効率の点で好ましい。
【0022】
[第1脱臭剤層]
第1脱臭剤層21は、活性炭及びバインダーを含有する層である。
活性炭は、大きな表面積と細孔容積を有するため、その物理吸着能により、一般的な空気中の臭気物質を除去する効果がある。本実施形態に用いる活性炭は粉末状であることが好ましい。
活性炭のレーザー回析・散乱法による体積基準の平均粒子径D50は、5~150μmであることが好ましい。ただし、上記粒子径範囲は、平均粒子径であるため、その前後の粒子径の活性炭粉末も含まれる。
【0023】
活性炭粉末の比表面積(窒素吸着量に基づいて算出されるBET法)は、500~2000m2/gであることが好ましい。
比表面積が好ましい下限値以上であることにより、エアとの接触面積が増大し、悪臭成分の吸着量を充分大きくすることができる。比表面積が好ましい上限値以下であることにより、コストと性能のバランスをとることができる。
【0024】
バインダーとしては、公知の無機バインダー、有機バインダーが使用できる。
無機バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、水ガラス、珪酸カルシウム、アルミナゾル、アルコキシラン等が挙げられる。有機バインダーとしては、例えば、エマルション系の有機バインダーが挙げられ、特にアクリル樹脂、アクリル-スチレン樹脂、アクリル-シリコン樹脂、アクリル-ウレタン樹脂、酢酸ビニル-アクリル樹脂、ポリシロキサン-アクリル樹脂等のアクリル系エマルション、及びブタジエン樹脂等のラテックス系エマルション等を用いることができる。
中でも、活性炭の固着性能にすぐれ、活性炭の細孔に残存しにくいバインダー、例えば水性のアクリル系樹脂が好ましい。
【0025】
第1脱臭剤層21は、活性炭とバインダーに加えて、第1脱臭剤層21を形成するためスラリーに含有させた成分として、増粘剤を含有していてもよい。
増粘剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル系共重合体、ポリアクリル酸、カルボン酸系共重合体(アンモニウム塩)、カルボン酸系共重合体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなカルボン酸系共重合体ナトリウム塩)、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、架橋型アクリル系ポリマー、架橋型ポリアクリル酸等を挙げることができる。
第1脱臭剤層21は、必要に応じて、難燃剤、着色剤、濡れ剤、紙力向上剤、耐水化剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤等を含有してもよい。
【0026】
[第2脱臭剤層]
第2脱臭剤層22は、機能材、酸ヒドラジド、及びバインダーを含有する層である。
機能材は、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方から選択される。シリカゲル及びゼオライトは、酸ヒドラジドと共存させても酸ヒドラジドの機能を低下させることがない。
第2脱臭剤層22において、酸ヒドラジドは、機能材に担持された状態で存在していると考えられる。
【0027】
酸ヒドラジドは、アルデヒド類を脱臭するために用いる。酸ヒドラジドは、アセトアルデヒド等に対して良好な化学吸着性能を発現する。
酸ヒドラジドとしては、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンニ酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジドなどが例示できる。中でも酸ジヒドラジドが好ましく、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドがより好ましく、アジピン酸ジヒドラジドが特に好ましい。
【0028】
シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方から選択される機能材は多孔性粉体である。
シリカゲルは、二酸化ケイ素を主成分とした一次粒子の凝集体であり気相法、湿式法(沈降法)、ゾルゲル法など各種方法により得ることができる。シリカゲルは、所望の特性が得られるものであれば、どのような方法にて得られるものでも用いることができる。
シリカゲルは、酸ヒドラジドの担体として機能する。
【0029】
ゼオライトとしては、ゼオライトY型、ゼオライトX型、ゼオライトZSM-5型などが例示できる。中でもY型は、酸ヒドラジド担持量単位重量当りの脱臭効果が高いので好ましい。
ゼオライトは、酸ヒドラジドの担体として機能する他、酢酸、メチルメルカプタンなどの脱臭剤としても機能する。ゼオライトを使用することにより、第1脱臭剤層21における活性炭の機能を補うことが可能である。
【0030】
機能材としては、安価であることからシリカゲルが好ましい。また、シリカゲルとゼオライトを併用し、酸ヒドラジドの担体として機能させる他、活性炭の機能を補うことも好ましい。
機能材のレーザー回析・散乱法による体積基準の平均粒子径D50は、5~150μmであることが好ましい。ただし、上記粒子径範囲は、平均粒子径であるため、その前後の粒子径の機能材も含まれる。
【0031】
機能材の比表面積(窒素吸着量に基づいて算出されるBET法)は、50~700m2/gが好ましく、200~600m2/gがより好ましい。
比表面積が好ましい下限値以上であることにより、担持された酸ヒドラジドとエアとの接触面積が増大し、アルデヒドガス吸着量を充分大きくすることができる。比表面積が好ましい上限値以下であることにより、細孔径が小さくなりすぎず、細孔内に酸ヒドラジドが入ることが妨げられない。
【0032】
バインダーとしては、公知の無機バインダー、有機バインダーが使用できる。具体的には、第1脱臭剤層21に使用するバインダーとして挙げたものと同様のものが使用できる。
中でも、機能材の固着性能にすぐれ、機能材の細孔に残存しにくいバインダー、例えば水性のアクリル系樹脂が好ましい。
【0033】
第2脱臭剤層22は、機能材と酸ヒドラジドとバインダーに加えて、第2脱臭剤層22を形成するためスラリーに含有させた成分として、増粘剤を含有していてもよい。
増粘剤としては、第1脱臭剤層21に使用する増粘剤として挙げたものと同様のものが使用できる。
第2脱臭剤層22は、必要に応じて、難燃剤、着色剤、濡れ剤、紙力向上剤、耐水化剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤等を含有してもよい。
第2脱臭剤層22は、酸ヒドラジドの機能を損なわない範囲で活性炭を配合してもよい。活性炭の配合量としては、機能材に対して10質量%以下、好ましくは1~6質量%である。
【0034】
[その他の脱臭成分]
第1脱臭剤層21及び第2脱臭剤層22の一方又は両方には、各層の機能を損なわない範囲で、他の脱臭成分を含有させることができる。
他の脱臭成分としは、アゾール化合物、有機酸類が挙げられる。
【0035】
アゾール化合物とは、ヘテロ原子を少なくとも1つ含む五員環芳香族化合物であって、当該ヘテロ原子の少なくとも1つが窒素原子である化合物であり、アルデヒド類を吸着する作用を有する。
アゾール化合物は、第1脱臭剤層21と第2脱臭剤層22の何れに含有させてもよい。
【0036】
有機酸類は、アンモニア、トリメチルアミンなどの脱臭に効果を示す。有機酸類としては、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸及びニコチン酸などが例示できる。
有機酸類を用いる場合は、第2脱臭剤層22に含有させることが好ましい。有機酸類は水溶性のため、第1脱臭剤層21に含有させると、第2脱臭剤層22形成用のスラリーを上から塗布する際に流出する懸念がある。また、第1脱臭剤層21に含有させると、活性炭に吸着され、活性炭が酸性の悪臭成分を吸着することを妨げる恐れもある。
【0037】
[脱臭材の他の態様]
図1に示した脱臭材1は、支持体10の両面に脱臭剤層20が形成された態様としたが、脱臭剤層20は支持体10の一方の面のみに形成されていてもよい。
また、脱臭剤層20は、一方の面又は両面の全面に形成されていることが好ましいが、部分的に形成されていてもよい。
また、脱臭剤層20は、第1脱臭剤層21と第2脱臭剤層22に加えて、他の脱臭剤層を有していてもよい。
また、エアーフィルターとして使用する場合、脱臭材1だけでエアーフィルターを構成してもよいが、脱臭材1と、他の脱臭材を組み合わせてエアーフィルターを構成してもよい。
【0038】
<脱臭材の製造方法>
本実施形態の脱臭材の製造方法は、支持体に、活性炭及びバインダーを含有する第1スラリーを塗布・含浸する工程、前記第1スラリーが塗布・含浸された支持体を乾燥する第1乾燥工程、第1乾燥工程後の支持体に、シリカゲル及びゼオライトの少なくとも一方からなる機能材、酸ヒドラジド、及びバインダーを含有する第2スラリーを塗布・含浸する工程、及び前記第2スラリーが塗布・含浸された支持体を乾燥する第2乾燥工程を備える。
以下
図1の脱臭材1を例にとって、具体的に説明する。
【0039】
[支持体の製造]
脱臭材1の支持体10の製造方法に特に限定はないが、湿式抄紙により無機繊維を含有する不織布を得て支持体10を構成する場合、使用する無機繊維の加重平均繊維径は、3~10μmが好ましく、4~7μmがより好ましい。加重平均繊維径が好ましい下限値以上であれば人体に対して安全である。加重平均繊維径が好ましい上限値以下であれば得られる支持体の強度が優れる。なお、加重平均繊維径は、100本の繊維の繊維径を顕微鏡観察により測定し、算出する。
【0040】
また、使用する無機繊維の加重平均繊維長は、1~15mmであることが好ましく、1~10mmであることがより好ましい。加重平均繊維長が好ましい下限値以上であれば、得られる支持体の強度が優れる。加重平均繊維長が好ましい上限値以下であれば、得られる支持体の地合が優れる。なお、長さ加重平均繊維長は、100本の繊維の繊維長を顕微鏡観察により測定し、算出する。
【0041】
湿式抄紙により無機繊維と有機繊維を含む不織布を得て支持体10を構成する場合、無機繊維と共に使用する有機繊維(ただし、バインダー成分として使用され、製造時の加熱等により、繊維形状を留めない有機繊維を除く。以下、同じ。)の加重平均繊維径は、特に制限はないが、無機繊維の加重平均繊維径に対して3倍以下であることが好ましく、2倍以下であることがより好ましい。
【0042】
有機繊維の加重平均繊維径が無機繊維の加重平均繊維径の3倍以下であると、有機繊維による支持体の剛性の低減効果や耐折強度の向上効果が向上する傾向にある。有機繊維の加重平均繊維径の下限は特に制限はされないが、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。なお、繊維径の加重平均繊維径は、100本の繊維の繊維径を顕微鏡観察により測定し、算出する。
【0043】
また、無機繊維と共に使用する有機繊維のアスペクト比(加重平均繊維径に対する加重平均繊維長の比)は、300~5000であることが好ましく、400~3000であることがより好ましい。アスペクト比が好ましい下限値以上であれば、剛性の低減効果が得られ、耐折強度も大きくなるため、コルゲート山が裂けにくくなり、紙粉が発生しにくくなる傾向にある。アスペクト比が好ましい上限値以下であれば、繊維が結束しにくくなる傾向にある。
【0044】
湿式抄紙により不織布を得るための原料スラリーは、無機繊維(主にガラス繊維)および必要に応じて有機繊維を含有するとともに、任意に有機又は無機のバインダー成分、助剤、添加剤、充填剤等を含んでもよい。また、媒体としては通常水が使用される。
【0045】
有機バインダー成分は、繊維同士を接着させる成分である。有機バインダー成分としては、不織布を製造する際の加熱により少なくとも一部が溶融する熱可塑性樹脂等が挙げられる。有機バインダー成分の形態には制限はなく、繊維状、粒子状、エマルション、液状等のいずれであってもよい。有機バインダー成分としては、熱硬化型樹脂も使用できる。
【0046】
無機バインダー成分は、特に制限されないが、例えば、コロイダルシリカ、水ガラス、珪酸カルシウム、シリカゾル、アルミナゾル、セピオライト、アルコキシラン等が挙げられる。
【0047】
湿式抄紙は、上述した各成分と水(媒体)とを含有する原料スラリーを調製した後、該原料スラリーを公知の抄紙機で抄紙する方法により行うことができる。抄紙機としては、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機が挙げられる。これら抄紙機のうち、同種または異種の抄紙機を組み合わせて多層抄紙を行ってもよい。抄紙後の脱水および乾燥の方法にも、特に制限はない。
【0048】
なお、バインダー成分は、原料スラリーに添加する以外に、抄紙後の不織布に対して、バインダー成分を含む液をスプレー塗布、カーテン塗布、含浸塗布、バー塗布、ロール塗布、ブレード塗布等の方法で付着(外添塗布)させてもよい。外添塗布の対象である不織布は、乾燥後の乾燥不織布であってもよいし、乾燥前の湿潤ウェブであってもよい。
【0049】
支持体10を、第1シート11、第2シート12のようなコルゲート形状とする場合、得られた不織布に対してコルゲート加工を施すことにより、波型(凹凸)を付与することによりコルゲート部材16が得られる。
次いで、得られたコルゲート部材16とライナー部材15(コルゲート加工をしていない不織布)とを接着して片波成形体を製造する。そして、複数の片波成形体を積層したり、円筒状にしたりすることで、コルゲート形状とすることができる。
【0050】
平面視が
図2の第1シート11、
図3の第2シート12のような形状で、紙面の厚さ方向に厚みを有するシート状の支持体とするためには、ライナー部材15とコルゲート部材16とを積層した後、その積層方向と直交する面で所定の厚みに切断すればよい。
前述のように、
図2の第1シート11と
図3の第2シート12を、交互に2層以上重ねて互いに接着してもよい。
【0051】
ライナー部材15とコルゲート部材16の接着、第1シート11と第2シート12の接着等に使用する接着剤としては、コロイダルシリカ、水ガラス、セピオライト、アルミナゾル等の無機糊が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。また、接着剤としては、エチレン-ビニルアルコール等の有機糊を併用してもよい。
支持体10は、そのまま用いても、焼成して用いてもよい。
【0052】
[第1脱臭剤層の形成]
第1脱臭剤層21は、支持体10に、第1スラリーを塗布・含浸する工程、前記第1スラリーが塗布・含浸された支持体を乾燥する第1乾燥工程によって、支持体10上に形成することができる。
第1スラリーは、活性炭及びバインダーを含有する。媒体としては安全性ならびに作業性の観点から水系溶媒が好ましく、通常水が使用される。
【0053】
活性炭の原料としては、ヤシ殻、石炭、木質、フェノール樹脂等の樹脂、古タイヤ等が挙げられる。これらの原料を加熱焼成し、薬剤やガスにより適宜賦活処理を施したり、酸性薬剤で適宜洗浄処理を施したりすることで、活性炭の細孔を発達させることができる。
焼成、賦活後には、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を使用して粉砕することにより、活性炭粉末を得られる。
【0054】
第1スラリーに占める活性炭の割合は、乾燥固形分として、5~40質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。第1スラリーに占める活性炭の割合が好ましい下限値以上であることにより、第1乾燥工程の時間を短縮できる。第1スラリーに占める活性炭の割合が好ましい上限値以下であることにより、余剰液の除去が容易で安定した塗膜を確保しやすく、スラリー中の活性炭の分散性を確保しやすい。
【0055】
第1スラリーの調製にあたり、活性炭粉末は、増粘剤と共に媒体に分散させることが好ましい。
増粘剤は、第1スラリーを支持体10に接触させる際に、スラリーを常時撹拌することが困難である場合や、スラリーが水やバインダー成分を含むエマルションと活性炭とに分離してしまう場合などに特に好適に用いられる。
増粘剤の添加量は、増粘剤の種類にもより、特に限定されない。例えば、活性炭に対して0.1~10質量%、0.5~5質量%、又は1.0~3質量%にすることができる。
【0056】
第1スラリーの調製にあたり、バインダーは、活性炭を分散させたスラリーに対して、最後に加えることが好ましい。バインダーの添加を最後にすることで、活性炭の細孔へのバインダーの浸透を抑制することができる。
バインダーの添加量(固形分)は、バインダーの種類にもよるが、例えば、活性炭に対して10~80質量%程度、好ましくは15~40質量%程度である。
【0057】
第1スラリーに、他の脱臭成分、難燃剤、着色剤、濡れ剤、紙力向上剤、耐水化剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤等の任意成分を加える場合は、活性炭を分散させたスラリーに対して、これらの任意成分を添加してから、バインダーを加えることが好ましい。
【0058】
第1スラリーを支持体10に塗布・含浸する方法としては、公知の塗布方法、含浸方法が使用でき、特に限定するものではないが、スラリーの液溜に支持体を浸ける、スラリーによるカーテンに支持体を潜らせるなど、適宜選択するとよい。塗布・含浸の工程は複数回行ってもよい。
【0059】
第1スラリーは、支持体10の単位面積あたりの活性炭量が20~150g/m2となるように塗布・含浸することが好ましく、50~130g/m2となるように塗布・含浸することがより好ましい。
第1スラリーの塗布・含浸量が好ましい下限値以上であることにより、活性炭による悪臭成分の除去効果を充分に得られる。第1スラリーの塗布・含浸量が好ましい上限値以下であることにより、余剰液の除去が容易で安定した塗膜を確保できる。
【0060】
第1スラリーを塗布・含浸する工程の後、第1乾燥工程を行う。
第1乾燥工程の温度は、40~180℃であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましい。第1乾燥工程の温度が好ましい下限値以上であることにより、第1乾燥工程の時間を短くすることができる。第1乾燥工程の温度が好ましい上限値以下であることにより、活性炭の発火リスクを低減でき安全に生産することができる。
なお、第1乾燥工程における乾燥方法は特に限定するものではなく、公知の方法が使用できる。
【0061】
[第2脱臭剤層の形成]
第2脱臭剤層22は、第1乾燥工程後、第1脱臭剤層21が形成された支持体10に、第2スラリーを塗布・含浸する工程、前記第2スラリーが塗布・含浸された支持体を乾燥する第2乾燥工程によって形成することができる。
第2スラリーは、活性炭及びバインダーを含有する。媒体としては安全性ならびに作業性の観点から水系溶媒が好ましく、通常水が使用される。
【0062】
第2スラリーに占める機能材の割合は、10~40質量%であることが好ましく、20~30質量%であることがより好ましい。第2スラリーに占める機能材の割合が好ましい下限値以上であることにより、第2乾燥工程の時間を短縮できる。第2スラリーに占める機能材の割合が好ましい上限値以下であることにより、余剰液の除去が容易で安定した塗膜を得られ、スラリー中の機能材の分散性を確保しやすい。
【0063】
第2スラリーに占める酸ヒドラジドの割合は、1~10質量%であることが好ましく、3~6質量%であることがより好ましい。第2スラリーに占める酸ヒドラジドの割合が好ましい下限値以上であることにより、吸着性能が向上する。第2スラリーに占める酸ヒドラジドの割合が好ましい上限値以下であることにより、配合時の溶解が容易になる。
【0064】
第2スラリーにおける酸ヒドラジドの含有量は、機能材の含有量に対して、5~40質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。第2スラリーにおける機能材の含有量に対する酸ヒドラジドの割合が好ましい下限値以上であることにより、機能材に担持した効果(吸着速度の向上)が発揮される。第2スラリーにおける機能材の含有量に対する酸ヒドラジドの割合が好ましい上限値以下であることにより、機能材に対する酸ヒドラジドが最適化され経済的である。
【0065】
第2スラリーの調製にあたり、酸ヒドラジドは、機能材と共に媒体に分散させることが好ましい。これにより、酸ヒドラジドを機能材に担持させることができる。
酸ヒドラジドを機能材と共に媒体に分散させる方法としては、酸ヒドラジドを媒体に溶解させてからシリカゲルを添加する方法、シリカゲルを媒体に分散させてから酸ヒドラジドを添加する方法、シリカゲルに対して媒体に溶解した酸ヒドラジドを噴霧して吸着させたものを媒体に分散させる方法など例示できる。
【0066】
増粘剤は、酸ヒドラジドと機能材を媒体に分散させた後から、媒体に添加することが好ましい。これにより、機能材の細孔に酸ヒドラジドが担持される前に、増粘剤が細孔に浸透してしまうことを抑制できる。
増粘剤は、第2スラリーを第1脱臭剤層21が形成された支持体10に接触させる際に、スラリーを常時撹拌することが困難である場合や、スラリーが水やバインダー成分を含むエマルションと機能材とに分離してしまう場合などに特に好適に用いられる。
増粘剤の添加量は、増粘剤の種類にもより、特に限定されない。例えば、機能材に対して0.1~10質量%、0.5~5質量%、又は1.0~3質量%にすることができる。
【0067】
第2スラリーは、必要に応じて、少量の活性炭を含有させてもよい。少量の活性炭を含有することにより、酸ヒドラジドを担持した機能材の分散性が向上する。
第2スラリーに活性炭を含有させる場合、活性炭の含有量は、乾燥固形分として、機能材に対しての0.5~10質量%であることが好ましく、1~6質量%であることがより好ましい。第2スラリーにおける活性炭の含有量が好ましい下限値以上であれば、分散性向上の効果が得やすい。第2スラリーにおける活性炭の含有量が好ましい上限値以下であれば、活性炭による酸ヒドラジドの機能低下を防止できる。
第2スラリーに少量の活性炭を含有させる場合、活性炭の添加は機能材と酸ヒドラジド分散後に行うことが好ましい。これにより、酸ヒドラジドを効率的に機能材に担持できる。
【0068】
第2スラリーの調製にあたり、バインダーは、酸ヒドラジドと機能材、必要に応じて増粘剤を分散させたスラリーに対して、最後に加えることが好ましい。バインダーの添加を最後にすることで、機能材の細孔へのバインダーの浸透を抑制することができる。
バインダーの添加量(固形分)は、バインダーの種類にもよるが、例えば、機能材に対して10~80質量%程度、好ましくは15~40質量%程度である。
【0069】
第2スラリーに、他の脱臭成分、難燃剤、着色剤、濡れ剤、紙力向上剤、耐水化剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤等の任意成分を加える場合は、酸ヒドラジドと機能材、必要に応じて増粘剤を分散させたスラリーに対して、これらの任意成分を添加してから、バインダーを加えることが好ましい。
【0070】
第2スラリーを第1脱臭剤層21が形成された支持体10に塗布・含浸する方法としては、公知の塗布方法、含浸方法が使用でき、特に限定するものではないが、スラリーの液溜に支持体を浸ける、スラリーによるカーテンに支持体を潜らせるなど、適宜選択するとよい。塗布・含浸の工程は複数回行ってもよい。
【0071】
第2スラリーは、支持体10の単位面積あたりの酸ヒドラジド量が10~200g/m2となるように塗布することが好ましく、40~160g/m2となるように塗布・含浸することがより好ましい。
第2スラリーの塗布・含浸量が好ましい下限値以上であることにより、酸ヒドラジドによるアルデヒド類の除去効果を充分に得られる。第2スラリーの塗布・含浸量が好ましい上限値以下であることにより、余剰液の除去が容易で安定した塗膜を確保しやすい。
【0072】
第2スラリーを塗布・含浸する工程の後、第2乾燥工程を行う。
第2乾燥工程の温度は、40~180℃であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましい。第2乾燥工程の温度が好ましい下限値以上であることにより、第2乾燥工程の時間を短くすることができる。第2乾燥工程の温度が好ましい上限値以下であることにより、酸ヒドラジドの機能低下を抑制できる。
なお、第2乾燥工程における乾燥方法は特に限定するものではなく、公知の方法が使用できる。
【0073】
[作用効果]
本実施形態の製造方法によれば、酸ヒドラジドが活性炭と別の層に含まれるため、活性炭による酸ヒドラジドの機能低下が抑制されている。
また、酸ヒドラジドを含む第2スラリーを、活性炭を含む第1スラリーより先に塗布・含浸してしまうと、水溶性の酸ヒドラジドが溶出してしまう懸念があるが、本実施形態の製造方法では、第2スラリーを後から塗布・含浸するので、そのような懸念が生じない。
【0074】
また、第1脱臭剤層21には、活性炭存在下で加熱した際に機能が低下しやすい酸ヒドラジドを含まないため、第1脱臭剤層21を形成する際の第1乾燥工程を充分に高い温度で行うことができる。そのため、短時間で活性炭の水分を充分に除去することができる。
また、第2脱臭剤層22は、活性炭を実質的に含まないため、第2脱臭剤層22を形成する際の第2乾燥工程を適切な温度で行うことができる。そのため、加熱による酸ヒドラジドの機能低下を防ぎやすい。
【実施例0075】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0076】
<測定方法>
[脱臭性能]
各実施例、比較例のフィルター(吸着材)の脱臭性能は、以下のようにして測定した。
まず、試験容器(内容積1m3のアクリルチャンバー)にアクリル製風洞(ファン付き)をセットし、その風洞に各例のフィルターを設置した。
その後、試験容器内に、試験容器内のガス(試験ガス)中の除去対象成分の初期濃度が約10ppmになるように除去対象成分を注入してから、ファンを運転しフィルターに、風速1.74m/sで30分間試験ガスを通風させた。
【0077】
除去対象成分を注入する前の除去対象成分濃度(BG)と、試験容器内に除去対象成分を注入し、通風を開始する前の除去対象成分濃度(D0)と、30分間通風させた後の除去対象成分濃度(D30)を、各々測定した。
測定には、実験例1では、LumaSense Technologies社製光音響式ガスモニターINNOVA 1512-5型を、実験例2~4では、ガステック社製ガス検知管92L(アセトアルデヒド用)を用いた。
【0078】
そして、実験例1では、以下の式(1)、(2)により、初期濃度(C0)と通風後濃度(C30)を求めた。
C0=D0-BG ・・・(1)
C30=D30-BG ・・・(2)
【0079】
一方、実験例2~4では、BG=0とみなし、以下の式(1)’、(2)’により、初期濃度(C0)と通風後濃度(C30)を求めた。
C0=D0 ・・・(1)’
C30=D30 ・・・(2)’
とみなした。
【0080】
求めた初期濃度(C0)と通風後濃度(C0)から、以下の(3)、(4)により、吸着量と除去率を求めた。
吸着量(ppm)=C0-C30 ・・・(3)
除去率(%)=(C0-C30)÷C0×100 ・・・(4)
【0081】
[表面温度]
実験例2における各実施例、比較例のフィルター(吸着材)の表面温度は、4角と中央の合計5カ所の温度を佐藤計器製作所社製放射温度計SK-8300型を用いて測定し、その平均として求めた。
【0082】
<支持体>
各実施例、比較例のフィルター(吸着材)における支持体としては、王子エフテックス製ガラスペーパーPHN-50G(ガラス繊維とパルプを用いたガラス製不織布、坪量50g/m
2)を、
図2の第1シート11と同等のコルゲート形状(縦100mm×横100mm、厚さ10mm、1インチ四方あたりのセル数約70。コルゲート部材16のピッチは5.9mm、高さは3.5mm。)としたものを使用した。
【0083】
<スラリー組成>
[原料]
各実施例、比較例で用いたスラリーは、下記原料を用いて調製した。
活性炭:粉末活性炭 SA1000、フタムラ化学社製、含有水分50質量%
CMC:カルボキシメチルセルロース。
バインダー:スチレン-アクリル樹脂。
pH調整剤:有機酸。
酸ヒドラジド:アジピン酸ヒドラジド。
Y型:Y型ゼオライト。
ZSM-5型:ZSM-5型ゼオライト。
シリカゲル:ミズカシル(登録商標)P-758C、水澤化学工業社製。
【0084】
[混合スラリーの調製]
スラリーHは、表1に示す配合(単位:固形分質量部)の原料を用い、下記の手順で調製した。
まず、水に酸ヒドラジドを溶解させ、その後Y型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライト、シリカゲルを分散させた。さらに、活性炭とCMCを加えて分散させ、pH調整剤を加え、最後にバインダーを加えた。
【0085】
[第1スラリーの調製]
スラリー1-1~1-3は、表1に示す配合(単位:固形分質量部)の原料を用い、下記の手順で調製した。
まず、水に活性炭とCMCを加えて分散させ、その後、バインダーを加えた。
【0086】
[第2スラリーの調製]
スラリー2-1~2-6は、表1に示す配合(単位:固形分質量部)の原料を用い、下記の手順で調製した。
まず、水に酸ヒドラジドを溶解させ、その後Y型ゼオライト又はシリカゲルと活性炭とCMCを加えて分散させた。さらに、pH調整剤を加え、最後にバインダーを加えた。
【0087】
【0088】
<実験例1>
支持体に第1スラリーを含浸・乾燥させた後に第2スラリーを含浸・乾燥させた場合と、第2スラリーを直接支持体に含浸・乾燥させた場合とのアセトアルデヒド除去効果を比較した。
【0089】
[実施例1-1~1-3]
1層目として、スラリー1-3を、支持体全体に対して7.4g(水も含むスラリー全体の含浸量。)直接支持体に含浸させた。含浸後、150℃で15分間加熱して乾燥させ、第1脱臭剤層を形成した。
その後、2層目として、スラリー2-3を、脱臭剤層全体における酸ヒドラジドの含有量が表2に示す量となるように、第1脱臭剤層が形成された支持体に含浸させた。含浸後、150℃で10分間加熱して乾燥させ、第2脱臭剤層を形成し、各実施例のフィルターを得た。除去対象成分をアルデヒドとした際の各実施例の脱臭性能を表2に示す。また、各実施例の酸ヒドラジド量とアルデヒド吸着量との関係を
図4に示す。
【0090】
[比較例1-1~1-11]
表2に示すスラリーを、脱臭剤層全体における酸ヒドラジドの含有量が表2に示す量となるように、直接支持体に含浸させた。含浸後、150℃で10分間加熱して乾燥させ、各比較例のフィルターを得た。除去対象成分をアルデヒドとした際の各比較例の脱臭性能を表2に示す。また、各比較例の酸ヒドラジド量とアルデヒド吸着量との関係を
図4に示す。
【0091】
【0092】
表2、
図4に示すように、実施例のように、酸ヒドラジドを含む第2脱臭剤層を、活性炭を含む第1脱臭剤層上に形成しても、酸ヒドラジドのアルデヒド除去性能が阻害されないことか確認された。
そればかりか、同じ酸ヒドラジド含有量(脱臭剤層全体における酸ヒドラジドの含有量)で比較すると酸ヒドラジドを含む第2脱臭剤層を、活性炭を含む第1脱臭剤層上に形成した実施例では、酸ヒドラジドを含む脱臭剤層を直接支持体上に形成した比較例より高いアルデヒド除去性能が得られた。その要因は定かではないが、アルデヒド除去性能を殆ど有しない第1脱臭剤層においても、多少のアルデヒドを補足できたことが考えられる。また、第1脱臭剤層の存在により、第2脱臭剤層のアルデヒド除去性能が向上した可能性もある。また、第2脱臭材層として酸ヒドラジドがより表面に分布してアセトアルデヒド除去性能が向上した可能性もある。
【0093】
<実験例2>
支持体に第1スラリーを含浸・乾燥させた後に第2スラリーを含浸・乾燥させた場合と、酸ヒドラジドと活性炭を共に含むスラリーを直接支持体に含浸・乾燥させた場合の各々において、加熱がアセトアルデヒド除去効果に与える影響を比較した。
【0094】
[実施例2-1~2-7]
1層目として、スラリー1-2の20gを、直接支持体に含浸させた。含浸後、150℃で15分間加熱して乾燥させ、第1脱臭剤層を形成した。
【0095】
その後、2層目として、スラリー2-6の14g(脱臭剤層全体における酸ヒドラジドの含有量が0.8g)を、第1脱臭剤層が形成された支持体に含浸させた。含浸後、150℃で10分間加熱して乾燥させ、第2脱臭剤層を形成し、各実施例のフィルターを得た。
得られたフィルターを、表3に記載した設定温度と時間でさらに加熱することで、劣化を促進させた。なお、実施例2-1では、劣化促進のためのさらなる加熱は行わなかった。
加熱終了時の表面温度と、除去対象成分をアルデヒドとした際の各実施例の脱臭性能を表3に示す。また、各実施例の表面温度とアルデヒド除去率との関係を
図5に示す。
【0096】
[比較例2-1~2-7]
スラリーHの24g(脱臭剤層全体における酸ヒドラジドの含有量が0.5g)を、直接支持体に含浸させた。含浸後、105℃で30分間加熱して乾燥させ、脱臭剤層を形成し、各比較例のフィルターを得た。
得られたフィルターを、表3に記載した設定温度と時間でさらに加熱することで、劣化を促進させた。なお、比較例2-1では、劣化促進のためのさらなる加熱は行わなかった。
加熱終了時の表面温度と、除去対象成分をアルデヒドとした際の各比較例の脱臭性能を表3に示す。また、各比較例の表面温度とアルデヒド吸着量との関係を
図5に示す。
【0097】
【0098】
表3、
図5に示すように、実施例のように、酸ヒドラジドを含む第2脱臭剤層を、活性炭を含む第1脱臭剤層上に形成すると、酸ヒドラジドのアルデヒド除去性能に対する加熱の影響は小さかった。
これに対して、酸ヒドラジドと活性炭の両方を含むスラリーHを含浸させた比較例では、加熱の影響が大きく、特に高温での加熱の影響が大きいことが確認された。
【0099】
<実験例3>
本発明によれば、スラリーの組成を種々変更しても、アセトアルデヒド除去効果が充分に得られることを確認した。
【0100】
[実施例3-1~3-4]
1層目として、表4に示すスラリーを、表4に示す含浸量で直接支持体に含浸させた。含浸後、150℃で15分間加熱して乾燥させ、第1脱臭剤層を形成した。
その後、2層目として、表4に示すスラリーを、表4に示す含浸量で、第1脱臭剤層が形成された支持体に含浸させた。含浸後、150℃で15分間加熱して乾燥させ、第2脱臭剤層を形成し、各実施例のフィルターを得た。
脱臭剤層全体に含まれる活性炭と酸ヒドラジドの含有量、及び除去対象成分をアルデヒドとした際の各実施例の脱臭性能を表4に示す。
【0101】
[比較例3-1]
スラリーHを、表4に示す含浸量で、直接支持体に含浸させた。含浸後、105℃で30分間加熱して乾燥させ、比較例3-1のフィルターを得た。
脱臭剤層全体に含まれる活性炭と酸ヒドラジドの含有量、及び除去対象成分をアルデヒドとした際の比較例3-1の脱臭性能を表4に示す。
【0102】
【0103】
表4に示すように、何れの実施例も、比較例より、顕著に優れたアルデヒド除去性能を示した。
【0104】
<実験例4>
本発明によれば、スラリーの組成を種々変更しても、トルエン除去性能が損なわれないことを確認した。
【0105】
[実施例4-1~4-7]
1層目として、表5に示すスラリーを、表5に示す含浸量で直接支持体に含浸させた。含浸後、150℃で15分間加熱して乾燥させ、第1脱臭剤層を形成した。
その後、2層目として、表5に示すスラリーを、表5に示す含浸量で、第1脱臭剤層が形成された支持体に含浸させた。含浸後、150℃で15分間加熱して乾燥させ、第2脱臭剤層を形成し、各実施例のフィルターを得た。
脱臭剤層全体に含まれる活性炭と酸ヒドラジドの含有量、及び除去対象成分をトルエンとした際の各実施例の脱臭性能を表5に示す。
【0106】
[比較例4-1]
スラリーHを、表5に示す含浸量で、直接支持体に含浸させた。含浸後、105℃で30分間加熱して乾燥させ、比較例4-1のフィルターを得た。
脱臭剤層全体に含まれる活性炭と酸ヒドラジドの含有量、及び除去対象成分をトルエンとした際の比較例4-1の脱臭性能を表5に示す。
【0107】
【0108】
表5に示すように、何れの実施例も、比較例と同様のトルエン除去性能を維持していた。